髪の毛の話

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更新日:
 2010年4月17日






◎髪の毛
 髪は、爪と同じように肌の角質層が変化してできたもので、科学的には肌の一部です。肌と違う点は、髪は、すでに死んだ細胞だということです。痛みなどの感覚がないため、つい負担をかけてしまいがちですが、髪には自己修復機能がないので、一度傷めると自然には元に戻りません。ですから、髪のケアで大切なのは、まず傷めないようにすることです。傷んでしまったら、より丁寧なケアをして、傷みを進行させないことが必要です。
 髪の毛の99%は“ケラチン”というタンパク質で(硫黄を含むタンパク質の総称)で構成されています。ケラチンは、髪だけでなく爪や皮膚の角質層を形成する成分で、18種類のアミノ酸が結合してできたタンパク質の総称です。弾力性があり、水分を含む繊維状の細長いタンパク質です。構成しているアミノ酸の割合によって、髪や爪の硬ケラチン、皮膚の角質層の軟ケラチンに分けられます。またケラチンは、絹や繊維など、他のタンパク質にはほとんど含まれていない、“シスチン”を約14〜18%含んでいることも特徴です。
 シスチンは、含硫アミノ酸(分子内に硫黄成分を持つアミノ酸)の一つであり、髪に含まれているメチオニンからも合成されますが、メチオニンは体内では合成されない必須アミノ酸です。したがって、大豆、小麦粉(全粒粉)、牛乳、レバー、玉子、肉、魚など、普段の食事から摂取する必要があります。
 ケラチンは、ある程度の水分がないと丈夫さを保つ事ができません。通常の髪の水分率は、重量比で11〜13%です。髪の水分率は、温度や湿度によって影響を受けます。髪には吸湿性があり、最大で35%まで吸湿することができるそうです。35%まで吸湿した髪の毛は、長さ1〜2%、太さ15%くらい膨潤しているそうです。
 髪は、地肌から出ている「毛幹」と、地肌の中にある「毛根」とに分けることができます。私たちがふだん「髪」と呼んでいるのは毛幹ですが、髪の成長に大切なのは、毛根の方です。毛根の先のふくらんだ部分が「毛球」で、ここがいわば、髪の製造工場です。毛球にある「毛乳頭」が、髪の毛をつくる指示を毛母細胞に出すと、毛母細胞が分裂し、それが髪となって成長していくのです。
 毛母細胞の分裂を助けるのが、毛細血管から運ばれてくる栄養や酸素です。毛母細胞は、大人の体の中でもっとも活動が活発な細胞なので、多量の栄養や酸素を必要とします。ですから、髪の成長のためには、地肌の血行を促すことが大切なのです。

◎髪の毛の構造
 髪は、大きく分けると3層構造になっています。一番外側をキューティクル、中間部をコルテックス、中心部をメデュラといいます。

・キューティクル
 一番外側のキューティクルは、硬いタンパク質が主成分です。半透明のうろこ状のものが平たく4〜10枚重なって、髪の内部組織を守る働きをしています。
 キューティクル各層の表面は、「MEA(18−メチルエイコサン酸)」と呼ばれる脂質でおおわれています。MEAは、髪全体に占める割合はわずか1%未満にすぎませんが、ミンクの毛にもある成分で、毛髪表面の摩擦を低減してまとまりをよくする働きがあり、髪のツヤや手触りを左右しています。しかし、紫外線やヘアカラー(ブリーチ)で失われやすく、1回のヘアカラー処理をしただけで、80%が簡単に失われてしまいます。しかも、MEAはトリートメントなどに単純に配合するだけでは、毛髪表面に定着させ続けることはできません。

・コルテックス
 髪の85〜90%を占めるコルテックスは、繊維状のタンパク質が主成分です。この部分のタンパク質、脂質の構造や水分量が、髪の柔軟性や太さに影響します。また、主にこの部分に含まれているメラニンの種類と量によって、髪の色が決まります。

