骨粗しょう症のお話

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更新日:
 2009年1月2日





◎骨粗鬆症(1997年10月10日)
・骨について
 人間の体には約206個の骨があり、関節でつながった骨を筋肉で動かすことによって、いろいろな仕事や運動をしています。生まれてから大人になるまで骨は成長し、だんだんと伸びて、強くなっていきます。この骨の重さの約3割はカルシウムであり、生きている骨は、常にカルシウムが出たり入ったりしています。
 骨の構造ですが、骨は海綿骨と皮質骨に分けられます。海綿骨は建物の梁の働きをしていて、内部から骨を支えています。皮質骨は竹筒のようになっていて、骨の周囲の強さを保っています。
 骨の中には、古い骨を壊していく破骨細胞と、新しい骨を作っていく骨芽細胞という二つの細胞があり、骨を吸収したり、必要な場所に骨を作ったりしています。これを骨改築と言い、一年間に約2割の骨が新しく入れ変わっています。
 また、骨の中(骨髄)は、人体にとって大切な血液を作る場所になっています。

・骨粗鬆症はどのような病気でしょう
 最近、骨粗鬆症という言葉をよく耳にするようになりました。これは骨の密度が少なくなって骨に鬆が入ったような状態になり、骨が折れやすくなる病気です。この病気は高齢者の増加とともに多くなり、骨折による運動機能の低下により活発な生活が出来なくなったり、寝たきりの原因ともなるため、問題となってきています。
 骨粗鬆症は一般に女性では60歳前後から、男性では75歳頃から始まります。骨の強さを正常に保つためには女性ホルモンの作用が必要であり、そのため閉経後の女性に多くみられる病気です。
 骨の密度を調べるためには特殊な測定器械もありますが、一般にはレントゲン検査で海綿骨や皮質骨の状態を見て骨の強さを判断します。
 この病気の原因としては、次のようなことが考えられます。
1)女性ホルモン(エストロゲン)の不足
2)痩せていること
3)体質、家系
4)運動不足、筋力低下
5)カルシウム不足

・骨折について
 骨粗鬆症になると骨の中のカルシウムが少なくなり、ちょっとしたことで骨折を起こすようになります。たとえば、物を持ち上げたり尻もちをついただけで脊椎(背骨)が折れたり、畳の上で転んだだけで大腿骨頸部(太もものつけ根の骨)が折れたりします。
 体の中で骨折を起こしやすい部位は、脊椎、大腿骨頸部、ろっ骨、前腕骨の手首のところ、上腕骨の肩の近くなどです。
 脊椎では圧しつぶされたような骨折(圧迫骨折)を起こし、その場合には急に背中に痛みを感じます。はじめ10日間ほどは、痛みが強いため起き上がることも困難になります。
 脊椎の圧迫骨折では海綿骨が徐々につぶれてゆくため、初期にはレントゲン検査で骨折が見つからないこともあります。数個の脊椎がつぶれると円背変形といって背中がまるく曲がってきて、まっすぐに立って歩くことが難しくなります。背中が曲がってくると背部の筋肉などに無理が加わり、慢性の腰痛が続き日常生活が苦しくなることがあります。
 70歳以上の女性の場合、半分以上の人が尻もちや転倒で背骨や大腿骨の骨折を起こしやすい状態になっているといわれております。
 大腿骨の太もものつけ根のところもちょっと転んだ程度でよく折れます。これを大腿骨頸部骨折といって、この部位の骨折の場合には、歩くことが不自由になったり、寝たきりになることがあります。治療には金属で骨をつないだり人工の関節に入れかえる手術をして早く起き上がれるようにします。
 以上のような骨折は患者さんの活動性を低下させ、老人性痴呆を引き起こすきっかけとなることもあり注意が必要です。

・骨を強くしておくためには
 「宇宙飛行士の骨が無重力状態で弱くなる」という話を聞いたことがあると思いますが、1カ月間安静にしていると背骨や大腿骨で1割程度のカルシウムが骨から抜けていくと言われています。このように、骨が弱くなるのは非常に速いのですが、弱くなった骨をもとにもどすのは大変に困難です。
 骨を強く保つには、日ごろから骨にカルシウムを蓄えておく努力が必要です。
 このためには次の三つのことが大切です。

1)運動
 よく歩いて仕事をしたり、また、なにか好きな運動を進んでしましょう。手足や体を使うことで骨が弱くなるのを防ぎ、筋肉を強くし関節を柔らかく保つことができます。これはまた、転倒の予防にも役立ちます。

