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更新日:
2008年6月28日
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AST(aspartate aminotransferase)はGOTと呼ばれてきましたが、酵素名称の標準化によりASTの方が今後広く使われるようになると思われます。
体の中ではアミノ酸をバラして別のアミノ酸を作る作業が盛んに行われています。その際にアミノ基の転移反応を触媒する酵素がトランスアミナーゼです。ASTやALTもこのトランスアミナーゼで、補酵素としてピリドキサルリン酸(PALP、ビタミンB6誘導体)を必要とします。トランスアミナーゼは、ほとんど全ての細胞に含まれている酵素であり、細胞が障害を受けることによって誘出してくる逸脱酵素で、血清中に出てくる酵素量は臓器の障害の程度、臓器の酵素濃度、細胞数によって左右されます。ASTは心筋、肝臓、骨格筋、腎臓などに多く含まれており、赤血球中にも血清中の約40倍のASTがあります。
・臨床的意義
肝疾患、心疾患、骨格筋疾患等の障害の程度、臨床経過等を知るために用いられます。また肝疾患ごとでASTとALTの上昇程度の違いがあるので、AST/ALT比を調べることで更に詳しく知ることができます。心筋梗塞では血清AST活性と梗塞の範囲が比例します。心筋梗塞、血液疾患などを区別するために他の検査として、CK、LDH、ALP、LAP等を実施します。
・基準値
9〜36 IU/l
・測定法
最近では、JSCC(日本臨床化学会)法とIFCC(国際臨床化学連合)法が全体の3/4以上を占めています。
1)JSCC準拠(UV/RATE)法
検体中のGOTによりLーアスパラギン酸とα−ケトグルタル酸は、グルタミン酸とオキサロ酢酸になります。このオキサロ酢酸は、NADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)とMDH(リンゴ酸脱水素酵素)のもとで、リンゴ酸とNADになります。このときNADHがNADになることで、340nmの吸光度が減少します。この減少速度を測定することで検体中のGOT活性値を求めます。
2)IFCC準拠法
IFCC準拠法がJSCC準拠法とちがうのは、PALP(補酵素)が添加されていることです。しかし、わが国では、PALP無添加法を用いている施設が多いようです。
体内では、ホロ型(PALPを結合したもの)とアポ型(PALPを結合していないもの)の両型が存在し、ホロ型はそのままで活性を示しますが、アポ型はPALPを加えてホロ型にしないと活性を示しません。ですから、JSCC法では、ホロ型の活性のみを測定しています。
・異常値
1)上昇する疾患
a) 急性肝炎
早期からASTとALTが高値になります(500 IU以上)。しかし、ウイルス性肝炎の場合は発症後2カ月以内に正常値に戻ります。
b) 慢性肝炎
非活動型はAST、ALTともに軽度上昇し、活動型はどちらも100 IUをこえ中等度上昇します。
c) 心筋梗塞
ASTのみ上昇します。広範囲の心筋梗塞や大量出血によるショック時などには、うっ血肝となり、肝臓の一部に壊死ができるため、AST、ALTともに中〜高度の高値を示します。血清AST活性と梗塞の範囲が比例します。
d) 筋肉疾患
軽度から中等度の上昇を示します。CPKの上昇を伴います。
e) 溶血性疾患
血球中には血清よりも多くのASTが含まれているため、溶血するとASTは中等度上昇します。
2)低下する疾患
a) 劇症肝炎
AST、ALTともに1000 IU以上の著しい上昇が起こり、肝臓の壊死が広範囲になると血中に漏れ出る酵素量が減少するのでAST、ALTは低下します。ですから、AST、ALTの正常化は、むしろ経過不良を示します。
・生理的変動
運動後は、骨格筋からASTが逸脱するため上昇します。また、飲酒や肥満、ステロイド剤の服用や輸血、鉄剤の注射、筋肉注射でも上昇します。年齢では、新生児が成人の約2倍の値を示します。それから、赤血球中には血清の約40倍のASTが含まれているため、溶血や全血放置では赤血球からASTが遊出し、見かけ上高くなります。透析中やビタミンB6欠乏では低下します。
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