めまいのお話

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更新日:
 2008年6月28日




・めまいとは
 体の平衡を保つために脳中枢で処理している内耳(迷路)、眼、四肢や頚から送られてくる情報のいずれかに異常がおきて、一致しなかったり、また一部で突然な増減があったりすると、調整する脳の中枢の限界を越えて混乱を生じます。これがめまいで、自分または周りが動いていないのに動いている様に感じる異常感覚です。

・めまいの種類
 現代の文明社会は私達に様々なストレスを与えています。めまいを訴える人が増えているのもそのためと考えられます。いろいろな原因でおこりますが、めまいの種類を大きく分けて、回転性(自分や周りが回ってみえる、立ちくらみ、目の前が暗くなり気が遠くなる)か、同時に体のバランスがとれなくなる、いわゆる平衡障害があり、その外に難聴、耳鳴りを伴ったり、吐き気、冷や汗などの自律神経症状がみられることもあります。この様なめまいの種類を問診することにより、病巣の診断の助けとすることもあります。

・めまいをおこす病気
 内耳末梢が原因のめまいは体の回転感や上下、前後に動く感覚のことが多く、耳鳴り、難聴を伴うこともあり、めまいの最中でも意識は正常に保たれています。代表的なものがメニエル病で働き盛りの人に多く、冷や汗、吐き気を伴い、難聴、耳鳴りがしてめまいと平衡障害がはなはなだしく、数時間から何日も続くことがあります。生命には別状ないのですが、再発の繰り返しで難聴が固定し聞こえが悪くなる場合があります。

 また、良性発作性頭位性めまいは頭の位置の変化によってめまいがおこり、元の位置に戻すと消える。何日か続いて、やがて自然に消えるなどの経過をとります。頭を強く打ったことがあったり、ストマイを注射したことのある人に多いといわれています。
 同じ内耳の病気でも風邪の後でおこる前庭神経炎では、めまいはあっても聞こえは悪くないのが普通です。その外突発性難聴、各種の迷路炎(おたふくかぜなど)でもめまいがみられます。

 動揺病は、乗り物による内耳(迷路)への異常な加速度刺激の繰り返しにより、一時的な冷や汗、吐き気、生つばなどの自律神経機能障害をおこして生じる体の病的状態で、乗り物酔いともいわれます。宇宙酔いも同じ成因です。胃腸の不調、睡眠不足、過労などがあるとおこり易く、予防としては、
1)訓練
2)不安、不眠、疲労を避ける
3)動揺の少ない席に坐り、遠方の景色をみる
4)読書はしない
5)乗る2、3日前からの抗ヒスタミン剤服用、7%重曹水の静注投与
 などが有効です。

 中枢性のめまいはふらつきや、よろめきなどが持続するのが特徴です。しびれ、意識障害や他の脳神経症状を伴うことが多く、病気としては脳腫瘍、脳の血管障害や脳炎など数多く、小脳の出血では小出血でも嘔吐とともに激しい回転性のめまいがおきます。激しい頭痛を伴うめまいは小脳の腫瘍のこともあり、生命の危険もあります。

 聴神経腫瘍は内耳道から発症して、大きくなってゆくと小脳や脳幹を圧迫し、いろいろな神経症状をおこします。余り大きくならないうちに手術すると、聴覚や顔・神経を傷めなくて済むので早期発見が大切です。脳の循環障害が原因として起こるものに、一過性の脳の局所症状(めまい、手足のしびれ、言語障害、物が二重にみえる、意識障害など)を生じ、数分から24時間以内に症状が回復、消失するものがあります。一過性の脳虚血発作といい、脳動脈硬化症や低血圧も関係していますが、最近は脳梗塞の前ぶれとして注目されています。

 長い間立ち続けていると目の前が暗くなって倒れるのは、自律神経や血圧の調節障害で起こるものです。その外、めまいには薬物中毒(例えばストマイやカナマイ)頸の異常(鞭打ち症など)、血液疾患(多くは貧血症)内分泌の異常、腎透析、眼や鼻、のどの病気、歯牙の疾患など、様々な原因でおこります。また心因性の場合もあります。

 めまいは数多くの病気の警戒信号です。これに対して全身的な血液、心臓、神経系の検査、CT、MRIなどの画像診断に加えて、耳に関する諸検査、聴力検査や前庭機能検査の結果が重要になります。

・めまいの治療

1)急性期
 発作中は安静にして一番楽な体位をとり、頭または体の位置の急激な変換を避ける。むかつきやめまいを抑える薬、脳の血行をよくする薬やビタミン剤、補液、不安を和らげるために精神安定剤、時にはステロイド剤が用いられます。メニエル病には7%重曹水の静注投与が奏効することがありますが、手術が行われることもあります。その外合併症があればその治療も必要です。

2)慢性期
 暴飲暴食を避け、心身の安静と十分な睡眠をとります。高血圧、高脂血症、糖尿病などのある人は食餌療法も大切です。薬としては脳の血行や代謝をよくする薬、精神安定剤などが診断により使い分けられます。

3)めまい発作の予防
 頭重感、耳鳴り、肩凝り、耳閉感などの発作の前兆があれば、早めに受診して上記の様な脳の血行をよくする薬や、抗めまい剤、精神安定剤などの投薬を受けます。その外平衡訓練による運動療法や自律神経機能の鍛練も服薬とともに大切です。

4)漢方薬
 めまいは漢方的にみると水分の偏りと考えられ、これを調整する薬物として、茯苓、白朮などが用いられます。よく処方されるのは苓桂朮甘湯で、胃下垂のタイプで尿の出が少なくめまいのある人に用いられます。

・老年者のめまい
 老人のめまいは加齢による変化もありますが、大部分は脳の血管障害によるもので、メニエル症候群は少なくなっています。脳の血管障害が関連していることは、表の分類をみても明らかです。これから考えると、
1)老人のめまいの原因様々で、また複数の原因があり、
2)しばしば脳動脳硬化症を伴っており、めまいの背後には脳の循環障害が関係しているので、一過性のめまいでも油断せず充分な検査が必要です。

 治療の上でもめまいの改善が遅れることがありますが、脳の血行を良好に保つ様にして、高血圧の人は血圧を下げ過ぎない様に注意しなければなりません。慢性病、老人病などの合併症があればこれらの治療が、めまいの治療、平衡機能の運動療法とともに必要です。



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