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 2009年1月2日





◎イレッサ訴訟、東京地裁は国の責任認定(2011年3月24日、読売新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)の服用後に副作用の重い肺炎で死亡した患者3人の遺族4人が、国と輸入販売元の製薬会社「アストラゼネカ」(大阪市)に計7700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が23日、東京地裁であった。
 松並重雄裁判長は「重い副作用が起きる可能性があると認識しながら、十分な措置を講じなかった」として国とア社の責任を認定し、患者2人の遺族2人に対して計1760万円を賠償するよう命じた。他の2人の請求は棄却した。国とア社は控訴を検討する。
 副作用で死亡した患者が昨年9月末現在で819人(厚生労働省調べ)に上るイレッサを巡る訴訟で、国の責任を認めた判決は初めて。大阪地裁は2月、国の責任は認めず、ア社のみに賠償を命じていた。
 東京地裁の訴訟では、国が2002年の承認にあたり、ア社に副作用の「間質性肺炎」について注意喚起するよう十分な指導をしていたかが主な争点となった。
 ア社は国の指導を受け、添付文書の「重大な副作用」欄で、重度の下痢や肝機能障害などに続く4番目に間質性肺炎の可能性を記載したが、判決は「警告欄に記載するか、他の副作用よりも前に記載するよう指導すべきだった」と指摘。ア社については、「安全性確保のための情報提供が不十分だった」と判断した。

◎薬害イレッサ、国の責任も認める、東京地裁、賠償命令(2011年3月23日、朝日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」の副作用をめぐり、東日本に住む死亡患者3人の遺族が、輸入を承認した国と販売元の「アストラゼネカ」(大阪市)に計7700万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(松並重雄裁判長)は23日、患者2人について国とア社の責任を認め、計1760万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
 薬害イレッサ訴訟は大阪地裁でも起こされ、ア社の責任だけを認める判決が2月に出ており、両地裁で判断が分かれた。ア社、国とも控訴を検討するという。
 死亡患者1人については、発売3カ月後に説明書の「警告」欄で副作用で死に至る可能性が記された後に服用したとして、請求は退けられた。
 東京地裁判決は、イレッサの薬としての有用性を認めたうえで、主な副作用と想定された「間質性肺炎」で死亡する可能性を国が承認時に認識していたと指摘した。そのうえでア社が発売当初、医師に向けた説明書の「重大な副作用」欄に、下痢などに続いて4番目に間質性肺炎を記載するにとどまっていた点に言及。警告欄を設けるか、副作用欄のより前の方に記載して死に至る可能性があると説明するよう、国が行政指導しなかったことについて、「許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠く」として国の責任を認めた。
 判決は「輸入業者などが営業上不利益な情報を進んで記載することは、十分は期待し難い」とも述べ、国の責務を強調した。
 ア社については、当初の説明書が医師に対する情報提供として不十分だったとして、製造物責任法の「指示・警告上の欠陥」を認定。死亡患者2人については、最初から死に至る可能性が明記されていれば服用を開始・継続することはなく、間質性肺炎で死亡することはなかったとして、説明書の不備と死亡の因果関係を認めた。
 イレッサは英国の製薬大手であるア社が開発し、日本は世界で初めて2002年7月に輸入を承認し、同月に販売が始まった。だが、肺障害による死亡例が相次ぎ、ア社は同年10月、国の指示に基づき、間質性肺炎について「警告」欄で注意喚起した。
 遺族らが大阪と東京で起こした訴訟では、両地裁が今年1月に和解を勧告。原告側は応じるとしたが、国とア社が拒否した。

◎イレッサ訴訟、原告、ア社側とも控訴、大阪地裁の判決不服(2011年3月12日、読売新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)服用後に副作用の間質性肺炎で死亡した患者の遺族らが、輸入を承認した国と輸入販売元の製薬会社「アストラゼネカ」(大阪市)に計約1億円の損害賠償を求めた訴訟で、原告側とア社は11日、2月25日の大阪地裁判決を不服としてそれぞれ控訴した。地裁判決は、ア社について「副作用の注意喚起が足りず、製造物責任(PL)法上の欠陥があった」と認定。原告11人のうち9人に対し計約6000万円を賠償するよう命じたが、国の責任は認めなかった。
 原告側は「被告側の反省がないまま訴訟を終わらせることはできない」と説明。ア社側は「この判決が確定すると、薬剤の開発に影響が大きく、将来に禍根を残す」としている。

◎医学会への文案、厚労省医薬系幹部ら関与、イレッサ訴訟(2011年3月10日、朝日新聞)
 イレッサ訴訟をめぐり、厚生労働省が和解勧告に疑念を唱える文案を作り、日本医学会会長に提供していた問題で、薬系技官のトップの審議官らが直接手渡していたことがわかった。医薬担当の幹部が関与していたことで、組織的に行った疑いが濃くなった。同省は検証チームを立ち上げ、世論誘導などの問題がなかったか調べる。
 厚労省の複数の幹部らによると、日本医学会の高久史麿会長に文案を手渡したのは、平山佳伸審議官と、医薬食品局の担当者の計2人。平山審議官は同局長に次ぐ立場にある。2002年当時、イレッサの承認審査を担当した審査チームの責任者だった。
 平山審議官は朝日新聞社の取材に対し、「答えられない」としている。
 これまでの厚労省の説明では、高久会長から見解を出したいと頼まれて、同局の職員が厚労省の考えを文書にまとめて提供したとしていた。一方、高久会長は「ある会議の場に厚労省の人が来た。声明を出して欲しいと言われ、文案を渡された」と話している。
 このため、同省は検証チームを立ち上げ、だれの判断、指示で文案がつくられ、医学界にどう働きかけたのか、世論を誘導するような問題はなかったのか、経緯などを調べている。

◎国が学会に和解批判文案提供=イレッサ訴訟で内部調査、厚労省(2011年3月3日、朝日新聞)
 肺がん治療薬イレッサの副作用をめぐる訴訟で、東京、大阪両地裁の和解勧告を批判する声明を出した日本医学会に対し、厚生労働省が事前に文案を作成し、提供していたことが分かった。
 3日に開かれた民主党の議連で、小林正夫厚労政務官が提供の事実を認め、自身をトップとする調査チームを立ち上げたことを明らかにした。
 問題となったのは、同学会が高久史麿会長名で1月24日に発表した声明。「(イレッサは)過去の薬害とは様相が異なる」「和解勧告に強い懸念をいだいています」など、国側の主張に沿った内容で、同省の文案と表現が同じ部分もあった。

◎イレッサ訴訟:原告側が控訴方針(2011年2月28日、毎日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」の副作用を巡る訴訟で、全国統一原告・弁護団は28日、厚生労働省で会見し、大阪地裁判決(25日)が添付文書(医師向けの説明書)に関する国の行政指導の不十分さを明言しながらも違法性を認めなかったのは不当だとして控訴する方針を明らかにした。また、問題の早期解決に向け原告側との直接協議を求める申し入れ書を同省と輸入販売元「アストラゼネカ」(大阪市)に提出した。
 申し入れ書などで原告弁護側は「不十分な行政指導のために指示・警告上の欠陥がある医薬品による被害が生じたことは判決によって明確になった」と指摘。(1)再発防止のための薬事法改正の検討(2)添付文書についての行政の権限と責任の明確化−−などを求めた。
 25日の大阪地裁判決は、イレッサには製造物責任法上の欠陥があるとしてア社に損害賠償の支払いを命じる一方、国の責任は否定し請求を棄却した。

◎イレッサ:「本当にがっかり」、原告、国の賠償棄却を批判(2011年2月26日、毎日新聞)
 「国の責任を認めなかったのは残念」「本当にがっかりした」。肺がん治療薬「イレッサ」の副作用で被害を受けたとして、患者と遺族が国と輸入販売元の「アストラゼネカ」(本社・大阪市)に損害賠償を求めた訴訟。原告らは、ア社への6050万円の賠償命令を評価する一方、国への賠償請求が棄却されたことに落胆と批判が相次いだ。
 判決後、原告・弁護団は大阪市内で会見。冒頭で永井弘二弁護士が「指示・警告上の欠陥があるとしながら、指導監督する国に責任がないというのでは、薬事行政への信頼を確保できない。強く批判したい」と声明を読み上げた。
 原告11人のうち唯一の生存原告、清水英喜さん(55)=三重県四日市市=は「製薬会社に対しては満足のいく判決。だが、国に責任がないというのは腹立たしい」と語った。国とア社に救済責任があるとした今年1月の和解勧告を「一歩進んでうれしく、安堵(あんど)の気持ちもあった」と振り返り、「がんと闘って10年になる。国は裁判で何も責任を問われなかったからいいということではなく、がん患者の目線で薬事行政を考えてほしい」と訴えた。
 31歳の娘を失った東京訴訟の原告で、東京、大阪両訴訟の統一原告団長、近沢昭雄さん(67)=さいたま市=も傍聴席で判決を聞いた。東京地裁判決は来月23日で、そこでも国の責任が認められなければ「娘にどう報告すればいいのか」と険しい表情。「納得できない抗がん剤治療で亡くなるような制度ではいけないと訴えてきた。娘も同じ思いのはずだ」と話した。
 判決は、副作用の危険を知らせる「緊急安全性情報」が出た02年10月15日以降は、ア社の責任を認めなかった。兵庫県内の原告の女性(48)の夫は、まさにこの日、イレッサの服用を決めた。副作用情報は知らないままで、約1カ月後に48歳で急死したが、賠償の対象からは外れた。女性は「致死的な副作用の説明は受けなかった」「緊急安全性情報が出たら、その日中に全国津々浦々に行き渡るというのは非現実的」とやり切れない心情をコメントの形で発表した。

◎イレッサ:国の責任認めず、販売元に賠償命令、大阪地裁(2011年2月25日、毎日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」の副作用を巡る訴訟で、患者1人と遺族10人の計11人が計1億450万円の損害賠償を国と輸入販売元「アストラゼネカ」(大阪市)に求めた訴訟の判決が25日、大阪地裁であった。重篤な副作用の間質性肺炎について、高橋文清裁判長は「承認(02年7月)直後の警告は不十分で、製品として欠陥があった」と指摘し、ア社に対し、原告9人について計6050万円の賠償を命じた。
 一方で「(ア社に)警告させる法的権限はなかった」として、国の責任を認めなかった。原告側は控訴を検討している。
 訴訟は、臨床試験で発症の可能性が判明していた間質性肺炎について、添付文書(医師向けの説明書)にどう記載し、警告すべきだったかが争点だった。
 承認当時の状況を、高橋裁判長は「ア社は副作用が少ないのを強調する一方、危険性を公表せず、副作用に警戒がないまま広く使用される危険性があった」と指摘。「致死的な間質性肺炎が発症する可能性を警告欄に記載して注意喚起すべきだった。製造物責任法上の欠陥があった」とした。
 国の対応には不十分さを指摘したが、「警告欄に書かなければ広く使用されて危険な状態になるとは認識できなかった」「行政指導で警告欄に書かせようとしても法的拘束力がなく、ア社が応じなかっただろう」と、国の責任は認めなかった。
 副作用死が相次ぎ、厚生労働省は02年10月に緊急安全性情報を出すように指示。ア社は添付文書の表紙の警告欄に記載することとし、高橋裁判長は欠陥がなくなったと判断。これ以降に服用して死亡した男性(当時48歳)の請求は棄却した。
 大阪地裁は今年1月、国とア社の救済責任を認めた和解勧告を行ったが、国とア社が和解を拒否していた。

・イレッサ
 英国の製薬会社「アストラゼネカ」が開発した肺がん治療薬。錠剤の経口薬で、従来の抗がん剤より副作用が少ないとされた。厚生労働省は02年7月、世界に先駆けて輸入承認したが、間質性肺炎などの副作用死が続出し、厚労省は同10月15日、緊急安全性情報を発表した。東京、大阪両地裁は今年1月、緊急安全性情報が出る前に服用した原告患者について、国とア社の救済責任を認めて和解勧告したが、国とア社は和解を拒否した。肺胞と肺胞の間の「間質」が炎症を起こすのが間質性肺炎で、一般的に症状は急性で重篤。10年9月末までの副作用死は819人。

◎イレッサ副作用、国の責任否定=製薬会社に6000万円賠償命令、大阪地裁(2011年2月25日、朝日新聞)
 副作用で800人以上が死亡した肺がん治療薬イレッサをめぐり、患者1人と死亡患者3人の遺族が、承認した国と輸入販売元のアストラゼネカ(大阪市)に計約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、大阪地裁であった。高橋文清裁判長は「副作用の注意喚起は不十分で、製造物責任法(PL法)上の欠陥があった」としてア社に約6000万円の支払いを命じた。国への請求は棄却した。
 イレッサの副作用をめぐる司法判断は初めて。原告側とア社は控訴の方向で検討する。
 最大の争点は、2002年7月の承認、発売当時、医療機関向けの添付文書で副作用の注意喚起が十分だったかどうかだった。
 高橋裁判長は、イレッサの有効性を認める一方、臨床試験の結果などから死亡の可能性がある間質性肺炎が起きる危険を認識できたと指摘。「ア社は添付文書の警告欄で間質性肺炎の注意喚起を図るべきで、副作用欄の4番目の記載では抗がん剤としての安全性を欠き、PL法上の指示・警告上の欠陥があった」と述べた。
 一方、警告欄への記載を行政指導しなかった国の対応を「規制権限の行使が万全ではなかった」としたが、「死亡を含む重い副作用の危険が具体化すると高い可能性では認識できず、当時の医学、薬学的知見の下では著しく合理性を欠くとは言えない」として、責任を否定した。
 その上で、ア社が緊急安全性情報を出し、添付文書に警告欄を設けた02年10月15日までに服用した患者3人について、同社に賠償を命じた。同日以降に服用を始めた1人については賠償責任を否定し、遺族2人の請求を棄却した。

◎イレッサ訴訟:国が和解勧告懸念の声明文案、医学会に提供(2011年2月24日、毎日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」の副作用被害で患者と遺族が国と輸入販売元のアストラゼネカ社(大阪市)に損害賠償を求めた訴訟を巡り、日本医学会として東京、大阪両地裁の和解勧告に懸念を表明する内容の声明文案を厚生労働省が作成し、同学会に提供していたことが23日分かった。文案は和解勧告について「イレッサのみならず、今後の日本の医療の進展を阻むような内容が示されており、裁判所の判断に懸念を禁じ得ません」と国の主張に沿った内容で、専門家からも厚労省の対応に批判の声が出ている。
 毎日新聞が入手したのは、厚労省が作成した「肺がん治療薬イレッサ(の訴訟にかかる和解勧告)に対する声明文」。文案では「(和解勧告は)医薬品の開発期間がむやみに延長し、必要としているがん患者のアクセスを阻害することになりかねない」などと指摘。「医薬品にはリスクはあり、それを理解した上で医師は医薬品を使用している。(和解勧告の)決定は、医師の役割を軽んじるものだ」として懸念を示す内容になっている。
 厚労省によると、東京、大阪両地裁が「患者と遺族の救済を図る責任がある」として和解勧告を出した先月7日以降に文書を作成し、日本医学会の高久史麿会長に提供した。その後高久会長が日本医学会のホームページ(同24日付)などで、和解勧告に懸念を表明。政府は同28日、和解拒否を両地裁に伝えた。同省医薬食品局の佐藤大作・安全対策課安全使用推進室長は「日本医学会の会長が和解勧告に懸念を表明する意向であると聞いたため、サービスとして提供しただけ」と釈明した。
 一方、毎日新聞の取材に対し、高久会長は「全く要請していないのに厚労省が文書を持ってきた。私の見解は独自に作成しており、(産科で導入されているような)無過失補償制度を作る必要性を強調したものになっている」とコメントした。

◎イレッサ訴訟:副作用「警告」争点 大阪地裁で25日判決(2011年2月24日、毎日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」の副作用を巡り、患者や遺族の計11人が、国と輸入販売元「アストラゼネカ」に計1億450万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、大阪地裁で言い渡される。国とア社は臨床試験中、副作用の「間質性肺炎」の発症例を把握していたが、最初の添付文書(医師向けの説明書)で警告欄に記載せず、被害は拡大した。新薬の不利益情報の取り扱いについて、裁判所の判断が注目される。

・知っていた発症例
 臨床試験などイレッサの開発に関わった専門医はア社提供の雑誌などで「副作用が少なく効果が大きい」と服用を薦めた。新聞でも報道され、患者から「夢の薬」と期待された。
 一方、国は承認審査中に、国内の臨床試験(治験)で副作用として3例の間質性肺炎が起きたのを把握しており、治験外の死亡例も報告されていた。しかし、約5カ月間の審査で輸入を承認。大阪地裁に出廷した当時の国の審査担当者は「ここまで急性の肺障害が起きるとは予測できなかった」と証言した。

・「警告は不十分」
 間質性肺炎は初版の添付文書で、下痢、肝障害に続いて2ページ目の4番目に記載され、使用する医師を限定しないなどほとんど制限なく販売された。厚労省は承認から3カ月後の02年10月15日、13人が副作用死したとして緊急安全性情報を発表。添付文書は間質性肺炎を表紙の警告欄に赤字で記載する形に改められた。
 大阪地裁の和解所見(今年1月)は「流布された情報と医師の認識を考慮すれば、副作用に無防備な状態で広く使用される危険性があった」と指摘した。

