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 2008年6月28日






◎SARS:コウモリが起源?香港大研究チームが解明(2005年9月10日、毎日新聞)
 新型肺炎(SARS)の原因となる「SARSコロナウイルス」と非常に近縁なコロナウイルスを、中国に生息する野生のコウモリが保有していることを香港大の研究チームが10日までに突き止めた。
 従来はイタチに似た「ハクビシン」が宿主ではないかと疑われてきたが、コウモリが起源だった可能性が出てきた。近く米科学アカデミー紀要に論文が掲載される。
 チームは、広東省の市場にいたハクビシンからはSARSコロナウイルスが高率に検出されたのに、飼育場では検出率が低いことなどに疑問を持ち、ハクビシンと接触する可能性があるネズミやコウモリなど、香港郊外に生息する野生動物を多数捕獲して調べた。
 ウイルスが検出されたのは「キクガシラコウモリ」の一種で、捕獲した40%近くが保有。遺伝子分析の結果から、ハクビシンのSARSコロナウイルスと共通の祖先から進化したウイルスとみられる。
 コウモリがどのように感染したか、コウモリからハクビシンに広がったのかどうかについては断定できないとしたが、中国ではコウモリのふんが漢方薬になったり、肉が珍味として食用になることから、チームは「注意すべきだ」と呼び掛けている。(ワシントン共同)

◎ドイツ旅行中「SARSの疑い」でバス停止、50人検診(2004年12月21日、産経新聞)
 ドイツで旅行中の日本人約50人が乗ったバスが20日、地元警察により健康上の検査を理由に高速道路のパーキングエリアに停止させられ、医師の検診を受ける騒ぎがあった。
 ドイツのDPA通信によると、軍病院の医師が「鳥インフルエンザか新型肺炎(SARS)の疑い」で短時間、旅行者を調べたが、そうした病気の症状の人はいなかった。
 DPAによると、旅行者の女性1人が寒けを訴えたほか、ホテルに残っていた同じグループの女性1人が鼻血を出していた。DPAは当局が鳥インフルエンザやSARSと疑った理由は不明と伝えた。
 地元警察当局者は共同通信に、同日午前9時10分ごろ警察が高速道路に出動したと述べたが、出動の理由や感染症を疑う理由があったのかなどについては明言しなかった。ベルリンの日本大使館は病人の情報はないとしている。(共同)

◎日本人観光客50人、SARS疑い高速道で検査、独南部(2004年12月21日、朝日新聞)
 ドイツ南部で20日、地元警察が重症急性呼吸器症候群(SARS)の疑いがあるとして、日本人の団体観光客のバスを高速道路で停止し、全員を検査する騒ぎがあった。
 AFP通信によると、乗っていた日本人観光客は約50人。バスは高速道路を走行中、パーキングエリアに停止するよう求められた。最寄りのウルム市から駆けつけた軍医が全員の検査をした。
 この観光客グループが宿泊していたコルンタール・ミュンヒンゲン市の宿泊ホテルも検査を受けた。その間、ホテルは一時閉鎖されたという。
 地元の保健当局によると、団体の中の女性1人が悪寒を訴え、別の女性が鼻血を出していたとされるが、検査の結果、SARSの症状はみられなかった。警察当局がなぜSARSと疑ったのか詳細は明らかにされていない。

◎新型肺炎、ワクチン開発にはあと数年、国際会議で見解(2004年5月11日、読売新聞)
 ドイツ北部リューベックで開催中の新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)に関する国際会議で、出席した科学者たちは10日までに、ワクチン開発には「2年ないし3年を要する」との見通しを相次いで示した。
 DPA通信によると、同国ウイルス学協会のクレンク会長は10日、英国の科学者チームが遺伝子組み換え技術を用いてワクチン開発へ前進しつつあると言及し、「2、3年でワクチンは開発されるだろう」と述べた。(時事)

◎疑い例の3人も感染確認、中国のSARS(2004年5月4日、産経新聞)
 中国衛生省は4日、新型肺炎(SARS)の疑いがあるとして北京市内の病院で隔離治療を受けている3人のSARS感染を確認したと発表した。中国で昨年末以降の感染者は、北京の7人、安徽省の2人、広州市の4人の計13人(うち1人死亡)となった。
 3人は4月に最初に感染が確認された女性看護師の父親らで、病状はいずれも安定しているという。衛生省は感染者のうち女性看護師と安徽省の女性大学院生はともに近く退院する見通しとしている。(共同)

◎SARS、北京でさらに2人感染確認、中国で計4人に(2004年4月29日、朝日新聞)
 中国衛生省は29日、新型肺炎SARSの疑いが持たれていた北京の2人について、感染が確認されたと発表した。2人は先に感染が確認された女性看護師(20)の母親と親類。これで感染が確認されたのは北京3人、安徽省1人の計4人。疑いがある人は北京4人、安徽省1人(死亡)の計5人となった。

◎中国で7人目の新型肺炎疑い例、患者は危篤状態(2004年4月28日、読売新聞)
 【北京=竹腰雅彦】中国衛生省は28日、北京市の女性元医師(49)が新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の感染疑い例と確認され、この元医師が危篤状態にあると発表した。これにより今回の新型肺炎感染者は2人、感染疑い患者は7人(うち1人は死亡)となった。
 元医師は胸部の感染病で入院して一時、のちに新型肺炎感染が確認された北京市の女性看護師(20)と同じ病室で治療を受けていたが、19日に発熱症状を訴え、22日から隔離措置を受けていた。

◎新たに4人感染疑い、北京でSARS拡大(2004年4月25日、産経新聞)
 中国衛生省は25日、北京で新たに4人の新型肺炎(SARS)感染の疑い例が報告されたと発表した。4人は23日に感染が確認された北京の女性看護師と同じ病室にいた入院患者と看護師家族ら。これで中国疾病予防センターに端を発したとみられる今回の中国の感染者は2人、感染疑い例は計6人となった。
 同省はまた、SARSに感染した安徽省の大学院生が3月から4月にかけて4回乗った鉄道の列車番号を公表、同じ車内に乗り合わせた乗客に対して自主的に医療機関と連絡を取るよう呼び掛けた。発症後に鉄道を利用した可能性があり、乗客を通じて感染が広がっている恐れがあるためだ。
 北京で確認された感染疑い例の4人は、看護師と同室だった入院患者のほか看護師の父親、母親、叔母の3人。いずれも体温が37度以上あり、特に母親はエックス線検査で胸部に炎症が確認され病状が重い。
 家族は看護師が感染して以来、病院などで密接に接触していた。
 衛生省はまた、経過観察の人数を大幅に増やし、北京では感染者らに接触した337人を、安徽省でも133人の体調を観察することにした。(共同)

◎北京でさらに5人がSARSの疑い、中国で報道(2004年4月25日、朝日新聞)
 中国の通信社である中国新聞社は24日、新型肺炎SARSと確認された北京の女性看護師(20)と接触し発熱が続いている5人について、SARSの疑いが濃いとの医師の発言を伝えた。
 医師は5人に関し、発熱していることや胸部X線像、白血球の量などをもとに「疑い例のレベルを超えて、感染の確認まで一つの検査を残すだけだ」と語っている。
 衛生省は同日午前までの集計で、中国のSARS患者は計2人、疑い例も計2人(1人死亡)と発表している。中国新聞社が報じた5人について、女性看護師とどこで接触したかは伝えられていない。

◎中国でSARS疑いの女性患者死亡、感染2人、疑い例2人(2004年4月24日、産経新聞)
 中国衛生省は23日、北京市と安徽省でそれぞれ1人ずつ新型肺炎(SARS)の感染が確認され、さらに両地でそれぞれ1人ずつ、感染の疑い例があったと発表した。安徽省の疑い例の女性は既に19日に死亡していた。
 死亡した女性の感染が確認されれば、昨年7月に北京で感染者が死亡して以来、中国で初めてのSARSによる死者となる。
 世界保健機関(WHO)が昨年7月に制圧宣言を出して以来、北京市と安徽省での感染確認は初めて。感染源は北京市にある中国疾病予防センターのウイルス予防所実験室の可能性が高く、衛生省は予防所を封鎖した。
 ここが感染源と特定されれば「実験室感染」としてまん延を防げるが、感染者が発病後に列車で移動しており、広範囲な感染拡大の恐れも残っている。
 北京市では感染者に密接に接触した188人のうち、家族や病院入院者ら5人が発熱症状を示し、市内の地壇病院に隔離された。安徽省でも117人の接触者を経過観察処置にし、うち1人が発熱症状を示している。
 発表によると、安徽省で感染が確認されたのは26歳の安徽医科大学大学院生(女性)。ウイルス予防所実験室で研究を終えた後、安徽省に戻って肺炎症状を訴え、再び北京に列車で戻って健宮病院で治療を受けた。
 死亡したのはこの大学院生の母親で、娘に付き添って感染したとみられる。
 北京市の感染者は22日に疑い例として報告された20歳の看護婦で、大学院生が治療を受けた健宮病院に勤務。新たに感染の疑いが分かったのは31歳のウイルス予防所に勤務する男性だった。(共同)

◎SARS:北京市内の女性看護師に感染の疑い、中国衛生省(2004年4月23日、毎日新聞)
 【北京・大谷麻由美】中国衛生省は22日、北京市内の病院に勤める女性看護師(20)が新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)の疑いのある患者であると発表した。また、AP通信によると、安徽省にも疑いのある患者がいるという。中国では昨年12月から今年2月にかけて、広東省でSARS感染者が4人確認されたが、以後の感染確認はなかった。
 首都・北京では昨年8月中旬にSARSの感染患者が退院して以来、疑い例の患者も出ていなかった。5月のメーデー休暇で大規模な国内移動が見込まれる直前だけに、SARS感染の拡大阻止に、中国政府も厳しい対応を迫られそうだ。
 新華社電によると、この女性は病院職員の宿舎に住んでおり、今月5日に発熱やせきの症状が出て7日に入院した。付き添いの親族ら接触のあった計5人に発熱などの症状が出ており、隔離措置を取って経過を観察している。
 北京では昨年3月にSARS患者が初めて確認され、感染が一気に拡大した。世界保健機関(WHO)が4月11日に北京を感染地域に指定し、6月24日に感染地域が指定解除されるまでに感染者は2500人以上、死者は約200人に上った。SARSをめぐっては、情報隠しが感染拡大を引き起こしたとして、衛生相と北京市長が更迭されるという政治問題にまで発展した。

◎北京でSARS感染疑いの患者、接触した5人も発熱(2004年4月23日、朝日新聞)
 中国衛生省は22日、北京で新型肺炎SARSに感染した疑いのある患者1人を確認した、と発表した。国営新華社通信が伝えた。世界保健機関(WHO)が各地で出していた感染地域指定を昨年7月にすべて解除して以降、中国では今年1月に広東省広州市で4人の感染者が確認されたが、北京では出ていない。
 患者は20歳の女性看護師。今月5日に発熱が始まり、7日に勤務先の病院に入院した。その後も症状が改善しないため、14日に転院。付き添いの家族2人も発熱が始まった。検査を繰り返した結果、22日に衛生省が疑い例と確認した。
 北京市は患者の住居や勤務先などの消毒を行い、接触した171人を診察した結果、家族も含めて計5人が発熱の症状などがあるため、隔離して観察している。
 中国では03年の年明けから広東省や香港でSARSが広がり、4月から5月にかけては全土で感染の報告が相次いだ。

◎SARS暴露の中国軍医師、天安門事件の再評価求め書簡(2004年3月9日、朝日新聞)
 信報など8日付の香港紙は、89年の天安門事件当時に北京の軍病院で外科主任だった蒋彦永医師が、同事件を「反革命動乱」とみなす中国当局の評価を改めて「学生愛国運動と呼ぶべきだ」と主張する書簡を、温家宝(ウェン・チアパオ)首相と呉邦国(ウー・パンクオ)全国人民代表大会常務委員長らにあてて提出した、と報じた。蒋医師は今も軍に所属し、新型肺炎SARSが流行した昨春、米週刊誌に北京市当局が多数の感染者を隠していると暴露した。
 書簡で蒋医師は、天安門事件当時の学生たちは政治腐敗に抗議する正義の要求を掲げており、市民の支持も得ていた、との見方を示した。武力鎮圧は「少数の腐敗した指導者層が戦車や機関銃で弾圧を加え、数百人の青年が死亡、数千人が負傷した」と指摘している。
 そのうえで「党の誤りは自ら解決すべきで、解決は早く、徹底的であるほどよい。事件の再評価は民心にかなっており、社会を乱すことはない」と記した。
 このほか蒋医師は、98年に事件当時の軍の実力者楊尚昆元国家主席と会った際、楊氏が「事件はわが共産党が犯した歴史上最悪の誤りだ。将来(事件への評価を)正さなくてはならないだろう」と述べたことを明らかにした。

◎4人目のSARS感染者確認、中国、広州の男性医師(2004年1月31日、産経新聞)
 中国衛生省は1月31日、広東省広州市で新たに男性医師(40)が新型肺炎(SARS)に感染したことを確認したと発表した。中国本土でのSARS感染者は今冬4人となり、いずれも同市在住者。
 男性は発症前、動物やSARS患者への接触はなかったとしており感染源は不明。既に体調は回復し退院した。男性が隔離される一定期間前に接触した計48人にも異常はみられないという。
 衛生省によると、男性に発熱症状が出たのは1月7日。広州市衛生当局は同月24日にSARS感染の疑いがあると判断、衛生省は26日に報告を受けており、同省のSARS感染者の公表が遅いことがあらためて明らかになった。
 中国本土では昨年12月、今冬初めてのSARS感染者が広州市で報告され、今年1月上中旬にも同市で2人の感染者の報告があった。
 新たに確認された男性を含む4人の感染ルートはいずれも異なるとみられるが、このうち女性感染者が働く飲食店でハクビシンを入れるかごからSARSコロナウイルスが検出されており、これまでの調査ではハクビシンが感染源である可能性が強まっている。(共同)

◎2人のSARS感染を確認、中国広東省(2004年1月17日、産経新聞)
 中国衛生省は17日、新型肺炎(SARS)の疑いで広東省広州市内の病院に入院していた男女2人のSARS感染が確認されたと発表した。中国本土でのSARS感染者はこの冬、計3人になった。
 中国政府は22日からの春節(旧正月)休暇を控え、感染防止に全力を挙げる方針だ。
 新たに感染が確認されたのは飲食店店員の女性(20)と自営業の男性(35)。既に感染が確認されていた男性(32)も含め、いずれも感染源は異なるとみられている。
 一昨年に初めてSARSが報告された広東省で再び感染が広がっていることがあらためて確認された形だ。
 また、女性が働いていた飲食店内のハクビシンを入れるかごからSARSコロナウイルスが検出されており、ハクビシンが感染源の可能性が一段と強まっている。(共同)

◎SARS、ハクビシン収容すべてのかごから発見(2004年1月16日、日本経済新聞)
 【広州=北代望】中国広東省の広州市を訪れていた世界保健機関(WHO)の専門家チームは16日に記者会見し、滞在中に感染の疑いで広州で入院中の女性(20)が働いていた飲食店を調査した結果、食用のハクビシンを収容していた「すべてのかごから新型肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)のウイルスが検出された」ことを明らかにした。市内の野生動物市場でハクビシンを売買していた店舗のかごからからも同じウイルスが検出された。
 中国の春節(旧正月)に帰省ラッシュが始まり、SARS感染拡大の懸念が出ているが、同チームのロバート・ブレイマン代表は、「感染疑い例の早期発見や隔離を徹底するシステムが確立されており、公衆衛生に大きな危険はない」と強調した。同省での鳥インフルエンザ発生の可能性については、「発症者が出れば既存の監視システムに引っ掛かるはず」との見方を示した。

◎SARSの疑いの女性、来週にも退院へ、中国・広州(2004年1月15日、朝日新聞)
 新型肺炎SARSの疑いで広東省広州市の市第8人民病院に入院しているレストラン職員の女性(20)について、同院の唐小平院長は13日、「順調に回復しつつあり、来週にも退院できるだろう」との見方を示した。同省の日刊紙信息時報が14日伝えた。
 女性と接触があったとして隔離や観察下に置かれている100人についても、今のところ、健康状態の異常はみられないという。
 女性は12月25日に不調を訴え、翌日発熱。31日に入院後、1月7日に省衛生当局がSARS感染の疑いのある患者と認定した。

◎広州で新たなSARS感染者か、SARSで香港当局(2004年1月12日、産経新聞)
 香港の衛生当局は11日、中国広東省広州市の男性(35)が、新型肺炎(SARS)に感染した疑いがあるとして同市の第八人民病院で経過観察を受けていることを明らかにした。同省衛生当局から同日午後、通知を受けたという。
 中国の衛生当局は11日午後の発表で、同日午前10時までに新たな感染者などはなかったとしており、この男性を感染の疑い例に含んでいない。中国当局が公式に認めれば、8日に疑い例と確認された同市の飲食店店員の女性(20)に続き中国本土でこの冬3例目となる。
 広東省衛生当局は、男性について詳細を明らかにしなかったが、野生動物に接触する職業ではないという。
 香港の各メディアは、男性は初期検査で陽性反応が出たと報道。11日付香港紙、太陽報によると、男性は4、5日前に発熱症状を訴え別の病院に入院したが、熱が下がらないためSARS患者の隔離病棟がある第八人民病院に転院したという。
 同紙はまた、この男性のほかにも同省深●(●は土ヘンに川)市で感染の疑いがある患者が入院中とも伝えた。(共同)

◎新型肺炎疑いの中国女性、ハクビシンに接触していた(2004年1月9日、読売新聞)
 【北京=竹腰雅彦】9日付の中国青年報によると、中国広東省広州市で新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)感染の疑いがあると新たに確認された女性(20)が発症前、感染源と疑われる野生動物のハクビシンに接触していたことがわかった。
 女性は、野生動物料理を扱う同市内の有名レストラン従業員で、勤務中に接触したものとみられる。同省政府は、省内の野生動物市場や養殖場にいる1万匹のハクビシンについて、今月10日までの「撲滅」を指示している。

