高血圧の話

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更新日:
 2008年12月28日






 血圧には心臓が収縮して血液が動脈に送り出されるときの最大血圧(収縮期血圧)と、心臓が拡張して血液が心臓に満たされているときの最小血圧(拡張期血圧)とがあります。
 高血圧というのは、この両方のいずれかが高くなることをいいます。しかしながら、一般的には両方とも高くなることが多いです。高齢者で最大血圧だけが高くなるのは、大動脈硬化によるもので、一概には必ずしも血圧を下げる必要はありません。
 また血圧は一日のうちで上り下りがあり、季節によっても変わり、精神的なストレスや興奮などでも一時的に上ることがあります。
 したがって、一回測った血圧が高くても、本当に高血圧症なのかどうかは、日を変えて血圧を何回か測ってみないと判断できません。
 どれだけ血圧が高ければ高血圧症かという明確な区切りはありませんが、世界保健機構(WHO)の基準では、最大血圧が160、最小血圧が95mm水銀柱のどちらかでもこれを超えた場合を高血圧症としています。我が国では、最大血圧が150、最小血圧が90mm水銀柱以上を高血圧症あるいは境界型高血圧として管理の対象とされています。

なぜ高血圧になるのでしょうか
 高血圧のほとんどは原因がわからず、本態性高血圧症とよばれています。本態性高血圧症は若い人にも時にみられますが、多くは男性は40歳前後から、女性は更年期前後からあらわれます。また両親や兄弟など血縁の人に高血圧症の人が多い高血圧症になる可能性が高いといわれています。
 高血圧のほとんどが本態性高血圧症ですが、一部には、特に若い人では、高血圧の原因となる病気を持った「二次性高血圧」であることがあります。副腎の腫瘍などによる内分泌性高血圧(原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、クツシング症候群など)、血管がせまくなって起きる血管性高血圧(大動脈炎、大動脈縮窄症など)、腎臓が悪くなったり、腎動脈がせまくなって起きる腎性高血圧(慢性腎炎、腎血管性高血圧症など)などがあります。これら二次性高血圧は、高血圧のために臓器が悪くならないうちに、原因となる病気を取り除けば高血圧は治ってしまいます。一方若い人の重症高血圧は急速に進行して、悪性高血圧といわれる状態になることがありますが、最近では早期に治療すれば進行が抑えられるようになっています。

高血圧では自覚症状はあまりない
 高血圧そのものは自覚症状の少ないものです。頭の重い感じ、頭痛、めまい、肩こり、動悸や「のぼせ」などを感じる人もいますが、必ずしも血圧の高さと比例しません。高血圧が進行して、脳や心臓や腎臓などに変化が起こってくるまでは自覚症状は少ないものです。
 最近は健康診断で高血圧であることは早く発見されますが、自覚症状がないために放置してしまい、高血圧による合併症を起こしてしまったあとで、高血圧管理の重要性に気付くこともあるのです。特に両親や兄弟等に高血圧や脳卒中などがある人は、日頃からの注意が必要です。

血圧が高いとどういうことになるのか
 高血圧が長くつづくと、脳や心臓や腎臓などの大切な臓器に都合の悪い変化が起こってきます。
 脳の血管は高血圧による変化を受けやすく、血管がいたんで破れると脳出血になります。高血圧がつづくと動脈硬化が進みやすく、血管がせまくなったりつまったりすると脳梗塞となります。これらがいわゆる「脳卒中」の大部分で、おおくの場合は半身不随になってしまいます。
 心臓は高血圧がつづくと心臓に負担がかかり、まず心臓が肥大してきます。さらに進と心臓のポンプとしての働きが悪くなり、心不全という状態になって、呼吸困難や浮腫などの症状があらわれます。また高血圧がつづくと、心臓を栄養している「冠動脈」の動脈硬化が進み、冠動脈がせまくなったり、つまったりして狭心症や心筋梗塞が起こってきます。
 腎臓は血圧と関係が深く、高血圧がつづくと細り血管がせまくなって腎硬化症といわれる状態となり、腎臓の働きが落ちて逐には腎不全(尿毒症)になることもあります。若い人では急激に進行する悪性高血圧という重症の状態になることもあります。
 また眼球では眼底の細い血管からの出血が起こり、視力が低下することがあります。これが眼底出血です。
 したがって血圧の高い人は血圧を測るだけでなく、これらの大切な臓器の変化についても検査をしておく必要があります。