2)カルシウムの多い食事の摂取
 今の日本人の食事にはカルシウムが不足していると言われています。骨を作る材料になるカルシウムは牛乳、大豆製品、緑の野菜、小魚、ひじき、わかめなどに多く含まれております。牛乳ビン1本には約200ミリグラムのカルシウムがあり、いろいろな食べ物から合計して、1日600ミリグラム以上のカルシウムをとる必要があります。

3)適当な日光
 日光に当たると体の中でビタミンDが増えます。ビタミンDは腸からのカルシウムの吸収をよくします。あまり強く太陽に当たる必要はありません。

 以上のことに気をつけて日ごろから骨を強くしておくことが大切です。「予防にまさる治療な」と言われますが、骨粗鬆症においても同じことです。
 いつまでもしっかりした骨で元気で楽しい毎日を送りましょう。

◎多くの要因がからむ骨粗鬆症の予防、治療
 高齢化とともに増えている骨粗鬆症。骨密度が減って骨がもろくなり、折れやすくなる病気です。特に閉経期以降の女性に多い。予防にはカルシウムを取ることが大切というのが常識ですが、それだけでは十分ではありません。
 成人が1日に取るべきカルシウムの量は600mgであるのに対し、摂取量は約550mgと少ない。これが骨粗鬆症の一因と言われています。

・ビタミンK2が有効
 ところが北欧や米国では、乳製品をよく食べ、カルシウムを多く取っているのに、お年寄りが大たい骨(太ももの骨)を骨折する比率は、日本人より高い。例えばスウェーデン人の場合、カルシウム摂取量は日本人の倍以上の1200mgですが、骨折の頻度は約2.5倍に上ります。カルシウム不足だけでは、骨粗鬆症の原因を説明できないのです。
 最近、骨の健康を保つのに注目されているのが、納豆の効果です。厚生省研究班の調査によると、高齢の女性が大たい骨の付け根を骨折する割合は、北海道、東北、北関東で低く、西高東低の傾向があったそうです。骨折の頻度は、納豆を多く食べる関東で少なく、あまり食べない関西では特に多いという傾向があり、納豆の消費量が多い地域の方が、骨折の発生率が低いことがデータとして示されました。
 栄養面からみると納豆には、ビタミンK2が豊富に含まれています。調査にあたった折茂肇、大蔵省東京病院長によると、ビタミンK2は骨の形成を盛んにし、骨の破壊も抑えるそうです。骨折した人は、骨折していない人に比べ、血液中のビタミンK2濃度が低かったというデータもあるそうです。
 実際に骨粗鬆症の患者がビタミンK2を服用すると、服用しない場合より骨密度が高くなったそうです。折茂院長は「ビタミンK2が不足すると骨折しやすいと考えられる」と話す。
 緑茶を多く飲む人や、魚を食べる習慣のある人には骨折が少ないという報告もあり、骨粗鬆症には多くの栄養素がからみ合っていることがうかがえます。
 仮説ですが、「マグネシウムの不足が骨粗鬆症を引き起こす」という見方もあります。マグネシウムは心筋梗塞の予防にも重要で、玄米や大豆、海藻類などに多い。国立健康・栄養研究所の西牟田守・疲労生理研究室長によると、マグネシウムは骨に貯蔵されており、足りなくなると骨から補給されます。その際、カルシウムも一緒に骨から溶け出すためだという。
 イスラエルでは、マグネシウムの服用で骨密度が増えた、という報告もある。もちろん、カルシウムが不必要なわけではない。米国の研究では、高齢者でもカルシウムを服用した方が骨折の防止には良かった。ただ、その効果はわずかだった。

・骨を鍛える運動も
 骨を強くするのにカルシウム摂取が最も有効なのは、成長期の子供や若者です。十歳代は、カルシウム必要量が男子で900mg、女子は700mgで、成人より多く取ることが必要とされています。ところが実際の摂取量は、中学、高校生や二十代の方が、成人の平均より少ない。五島孜郎(しろう)・東京農業大教授(栄養生理化学)は「カルシウム不足は、中高年より若い世代の方が問題」と指摘する。
 カルシウムの吸収にはビタミンDが必要。ビタミンDは日光浴によって合成されるので、散歩も効果がある。また、運動しないと骨を作る働きが弱まり、骨折につながりやすい。栄養補助食品などでカルシウムを取るだけでは、丈夫な骨は作れない。いろいろなものを食べるバランスの取れた食事、運動が大切となる。


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