◎新型肺炎:感染疑いの女性、以前ハクビシンと接触 中国広州(2004年1月9日、毎日新聞)
 9日付の中国紙、中国青年報は、中国広東省広州市で新たに新型肺炎(SARS)感染の疑いがあると確認された女性が、野生動物のハクビシンと発病前に接触した経歴があると報じた。女性は野生動物を出す飲食店で働いていたことが分かっており、店内で接触したとみられる。
 先に感染が確認された男性患者のSARSコロナウイルスとハクビシンから検出されたウイルスの遺伝子の塩基配列がほぼ同じだったことが判明しており、感染源がハクビシンである可能性がさらに高まった。
 また、広東省の地方紙、信息時報(電子版)によると、ハクビシンの集中撲滅作戦を展開している広州市は10日から、ハクビシンを違法に売買した市民に対して、最高で10万元(約128万円)の罰金を科すことを決めた。(北京・共同)

◎SARS疑い患者、ハクビシンと接点(2004年1月9日、日本経済新聞)
 【広州=北代望】新型肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)の感染者1人と疑いのある患者1人が確認された中国広東省の広州市を再訪中の世界保健機関(WHO)調査団は9日、同省の専門家と感染源に関する会合を開いた。
 米疾病対策センター(CDC)のロバート・ブレイマン氏を団長とする調査団は、広州市呼吸疾病研究所の鐘南山所長らから、同市で食用の野生動物を扱う業者の抗体検査結果などに関する報告を受けた。7日に感染の疑いが確認された女性(20)が働いていた市内の海鮮レストランについて鐘所長は、感染源の疑いが強い「ハクビシンを扱っていたのは確実」と語った。ブレイマン氏は、この女性とハクビシンとの接点は「興味深いが感染源と確定したわけではない」との見解を示した。WHO北京事務所は9日夜、感染の疑いがあると診断された女性の血液など「すべてのサンプルを北京の研究機関とSARS研究に携わるWHOの国際研究機関へ同時に送るよう中国側に要請した」と発表した。

◎SARS:中国、ハクビシン撲滅作戦(2004年1月6日、毎日新聞)
 【北京・浦松丈二】新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)の感染源と疑われる野生動物ハクビシンの撲滅作戦が中国各地で繰り広げられている。広東省広州市の男性患者(32)の感染経路が判明していないことから、不安にかられた地方当局が作戦を推し進めている模様だ。
 新華社電によると、広東省トップの張徳江・省党委員会書記は5日、全市民を動員して「5日以内」に省内のハクビシンをすべて殺すよう呼び掛けた。省内には約1万匹が飼育されているが、1日2000匹以上のペースで処分する計画だ。
 広州市の野生動物市場「新源市場」では初日から、感染防止の防護服を着た係員100人以上がハクビシンを扱う業者を次々と摘発、84匹を捕獲した。ハクビシンは冷凍車などで市内の動物処理施設に運ばれ、セ氏200度の圧力高温鍋で6時間煮て処分されている。
 広東省以外でも、ハクビシンの飼育場15カ所がある海南省は6日、感染防止のために売買や輸送の一時停止を決めた。一方、飼育場60カ所がある湖北省は「地域経済に与える影響が大きすぎる」(農業当局者)との理由から処分を見合わせている。
 中国国内には「感染源として確認されたわけでもないのに強制処分は行き過ぎ」(中国紙「新京報」)という意見もあるが、野生動物を食材に使うのは中国でも広東省周辺に限られていることから、ハクビシン撲滅作戦は今後も過熱するとみられている。

◎中国・広州市男性のSARS感染確認、今冬2例目(2004年1月5日、産経新聞)
 中国衛生省は5日、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の疑いで入院している広東省広州市のフリーのテレビ番組制作関係の男性(32)について感染を確認したと発表した。
 感染者はこの冬に入り台湾の研究者に続いて2例目で、医学関係者以外では初めて。
 衛生省はこの男性以外に感染が疑われる症例はないとしているが、感染が確定したことで観光業など経済面に影響が出るのは確実だ。中国に進出している日系企業なども感染防止対策の強化が迫られる。
 感染ルートは分かっていないが、広東省疾病予防対策センターの5日の発表によると、男性から検出されたコロナウイルスと野生動物ハクビシンの同ウイルス遺伝子の塩基配列がほとんど同じという。
 フィリピン保健省は5日、香港から昨年末に帰国したフィリピン人女性を新型肺炎の疑いがあるとして隔離、検査中であることを明らかにした。
 5日付香港各紙は、広州市で新型肺炎に感染した疑いのある20歳代の女性が新たに見つかったと報じたが、地元衛生当局は「報告はない」と否定した。(共同)

◎SARS患者が退院、空港などでは体温検査続く、台湾(2003年12月30日、朝日新聞)
 台湾の今冬初の新型肺炎SARSの男性患者(44)が30日未明、入院先の台北市立和平病院から退院した。ただ、中国・広州市での疑似患者の発生もあったため、台湾では空港や病院で体温検査を続けている。
 この男性は国防大学予防医学研究所でSARSの研究をしていた。衛生署(厚生省)によると、男性は今月6日に研究所の実験室でSARSに汚染された廃棄物を処理する際に、ポリ袋から漏れた液体をアルコール噴霧器で消毒していて感染したとみられる。男性は16日に入院していた。

◎中国、SARS情報を素早く公開、前回の批判踏まえ(2003年12月28日、朝日新聞)
 中国の衛生省は27日、広東省で新型肺炎SARSに感染した疑いのある患者がいることを正式に発表し、情報公開の遅れを国内外から批判された前回とは違う素早い対応を見せた。情報公開が遅れれば再び大きな被害が出かねないとの強い警戒感があると見られる。
 衛生省は今春、SARS被害について実際より小さく発表し、「うその報告だ」との元医師の内部告発や国際的批判を受けた。北京などで患者が急増して、やっと党・政府が衛生相と北京市長を更迭し、情報を公開して国民の自己防衛を求めた苦い経験がある。
 その結果、多数の犠牲者を出す一方、国際的にも中国のイメージはダウンした。ただ、同時に、国民に正しい情報を伝え、一体となって感染経路を遮断することが被害を最小限に食い止める王道であることを学んだ形だった。
 また、「知情権」(知る権利)を訴える世論も受けて情報公開に動いたことが、就任したばかりの胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席、温家宝(ウェン・チアパオ)首相への国民の支持を高め、胡、温両首脳が基盤を固めるという政治的副産物も生んだ。
 前回の被害により中国への観光客が激減し、海外との交流、ビジネスが滞るという影響も出た。しかし、再発した際にまた「情報制限」をすれば、再流行の危険性があるうえ、「隠蔽(いんぺい)工作」が表に出ると、国際的な信頼をさらに失うことになる。胡、温両首脳にとっても、せっかく勝ち得た国民の支持を崩してしまいかねない。
 逆に言えば、情報公開は国際的な信頼をとり戻すチャンスであり、胡、温体制を安定させる道でもある。感染の疑いの段階であっても、早めに情報公開することが当局にとって有利だと判断したようだ。

◎中国・広州の男性、SARS感染の疑い、衛生省発表(2003年12月27日、朝日新聞)
 中国衛生省は27日、広東省広州市で肺炎と診断されて入院中の男性患者(32)に、新型肺炎SARSの疑いがあると発表した。感染が確認されれば、この冬では台湾に続き2例目、中国本土では初めての発生となる。患者は隔離治療中で、容体は安定しているという。衛生省は世界保健機関(WHO)に状況を通報するとともに、国内の医療衛生部門に患者発生時の診察体制の強化や、報告の徹底などを通達した。
 衛生省の発表や広州の日本総領事館の説明によると、患者は広州市内に住むフリーのテレビ番組制作者。今月16日夜に頭痛、発熱が始まり、体温は一時、39.9度まで上昇。20日に中山大学第1付属病院で肺炎と診断され入院、隔離された。
 胸部X線写真やCTスキャンで、いくつかのまだら状の影を確認。SARSウイルスに反応する抗体をELISA法という簡易なテストで調べると陽性だったが、さらに「免疫蛍光抗体法」で調べたところ陰性だったといい、24日から広州市第8人民医院で隔離治療を受けている。
 患者の体温は、この3日間は正常な状態が続いているという。広東省の衛生当局は、患者の住居や立ち寄り場所の消毒を行った。患者と密接に接触した人に対しても隔離して診察したが、今のところ発熱などの症状は出ていないとされる。
 台湾では今月中旬、軍の医療関係者が研究中にSARSに感染した、と当局が発表。広州市の患者がSARSと確認されれば、一般市民の感染としてはこの冬で初のケースとなる。
 中国本土では今年、広東省から広がったSARSで5300人余が感染し、約350人が死亡した。感染情報の隠蔽(いんぺい)や、病院間の連絡が機能せず感染拡大を招いた教訓から、9月中旬から連日、国内の感染状況を公表するとともに、関係部門が情報を共有するネットワークづくりを進めてきた。

◎台湾で軍中佐がSARS感染、今冬初、研究所で実験従事(2003年12月17日、朝日新聞)
 台湾衛生署(厚生省)は17日、台北県の男性(44)が新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)に感染したと発表した。今冬初めてわかった患者となる。男性は台湾軍の中佐で、国防大学予防医学研究所でSARSの研究をしていたという。同署はウイルスを扱う実験中に感染した可能性が高いとみている。
 男性は遺伝子検査(PCR法)の結果、SARSウイルスに陽性反応を示し、X線検査で肺炎も確認された。
 男性は8日から疲れを訴え、10日から発熱が続き、16日夜に入院。17日午前に別の専門病院に隔離された。男性の家族4人は自宅に隔離された。
 男性は5日に研究所でSARSウイルスを扱う実験に従事。7日には研究会に参加するためシンガポールを訪問し、10日に台湾に戻った。シンガポールには6人の研究者が同行した。同行者には発熱などの症状はない。衛生署では同じ飛行機に乗った人の隔離の必要はないとしている。
 台湾では今年前半のSARSの流行で、346人が感染し、37人が死亡している。
 世界保健機関(WHO)は7月5日にSARS終息宣言を出している。その後、9月にシンガポールの研究所で男性大学院生が感染している。WHOは医療従事者や検査室で働く人を対象に、監視強化を要請していた。

◎台湾の研究者SARS感染、単純ミスが原因(2003年12月17日、朝日新聞)
 台湾で17日に見つかった新型肺炎SARSの患者は、国防大学予防医学研究所でワクチンの研究をしていたベテラン男性研究員(44)だった。中央通信によると、研究員は「5日に研究所でSARSウイルスを扱う実験をしていて、検体を廃棄する際に手が検体に触れた」と話しており、単純なミスが感染につながったようだ。
 衛生署(厚生省)は17日、SARSへの警戒レベルを引き上げ、病院やデパートなどの公共施設での体温検査を始めた。研究所は閉鎖された。
 市民は平静に受け止めているが、飲食業や観光業界には不安も広がっている。従業員にマスクの徹底を求めるところも出てきた。SARSのニュースが流れた後、台湾の平均株価は前日より2.3%の下げとなった。
 中央通信によると、研究員が所属する軍の研究所は生物戦や細菌戦などへの対応を研究している。今年前半のSARS流行でワクチン開発の任務が加わった。
 国防部(国防省)軍医局によると、研究員は薬草や抗うつ剤など多くの薬品からSARSに有効なものを見つけ出す作業をしていた。

◎SARS:台湾で男性医学研究者が感染、制圧宣言後、初(2003年12月17日、毎日新聞)
 【台北・飯田和郎】台湾衛生署(衛生省)は17日、台北県在住の男性医学研究者(44)の新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)感染が確認されたと発表した。男性はすでに台北市内の病院に隔離されている。世界保健機関(WHO)が7月、SARS制圧を宣言して以来、台湾で初の発生例となる。
 発表によると、男性は台北県内の軍関係の予防医学研究所に勤務し、SARSに関する研究をしている。衛生署は「研究所内で感染した可能性が高い」とみている。容体は安定しているという。
 衛生署によると、男性の家族にも自宅での隔離措置が取られているが、SARSの症状は出ていないという。衛生署は即日、公共施設の入り口などで体温測定を強制的に実施することを命じた。WHOの統計によると、台湾では今年、SARSで37人が死亡した。
 男性は今月7〜10日、SARSについての会議に出席するためシンガポールに渡航した。男性は渡航翌日の8日に体のだるさを覚えたという。台湾に戻った10日から発熱し、15日には下痢症状も出たため、2度のSARSの遺伝子検査をした結果、17日、感染が確認された。衛生署は「発熱症状がなければ周囲の人に感染する可能性はないので、シンガポールでの滞在や同じ飛行機に乗り合わせた人に感染の心配はない」と説明している。

◇「院外拡大の心配はない」
 田代真人・国立感染症研究所ウイルス第3部長の話 実験室内での感染の可能性が最も濃厚だ。シンガポールに出張しているが、シンガポールは汚染地域ではないから、現地で感染した可能性は低いとみていい。もちろん、接触者の調査や隔離など十分な対策は必要だが、発症してまもないので、周囲に感染させている危険性も低いだろう。台湾もこれまでの教訓から初期対応を徹底しており、病院から院外の市中に広がる心配はしなくていいと思う。

◎SARS「鳥類と哺乳類のウイルス合体」、加研究チーム(2003年12月16日、朝日新聞)
 新型肺炎SARSのウイルスは、鳥類と哺乳(ほにゅう)類のウイルスが合体してできた可能性が強いと、カナダ・トロント大のチームが専門誌に発表した。インフルエンザの新型ウイルスが生まれる仕組みとよく似ており、SARSの予防法や治療法の研究に役立ちそうだ。
 SARSを起こす新型コロナウイルスの遺伝情報(ゲノム)を、鳥類や哺乳類から取った各種コロナウイルスと比較。新型ウイルスのゲノムは、鳥類と哺乳類のウイルスが半分ずつ混ぜ合わさったようなパターンになっていた。
 ウイルスが感染対象の細胞に入り込む時に欠かせない遺伝子も、鳥類と哺乳類のものが合体したような形だった。このため、人間の免疫系が新型ウイルスに効果的に対応できなかった可能性もあるという。

◎SARS元患者、骨壊死多発、北京で症例(2003年11月19日、産経新聞)
 【北京=福島香織】中国で新型肺炎(SARS)の元患者に骨壊死(こつえし)の症状が多発していることが明らかになり、治療に使用されたステロイド(副腎皮質ホルモン)剤の副作用との見方が強まっている。骨壊死は激しい痛みを伴い、歩行困難などの障害が残る場合が多い。ステロイド剤の副作用問題は医療関係者の間でまだ共通認識ができておらず、SARSが再発した場合、その治療をより困難なものにしそうだ。
 中国健康専門紙・健康報の報じた大まかな統計では、北京でSARSに院内感染した後、回復した医療関係者のうち、三割以上に骨壊死の症状がみられた。ほとんどが股(こ)関節の壊死だったという。
 これについて、北京中薬大学の徐林教授は「SARS治療で大量に投与されたステロイド剤の副作用」との見解を明らかにした。
 副作用としての骨壊死は、学会では突発性ステロイド性骨壊死症として知られ、ステロイド剤の長期使用による脂肪の代謝異常に起因するとみられる。
 徐教授は「ステロイド剤の大量投与は三日が限度。しかしSARS治療は一カ月以上投与を続ける場合が多い」と指摘した。
 骨壊死の発症例は五月ごろから見られ始めた。投与後の五年は発症の可能性があり、さらに発症者が増えるとの予測もある。
 しかし、現在のところSARS治療はステロイド剤と抗ウイルス剤の併用以外、有効な方法が確立されていない。
 衛生省が十月に発表した「SARS治療法案」にも、やはりステロイド剤の使用が明記されている。
 SARS治療におけるステロイド剤の投与量は、香港では一日0.5〜1g、広州市では0.1〜0.3g、カナダでは0.04g前後といわれ、地域や病院によってかなり格差がある。安全なステロイド剤の使用量と頻度や骨壊死との関係については専門家の間でも意見にばらつきがあり、SARSが再発した場合、医療現場に混乱が生じかねない状況だ。

◎SARS感染防止に効果、ウイルス殺す微粒子を開発(2003年9月29日、朝日新聞)
 鳥取大学農学部の大槻公一教授(ウイルス学)の研究グループと鳥取県用瀬(もちがせ)町の電気機械メーカー・用瀬電機(若林一夫社長)は29日、新型肺炎SARSウイルスと同種のウイルスを10分前後で10万分の1程度に死滅させる素材を開発した、と発表した。SARSはマスク着用や手洗いで予防できるが、「持続的に殺滅し、安全性が高いので感染防止に効果が期待できる」としている。この冬までに、新素材を添加したマスクやスプレーなどを実用化する予定。
 同教授らによると、新素材は、天然鉱物ドロマイト(白雲石)を同社のナノテクノロジー(超微細技術)で特殊加工した微粒子(直径1ナノメートル〜100ナノメートル、ナノは10億分の1)。
 同社が抗菌やダイオキシン抑制に効果のある素材開発を進めていることに大槻教授が着目。SARSウイルスと同科同属で、表面構造も一致する鳥コロナウイルス(鶏伝染性気管支炎ウイルス)と新素材を鶏卵に注入する実験などを繰り返した。その結果、鶏胚(はい)の正常な成長に影響はなくウイルス数は10万分の1以下に激減、感染力を失うことが分かったという。入手が難しいSARSウイルスでの実験はしていない。
 SARS感染予防策としては、世界保健機関(WHO)は高密度繊維マスクN95を推奨しているが、交換が毎日必要で、ウイルスを死滅させる効果はない。これに対し、新素材は少なくとも3カ月以上にわたって殺す効果があるという。ドロマイトは食品としての販売を厚生労働省が認可している。

