イレッサのお話

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更新日:
 2009年1月2日





◎イレッサ:IRESSA(2003年2月)
 イレッサ(ゲフィチニブ:Gefitinib)は肺ガン用の抗ガン剤で、日本では2002年7月5日に承認された薬です。副作用による死者があまりに多いため問題となり、新聞を賑わしているため、一度は耳にしていると思います。
 2003年2月現在、世界中で日本でしか薬として認められていません。2003年5月5日にアメリカ食品医薬品局(FDA)で承認されたほか、いくつかの国で承認を受けています。しかし、無作為比較臨床試験(ISEL試験)の結果、プラセボと比較して生存期間を延長することができなかったため、2005年1月4日、アストラゼネカは欧州医薬品局(EMEA)への承認申請を取り下げました。
 2005年6月17日にFDAは本薬剤の新規使用を原則禁止としました。2006年現在、イレッサを承認している国は、日本を含めたアジア諸国、およびオーストラリア、メキシコ、アルゼンチンだけです。

・イレッサとは
 イレッサ(一般名はゲフィチニブ、開発コードZD1839)は、アストラゼネカ社から発売されている肺癌治療薬です。手術不能、または再発非小細胞肺癌用の薬です。すなわち、手術ができない肺ガン患者向けの薬だと言えます。
  この薬は今までの抗ガン剤と違って、新しい分子標的抗癌剤といわれているものです。ガン細胞にある異常な働きをしている分子を見つけ、それを攻撃し、その働きを止めることでガンを治そうというもので、画期的な薬です。
 イレッサは日本国内では1998年から開発が進められ、厚生労働省に承認申請されたのは2002年1月という、たった5ヶ月間という異例の短期間で審査が終了し、2002年7月5日に承認されました。(フェーズ2の段階で申請されたという非常に特殊な例です。)
  イレッサが取得した効能、効果は、「手術不能または再発非小細胞肺癌」というものです。非小細胞肺癌の80%を占める疾患に対する効果的な治療法が見出されていないため、特効薬の開発が待たれていました。
 臨床試験では、既存の抗癌剤が効かない患者の約半数に対して、進行が止まり、約2割では「癌」の大きさが半分以下に縮小したとのことです。この結果を基に、厚生労働省は肺癌には、他に有効な薬が少ないという緊急的な状況も背景にあったためか、異例のスピード承認をしたようです。
 イレッサが承認された直後から、患者の家族からの問い合わせが殺到したようです。あまりの反響の大きさに応えて、アストラゼネカは特定療養費制度に基づいて、2002年7月中旬から医療機関に提供してきたんそうです。
  その結果、承認後、わずか半年で20,000人に投与されたそうです。肺ガンの患者さん達が、いかに切実に治療薬の出現を待っていたのか、というその状況が理解できると思います。

・イレッサの副作用
 イレッサによる副作用は急性肺障害と肺炎です。服用開始後、早期に症状が発現し、急速に進行する症例がみられるようです。
 風邪の様な症状(息切れ、呼吸がしにくい、咳および発熱等の初期症状)が現れる急性肺障害、間質性肺炎という副作用は、早く見つけて、早く処置を行わないと、致死的な経過をたどります。(ステロイドによる治療を必要とする)
 2003年1月31日までに厚生労働省に報告があった間質性肺炎と肺障害の発症者は473人で、うち173人が死亡しました。
 しかし、死亡をともなう判定は癌によるものか、副作用によるものかの判定が難しいのも事実です。また、他の抗癌剤や放射線治療に比べ、イレッサだけが特に際立って、間質性肺炎の発生率が高いわけではないという呼吸器科の医師の意見もあるようです。
 しかしながら、製薬会社が副作用を添付文書に記載しなかったり、副作用についての情報提供を求めても返答がなかったり、使用する医者に対する指導不足はあるようです。
 しかもアストラゼネカは、2002年8月にフェーズ3試験(イレッサと白金製剤などによる標準的な癌化学療法との併用と、標準的治療との間で生存率を比較)で、標準的治療とイレッサを併用化学療法との間で、生存率に有意差を見出すことができなかったと発表しました。つまり、イレッサには効果がなかった、ということです。
 イレッサは一錠(250mg)が7,216円(2003年2月)もする、内服薬で最も高いランクの薬です。2002年8月30日には薬価基準収載(これに収載されると保険が適用できる)が行われ、その後の3ヶ月間で約73億円も売り上げたそうです。

・分子標的薬としてのイレッサ
  イレッサは新しい分子標的抗癌剤として画期的なものだそうです。分子標的薬とは、異常なシグナル伝達を遮断してガン細胞の増殖を抑える薬で、正常細胞への影響は少ないとされています。日本でも多くの企業が、副作用の少ないガンの分子標的薬開発に乗り出しています。
 イレッサは膜内部分のチロシンキナーゼのATP結合部位に結合し、ATPが結合するのを阻害し、癌細胞の増殖メカニズムを狙い撃ちする分子標的薬剤です。



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