・過去の教訓
 93年9月に発売された帯状疱疹(ほうしん)の治療薬「ソリブジン」では、一部抗がん剤との併用による副作用死が続出。治験中に死亡例が出たが、添付文書で十分に警告されなかった。一方、イレッサに類似する肺がん治療薬「タルセバ」は約1年半の審査を経て、07年10月に承認。使用する医師や施設を限定し、全例調査も義務付けられた。

◎イレッサ訴訟:国が和解拒否、菅首相「時間かけ結論」(2011年1月29日、毎日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」の副作用被害を巡り、患者と遺族が国と輸入販売元のアストラゼネカ(大阪市)に損害賠償を求めた訴訟で、政府は28日、国と同社に和解金の支払いなどを求めた東京・大阪両地裁の和解勧告を拒否することを決め、両地裁に伝えた。原告側は受け入れを決めていたが、国とア社が拒否したため和解協議には入れず、大阪地裁は2月25日、東京地裁は3月23日に判決を言い渡すことになった。
 菅直人首相は28日夕、記者団に「副作用の問題はあるが、新しいがん治療薬を使いたい方もおられる。もう少し時間をかけて結論を出したい」と話した。
 厚生労働省が和解勧告で最も問題としたのは、「治験外の副作用報告をもっと慎重に検討し承認すべきだった」と指摘した点。病状が悪く治験に参加できない患者に未承認薬を投与する治験外使用の症例をより厳格に審査すべきだとなれば、患者が抗がん剤を使う機会を奪うことになるとした。
 一方、原告が求めた抗がん剤による副作用被害の救済制度創設などは、具体的検討を始める意向を示した。
 両地裁は和解勧告で、イレッサの副作用について、発売当初の添付文書(医師向けの説明書)などでは注意喚起が不十分だったと指摘。販売開始の02年7月から、ア社が医療機関に「緊急安全性情報」を出した02年10月15日までに投与を受けた患者について、国とア社に救済責任があるとの見解を示した。
 訴訟は患者1人と死亡した6人の遺族が04年に提訴。原告側が10年11月、両地裁に和解勧告を求める上申書を提出していた。

・イレッサ
 進行した肺がん患者に使用される抗がん剤。英アストラゼネカ社が開発し、02年7月、承認申請からわずか5カ月余りで日本が世界に先駆けて輸入販売を承認した。がん細胞だけを狙って増殖を抑え、副作用の少ない新しいタイプの抗がん剤として期待されたが、販売直後から重い間質性肺炎を発症する患者が相次いだ。10年9月末までに、副作用により819人の死亡が報告された。現在は使用法が厳格化され副作用は減少し、09年は約1万6000人の患者が使用した。

◎イレッサ訴訟、国が和解勧告拒否の方針(2011年1月25日、読売新聞)
 肺がん治療薬イレッサ(一般名・ゲフィチニブ)をめぐる訴訟で、政府は24日、国の責任を認めた東京・大阪両地裁の和解勧告に応じない方針を固めた。
 「イレッサの承認過程に問題はなく、副作用の危険性については適切な注意喚起を行った」との理由からだ。和解は、新薬導入をめぐる日本国内での承認体制の在り方など、薬事行政への影響が大きすぎると判断したものだ。政府はこの方針を、両地裁に対する回答期限前日の27日をメドに正式表明する。
 この問題で、政府内では枝野官房長官と細川厚生労働相、江田法相が協議を重ねてきた。その結果、政府内では、「副作用に関する情報提供は適切だった。和解を受け入れれば、新薬の承認の期間を短縮する流れにある今後の承認体制に大きな影響がある」(厚労省幹部)との意見が強まった。細川厚労相も「医薬品行政の根幹の問題であり、慎重に検討する必要がある」と述べていた。
 両地裁は今月7日に示した和解へ向けた基本的な考え方(所見)で、厚労省が輸入販売元の製薬会社「アストラゼネカ」(大阪市)に対し、緊急安全性情報を出すよう指示した2002年10月15日までにイレッサを投与され、副作用の間質性肺炎を発症した患者5人について、「国と同社に救済する責任がある」と結論づけた。
 その理由として、イレッサは承認以前から「副作用が少ない薬」という認識が一般に広まっていた一方で、間質性肺炎による重篤な副作用を引き起こす可能性を示した試験結果があったことを指摘。イレッサの添付文書では、間質性肺炎が「重大な副作用」の4番目に記載されていたことなどについて、情報提供が不十分だったとした。和解協議に応じるかどうかに対する回答は28日までに求めており、原告側は10日に受け入れを表明した。
 ただ、政府・民主党内には「死亡患者やその遺族に対しては、何らかの救済策を検討すべきだ」との意見もあり、今後、調整を進める。

◎輸入販売社が和解勧告を拒否、イレッサ副作用訴訟(2011年1月25日、朝日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」の副作用をめぐる訴訟で、国とともに被告になっている輸入販売会社アストラゼネカ(大阪市)は24日、大阪、東京両地裁の和解勧告を受け入れないと両地裁に回答した。両地裁は大阪でもともと判決が予定されていた2月25日までに和解が成立しなければ、当初の予定通り判決を言い渡す方針で、このままいけばア社とは和解協議に入らず、判決を迎える見通しになった。
 両地裁は1月28日までの回答を求めており、国は判断を示していない。厚生労働省の担当者は24日夜、「関係省庁と引き続き協議した上で慎重に検討したい」と話した。
 副作用の間質性肺炎で患者が死亡したと訴える遺族ら原告側はすでに勧告受け入れを表明しており、ア社の対応に「社会的非難に値する」と反発。「和解協議が打ちきりになるわけではない。国が和解の席に着けばア社も無視できない」として、国に勧告に応じるよう求め、ア社にも再考を求める考えを示した。
 両地裁が7日に出した和解勧告は国とア社に救済責任があるとしたうえで、「(医師向けの)添付文書に副作用の十分な情報が記載されていなかった」と指摘した。
 大阪市内で24日に記者会見したア社の代理人は「法的責任があると(勧告で)指摘されたと思っていない」と説明。当初から添付文書に重大な副作用として間質性肺炎を記載したとして、「どうすべきだったかきちんと司法判断をもらうべきだと考えた」と判決を求める理由を述べた。
 訴訟では原告計15人が1億8150万円の損害賠償を求めてきた。

◎イレッサ和解勧告「治験以外の副作用、検討必要だった」(2011年1月14日、朝日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」訴訟の和解勧告で、東京地裁が、国に対し、個人輸入などで使った患者の副作用情報も慎重に検討して、治療が難しい肺炎の副作用が起きうると強く注意喚起すべきだったとの認識を示していることがわかった。厚生労働省内では「不確実な情報でも確認を求められ、新薬の審査期間が長くなるなどの影響が出かねない」との声が出ている。
 7日に示された和解勧告では、原告側から要旨しか公表されていなかった。
 朝日新聞が入手した「和解勧告及び所見」では、薬として販売承認を得るための国内臨床試験(治験)以外で発生した副作用情報の扱いについて、見解を示していた。治験以外の、個人輸入などによる副作用情報も、国が慎重に検討していれば、間質性肺炎で死にいたる危険性も「読み取ることができなかったとはいえない」と指摘。医師向けの薬の説明文(添付文書)で、注意喚起に不備があったとした。
 イレッサ承認時の添付文書の「重大な副作用」欄では、間質性肺炎は重度の下痢、肝機能障害などに続いて、最後の4番目に記されていた。この点について「重要でないと読まれる可能性があった」と記述。最初に記した上で「致死的になりうることを記載するよう行政指導するべきだった」と指摘、国の責任に言及している。
 大阪地裁が東京地裁と同時に示した和解勧告でも、国は、治験以外でも間質性肺炎の情報が複数あったことなどから、「重大な副作用」欄への記載を指導するだけでなく、「より慎重な対応をとり得たのではないか」としている。
 そのうえで、両地裁は、イレッサの服用で間質性肺炎を起こした患者に対し、国や輸入販売元のアストラゼネカは救済責任があるとして、和解金の支払いを求めた。
 厚労省は和解受け入れに慎重で、最終的な結論は14日に改造される内閣の判断に委ねられる。

◎イレッサ副作用被害原告、和解協議受け入れ上申書を提出(2011年1月12日、朝日新聞)
 肺がん用治療薬「イレッサ」の副作用をめぐる訴訟で、国と輸入販売元のアストラゼネカ(大阪市)を相手に計約1億8千万円の損害賠償を求めて東京、大阪両地裁で争っている原告側が12日、両地裁による7日の和解勧告を受け入れ、和解協議に応じるとした上申書をそれぞれ提出した。
 両地裁は勧告で、国と会社に救済責任があるとし、副作用による間質性肺炎を発症した患者に和解金を支払うなどとする見解を示した。原告弁護団によると、上申書では(1)計15人の原告の救済(2)原告以外の患者らを救済する枠組みの創設――なども求めた。両地裁は28日までの回答を求めているが、被告側は12日時点で態度を表明していない。

◎イレッサ副作用被害訴訟、原告団が和解協議入り決定(2011年1月10日、朝日新聞)
 肺がん用治療薬「イレッサ」の副作用被害をめぐる訴訟で、大阪、東京両地裁で係争中の原告団が10日、京都市内で合同の総会を開いた。7日に両地裁が国などの責任を指摘し、和解を勧告したことを受け、和解協議入りすることを正式に決めた。両地裁に12日、書面で伝える。
 原告団は、患者1人とイレッサを使って亡くなった6人の遺族14人の計15人で構成。うち7人が出席し、被告側に対し、副作用被害の責任を認めて謝罪する▽被害救済制度を創設する▽イレッサの使用条件を厳しくする――ことなどを求めていくと確認した。
 また、勧告が、和解金の支払い対象について、販売企業が緊急安全性情報を出した2002年10月15日までにイレッサを使い、副作用で間質性肺炎を発症した患者に限定した点を問題視。亡くなった6人のうち2人は同日以降にイレッサを使ったため対象外となるが、引き続き原告全員の救済を目指すことも決めた。

◎イレッサ副作用、国と輸入業者に責任、2地裁が見解(2011年1月7日、朝日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)の副作用で被害を受けたとして、患者や遺族らが、輸入を承認した国と輸入販売元のアストラゼネカ(大阪市)に損害賠償を求めた訴訟で、東京・大阪両地裁は7日、原告、被告双方に和解を勧告した。原告側によると、国と会社に対して救済する責任があるとし、副作用による間質性肺炎を発症した患者に、和解金を支払うなどとする見解を示した。
 6年半に及ぶ訴訟で和解勧告が出たのは初めて。両地裁が協議した上で、同時に勧告を示した。医薬品の安全性をめぐり説明書(添付文書)の記載の徹底を求める裁判所の見方が示されたことで薬事行政に影響する可能性がある。
 原告側によると、東京、大阪両地裁が示した勧告では、国と企業に対し、間質性肺炎への注意を企業が医療機関に促す「緊急安全性情報」が出された2002年10月15日までにイレッサを使い、間質性肺炎を起こした患者の救済を図る責任があるとした。10月15日は承認から3カ月後。イレッサの添付文書には副作用に関する十分な記載はされていなかったと指摘した。
 間質性肺炎は当初、2ページ目にあった重大な副作用欄に入れていた。緊急安全性情報が出された時に、冒頭ですぐわかるよう赤字の警告欄を設け、そこに記載した。
 原告弁護団によると、両地裁は28日までに勧告に回答をするよう求めているという。
 原告側は「国、企業の責任を明確に示した画期的な内容」と評価。原告代表の近沢昭雄さん(67)は「和解勧告が出てほっとしている。被害救済を含めて話し合いをしたい」と話した。
 一方、厚生労働省の担当室は「これまで国としては承認や安全対策に違法性はなかったと主張し、そのスタンスが基本になる」とのコメントを発表。アストラゼネカ広報部は「今後の対応については、勧告内容を吟味した上で決定したい」というコメントを発表した。
 イレッサ訴訟は両地裁で患者1人と遺族14人が計1億8150万円の損害賠償を求めている。患者らは04年、「国が有効性や副作用の危険性を十分検討せずに承認し、アストラゼネカ社も致死的な副作用を警告せずに販売した」として提訴。国は「十分な審査に基づき、間質性肺炎を含む副作用を踏まえても有効性・有用性があるとして承認された」と主張してきた。
 ア社も「十分な検討をした結果、添付文書で適切な注意喚起をしている」などと訴えてきた。
 原告側は昨夏に結審後、11月に和解勧告を求める上申書を両地裁に提出した。大阪地裁は2月25日、東京地裁は3月23日に判決を言い渡す予定だ。(月舘彩子)

・イレッサ
 進行した肺がん患者に使われる抗がん剤。製薬大手の英アストラゼネカが開発し、02年7月に世界で初めて日本で承認された。強い副作用が出る従来の抗がん剤と違い、がん細胞だけを狙って増殖を抑え、副作用の軽減を目指した「分子標的薬」と呼ばれる新しいタイプの薬。しかし、発売直後から重い間質性肺炎など副作用報告が相次いだ。今は、遺伝子の特徴などをもとに効果が期待できる患者に使う診療指針ができている。
 03年に承認した米国は約2年後の05年に新規の患者への使用を禁止。欧州では遺伝子の特徴から使える患者を限定している。
 昨年9月末までに、イレッサを使い間質性肺炎を発症した819人の死亡が医療機関から厚労省に報告された。勧告で和解金を求められた承認3カ月以内に飲み始めたかは不明。副作用と確定するには詳細な評価も必要になる。

◎「イレッサ」訴訟、原告が和解勧告求める上申書(2010年11月26日、読売新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)の服用後に死亡した患者の遺族ら計15人が、「重い副作用の危険性を認識しながら輸入を申請し、国もずさんな審査で承認した」として、輸入販売元の製薬会社「アストラゼネカ」(大阪市)と国に計約1億8000万円の損害賠償を求めた訴訟で、原告側は26日午後、裁判所に和解勧告をするよう求める上申書を大阪、東京両地裁に提出する。
 訴訟はすでに結審し、大阪では来年2月25日に判決期日が指定されている。原告弁護団は、副作用による死者は800人以上とし、「訴訟に至っていない遺族や患者も含めた全面解決のためには、和解という手段で幅広い救済を実現するのが望ましい」としている。

◎イレッサ訴訟、原告団が和解勧告求める上申書提出へ(2010年11月26日、朝日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」の副作用で被害を受けたとして、患者1人と遺族14人が輸入を承認した国と輸入販売元のアストラゼネカ(大阪市)に計1億8150万円の損害賠償を求めた訴訟で、原告団は26日、裁判所が和解勧告を出すよう求める上申書を大阪、東京の両地裁に提出することを決めた。同日午後にも両地裁に提出する予定。
 抗がん剤イレッサ(一般名・ゲフィチニブ)は2002年、世界で初めて日本で承認・販売された。重い肺炎を起こす報告が相次ぎ、10年3月までに副作用によるとされる810人の死亡が報告されている。
 患者らは04年、「国が有効性や副作用の危険性を十分検討せずに承認。アストラゼネカ社も致死的な副作用を警告せずに販売した」として損害賠償を求め大阪、東京両地裁に提訴。被告側は「十分な審査に基づいて承認された。適切な安全対策を取っている」などと主張している。
 上申書には、被害者への謝罪や、抗がん剤の副作用死に対する救済制度の創設の要求も盛り込まれるという。
 訴訟は、大阪地裁で今年7月、東京地裁は8月に結審し、大阪地裁では来年2月25日に判決が言い渡される予定になっている。

◎抗がん剤使用の5人死亡、厚労省が注意喚起(2010年11月25日、朝日新聞)
 抗がん剤の「イレッサ」と「タルセバ」を使った計5人の患者が肝不全や腎不全で死亡していたことが分かり、厚生労働省は使用上の注意を改めるよう製薬会社に指示した。
 厚労省によると、2007年4月〜今年7月、イレッサを使った3人に肝不全が起こり、副作用の可能性が否定できないと報告があった。そのうち80歳代の男性1人が使用の14日後に肝不全になり、2日後に死亡したという。胃や腸などに穴が開いたり、出血したりするケースも計7人から報告があった。
 07年12月〜今年5月には、イレッサと同様の作用を持つタルセバを使用した肺がん患者7人に、腎不全などの腎機能障害が起きたとの報告があった。そのうち70〜80歳代の男女3人が死亡した。それとは別に消化管潰瘍(かいよう)と消化管出血を併発した患者7人の報告があり、うち70歳代の男性1人が死亡したという。

◎抗がん剤イレッサ、副作用懸念「患者限定を」 市民団体(2010年11月11日、朝日新聞)
 肺がんの抗がん剤「イレッサ」について、「薬害オンブズパースン会議」など四つの市民団体は10日、副作用の被害を防ぐため、使用できる患者を限定するよう求める意見書を厚生労働省に提出した。
 意見書では、がんの増殖にかかわる遺伝子(EGFR)に変異がある患者に対しては一定の効果があるという臨床試験の結果が出てきたことや、海外ではこうした患者に使用が限定されていることから、使用できる患者を制限すべきだとしている。また、イレッサを使う患者の全例登録を義務づけ、有効性と安全性の検討も求めた。
 2002年に市販され、副作用の問題も起きたイレッサは、安全性などを再検討する再審査の時期を迎えている。