◎シンガポールの男性、新型肺炎の感染を確認(2003年9月17日、読売新聞)
 【ジュネーブ支局】世界保健機関(WHO)は16日、今月初めに新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の陽性反応が出ていたシンガポールの男性について、「感染が確認された」と発表した。感染確認は、WHOによる7月5日のSARS終息宣言以降初めて。WHOでは、感染地域の多くがこれから冬を迎えることもあり、再流行の可能性もあるとして、警戒を呼びかけている。
 新たに確認された新型肺炎の患者は、シンガポールの細菌学研究施設に勤務する27歳の男性研究者。

◎シンガポールのSARSの疑いの男性、検査で陽性(2003年9月9日、朝日新聞)
 シンガポール保健省は9日、新型肺炎SARSの疑いがもたれていた男性(27)について、2回の検査で陽性の結果が出たことを明らかにした。同省は、この男性がSARSに感染している可能性が高いと認定した。男性はシンガポール国立大学微生物研究所の大学院生で、SARSウイルスを扱う研究所を8月下旬に研究のため訪れていた。最近の海外渡航歴はないという。世界保健機関(WHO)が7月5日にSARS終息を宣言して以来、感染者と認定されたのは世界で初めて。
 シンガポールのカウ・ブンワン保健相代行が9日会見し、「最終的な検査を米疾病対策センター(CDC)に依頼している」と述べ、男性を「可能性例」だとした。
 男性には高熱のほか、関節炎やせきなどの症状が出ている。遺伝子検査(PCR法)でSARS陽性と出たほか、血清検査でもSARSウイルスの抗体の上昇が見られる。一方、X線検査で肺炎は確認されなかった。
 現在のWHOの定義では、肺炎の症状がないとSARSにはならない。だが、カウ保健相代行は「古い定義でも、新しい定義でも、二つのテストで陽性が出た以上、公衆衛生の観点からSARSとして扱う」とした。
 同省は9日までに男性の家族や接触した同僚、医師など25人を自宅隔離した。
 男性は8月23日、同国内でもともと西ナイル熱を研究する環境衛生研究所を実験のために訪れた。その研究所では同17日までSARSウイルスに関する実験を行っていたという。男性の発熱は同26日に始まり、9月3日からシンガポール総合病院に入院。現在は、同国の伝染病センターに隔離されている。
 最近は海外渡航歴がなく、男性の感染源が環境衛生研究所である疑いが生じているが、保健省では「研究所は厳しくウイルス管理をしているうえ、研究所内で1週間もウイルスが生存する可能性は低く、断定できない」と判断を留保した。
 シンガポールはベトナム、香港などに次いで最も早い時期からSARSの被害を受け、238人が感染し、33人が死亡した。同国政府は感染者や感染者と接触した者を強制的に隔離、24時間監視する厳しい対策をとり、5月末に制圧を宣言した。だが経済や観光に受けたダメージは大きく、回復に向けて国を挙げて取り組んでいた。

◎シンガポールでSARS感染の疑い(2003年9月9日、朝日新聞)
 シンガポール保健省によると、新型肺炎SARSの疑いがある人物が同国内の病院で8日、見つかった。海外から帰国して症状があらわれ、1次テストで陽性の疑いが濃いと診断された。精密検査の結果は9日に発表される。保健省は、どこから帰国したかは公表していない。
 同国ではSARSに238人が感染し、33人が死亡した。5月31日にSARSの感染地域の指定を解除されている。

◎シンガポールでSARS「可能性例」、終息宣言以来初(2003年9月5日、日本経済新聞)
 【シンガポール=宮内禎一】シンガポール保健省は9日、SARSの感染者1人を確認し、接触した可能性のある25人を自宅隔離したと発表した。7月5日に世界保健機関(WHO)が終息を宣言して以来、感染者が見つかったのは初めて。感染経路は不明だがSARSが現実に再発することが明らかになった。SARS禍から回復してきたアジア経済に再び冷水を浴びせる恐れもある。
 同省によると、患者は27歳の中国系シンガポール人学生。シンガポール国立大学の研究機関で西ナイルウイルスの研究をしていた。中国などへの旅行歴はない。先月26日に発熱して治療を受けたが回復せず、今月3日に入院。8日の検査でSARSウイルスの陽性反応が出た。9日の再検査でも結果は変わらず、保健省は感染者と断定した。家族や研究機関の関係者に発熱などの症状は出ていないが、自宅隔離措置を取り、患者が入院している病院の一区画を閉鎖した。感染経路は現在調査中。保健省は「独立した症例とみられ、一般への感染の危険性は低い」としている。

◎SARS感染源、ハクビシンはシロ?香港大チーム発表(2003年9月5日、朝日新聞)
 新型肺炎SARSの感染源と疑われる野生動物のハクビシンについて、中国・広東省でハクビシンから見つかったウイルスは、人に感染してもSARSのような症状を起こさないことがわかった。香港大チームが4日付の米科学誌サイエンス電子版に発表する。
 広東省の市場で野生動物を扱う関係者35人の血清を調べたところ、11人からハクビシンが持つウイルスに過去に感染したことを示す抗体が見つかった。しかし、この半年間にSARSのような肺炎症状を示した人は1人もいなかった。
 2つのウイルスは極めて近い関係にあるものの、遺伝子配列の一部に違いがみられたという。ただ、ハクビシンのウイルスが人に感染していたことから、それが突然変異を起こしてSARSウイルスが生まれた可能性がある。
 世界保健機関(WHO)は5月、広東省の市場で売られていたハクビシンとタヌキの糞や、のどの粘液からSARSウイルスとほぼ同じ遺伝子配列のウイルスが見つかったとする同チームの調査の一部を発表。これが「ハクビシン起源説」を裏付ける根拠となってきた。
 同チームは今回、「ハクビシンやタヌキが持っていたウイルスは別の動物から移ってきたとも考えられる」と推測。「(ウイルスをもともと持つ)自然宿主は依然として不明」としながらも、ハクビシンやタヌキではない可能性もあるという考え方を示した。

◎台湾のSARS死者、独自集計で倍増180人に(2003年7月19日、朝日新聞)
 台湾衛生署(厚生省)は18日、新型肺炎SARSの死者が17日正午までに180人になったと発表した。台湾の死者は6月18日から84人のままだったが、一挙に倍以上に増えた。同署の担当者は「直接の死因以外にもSARS感染者すべての死を合計した」。台湾独自の集計だとした。台湾の累積感染者は670人で、死者が180人になると致死率は26.9%に跳ね上がり、世界で最もSARSの致死率が高い地域になる。
 台湾は今月5日に世界保健機関(WHO)のSARS感染地域の指定を解除された。その時点での死者は台北市など北部が58人、高雄市など南部が22人だった。新たな統計では北部が121人、南部が54人になった。
 衛生署疾病対策センターの施文儀・副センター長は「WHOの規定によれば死者は84人だが、感染者で心臓病や高血圧、自殺などで死んだ人も含めた。WHOからは要求されておらず出過ぎたことだが、台湾だけがこうした数字を報告することで誠実さを示した」と、独自集計公表の理由を語った。別の担当者は、隠蔽(いんぺい)していたわけではない、と話した。
 施氏はWHOには1ヶ月前に独自集計とWHO基準の2種類の死者の数字を報告したと話した。WHOの14日までの集計では、世界のSARSの死者と致死率は、中国348人(6.5%)、香港298人(17.0%)、カナダ38人(15.2%)、シンガポール32人(15.5%)など。

◎SARS患者、前日比19人増、増加数最低に(2003年5月28日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は27日夕(日本時間28日未明)、新型肺炎SARSの患者(可能性例を含む)が世界で、前日比19人増加し8221人に、死亡者は10人増えて735人になったと発表した。患者の増加数は、WHOが毎日数字の発表を始めた3月17日以降で最低となった。
 カナダや台湾では感染拡大に目の離せない状況が続いているが、全体として山場を越えた状態といえそうだ。

◎自宅隔離3442人に、カナダ・トロント周辺(2003年5月28日、朝日新聞)
カナダ・オンタリオ州の保健衛生当局は27日、新型肺炎SARSの感染拡大を防ぐために、トロントと同市周辺で3442人に自宅隔離の措置を取っていると発表した。26日には自宅隔離は2200人だったが一気に増えた。感染者(可能性例)も11人から12人に増えた一方、「疑い例」は41人から21人にほぼ半減している。
 トロント周辺の再流行は、ノース・ヨーク総合病院で4月に骨盤手術を受けた男性(96)=死亡=が発端だったとみられる。これまでのところ、感染者と接触した医療関係者らを介した限定的な広がりにとどまっている。
 ロイター通信によると、オンタリオ州の保健当局者は「いまのところ地域社会に広がっているとの報告はない」としつつも、隔離などの措置が取られる前に感染した人の発症が、今後数日間に見込まれる、と説明している。

◎SARS死者725人、致死率8.8%に上昇、WHO(2003年5月27日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は26日夕(日本時間27日未明)、新型肺炎SARSの患者(可能性例を含む)の数が世界全体で、24日に比べて61人増加し8202人に、死亡者は29人増えて725人になったと発表した。患者数の増勢が鈍る中で、死者数は依然として、高水準が続いており、患者に占める死亡者の割合も8.8%まで上昇した。
 この日の発表では、カナダで8人の新患者(うち死亡3人)が報告されたのが目立つ。同国からの新患者報告は今月2日以来初めて。
 新患者の合計は81人だった。このうち中国は24人、香港は2人にとどまったが、台湾は47人といぜん高水準で推移している。一方、SARSでないことがわかり患者リストからはずれた人が20人いた。

◎SARS、トロントで再び拡大、3人死亡(2003年5月26日、朝日新聞)
 カナダ最大の都市トロント周辺で新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の新たな感染が拡大し、ロイター通信などによると、いわゆる「可能性例」と「疑い例」を合計した発症者は25日までに約30人に増えた。うち3人が死亡しており、カナダの保健衛生当局によると、SARSに関連した同国内の死亡累計は27人になった。世界保健機関(WHO)は今月14日にトロントの感染地域指定を解除し、事実上の「制圧宣言」をしたばかりだ。
 ロイター通信などが伝えたカナダ・オンタリオ州保健当局者の情報によれば、当局は発症者に接触した可能性のある800人以上に自宅待機を要請するなどして「隔離策」をとっている。こうした事態を受けて、米疾病対策センター(CDC)は、いったん解除していたトロントへの旅行者に対する「渡航注意」を復活させている。

◎台湾、中国からのSARS救援物資断る(2003年5月25日、朝日新聞)
 台湾の対中国交流窓口機関、海峡交流基金会は25日、中国の海峡両岸関係協会に書簡を送り、中国側が台湾に提供を申し入れていた新型肺炎SARSの医療救援物資の受け入れを断った。中国側は医療マスクや防護服、救急車などを準備し、23日に書簡で伝えていた。
 台湾側は、中国での感染を抑えることによってこそ全世界の恐怖を軽減できると指摘。台湾の医療物資には不足はないとして、中国の準備した物資は中国で使うように求めた。さらに、必要ならば台湾は中国に協力すると申し入れた。
 また、台湾側は世界保健機関(WHO)への参加が今回も中国の妨害で阻止されたと厳しく非難した。

◎SARS、死者700人超す、台湾では12人死亡の報告(2003年5月25日、朝日新聞)
 新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)による世界の死者が25日、700人を超えた。世界保健機関(WHO)が24日夕現在でまとめたSARSの患者(可能性例を含む)数は世界で8141人(前日比24人増)、うち死者は696人(同7人増)だったが、25日に台湾で12人、中国(香港、マカオ除く)で7人、香港で4人の死亡が報告され、3カ国・地域分を加えただけでも累計は719人となった。
 患者数の増勢は鈍っているが、WHOはSARSの致死率を14〜15%と推計しており、死亡者は今後も高水準で増え続けると見られる。
 一方、WHOは24日、カナダの保健当局からSARSに似た症状の患者がトロントで2グループ計30人以上出た、との報告を受けた。まだ、調査結果がそろっていないため、同日の新患者数には計上されていない。26日以降、トロントを再び感染地域に指定するかどうかを判断するという。

◎北京で26人増加、SARS感染は再び増勢(2003年5月24日、朝日新聞)
 中国衛生省が24日発表した同日午前10時(日本時間同11時)までのSARS感染者数統計によると、北京市では新たな感染者が26人に上り、8日ぶりに20人を超えた。同日午前に記者会見した共産党北京市委員会の蔡赴朝宣伝部長は「感染は明らかに下火になっている」と成果を強調したが、制圧にはまだ時間がかかりそうだ。
 全国(香港、マカオを除く)では前日から新たに34人増え、感染者は累計で5309人に達した。死者は5人増えて308人。世界保健機関(WHO)が渡航延期勧告を解除した広東省では新たな感染者はいないが、11人に感染の疑いがかかっている。

◎香港、初めてSARS感染者ゼロ(2003年5月24日、朝日新聞)
 香港政府は24日、前日午後からの新型肺炎SARSの新たな感染者は0人、死者は2人、退院者は11人と発表した。新たな感染者ゼロを記録したのは、プリンス・オブ・ウェールズ病院で院内感染が判明した3月12日以来初めて。感染者はのべ1724人、死者は262人。現在入院中の感染者は200人を切り、196人となった。死者の1人は35歳の男性で、民間団地アモイガーデンの住民。同団地の死者は42人目。

◎こうもり、ヘビからもSARSウイルス検出、中国で報道(2003年5月24日、朝日新聞)
 華僑向け通信社中国新聞社は24日、中国農業省の動物コロナウイルス研究チームの話として、ハクビシンのほかコウモリ、サル、ヘビなどからもSARSウイルスと同一遺伝子配列のコロナウイルスが見つかったと伝えた。これらの動物から見つかったウイルスの遺伝子配列が、SARSのコロナウイルスと完全に一致した、といい、SARSの起源を探る「研究上の突破口になる」としている。

◎食用のタヌキからSARSウイルス、中国南部の市場(2003年5月24日、朝日新聞)
 世界保健機関(WHO)は23日、中国南部の市場で食用として売られている野生動物のハクビシンとタヌキから、新型肺炎SARSウイルスとほぼ同一のウイルスが確認されたと発表した。SARSがこれらの野生動物から人間に感染した可能性があり、WHOでは、直接接触したり、血液や排泄(はいせつ)物などに触れたりすることは危険だとして注意を呼びかけている。
 香港と中国の研究グループが、広東省の市場で売られていた8種類25匹の野生動物を調べたもので、ハクビシンとタヌキからSARSウイルスとほぼ同じ遺伝子配列のウイルスが見つかった。このうち、ハクビシンは調べた6匹すべてからウイルスが見つかるか、遺伝子検査(PCR法)で陽性を示した。
 また、これらの動物の血清が、SARS患者から採取したウイルスの増殖を抑えたことから、SARSウイルスに対する抗体を持っていることもわかった。抗体はこの2種類以外にアナグマからも見つかったという。
 WHOでは「これらの動物から人に感染した確証はまだない」としながらも、「SARSウイルスが人間以外の動物で確認されたのは初めてのことで、直接接触したり、血液や排泄物に触れたりすることは危険がある」としている。
 ただ、ウイルスの量が人に感染させるだけあるかは確認できなかった。WHOでは、これらの野生動物が、えさを通じてウイルスを取り込んだ可能性もあるとしており、さらに詳しい調査を続ける予定だ。

◎SARS「今冬に大流行の恐れ」、米専門家が指摘(2003年5月23日、朝日新聞)
 新型肺炎SARSが、今年の冬に猛威をふるうとの見通しを、米国の感染症研究の第一人者が米議会で証言した。衛生当局の責任者たちも同意した。風邪ウイルスの変種のSARSウイルスは、低温で空気が乾く時期になると急速に広がる恐れが強いという。
 上院公聴会で証言したのは、ミネソタ大感染症研究政策センターのマイケル・オスターホルム所長。感染拡大が落ち着きつつあるのは、夏に向かっているためと指摘。「冬になれば復活し、今よりはるかに急速に広がるだろう」と証言した。
 同席した疾病対策センター(CDC)のガーバーディング所長と国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長も、同ウイルスは冬に広がりやすい性質をもっている可能性があると指摘した。
 また、オスターホルム所長は「20年後には世界中に蔓延(まんえん)しているだろう」とも述べた。
 SARS対策の切り札となるワクチンは、米国や日本などが開発を急いでいるが、安全性の確認も含め、実用化まで少なくとも2、3年はかかると専門家らは見ている。

◎台湾のSARS死者8人増、感染者は65人増(2003年5月22日、朝日新聞)
台湾衛生当局は、22日午前までの新型肺炎SARSの感染者は前日より65人増えて483人に、死者は8人増えて60人になったと発表した。感染者の1日の増加数としては最多だ。当局によると、検査の迅速化で今月上旬までに発症した例の確認が進んだ。
 死者8人のうち6人は院内感染が起きた南部の高雄県の長庚病院で、残る2人は台北市の病院で死亡した。
 行政院(内閣)SARS対策委員会代表の李明亮氏によると、3月半ばからの台湾の感染の推移には三つのピークがある。4月10日ごろまでは感染者の8割近くが中国や香港などの島外から入ってきた人にうつされた。その後は島内での発症が9割を超し、4月下旬に台北の市立和平病院や仁済病院などで院内感染が起きた。
 さらに第3のピークとして、5月上旬からの台北市の台湾大学付属病院や馬偕記念病院、高雄県の長庚病院などでの院内感染があり、なお収まっていない。この中でも台湾での最大の「感染源病院」となったのが、台北市立和平病院だ。

◎SARS患者、台湾で39人増、1日の増加数では最高(2003年5月21日、朝日新聞)
 世界保健機関(WHO)は20日夕(日本時間21日未明)、新型肺炎SARSの患者数(可能性例を含む)が、前日に比べ55人増えて7919人に、死者は同19人増の662人になったと発表した。
 新患者は台湾で39人と1日の増加数としては、これまでの最高を記録した。中国では17人の増加にとどまった。香港でも4人の新患者が出た。SARSでないことがわかって感染リストからはずれた人は5人だった。
 死亡者も台湾で12人増加し、中国の5人、香港の2人を大きく上回った。台湾の患者(383人)に占める死亡者(52人)の比率は、13.6%と極めて高い水準にある。世界の平均は8.4%。

