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更新日:
 2009年1月4日




・理想は「バナナ便」
 バナナのような形で、練り歯磨きほどの軟らかさというのが、理想的な便とされる。日本人は1回に200g近くを排便するが、硬過ぎず軟らか過ぎずの理想の便では、重量の比率で全体の75〜80%が水分だ。これ以上水分が増えると軟便あるいは下痢状となり、減ると硬め、場合によってはウサギのフンのようにコロコロになってしまう。
 「便の硬さは水分の含有量に左右されるが、単に水をたくさん飲んだからと言って、硬い便が軟らかくなるものではない」。北海道旭川市の「くにもと肛門(こうもん)科」の国本正雄院長が、こう指摘する。水分含有量は、便が大腸の中を通過する時間で増減するからだ。
 大腸に達した内容物は、半日から一日前後かけて通過する。通過速度には個人差があるが、通常より遅くなると、腸の壁に余計に水分を吸収されることになって、便は硬くなる。速ければ軟らかくなる。通過速度は腸の活動の具合によって変化する。腸の動きが鈍いと遅いし、活発過ぎれば速い。つまり便の硬さは水分の摂取量よりも、腸の活動状態を反映しているのだ。
 国本院長も「水を飲むことは、反射によって大腸の活動を引き起こし、排便を促すきっかけにはなるが、硬い便を軟らかくして通りを良くすることには直接結び付かない」と説明する。このほか、便の状態が「健康のバロメーター」となる場合は少なくない。
 表面を覆う粘液の様子もその一つ。便がたちまち水没する洋式トイレでは分かりにくいが、排便の際の「切れ」として実感できる。大腸は内容物の圧迫を受けると、粘液を分泌する。この粘液が潤滑油となって便の通りが良くなる。表面をコーティングするため、主にたんぱく質の消化・吸収の過程で発生すると考えられている発がん物質が、直接、腸壁と接触する可能性を少なくする働きもある。
 病原性大腸菌などによる食中毒で、食事をとっていなくても激しい下痢になるのは、毒素を追い出そうと盛んに粘液が分泌されるためだ。下痢止めの服用は、かえって毒素の排出を妨げるので禁物だ。
 健康な人でも、便に十分な容積があって腸壁に圧力をかけないと粘液は分泌されにくい。便の素材となる食物繊維をとることは、この点からも大切になる。
 においも大切な情報だ。強い腐敗臭は、腸の中でもっぱら人の害となる活動を行う「悪玉」の細菌が増えている証拠で、たいていはたんぱく質の取り過ぎ。逆に酸っぱいにおいの下痢は、糖質を発酵して生活する菌によって異常発酵が起きていると考えられる。小腸の調子が悪くて吸収力が低下し、糖質が大腸に過剰に流れ込んでいるのだ。
 泥状かほとんど水のような状態で、魚が腐ったような生臭いにおいがする便は要注意。血液が「悪玉菌」に分解された時に特有で、腸のどこかに出血がある可能性が高い。
 色についても、白っぽいと慢性すい炎や胆道閉塞(へいそく)、緑色に近いと院内感染で問題になっているメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などが心配されるが、たいていは便の色に変化が表れるとともにほかの症状も起きる。

・出血には要注意
 注意が必要なのは赤や黒の便。胃腸のどこかに出血がある可能性が高く、がんの恐れもある。ただし「真っ赤な鮮血で驚く人は多いが、痔(じ)によるケースがほとんど」と公立昭和病院(東京都小平市)の北條慶一院長。「むやみに心配する必要はないものの、出血には注意を怠れないので、医師の診察を受けた方がいい」と勧めている。
 もう一つ、目には見えないが、大切な情報が潜血。便に混じった微量の血液成分で、「便潜血検査」と呼ばれる化学的な分析で有無を判定する。大腸がんを早期発見する手掛かりとなり、1992年からは、市区町村が住民を対象に行うがん検診でも実施されている。



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