◎イレッサ、初期治療にも、肺癌学会が指針改定(2010年11月10日、朝日新聞)
 肺がん患者で抗がん剤「イレッサ」を初期治療で使えるように、日本肺癌学会が診療指針を改定した。肺がん患者の約3割が対象になるとみられる。これまでは他の抗がん剤が効かなくなった後の2番手以降の薬だったが、早くから使った方が治療成績がいいことがわかったという。
 肺がんによる死者は年間約7万人で、がんの中で最も多い。イレッサを使うのは、手術が難しいほど進行した非小細胞肺がんの患者が対象。遺伝子検査で、がんの増殖にかかわる遺伝子(EGFR)に変異があると確かめられた場合、最初から使うことを推奨した。変異がある人は肺がん患者の3割ほどで、50歳以下の女性では半数に上る。
 イレッサは2002年の発売当初、副作用の間質性肺炎による死亡者が相次ぎ、社会問題化した。現在は、抗がん剤治療に十分な経験のある医師が使うようになり、副作用による死亡は減っている。遺伝子変異がある患者に最初からイレッサを使った方が、腫瘍の安定している期間が5カ月ほど長かったとの臨床試験の結果も出ており、適切な使い方が分かってきたという。

◎イレッサ東京訴訟が結審、原告側「被告は危険性を認識」(2010年8月25日、産経新聞)
 副作用で多数の死者が出ている肺がん治療薬「イレッサ」をめぐり、死亡した患者の遺族計4人が輸入を承認した国と販売元の「アストラゼネカ」(大阪市)を相手取り、計約7700万円の損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が25日、東京地裁(松並重雄裁判長)であった。原告側は「被告は危険性を認識しながら販売し被害を拡大させた」と主張して結審した。判決期日は追って指定される。
 原告側は「臨床試験など副作用による死亡が複数あったのに、国は十分な検討をせず承認した。ア社は承認前から『副作用が少ない』などと宣伝、販売した」と指摘。市販後も医療機関への警告を怠ったなどと批判した。
 これに対し、国などは、「国内臨床試験での死亡例はなかった。販売後も危険性が判明した際に早期に適切な対応をしてきた」などと反論した。
 使用開始当初に死亡者が集中した理由についてア社は、使用する中で安全な使用法が広がる「育薬のため」と説明、原告の反発をかった。
 薬害イレッサ訴訟は、16年7月に大阪地裁、同年11月に東京地裁で提訴され、大阪地裁は来年2月25日に判決が言い渡される。
 これまでの裁判の争点はイレッサの有効性と承認後の国やア社の安全対策など。有効性をめぐっては「臨床試験などで有効性を証明するデータはない」と主張する原告に対し、国側は「標準的な治療薬よりも腫(しゅ)瘍(よう)縮小効果があった」など反論している。

・イレッサ
 一般名はゲフィチニブ。再発したり手術が不可能な肺がんの治療薬として英アストラゼネカが開発。日本では薬事法の優先審査規定に適用され、14年7月、申請から約5カ月のスピード審査で世界に先駆けて承認。肺がんの原因遺伝子「EGFR」に作用する分子標的薬で、副作用が少ない画期的な新薬として期待された。販売から半年で間質性肺炎とみられる副作用による180人の死亡例が報告。これまでの死亡例は810人にのぼる。

◎理研がシンガポールで臨床研究、「イレッサ」有効性確認へ(2007年5月28日、読売新聞)
 理化学研究所は28日、シンガポール国立大学病院と共同で、抗がん剤の「ゲフィチニブ」(商品名イレッサ)が効くかどうかを、患者の遺伝子型を調べ、素早く判別できる新手法の本格的な臨床研究を近く始めると発表した。
 中国系やインド系、マレー系など多くの民族が住む同国で、新手法の有効性を確認するのが狙い。
 「SMAP法」と呼ばれる新手法は、同研究所ゲノム科学総合研究センターの林崎良英プロジェクトディレクターらが開発した。微量の血液や組織片(がん細胞など)から取り出した遺伝子を高速で増やし、従来1時間半〜数日程度かかっていた遺伝子診断を30分程度で完了できる。
 肺がん治療薬のイレッサは、特定の遺伝子に変異ある患者には非常に有効だが、変異のない患者には効かず、重い肺炎を起こす副作用が問題となっている。新手法を使えば、肺がんの手術中に、採取したがん細胞を遺伝子解析し、イレッサを投与すべきかどうかを診断するといった、効率的な治療が可能になる。
 シンガポールでは今後1年間で100人の患者を対象に臨床研究を行う予定。成功すれば本格的な臨床試験に切り替え、米食品医薬品局(FDA)による承認も視野に入れるという。

◎イレッサ:肺がん抗がん剤、承認の見直し申し入れ−−薬害被害者の会(2007年2月8日、毎日新聞)
 肺がんの抗がん剤「イレッサ」について、副作用の被害者らで作る「イレッサ薬害被害者の会」(近澤昭雄代表)は7日、厚生労働省に対して承認の見直しなどを求める申し入れを改めて行った。申し入れ書では、臨床試験を行っていた輸入販売元のアストラゼネカ社が既存の抗がん剤と比べ生存率が下回るなど有効性を証明できなかったことをあげた。

◎イレッサ、優位と言えず、輸入元が効果を臨床比較(2007年2月2日、朝日新聞)
 副作用死を多く出した肺がん用の抗がん剤イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の輸入販売元のアストラゼネカ社(大阪市)は1日、別の抗がん剤タキソテール(一般名ドセタキセル)と比べ、イレッサの延命効果がすぐれているとはいえない、との調査結果を厚生労働省に報告した。同省は「タキソテールに優先してイレッサを使う根拠は一般的にはない」と同社から医薬関係者に情報提供するように求めた。
 イレッサの02年の承認時に、有効性と安全性を確かめる市販後の臨床試験が義務づけられていた。このため03年9月〜06年1月、全国50施設の肺がん患者490人を対象に調査が行われた。
 イレッサとタキソテールを使ったそれぞれのグループを比べると、治療開始後1年の生存率はタキソテールが54%で、イレッサは48%だった。
 イレッサについては「喫煙歴のない東洋人の女性で腺がんの患者には特に効果が高い」との報告もあり、同省は今後、患者の性や治療歴などによる効果の差について、詳しい調査を求める。
 間質性肺炎などイレッサの副作用報告は06年9月までに1708件あり、うち676人が亡くなっている。

◎イレッサ:情報開示請求退ける、原告敗訴判決、東京地裁(2007年1月26日、毎日新聞)
 民間の医薬品監視機関「薬害オンブズパースン会議」など3団体が、抗がん剤「イレッサ」の臨床試験データなどの開示を求めた訴訟で、東京地裁(大門匡裁判長)は26日、ほぼすべての請求を退ける原告敗訴の判決を言い渡した。原告側は控訴の方針。
 600人以上が副作用死したイレッサが、国に承認された経緯を解明するため情報公開請求したが、ほぼすべてが黒塗りにされたため提訴していた。判決は「開示すると他の会社が同様の薬を承認申請する際、データを利用し競争を害する」などと判断。治験実施日のみ開示を認め、治験が行われた場所や被験者の年齢・性別、データなどほぼすべてを非開示とした厚生労働相の決定を妥当とした。【北川仁士】

◎イレッサ:副作用1631人に 643人が死亡、厚労省(2006年4月27日、毎日新聞)
 副作用が問題となっている肺がん治療薬「ゲフィチニブ」(商品名・イレッサ)について、厚生労働省は26日、販売を開始した02年7月から今年3月末までの副作用結果を公表した。間質性肺炎や急性肺障害の副作用を起こした人は1631人に上り、643人が死亡した。欧米ではイレッサの使用禁止が広がっているが、厚労省は、製薬会社が実施した臨床試験で、東洋人に関する効果が認められたと結論付け、使用を継続している。

◎抗がん剤イレッサ、非喫煙者の延命効果は喫煙者の3倍(2006年2月28日、読売新聞)
 副作用が問題となっている肺がん治療薬「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)が効くかどうかを決める遺伝子の変異を森口尚史・東大先端科学技術研究センター助教授らがほぼ特定した。
 延命効果を期待できる患者は、この遺伝子変異がある人か、非喫煙者に絞られるという。無駄な投薬の回避につながる可能性がある。英医学誌「ランセット」に発表した。
 同センターとソウル大医学部、東京医科歯科大の共同研究で、対象患者は、韓国人、中国人、台湾人計135人。腺がんなどの非小細胞肺がんの進行期にあって、他の薬物療法で効果が得られずにイレッサを使った患者を抽出し、個々のデータを詳しく分析した。
 注目したのは、細胞の増殖などを制御するL858Rと呼ばれるたんぱく質の遺伝子の変異。この変異がある患者の平均生存期間は22か月で、変異がない患者の9.3か月と比べて1年以上の延命効果が確認された。非喫煙者の場合は平均生存期間は24.3か月で、喫煙者の7.4か月より3倍以上長かった。
 森口助教授によると、L858Rの変異は、喫煙者にはほとんどみられない。喫煙歴のある非小細胞肺がんの患者に過剰に現れるAKR1B10という分子が遺伝子変異を抑え、イレッサの効果を激減させている可能性もあるという。

◎イレッサ治療効果、たんぱく質から予測(2005年9月21日、日本経済新聞)
 国立がんセンターと日本医科大学は肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)の効果を患者から採取したがん組織に含まれるたんぱく質で予測する手法を開発した。手術後に再発した肺がん患者を対象に新手法を試した結果、治療効果が見込める患者を8割の確率で予測できた。今後、臨床研究に取り組み、医療現場で使えるかどうかを確かめる。
 がんセンターの近藤各・部長らは手術後にがんを再発したため、イレッサで治療した患者のたんぱく質を詳細に調べた。がんが縮小した患者31人と大きくなった患者16人の組織に含まれるたんぱく質を比べたところ、9種類のたんぱく質の量を調べれば、治療効果を予測できることが分かった。

◎イレッサ効かない人、血液で判定可能に(2005年9月13日、読売新聞)
 肺がん治療薬「ゲフィチニブ」(商品名イレッサ)が効くかどうかを血液で簡単に判定する診断法を、東大医科学研究所と広島大の研究グループが開発した。14日から札幌市で開かれる日本癌(がん)学会で報告する。
 ゲフィチニブは、治療が難しい進行した非小細胞肺がんの患者の一部に大きな効果がみられる一方、約5%に間質性肺炎などの重い副作用が起きたことが報告されている。このため、薬が効く見込みの薄い患者への投与を避けることが望ましく、簡単な診断法の普及が望まれていた。
 研究グループは、非小細胞肺がんの細胞から分泌される2種類のたんぱく質に注目。ゲフィチニブを使っている非小細胞肺がんの患者50人について、薬の効果とこれらの血中量との関係を調べた。
 その結果、二つのうち一つでも陽性と判定された22人のうち19人(86%)は、薬を使っても肺がんが悪化した。どちらも陰性と判定された28人中17人(61%)は、がんの進行が止まったり、がんが小さくなったりする薬の効果が表れた。
 これまでの検査法は、がん細胞を患者から直接取って遺伝子を調べるため、患者の肉体的な負担が大きいうえ、遺伝子を調べる特別な装置が必要だった。新しい診断法は、患者から血液を採取するだけで済み、検査部のある病院なら早ければ半日で判定が可能という。
 現在は神奈川県立がんセンターと協力して、他のたんぱく質を組み合わせるより精度の高い診断法の確立をめざしており、数年以内に実用化させる方針。

◎肺がん治療薬イレッサの効果予測、血液診断の精度9割(2005年9月11日、日本経済新聞)
 副作用が問題になっている肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)の治療効果の有無を血液診断により9割近い精度で予測することに、東京大学などの研究グループが成功した。効果が期待できないのに副作用で苦しむ患者を減らすのに役立つ。
 研究成果は14日から札幌市で開かれる日本癌(がん)学会で発表する。イレッサはがん増殖を防ぐ薬。一部で重い肺障害などの副作用で亡くなる患者が相次いだ。

◎イレッサ:胆のう・胆管がんに効果、マウスで確認(2005年8月1日、毎日新聞)
 肺がん治療薬の「イレッサ(商品名・ゲフィチニブ)」が、難治性がんの胆のうがんや胆管がんに効果を示す可能性があることが、筑波大と米テキサス大の研究で分かった。ヒトの胆のう・胆管がんに近いがんを発症したマウスに投与したところ、多くの例でがん細胞が消失したという。1日付の米国臨床がん研究専門誌に発表した。
 研究チームは、胆のう・胆管がんを発症するよう遺伝子操作したマウスを使い、生後2カ月から1カ月間、薬剤をえさに混ぜて食べさせ、がん細胞の様子を調べた。この結果、薬を使わなかったグループでは72%からがん細胞が見つかったが、イレッサを投与したグループでは17%にしか見つからなかった。また、まだ製品化されていない「GW2974」という薬剤を投与したグループにも3%にしかがん細胞が見つからなかった。
 イレッサもGW2974も、細胞の増殖シグナルの伝達に必要な分子の働きを抑制する。正田純一・筑波大講師は「マウスのがん細胞は消滅したと考えられる。乳がんなどでも同じ分子が異常に活性化していることが分かっているので応用も可能だ」と話している。【和泉清充】

◎抗がん剤「イレッサ」副作用巡り、患者が賠償求め初提訴(2005年7月29日、朝日新聞)
 肺がん用抗がん剤「イレッサ」の副作用で死の恐怖に直面したとして、三重県四日市市の会社員清水英喜さん(49)が29日、国と輸入販売元のアストラゼネカ社(大阪市)を相手取り、慰謝料など550万円の支払いを求める訴訟を大阪地裁に起こした。弁護団によると、遺族の提訴は大阪、東京両地裁に計4例あるが、患者自身の提訴は初めて。
 訴状によると、清水さんは01年9月に肺がんと診断され、02年8月に入院して放射線治療を受けた結果、約7センチのがん細胞が約4センチに縮小。同9月に退院して在宅治療に切り替える際、「がん細胞だけを狙い、副作用が少ない」と医師から聞き、イレッサの服用を始めた。
 しかし10月下旬から激しいせきと高熱が続き、医師は服用中止を指示。副作用とみられる「間質性肺炎」と診断された。投薬治療で一命を取り留めたが、呼吸ができない苦しさに「頼むから殺してくれ」と妻に懇願したという。
 清水さんは提訴後、大阪市内で記者会見を開き、「生き証人として遺族の皆さんに真実を伝える役目と思い、提訴に踏み切った」と話した。

◎イレッサ:臨床研究開始へ、東大医科学研など(2005年7月1日、毎日新聞)
 神奈川県立がんセンターと東京大医科学研究所は30日、肺がん治療薬イレッサについて、個々の患者への有効性を投与前に血清で診断するための臨床研究を今月から始めると発表した。イレッサは一部の肺がんに縮小効果があるが、副作用で死者も出ている。同センターは「有効な患者にのみ投与し、副作用に苦しむ患者を減らしたい」としている。
 東大医科学研の中村祐輔・ヒトゲノム解析センター長は、イレッサが有効だった患者と効果のなかった患者のがん細胞を遺伝子レベルで比較する研究を進めているが、がん細胞を手術で取り出すのは困難なため、がん細胞から血液中に分泌される2種類のたんぱく質を調べる方法を考えた。
 7月から県立がんセンターでイレッサを投与されている患者50人の協力を得て、血清を採取、2種類のたんぱく質の量を測定する。1カ月ごとに治療効果を評価する臨床実験を08年度まで続ける。【足立旬子】

◎抗がん剤:新たな患者へのイレッサ使用に警告、米FDA(2005年6月18日、毎日新聞)
 副作用の重い肺炎による死者が多発した肺がんの抗がん剤「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)について、米食品医薬品局(FDA)は17日、新たな患者にはイレッサを使うべきでないとする警告を出した。イレッサに延命効果はなかったとする臨床試験データを受けた事実上の禁止措置だ。ただし、使用中か過去に使った経験がある患者で、患者の利益になると医師が判断した場合は使用を認める。
 イレッサについては昨年12月、日本を含まない世界28カ国での臨床試験の結果、患者の延命効果はなかったとのデータが発表された。今年5月に出た別の試験結果でも、効果は示されなかった。
 日本は02年7月、世界で最初にイレッサを承認した。厚生労働省の検討会は今年3月、「昨年12月のデータを東洋人に限って見ると、延命効果が示唆された」とし、当面の使用継続を認めた。
 しかし、データの一部を分析するだけでは、効果の確認はできないのが原則だ。輸入・販売元のアストラゼネカ社も「日本人での効果が確認されたとは言えない」との見解で、確認のための臨床試験を進めている。
 米国は03年5月、患者の約10%でがんが縮小したことを理由にイレッサを承認した。製薬企業には、延命効果を示すデータを早急に提出するよう求めていた。12月の試験データは、この求めに応じて提出された。【高木昭午】