◎渡航延期勧告対象を台北から台湾全土に拡大、WHO(2003年5月21日、朝日新聞)
 世界保健機関(WHO)は21日、新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の患者が増え続けている台湾への渡航延期勧告対象を、台北から全土に拡大すると発表した。台北に限定した勧告は、8日に出された。渡航延期勧告は中国の北京、天津、広東省、山西省、河北省、内モンゴル自治区、香港にも出されている。
 台湾でのSARS患者の数や増え方、感染の広がりなどを検討した結果、勧告の範囲を拡大する必要があると判断した。WHOが20日夕(日本時間21日未明)現在でまとめた台湾のSARS患者数(可能性例も含む)は383人、うち死者は52人に達する。
 台湾衛生当局によると、21日午前までの患者は前日より35人増えて418人になった。感染の中心は南部の高雄地区に移りつつあるとして、住民に警戒を呼びかけている。
 衛生当局によると、新たに南部の台南県の奇美医学センターでも院内感染が起き、21日までに医療関係者30人が隔離された。患者の1人が院内感染が起きている南部の高雄県の長庚病院で持病の定期検診を受けていた。
 南部の高雄市の高雄医学大学付属病院では21日までに9人が死亡、感染の疑いのある40人の届け出があった。このうち13人は隣の高雄県の長庚病院で治療を受けている。当局は市民に複数の病院で治療を受けるのをやめるよう呼びかけている。

◎台湾のSARS死者12人増、1日としては最多(2003年5月20日、朝日新聞)
 台湾衛生当局は、20日午前までの新型肺炎SARSの感染者は前日より39人増えて383人に、死者は12人増えて52人になったと発表した。感染者、死者とも1日の増加数としては最多だ。新感染者の大半は院内感染によるものだ。中央通信は、世界保健機関(WHO)が、台湾を世界で最も感染拡大の速度が速い地域と見なしていると伝えた。救急部門での対策のまずさが最大の原因という。
 衛生当局によると、南部の高雄市の高雄医学大学付属病院で20日までに感染の疑いのある35人の届け出があった。このうち13人は、すでに院内感染が起きている隣の高雄県の長庚病院で治療を受けている。当局は市民に複数の病院で治療を受けるのをやめるよう呼びかけている。
 台北北部の市立関渡病院では18日までに医師や看護師、職員ら6人に症状が出たため、直ちに救急診療をやめた。19日には院長が通報の遅れの責任をとって解任され、罰金30万台湾ドル(約100万円)を科された。
 行政院(内閣)SARS対策委員会代表の李明亮氏によると、3月半ばからの台湾の感染の推移には三つのピークがある。4月10日ごろまでは感染者の8割近くが中国や香港などの島外から入ってきた人にうつされた。その後は島内での発症が9割を超し、4月下旬に台北の市立和平病院や仁済病院などで院内感染が起きた。
 さらに第3のピークとして、5月10日ごろからの台北市の台湾大学付属病院や馬偕記念病院、高雄県の長庚病院などでの院内感染があり、なお拡大している。この中でも台湾での最大の「感染源病院」となったのが、台北市立和平病院だ。

◎台湾の新型肺炎死者40人に、台北で新たな院内感染か(2003年5月19日、報知新聞)
 中央通信によると、台湾の衛生署(衛生省)は18日、台湾の新型肺炎(SARS)による死者が前日比5人増の40人、死者を含む感染者数は1日の増加数としては最多の36人で、計344人となった、と発表した。
 新たな感染者の大半は、院内感染が起きた台北市の台湾大医学部付属病院と南部の高雄長庚記念病院関係者。新たな死者の中には院内感染で閉鎖された台北市立和平病院関係者が含まれており、病院が主要感染ルートとなっている実態が浮き彫りになった。
 同通信によると、関西旅行から台湾に戻り、17日に感染が確認された馬偕記念病院(台北市)の医師(26)は依然肺炎の症状を示しているものの、発熱やせきはなく、容体が安定しているという。
 台北市立関渡病院でも同日までに清掃作業員、救急診療部の医師、女性看護師ら6人が新型肺炎に似た症状を示し、隔離措置が取られた。(共同)

◎SARS感染者隔離妨害で懲役刑、中国・河北省(2003年5月18日、朝日新聞)
 18日の中国各紙によると、中国河北省保定市雄県の裁判所は16日、新型肺炎のSARS感染者の隔離措置を妨害したなどの罪に問われた被告6人に対し、懲役5?1年の判決を下した。被告たちは4月下旬、当局が地元のホテルを感染者の隔離施設にしようとしたことに抗議し、「大衆を扇動して」、自動車を破壊したり、施設に放火したりしたとされる。
 中国の農村部の一部ではSARS感染の広がりを恐れて、村人が勝手に公道を封鎖するなどの問題が生じている。当局は社会秩序の混乱を恐れ、こうした動きに厳しい姿勢を打ち出している。

◎SARS、台湾の新患者数、中国上回る WHO発表(2003年5月18日、朝日新聞)
 世界保健機関(WHO)は17日、新型肺炎SARSの患者数(可能性例を含む)が世界で、前日に比べ22人増えて7761人に、死者は同12人増の623人になったと発表した。この数字には台湾当局が同日発表した新患者34人が含まれておらず、それを加えると患者数は7795人となる。死者数は変わらない。
 中国の新患者数は28人で、SARSの発生以来、台湾の新患者数が、中国を上回ったのは、この日が初めて。全体として患者の増勢が鈍る中で、台湾の感染拡大が目立つ。
 一方、死亡者の増加ペースは高水準で、患者数に占める死者の割合も8%に上昇した。

◎SARS、日本での拡大は「可能性低い」と専門家ら(2003年5月18日、朝日新聞)
 日本から戻った台湾人医師(26)が新型肺炎のSARS患者と認定されたことで厚生労働省は警戒を強めている。ただ、同省や国内の専門家は、この医師から日本で感染が広がった可能性は低いとみている。

・感染ルート
 世界保健機関(WHO)は「SARSの感染には患者を看病したり、患者と同居したり、つばやたんに直接触れるなど密接な接触が必要」とみている。
 患者の近くでせきやくしゃみを浴びたり、SARSウイルスを含んだ飛沫(ひまつ)などがついた物に直接触れたりすると感染の可能性があるが、道路で患者とすれ違った程度の接触ではまず感染の恐れはないという。
 台湾人医師は日本滞在中、主に貸し切りバスで移動するなど団体行動をしており、観光先で第三者と「密接な接触」をする機会は極めて限られていたとみられる。
 厚労省や地元自治体の17日夕までの調査では、医師が滞在した宿泊先などで発熱などの異常を訴える人は出ていない。ただ接触の可能性がある関係者に10日間の自宅待機を求め、より慎重に経過を見守る。
 香港では、ホテルやマンションで感染が広がったこともあるが、感染力の強い重症患者が滞在していたことや、排水管など構造上の問題があり、日本と事情が異なる。

・感染力
 WHOは「SARSが感染するのは症状の出ている人から」とみる。SARSの症状は、38度以上の高熱、せき、全身倦怠(けんたい)感、一部に下痢など。香港での調査では、発症から10日目にのどの粘液のウイルス量がピークになり、他人への感染もこの前後に集中しているようだ。
 医師が日本滞在中、発熱はしていても、せきや下痢などの症状は出ていなかったとされる。
 同じツアーで8?13日に日本に滞在した台湾人20人に症状は出ていない。京都府立医大の今西二郎教授(ウイルス学)は「この医師からの感染力はそれほど強くないだろう」と話す。
 SARSウイルスは乾燥したプラスチックの上で2日間、下痢便中では4日間生存することが実験レベルで確認され、感染力は当初の考えより強いとの見方が出ている。
 しかし医師の離日は13日。ウイルスが生き続ける可能性は低い。「医師が立ち寄った場所に今出かけても感染の危険性はほとんど考えられない」と今西教授はいう。
 厚労省は「発熱などがあって心配な場合は地元の保健所などに相談し、医療機関で受診して欲しい」と冷静な対応を呼びかけている。

◎旅行医師のSARS感染で台湾外交部長がおわび表明(2003年5月18日、朝日新聞)
 台湾の簡又新・外交部長(外相)は17日夜、日本旅行をした台湾人医師が新型肺炎SARSに感染したことが判明したことについて「日本の人々の生活に不安と混乱を招いたことを心からおわびします」との声明を出した。

◎台湾のSARS感染者は34人増 1日としては最多(2003年5月17日、朝日新聞)
 台湾衛生当局によると、17日午前までの新型肺炎SARSの感染者は前日より34人増えて308人になり、死者は前日と同じ35人だった。感染者の増加は1日としては最多だった。
 新たな感染者は台北市などの病院での院内感染が大半。南部の高雄県の長庚病院でも5人の感染が確認された。

◎日本から帰国の台湾人医師、SARS患者と認定(2003年5月17日、朝日新聞)
 台湾衛生署(厚生省)は17日、日本を観光し、台湾へ戻ってから隔離されていた台北市の馬偕記念病院の台湾人男性医師(26)を新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)患者と認定した。医師は今月8日から13日まで大阪、京都、兵庫などに滞在していた。厚生労働省は、医師の立ち寄った先に行って発熱などの症状が出ている人は、最寄りの保健所に電話で相談するよう、呼びかけている。
 医師は遺伝子検査(PCR法)の結果、SARSウイルスに陽性反応を示した。馬偕記念病院によると、17日の体温は37.2度、白血球の数値も上昇している。両肺に浸潤があり、下痢症状がみられるという。
 医師は集団感染が起きた同病院の救急診療部に勤務。病院によると、今月4日夜から翌朝まで救急診療部で勤務に就いていた。SARS患者への直接の接触や診察はしていなかったが、同じ部の一般観察区域には後に死亡した男性のSARS患者がいた。
 この医師は日本旅行中にせきの症状がなく、団体ツアーで日本人との接触は限られていたとみられる。このため、厚労省は「いまのところ2次感染の可能性は低い」としているものの、医師が宿泊した大阪、京都、香川、兵庫のホテルなどで従業員に続き、宿泊客の調査にもとりかかる。
 また、情報提供や問い合わせに素早く対応できるよう、自治体との連絡窓口のオペレーションセンターを省内に設置した。都道府県から「連絡や発表が届くのが遅い」と批判されたためだ。約10人の職員と疫学調査や院内感染対策の専門家を配置する。
 さらに、台湾人医師が関西空港から入国した際、SARS感染の可能性がある医師だと把握できなかったことを受けて、航空機内で配布する問診票に、職業やSARSの可能性のある人との接触歴の記載を追加する検討を始めた。
 13日夜から発熱し、現在入院している団体ツアーの貸し切りバス運転手の日本人男性は、熱が下がり、SARS感染の可能性は低いとみられているが、国立感染症研究所などでSARSウイルスの遺伝子検査をする。

◎SARSの患者増はピーク時の2割 WHO発表(2003年5月17日、朝日新聞)
 世界保健機関(WHO)は16日夕(日本時間17日未明)、新型肺炎SARSの患者数(可能性例を含む)が世界で、前日に比べ40人増えて7739人に、死者は同13人増の611人になったと発表した。新患者は54人出たが、一方で、SARSでないことが判明したとして14人が患者リストから外れた。
 患者の増加数は今週に入って減少が続いており、この日はピーク時の5分の1の水準にとどまった。患者全体の67%を占める中国で新患者数が急速に減ってきたことが大きく寄与している。

◎新型肺炎:死者573人、患者7548人、WHOまとめ(2003年5月14日、毎日新聞)
世界保健機関(WHO)の13日午後5時(日本時間14日午前0時)のまとめによると、新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)による死者は前日より21人増の573人、患者数(可能性例を含む)は同101人増の7548人に上った。中国、香港、台湾以外では新たな死者は発生しなかった。患者は32の国・地域から報告されている。中国は死者262人、患者5086人でともに最多だった。

◎SARSの死者増加、ピーク時の水準に WHO発表(2003年5月14日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は13日夕(日本時間14日未明)、新型肺炎SARSの患者数(可能性例を含む)が世界で、前日に比べ101人増えて7548人に、死者は同21人増の573人になったと発表した。
 患者の増加数は先週末から、ピーク時の半分の水準で推移しているが、死者数は9日以降増え続けており、ピーク時の水準に戻った。このため、患者数に占める死亡者の割合は、7.6%に上昇した。

◎「最大の感染源」は82歳の女性、50人以上感染、北京(2003年5月13日、朝日新聞)
北京で2番目にSARS感染者が多発している東城区の最大の感染源が82歳の女性であることを区当局が明らかにした。12日の香港紙サウスチャイナ・モーニングポストが伝えた。
 女性の感染源は不明だが、発病前に2カ月間、香港に滞在していた。3月21日に同区の東直門病院に入院。当時、医療関係者は感染の危険を十分認識しておらず、50人以上が感染したという。当局はこの女性は感染力が特に強いスーパースプレッダーだったとみている。
 同病院には、香港から北京に向かう旅客機内で多数の乗客への感染源となった72歳の男性も入院していた。

◎台湾、SARS感染者220人、死者25人に(2003年5月13日、朝日新聞)
台湾の衛生当局は、新型肺炎SARSの13日午前までの感染者が前日より13人増えて220人に、死者が1人増えて25人になったと発表した。依然として感染者の2けたの増加が続いている。
 台北市内に事務所を持つコンピューター大手のデルでは、従業員に感染の疑いのある例が出たため、12日から事務所を閉鎖し、全員を在宅勤務にした。外国企業の事務所の閉鎖は初めて。

◎北京のSARS感染者、8%は軍関係(2003年5月13日、朝日新聞)
中国で新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染状況などを調べている世界保健機関(WHO)の専門家チームは13日、北京市内で記者会見し、北京の全感染者の8%が軍関係者であることを明らかにした。しかし、軍関係者が感染した経路など詳しい状況はWHOに伝えられておらず、北京で感染拡大当初に問題になった軍関係の被害の不透明さがその後も続いていることを示した。
 中国衛生省の発表によると、同日朝現在、北京市の感染者は48人増え、計2347人になった。このうち8%が軍関係者だとすると、約190人ということになる。
 専門家チームは「軍関係者の感染経路についての情報提供がなく、北京での感染経路が把握できていない」と述べ、北京の感染拡大が抑制できたと言い切れない理由の一つに挙げた。
 中国衛生省が4月20日、北京市の感染者数を40人から8.5倍に修正した際、軍病院などの患者数が含まれていなかったためと説明し、今後はデータを統一するなどSARS対策を改善することを約束していた。また、WHOとも積極的に協力したいと表明していたが、今回の指摘で、いずれも問題を残していることが明確になった。
 中国衛生省の13日の発表によると、SARSによる死者は全国で10人増え、計262人となった。感染者は80人増え、計5086人。

◎SARS、1日の患者増が100人切る ピーク時の半分(2003年5月13日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は12日夕(日本時間13日未明)、新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の患者数(可能性例を含む)が世界で、10日の前回まとめに比べ151人増えて7447人に、死亡者は同26人増の552人になったと発表した。
 この数字には、12日に台湾で発表された新患者23人、新たな死者8人が含まれていないが、それを入れても、1日当たりの患者増は100人を切り、ピーク時の半分以下の水準となった。1日の患者増が100人を切ったのは、4月22日以来。患者の7割近くが出た中国で、新患者数が減少を続けていることが貢献している。
 しかし、死亡者増は12日の台湾分を加えると、ピーク時に近い水準で、9日の前日比8人増を底に、ここ数日増加を続けている。

◎SARS感染のかぎ握る患者が失踪 香港紙報道(2003年5月12日、朝日新聞)
新型肺炎SARSの最初の患者の1人で、動物から人間へのウイルス感染の謎のかぎを握るとされる男性が行方不明になっている、と12日付の香港紙明報などが伝えた。
 男性(35)は広東省河源出身。深センで野生動物料理のコックをしていたが、昨年12月に発熱、河源の病院に入院。広州へ転院した。その間、医師や看護師8人に伝染した。
 河源では似た病例が他にもあり、コックなど野生動物と関係がある職業の人が多かったという。省の防疫専門家が行方を捜している。

◎台湾の死者28人に(2003年5月12日、産経新聞)
 中央通信によると、台湾の新型肺炎(SARS)による死者は12日現在、前日比8人増の28人となった。死者を含めた感染者数は23人増の207人で、200人の大台を突破した。
 世界保健機関(WHO)から新型肺炎流行の「重度」地域に指定された台北市では12日、陸軍化学部隊が感染拡大防止のため、大規模な消毒作業を開始した。
 トラックや大型の消毒剤噴霧車両計約60台が出動、兵士1210人、憲兵500人らが作業に当たり、集団感染の恐れがあるとして強制封鎖された賃貸アパートのある南西部の万華区などで消毒を実施した。
 迷彩服の上に青い防護服を着用し、噴霧器を背負った兵士があちこちで消毒液を散布。多くの商店は臨時休業し、街角は異様な雰囲気に包まれた。
 軍による消毒作業は1週間続けられる。(共同)

◎誤診や情報隠ぺいの疑い、台北市衛生当局が院長解任(2003年5月12日、産経新聞)
 台北市衛生当局は12日、新型肺炎(SARS)の集団院内感染を引き起こし、4月に閉鎖された市立和平病院の呉康文院長を解任したと発表した。12日付の台湾紙、聯合報によると、同病院は誤診や感染情報隠ぺいの疑いが持たれており、院長は感染拡大の責任を問われたとみられる。
 和平病院は4月24日から2週間閉鎖、今後は新型肺炎の専門病院になる予定。
 これまでに婦長や女性看護師らが死亡し、衛生当局などによると、新型肺炎の死者28人のうち半数強が和平病院関係。感染者207人のうち103人が和平病院絡みという。
 陳水扁総統は12日「情報が隠されれば、医療スタッフの生命が脅かされる」と批判した。
 聯合報は、和平病院では(1)新型肺炎患者を肺水腫と誤診し、隔離措置を取らなかった(2)閉鎖決定直前の内部会議で院長は「女性看護師の発熱は過労のため」と述べ、院内感染についてあえて触れなかった?などと指摘した。
 陳総統は「22日に院内感染について衛生当局に聞いたところ『和平病院の報告では問題ない』との返事だったが、安心できず再度、調査を求めた。結果として24日に閉鎖が決まった」と述べ、情報隠ぺいがあったことを示唆した。呉氏は情報隠ぺいについて強く否定している。(共同)

