肝炎のお話

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更新日:
 2008年6月28日






 ウィルス、アルコール、薬物、自己免疫、胆道疾患によって、肝臓に炎症が起きた状態を肝炎といいます。肝炎になると肝臓の働きが低下し、結果として体全体に障害が起きます。先進国のなかで日本は肝炎ウィルスを保有している率が高く、ウィルスが原因で肝炎が起きるケースが大半を占めています。そしてウィルス性肝炎の一部は、慢性肝炎から肝硬変、そして肝臓がんへと進行します。肝臓がんの原因の85%はC型肝炎ウィルスによるもの、10%はB型肝炎によるものとみられています。

◎肝炎の種類

@ウィルス性肝炎
 ウィルス性肝炎は、体内に入ってきたウィルスが、肝臓の細胞の中に入り込んで増殖します。それを人間のからだの免疫機構が排除しようとします。しかし、ウィルスが細胞内に入り込んでいるのでウィルスだけを排除できず、ウィルスに感染した細胞ごと破壊するので、炎症が起きます。
 日本人の肝臓病の約80%は、ウィルスによって引き起こされています。この中で、肝硬変や肝臓がんといった重い肝臓疾病への移行率が極めて高いのは、B型肝炎とC型肝炎です。
 A型肝炎は、ウィルスに汚染した食物や水を介して経口的に感染します。時に流行することはありますが、急性だけで慢性化せず、死亡する人はほとんどいませんし、治る肝炎です。
 B型肝炎の感染経路として、輸血やウィルス保有者(キャリアー)から感染し、一部は、慢性肝炎や劇症肝炎になることがあります。しかし、その比率はB型肝炎に比べて低く、現在、輸血ではほぼ完全に感染を押さえられています。母子感染も、出産後にワクチンを投与することで防げるようになっています。
 C型肝炎は、輸血や血液で感染することは解ってきましたが、まだ、ウィルスそのものが不明な状態です。自覚症状も、B型肝炎に比べて軽いのが特徴です。

A急性肝炎、慢性肝炎
 急性肝炎は、一般には、ウィルスによって起きる急性の炎症をいいます。感染や、感染経路は、ウィルスの種類により異なります。ウィルス性の急性肝炎のうち約2%の人は、劇症肝炎という重い病気に移行します。そのほとんどはB型から発病し、急性肝炎の症状が現れてから、2ヶ月以内に意識障害が起こり、危険な状態になります。脳浮腫や腎不全、感染症などを合併することもあります。特徴的な症状として、発熱、食欲低下、全身倦怠感、黄疸が挙げられます。
 一方、慢性肝炎とは6ヶ月以上にわたり、症状や検査値の異常が持続するものをいい、肝細胞の変性や壊死などがみられ、自覚症状がないのが特徴で、肝硬変や肝がんに進行するケースもみられます。

Bアルコール肝炎
 長期間の慢性的な飲酒者が、さらに大量の酒を飲んだことがきっかけとなり、過剰に摂り込まれたアルコールの分解が負担になって、肝臓が腫れた結果、胆汁の分泌が滞り、それが更に肝臓に負担を掛けます。その結果、肝細胞の壊死や線維化などを引き起こす症状です。
 B型、C型肝炎と合併した場合、進行が早くなり、その結果、肝がんの発生率が高くなるといわれています。アルコール肝炎の状態を放置しておくと肝硬変、肝ガンへと進行する危険性もあります。過度のアルコール摂取は控えましょう。

C薬物性肝炎
 医薬品や毒物などの化学物質により起きる肝障害のことで、抗がん剤や解熱、鎮痛剤などが原因の薬剤が肝細胞を直接破壊するケースです。
 薬物の代謝産物が高分子化合物と結合することによって抗原性を獲得し、アレルギー反応薬物がアレルギー反応を誘発して炎症を起こす場合があります。

◎肝炎ウィルス(1996年1月19日)
 肝炎を起こすウィルス。1995年12月現在、A〜Fまでの6つの型が報告されている。日本にはA、B、C型が多い。(新聞、1995年12月8日を参照、7番目のウィルスに関する話題がある。)
 A型は、食べ物などで口から感染する。急性の肝炎のみで、慢性にはならない。
 B型は、血液や性行為で感染する。母子感染もある。急性肝炎のほか、慢性肝炎し、肝硬変や肝臓ガンに発展することもある。
 C型は、血液で感染し、母子感染もある。時に急性肝炎を起こす。普通は、慢性感染し、肝硬変や肝臓ガンになる。
 D型は、血液で感染する。B型肝炎ウィルスがいないと肝炎は起きないが、急性肝炎では激症化しやすい。
 E型は、食べ物などで口から感染する。日本での感染は、まず、ない。急性肝炎のみ。
 F型は1994年にインドの研究グループが報告しているが、その後は報告がない。詳細は不明である。

◎肝炎ウィルスに「7番目」が存在(1995年12月8日、朝日新聞)
 肝炎を起こすウィルスはこれまでにA〜Fまでの6つの型が報告されている。日本にはA、B、C型が多い。
 1995年になってアメリカのアボット社のグループがGBV-C、ジーンラボ社のグループがHGVという新しい肝炎ウィルスを見つけたと発表した。HGVは、まだ遺伝子の構造が公表されていないものの、両者はほぼ同じと見られ、7番目の「G」ウィルスとして注目されるようになった。このウィルスの感染経路はよく分かっていないが、動物実験でサルの仲間が患者の血清から感染したため、輸血での感染が疑われている。