◎イレッサの新規使用、米は原則禁止に、食品医薬品局(2005年6月18日、朝日新聞)
 副作用死が問題になっている肺がん用の抗がん剤イレッサ(一般名ゲフィチニブ)について、米食品医薬品局(FDA)は17日、過去に服用して効果があった患者と、現在、服用していて効果が出ている患者に使用を限定し、原則として新たな患者には使うべきでない、とする警告を出した。新規使用は、臨床試験に参加する患者についてのみ認める。
 非小細胞型の肺がん患者を対象とした世界規模の臨床試験で、「延命効果が確認できない」と報告されたことを受けての措置だ。製造元の英製薬大手アストラゼネカは、この臨床試験結果により今年1月、欧州での承認申請を取り下げた。
 日本では今年3月、厚生労働省の検討会が、日本肺癌(がん)学会の新指針に基づいて、東洋人で、女性や非喫煙者などの条件を満たす患者には、新規使用も含め、当面の使用継続を認めている。

◎米政府、肺がん治療薬「イレッサ」新規投与に警告(2005年6月18日、読売新聞)
 肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)について、米食品医薬品局(FDA)は17日、投与は、すでに服用して効果のあった患者に限り、服用経験のない患者には与えるべきでないとする警告を出した。
 メーカーのアストラゼネカ社(本社・英国)はこれに合わせ、米国での添付文書を改訂する。
 ア社による大規模な国際臨床試験の結果、効くとされる非小細胞肺がんの患者に投与しても延命効果が見られないというデータが昨年12月に出たのを受けた措置。
 イレッサについて日本では、厚生労働省の検討会が3月、東洋人の非喫煙者には延命効果が示唆されるとして、当面の使用継続を決めている。

◎イレッサ:また延命効果なし、米医師グループ発表(2005年5月18日、毎日新聞)
 肺がんの抗がん剤「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)を、放射線と抗がん剤での治療を終えた患者に使っても、延命効果がなかったとの臨床試験結果を、米国の医師グループが、15日に米国がん治療学会で発表した。厚生労働省はこれを受け、イレッサの使用ガイドライン改定の必要の有無について、日本肺癌(がん)学会に検討を依頼した。
 グループは、肺がん患者に対し、まず放射線治療と、イレッサとは別の抗がん剤3種類で治療。その後、イレッサを飲む患者と、偽薬(プラセボ)を飲む患者を比べた。イレッサを飲んだ患者の寿命は延びなかった。イレッサは昨年、世界28カ国での臨床試験で延命効果が示されなかったことが公表されている。【高木昭午】

◎がん病巣縮小患者へのイレッサ投与、延命効果なし(2005年5月16日、読売新聞)
 肺がん治療薬イレッサ(一般名・ゲフィチニブ)を、放射線照射や抗がん剤で縮小したがん病巣をそのまま抑え込む目的で投与しても、患者の延命には効果がないことが、米国の研究チームの臨床試験で明らかになった。厚生労働省が16日、米国がん治療学会で報告されたと発表した。
 イレッサのがん悪化・再発防止効果の安全性と有効性は認められておらず、厚労省は、国内の通常の治療ではこうした使用法は行われていないとしている。
 ただ、イレッサの適応などを記載した添付文書や日本肺癌(がん)学会の指針では明確な基準はなく、厚労省は、学会に指針の改訂の検討を求め、製薬企業のアストラゼネカ社に、医師への周知を指導した。
 研究報告では、放射線治療や抗がん剤でがん病巣の縮小が見られた約250人について、悪化を防ぐために約120人にイレッサを使用。偽薬を使った残りの患者と生存期間を比較・解析したところ、差が見られなかったという。

◎抗がん剤:「イレッサ」に効果なし、米医師ら学会発表(2005年5月16日、毎日新聞)
 肺がんの抗がん剤「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)を、放射線と抗がん剤での治療を終えた患者に使っても、延命効果がなかったとの臨床試験結果を、米国の医師グループが、15日に米国がん治療学会で発表した。厚生労働省はこれを受け、イレッサの使用ガイドライン改定の必要の有無について、日本肺癌(がん)学会に検討を依頼した。
 グループは、米国立がん研究所から試験の資金提供を受けた。肺がん患者に対し、まず放射線治療と、イレッサとは別の抗がん剤3種類で治療。その後、イレッサを飲む患者と、偽薬(プラセボ)を飲む患者を比べた。イレッサを飲んだ患者の寿命は延びず、医師グループは試験を中止したという。
 同省安全対策課は「こうした使い方は日本では一般的でない。詳しいデータを待ちたい」と話す。
 イレッサは昨年暮れ、世界28カ国での臨床試験で延命効果が示されなかったことが公表されている。【高木昭午】

◎肺がん治療薬「イレッサ」遺族、国などに賠償請求(2005年3月7日、読売新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)の服用後に死亡した三重県の男性(当時77歳)の遺族4人が「重い副作用の危険性を認識しながら輸入を申請し、ずさんな審査で承認した」として、輸入販売元の「アストラゼネカ」(大阪市北区)と輸入を承認した国に、計3300万円の損害賠償を求める訴えを7日、大阪地裁に起こした。イレッサを巡る損害賠償請求訴訟は全国で3件目。
 訴状によると、男性は2002年4月に肺がんと診断され、抗がん剤治療を続けていたが、同年9月、医師の勧めで約10日間、イレッサを服用したところ、副作用の間質性肺炎を発症し、同年12月に死亡した。
 日本では昨年12月までに、1473人が副作用を発症、うち588人が死亡したが、厚生労働省は当面の使用継続を認めている。
 アストラゼネカの話「訴状を見ていないのでコメントできないが、イレッサは薬事法の規定に基づき承認されており、法的責任はないと考えている」
 厚生労働省医薬品副作用被害対策室の話「関係省庁と協議して今後の対応を検討したい」

◎イレッサ:副作用、死者数は607人に、参院厚労委(2005年4月29日、毎日新聞)
 肺がん治療薬「ゲフィチニブ」(商品名・イレッサ)について、間質性肺炎や急性肺障害の副作用があったとして国に報告された患者数は1555人、うち死者数は607人に上っていることが、28日の参院厚生労働委員会で明らかになった。副作用報告数が公表されたのは、同省が1月に開いた検討会以来で、死者数は19人増えた。
 厚労省医薬食品局の阿曽沼慎司局長が、小池晃委員(共産)に対する答弁で「4月22日までに報告された粗い集計」として明らかにした。
 小池委員はこのほか、販売元のアストラゼネカ社が先月、推定使用患者数を8万6800人から4万2000人へ大幅修正したことについて「厚労省も企業の言いなりに数字を報告した」と指摘したが、阿曽沼局長は「企業がもう少しきちんとすべきだとは思っているが、厚労省に責任問題が発生するとは思っていない」と答えた。
 また、イレッサの承認審査をした医薬品医療機器審査センター(当時)の審査部長だった人物が、現在は厚労省でイレッサの安全対策を行う部署の責任者となっている点について、阿曽沼局長は「安全対策に支障が出るということはない」と答えた。【須山勉】

◎「東洋人に効果」イレッサ使用継続、厚労省が決定(2005年3月24日、読売新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)の延命効果を巡る問題で、厚生労働省の専門家検討会は24日、最終会合を開き、製造元のアストラゼネカ社が提出した「東洋人には効果が示唆された」との臨床試験結果について信頼性が認められるとの意見書を最終的にまとめた。
 これを受けて厚労省は、国内での使用継続を決定。ア社に対し、日本肺癌(がん)学会が作った新たなイレッサ使用指針を参考にする旨を医薬品の添付文書に記載するよう指示した。
 イレッサは2002年に国内で承認後、投与患者が副作用の間質性肺炎で死亡する例が頻発。だが、ア社は昨年末「東洋人では効果が示唆された」とする海外での臨床試験結果の概要版を公表した。検討会は、この解析結果を検証するために1月に発足した。ただ検討会は、日本人の延命効果を評価するには、新たな臨床試験が必要との見解も提示。厚労省とア社は今後、ア社が国内で進めている市販後の国内臨床試験を急ぐことを決めた。
 ア社はこの日、国内のイレッサの使用患者推定数を約8万7千人から約4万2千人に修正したため、検討会は、患者情報の把握と積極的な情報公開を求めた。

◎イレッサ:使用継続認める、厚労省の検討会(2005年3月24日、毎日新聞)
 国際的な臨床試験で明らかな延命効果が認められなかった肺がん治療薬「ゲフィチニブ」(商品名・イレッサ)の取り扱いを審議していた厚生労働省の検討会(座長、松本和則・国際医療福祉大教授)は24日、「東洋人への効果は示唆される」とした従来の見解を踏襲し、使用継続を認めた最終意見をまとめた。使用に当たっては日本肺癌(がん)学会のガイドライン(指針)を順守するよう、医師らへの周知を厚労省に求めた。
 焦点となった臨床試験について、検討会はデータを再分析し、東洋人に関する解析に信頼性が認められたと結論づけた。ただ、再分析の結果は細かく公表されなかった。
 また、イレッサが効いたと報告された患者に多く見られるがん細胞表面の遺伝子変異については、がん縮小効果を予測しうる重要な因子と位置づけた。しかし生存期間の延長効果については、未解明として、最終意見での言及を避けた。
 一方、検討会が順守を求めた肺癌学会の指針は女性や非喫煙者、がん細胞表面の遺伝子変異が認められる患者などに効果があるとし、使用を推奨している。副作用の恐れがある喫煙歴のある患者や全身の状態が悪い患者らには「薬の投与による利益が危険性を上回る場合」に限定。科学的に延命効果が認められていないことや、副作用の危険性などを患者に十分に説明した上で文書で同意を得る「インフォームド・コンセント」を義務付けている。
 検討会は、この指針の順守は安全性確保のうえで不可欠とし、製造元のアストラゼネカ社(本社・英国)に、指針の順守をイレッサの添付文書に盛り込むことも求めた。【山本建】

◇製造元が推定投与患者数を大幅下方修正
 肺がん治療薬「ゲフィチニブ」(商品名・イレッサ)について、製造・販売元のアストラゼネカ社は24日に開かれた厚生労働省の検討会で、これまで8万6800人と発表していた推定投与患者数を半数以下の4万2000人に大幅修正した。検討会の委員や傍聴者からは「これだけ問題になっている薬なのに、根本のデータがなぜこんないいかげんなのか」と批判が上がり、同社が提示してきたデータの信頼性にも疑問が投げかけられた。
 ア社は1月に開かれた検討会で、イレッサが02年8月に販売されてから04年末までの推定投与患者数を8万6800人と発表した。しかし、24日の検討会で、ア社日本法人(大阪市)研究開発本部の田中倫夫統括部長は「前回の数は計算ミスがあったほか、継続投与する患者の割合などを変えて推計したところ、4万2000人となった」などと説明した。
 検討会委員の堀内龍也・群馬大病院薬剤部長は「イレッサは発売開始後すぐ副作用が問題になったのに、メーカーがいまだに患者数をきちんと把握していないのは問題」と批判。座長の松本和則・国際医療福祉大学教授も「もう少し厳密な数字があってもいい」と指摘した。
 さらに堀内部長は「イレッサを服用している日本人患者に起きていることが、十分管理されているとは思えない」として、全服用者の追跡調査を求めたが、厚労省は「有効なデータが得られるか疑問」として、ア社に患者情報の一層の把握を求めるにとどまった。
 検討会終了後、イレッサを服用していた娘を02年に亡くしたさいたま市の近澤昭雄さん(62)は「あぜんとするしかない。最も土台となる患者数のデータが間違っていたのだから、ア社が出したすべてのデータがいいかげんに思え、信用できない」と厳しい表情で話した。【須山勉】

◎イレッサの使用、継続の意見、厚労省の検討会(2005年3月24日、朝日新聞)
 副作用死が問題になり、海外の臨床試験で延命効果が確認されなかった肺がん用の抗がん剤ゲフィチニブ(商品名イレッサ)について、専門家による厚生労働省の検討会(座長=松本和則・国際医療福祉大教授)は24日、医師向けの新しいガイドライン(指針)を周知する対策をとった上で、使用を続けるという意見をまとめた。
 新指針は日本肺癌(はいがん)学会が作った。最近のデータをもとに薬の効果が得られやすい条件を、がんのタイプが腺がんである患者、女性、非喫煙者、日本人(東洋人)、EGFRという遺伝子に変異がある患者とし、このような患者への使用は推奨した。一方、喫煙歴があるなど副作用が起きやすい条件の患者では、利益が危険性を上回る場合に限って使うことを求めた。
 検討会では、重い副作用を防ぐため、専門知識が十分な医師のもとで使うべきだという意見が相次いだ。指針を周知するため、医療関係者への指針の配布を製薬会社に指導するよう国に求めた。
 厚労省が検討会を開いたのは、開発元の英製薬会社アストラゼネカが昨年12月にまとめた28カ国・地域(日本は不参加)の臨床試験で、薬を使った患者に延命効果が確認されなかったため。
 検討会はこの臨床試験を再解析し、東洋人では生存期間の延長に寄与することが示唆されると分析した。

◎イレッサ:患者の延命効果確認されず、製造会社が臨床試験(2005年3月24日、毎日新聞)
 特定の遺伝子変異が認められる肺がん患者への効果が期待されている抗がん剤「ゲフィチニブ」(商品名・イレッサ)について、製造・販売元のアストラゼネカ社(本社・英国)による大規模な臨床試験の結果、このような患者への延命効果は確認されていなかったことが、ア社が厚生労働省に提出した資料で分かった。イレッサの取り扱いについては同省の「ゲフィチニブ検討会」が24日にも最終意見をまとめるが、このデータは今月17日に検討会に提出されたものの説明はされず、議論の対象になっていなかった。最終意見の議論に影響を与えそうだ。
 この臨床試験は、ア社が00〜01年に約2000人の肺がん患者に行った「INTACT」。同社の資料によると、対象患者のうち遺伝子変異の有無が確認できるがん細胞の組織サンプルが採取できた312人の生存期間を解析したところ、変異が認められたグループ(32人)は、認められなかったグループより生存期間が長い傾向にあった。しかし、いずれのグループも、イレッサを投与した人と偽薬を投与した人との間に生存期間の差は認められなかった。
 日本国内では、イレッサを投与した患者のうち、遺伝子変異がある患者の方が、変異のない患者よりも生存期間が長かったとの臨床報告がある。しかし、医薬品の監視活動を続けているNPO法人「医薬ビジランスセンター」(大阪市)の浜六郎医師は「INTACTを見る限り、遺伝子変異のある患者にイレッサの延命効果があるとは、とても言えない。これは厳密な臨床試験に基づく結果であり、信頼性は高い」と話している。【須山勉】

<イレッサ>
 がん細胞の増殖や転移にかかわる分子を狙い撃ちする新タイプの肺がん治療薬。従来の抗がん剤より副作用が軽いといわれ、世界に先駆けて日本で02年7月に販売が開始されたが、間質性肺炎などの副作用死が相次いだ。昨年末までに副作用の疑いで死亡した患者は588人。昨年末、販売元のアストラゼネカ社が行った別の国際的な臨床試験で延命効果がないとの結果が出たが、同社は東洋人には効果が示唆されたと分析しており、専門家の間で議論が続いている。

◎イレッサ、女性・非喫煙者に推奨、学会が使用指針を改正(2005年3月17日、朝日新聞)
 肺がん用の抗がん剤、ゲフィチニブ(商品名イレッサ)の使用に関する医師向けのガイドライン(指針)を日本肺癌(がん)学会が改訂し、17日に厚生労働省で開かれたイレッサの検討会で発表した。検討会は当面は使用を認める方針を打ち出しているが、同学会の新指針などを参考に検討を進めて、厚労省の方針を決めることになる。
 新指針では、薬の効果が得られやすい人の条件を、女性、非喫煙者、EGFRという特定の遺伝子に変異がある患者、などとした。このような条件に当てはまる患者への使用が「推奨される」としている。
 一方、全身の状態が悪い人、喫煙歴のある人など副作用の起きやすいとされる患者に使う場合には、「利益が危険性を上回ると判断される場合に限定する」よう求めている。また、最近発表された国際的な規模の臨床試験の結果や副作用などを含めて、十分に患者に説明した上で、文書で同意を得ることとした。
 同学会は副作用などに対応するため03年に指針を作ったが、今回はその後に発表された新しいデータを反映させ、薬が効きやすい患者に使うことを推奨した。
 イレッサは02年、世界に先駆けて日本で承認された肺がん用の新型抗がん剤。副作用の少ない「夢の新薬」といわれたが、本来の肺がん以外に、肺への転移がんにも使われるなどの「乱用」を背景に、販売開始後に副作用が続発した。
 現在、日本人における延命効果の有無について臨床試験が進められている。検討会はイレッサの臨床的データを検証する目的で設置され、1月に「現時点では使用を制限する必要性は乏しい」として、国内での使用を認める方針を打ち出している。

◎抗がん剤「イレッサ」副作用死3例目の提訴(2005年3月8日、朝日新聞)
 肺がん用抗がん剤「イレッサ」の副作用で死亡したとされる三重県の男性(当時77)の妻ら遺族4人が7日、危険性を知りながら十分に警告せずに販売に踏み切ったなどとして、国と輸入販売元のアストラゼネカ社(大阪市)に慰謝料など3300万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。弁護団によると同様の提訴は大阪、東京両地裁に起こされており、全国で3例目。
 訴えによると男性は02年4月に肺がんと診断され、イレッサとは別の複数の抗がん剤を使う化学療法を開始した。
 同年9月、「副作用がなく、飲み薬なので入院の必要がない」と医師に勧められイレッサの服用を始めたが、1週間で肺に変調をきたし、同12月20日に転院先の病院で間質性肺炎で死亡した。