・メデュラ
 髪の中心にあるメデュラは、柔らかなタンパク質が主成分です。外的な刺激で空洞ができやすいのが特徴です。ここに空洞がたくさんあると、透過する光が散乱して、髪が白っぽく、色褪せて見えることが分かっています。

◎髪の毛の本数
 日本人の頭部には、平均で約10万5,000本の髪の毛があるそうです。金髪の人は約14万本、赤毛の人は約9万本だそうです。
 この調査方法は、紙に1cm四方の穴を開けて頭に当て、ピンセットで1本づつ髪を引き出して数えたのだそうです。日本人の場合、1平方cmあたり平均で150 本が測定されたそうです。この本数に、頭部の平均面積700cm2をかけて150 本×700 =10万5,000本という数字を算出しているようです。髪の毛の本数も、東部の面積も個人差がありますから、正確な数字ではなく、概算ではありますが、およそ日本人の髪の毛は10万本と思えば良いのでしょう。
 一方、正確な本数を確かめるのに挑戦した人もいるそうです。ユーゴスラビアに住むライコ・ドシッチという人だそうですが、1965年に友人の髪の毛を1本ずつ数えたのだそうです。74日かかって数えた結果、33万4,560本という本数になったそうです。
 概算で求めた結果の3倍になります。私としては、概算で求めた方法の方が実際の数字に近いのではないかと思います。74日かかって数えたということは、一度、髪の毛を全て剃った(あるいは切った)のではないかと思います。したがって、途中で切れたものや、1本の髪の毛が2本や3本に切れて入ったりしているのだろうと思います。(ただ、3倍というのは多すぎると思いますが)

◎毛髪の密度
 最も毛髪密度が高いのは20代で、頭頂部で約210本/cm2、側頭部は約150本/cm2という数値が測定されているそうです。
 一方、60代は頭頂部で約160本/cm2、側頭部で約120本/cm2で、20代に比べて2割ほど髪の本数が減少したそうです。

◎髪の毛の伸びる早さ
 一般的に、1日に0.25mm〜0.35mmくらい伸びるようです。平均すると1ヶ月で1cm、5年で60cm伸びることになります。頭皮の部所によっても髪の毛の伸びる速さが異なり、フロント(額から)1cm幅は伸びるのが遅く、後頭部は伸びるのが早いです。また、季節的には、春夏の方が秋冬よりも良く伸びます。
 髪の毛が伸びる早さは、年を重ねるに従って徐々に遅くなっていきます。さらに、髪の毛は男性よりも女性の方が早く伸びるということが分かっており、わずかですが1ヶ月に数mm長くなるそうです。これは、女性ホルモンの影響によるものだとされています。

◎髪の毛の寿命
 毛髪の寿命は、男性で2〜5年、女性で4〜6年です。髪の毛は成長期(2〜6年)、中間期(2〜3週間)、休止期(2〜3ヶ月)というサイクルを繰り返しています。
 すなわち、成長期(2〜6年)の間は伸び続け、その後、中間期(2〜3週間)になると成長が止まり、休止期(2〜3ヶ月)の期間に抜けて、生え替わります。したがって、健康な状態でも、個人差や季節変動がありますが、1日あたり50〜100本程度は自然に抜けるものなのです。
 ですから、髪の毛が60cmくらいの長さになると、そろそろ髪の毛も寿命に近い状態です。70cm程度まで伸びれば、髪の毛の成長サイクルは終わり、抜け毛の時期を迎えます。
 髪が伸びる状態の成長期の毛髪は、40代までは全毛髪の約80%でしたが、50代以降は、その割合が減っていくことが分かっています。50代では約75%、60代では約55%となり、成長期の割合が減少していきます。
 また、髪が伸びず、抜け落ちやすい状態の休止期の割合は、40代までは約15%であるのに対し、50代では約20%、60代では約30%に増加する傾向が認められています。