◎台湾で死者6人増加、新型肺炎(2003年5月12日、産経新聞)
 台湾の衛生当局は12日、同日午前までに新型肺炎(SARS)による死者が前日比6人増の24人になったと発表した。感染者数は23人増の207人で、200人の大台を突破した。
 世界保健機関(WHO)から新型肺炎流行「重度」地域に指定された台北市では12日、陸軍化学部隊が感染拡大防止のため大規模な消毒作業を開始した。
 消毒車両約50台、大型消毒車両10台が出動し、兵士1210人、憲兵500人らが作業に当たり、集団感染の恐れがあるとして強制封鎖された賃貸アパートがある南西部の万華区などの消毒を実施した。
 迷彩服の上に青い防護服を着用し、背中にボンベを担いだ兵士があちこちで消毒液を散布、多くの商店が臨時休業し、街角は異様な雰囲気に包まれた。
 軍による消毒作業は19日まで1週間続けられる。(共同)

◎化学部隊が台北市内消毒(2003年5月12日、産経新聞)
 世界保健機関(WHO)から新型肺炎(SARS)流行「重度」地域に指定された台北市で12日、陸軍化学部隊が感染拡大防止のため大規模な消毒作業を開始した。
 午前中は、集団感染の恐れがあるとして強制封鎖された賃貸アパートがある南西部の万華区の消毒を実施。消毒車両約50台、大型消毒車両10台が出動し、兵士1210人、憲兵500人らが作業に当たった。
 迷彩服の上に青い防護服を着用し、背中にボンベを担いだ兵士があちこちで消毒液を散布、多くの商店が臨時休業し、街角は異様な雰囲気に包まれた。
 軍による消毒作業は19日まで1週間続けられる。(共同)

◎新型肺炎:16人死亡の公立病院 感染拡大を隠ぺいか、台湾(2003年5月12日、毎日新聞)
 【台北・飯田和郎】新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)の院内感染で16人が死亡した台北市立和平医院で、感染が正式確認される前、「多くの人に感染の疑いがある」との連絡を受けた陳水扁・台湾総統が調査を命じたところ、同院が「問題はない」と回答していたことが12日、明らかになった。中国では当局が初期段階で感染者数を隠して問題になったが、台湾でも大量感染を招いた公立病院の無責任体質が浮き彫りになった。
 陳総統自身が暴露した。総統は4月22日、別の病院の副院長から電話で、和平医院がSARSで「極めて危険な状況にある。院内感染も広がっているようだ」と知らされた。態を重くみた総統は、行政院(内閣)の担当官庁である衛生署に調査を命じたが、和平医から同署に返ってきた報告は異常を伝える内容ではなかったという。
 しかし、総統はさらに調査を指示。この結果、院内感染が判明し、同院は同24日に全面封鎖された。総統は感染し死亡した女性看護師の名前を挙げ、院内スタッフですら「SARSの感染状況を知らなかった」と怒りをあらわにした。
 和平医院を管理する台北市は12日、院長を解任したが、馬英九市長は「SARS対策で疲労しているため」と説明、院長が当時、状況を隠ぺいしていたかどうかを調査すると約束した。
 同医院では入院患者や看護師、介護人らが感染で死亡したほか、封鎖直後に感染の恐れがある男性が前途を悲観して自殺。また、医師が勝手に病院を抜け出すなどモラルも問題になった。

◎新型肺炎:中国政府が対策強化の政令施行、虚偽報告に免職も(2003年5月12日、毎日新聞)
 【北京・浦松丈二】中国政府は12日、伝染病などへの緊急対応を定めた政令「突発公共衛生事件応急条例」を新華社通信を通じて公布し、即日施行した。新型肺炎対策強化の狙いがあるとみられる。
 政令は全54条。政府の統一的な指揮を定めたほか、伝染病の発生を政府に報告するまでの時間を細かく定め、北京市の新型肺炎感染統計の過少報告が被害を広げた教訓を生かした。
 政府への虚偽報告を行った責任者は「降格・免職」、病人の診察を拒否した医療施設は「営業停止」など厳しい処分を定めた。新型肺炎の院内感染を恐れて診察や入院を断る院が続出する事態に備えたものだ。
 しかし、中国では89年に伝染病予防・治療法が施行され、地方自治体に道路封鎖や業停止などの強い権限が与えられている。地方への新型肺炎拡散が進むなか、中央の統一指揮を定めた今回の政令が厳密に運用されるかどうかは不透明だ。

◎中国本土のSARS感染者数5000人突破(2003年5月12日、日本経済新聞)
 【北京=石川正浩】中国衛生省が12日発表した新型肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)の感染統 計によると、中国の感染者数は同日午前10時(日本時間同11時)時点で前日より75人増え、累計で5013人と5000人 を突破した。新規感染者数は3日連続で100人を下回ったが、死者の増加数は12人と10日ぶりに二ケタ台になった。
 北京市の感染者数は前日比48人増の2304人。感染者の増加ペースは9日以来、50人前後で推移している。
 北京市以外では河北省、天津市、山西省で感染者の増加ペースが速く、それぞれ前日比11人、6人、4人増えた。 このうち山西省は北京市、広東省に次いで累計の感染者が多く、61の県、市、区に広がっている。温家宝首相は10 日同省を視察し、防疫対策の徹底を指示した。
 河北省では農村部で十世帯ごとにSARS関連情報の責任者を定め、北京など感染地域からの帰郷者がいないか 監視するシステムを導入した。

◎新型肺炎にエイズ治療法が有効?(2003年5月12日、読売新聞)
 【香港=関泰晴】香港大などの研究チームは11日、現在のところ有効な治療法が見つかっていない新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)に対して、エイズウイルスの増殖を防ぐ抑制剤を応用すると効果がある可能性があり、新薬開発に向けて研究中であることを明らかにした。
 研究チームによると、SARSとエイズは、人体の細胞を破壊する仕組みに類似点が多いという。エイズウイルスの増殖を防ぐ効果がある複数のアミノ酸の合成物を使って実験したところ、SARSウイルスが細胞に侵入することを阻止することができたとしている。今後は、動物実験などを経て、新薬開発を目指す考え。研究チームはエイズ研究の第一人者である米国のデビッド・ホー博士も加わっている。

◎台湾で死者6人増加、新型肺炎(2003年5月12日、産経新聞)
 台湾の衛生当局は12日、同日午前までに新型肺炎(SARS)による死者が前日比6人増の24人になったと発表した。感染者数は23人増の207人で、200人の大台を突破した。
 世界保健機関(WHO)から新型肺炎流行「重度」地域に指定された台北市では12日、陸軍化学部隊が感染拡大防止のため大規模な消毒作業を開始した。
 消毒車両約50台、大型消毒車両10台が出動し、兵士1210人、憲兵500人らが作業に当たり、集団感染の恐れがあるとして強制封鎖された賃貸アパートがある南西部の万華区などの消毒を実施した。
 迷彩服の上に青い防護服を着用し、背中にボンベを担いだ兵士があちこちで消毒液を散布、多くの商店が臨時休業し、街角は異様な雰囲気に包まれた。
 軍による消毒作業は19日まで1週間続けられる。(共同)

◎新型肺炎:死者が前日比6人増の24人、台湾(2003年5月12日、毎日新聞)
 台湾の衛生当局は12日、同日午前までに新型肺炎による死者が前日比6人増の24人となったと発表した。感染者数は23人増の207人で、200人の大台を突破した。(台北共同)

◎北京のSARS「スーパースプレッダー」は72歳男性か(2003年5月11日、朝日新聞)
 SARSの北京や中国内モンゴル自治区での流行の発端となったのは72歳の男性で、飛行機や病院内で多数に伝染、各地に拡散するきっかけとなったことが分かった。北京疾病予防対策センターの専門家の話として、11日の中国系香港紙文匯報が報じた。わずかな接触で多数の感染をもたらす「スーパースプレッダー」の1人とみられる。
 同紙によると、男性は香港のプリンス・オブ・ウェールズ病院に入院していた親類を見舞い、SARSに感染したらしい。3月15日、北京へ帰る航空機内で、香港人観光客9人、内モンゴル自治区出身の客室乗務員2人、シンガポール人1人、台湾人3人、商務省の職員2人の計17人に伝染させた。男性の北京の入院先でも医師や看護師ら多数に伝染。本人は3月20日に死亡した。

◎上海で隔離の日本人男性、発熱収まり症状は安定(2003年5月11日、朝日新聞)
 上海でSARSの疑いで隔離された30代の日本人男性駐在員は11日、熱も下がり、病状は安定しているものの疑いは晴れず、市内の病院で隔離措置が続いている。
 上海市当局は9日に男性の勤務先の事務所を消毒し、一時的に閉鎖した。ほかの社員は全員自宅待機中という。男性は、WHOが指定した感染地域には渡航しておらず、「感染者に接した可能性はない」と話している。男性と電話で話した同社の関係者によると、「熱もほとんどなく、元気そうだった」という。
 上海市衛生局によると、11日正午までの時点で、上海市内のSARS死者は1人、患者は7人、疑いは日本人男性を含む13人。

◎SARS、台湾除き患者数の伸び鈍化 WHO発表(2003年5月11日、朝日新聞)
 世界保健機関(WHO)は10日夕(日本時間11日未明)、重症急性呼吸器症候群(SARS)の患者数(可能性例を含む)が世界で、前日比113人増えて7296人に、うち死亡者は同12人増の526人になったと発表した。
 患者の増加数は、ここ数日減る傾向にあり、この日も今月に入って最も少ない増加にとどまった。患者全体の7割近くを占める中国の増加数が減少してきたため。
 しかし、台湾では、逆に患者が急増している。


◎SARS感染経路に「多くの人にうつす特定患者」の存在(2003年5月11日、朝日新聞)
 SARSの感染経路をたどると、多数の人にうつす特定の患者「スーパースプレッダー」の存在が浮かび上がる。シンガポールでの例を、同国保健省の調査をもとに米疾病対策センター(CDC)が9日、公表した。先月までの患者のうち国内の感染経路が分かった172人では、その7割が、5人のスーパースプレッダーがそれぞれ12〜40人にうつした人たちだった。
 同国では、2月下旬に香港のホテルに宿泊していて感染した3人が帰国して流行が始まった。この3人のうち1人が最初のスーパースプレッダーになった。この人物に続く4人のスーパースプレッダーは、いずれも患者のいる病院(複数)を受診や見舞いで訪れて院内感染した。5人のうち3人は糖尿病や腎疾患、心臓疾患の持病があった。
 他の流行地域でもスーパースプレッダーの存在が指摘されているが、なぜそうした患者が生じるかは分かっていない。

◎SARSの疑いで日本人隔離 上海、企業の駐在員(2003年5月11日、朝日新聞)
 上海の日本総領事館によると、日本企業駐在員が9日、発熱のため市内の病院で診察を受けた後、市肺科病院に移送され、新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の疑いで隔離された。
 総領事館員の電話での問い合わせに、同駐在員は「感染地区に行ったこともないし、感染者と接触した覚えもない」と答えているという。
 10日現在、上海市内のSARS感染者は6人、疑いのある人は11人で、1人が死亡している。

◎マカオで初のSARS患者 広東省在住の男性(2003年5月11日、朝日新聞)
マカオ政府は10日、中国広東省珠海在住の冷房工事職人男性(29)がSARSと判明したと発表した。マカオでSARS感染者が確認されたのは初めて。

◎SARSの医師にかゆ届けた妻逝く 北京、院内感染深刻(2003年5月11日、朝日新聞)
 新華社は10日、SARS治療中に感染した北京中医薬大学付属東直門病院の劉清泉医師についての記事を伝えた。劉医師の闘志が描かれているが、同時に無防備なままSARSに襲われた病院の混乱と、医療関係者たちの悲劇が浮かび上がってくる。
 報道によると、30歳すぎの劉氏は3月17日朝、発熱した70歳すぎの患者を診察した。午後に急変し、患者が香港の親類を訪ねて戻ってきたばかりだと聞いて、SARSだと直感した。しかし、普通のマスクをしていただけだった。
 72時間の治療もむなしく患者は死亡し、1週間内に劉氏を含め11人の医師と看護師にSARSの症状が現れた。劉氏の妻はがんの手術を受けたばかりで、自宅で休んでいたが、夫の病気を聞き、かゆをつくって病院に届けた。それが災いし、妻にも感染した。
 倒れた病院関係者と妻は28日、北京佑安病院に搬送された。症状が軽かった劉氏は快復し、妻や同僚の治療を手伝った。4月15日から、同僚は次々に退院したが、病弱だった妻は持ちこたえられず、19日に死去した。
 「妻は、私がかゆしか食べられないだろうと心配して、かゆを届けてくれた。たった2回だけだったのに」。劉氏は悔やみきれない思いを、記者に語った。
 中国メディアは連日、危険を承知で第一線に立つ医師、看護師らをたたえるキャンペーン報道を続けているが、そうした報道からも、院内感染の実態がうかがえる。北京市では、人民病院で約80人の医療関係者が感染したが、今回の記事によって、市内のさまざまな病院で医師たちが突然、過酷な運命に放り込まれた実態が見えてくる。

◎SARS病院設置に反対、住民暴動、北京周辺で(2003年5月11日、朝日新聞)
 新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染が広がる北京周辺の省や市で、SARS患者受け入れの専門病院や隔離施設の設置に反対する住民の暴動が続発している。全国各地で急ピッチで進められる隔離収容が、2次感染を危惧(きぐ)する周辺住民の不安を招いているようだ。
 天津の北西約20キロの叉沽港という村では4月27日、廃校となった中学校の校舎を医療隔離施設に改造することに反対した村民らによる暴動が起きた。数百人が校舎と政府機関の建物を破壊したという。
 天津市外事弁公室は5月10日、朝日新聞の取材に対して、暴動の発生を認め、「警察が事件の関係者を取り調べている」と答えた。新華社通信によると、同市では6日にも市内住宅地での隔離施設建設に反対し、鉄棒などを持った住民約300人が建設現場に押し掛けて工事中止を求めた。
 また、中国の警察機関紙「人民公安報」の報道によると、河北省承徳市郊外の水泉溝という村の病院でも4月27日、SARS患者を受け入れるため出動した救急車が、村民数十人に止められ、中にいた医師らが暴行を受けた。
 村民らはレンガや石で病院や救急車を壊し始めた。約220人の警察官らが駆けつけて鎮圧し、64人を逮捕した。AP通信は、この病院がSARS専門病院に指定されるとのうわさがあり、村民らはそれを阻止しようとしたと伝えている。
 北京では先月末、SARS患者を隔離収容する「小湯山病院」が6昼夜で郊外に完成した。山西、四川、黒竜江などの省でも、専門の隔離病院の建設が突貫工事で行われ、さらに全国各地で受け入れ専門病院の指定が進められている。
 小湯山病院の建設前、2次感染をどう防ぐかについて市衛生当局から周辺住民に説明はほとんどなかった。ところが、近く予定される第2病院の建設については一転して、汚水の消毒の徹底や防護服、注射針、残飯の密封処理後の焼却など、2次感染防止策を当局が記者会見で詳しく説明しており、周辺住民の不安の高まりを無視できなくなっていることがうかがわれる。

◎SARS、台湾で5人死亡、感染指定、重度に引き上げ(2003年5月11日、朝日新聞)
 台湾行政院衛生署(厚生省)は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の10日午前までの感染者が台湾で前日より23人増えて172人、死者は5人増えて18人になったと発表した。共に1日の増加数としては最多だ。大半が台北市などでの院内感染によるものだが、感染経路がつかめない例もある。
 世界保健機関(WHO)は9日、台北に対し、SARSの感染地域指定を「中度」から3段階で最も深刻な「重度」に引き上げた。北京、広東省、山西省、香港に次いで5地域目となる。
 一方、中国衛生省が10日発表した同日午前10時までの感染者数は、全国(香港、マカオを除く)で4884人に達した。前日から新たに増えたのは85人にとどまり、同省が統計を毎日公表するようになった4月21日以降、初めて2ケタ台になった。死者は5人増え、235人になった。
 香港の9日午後からの新たな感染者は7人で、2人が死亡した。

◎SARSウイルスに2系統 香港ホテル型と広東・北京型(2003年5月11日、朝日新聞)
 SARS(重症急性呼吸器症候群)の病原ウイルスには、香港のメトロポールホテルから広がった型と、中国の広東省や北京で見られる型の二つがあることが、ウイルスのゲノム(全遺伝情報)解析で明らかになった。シンガポールゲノム研究所などのチームが、9日付の英医学誌ランセット電子版に発表、「感染経路の解明に役立つ」としている。
 香港、広東省、北京、カナダ、ベトナム、シンガポールの6地域の患者14人から検出されたウイルスのゲノムを比べた。
 ゲノムを構成する塩基配列の主要部分は共通だが、一部の違いをもとに分類すると、患者の足取りが同ホテルにつながる系統と、北京や広東省などの患者から検出された系統に分けられた。
 世界保健機関(WHO)などの調べでは、SARSは、2月下旬に同ホテルに宿泊した広東省の医師から、香港市内、カナダ、シンガポール、ベトナムへと感染が広がったとされる。一方、広東省・北京型は、両地域と香港の患者で見られ、特定の人物の移動などの感染経路は不明だ。
 コロナウイルスの新種としてSARSウイルスが生まれ、さらに複数の系統に分かれたと考えられるが、その過程のどこで人に広まり始めたかは更に研究が必要になる。
 また、香港の患者に重症化する傾向が強いことから、WHOは、SARSウイルスが新たに突然変異して毒性を高めた可能性を指摘していたが、今回の分析では、2系統それぞれの内部では、ウイルスに大きな変異は見られなかった。