◎「イレッサ」まだ選択肢(2005年2月28日、読売新聞)
 肺がん治療薬の「イレッサ」については、〈副作用死が相次いだ怖い薬〉という印象を持っている人が多いだろう。
 2002年7月に世界に先駆けて日本で承認されながら、副作用が原因とみられる死者が600人近くに上った。昨年末には、日本を除いた国際臨床試験で、「延命効果は認められない」という結果が出た。米国政府は回収も含めた規制の方針を決め、欧州では製造元のアストラゼネカ社が承認申請を取り下げた。
 「そんな薬は日本でも規制すべきだ」という声が強まっているが、がんと闘う患者の思いは複雑だ。
 私の友人で、都内に住む大学講師の横山文野さん(34)も、承認取り消しへの不安を抱える患者の1人だ。02年に肺がんが見つかり、腰骨に転移があったため、手術を断念した。しばらくは抗がん剤や放射線治療が効いていたが、その後、全身に転移して痛みもひどくなり、昨年4月に緊急入院。他に治療法がない状況に追い込まれ、5月にイレッサの服用を決断した。
 「副作用が怖くて、初めは尻込みした」と彼女は言う。だが、1週間で痛みが和らぎ、1か月でエックス線画像の影が縮小。8月には医師も驚くほどの効果が表れ、秋には復職もできた。「イレッサのおかげで、何ものにも代えられない普通の生活ができている。使えなくなれば後はない」と訴える。
 彼女のように劇的に効いた例は少なくない。一方、5・8%の人に重い副作用が表れ、発症者の約4割が死に至る現実もある。だれに効果があるか、どんな人に副作用が強く出るかを予測するための研究が進められているが、医療現場での実用化は、まだ難しい状況だ。
 厚労省の検討会は、国際試験から東洋人を抜き出すと延命効果がうかがえるとして、当面は使用継続を容認したが、製薬会社が詳細な分析をまとめる来月以降、再度議論するという。日本人の延命効果を調べる臨床試験も実施されているが、その結果が出るのは、2年先だ。
 肉親を副作用で亡くした家族の無念はよくわかる。31歳の次女を亡くし、国とア社に損害賠償を求めて係争中の近澤昭雄さん(61)(さいたま市)は、「有効性が不明確な間は、被害者を増やさないために販売を中止すべきだ」と主張する。
 効果が科学的に立証されなければ、承認取り消しはやむを得ないのかもしれない。だが、患者の立場で考えると、「危険だから使わない」か「試さないままでは死ねない」か――を選ぶのは、自分自身でありたい。最後の選択肢を奪わないで欲しいと願うのは、わがままなのだろうか。

◎イレッサ:国内出荷は554万錠(2005年2月15日、毎日新聞)
 肺がん治療薬「ゲフィチニブ」(商品名・イレッサ)に延命効果がないとの臨床試験結果が出た問題で、イレッサが02年7月に日本で承認されて以降、昨年12月末までの国内出荷量が約554万錠に上ったことが明らかになった。厚生労働省が15日、小池晃参院議員(共産)の質問主意書への答弁書の中で、製造・販売元のアストラゼネカ社(本社・英国)からの報告として明らかにした。【玉木達也】

◎肺がん治療薬、イレッサ(2005年1月31日、読売新聞)
・効果あれば服用継続、副作用には十分注意を
 「がん細胞を狙い撃ちする」。鳴り物入りで登場した肺がん治療薬「イレッサ」(製造元・アストラゼネカ)について、有効性に疑問符がつくデータが報告された。患者はどう考えればよいだろうか。
 東京都の主婦(52)は2003年10月に肺がんが見つかった。既に肺全体に広がり、息苦しい。手術はできず、「余命は4か月」と医師。昨年7月、イレッサの服用を始めた。がんが小さくなり、呼吸も楽になった。「半年以上たった今も旅行ができるほど元気。この薬のおかげです」
 一方で、副作用に苦しむ人もいる。肺がんが再発した三重県の会社員、清水英喜さん(49)は2002年9月にイレッサを飲み始めた。その1か月後に熱が出て、効果がないまま服用を中止した。重い肺炎の間質性肺炎を起こしており、一時、心停止に陥った。この副作用で死亡した患者も多く、「回復したのは運が良かったとしか思えません」と振り返る。
 「夢の新薬」か「危険な薬」か――。評価が分かれる中、海外での臨床試験で、「イレッサには延命効果がみられなかった」との衝撃的な結果が昨年12月、公表された。米食品医薬品局はイレッサの使用を規制する方針を打ち出したのに対し、厚生労働省の検討会は「現時点で使用を規制する必要はない」との見解をまとめた。
 この事態をどう見るか。
 今回の試験に日本人は参加していないが、参加者のうちマレーシアやフィリピンなど東洋人に限ると延命効果がうかがわれた。国立がんセンター東病院副院長で日本臨床腫瘍(しゅよう)学会理事長の西条長宏さんは「この薬の奏功率(がんが縮小する割合)は、東洋人以外の約10%に対し、東洋人は約30%と大きく違い、日本人でも縮小効果が高い。非東洋人の多い今回の臨床試験で延命効果がなかったからといって、慌てる必要はない」と話す。
 これに対し、薬の作用に詳しい医薬品・治療研究会代表の医師、別府宏圀さんは「試験結果から一部だけを抜き出して『東洋人に延命効果』というのは、解析方法として信頼度が低い。そもそも日本人への延命効果は分かっていない」と指摘する。
 現時点では、既にこの薬を服用し、効果が表れた患者は、副作用に注意しながら服用を続けてよいと考えられる。毎日1錠を原則として効果がある限り飲み続ける。
 重い肺炎の副作用は服用を始めて1か月以内に起きる危険性が高いが、4か月目に急に発症した例もある。息切れ、呼吸困難、せき、発熱などの症状が出たら、すぐに主治医に連絡する必要がある。
 一方、新たにこの薬を使う場合、判断は簡単ではない。注目されるのが、薬の効果を予測する遺伝子検査だ。
 イレッサは、肺がん細胞の表面にあるEGFR(上皮成長因子受容体)と呼ばれるたんぱく質に作用し、がんの増殖を抑えるとされる。この受容体に遺伝子変異があると、薬が効きやすいとの研究がある。日本人、特に女性や、非小細胞肺がんの一種、腺がんの患者は、遺伝子変異の割合が高いとされる。この検査で事前に効果を判定しようというわけだ。ただ、まだ研究段階の検査であるうえ、実施できる病院も限られている。
 効果や副作用の仕組み、日本人での延命効果など、この薬には未解明な部分が多い。それを十分に理解した上で治療法を選びたい。(坂上 博)
・イレッサと遺伝子検査
 東大医科学研究所(東京・白金台)教授の中村祐輔さんらは、がん細胞の増殖などにかかわる12種類の遺伝子を調べることでイレッサの効き目を投与前に見分ける方法を開発。同研究所付属病院で昨年9月、この方法で診断する臨床研究を始めた。中村さんは「患者一人一人に合わせて治療法を選ぶことができれば、薬の効果を最大限に生かせる」と話す。

◎肺がん治療薬イレッサ「使用制限の必要なし」、厚労省検討会(2005年1月21日、産経新聞)
 日本を含まない28カ国の大規模臨床試験で、延命効果が確認されなかった肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)について、厚生労働省の検討会(座長・松本和則国際医療福祉大教授)は20日の初会合で「現時点では使用を制限する必要はない」との見解をまとめた。
 東洋人を対象にした結果解析では生存期間の改善が示唆されていることが主な理由。
 検討会では、イレッサ投与との関連が疑われる国内の死亡者は、昨年12月28日現在で588人に上ることが報告された。
 こうした報告を基に検討会は、今回の解析結果を患者に説明し同意を得て使用することが重要とした上で、投与開始後4週間の入院や経験を積んだ医師の下での使用など、従来の安全対策の徹底を求めた。また、患者の遺伝子変異と効果、副作用の関連について研究を早急に進めるよう製造元のアストラゼネカに要求した。
 検討会終了後、「イレッサ薬害被害者の会」は厚労省で記者会見し「ここで立ち止まって臨床試験に戻すべきだ」などと見解を批判した。
 アストラゼネカが昨年12月発表した大規模臨床試験の初回の解析結果では、服用した患者と偽薬をのんだ患者とで、生存期間にはっきりした差は出なかった。
 イレッサは2002年7月、世界に先駆けて日本で輸入承認された。日本での使用患者は推定約8万6800人、世界では同約21万人。
 次回の検討会は、最終解析結果が厚労省に報告される3月ごろ開く。(共同)

◎イレッサ:色あせた“夢の新薬” 臨床試験の評価割れ(2005年1月20日、毎日新聞)
 肺がんへの効果を期待され、世界に先駆けて02年に日本で承認・販売された医薬品「イレッサ」。2年半を経た20日、厚生労働省は再びその有効性・安全性について議論するため、異例の検討会を開いた。製造・販売元のアストラゼネカ社が昨年末に患者への延命効果がみられないとの臨床試験結果を公表したのがきっかけ。欧米では使用を制限する動きが出ている中、検討会は当面の規制は不要との結論を下したものの、同社の説明に疑問を指摘する専門家も多い。すっかり色あせた“夢の新薬”をめぐる議論は、今後も続きそうだ。【山本建、元村有希子】

「データは確実だ」
 厚労省で20日開かれた検討会に参考人として出席したアストラゼネカ本社腫瘍(しゅよう)領域部のアラン・バージ・メディカルディレクターは、委員から臨床試験の結果について聞かれるたびに、データに対する自信を強調した。
 臨床試験は世界28カ国1692人を対象に、イレッサと偽薬を処方して生存期間を比較した。日本では別の臨床試験が実施されており、この試験からは除外されている。
 バージ氏は「全体として延命効果は確認できなかった」としたものの、(1)台湾やマレーシアなど東洋人342人で延命効果が統計的に確認でき、日本人にも有効と思われる(2)イレッサを服用すると間質性肺炎を起こす割合が高くなるという明確な関係はなかった(3)喫煙しない患者ほどイレッサ服用の効果が大きい、などと成果を強調した。
 これに対し、竹内正弘北里大大学院教授(臨床統計学)は「東洋人のデータは症例数が少なく、信頼性に欠ける」と指摘した。北沢京子日経BP編集委員も「東洋人のデータを日本人に当てはめることができるのか」と問いただした。出席委員8人のうち、半数の委員がア社のデータ解釈に疑問を投げかけた。
 バージ氏は「別の臨床試験では、日本人や東洋人は欧米人に比べてイレッサによる腫瘍縮小効果が高いという結果が出ている。日本人に有効というデータには一貫性がある」と主張した。
 欠席した栗山喬之千葉大教授(加齢呼吸器病態制御学)らが「東洋人に延命効果があったことや、間質性肺炎とイレッサに統計的に有意な関係がないのは重要」などとコメントを寄せ、臨床試験への委員の評価は分かれた。
 検討会は臨床試験の結果を踏まえ、新たな安全対策を盛り込むかどうかについて話し合った。
 堀内龍也群馬大大学院教授(薬学)らが「被害が続いており、肺がん患者全員に処方するのはおかしい」と使用範囲の制限を提案したが、多くの委員は「一刻を争う患者に使うなとは言えない。効果と副作用を十分に説明して処方すべきだ」などと述べ、使用制限を設けない事務局案を全員一致で承認した。

◇米は「効果なければ回収」
 ア社によると、イレッサは昨年12月現在、35カ国・地域で承認されている。02年7月に世界で初めて承認した日本をはじめ、オーストラリア、米国、台湾、メキシコなどで、これまで推計21万人が使用した。
 昨年12月に「延命効果なし」との中間まとめが出た後、同社は各国の規制当局に内容を報告し、協議を始めた。米食品医薬品局(FDA)は直後に「臨床的な効果が確認できなければ、市場からイレッサを回収する」との声明を出した。使用している患者には、継続や他の薬で代替できるかどうかについて医師と話し合うよう勧告している。
 一方、ア社は今月、欧州連合(EU)の欧州医薬品審査庁に対する承認申請を取り下げた。同審査庁は臨床試験の結果を踏まえ、承認の可否を決める手はずになっていた。その他の国で目立った動きはないが、夏までに出される最終報告の結果を受けて、検討が本格化するとみられる。

◇条件合えば腫瘍縮小
 これまでの日本での研究で、イレッサは女性、非喫煙者、腺がんには腫瘍縮小効果があることが分かっていた。腺がん患者はがん細胞のたんぱく質に特定の遺伝子変異が起きる割合が高く、この遺伝子変異を持つ患者の8〜9割にイレッサが効くことも分かってきた。変異を持つ人の割合は日本人では3割だが、欧米人では1割に満たない。
 東洋人に延命効果があることを示唆する臨床試験結果を、従来の研究と矛盾のない成績とみる専門家は多い。日本肺癌学会前会長の西條長宏国立がんセンター東病院副院長は「東洋人に効きやすいという前段階までの臨床試験での指摘が補強された」と評価する。
 西條副院長は「非喫煙者や腺がん、女性には60〜70%で腫瘍縮小効果が確認されており、他の抗がん剤の効果とそん色ない。吐き気や肝臓障害などの副作用は少なく、患者のQOL(生活の質)は優れている」と話す。間質性肺炎などによる副作用死の割合は患者全体の2%前後で、通常1〜2%とされる抗がん剤の副作用死とあまり変わらないという。
 一方、京都大大学院医学研究科の福島雅典教授(薬剤疫学)は「公表されている臨床試験の結果だけで、東洋人に効果があるとは言えない。ただし、現在はイレッサのリスクが少なく、効果の期待できる患者を絞り込む研究も進んでいる。厚労省は最新知識に照らして、イレッサを使う患者を絞るべきだ」と提言している。
 ア社は日本人患者500人を対象にイレッサと別の抗がん剤の効果を比較する臨床試験を進めており、07年春には調査結果がまとまる予定だ。

【ことば】イレッサ
 新タイプの肺がん治療薬。がん細胞そのものではなく、増殖や転移にかかわる分子を狙い撃ちする「分子標的薬」。従来の抗がん剤に比べて副作用が軽いとされたが、発売後、間質性肺炎などの副作用による死亡例が相次ぎ、社会問題化した。

◎イレッサ:厚労省は制限せず、命の問題なのに、なぜ(2005年1月20日、毎日新聞)
 大規模な臨床試験で、延命効果はほとんどないとの結果が出た肺がん治療薬、イレッサ。欧米で使用を制限する動きが進む中、この薬をいち早く承認した厚生労働省が20日の検討会で下した結論は「当面は規制の必要なし」だった。しかし、公開された検討会の場で、販売元のアストラゼネカ社は詳しいデータを掲載した資料を配布せず、十分な審議時間もなし。傍聴者からは審議のあり方自体を疑問視する声も上がった。【須山勉】
 「人の命がかかっている問題なのに、データが伏せられている。これでは第三者が検証することなんてできない」。薬害防止に取り組む医師や弁護士らで作る「薬害オンブズパースン会議」(事務局・東京)の水口真寿美事務局長は検討会終了後、厚労省やア社の姿勢を厳しく批判した。
 焦点となった臨床試験の結果について、ア社は英国本社のアラン・バージ・メディカルディレクターらが細かいデータを写したスライドを使って説明した。しかし、スライドを印刷した資料は委員だけに配られ、それも検討会終了後に同社が回収。大阪市から傍聴に来たNPO法人「医薬ビジランスセンター」の浜六郎理事長も「スライドの字が小さくて、さっぱり分からない。あれでは説明にならない」。
 厚労省は傍聴者にも資料を配布するようア社に求めたが、「論文化して学術誌に載せるまでは資料の配布はできない」と拒否されたという。水口事務局長は「医薬品の許認可権を持つ厚労省が、ア社の姿勢に唯々諾々としているのはどういうことなのか」と疑問を投げかけた。
 検討会は午前10時から2時間しか設定されていなかった。英国から来日したバージ氏らの説明に委員から質問が相次いだが、座長の松本和則・国際医療福祉大学教授は「時間がないので」と質問をさえぎる場面もあった。
 同省はイレッサによる副作用死の報告数を588人と公表したが、これは昨年3月以来約10カ月ぶりのことで、副作用情報の開示方法に疑問の声も上がっている。
 検討会には定員の2倍以上の傍聴申し込みがあり、傍聴席は立ち見が出るほどだった。しかし委員は11人のうち3人が欠席。同省安全対策課は「先に委員を選出してから日程調整をしたが、3委員はどうしても都合がつかなかった」と説明している。【須山勉】

◇規制の声相次ぐ
 厚労省の検討会がイレッサの使用制限は必要ないと結論付けたことについて、娘がイレッサ服用後に肺障害を起こして死亡したさいたま市の近澤昭雄さん(61)は「患者は効果があるというデータがあったから使ってきた。不安なデータが出たのだから、思い切って使用を規制すべきだ」と話した。イレッサ薬害被害東京弁護団の清水勉弁護士も「厚労省は承認が早すぎたことを反省し、一度引き下がって考え直すべきだ」と話した。
 一方、同省安全対策課によると、検討会前に肺がん患者や関係者から同省に「イレッサの使用規制はしてほしくない」という内容の投書も複数届いたという。