◎髪の毛の太さ
 髪の毛の太さは、人によってかなり差があります。平均的には、日本人の場合は70〜90μmくらいだそうです。ただ、加齢とともに細くなっていき、60代では60μmくらい(頭頂部)になっているようです。この変化が、ハリやコシがなくなる原因のひとつであると考えられています。

◎髪で引っぱれる重さ
 1本の髪を引き抜くのに必要な力は、50〜80グラムです。この力のことを、髪の固着力といいます。固着力が弱くなると、当然、脱毛しやすい状態になります。つまり、1本の髪が50グラム以下の力で抜けた場合には、髪には黄色信号が点っていることになります。最近、髪が抜けやすくなったと感じたときには、毛髪クリニックなどで検査を受けるようお勧めします。
 日本人の頭部には、平均で約10万本の髪の毛がありますから、1本当たり50g〜80gの固着力をもっているとすると、10万本を一気に抜くために必要な重量は、10万本×50〜80g=5〜8tonとなります。すなわち、つまり5tonくらいの重さのものなら、1人分の髪の毛で引っぱることができるのです。
 京都の東本願寺には、明治の再建時に巨材を引くために使用した毛綱があります。これは、大木を引くのに、麻の綱では切れてしまったため、全国の女性の信者から髪の毛を寄進してもらい、麻綱に髪の毛を編み込んで使用したのだそうです。髪の毛が強いということは、昔から知られていたのでしょう。

◎原因はコラーゲン不足、脱毛、白髪の仕組み解明(2011年2月4日、産経新聞)
 毛根で「17型コラーゲン」というタンパク質が不足すると、脱毛と白髪の両方の原因となることをマウスの研究で突き止めたと、西村栄美東京医科歯科大教授(幹細胞医学)らが4日付米科学誌に発表した。西村教授は「頭皮でこのコラーゲンが作られるような薬を開発すると、一部の脱毛や白髪を治療できる可能性がある」としている。
 髪の毛と黒い色のもとは、毛根に貯蔵されている毛包幹細胞と色素幹細胞。毛が再生産される際に使われる。
 西村教授らによると、17型コラーゲンの働きで毛包幹細胞が枯渇せず脱毛を防いでいることが判明。このコラーゲンは、毛包幹細胞が「TGFベータ」というタンパク質を作るのにも不可欠で、このタンパク質の働きで色素幹細胞がなくなってしまわないことも分かったという。
 マウスは通常、生後約2年で老化し脱毛や白髪が起きるが、遺伝子操作で17型コラーゲンができないようにすると、半年以内に白髪が目立つようになり、約10カ月で全身の毛が抜けた。

◎白髪の原因は「色素細胞」・ライオンが解析(2001年6月14日、日本経済新聞)
 家庭用品大手のライオンの研究グループは、髪の毛が白くなる仕組みの一端を解明した。黒い毛髪の場合、生え変わる直前の段階で毛の根元に色素を作る細胞が集まり、黒の色素を供給していたが、この細胞の集まりが悪かったり色素の供給能力が落ちたりすると、白髪になってしまうという。同社はこの成果をもとに、白髪を黒髪にする製品を5年後をめどに開発したいとしている。
 髪の毛は、メラチンという色素によって黒い色になる。研究グループはこの色素を作る細胞の動きに着目。毛髪が成長する初期に毛球部という毛根の組織で増殖して色素を作るようになり、毛髪の成長が止まる退行期には消滅してしまうことを解明した。東京都老人総合研究所の協力を得て、白髪で色素細胞の有無を調べたところ、8割の白髪に色素細胞が見つかったものの、数が少なかったり色素を作る機能が弱かったりすることが分かった。色素細胞として正常に機能しなかった詳しい理由はまだ分からないが、この細胞の働きを促す物質を見つければ、黒髪を再生できる可能性があるとみている。


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