経口感染する病気のお話

  メニュー

 TOPページ 

 日本情報 

 海外事情 

 辞典 

 医学の話 

 科学の話 

 食品の話 

 知識の宝箱 

 メモ帳 

  



更新日:
 2008年6月28日






◎経口感染する病気
 汚染された食品や飲料水の摂取、あるいは感染者との接触で直接に感染する。旅行者下痢症の多くは経口感染症と思われます。

・生活上の注意事項
 生水は飲まない。ミネラルウォーターか煮沸水を飲用する。水割りの氷も安全な水からつくる。なるべく自分で調理する。調理人にまかせる場合、衛生教育と健康管理(健康診断など)に気を配る。刺身は不可。口に入れるものは全て加熱調理(自分で皮をむいた果物だけは生でOK)。調理したらすぐ食べる。
 用便後、帰宅後、調理前、食前の手洗いを励行すること。衛生不良地域に赴任する場合、A型肝炎の予防接種を受けておく。

1. ヒトの排泄物に出現する病原体
 ヒトの腸内で増殖する病原体で、飲料水汚染、食品汚染、患者との同居で感染します。
・A型肝炎ウィルス:倦怠感と黄疸(皮膚が黄色くなる)が特徴です。
・ポリオウィルス:風邪の症状の後、麻痺がおこるのが特徴です。
・ロタウィルス:子供の流行性下痢の原因として重要です。
・コレラ菌:水様性下痢が特徴です。
・赤痢菌:血便とテネスムス(トイレに行きたくなるが出ない)を伴う下痢が特徴です。
・腸チフス菌:発熱が主な症状です。
・赤痢アメーバ:血便が特徴です。肝臓に転移すると、発熱と上腹部痛も出現します。
・ジアルジア:おなかにガスがたまり、おならの臭いが強くなります。
・クリプトスポリジウム:水様性下痢が特徴です。
・戦争イソスポーラ:水様性下痢が特徴です。
・蟯虫:肛門周囲の痒みが特徴です。
 このなかで、特に感染性の強いものは、経口伝染病と呼ばれます。これは衛生状態が悪い地域で爆発的な流行をおこすことがあるので、特に注意したいものです。この代表格がコレラ(激しい水様下痢)と赤痢(血便を伴う下痢)で、いずれも病原体発見以前から伝染病として知られていたものです。

2. 動物の排泄物に出現する病原体
 人畜共通感染症の1種です。牧草地帯では動物の排泄物による飲食物汚染がおこりやすく、この種の病気が多発します。
・細菌性疾患:サルモネラ腸炎(鶏卵、肉製品など)、キャンピロバクター腸炎、腸炭疽などがあります。
・原虫性疾患:トキソプラズマ症(ネコの排泄物)、大腸バランチジウム(ブタの便)などがあります。
・幼虫移行症:包虫(キツネ、イヌの便)、有鉤条虫(ブタの排泄物)などが該当します。

3. 獣肉や内臓に含まれる病原体
 調理不十分な肉を食べることで感染します。
・細菌性疾患:ブルセラ(肉、卵、乳など)、野兎病(食肉、牛乳)などがあります。
・原虫性疾患:トキソプラズマ症(ブタ肉など)、肉胞子虫(ヒツジ肉など)などがあります。
・腸管寄生虫:無鉤条虫(牛肉)があります。
・幼虫移行症:有鉤条虫(ブタ肉)、擬充尾虫(ヘビ、カエル、トリ等)などが該当します。
・肺吸虫:各種食肉(ブタ肉やイノシシ肉)に含まれる幼虫(メタセルカリア)を経口すると感染します。
・旋毛虫:各種獣肉に含まれる幼虫(第3期幼虫)を経口すると感染します。

4. 魚介類に含まれる病原体
 刺身を食べることで感染します。
・腸炎ビブリオ:海水に棲息する細菌です。低温では増殖しませんが、気温が30℃近くに達すると爆発的に増殖します。これを加熱不十分なまま食べると、激しい腹痛と下痢がおこります。
・腸管寄生虫:広節裂頭条虫(サケ、マス)、横川吸虫(アユ、シラウオ)、肝吸虫(コイ、フナ)、棘口吸虫(ドジョウ、ダナゴ、カエル、タニシ、シジミ)などがあります。
・肺吸虫:淡水産のカニ(サワガニ、モクズガニ、ザリガニ等)に含まれる幼虫を食べることで感染します。肺に寄生した場合は、咳や血痰が出現し、胸部X線写真で肺結核や肺癌と誤診されることがあります。皮膚に寄生すると、瘤ができます。
・幼虫移行症: アニサキス、顎口虫症、広東住血線虫などが該当します。
魚介類については、自然毒による中毒にも注意が必要です。麻痺をおこす有毒魚介類(フグ、シガテラ、ウミガメ、ハマグリ等)、下痢をおこす有毒魚介類(毒カマス、ある種の貝類)、皮膚炎をおこす有毒魚介類(イシナギ、アワビ等)が知られています。

5. 野菜などの植物に付着する病原体
 生野菜などから感染します。
・蛔虫、鉤虫、鞭虫:野菜の表面に付着した虫卵を食べることで感染します。通常、大した症状はでません。糞便検査で虫卵が発見されたら駆虫剤を飲みます。
・肝蛭:成虫は草食獣の肝臓に寄生しますが、幼虫は水辺の草に付着しています。水セリや稲穂に付着した幼虫を食べると感染します。感染すると、肝臓に虫が寄生して、発熱と腹痛が出現します。
植物については化学物質(自然毒)による中毒の方が重要です。


inserted by FC2 system