◎イレッサ:肺がん治療薬「使用規制せず」、厚労省検討会(2005年1月20日、毎日新聞)
 肺がん治療薬「ゲフィチニブ」(商品名・イレッサ)に延命効果はないとの臨床試験結果が出た問題で、厚生労働省は20日に開いた検討会で「使用を制限するなどの規制は当面必要ない」との方針を決めた。東洋人には延命効果があると見られるデータが出ていることなどが根拠。この日は副作用が疑われる死亡例が588人に達していることも報告された。欧米では使用制限の動きが進んでおり、患者の遺族などから批判が上がっている。
 検討会は、製造・販売元のアストラゼネカ社(本社・英国)が昨年末に公表した臨床試験の結果について、(1)臨床試験の対象者のうち、マレーシアやフィリピンなどの東洋人には生存期間が延長したと見られる結果が出た(2)国内では投与開始後4週間は患者を入院させるなどの安全対策が取られている(3)安全性などの点でより詳しい解析が必要−−などから、現時点で使用を制限する必要性は乏しいと結論付けた。
 これに対し、群馬大大学院医学系研究科教授の堀内龍也委員は「患者の遺伝子解析を行い、危険性が低いと判断された場合だけに使用すべきだ」と主張したが、現時点で患者を制限するまでの根拠はないとして受け入れられなかった。
 イレッサは02年7月に世界に先駆けて日本で販売され、昨年末までの間に国内で推定8万6800人が使用。厚労省によると、この間に間質性肺炎などの副作用が見られたとの報告があったのは1473人。死亡者は昨年3月時点で444人だったが、100人以上増えた。死亡した2人の患者の遺族から国とア社に損害賠償を求める訴訟も起こされている。
 ア社は臨床試験の結果を受け、今月4日に欧州医薬品審査庁(EMEA)への承認申請を取り下げたほか、米国食品医薬品局(FDA)も昨年末、回収を視野に入れた規制をする方針を表明。国内の服用者の遺族らも厚労省に早急な使用中止を求めていた。
 ア社は3月までに臨床試験の詳細な分析結果をまとめて厚労省に報告するとしており、同省はその時点で改めて検討会を開き、対応を協議する。【須山勉】

◎イレッサ:副作用で588人が死亡、厚労省、対応を検討(2005年1月20日、毎日新聞)
 世界に先駆けて02年、国内販売された肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)の副作用問題で、厚生労働省は20日、間質性肺炎などの副作用が起きた人は1473人に上り、588人が死亡したとの報告を先月末までに医療機関などから受けたと明らかにした。イレッサは延命効果が見られないとの臨床試験の結果が出ており、販売元のアストラゼネカ社(本社・英国)が欧州での承認申請を取り下げたほか、既に承認している米国の食品医薬品局(FDA)は回収も視野に入れた規制をする方針を表明しており、厚労省の対応が注目されている。
 欧米の動きを受け厚労省は20日午前、「ゲフィチニブ検討会」を開催、最新の副作用報告数を明らかにした。販売開始から先月28日までの使用患者は推定8万6800人。各医師の判断による報告なので、実際の副作用件数はさらに多いとみられる。【須山勉】

◎夢のがん新薬「イレッサ」厚労省が有効性の再検討開始(2005年1月20日、読売新聞)
 延命効果はあるのか――。「夢の新薬」とされながら、副作用が原因とみられる死者が500人以上に上っている肺がん治療薬「ゲフィチニブ」(商品名・イレッサ)。製造元が「延命効果はない」との調査結果を公表したため、厚生労働省は20日、専門家を集めて有効性の再検討を始めた。
 いったん承認しながら、薬の根本的問題をまた議論する異例の展開になっている。
 昨年12月17日、英国の製薬会社「アストラゼネカ社」の情報が世界を駆け巡った。28か国でイレッサを投与された1692人を調査した結果、がん細胞は縮小するものの、延命効果は認められない、という自社商品の有効性を否定する内容だった。
 3日後、米食品医薬品局(FDA)は規制強化の検討を開始。ア社は今年に入り、欧州連合(EU)での承認申請を取り下げた。
 イレッサは35か国で承認され、投与された患者は推定で延べ21万人。日本では2002年7月、世界に先駆け、承認された。申請からわずか5か月。難治性がんの一つの肺がんが、副作用の少ない経口薬で治療できると期待が高まった。
 ところが、承認から3か月後、急性肺炎などの副作用で13人が死亡していたことが分かった。その後も増え続け、昨年12月28日現在、国内で投与された患者延べ8万6800人(推定)のうち、副作用によるとみられる死者は588人。うち2人の遺族は、国とア社に損害賠償を求め、東京、大阪で係争中だ。
 イレッサの有効性に関し、国内の専門家が注目しているのは、調査結果の“ただし書き”部分だ。「東洋人だけには延命効果があった」。「東洋人」とは、マレーシア人やタイ人で、日本人は含まれていない。
 しかし、日本医大の工藤翔二教授は「日本人にも延命効果が期待できる」と評価する。イレッサは、がん細胞の増殖にかかわる遺伝子レベルの特定部位を狙い撃ちする「分子標的薬」。工藤教授は「人種によって遺伝子構造が違い、効果に差が出るのは当然」と言う。
 余命わずかな患者へのイレッサの劇的効果を数多く見てきたという東京医大の加藤治文教授も、「承認取り消しになれば、患者から最後の延命手段を奪うことになる」と訴える。
 一方で、危険性を訴える声は根強い。京都大大学院の福島雅典教授は、「危険性を過小評価し、見切り発車した。まさに薬害」と、厚労省の対応を批判する。
 厚労省が有効性の結論を出すメドは3月。福島教授は「日本人を対象に詳細な試験を行い、どういう人に効くのか、本当に効いているのかを早急に解明すべきだ」と訴えている。

◎イレッサ副作用死は588人に、使用患者は8万6千人(2005年1月20日、朝日新聞)
 厚生労働省は20日、肺がん用抗がん剤イレッサ(一般名・ゲフィチニブ)の検討会を開き、副作用報告からわかった死者は昨年12月28日までで588人に上ったことを明らかにした。イレッサを使う患者数は8万6800人に達していることも報告された。
 イレッサは、世界に先駆けて02年に日本で承認され、米国でも03年に承認された。劇的な腫瘍(しゅよう)縮小効果が報告される一方で、間質性肺炎など副作用による患者の死亡も相次ぎ、遺族による訴訟も起きている。
 今年に入ってから、製造元の英製薬大手アストラゼネカがまとめた世界規模の臨床試験で延命効果が確認できなかったとする発表があった。同社は、今月4日に欧州での承認申請を取り下げることを明らかにしている。厚労省検討会では、イレッサの効果について改めてデータの分析などを行い、国内での対応を考える。
 イレッサは、がんの増殖にかかわる特定の分子を狙う「分子標的薬」と呼ばれる新しいタイプの抗がん剤。

◎抗がん剤イレッサ、欧州で承認申請取り下げ、英製薬大手(2005年1月5日、朝日新聞)
 英製薬大手アストラゼネカは4日、肺がん用抗がん剤イレッサ(一般名・ゲフィチニブ)の欧州での承認申請を取り下げると発表した。昨年12月に中間解析がまとまった世界規模の臨床試験で、延命効果が確認できなかったため。日本や米国など承認済みの国では、イレッサの扱いについて規制当局と協議を続けるという。
 臨床試験は、28カ国(日本は含まず)で昨年8月まで約1700人の末期肺がん患者を対象に実施された。イレッサを使った患者と、有効成分が入っていない偽薬を使った患者との生存期間を比べた結果、統計的に有意な差がなかった。
 日本の厚生労働省はこの臨床試験の結果を受けて、専門家による検討会を今月20日に開くことにしている。
 イレッサは、がんの増殖にかかわるたんぱく質の働きを妨げる「分子標的薬」と呼ばれる新しいタイプの抗がん剤。日本では世界に先駆けて02年に承認され、米国でも03年に承認を受けた。しかし、間質性肺炎など副作用による患者の死亡が相次いだため、患者遺族による訴訟も起きている。

◎肺がん薬「イレッサ」延命効果なし、承認取り消しも(2004年12月28日、読売新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)を販売する製薬会社「アストラゼネカ」(本社・英国)の臨床試験で、この抗がん剤が肺がん患者の延命に効果がないことがわかり、厚生労働省は27日、同社が提出した試験データを分析するため、専門家による検討会を来月20日に設置すると発表した。
 日本人への効果がないとされた場合は、承認の取り消しもありうるという。
 厚労省は一昨年7月、国内で行った臨床試験結果などをもとに、世界に先駆けてイレッサを承認した。だが、同社が昨年から1年間、日本以外の28か国で約1700人を対象に試験を行った結果、がん細胞の縮小効果はあったが、延命効果はないことがわかった。

◎イレッサ:「延命効果なし」米FDAが回収も検討(2004年12月25日、産経新聞)
 日本や欧米で肺がん治療薬として承認されている「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)について、FDA(米食品医薬品局)が「患者の延命効果はない」として、市場からの回収も視野に入れた規制を行う方針を明らかにした。これを受け、イレッサの副作用で死亡したとみられる国内患者の遺族らで作る「イレッサ薬害被害者の会」(近澤昭雄代表)は24日、厚生労働省に販売を中止するよう申し入れた。
 イレッサの販売元のアストラゼネカ社(本社・英国)は、日本を除く世界28カ国で肺がん患者1692人に行った臨床試験の結果、生存期間の延長に効果がなかったとの中間結果を今月まとめた。これを受けてFDAは、17日付で「市場からイレッサを回収するか、ほかに妥当な規制措置を取るか決める予定」との声明を出した。
 ア社によると、臨床試験の対象患者のうち約2割を占める東洋人には、生存期間の改善が認められた。厚労省安全対策課は「ア社の詳細な報告を見たうえで対応を検討したい」と話している。【須山勉】

◎イレッサ:難治性肺がんの延命効果なし、大規模臨床試験で(2004年12月21日、毎日新聞)
 日本や欧米で非小細胞肺がんの治療薬として承認されている「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)について、輸入・販売元のアストラゼネカ社(大阪市)は20日、「臨床試験で生存期間の延長に効果はなかった」とする中間結果を公表した。
 同社によると、臨床試験は03年7月から04年8月にかけて日本を除く世界28カ国の210施設で、標準的な抗がん剤による治療が効かなかった非小細胞肺がん患者1692人を対象に実施した。1日当たり250ミリグラムのイレッサと偽薬を飲む2群に分け、生存期間を比べた。
 その結果、患者の生存期間はイレッサ群の5.6カ月に対し、偽薬群は5.1カ月だった。非小細胞肺がんのうち、日本人に多い腺がんでもイレッサ群の6.3カ月に対し、偽薬群は5.4カ月で、ともに統計学的に有意な差はなかった。
 同社はこの中間結果を厚生労働省に報告するとともに、医療機関への情報提供を始めた。発表では、「残念ながら、全体的な延命効果(の実証)には至らなかった。腫瘍(しゅよう)縮小では有意な改善がみられており、イレッサによる治療を続けるかどうかは医師と十分相談してほしい」と述べている。【山本建】

◎イレッサ副作用死:国と販売元を相手取り、遺族が損賠提訴(2004年11月26日、毎日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)による副作用死問題で、イレッサ服用後に急性肺障害を発症して02年に死亡した近澤三津子さん(当時31歳)の遺族2人が25日、国と、輸入・販売元のアストラゼネカ社(大阪市)に計3850万円の損害賠償を求め、東京地裁へ提訴した。別の患者遺族による7月の大阪地裁への提訴に続き、この問題をめぐる2件目の裁判となった。
 イレッサは数万人が使用し、今年3月の国の副作用報告で死亡例は444人にのぼる。
 訴状によると、三津子さんは02年8月15日〜同10月2日、自宅で服用。同3日に外来診察先の病院で副作用が見つかり緊急入院し、呼吸困難になり同17日に死亡した。
 原告側は「アス社には副作用で肺障害が多発する可能性を認識していたのに販売した違法があり、国は安全性を十分確認せず約5カ月のスピード審査で輸入を承認した」と主張している。【坂本高志】

◎抗がん剤イレッサめぐり国・製薬会社提訴、死亡女性遺族(2004年11月25日、朝日新聞)
 副作用で400人以上が死亡した肺がん治療薬「イレッサ」をめぐり、治療中の02年に死亡した女性(当時31)の遺族が25日、輸入販売元のアストラゼネカ社(大阪市)と国に計3850万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。「イレッサ」の副作用をめぐっては別の遺族が大阪地裁に同様の訴えを起こしており、2件目となる。
 イレッサは02年7月に承認されたが、患者が副作用が原因の肺炎などで死亡する例が多発。同社によると、国内では今年3月末現在、438人が死亡した。
 訴状によると、女性は02年8月に服用を始め、約2カ月後に死亡した。遺族は「副作用があるとの説明はなかった」とし、同社には正しい情報を与えずに販売した責任があり、国には安全性を十分確かめずに承認した責任がある、などと主張している。
 厚労省医薬品副作用被害対策室は「訴状をみて関係機関と対応を検討したい」、同社は「ご遺族との見解の相違や、当社が実施してきた施策について説明し、ご理解を得るよう努めてきた。訴訟が起こされたとすれば残念」などとの談話を出した。

◎「イレッサ」副作用死、遺族が国と販売元を提訴(2004年11月25日、読売新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」の副作用で死亡した埼玉県の女性(当時31歳)の遺族が25日、輸入販売元の「アストラゼネカ」(大阪市北区)と輸入を承認した国に計3850万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
 イレッサを巡っては今年7月、大阪地裁に同様の訴訟が起こされており、今回が2件目。
 訴状によると、肺がんと診断された女性は2002年8月からイレッサを飲み始めたが、10月に急性肺障害で死亡した。
 アストラゼネカ広報部は「当社の対策を説明してきたが、提訴されたとすれば誠に残念」としている。
 一方、今月27日、弁護団による「イレッサホットライン」が開設される。東京訴訟弁護団は03・3988・3291(午前10時から午後3時)、大阪訴訟弁護団は075・212・1833(午前10時から午後4時)。

◎イレッサ訴訟:肺がん治療薬の副作用死、遺族が国など提訴(2004年11月25日、毎日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)による副作用死問題で、イレッサ服用後に急性肺障害を発症して02年に死亡した近澤三津子さん(当時31歳)の遺族2人が25日、国と、輸入・販売元のアストラゼネカ社(大阪市)に計3850万円の損害賠償を求め、東京地裁へ提訴した。別の患者遺族による7月の大阪地裁への提訴に続き、この問題をめぐる2件目の裁判となった。
 父親で原告の近澤昭雄さん(61)は会見し「副作用は全くないと説明を受けたから使用を承諾したのに、逆にがん患者にとって貴重な『一日一日』が縮められてしまった。命の重さを問う裁判にしたい」と語った。
 イレッサは数万人が使用し、今年3月の国の副作用報告で死亡例は444人にのぼる。
 訴状によると、三津子さんは02年8月15日〜同10月2日、自宅で服用。同3日に外来診察先の病院で副作用が見つかり緊急入院したが、間もなく呼吸困難になって同17日に死亡した。
 原告側は「アス社には副作用で肺障害が多発する可能性を認識していたのに販売した違法があり、国は安全性を十分確認せず約5カ月のスピード審査で輸入を承認した」と主張している。【坂本高志】

▼厚生労働省副作用被害対策室の話
 訴状の内容を検討し、関係機関と対応を検討したい。

▼アストラゼネカ社の話
 ご遺族との見解の相違などについて説明を行い、理解いただけるよう努めてきましたが、もし東京でも提訴されたとすれば誠に残念です。

◎肺がん治療薬イレッサの副作用死で遺族が提訴、東京地裁(2004年11月25日、産経新聞)
 肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の副作用で死亡したさいたま市の女性=当時(31)=の遺族が「危険性を認識しながら医療機関への警告を怠った」として輸入販売会社アストラゼネカ(大阪市)と輸入を承認した国に計3850万円の損害賠償を求める訴訟を25日、東京地裁に起こした。
 イレッサの副作用による国内の死亡者は440人以上(厚生労働省調べ)とされ、7月に京都府の男性患者の遺族が同様の訴訟を大阪地裁に起こしている。
 訴状などによると、女性は2001年10月に肺がんと診断され、02年8月からイレッサを約50日間服用した後、副作用による間質性肺炎で死亡した。
 イレッサは英国のアストラゼネカ本社が開発し、日本では02年7月に承認、販売された。遺族側は「わずか半年弱の審査でスピード承認しており、海外の副作用例などを十分調査していない」と国の過失を主張。販売会社については「副作用の危険を承認後まで国に報告せず、医療機関への警告など被害防止を怠った」としている。(共同)

