脳のお話

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更新日:
 2008年6月28日






◎脳細胞(1997年10月10日)
 人間の脳は約140億個の神経細胞(ニューロン)からなっている。ニューロンは体細胞と異なり分裂しないので、生まれたときのままで増えることはない。ただ減る一方で、成長期を過ぎると1日に10万個ずつ死滅していく。ひとつひとつのニューロンは、先端が枝分かれした樹状突起を持っており、シナプスという接点で他のニューロンとつながっている。この樹状突起は生まれてから数年間で増大し、大人になると1万個に達する。140億個あるニューロンがそれぞれ1万個ほどのシナプスを持っているのだから、脳全体のネットワークは天文学的な数字になる。ニューロンはシナプスという接点でつながっているが、シナプスとシナプスの間には20nmの隙間があり、この隙間を橋渡しするのが神経伝達物質である。
 脳は経験を積めば積むほど、学習をすればするほど発達する。脳の発達はシナプスの増加で説明される。ニューロン間のネットワークは脳を使うことによって形成される。使えば使うほど脳のネットワークは緊密になっていく。

◎脳の活動状態(1997年10月10日)
 脳の活動状態は周波数によって4つの段階に分けられる。
・デルタ波(δ波) 0.3〜3ヘルツ
・シータ波(θ波) 4〜7ヘルツ
・アルファ波(α波) 8〜13ヘルツ
・ベータ波(β波) 14〜30ヘルツ
 睡眠時にはデルタ波とシータ波が表れる。デルタ波は熟睡している時に発生し、無意識の状態。シータ波は眠りに入りかけた時に発生する。夢を見るのはこの時。
 覚醒時にはアルファ波とベータ波が出ており、アルファ波は落ちついているときや集中しているときに発生する。ベータ波は完全な覚醒状態を示し、脳の活動が活発になるにつれて増大する。緊張したり、心配事があるときに発生する。

◎脳のメカニズム(1997年10月10日)
 解剖学的には大部分を占める大脳、大脳を支える脳幹、脳幹の後方に位置する小脳とに分けられる。脳幹は脳の最も古い部分で、は虫類の脳と似ているのでは虫類脳とも呼ばれる。この部分には自律神経の中枢が存在し、体温、呼吸、心拍などをコントロールする。性欲や食欲もここで調節されている。
 小脳は脳幹の後ろに突出している部分で、主に運動を微調整する役目を持つ。ここに損傷を受けると平衡感覚が失われる。ヒトの小脳はここ100万年の間に大きさが3倍になっており、体が習い覚えた記憶が蓄積されつづけていることを示している。
 大脳は大脳辺縁系と大脳新皮質に分類できる。大脳辺縁系は古皮質(は虫類時代の大脳)と旧皮質(下等哺乳類時代の大脳)からなっている。ヒトになって急激に発達した大脳新皮質は、さらに前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の4つの部分に分かれている。
 前頭葉は額のすぐそばにあり、大脳の約40%を占めている。計画、決断、目的、やる気を司る。頭頂葉は大脳半球の後ろよりにあり、ものごとを系統立ててまとめるところ。体の運動を司る運動野(うんどうや)や、触覚を感じる体性野(たいせいや)がある。側頭葉はこめかみに近いところにあり、聴覚と言語中枢、記憶のほかにも様々な働きがある。後頭葉は大脳の後部にあり、視覚を司る。
 脳は右半球と左半球からなり、中央には脳梁と呼ばれる2億本の神経電線が走っており、右脳と左脳を結んでいる。右脳は物の形のパターンの認識、空間認知、無意識な部分を担当し、直感、音楽、幾何学、図形、絵画を司る。つまり、映像を処理する能力がある。一方、左脳は理性的、知的な分野を担当し、言語、論理、代数、文字を司る。つまり、言語機能がある。
 得手不得手は、利き脳によって左右される。理科系の学生は左脳利きが多い。利き目は、カメラや望遠鏡を覗く方の目。笑ったとき、右利きの人は顔の左側にある唇が上がり、左利きの人は逆になる。腕を組んだり、指を組んでも利き脳が分かる。右腕が上になる人は左脳利き。指を組んだ場合は、上になった親指の手の方が利き手で、右手なら左脳利き。
 右脳を鍛えるには、右脳につながる左半身をよく使うこと。また右脳で絵を描くことも右脳を鍛える一つの方法である。それは手本となる絵を逆さまにして模写をすることである。これだと絵心のない人でもたちまち絵の達人になる。この方法では人物の絵であっても、目とか口とかの部分にこだわらず、空間的に絵を認識することができるため、右脳の働きが引き出せると考えられている。また、折り紙も右脳の開発には効果的。
 栄養のバランスがとれていないとイライラする度合いが高くなる。栄養のバランスは脳に大きな影響を及ぼす。栄養のバランスを崩す食品は「酸化食」である。酸化食とは、過酸化脂肪を多く含む食品である。たとえばインスタント食品、ハンバーガー、フライドチキン、フライドポテトなどである。酸化食は脳の必須脂肪酸であるリノール酸と酸化反応を起こすため悪影響を及ぼすといわれている。また、酸化の促進は痴呆症の進行を早めるともいわれている。
 また、ビタミンB群(B1、B2、B3、B6、B12)が不足すると、脳に病的変化が起こりやすいともいわれている。脳はブドウ糖を燃焼させてエネルギーに変換しているが、ビタミンB群が揃っている時が最もよく燃焼する。不足すると不燃焼になり、脳に乳酸が蓄積される。この乳酸が病変を引き起こす。先程のファーストフードやコンビニ食にはビタミンB群が不足している。

◎脳血管のゴミ掃除をする細胞が認められた(1996年1月22日、産経新聞)
 自治医大の間藤方雄名誉教授が発見した脳血管の細胞が、「MATO CELL(間藤細胞)」と命名され、今春、アメリカ学士院会報で発表される。発見から18年経過している。
 解剖学が専門の間藤氏が、脳血管にあるこの細胞を最初に発見したのは昭和53年(1978年)。従来の学説を覆すため、なかなか認められなかったが、動脈硬化の研究をしていた東京大学医学部助手の児玉龍彦氏や、熱心な研究姿勢にひかれた新潟大学教授の内藤真氏らがイギリスのオックスフォード大学の教授らを含めた応援団を組織し、この細胞の機能や重要性を裏付ける研究を繰り返した。この結果、「世界的な認知」のバロメーターであるアメリカ学士院(PNAS)の厳しい審査を1995年に通過した。1996年3月頃の同学士院会報に掲載される。
 日本人が発見して名前が付いた病名は過去に、川崎病(小児心臓病)、橋本病(甲状腺)、高安病(大動脈炎)など数多い。しかし、人間の体内に数百種類存在する細胞で同様のケースは、昭和31年(1956年)の「ITO CELL」(故伊東俊夫氏が発見した脂肪摂取細胞)に次いで二例目となる。
 今回命名された「間藤細胞」はスカベンジャー受容体というタンパクを持っている「ゴミ処理」の細胞。マクロファージ(大食細胞)と呼ばれる細胞の一種。脳の細血管の周囲にツタのように絡まりつき、脳の老廃物や血管内のコレステロールを細胞内部に取り込む。年を取るにしたがって処理能力が低下、肥大化して血管を圧迫し、血流に影響を与える。この細胞の発見によって、動脈硬化や痴呆などの脳の病気の新しい治療法の開発などの研究が進むと期待される。



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