◎7番目の肝炎ウィルスを解明(1996年1月29日、朝日新聞)
 7番目の肝炎ウィルスであるG型肝炎ウィルスの遺伝子構造を突き止めたと、アメリカ国立保険研究所(NIH)のハーベイ・アルター博士らの研究グループが1月26日付けのアメリカ科学誌サイエンスに発表した。
 今回は、慢性肝炎患者の血液から見つかったG型肝炎ウィルスを調べ、その遺伝子の塩基の並び方を解明した。G型肝炎ウィルスは、1995年アメリカの企業が発見したと報告、急性、慢性の肝炎を引き起こすと見られ、血液感染が疑われている。日本でも、激症肝炎の患者などにこのウィルスの感染があったという報告がある。(関連記事:1995年12月8日、朝日新聞)
 肝炎を起こすはこれまでにA〜Fまでの6つの型が報告されている。日本にはA、B、C型が多い。
 1995年になってアメリカのアボット社のグループがGBV-C、ジーンラボ社のグループがHGVという新しい肝炎ウィルスを見つけたと発表した。HGVは、まだ遺伝子の構造が公表されていないものの、両者はほぼ同じと見られ、7番目の「G」ウィルスとして注目されるようになった。このウィルスの感染経路はよく分かっていないが、動物実験でサルの仲間が患者の血清から感染したため、輸血での感染が疑われている。



A型肝炎 B型肝炎 C型肝炎 D型肝炎 E型肝炎
原因ウイルス HAV HBV HCV HDV (+HBV) HEV
分類 ピコルナウイルス科 ヘパドナウイルス科 フラビウイルス科 サテライトウイルス科 未分類(孤立)
主な感染経路 経口 血液 血液 血液 経口
潜伏期間 2〜6週 1〜6ヶ月位 2週間〜6ヶ月位 B型肝炎に類似 2〜9週間(平均6週間)
感染の特徴 一過性の感染。 一般に成人が初めてHBVに感染した場合は一過性の感染。 成人が初めてHCVに感染した場合、そのほとんどは、自覚症状がないまま経過し(不顕性感染)、約30%は一過性の感染で治り、約70%はキャリア化することが知られている。 かつてデルタ(δ)肝炎と呼ばれていたもの。 一過性の感染。キャリア化することはない。
キャリア化することはない。 急性肝炎を発症する場合と発症しない場合(不顕性感染)とがある。治癒後に終生免疫が成立。 HCVキャリアの母親から生まれた児がHCVに感染してキャリア化する率は2〜3%程度に止まる。 D型肝炎ウイルス(HDV)は、HBVに感染している人にのみ感染する(HBVをヘルパーウイルスとする)不完全ウイルスである。 終生免疫が成立するか否かは不明。
治癒後に終生免疫が成立。 特にHBc抗原陽性の母親から生まれた児では、感染を予防せずに放置すると高率(80%以上)にキャリア化する。 HCVキャリアでは、HBVキャリアに比して慢性肝疾患(慢性肝炎、肝硬変、肝癌)を発病する率が高い。 わが国にはHDV感染例は少ない。 急性肝炎を発症した場合はA型肝炎に類似。
急性肝炎発症例では、38℃以上の高熱を伴って発症。発熱後数日を経て、全身倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、右季肋部痛などが現れ、その後褐色尿、黄疸が現れる。 乳幼児期に感染した場合にもキャリア化することがある。 C型慢性肝疾患患者を除いて、わが国には150万人前後のHCVキャリアが存在することが知られている。 稀に劇症化することあり。妊婦がHEVに感染して発症した場合には、劇症化する率が高いと言われている。
成人例では腎不全を伴うことがある。 B型肝炎ウイルスキャリア(HBVキャリア)の一部は慢性肝疾患(慢性肝炎、肝硬変、肝癌)を発症する。 人畜共通感染が疑われている唯一の肝炎ウイルスである。
成人が感染した場合、不顕性感染で終わることは少なく、重症化することがある。 わが国には慢性肝疾患患者を含めて、100万人から150万人のHBVキャリアがおり、そのほとんどは検査をしなければわからない(自覚症状がない)無症候性のキャリアであることが知られている。
キャリアの有無
肝がんとの関係
劇症化 あり あり あり あり
診断法 血清学的検査:ペア血清によるHA抗体価の上昇、IgM HA抗体の検出 血清学的検査: HBs抗原の検出、ペア血清によるHBc抗体価の上昇、HBc抗体価の測定(HBVキャリアとの鑑別)、 IgM HBc抗体の検出 血清学的検査: HCV抗体の検出、HCVコア抗原の検出 血清学的検査:HDV抗体の検出、肝内のHDV抗原(デルタ抗原)の検出 血清学的検査:ペア血清によるHEV抗体価の上昇、IgM HEV抗体の検出
核酸増幅検査(NAT): HAV RNAの検出 核酸増幅検査: HBV DNAの検出 核酸増幅検査: HCV RNAの検出、リバビリン 核酸増幅検査: HDV RNAの検出 核酸増幅検査: HEV RNAの検出
治療法 急性期の対症療法 ラミブジン等にいる抗ウイルス療法、グリチルリチン、ウルソデスオキシコール酸等による抗炎症療法 インターフェロン、リバビリン等による抗ウイルス療法、グリチルリチン、ウルソデスオキシコール酸等による抗炎症療法 (Bの治療がDの治療) 急性期の対症療法
ワクチン HA ワクチン HB ワクチン(場合によりHBIGを併用) 開発困難 HB ワクチン(Bの予防がDの予防) HEワクチン開発中

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