◎SARS検査、衛生研の3割「できない」、P3施設なし(2003年5月11日、朝日新聞)
 新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」を引き起こすSARSウイルスを安全に検査できる「P3施設」が検査を担当する衛生研究所の3割には備えられていないことが、厚生労働省の調査で分かった。都道府県内に1施設もないのは、7県。国立感染症研究所(東京都新宿区)で検査が可能だが、検査が集中すれば処理能力を超えるおそれもある。
 東アジアでのSARSの集団感染を受けて、厚労省は4月下旬、都道府県や政令指定市、中核都市が設置している全国76の衛生研究所や環境保健センターに、SARSウイルスを施設内に封じ込めて検査できるP3施設があるか調べた。「なし」と回答したのが21施設。このうち、長野、岐阜、奈良、山口、徳島、愛媛、長崎には1施設もなかった。
 SARSの疑いがある人が出た場合、地方衛生研究所などは、ほかの病原体に感染していないか調べるほか、便やたんなどからSARSウイルスを分離して感染の有無を検査する。P3施設のない自治体は、国立感染症研究所に検査検体を送って、検査を依頼するよう厚労省は求めている。
 施設がない複数の自治体や衛生研究所は「国に検査を依頼でき、困っていない」と話している。一方で、「P3施設がないと、扱えない病原体も複数あり、日ごろから必要性を感じている。しかし、予算、人的態勢から現状ではやむを得ない」(山口)、「不都合が出れば、隣県などに協力をお願いすることも検討したい」(長崎)とする自治体もある。
 厚労省の担当課は「現時点で問題はないが、長期的に考えれば、新たな感染症の集団発生など非常事態を想定して、対応する必要がある。各自治体の事情にあわせて、施設整備で足りない点がないか検討して欲しい」と話している。

◎新型肺炎:航空機内で感染拡大 非公表で対応遅れ(2003年5月10日、毎日新聞)
 【香港・成沢健一、北京・浦松丈二】新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)に感染した男性が、3月に香港から北京に戻る航空機内で複数の乗客らに感染を広げ、北京や内モンゴル自治区での感染拡大につながった実態が明らかになった。中国当局は航空機内での感染情報を公表しておらず、初期段階での対応が改めて批判されそうだ。
 香港の衛生当局の調査や世界保健機関(WHO)の資料を基にしたAFP通信の報道によると、北京在住で3月20日に死亡した男性(72)は、人に感染させる力が極めて強い「スーパー・スプレッダー」とみられている。この男性は3月初旬に香港を訪れ、院内感染が広がった「プリンス・オブ・ウェールズ病院」に勤務する親類からSARSに感染した。
 男性は同15日に香港発北京行きの中国国際航空(CA)112便で北京に戻ったが、機内で中国の公務員や香港人旅行者、台湾人ビジネスマンら乗客15人に感染させた。男性は北京に戻った後、3カ所の病院で治療を受け、院内感染を広げたという。
 客室乗務員2人も機内で感染し、自宅のある内モンゴル自治区に戻って感染を広げたとみられている。同自治区では289人が感染し、17人が死亡している。
 さらに、感染した公務員2人はその後、バンコクに出張した。3月23日に北京に戻る機内で、4月5日に死亡した国際労働機関(ILO)のペック・アロー技能開発局長(53)=フィンランド国籍=に感染させた可能性が強いという。アロー局長は中国で初めての外国人の死亡例となった。
 北京市の衛生当局は3月26日に初めてSARS感染者が8人、死者が3人いることを公表したが、「拡散はしていない」と強調していた。香港の衛生当局は、CA112便に乗っていた複数の香港人旅行者がSARS感染したことを確認したことから、便名を公表して乗客に健康チェックを受けるように呼び掛けた。しかし、中国当局はこうした対応を一切とっていなかった。
 また、香港の衛生当局も北京で死亡した男性が香港で感染した可能性を把握しながら追跡調査ができておらず、中国当局との連携のまずさも浮き彫りとなった。

・スーパー・スプレッダー(Super Spreader)
 SARSの感染経路を調べると、極端に多くの人に感染を広げる人がいるとされ、こう呼ばれている。シンガポールでは、香港のホテルで感染した女性を通じ、100人以上が感染した。慢性疾患との関連も指摘されるが、詳しい原因は分かっていない。

◎台北、地下鉄乗客にマスク着用義務付け(2003年5月10日、読売新聞)
【台北=若山樹一郎】台湾で、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の感染が拡大、当局は、公共交通でのマスク着用義務化や、アパートの住民隔離などの対策に追われている。
台北市の馬英九市長は10日、地下鉄と新交通システム(MRT)の乗客に対し、11日からマスク着用を義務付け、従わない者には罰金を科すと発表した。台北市内には台北駅を中心に、計6路線(総延長66キロ)の地下鉄とMRTが運行しており、1日平均約95万人が利用している。
台湾の交通部(交通省)は8日から、路線バスや長距離バスなどの公共交通機関とタクシーの運転手にマスク着用を義務付けている。
台北市では9日、新型肺炎によるとみられる死者が発生した市南西部の公共賃貸アパートの140世帯、約470人を2週間の強制隔離措置にした。
台湾の衛生当局が10日発表した新型肺炎による死者数は、前日より5人増えて18人。感染者数は、23人増加して172人となった。感染者が1日で20人以上増えたのは初めて。世界保健機関(WHO)は9日、台北市をこれまでの「中度」感染地域から、北京市と同様の「重度」感染地域に引き上げている。

◎SARS感染者、世界で7183人に、増勢は鈍る(2003年5月10日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は9日夕(日本時間10日未明)、新型肺炎SARSの感染者数(可能性例を含む)が世界で、前日比130人増えて7183人に、うち死者は同8人増の514人になったと発表した。
 感染者、死者とも今月に入って最も少ない増加にとどまった。過去1週間の増加数も、その前の週に比べ、感染者、死者ともにかなり減少しており、増勢は明らかに鈍ってきた。ただし、台湾では感染が拡大しており、感染者数は、この日18人増えて計149人になった。

◎肺炎感染者7100人超(2003年5月10日、産経新聞)
 世界保健機関(WHO)は9日、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)で9日午後7時(日本時間10日午前2時)現在の世界まとめを発表、死者は中国と香港を中心に前日比8人増の514人に達した。可能性例を含む感染者は同130人増の7183人だった。
 新規感染はドイツの1人を除き、すべて中国、香港、マカオ、台湾の「中華圏」で発生。8日にWHOが台北に渡航延期勧告を出した台湾は、感染者が前日より一気に18人(13.7%)増えた。
 中華圏が依然として感染拡大に悩む中、モンゴルのウランバートルは過去20日間に域内の新規感染がなかったため流行地域の指定を解除され、ベトナムなどに続いて新型肺炎の「封じ込め」を宣言した。
 一方、感染が深刻だったカナダは新規感染者がゼロの状態が続いており、このまま推移すれば近く流行地域から解除される可能性がある。
 WHOによると、タイやブラジルなど10カ国以上で感染者が20日以上発生しておらず、流行地域に至る前段階で封じ込めに成功。感染拡大が続く中華圏との差が際立っている。(共同)

◎新型肺炎感染疑いの仏人搭乗便に邦人22人(2003年5月10日、読売新聞)
新型肺炎(SARS)に感染した疑いのあるフランス人2人が乗っていたソウル―パリ便に、日本人22人が同乗していたことが判明、外務、厚生労働両省が名簿を入手して追跡調査を進めていることが、9日わかった。すでに12人が日本に帰国したが、いずれもSARS感染の症状はないという。残る10人については、帰国直後に健康状態を確認できるよう、帰国便などの情報を収集している。
 フランス厚生省の発表によると、この便は2日にソウルからパリに到着した大韓航空、エールフランス共同運航の便(KE901/AF261)。
 2人は中国国内で6週間働き、南京からソウル経由でフランスに帰国、感染の疑いがある「可能性例」と「疑い例」と判断された。

◎新型肺炎死者、中国で増加し514人に(2003年5月10日、読売新聞)
世界保健機関(WHO)は9日夜(日本時間10日未明)、同日現在の新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の世界での感染状況を発表した。それによると死者は中国と香港を中心に514人、感染者(感染した可能性があるものも含む)は7183人となった。
 死者は前日比8人増え、うちわけ中国6人、香港2人だった。

◎SARSで470人を2週間自宅隔離、台北市の集合住宅(2003年5月10日、朝日新聞)
台北市は9日、西部の万華区の集合住宅で新型肺炎SARSの疑いがある死者1人と患者2人が出たため、140戸約470人を2週間の自宅隔離にした。台湾では初の地域の封鎖だ。専門家は地域感染の恐れを指摘している。
 台湾行政院衛生署(厚生省)によると、9日夕までの全島の感染者は前日より18人増え149人、死者は前日と同じ13人。1日の感染者の増え方としては最も多かった。台北市内で院内感染を起こした複数の病院の関係者が大半だ。全感染者のうち57%が台北市内の病院での院内感染と見られている。
 一方、南部の嘉義県太保市では9日、SARSの専用病院の指定を受けようとした病院に反発した住民200人が押しかけて病院側と衝突し、病院職員1人が負傷する騒ぎがあった。結局、病院側が指定申請を取り下げることを約束して騒ぎは収まった。
 中央通信によると、行政院衛生署が8日に開いた南部のSARS対策会議で、南部に2カ所の専用病院が必要とされた。この際、太保市の華済病院が名乗りをあげた。しかし、これを知った住民は「住宅地域にある病院を専用病院にするのは危険だ」と反発。病院に抗議に押しかけ、もみ合いの中で職員が鈍器で頭を殴られた。

◎マニラ、SARS感染地域に、WHO(2003年5月9日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は8日、フィリピンのマニラを新型肺炎SARSの感染地域に指定した。感染の広がりの度合いで3段階に区分されているうちで、マニラは2番目の「中度感染地域」。8日現在、フィリピンのSARS患者(可能性例を含む)は10人、うち2人が死亡している。
 マニラが加わって、感染地域は11となった。うち、中国の北京、天津、広東省、山西省、内モンゴル自治区、台湾の台北、香港の7地域には、渡航延期勧告が出ている。カナダのトロント、モンゴルのウランバートル、シンガポールも感染地域リストに入っている。
 一方、WHOが8日夕(日本時間9日未明)まとめたSARSの患者数は前日比150人増えて7053人に、うち死亡者は同11人増の506人となった。

◎SARS感染、北京で48人増、発表開始以来では最少(2003年5月9日、朝日新聞)
中国衛生省の9日の発表によると、同日朝現在、北京市の重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染者は48人増え、計2177人になった。新感染者数は、毎日公表されるようになった4月21日以来、最も少なかった。
 北京市衛生局の梁万年副局長は、9日の会見で、北京での感染拡大はピーク期を過ぎ、制御されつつあるとの見方を示しつつも、新感染者のうち約半数については感染源が特定できていないことを明らかにした。二次感染が拡大する危険な状態が依然として続いていることを示している。
 政府は、延期も検討された大学の統一入試を予定通り6月上旬に開催することを決めた。北京市では、発熱症状のある受験生を隔離教室で受験させたり答案用紙の消毒を徹底したりして、感染を防ぐとしている。
 全国(香港、マカオを除く)のSARS感染者は118人増えて4805人に、死者は6人増えて230人になった。

◎新型肺炎ウイルス、主要部分は変異しにくいと判明(2003年5月9日、読売新聞)
新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の原因ウイルスは、これまでの予想に反し、遺伝子の主要部分が変異しにくいことを世界各地の患者のウイルスを分析したシンガポールの研究チームが突き止めた。
 分析の過程で、ウイルスの型としては2つあることも判明した。流行初期の感染源による違いで、「感染経路の解明や、ワクチンの開発につながる成果」という。9日付の英医学誌「ランセット」(インターネット版)に発表される。
 同国ゲノム研究所が、国内5人とカナダや香港、北京など海外9人の計14人から採取したSARSウイルスを分析した。ウイルスは、増殖や感染を繰り返すうちに、遺伝子が急速に変異しやすいが、14人分のSARSウイルスは、主要部分がほとんど共通しており、変異が少ないことが分かった。
 また、遺伝子全体の中で、変異の起きていた部分を詳しく分析したところ、〈1〉香港のホテルから世界に広がった感染経路〈2〉同ホテルと無関係な香港や中国本土の患者、の2つの型にはっきりと分けられた。
 SARSウイルスの遺伝子分析は、各国の研究機関で進められており、「変異が多い」との説も出ていたが、カナダ・オタワ大の研究者は「見つかっていた変異は、患者の地域でなく、研究機関ごとに特徴があった。ウイルスを培養する細胞の微妙な違いが影響して、培養中に起きた変異が観察されていたのではないか」とみている。

◎台北など渡航延期勧告(2003年5月9日、東京新聞)
 中国衛生省は八日、中国本土の新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の感染者が前日比百四十六人増の四千六百九十八人、死者は五人増の二百二十四人になったと発表。世界保健機関(WHO)の七日午後五時(日本時間八日午前零時)現在の感染状況まとめと合わせ、世界の感染者は七千四十一人と七千人を突破、死者は五百人に達した。WHOは八日、新型肺炎で新たに台湾の台北と中国の天津、内モンゴル自治区の三地域への渡航延期勧告を出すと発表した。
 中国では、感染者が六人にとどまっていた上海でも同日、初めての死者一人が確認された。北京の感染者は九十四人増えて二千百三十六人、死者二人増の百十二人。北京に近い河北省、山西省などでも感染者の急増が続いている。WHOの調査チームは八日、河北省入りし、実態調査を開始した。
 一方、臨時休校している北京日本人学校は八日、休校期間を二十一日まで十日間延長することを決めた。同校には児童、生徒約四百三十人のうち百五十人が北京に残っており、父母から再開を望む声も強まっていた。

◎肺炎死者の増加ペース加速(2003年5月9日、産経新聞)
 世界保健機関(WHO)は8日、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)についての同日午後6時(日本時間9日午前1時)現在の世界まとめで、死者が中国と香港を中心に前日比11人増の506人に上ったと発表した。可能性例を含む感染者は150人増の7053人になった。
 WHOが新型肺炎の最初の世界まとめを発表した3月17日時点では、死者は4人にすぎなかった。100人に達するまでは22日間を要したが、中国が「感染者隠し」を認めた4月20日以降、急速に増え、最近は5〜7日で100人ずつ増えるペースが続いている。
 発表によると、中国は死者が前日比5人増の224人、可能性例を含む感染者は138人増の4698人に上り、いずれも世界最多。香港は死者が4人増の208人、感染者が7人増の1661人だった。
 中国に香港、台湾を加えた中華圏以外では新たな死者は発生しておらず、新規感染者も中華圏以外では、フィンランドの1人だけだった。
 北東アジアでは、日本は感染者ゼロ、韓国は可能性例が1人にとどまっており、感染拡大が続く中国との差が際立っている。
 WHOは8日、台北に加え、中国の天津、内モンゴル自治区への渡航延期を勧告。これにより渡航延期の対象は7地域となり、すべてが中華圏に集中する結果となった。(共同)

◎SARS、中国のほぼ全土に拡大(2003年5月9日、日本経済新聞)
 世界保健機関(WHO)の8日午後8時(日本時間9日午前3時)時点での集計によると、新型肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)による死者は506人に達し、感染者も7053人と7000人を突破した。中国では22省、4直轄市、5自治区の計31地域のうち25から感染者の報告があり、ほぼ全土に拡大したことが確実となった。
 死者は前日に比べ11人の増加で暫定的な死亡率は約7.2%。感染者は中国で146人と大幅に増えたほか、香港で7人、台湾で6人増えたのが目立った。WHOはシンガポールやカナダのトロントなどでは感染が峠をこえたとの見解を示しており、SARS封じ込めの焦点は感染が広がり続ける中国と台湾、香港などの中華圏に絞られてきた。
 WHOは最も激しい流行が続く中国の地域別の感染状況も初めて公表した。中国の死者は224人で世界の44%を占める。感染者は4698人と5000人に迫り、全体の67%に達している。感染者の最多は北京市(2136人)で、以下広東省、山西省、内モンゴル自治区の順に多い。

◎SARS、トリ・コロナウイルスの祖先から分岐・潜伏か(2003年5月9日、朝日新聞)
新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」を引き起こすSARSウイルスは、現在のトリ・コロナウイルスの祖先から数十年前に分かれ、何らかの動物の体内に潜んでいた可能性が高い。民間の生物資源利用研究所(沖縄県名護市)の根路銘(ねろめ)国昭所長らの研究で分かった。今後、ウイルス変化の経過が詳しく解明できれば、ヒトへの橋渡しをした動物の割り出しやワクチン開発に役立ちそうだ。
 根路銘所長はJRA競走馬総合研究所生命科学研究室の協力を得て、SARSウイルスと、ヒト、トリ、ブタ、ネコ、イヌなどに感染する既知のコロナウイルスを比べた。塩基配列やアミノ酸量の違いをもとに、いつごろ、どのように枝分かれし、現在の姿になったかを示す系統図を作った。
 その結果、SARSウイルスは現存のウイルスから変異したのではなく、数十年前、様々な鳥類に感染するトリ・コロナウイルスの祖先から分かれていた可能性が高いことが分かった。その後、何らかの動物に感染、突然変異を繰り返してヒトに対する病原性を強めたとも考えられる。
 SARSウイルスが数十年前から存在していたとすれば、今回の集団感染よりずっと前から、ヒトへの感染が起きていたかもしれない。ふつうの肺炎と診断され、その存在が気づかれなかった可能性がある。
 根路銘所長は国立感染症研究所・呼吸器系ウイルス研究室長をしていたときに、インフルエンザウイルスのワクチン開発に取り組んだ。「SARSウイルスや近縁ウイルスにどの程度の多様性があるのか、突き止められれば、何をターゲットにワクチンを作ればいいか、手がかりが得られる」と話す。

