コレステロールのお話

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更新日:
 2008年6月28日






◎コレステロール(1996年8月10日)
 生体内に広く分布する、脂肪に似た物質です。肝臓で生合成されます。細胞膜の構成成分であり、胆汁・ステロイドホルモン・ビタミンDの前駆体としても重要です。また老化に伴って、血管壁に沈着し、動脈硬化症と深く関係しています。
 しかし、一口にコレステロールと言っても、悪玉とされる低比重リポタンパク(LDL)と善玉とされる高比重リポタンパク(HDL)があります。LDLは血管壁に付着する性質を持っていますが、HDLは動脈硬化を抑制する働きがあります。
 HDLの検査法は統一されていて、血清中の濃度を測定します。横浜市にある済生会神奈川県病院では、血清100ml中に30〜80mgを正常値としています。HDL値が低いと問題です。この時、総コレステロールが高ければ、糖尿病や肥満が疑われます。また、遺伝的な高脂血症ということも考えられます。総コレステロールも、低い場合には肝臓の病気の可能性があります。
 HDLが1下がると、心筋梗塞など虚血性心疾患の発生率が2〜3%上がると言われています。HDLを直接上げる薬はないので、一日1万歩、歩くなどの運動や、カロリー制限で対応するしかありません。これらは、効果が出るまで最低でも1ヶ月かかります。

◎コレステロール数値、高齢者は低過ぎも害(1996年8月10日、朝日新聞)
・200前後が理想的
 健康診断で「コレステロールが高い」と言われ、数値を気にしている人は多い。心臓病の原因になるためで、「コレステロール値を下げる食事」といった内容の本が書店でも目につく。すっかり悪者扱いのコレステロールだが、下げ過ぎることも怖い。とりわけ高齢者の場合、その害は大きくなる。
 国民のコレステロール値が世界一高く、心筋梗塞(こうそく)が多いフィンランドでの研究??。会社の重役(平均48歳)を対象に、5年間、食事指導や、必要に応じて抗コレステロール薬で治療した結果、心筋梗塞は減ったものの、交通事故死などが増え、かえって総死亡率が高くなった。このほかにもコレステロール値を下げると事故死、自殺が増えるという報告は少なくない。
 東京都老人総合研究所の柴田博副所長らが、都内の小金井市で70歳前後の男女400人余を調べた研究でも、コレステロール値の低いグループは、高いグループより10年後の生存率が低く、短命傾向だった。調査対象者の総コレステロール値の平均は、女性で220だった。
 日本動脈硬化学会は、220以上を高コレステロールとして治療の目安としている。だが、柴田副所長は「これは高齢者には当てはまらない」と指摘する。同市は日本で最も長寿な地域の一つなのに、お年寄りの半数が治療対象になってしまうからだ。
 国立健康・栄養研究所の板倉弘重・特別客員研究員によると、コレステロール値は200前後の場合に最も死亡率が低く、それより高くても低くても死亡率は上昇する。高コレステロールでは心疾患が増える反面、低コレステロールだと脳卒中、がんが多くなり、抵抗力が落ちて肺炎にもかかりやすくなるからだ。
 日本人の平均的なコレステロール値は男女とも約200で、理想的な数値に近い。ただ、50歳代の女性は218と、学会の基準の220に近づいている。これを問題視する専門家もいるが、板倉研究員は「必ずしも危険とは言えない」と話す。

・脳卒中予防には高めで
 高血圧や糖尿病の持病があるなど、心臓病の危険が高い場合、高コレステロールは直ちに治療する必要がある。これに対し、家系にがん患者が多く、がんの心配がある人や、鼻血が出やすい、出血が止まりにくい、家族に脳卒中の患者がいるなど、脳出血の恐れのある人は、むしろコレステロール値は高めの方がよい。高齢者で心臓病の危険因子がない場合、250〜260くらいまでなら若い人と違い、下げる必要はない。
 「適切なコレステロール値は人によって違う。特にお年寄りの場合、しゃくし定規にとらえる必要はない」と板倉研究員は言う。ただし、数値が短期間に上がったり下がったりする場合は注意が必要になる。
 1994年の厚生省の国民栄養調査では、260以上を高コレステロールとしており、その割合は男女とも5、6%。一方、160未満と低過ぎる人は、男性で15%、女性で12%に上った。日本人の死亡原因は、がん、心疾患、脳卒中の順番。しかし、85歳以上に限ると脳卒中がトップになる。
 60〜70歳代以降では、食が細くなってコレステロール値は下がる傾向がある。脳卒中を防ぐには、心臓病の人などを除き、コレステロール値が下がり過ぎないような食事が大切になる。肉は1日50g、卵なら1、2日に1個程度が目安とされている。


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