◎イレッサ薬効、遺伝子で予測 東大医科学研が臨床研究(2004年9月14日、朝日新聞)
 肺がん治療薬イレッサの効果を使用前に遺伝子で予測する臨床研究を、東京大医科学研究所病院が始めた。イレッサの効果が期待できるのは患者の約3割とされ、重い間質性肺炎の副作用の疑いで死亡する例も報告されている。効果が期待できる患者に限って使うようになれば、無用な副作用の危険を避けられる。東大病院も早ければ年内に臨床研究を始める。
 患者の体質に応じて薬を使い分けるオーダーメード医療に向けた取り組み。一般患者を対象にイレッサの効果を予測する臨床研究は初めて。研究を重ね実用化をめざす。
 研究にあたるのは東大医科研の中村祐輔教授や古川洋一特任教授ら。
 肺などの組織を採取して12種類の遺伝子の働きを中心に調べる。これらの遺伝子は、イレッサが効いた患者と効かなかった患者で、働きに著しい差があることが分かってきており、中村さんらは統計的に解析して効果が予測できる手法を開発。33人の患者を対象にした予備研究では、効いた8人と効かなかった17人、がんが大きくも小さくもならなかった8人を、事前に予測できた。
 今回の臨床研究は、告知を受けている18歳以上の肺がん患者で、これまでイレッサを使ったことがないなどの条件を満たした人が対象。治療を受ける場合は通常の治療費がかかるが、遺伝子の採取や検査、分析は研究費で賄う。
 参加希望者はカウンセリング外来電話受付(03・5449・5488=月、水曜の午後1時〜5時)で予約が必要。イレッサを使うかどうかは、遺伝子分析を含め検査結果を基に、患者が主治医と相談して決める。
 東大病院も医科研病院と協力し、同様の方法で遺伝子を調べる臨床研究の準備を進めている。
 中村さんは「副作用が出やすい人を予測する研究も進めており、副作用の危険性の予測も実用化したい」と話している。

◎イレッサ:発症・死亡率跳ね上がる、輸入販売会社発表(2004年8月25日、毎日新聞)
 肺がん用の抗がん剤「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)の副作用で、間質性肺炎などが起き、多数の死者が出た問題で、輸入販売元のアストラゼネカ社(本社・大阪市)は25日、副作用による間質性肺炎の発症率は5.8%、死亡率は2.3%との調査結果を発表した。同社は昨年3月に「発症率1.9%、死亡率0.5%」との結果を発表したが、今回は数字が跳ね上がった。イレッサは、一度は別の抗がん剤で治療を受けた患者に使うのが原則だが、こうした患者の場合、危険性がさらに高まることも分かった。
 同社は昨年6月から全国の615病院に依頼。イレッサで治療を受ける患者3322人を、治療開始から今年7月末まで追跡調査した。
 その結果、5.8%にあたる193人が、イレッサが原因と疑われる間質性肺炎を発症。うち75人が死亡した。
 イレッサ以前に別の抗がん剤を使った経験のある患者、体力が衰えて家事などが出来ない患者、たばこを吸っていた患者らは、いずれもそれ以外の患者に比べ、発症率が2倍程度高くなることも分かった。それぞれの正確な発症率は「別の会社に分析を依頼しデータが手元にない」と明らかにしなかった。
 発症・死亡率が大きく増えたことについて同社は「昨年は使った医師から自発的に報告があった副作用だけを数えたが、今回は最初から全副作用を確認しているためではないか。また昨年は、発症率の分母となる、イレッサの使用者数を過大に見積もったかもしれない」と話している。
 同社によると、イレッサは02年7月の発売以来、国内で推定6万〜7万人の患者が使用しているという。【高木昭午】

◎肺がん薬「イレッサ」、国内患者5.8%が肺障害(2004年8月25日、読売新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)を服用した国内患者が、副作用の肺障害を起こす発症率は5.8%に達することが、販売元のアストラゼネカ社の調査でわかった。
 米国での発症率(0.3%)の20倍近い高率で、日本人の遺伝形質が影響している可能性もある。同社では調査データをもとに、薬の添付文書の改訂などの対策を進めている。
 同社は昨年6月から今年3月にかけ、全国615の医療施設で、イレッサが投与された肺がん患者3322人(男1932人、女1390人)を調査した。その結果、約5.8%にあたる193人が肺障害の副作用を発症、うち75人が死亡した。肺障害が起きやすいのは、〈1〉全身状態が悪い〈2〉喫煙歴がある〈3〉投与時にすでに間質性肺疾患がある、などの場合だった。
 このほか、発疹(はっしん)や肝機能異常などの副作用も報告されたが、いずれも症状は軽かった。
 同社では今回の調査結果を医療機関に配布し、患者への説明などに役立ててもらうほか、今後、薬の添付文書にも反映する。調査に参加した工藤翔二・日本医科大教授は「この発症率は他の抗がん剤に比べて大きいわけではないが、日本で飛び抜けて高いという事実は重要。分子遺伝学的な研究が必要だ」としている。

・イレッサ
 肺がんの増殖に深く関係する分子を標的として攻撃する「分子標的治療薬」の1つとして、世界に先駆けて2002年7月、日本で承認された。健康な細胞も無差別に殺してしまう従来の抗がん剤に比べて重い副作用が出にくいという期待感から、専門医のいない病院などで安易な使用が相次いだ結果、患者の副作用死が問題化した。

◎イレッサ副作用:京都の遺族が賠償求め提訴(2004年7月15日、毎日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)による副作用死が相次いでいる問題で、イレッサを服用後に死亡した京都府の男性(当時69歳)の遺族4人が15日、国と輸入・販売元のアストラゼネカ社(本社・大阪市北区)を相手取り、総額3300万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。ア社の責任を追及する初の訴訟で、さいたま市の遺族も近く東京地裁に提訴する予定。イレッサは数万人が使用しており、今年3月末現在の副作用報告は1083件、うち死亡例は438件に上る。【堀川剛護】

◎イレッサ副作用死:遺族、国と業者を初提訴、大阪地裁(2004年7月16日、毎日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)による副作用死が相次いでいる問題で、イレッサを服用後に死亡した京都府の男性(当時69歳)の遺族4人が15日、国と輸入・販売元のアストラゼネカ社(本社・大阪市北区)を相手取り、総額3300万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。ア社の責任を追及する初の訴訟で、さいたま市の遺族も近く東京地裁に提訴する予定。イレッサは数万人が使用しており、今年3月末現在の副作用報告は1083件、うち死亡例は438件に上る。
 訴えによると、肺がんの放射線治療を受けていた男性は02年9月、副作用について十分な説明を受けないまま、イレッサの服用を開始。数日後に呼吸困難となり、同年10月2日、間質性肺炎が悪化して死亡した。
 遺族らは、ア社が臨床試験や動物実験で急性肺障害など重篤な副作用例を把握していたと指摘。▽副作用の予見可能性があったのに十分な警告や表示をせず、製造物責任法(PL法)に違反▽副作用の発生原因について十分検討せず漫然と販売を始めており、不法行為責任は明らか−−などと主張。国についても「海外での副作用例約200件の報告を受けながら、ずさんな審査で輸入を承認した」としている。
 遺族らでつくる「イレッサ薬害被害者の会」(近澤昭雄代表)は先月、ア社に損害賠償の支払いなどを求めた申し入れを行ったが、ア社側が拒否したため、会員の遺族が提訴に踏み切った。【堀川剛護】

◎イレッサ副作用死:肺がん治療薬・京都の遺族、初の提訴、国などに賠償求め(2004年7月16日、毎日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)による副作用死が相次いでいる問題で、イレッサを服用後に死亡した京都府の男性(当時69歳)の遺族4人が15日、国と輸入・販売元のアストラゼネカ社(本社・大阪市北区)を相手取り、総額3300万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。ア社の責任を追及する初の訴訟。今年3月末現在の副作用報告は1083件、うち死亡例は438件に上る。
 訴えによると、肺がんの放射線治療を受けていた男性は02年9月、副作用について十分な説明を受けないまま、イレッサの服用を開始。数日後に呼吸困難となり、同年10月2日、間質性肺炎が悪化して死亡した。
 遺族らは、ア社が臨床試験や動物実験で急性肺障害など重篤な副作用例を把握していたと指摘。▽副作用の予見可能性があったのに十分な警告や表示をせず、製造物責任法(PL法)に違反▽副作用の発生原因について十分検討せず漫然と販売を始めており、不法行為責任は明らか−−などと主張。国についても「海外での副作用例約200件の報告を受けながら、ずさんな審査で輸入を承認した」としている。【堀川剛護】
 アストラゼネカ社の話 ご遺族の申し入れに対して回答書をお送りし、当社の見解を説明しましたが、反論がないまま訴訟を提起されたことは残念。
 厚労省医薬食品局総務課副作用被害対策室の話 訴状を見ていないのでコメントできません。

◎「イレッサ」服用後に死亡、遺族が賠償求め初提訴(2004年7月15日、読売新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)の服用後に死亡した京都府の男性(当時69歳)の遺族4人が「副作用が原因」として、輸入販売元の「アストラゼネカ」(大阪市北区)と輸入を承認した国に慰謝料など計3300万円の損害賠償を求める訴訟を15日、大阪地裁に起こした。
 遺族は「ア社は重い肺障害の発症を予見できたのに、予防策を怠ったうえ、副作用情報を隠して輸入を申請し、国もずさんな審査によって異例のスピードで承認した」と訴えている。
 イレッサの副作用を巡り、ア社や国に損害賠償を求める訴訟は初めて。
 訴えによると、男性は一昨年3月、肺がんと診断されて翌月入院。抗がん剤の投与や放射線治療で症状が改善し、同7月に退院した。自宅療養中の同9月、医師の勧めでイレッサの服用を開始。副作用の説明はなかったが、5日後に呼吸困難となり、間質性肺炎と診断され、約1か月後に死亡した。
 英国で開発されたイレッサは、申請から半年後の同7月に厚生労働省が輸入を承認し、販売が始まった。しかし、その後約1年間に使用したとみられる患者約3万5000人のうち、間質性肺炎や急性肺障害などの副作用報告が698件あり、うち278件が死亡例だった。
 副作用の多発で同省は同10月以降、ア社に緊急安全性情報の作成や添付文書の改訂などを指示。同12月と昨年5月には、安全性に関する検討会を開き、使用を専門医に限定することや投与開始から4週間の入院などの対策を決めた。
 患者の遺族でつくる「イレッサ薬害被害者の会」(さいたま市)は先月、ア社に賠償金の支払いや謝罪などを申し入れたが、ア社は「法的責任はない」と拒否していた。
 提訴後に会見した男性の二男は「会社や国には、患者一人一人の命の大切さを考えてほしい」と話した。
 厚生労働省医薬食品局副作用被害対策室の話「訴状を見ていないので、コメントできない」
 アストラゼネカの話「提訴は残念。訴状の内容を見ていないので、コメントは差し控えたい」

◎肺がん治療薬イレッサの副作用めぐり提訴、大阪地裁(2004年7月15日、産経新聞)
 肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の副作用をめぐり、亡くなった京都府の男性患者=当時(69)=の妻子4人が15日、「副作用の危険性を認識しながら、医療機関などへの警告を怠った」として、輸入を承認した国と販売会社「アストラゼネカ」(大阪市)に計3300万円の慰謝料などを求める訴訟を大阪地裁に起こした。
 厚生労働省によると、イレッサの副作用による死者は3月までで444人とされるが、イレッサの薬害を訴え、行政と企業の責任を問う訴訟は初めて。さいたま市の遺族も東京地裁に提訴する予定という。
 訴えによると、男性は2002年春に肺がんと診断され、同年9月から医者の勧めでイレッサを服用したが、その後、間質性肺炎と診断され1カ月後の10月に死亡した。
 イレッサは英国の製薬会社が開発し、日本では世界に先駆け02年7月に承認、販売された。遺族側は「国は海外の副作用報告を調査するなど安全性に関する十分な確認をしないまま、半年足らずのずさんな審査で輸入を承認した」と主張。
 販売会社に対しては「申請前に臨床試験などで副作用の可能性を認識しながら、承認後まで国に報告しなかった」と指摘。医療機関などに警告するなど副作用抑止に必要な措置を怠ったとしている。
 イレッサ薬害被害者の会が6月、販売会社に損害賠償などを求める申し入れをしたが拒否されたため提訴に踏み切った。
 弁護団は17日、被害実態把握のため相談を受け付ける。電話075(211)1459。

◎イレッサ副作用死:輸入元「法的責任ない」、遺族ら提訴へ(2004年7月6日、毎日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)による副作用死が相次いでいる問題で、輸入・販売元のアストラゼネカ社(本社・大阪市北区)は5日、謝罪や損害賠償などを求めた遺族らの申し入れに対し、「法的責任はない」などとした回答書を通知した。遺族らは今月中旬にも国とア社を相手取り提訴する方針。
 回答書によると、ア社側は、イレッサ添付文書の副作用欄に「間質性肺炎」を記載していると指摘。「急性肺障害や間質性肺炎について医療機関に十分な説明責任を果たしている」などとし、申し入れを全面的に拒否した。
 申し入れは、02年10月に二女三津子さん(当時31歳)を亡くした近澤昭雄さん(60)=さいたま市=を代表とする「イレッサ薬害被害者の会」が行い、薬害発生の原因究明と薬害防止措置なども求めていた。【堀川剛護】

◎イレッサ副作用死:“夢の新薬”が悪夢、遺族「ガイドライン早急に」(2004年6月22日、毎日新聞)
◇呼吸できず、娘は苦しんで死んでいった
 「副作用が少ない希望の薬だと思っていたのに…」。肺がん治療薬「イレッサ」を巡り21日、販売元のアストラゼネカ社(本社・大阪市北区)に救済を申し入れた遺族から怒りの声が上がった。肺がん細胞だけを狙う新しいタイプの薬で、副作用が少ないとみられた“夢の新薬”。絶大な効果があった患者もいるというが、被害者の多くは、医師から副作用の説明を十分受けなかったとされる。遺族の一人は「死を無駄にしないためにも、使用のガイドラインを早急に作って」と訴えた。
 「イレッサ薬害被害者の会」は03年3月に発足した。亡くなった53人の遺族で作り、今回の申し入れに合わせて、関西の弁護士らが「イレッサ薬害被害弁護団」を結成した。
 被害者の会代表の近澤昭雄さん(60)は02年10月、二女の三津子さん(当時31歳)を亡くした。三津子さんは01年9月に肺がんと診断され、02年8月から約45日間、イレッサを毎日服用。しかし同年10月3日に呼吸困難に陥り、同月17日に亡くなった。医師からは「間質性肺炎で、イレッサの副作用と思われる」と言われたという。
 会見で近澤さんは、遺影を胸に抱きしめ「呼吸できずに苦しんで死んでいった娘を見て、イレッサって何という薬だと憤りを感じた。医師からも『副作用はないと思うよ』と言われていたのに」と唇をかみしめた。
 薬の輸入・販売を承認した厚生労働省は「現段階では、インフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)をしっかり行い、条件を厳重にして使用するしかない」と様子を見守る構えだ。
 弁護団は26日午前10時〜午後4時、「イレッサ薬害ホットライン」(075・222・1650)を実施。被害者の無料電話相談に応じる。【堀川剛護】

◎イレッサ、肺がん細胞狙い撃ちの新薬(2004年6月22日、毎日新聞)
 肺がん細胞を狙い撃ちする「分子標的治療薬」と呼ばれる新しいタイプの治療薬。通常の抗がん剤はがん細胞だけでなく正常細胞も傷つけるため、強い副作用に悩まされることが多いが、イレッサは、がん細胞にだけ働き、副作用が軽いとして、注目された。英アストラゼネカ社が開発し、同社の日本法人が02年1月、厚生労働省に輸入承認を申請し、同年7月、国内外での臨床試験結果などを基に世界で初めて承認、販売された。
 しかし、同年10月には副作用で13人が死亡したことが発覚、その後も増加を続けた。
 さらに、医療機関から報告があった副作用情報を、ア社が同省にすぐに連絡しなかったことも判明し、ア社の対応のあり方に問題が指摘された。
 米国では03年5月、進行した非小細胞の肺がんで、標準的治療が効かない患者に限り、使用を承認した。
 一方、同年8月には、東京の市民団体がイレッサを使った臨床試験や動物実験の詳細なデータを開示しないのは不当だとして、同省を相手取って、不開示決定の取り消しを求める訴訟を東京地裁に起こしている。

◎イレッサ副作用死:肺がん治療薬・被害者遺族が提訴へ、業者・国相手に(2004年6月22日、毎日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)による副作用死が相次いでいる問題で、遺族らが21日、輸入・販売元のアストラゼネカ社(本社・大阪市北区)と国を相手取って7月にも損害賠償を求める訴訟を大阪、東京両地裁に起こす方針を明らかにした。同日、ア社に4項目の申し入れを行ったが、「誠意ある回答は期待できない」としている。400人以上が死亡したイレッサを巡り、ア社の責任を追及する訴訟は初めて。
 ア社に申し入れたのは02年10月に二女三津子さん(当時31歳)を亡くした近澤昭雄さん(60)=さいたま市=を代表とする「イレッサ薬害被害者の会」。
 申し入れ書では「重篤な急性肺障害を発症する可能性があることや、処方に十分な観察を行うよう警告するなどの注意義務を怠った」と指摘。その上で▽法的責任を認めた謝罪と損害賠償の支払い▽副作用状況の追跡調査▽薬害発生の原因究明と薬害防止措置▽原因と防止措置の公表−−の4項目について7月5日までの回答を求めている。
 被害者の会の中島晃弁護団長は申し入れ後の記者会見で「会社側は副作用死の情報を把握していたのに被害者救済の対応をしていない」と述べた。
 厚生労働省によると、同薬は3月23日現在、急性肺障害と間質性肺炎による副作用報告が全国で1151例あり、うち444例が死亡。これまでに数万人が使用しているという。【堀川剛護】