◎マニラ、SARS感染地域に、WHO(2003年5月9日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は8日、フィリピンのマニラを新型肺炎SARSの感染地域に指定した。感染の広がりの度合いで3段階に区分されているうちで、マニラは2番目の「中度感染地域」。8日現在、フィリピンのSARS患者(可能性例を含む)は10人、うち2人が死亡している。
 マニラが加わって、感染地域は11となった。うち、中国の北京、天津、広東省、山西省、内モンゴル自治区、台湾の台北、香港の7地域には、渡航延期勧告が出ている。カナダのトロント、モンゴルのウランバートル、シンガポールも感染地域リストに入っている。
 一方、WHOが8日夕(日本時間9日未明)まとめたSARSの患者数は前日比150人増えて7053人に、うち死亡者は同11人増の506人となった。

◎SARSによる死者500人突破、上海でも初めて(2003年5月9日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)の7日までの累計と、その後の各国の発表によると、重症急性呼吸器症候群(SARS)による世界の死亡者は8日現在で500人を超えた。世界の患者(可能性例を含む)も同様に7000人を超えた。流行の中心となった中国では同日、上海市で初の死者が確認された。首都北京が直撃を受けた同国は、経済の中心上海への広がりを強く警戒している。
 WHOは8日、中国の天津、内モンゴル自治区、台湾の台北への渡航延期を新たに勧告すると発表した。北京、広東省、山西省と香港を合わせ、同勧告は中国周辺に集中している。
 WHOの7日夕(日本時間8日未明)現在のまとめでは、死亡者は495人。8日、新たに中国で5人、香港で4人の死亡が発表され、合わせた死亡者は504人になる。
 上海市は、市内の男性(68)がSARSのため7日午後死亡した、と発表した。4月4日に同市で初めて感染が確認された女性(40)の父親で、同月17日に発病していた。同市によると、重症のSARSのうえ、内臓に慢性疾患があり、快復できなかった。同市にはこのほか、16人の患者(可能性例を含む)がいる。
 5月に入って確認された上海市の4人の感染者が中国北部の感染地域からの旅行者だったことから、同市は空港、鉄道駅、高速道路の料金所などに検問所を設けて、健康状態や出発・通過地域などのチェックを強化した。市民の市外への観光旅行は禁止している。
 中国外務省によると、SARS問題で中国からの入国を何らかの形で制限したり、入国者の検査を課したりしている国が8日現在で109カ国になった。中東、アフリカ諸国では、入国を認めていない国が多い。
 一方、イタル・タス通信によると、ロシア保健省は8日、同国内で初めてSARSに感染した可能性の極めて高い患者が確認されたと公表した。ロシア極東のアムール州ブラゴベシチェンスクに住む男性(25)で、中国人の多く泊まるホテルに宿泊し、体調を崩したという。
 ロシア運輸当局は8日、香港を含む中国と台湾への航空券の予約・販売を一時停止するよう国内航空各社に指示した。中国と国境を接するアムール州や沿海地方では中国人の入国を規制する措置が発動された。

◎WHOが台北、天津への渡航延期を勧告(2003年5月8日、産経新聞)
 世界保健機関(WHO)のヘイマン感染症対策部長は8日、ジュネーブで記者会見し、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の感染拡大で、新たに台湾の台北と中国の天津、内モンゴル自治区の3地域への渡航延期勧告を出したと発表した。
 台北と天津には日本企業が多数進出しており、日本人学校もある。
 中国衛生省の8日の発表などによると、新型肺炎の死者が中国で5人増えて224人、香港では4人増え208人となり、WHOの発表と合わせると全世界で死者は504人になった。上海でも初めて死者1人が確認された。
 感染者は、中国で4698人(146人増)、香港で1661人(7人増)。可能性例を含めた感染者数は全世界の累計が7000人を超えて7048人となる計算。
 WHOの渡航延期勧告は、新型肺炎に関する一連の勧告で最も重く、対象地域は中国の北京、広東省、山西省と香港の4地域と併せ7地域になった。ベトナムなど他のアジア諸国で感染拡大が封じ込めに向かう中、中国と中華圏は深刻化する「二極化」が鮮明となった。
 ヘイマン部長は今回の渡航延期勧告について、対象地域は「急速な感染拡大を続けており、今後の状況に重大な懸念が残るため」と理由を説明。3地域は(1)感染者の規模が深刻、(2)域内感染の拡大が確認された、(3)感染者を国外・域外に「輸出」する可能性が高い、とするWHOの基準を超えたと語った。
 香港について部長は「新規感染者は減少しており、感染のピークを越えた」と述べたが、新規の死者と感染者が連日報告されており、渡航延期勧告を維持することとしたという。
 「不要不急の渡航を見合わせるよう」求めたWHOの渡航延期勧告に強制力はないが、新型肺炎の「汚染度」を判定する重要な基準になっており、各国政府はWHOの勧告を受け独自の渡航自粛勧告などを出している。

・世界保健機関(WHO)の渡航延期勧告
WHOは新型肺炎(SARS)をめぐり、過去20日間以内に一定数以上の感染が確認された計11地域を流行地域に指定。この中で、感染規模が深刻な地域については不要不急の渡航を見合わせるよう求めた渡航延期勧告を出す。中国の広東省と香港は4月2日に、北京と山西省、カナダ・トロントは同23日に渡航延期勧告が出された。トロントは同29日に勧告を解除した。(共同)

◎109カ国、SARSで中国人の入国制限(2003年5月8日、日本経済新聞)
 中国外務省によると、新型肺炎、SARSの感染拡大を防ぐため、中国人の入国を制限する措置を取る国が8日までに109カ国に達した。章啓月副報道局長は同日の定例記者会見で、北朝鮮など隣接する4カ国との国境にある入国管理や通関などの施設に関し、一時閉鎖などの措置を取っていることも明らかにした。
 入国制限ではサウジアラビアやイエメンなどがビザ発給を停止。日本は入国の際に検査を求めている。北朝鮮は入国した中国人を指定した場所で10日間隔離する。

◎外務省、SARSで台湾の危険情報引き上げ(2003年5月8日、日本経済新聞)
 外務省は7日夜、SARSの感染が拡大している台湾への渡航者や台湾滞在者向けの危険情報を1ランク引き上げ、危険度が2番目に低い「渡航の是非を検討して下さい」に変更した。
(1)今後さらに感染が拡大する潜在性がある
(2)邦人を含め不特定多数が集まる場所で感染が出始めている
としているが、北京などに出している「不要不急の渡航は延期を勧める」との付記はつけていない。

◎ふんや水滴のウイルス陽性、香港SARSマンション(2003年5月8日、朝日新聞)
330人を超すSARS患者を出した香港の民間団地アモイガーデンで、ネズミやゴキブリなどのふんや浴室の便器周辺の検査をし、SARSウイルス陽性との結果が出た。香港衛生当局の話として、厚生労働省SARS対策専門委員長代理の岩本愛吉・東京大医科学研究所教授が8日、日本記者クラブでの記者会見で明らかにした。
 ウイルスが見つかったのは小動物のふんと浴室内の水滴。水道水と空気中からは検出されなかった。下水管を逆流してあふれた汚水を、ネズミやゴキブリなどが摂取して感染を広めたというこれまでの推定が、裏付けられた。

◎SARSによる死者500人突破、上海でも初めて(2003年5月8日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)の7日までの累計と、その後の各国の発表によると、重症急性呼吸器症候群(SARS)による世界の死亡者は8日現在で500人を超えた。世界の患者(可能性例を含む)も同様に7000人を超えた。流行の中心となった中国では同日、上海市で初の死者が確認された。首都北京が直撃を受けた同国は、経済の中心上海への広がりを強く警戒している。
 WHOは8日、中国の天津、内モンゴル自治区、台湾の台北への渡航延期を新たに勧告すると発表した。北京、広東省、山西省と香港を合わせ、同勧告は中国周辺に集中している。
 WHOの7日夕(日本時間8日未明)現在のまとめでは、死亡者は495人。8日、新たに中国で5人、香港で4人の死亡が発表され、合わせた死亡者は504人になる。
 上海市は、市内の男性(68)がSARSのため7日午後死亡した、と発表した。4月4日に同市で初めて感染が確認された女性(40)の父親で、同月17日に発病していた。同市によると、重症のSARSのうえ、内臓に慢性疾患があり、快復できなかった。同市にはこのほか、16人の患者(可能性例を含む)がいる。
 5月に入って確認された上海市の4人の感染者が中国北部の感染地域からの旅行者だったことから、同市は空港、鉄道駅、高速道路の料金所などに検問所を設けて、健康状態や出発・通過地域などのチェックを強化した。市民の市外への観光旅行は禁止している。
 中国外務省によると、SARS問題で中国からの入国を何らかの形で制限したり、入国者の検査を課したりしている国が8日現在で109カ国になった。中東、アフリカ諸国では、入国を認めていない国が多い。
 一方、イタル・タス通信によると、ロシア保健省は8日、同国内で初めてSARSに感染した可能性の極めて高い患者が確認されたと公表した。ロシア極東のアムール州ブラゴベシチェンスクに住む男性(25)で、中国人の多く泊まるホテルに宿泊し、体調を崩したという。
 ロシア運輸当局は8日、香港を含む中国と台湾への航空券の予約・販売を一時停止するよう国内航空各社に指示した。中国と国境を接するアムール州や沿海地方では中国人の入国を規制する措置が発動された。

◎SARS致死率、大幅上方修正14〜15%にWHO(2003年5月8日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は7日、新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の致死率が全体で14〜15%になるとの推計を公表した。これまで全体で4%としていた致死率を大幅に上方修正した。65歳以上が50%以上と、際立っている。
 推計の致死率は、患者の年齢層によって大きく異なるのが特徴だ。24歳以下で1%未満、25歳〜44歳で6%に対し、45歳〜64歳は15%、65歳以上で50%以上と、年齢が上がるほど高くなる。
 地域別では、シンガポールで14%、香港で15%としている。4月に制圧宣言が出て致死率が確定したベトナムでは、8%と低かった。WHOは、患者の多くが若くて健康な医療関係者だったためと分析している。
 致死率は一般に死亡者の数を、死亡者と快復者の数で割ったもの。WHOは、正確な致死率は流行が終わった段階でなければ確定できず、患者が増え続けている時点で推計するのは困難だとしている。
 現在の死亡者の数を患者の総計で割ると、約7%になる。ただ、患者の中にはこれから死亡する人がいるため、この計算だと実際の致死率より低くなる。半面、現時点で確定できた死亡者と快復者だけをもとに計算すると、患者の中で快復途上にいる人が反映されず、致死率は実際より高くなりがちだ。
 WHOは今回の推計の根拠となる計算式は明らかにしていないが、カナダ、シンガポール、香港、中国本土、ベトナムの死亡者数と快復した患者数をもとに推計した。発症してから死亡、または快復に至る期間を考え、これから先に死亡する患者数を計算に加えてより実情に近い数字を出したとみられる。
 致死率14%を現在の患者総数にあてはめると、死亡者は計約千人になる。

◎SARS、患者7000人、死者500人に迫る(2003年5月8日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は7日夕(日本時間8日未明)、新型肺炎SARSの患者(可能性例を含む)が世界で、前日比176人増えて6903人に、死亡者は同17人増の495人になったと発表した。この増勢が続けば、8日に患者数7千人、死亡者500人を超えるとみられる。
 新患者の大多数はいぜん中国で出ているが、この日は台湾の新患者数(9人)が香港(8人)を上回り、患者数3人だったフィリピンで一挙に7人の新患者が報告された。

◎院内感染でSARS拡大、北京、人手・設備も不足(2003年5月7日、朝日新聞)
新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)が北京で発生した当初、患者を受け入れた多くの病院が対処できず、深刻な院内感染を引き起こしていたことが7日までの医師の話や中国の報道などでわかった。総合病院の一つでは、患者を受け入れてから突貫工事で隔離室をつくったり、医師不足のため事務員に診察室で働かせたりするなどの混乱ぶりが示された。北京で急激に感染が広がった発端の状況が浮かんできた。
 華僑向け通信社「中国新聞社」の報道などによると、総合病院の北京大学人民病院は4月7日午後9時に最初のSARS患者を受け入れた。1200床の入院設備を持ち、計約2300人の医師、看護師、職員を抱えるが、伝染病患者の隔離病棟はなく、翌日から30人の建設労働者を使って酸素供給装置や上下水道を備えた隔離病棟を約30時間で完成させた。
 17日、市衛生局が、同病院のほかの患者の一部を他病院に移したうえで、呼吸器科を拡大しSARS感染の疑いのある患者の外来も受け入れることを決定。同科には1日200人を超える患者が訪れるようになった。
 だが、病院職員が感染を恐れて次々と出勤しなくなり、また、医師や看護師の発病が続発して深刻な人手不足に陥った。これを補うため、病院事務員たちに1日だけの研修を受けさせ、発熱した外来患者専用の診察室で医師の補助業務などをさせたという。
 患者の増加で、隔離病棟内への医療機器の増設も必要になったが、防護服が足りず普通の服のままで作業を行わなければならなかった。人手不足と不完全な設備に、連日の治療、看護による疲労が重なり、医師や看護師らは次々と感染し、発病した。21日に55人、22日に60人、23日には80人と急増し、24日に病院全体が封鎖された。
 また5月7日、北京市でSARS患者受け入れの指定病院の一つとなっている佑安病院の趙春慧院長がネット上で会見した。趙院長は、同病院でも受け入れ初期に、医療従事者に院内感染が発生したことを認め、「SARS発生はあまりにも突然だったため、慌てて準備が全くできなかった。病気について理解するのに時間が必要だった」と語った。
 北京の新聞によると、解放軍302病院で5月6日、北京で初めてのSARS感染者から院内感染したという15人の医療従事者が退院したと伝えられ、軍病院でも当初、多くの院内感染が発生したことをうかがわせた。
 7日の新華社の報道によると、北京市はSARSの指定病院を123カ所から63カ所に減らした。「院内感染に対応するため整理した」とされる。最近に至るまで指定病院の中でさえも、院内感染に対処できないところがあったことを示している。
 中国衛生省によると、7日現在で香港、マカオを除く全国の新たな感染者は159人で、計4560人。死者は5人増えて219人に達した。

◎北京のSARS患者、2000人突破(2003年5月7日、朝日新聞)
中国衛生省の7日の発表によると、同日朝現在、新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)感染者が北京市で新たに97人増え、計2049人に達した。死者も3人増えて110人になった。また、感染者は河北省でも21人、天津市でも7人増加し、北京市周辺への感染の広がりが目立ってきた。世界保健機関(WHO)は8日、中国衛生省と連携し、河北省へ調査団を派遣することを決めた。
 河北省の感染者は計134人。死者は計6人。WHO中国事務所によると、調査団は同省での急速な感染を食い止めるため、同省にSARSの治療、封じ込めの能力があるかどうか、また、ほかにも感染者がいないかどうか調べる。
 香港、マカオを除く全国の新たな感染者は159人で、計4560人。死者は5人増えて219人に達した。香港では、新たな感染者は8人、死者は11人で、それぞれの合計は1654人と204人になった。感染者数は4日連続で一けたにとどまった。

◎SARS患者、世界で6583人、香港は沈静化の方向(2003年5月6日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は5日夕(日本時間6日未明)、新型肺炎SARSの患者(可能性例を含む)が世界で、前回3日のまとめに比べ349人増えて6583人に、死亡者は同26人増の461人になったと発表した。
 新患者はいぜん中国が圧倒的に多い。香港は2日間で患者の増加が16人にとどまり、1日平均10人を割って、沈静化の傾向がはっきりしてきた。

◎SARS対策徹底へ都道府県の担当者集め会議(2003年5月6日、朝日新聞)
厚生労働省は6日、新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)対策を徹底させるため、各都道府県の担当者会議を東京都新宿区の国立感染症研究所で開いた。SARSは当面、未知の感染症を対象にした感染症法の新感染症として扱われる。新感染症の適用は初めてのため、患者が出た時の対応策などを説明することにした。
 感染地域から帰国後10日以内に発熱や肺炎を起こした「可能性例」の人には、都道府県知事が入院勧告をして公費で入院してもらうことや、家族や職場の同僚らへも健康診断を勧告して公費負担で実施することも説明。「可能性例」の段階で、どこまで接触者の調査をするのか、疑問の声があるため、専門家の意見を聴いて個別に判断してもらう。

◎SARSウイルス、室温で2日間生存、消毒は有効(2003年5月6日、朝日新聞)
新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」を引き起こすSARSウイルスは便や尿の中では室温で最低1〜2日間、生存することが分かった。世界保健機関(WHO)が4日(日本時間5日)、発表した。
 WHOの共同研究ネットワークに参加する国立感染症研究所(日本)や香港大などがこの研究にあたった。
 体外でのSARSウイルスの状態を調べたところ、便の中では最低2日、尿では1日生存していた。別の実験では、下痢の便でもっと長く生き続ける傾向にあった。
 また、室温で細胞の中で培養すると、2日たってもウイルスはほとんど減らず、鼻かぜなどを引き起こすヒト・コロナウイルスより長生きすることが分かった。
 一方、ふつうの消毒で使われるエタノールやホルムアルデヒドなどに対して、ウイルスは室温で5分で死滅し、感染予防にかなり効果があることも分かった。56度の熱処理でもウイルス量は急減した。

◎SARS患者、世界で6583人、香港は沈静化の方向(2003年5月6日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は5日夕(日本時間6日未明)、新型肺炎SARSの患者(可能性例を含む)が世界で、前回3日のまとめに比べ349人増えて6583人に、死亡者は同26人増の461人になったと発表した。
 新患者はいぜん中国が圧倒的に多い。香港は2日間で患者の増加が16人にとどまり、1日平均10人を割って、沈静化の傾向がはっきりしてきた。

◎中国のSARS死者、200人突破、建設現場相次ぎ封鎖(2003年5月6日、朝日新聞)
中国衛生省は5日、同日朝現在で、重症急性呼吸器症候群(SARS)による死者が全国(香港、マカオ除く)で9人増え、合計で206人に達したことを発表した。感染者は160人増加して計4280人。
 被害が深刻な北京市では感染者がさらに98人増えて1897人、死者も3人増えて103人に達した。北京市は同日までに新たに中心部で、マンションなどの建設現場3カ所を相次いで封鎖した。封鎖場所は病院3、学校3、住宅2、建設現場4となった。また、隔離されたのは計1万6436人。