 高血圧の治療は、生活態度の改善が良いようです。

・日常生活では
 血圧が上る要因を少なくするためには、まず日常生活を規則正しいものにすることが必要です。うまく気分転換をはかってストレスを解消し、適当な休養時間をとり入れて、睡眠時間を充分にとることです。高齢者では特に急な寒さには充分注意して保温することが大切です。

・運動は
 適当な運動は血圧を下げます。あまりきついと思わない程度の運動を、1回1時間以内で毎日あるいは週2〜3回程度、定期的に行うと、血圧が下ってくることがわかっています。

・煙草や酒は
 煙草はストレスの解消に役立つといわれますが、血管を収縮させるので、血圧の高い方は禁煙につとめなければなりません。
 飲酒も度がすぎると血圧が上ってくることが分かっています。多くとも日本酒で1合、ビール大瓶1本までに止めておくことが必要です。

・食事は
 食事では食塩摂取の制限と肥満の防止が最も大切です。1日の食塩摂取量は1日多くとも10g以下、出来れば7g程度にまで制限することです。現在、普通の人の食塩の1日摂取量は13〜15gとされていますので、塩辛いものをさけて、薄味に慣れるように心掛ければ、比較的苦労が少なくて食塩の摂取制限が出来ます。
 次に肥っている人は、体重を減らすように摂取カロリーを少なくして、適当な運動をするように心掛けなければなりません。
 また良質のタンパク質を充分に、動物性脂肪を少なくし、糖質(デンプンや砂糖類)を減らし、植物繊維を多くとるようにして、動脈硬化が進まないようにして、全体としてバランスの良い食事をとるように努力したいものです。

血圧を下げる薬(降圧薬)で治療をするためには
 降圧薬には、たくさんの種類があります。必ず医師の診察を受け、症状にあった薬で治療されなければなりません。
 医師は診察をして、その人の体質や、血圧の下り方や、臓器への影響はないか、副作用はないかなどをみて、薬の種類や量を調整します。したがって、血圧の上り下りや、全身状態を定期的に診てもらい、必要な検査を受けながら、気長く治療をつづけることが大切です。
 血圧が安定したら必要な最小量の薬を決まった通りに長期間飲むことが必要で、2〜4週間に1回は必ず診察を受けることが大事です。
 現在用いられている主な降圧薬は
(1)水、ナトリウムの排泄をよくする薬(サイアサイド(thiazide)系利尿薬)
(2)交感神経の興奮を押さえる薬(β−ブロッカー、α−ブロッカー、その他の交感神経抑制薬)
(3)小血管を拡げる薬(カルシウム拮抗薬)
(4)血圧を上げる物質を抑える薬(ACE阻害薬)などがあります。これらの薬が病状などにより選ばれて使用され、場合により併用されます。
 また血圧が高くても臓器の変化が少ない間は、自覚症状がないことが多いので、降圧薬の飲み忘れが多くなり勝ちです。最近は薬を飲む回数を減らして1日1〜2回飲めばよいように長く効くような降圧薬が増えてきました。

血圧の管理は一生つづけるもの
 降圧薬をきちんとつづけて治療した人と、そうしなかった人との経過をみると、治療を続けた人では、脳卒中、心不全、腎不全や悪性高血圧になった人がはっきり減り、脳出血で亡くなった人や、脳梗塞や心筋梗塞になる人も減る傾向がみられています。降圧薬による治療は進歩して、高血圧による合併症を、予防出来る段階になったと言えます。
 ごく一部の高血圧(二次性高血圧)を除き、ほとんどの高血圧(本態性)は、根治療法がない状況です。そこで高血圧症と診断されれば、一生、血圧管理を続けなければなりません。生活態度の改善で充分に血圧がうまくコントロール出来れば、薬は飲まなくてすむ可能性があります。また、はじめに多くの降圧薬を飲まないとコントロール出来なかった場合でも、良い管理を続ければ薬の量は次第に減らすことが出来ます。
 高血圧の治療管理は生涯にわたるものです。主治医と良い信頼関係を保って血圧管理をして、合併症が起こらないようにして、一病息災で健やかに長生きしましょう。



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