◇アストラゼネカ社の話
 現時点で申し上げられることはない。ご遺族とは十分、誠意を持ってお話ししていきたい。

◇イレッサ
 肺がん細胞を狙い撃ちする「分子標的治療薬」と呼ばれる新しいタイプの治療薬。通常の抗がん剤は強い副作用に悩まされることが多いが、イレッサは、副作用が軽いとして、注目された。英アストラゼネカ社が開発し、同社の日本法人が02年1月、厚生労働省に輸入承認を申請し、同年7月、世界で初めて承認、販売された。しかし、同年10月には副作用で13人が死亡したことが発覚。さらに、副作用情報を、ア社が同省にすぐに連絡しなかったことも判明した。

◎イレッサ副作用回避に新手法、名古屋市立大教授ら研究(2004年4月30日、読売新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」は、がん細胞に特定の遺伝子変異を持つ患者で効果が高いことが、名古屋市立大学の藤井義敬教授と米ダナ・ファーバーがん研究所の研究で分かった。遺伝子変異を調べ、薬の効き目を予測できれば、効果が期待できない患者には、別の治療を選択することで無用な副作用を避けることができる。30日付の米科学誌サイエンスに発表する。
 イレッサは、既存薬が効かない日本人患者の3割で患部が半分以下になるなどの効果があり、日本人に対する効果が、欧米人に比べて2倍以上高いことも知られている。しかし間質性肺炎で死亡する人が相次ぎ副作用が問題になっている。
 藤井教授らは、肺がん手術を受けた日米の患者119人のがん細胞を使い、イレッサが標的とする、増殖を促進する酵素の遺伝子を調べた。遺伝子の変異は日本人の特に女性に多いなど、治療成績と傾向が一致することが分かった。
 さらに、イレッサの治療を受けた米国の患者9人のがん細胞を調べたところ、効果があった5人は全員にこの遺伝子変異があったが、効かなかった4人には変異がなかった。
 藤井教授は「データをさらに集め患者の診察に活用したい」と話している。

◎肺がん治療薬:イレッサ効果、遺伝子変異が左右(2004年4月30日、毎日新聞)
 副作用死が多発した肺がん治療薬「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)の効果は、がん細胞が持つ特定の遺伝子変異の有無に左右されることが、名古屋市立大など日米の共同研究で分かった。遺伝子の変異の有無から、投薬前に効果が判定できれば、無用な副作用が避けられる。米科学誌「サイエンス(電子版)」に30日発表した。
 同市立大の藤井義敬教授(呼吸器外科)らは、患者から切除した肺がん細胞を調べた。
 その結果、一部の患者で、がん細胞が持つ「上皮成長因子受容体」というたんぱく質の遺伝子に変異が見つかった。イレッサが効いた患者では、全員からこの変異が確認された。イレッサはこのたんぱく質の働きを阻害することで、がん細胞の増殖を止めるとされる。
 藤井教授は「この遺伝子からは副作用の判定ができないが、遺伝子変異と薬効との関係を解明すれば、より効果的な新薬開発につながる。遺伝子の個人差を踏まえて治療するオーダーメード医療に道を開く」と話す。
 日本人の場合、イレッサが効く患者は約28%とされるが、現在は、投与するまで効果の有無は分からない。間質性肺炎など深刻な副作用が約2%であり、これまでに300人以上が死亡した。【山田大輔】

◎抗がん剤イレッサ、効き目は遺伝子の変異で差、日米調査(2004年4月30日、朝日新聞)
 副作用で多数の死者を出した肺がん用抗がん剤イレッサ(一般名ゲフィチニブ)が効く患者は、EGFRと呼ばれる遺伝子で突然変異を起こしている場合が多いことが分かった。名古屋市立大の藤井義敬教授ら日米の研究チームが29日付の米科学誌サイエンス(電子版)で発表する。患者の体質に応じて薬を選ぶオーダーメード医療の実現に一歩近づきそうだ。
 イレッサは、劇的に効く患者がいる半面、強い副作用を起こす患者もいる。臨床上、肺腺がんの女性に効く例が多く、日本と欧州で行われた治験では日本人の方が成績がよかった。
 藤井教授らが、肺がんの8割を占める非小細胞肺がんの患者119人(日本人58人、米国人61人)でEGFR遺伝子が変異しているか調べたところ、変異していたのは日本人15人、米国人1人の計16人。がんの種類別では、肺腺がんが70人中15人、それ以外が49人中1人。男女別では、女性が45人中9人、男性が74人中7人だった。効果があるとされるグループの方が、突然変異が起きている割合も高かった。
 藤井教授は「イレッサが効く肺がんを、EGFR遺伝子の異常を調べることで予測できる可能性がある。効果が低いと思われる患者への投与を避けることが可能になれば、オーダーメード医療のいいきっかけとなる」と話している。

◎イレッサの副作用死、173人に増加 輸入販売元発表(2003年2月7日、朝日新聞)
肺がん用の抗がん剤「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)による副作用問題で、輸入販売元のアストラゼネカ(大阪市)は6日、東京都内で記者会見し、1月31日までに厚生労働省に報告した間質性肺炎と肺障害の発症者は473人で、うち173人が死亡した、と発表した。
 同社によると、これまでに使用した患者は推定で約2万3500人。昨年末、厚労省が原則として同薬の投与開始から患者を4週間入院させるなどの措置をとるよう求めてから報告数は減少傾向にあるという。
 同社は会見で、4週間をすぎても間質性肺炎などを発症することがあり、発症が疑われたらすぐに投与を中止し、ステロイド療法などをするよう呼びかけた。4月ごろをめどに、患者約5千人を対象に病状の進行や合併症の有無などで効き方に違いがあるか、副作用の予防法はあるかなどの調査を始めるという。
 同社が依頼した専門家でつくる委員会も中間報告を発表し、委員長の工藤翔二・日本医科大教授は「この薬を200人に使った場合、50人に効き、1人が副作用の肺障害などで亡くなる可能性があることを十分患者に説明して使ってほしい」と話した。

◎イレッサ、肺がん以外にも使用例、適正使用をと厚労省(2003年1月20日、朝日新聞)
重い副作用が問題になっている抗がん剤「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)が、認められた肺がん以外の様々ながんに使われたり、ほかの抗がん剤と併用されたりしていることがわかった。肺がん患者に正しく使えば2割に効果があるとされる。しかし、それ以外の使い方の効果や安全性は確認されておらず、どんな副作用が出るかもわからない。厚生労働省は適正使用の徹底をメーカーに求めた。
 イレッサは英国のアストラゼネカ社が90年代から開発。がん細胞の特定分子を狙って攻撃、従来の抗がん剤より副作用が少ないとされる。
 2002年7月、世界に先駆けて日本で承認され、同社日本法人(大阪市)が輸入販売している。対象は手術不能や再発した肺がん。これまで2万人近くに使われた。しかし、重い間質性肺炎など副作用とみられる死亡者が124人報告されている。
 関西の私立大学病院の教授は、この薬を胃がん、大腸がん、乳がん、膀胱(ぼうこう)がん、膵臓(すいぞう)がんなど多くのがんの治療に使っている。いずれも末期の患者に免疫療法と併用している。
 首都圏など3カ所のクリニックでも同様の治療をし、昨年末までに合わせて200人近くに使用。1人が副作用で間質性肺炎になったが、回復したという。
 薬が承認された効能と異なる使われ方をすることは少なくない。その場合には申請をするよう厚労省は指導しているが、効果や安全性が証明されていることが必要。不明な場合は臨床試験として施設内の倫理委員会のチェックを受けて進めるのが一般的だ。
 だがこの私大教授はそうした手続きは踏んでいない。「末期がん患者を、薬を使うグループ、使わないグループに分けて臨床試験をすることは非倫理的」と説明する。
 末期がん患者が処方を望むことも少なくない。東京都内の国立病院では50代の女性肺がん患者に、別の医療機関が処方したサリドマイドと併用した。サリドマイドは薬害を起こし国内では未承認だが、一部のがんに効くとして医師が個人輸入をして使っている。イレッサとの併用の効果や副作用のデータはない。
 主治医は「患者が強く希望し拒めなかった。効果が不明だと話した。何か起きた時に出来る範囲の対処はするが、責任は持てないと説明した」。皮膚に湿疹が出た。さらに転移も見つかった。
 肺がんで亡くなる人は年に5万人以上。東京医科大病院の坪井正博医師は「適正に使えば、イレッサの恩恵を受けられる患者は少なくない。しかし、薬が効く仕組みは詳しくはわかっていない。慎重に使う必要がある」と指摘する。
 アストラゼネカ社の村本史子広報部長は「医師には承認された条件で使って下さいと言っている。それ以外の使い方の実態は調査中」という。
 厚労省医薬局安全対策課は「承認された対象に使うのが大原則。それ以外では効果も安全性も保証できない。直ちに薬事法違反になるものではないが、メーカーに対しても適正使用の徹底を伝えている」と話す。

◎イレッサ承認:厚労省、海外の副作用調査せず、55人死亡(2003年1月16日、毎日新聞)
 抗がん剤「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)の副作用問題で、厚生労働省は承認前に海外から副作用報告を約200例(うち死者55人)受けていながら、十分なデータを集めないままイレッサを承認していたことが分かった。同省は「副作用報告の評価が難しかった」と説明してきたが、実際には患者のカルテのチェックなど詳しい調査をしていなかった。
 同省は2002年7月、国内外での臨床試験結果などを基に、世界で初めてイレッサを承認した。一方、イレッサは承認前に、使用を希望した各国の患者や海外で行われた別の臨床試験の患者計約1万9000人に使用された。販売元のアストラゼネカ社(本社・大阪市)は、重要な副作用が疑われた患者として、196人を報告した。死者は55人で、問題になった間質性肺炎や急性肺障害の疑いのある死者12人も含まれていた。承認前に、これほど多数の副作用報告があるのは異例だ。
 承認審査をした同省の医薬品医療機器審査センターは、承認申請で提出された国内の臨床試験患者約130人の資料については必要に応じ、カルテや肺のエックス線写真など生データを取り寄せて審査した。しかし、海外からの副作用報告についてはア社に生データやコピーを求めておらず、大半は受け取った報告だけで検討した。
 同センターは、報告の大半について「症例の集積を待って検討する」と副作用かどうかの判断を事実上棚上げし、審査報告書に盛り込まなかった。ア社も、医師向けの説明文書(添付文書)に記載しなかった。
 同省審査管理課は「個々の症例を追究すればデータが集まるかもしれないが、時間がかかる。そこまでの必要はないと判断した」と説明している。【鯨岡秀紀、高木昭午】

■根本的見直し必要:福島雅典・京都大教授(薬剤疫学)の話
 副作用を報告した医師のほぼすべてがイレッサと因果関係があるとしたのに、添付文書に書かなかったことは重大な問題で、審査のあり方を根本的に見直す必要がある。危険性情報を警告しなかったために引き起こされた前代未聞の薬害で、ア社は製造物責任法(PL法)違反に問われても仕方ない。

◎肺がん薬「イレッサ」を承認前投与、1人死亡、3人重症(2003年1月9日、朝日新聞)
肺炎など重い副作用が問題になっている肺がん薬「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)を、2002年7月の承認前に、製造販売元の英・アストラゼネカ社から、日本の医師が個人輸入の形で入手して286人の患者に使い、そのうち少なくとも1人が副作用で死亡、3人が重症になったことが分かった。
 アストラゼネカ日本法人(大阪市)によると、薬の安全性を確かめる臨床試験の対象外としての使用で、「患者の求めに応じた倫理的な無償供給」としている。
 2001年夏から、国内89の大学病院やがん専門病院の医師が「輸入・処方した医師が責任を負う」との誓約書を提出し、個人輸入の形で提供を受けた。2002年5月に副作用によるとみられる肺炎で患者1人が死亡した。重症の3人は肺炎、嘔吐(おうと)などだった。英・アストラゼネカ社は個人輸入の申請に対して、使用上の注意を書いた冊子を薬に添付して送っていたという。
 厚生労働省によると、海外での臨床試験で、1998年4月から2002年7月までに、死亡55人を含む計196人の副作用症例が把握されていた。無償供給では、世界で約2万2千人が使用している。

<NPO法人「医薬ビジランスセンター」理事長・浜六郎医師の話>
新薬は、臨床試験で効果と安全性を確認した後に販売するのが本来の手続きだ。米国などでは、ほかの治療法がないときに臨床試験段階でも使う場合があるが、その際には政府への届け出が義務づけられている。日本でも、使用を届け出るなどの仕組みが必要だ。

◎抗がん剤「イレッサ」死者124人、厚労省、使用医師の限定を決定(2002年12月27日、朝日新聞)
 肺がん用の抗がん剤「イレッサ」(輸入販売元・アストラゼネカ社、一般名・ゲフィチニブ)の副作用問題で、厚生労働省の専門家による検討会は25日、同薬の使用を肺がんの化学療法の経験が十分ある医師に限定し、患者を服用から4週間は入院させることなどを決めた。厚労省は副作用とみられる死亡者の報告が7月の販売開始から今月13日までに124人になったと検討会に示した。
 検討会は安全性の評価や今後の対応などを協議するために設置された。検討会は▽使用を緊急時に対応できる病院などに限る▽間質性肺炎や肺線維症を発症しているか、既往歴がある患者には慎重に投与する▽患者に同薬の有効性や重い副作用の症例があることを十分説明し同意を得て使用することも決めた。
 厚労省が示した副作用症例によると、総報告数は494人で、うち死亡が124人。間質性肺炎や急性肺障害を引き起こしたのが358人で、うち114人が死亡した。喀血(かっけつ)や肝機能異常、胃腸出血などが136人で、うち死亡が10人だった。
 厚労省によると、これまでに日本でイレッサを服用した患者は推定約1万9千人で、副作用の発症率は2.6%。厚労省は「ほかの抗がん剤と比べて高くない」としている。

<アストラゼネカ広報部のコメント>
患者さんをより厳重な管理のもとに置き、イレッサの安全な使用を促進する点から、厚労省の対応策を全面的に受け入れる。

◎副作用死の報告100人超す、肺ガン新薬イレッサで(2002年12月25日、日本経済新聞)
 2002年7月にスピード承認されたアストラゼネカ(大阪)の肺がん新薬ゲフィチニブ(販売名イレッサ)の副作用により死者が相次いでいる問題で、厚生労働省は25日、間質性肺炎と急性肺障害の副作用報告はさらに増え、13日までに358例寄せられ、死者は114人に達したことを明らかにした。肝機能障害など、これ以外の副作用も136例報告され、10人が死亡したという。
 イレッサの有効性と安全性を再検討し、今後の対策を打ち出すため開いた、専門家による検討会で明らかにした。検討会は、副作用で短期間にこれだけの死者が出るケースは極めて異例として、使用を抗がん剤に詳しい医師に限定するなどの対策をまとめる方針。 厚労省によると、肺がん患者約1万8000人がイレッサを服用した11月下旬までに、291人に間質性肺炎や急性肺障害の副作用が起き、うち81人の死亡が報告されていた。

◎新型抗がん剤副作用の死者、3倍の39人に増える、厚労省、過少報告に「遺憾」(2002年10月27日、朝日新聞)
肺がん用の新型抗がん剤「ゲフィチニブ」(商品名・イレッサ)の副作用問題で、輸入販売元アストラゼネカ社(大阪市)は26日、医療機関から肺炎などの副作用の連絡があった患者が125人に増え、うち死者が39人になったと発表した。また、厚生労働省が13人の死亡を発表した10月15日の時点で、同社は69人(うち死者27人)の副作用情報を把握していたのに、同省には22人(同11人)しか報告していなかったことも明らかにした。
 厚労省は、47人分の過少報告について「把握後すぐ報告すべきだった。極めて遺憾」とし、法的に問題がなかったかどうか調査する方針。薬事法では、予測できる副作用については、把握後30日以内の報告を製薬会社に義務づけているが、重い副作用の発生頻度などが予測と異なる場合には15日以内としている。
 厚労省は15日に、同社からの報告と同省独自に把握した症例から、26人に副作用が見られ、うち13人が死亡したと発表していた。
 26日、厚労省で会見した同社は、15日時点で、47人は報告期限の30日に達していないと判断したと釈明。しかし、「その判断は正しくなかった」として社内体制の見直しを明らかにした。また、今年7月の販売開始から今月下旬までに国内では推定で1万〜1万1000人の患者に投与されたとし、医療機関で適正に使われているかも調べるという。
 この薬は、英国アストラゼネカ社が開発した飲み薬。手術不能な肺がん患者などに使われる。正常な細胞も攻撃してしまう従来の抗がん剤と異なり、がん細胞だけを標的にする。
 今年1月に申請。ほかの治療法よりも有効との推定から優先審査の対象になり、世界に先駆けて7月に異例の早さで承認された。臨床試験などで世界中で約3万人が服用し、0.2〜0.4%の患者に肺炎などの副作用がみられるという。

・報告例の調査を――西條長宏・国立がんセンター薬物療法部長の話
 すでに1万人以上に使われているとすると、ほかの抗がん剤に比べて死亡率や肺の障害の率が高いとは思えない。ただ、7月に出たばかりの薬で、長期間使った場合にどんな副作用が出るのかは、まだデータがなく、報告された症例をきちんと調べる必要がある。医師も患者もこうした頻度の副作用が起こりうることを十分に納得のうえ、利用しないといけない。





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