◎香港のSARS感染、新たに8人、死者3人(2003年5月5日、朝日新聞)
香港政府は5日、前日午後からの新たなSARS感染者は8人、死者は3人と発表した。死者の1人はアモイガーデン住民の66歳男性。感染者の累計は1637人、死者は計187人となった。13人が退院し、快復者は930人。
 董建華(トン・チェンホワ)行政長官は同日の会見で、曾蔭権(ツァン・ヤムクェン)政務官を都市衛生作業班長、梁錦松(リョン・カムチュン)財政官を経済振興作業班長に任命し、SARS沈静後の復興に着手する意向を明らかにした。世界保健機関(WHO)とも近く交渉し、香港への渡航自粛勧告の解除を協議する。
 香港のSARS流行は峠を越したが、働き盛りの父母を失った家族は精神面でも経済面でも大きな傷を負った。政府社会福祉署によると、片親か両親をSARSで失った児童は24人にのぼる。4日の香港紙星島日報によると、九竜・屯門(ツェン・ムン)の臨時児童収容施設にはSARSで両親が入院して世話をしてもらえない3人の児童が収容されている。入所中の12歳と9歳の兄弟は家族4人がSARSで入院、父親が死亡した。兄弟は退院できたが、母親はまだ入院が続いているという。

◎SARS治療に快復者の血清療法が好成績 香港紙(2003年5月5日、朝日新聞)
SARSの治療に、快復者の血清を使った血清療法が好成績を上げていると4日、香港紙太陽報などが伝えた。
 香港中文大学の沈祖尭・内科・薬物治療学部主任らのチームの臨床研究では、ステロイド剤で効果が表れなかった重い感染者二十数人に快復者の抗体を含む血清を投与。1カ月余りの間、1人の死者も出ず、熱が下がるのが早く、肺の快復が順調だったという。
 血清療法は、快復者の血中で生成されたウイルスの抗体を感染者の血液に入れ、毒素を防御する方法。
 香港政府は4日、前日午後からの新たなSARS感染者は8人、死者は5人と発表した。感染者が10人未満となったのは3月16日以来。感染者の累計は1629人、死者は計184人となった。

◎SARS死亡率上昇、7%に、新患者、中国と香港だけ(2003年5月4日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は3日夕(日本時間4日未明)、新型肺炎SARSの患者(可能性例を含む)が世界で、前日比180人増えて6234人に、死亡者は同18人増の435人になったと発表した。
 新患者は中国と香港以外ではゼロとなり、また香港でも次第に新患者の数が減ってこの日は10人だった。感染拡大が中国に絞られる傾向がますます強まってきた。
 一方で、患者数に占める死亡者の割合は引き続き上昇、全体で7.0%となった。医療先進国のカナダ(14.8%)やシンガポール(12.3%)で高いのが特徴。
 WHOでは、各国から報告される「患者」の基準にかなりばらつきがある上、症状が軽く報告の「網」にかからない人もいるとみられるため、SARS死亡率の確定には慎重だ。
 カナダの場合、治療を担当した病院内で感染した割合が非常に高い。感染源が限られており、そのウイルスが強力だったことなどが考えられるが、解明には今後の調査、研究が必要となる。

◎SARS避け逃走の医師、8日目に「出頭」、台湾(2003年5月4日、朝日新聞)
台湾でも新型肺炎SARSが広まりつつあるが、院内感染のために閉鎖された台北の市立和平病院の医師と看護師の職業倫理の差が話題になっている。男性医師は危険を避けて病院から姿を消し、閉鎖から8日目の1日夜に復帰した。一方、同病院の婦長(48)はSARSのために同じ日に死亡した。台湾メディアは「脱走兵と勇士」と形容している。
 和平病院は4月24日に閉鎖された。今月3日までに入院患者やインドネシア人の介護人ら計6人が死亡した。閉鎖直後には感染の恐れのある人が前途を悲観して自殺したり、医療関係者が勝手に病院を抜け出すなどの混乱が見られた。
 消化器外科主任の男性医師は無断で1週間も姿を隠したため、台北市は氏名を公表、指名手配の犯人捜しのようになった。この間、医師は妻の名前でマスコミにファクスを送り、「病院の予防措置が不十分なままで患者を診るべきではない」と訴えていた。
 戻ってきた医師には罰金24万台湾ドル(約82万円)が科せられ、医師免許取り消しの可能性もあるという。
 一方、死亡した婦長は台湾の医療関係者の初の犠牲者で、陳水扁(チェン・ショイピエン)総統も哀悼の意を表した。
 台湾の4日午前までの感染者は113人、死者は8人。台北市内の病院2カ所が閉鎖中だ。

◎中国軍、2月にSARSウイルス発見、政府には伝わらず(2003年5月4日、朝日新聞)
中国で新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染が拡大した問題で、人民解放軍が2月末、病原体について新型コロナウイルスの可能性が高いことを突きとめていたことが、軍機関紙「解放軍報」の報道などからわかった。だが、研究情報が約1カ月も政府系機関に伝わっていなかったとされる。SARSの原因特定は世界で3月から本格化したが、世界保健機関(WHO)などが新型コロナウイルスと断定したのは4月中旬だった。早期に公表されていれば、世界のSARS対策を進展させていた可能性もある。
 4月下旬の同紙によると、軍需品や燃料の補給などを担当する軍総後勤部は2月12日、原因不明の急性肺炎の報告が相次いでいた広東省に、直轄機関である軍事医学科学院の祝慶余氏らの専門家を派遣することを内部決定。祝氏が持ち帰った患者の肺組織について、2月26日に高倍率の電子顕微鏡で分析し、「病原体はコロナウイルスだろう」との認識に達したという。
 しかし、中国の時事問題誌「三聯生活週刊」によると、軍は3月21日にコロナウイルスの検出などにも成功したが、この情報は軍外部に出なかったという。祝氏はその理由について「我々は多くのコロナウイルスを見つけた。ただ病原体と断定するにはさらなる証拠が必要だと考えたからだ」と同誌に語った。
 軍の独自色が強い中国では通常、軍の研究途中のデータが他部門に明らかにされることはまずあり得ないとされる。新型肺炎の病原体を巡って世界中の多くの専門家が研究を進めていたが、軍研究者には情報を提供する意識がもともとなかったとみられる。
 WHOは3月17日、新型肺炎に関する10カ国・地域の合同研究チームを立ち上げ、中国からも政府系の中国疾病予防対策センターなど3機関が参加。しかし、軍の機関は含まれなかった。
 中国政府は当初、病原体は「クラミジア」との見方を示し、多くの政府系の研究者たちは確認作業を続けた。米国や香港の研究者が新型コロナウイルスだとの研究結果を発表し始めたのは3月下旬。WHOの原因発表は4月16日になってからだった。
 解放軍報は、軍の研究機関が最終的に政府系機関との「協力態勢に踏み切った」のは4月9日だったとする。軍事医学科学院は中国科学院などとの協力合意文書に調印し、SARS研究に関する全資料を提出したという。
 中国政府の4月20日までの発表には、軍の病院での患者数が含まれておらず、WHOなどから強く批判された。SARS対策での姿勢を批判される中、軍は機関紙である解放軍報を通じて、自らは与えられた義務を積極的に果たし、取り組んできたことを訴えようとしているとみられる。

◎SARSウイルス、体外に出て24時間後も感染能力(2003年5月3日、朝日新聞)
SARSウイルスは体外に出て丸一日たっても生き続けることがわかった。世界保健機関(WHO)の専門家の話として2日付の英科学誌ニューサイエンティスト電子版が掲載した。
 SARSウイルスはコロナウイルスの一種。コロナウイルスは通常、体外に出て数時間で死滅するとされる。
 しかし、ドイツでの実験で、1mlに1万株のSARSウイルスを含んだ液体をプラスチックに落とし、液が乾いた24時間後に測定したところ、1000株のウイルスが確認された。「感染に可能な数」だという。
 さらに同誌は、WHOの別の専門家の話として「免疫の過剰な反応がSARSの症状を悪化させる原因になっている」との見解を発表した。
 発症2週間目に肺炎症状が悪化するのは、ウイルスの増殖によるのではなく、免疫の過剰反応で肺組織がダメージを受けたためだという。治療法として「ステロイドとインターフェロンの併用が挙げられる」という。

◎SARS患者、4日で千人増、6千人超える(2003年5月3日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は2日夕、新型肺炎SARSの患者(可能性例を含む)が、前日に比べ189人増えて6054人に、死亡者は同26人増の417人になったと発表した。
 患者数は4月28日に5000人を超えてから、中国を中心に、わずか4日で1000人増加した。
 日本は「可能性例」の2人を報告、1日までWHOのリストに載っていたが、SARSでないことが判明、この日から患者がゼロとなり、リストから外れた。

◎SARSウイルス、3月以前に香港に入ったとの見方(2003年5月3日、朝日新聞)
香港政府は2日、重症急性呼吸器症候群(SARS)による肺炎で、前日午後から新たに8人が亡くなり、11人が感染したと発表した。死者は170人、感染者数は計1611人となった。死者は75〜93歳の男女で、他の病気があった人は5人。
 香港中文大学医学部は同日、最初に香港にSARSを持ち込んだとされる中国・広州の医師を発生源とする経路以外にも、SARSウイルスが香港に入っていたとの見解を示した。3月以前に入っていた可能性もあるという。最初の医療関係者の大量感染が起きたプリンス・オブ・ウェールズ病院の感染者から採取したコロナウイルスを分析したところ、1人からは広州の医師や医師から伝染したカナダ人らとは、塩基の並び方が違うコロナウイルスが見つかったという。
 香港の公立プリンセス・マーガレット病院はSARS治療時に抗ウイルス薬リバビリンの使用をやめたことを明らかにした。香港ではステロイド剤と併用して広く使われているが、米疾病対策センター(CDC)は「効果なし」としている。地元紙明報が伝えた。同日の記者会見では香港政府の衛生当局者が「多くの感染者にリバビリンは効果があった」と述べ、治療法の模索が続いている。

◎SARS感染防止で「隔離」1万3000人超える(2003年5月3日、朝日新聞)
新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染を防ぐため、患者以外に北京市内で「隔離」されている人が、2日現在で1万3688人になった。対象は患者と接触する病院関係者のほか、感染者が出た建物の住人や工事現場の労働者にも及び、SARSの潜伏期間中は外部との接触が制限される。
 北京市では2日までに医療関係施設の130カ所のほか、大学の学生・教員の宿舎、一般の人の居住地区など6カ所、工事現場2カ所などで隔離措置がとられた。
 同市は4月27日から隔離した場所や人数を毎日発表。これまで1日平均で約1200人ずつ増えた。一方、潜伏期間が過ぎるなどで隔離措置を解除された人は、3611人にとどまっている。
 隔離の対象は、SARS感染者と同じ建物にいたなど、感染の可能性があるとみられる人。発症者が病院に運ばれた後、建物内部にとどまるよう指示される。自宅に戻り、外出を控えるよう要請される場合もあるという。
 北京市街の北西部にある北方交通大学では、10人の感染者を出した学生宿舎3棟が隔離された。大学の広報担当者の話では、宿舎のまわりは建設工事用の塀で囲まれ、1カ所だけ開けた入り口には警備員が立つ。
 感染者が病院に運ばれた後、学生400人と教師27人が残って暮らす。外部との行き来は禁止だが、生活用品が欲しければ、大学本部に連絡して買ってきてもらえる。食事は1日3食、大学側の負担で提供。「学生は全員が健康。熱を出す者もいない」と担当者は言う。
 北京の日本大使館によると、今のところ、日本人が隔離の対象になったという情報はない。ただ隔離対象施設が広がっていることから、邦人に帰国を勧告するとともに、隔離施設に近づかないよう呼びかけている。

◎中国、SARS対策で大型連休の移動を制限(2003年5月2日、朝日新聞)
中国政府は、黄金週間の連休に入った1日から、首都・北京市で人々の帰郷を規制するなど大々的な移動抑制に乗り出した。同市は、新型肺炎・重症急性呼吸器症候群(SARS)の最大の感染都市。中国全土への拡大を防ぐうえで、中国政府は休日が続くこの1週間程度が正念場と位置づけ、職場、学校、メディア、交通機関などを動員して市民の足止め策を始めた。
 中国の労働節(5月1日)の連休中は、昨年は全国で延べ8710万人が主に都市から地方へ移動し、「民族大移動」とも呼ばれる。SARS感染の広がりを受けた政府は今年、7連休を5連休に短縮。旅行や帰省の自粛を全国民に呼びかけている。
 北京市当局は国営、民間企業の人材管理部門に対し通知を出し、出稼ぎ者の期間中の帰省を禁じるように求めた。同市には人口1,300万人のほか、戸籍を地方に持ったまま市内に流入している300万人の流動人口があるが、その多くは地方からの出稼ぎ者だ。政府は各役所でも公務員の旅行自粛を迫っている。
 北京師範大学は4月28日、「地方に行った学生は14日間の隔離をする」との張り紙をキャンパス内に張り出し、学生の帰省取りやめを求めた。北京大学などほかの多くの大学も、学外への外出を事実上禁じており、地方出身者も多い学生の動きの足止めを強めている。
 交通機関も足並みをそろえる。航空会社は帰省を取りやめた学生に対して、チケットのキャンセル料をとらないと異例の発表をした。鉄道省は、連休中に組まれていた北京駅からの帰省客のための100本以上の臨時列車の運行を取りやめた。
 国営テレビは大型娯楽番組を期間中に集中的に流し、新聞各紙とそろって、「SARS感染との『闘争』に勝利する」ために自宅で過ごすよう市民に呼びかけている。
 北京市では1日現在、感染者は計1,553人、死者は82人にのぼる。王岐山・代理市長は4月30日の記者会見で、「農村に感染が広がることが最も心配だ。この1週間がカギだ」と強調した。
 一方、各地方政府も移動自粛の通知を出し、北京に向かう人の流れを絶とうとしている。天津市は公務員が感染地に行くことを控えるよう求め、やむをえず行った場合は衛生当局に報告することを義務づけた。

◎香港のSARS感染者1,600人に、半数以上は快復(2003年5月2日、朝日新聞)
香港政府は1日、重症急性呼吸器症候群(SARS)による肺炎で、前日午後から新たに5人が亡くなり、11人が感染したと発表した。死者は162人、感染者数はのべ1,600人となった。死者は34〜83歳の男性で、他の病気がある人が大半だったが、アモイガーデン住民の持病のない51歳の男性も含まれている。新たな退院者は43人、計834人となり、半数以上が快復したことになる。

◎SARS感染、北京でさらに122人増(2003年5月2日、朝日新聞)
中国衛生省は1日、同日朝現在で、急性重症呼吸器症候群(SARS)の感染者が北京市で新たに122人増え、7人が死亡したことを明らかにした。また、新感染者が天津市で12人、河北省で8人見つかるなど、日ごとに100人以上が増える猛威が止まらない北京市の周辺でも感染がじわじわと広がっていることを示した。
 新たな増加で、北京の感染者は1553人、死者は82人になった。また、全国の新たな感染者は187人増加して計3638人、死者は11人増えて170人に達した。

◎WHO、SARSの臨床データ発表(2003年5月1日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は30日、SARSの臨床データを発表した。香港の患者の経過を調べた内容。ウイルス量は発症から10日目にピークになり、減るのは15日目以降だった。抗ウイルス薬などの治療で一度熱が下がっても8割以上で再び発熱するなど、治療の難しさを示していた。
 報告によると、患者の粘膜、便などを検査した結果、治療開始後10日では患者全員の便からウイルスが見つかった。尿では5割からだった。3週間後に、便では3分の2に、尿では5分の1にウイルスが減った。
 さらに、患者75人の治療効果を調べると、治療を始めた直後は発熱や肺炎を抑える効果があったが、85%は発症から平均8.9日目で再び発熱。73%で平均7.5日目で下痢の症状が出ていた。治療には、抗ウイルス薬リバビリン、ステロイド剤を3週間使った。

◎中国から香港、ホテル、病院、感染の「点と線」浮かぶ(2003年5月1日、朝日新聞)
世界に広がるSARS。その発端となった中国で「第1号」患者に行き着いたようだ。中国から香港。そしてホテルで、家庭で、病院で、患者と患者をつなぐ点と線が浮かび上がってきた。それぞれの地にSARSを運んだキーパーソンがいた。
 世界保健機関(WHO)や研究者による調査、現地報道などで判明したルートは次のようになっている。

【香港】
中国広東省の病院の男性医師(64)が2月21日、親類の結婚式に出席するために発熱をおして香港へ。そしてメトロポールホテル9階に泊まった。同じホテルに宿泊した客から各国に伝わる一方、医師が入院した病院で職員70人、医学生17人に伝染した。男性医師は「香港0号患者」と言われる。
 同ホテルに知人を訪ねた男性(26)が発症してプリンス・オブ・ウェールズ病院に入院し、職員や患者、見舞客らに次々と院内感染。腎不全で通院中の男性(33)も感染した。男性の弟が、約300人の集団感染を起こすことになるアモイガーデンE棟の住人。男性はそこに4日間滞在した。

【カナダ】
同ホテルに泊まっていたカナダ人夫婦が2月23日、トロントに帰った。2日後に妻(78)が発熱やせきなどの症状を示し、3月5日に自宅で死亡した。
 同居の息子(43)も発症。市内の病院の集中治療室で亡くなった。息子を診察した医師や同室の患者に感染していった。
 当初、息子がSARSだとは考えられていなかった。カナダ厚生省のガリー医師は29日、米上院公聴会でこう語った。
 「女性は自宅で死亡したし息子は香港への渡航歴がなかった。息子が入院した病院はSARSと関連づけられなかった」

【ベトナム】
同ホテルに滞在した米国人ビジネスマン(48)が2月26日、訪れたハノイで発症して入院。3月20日までに22人に院内感染した。
 この病院にWHO所属の感染症専門家カルロ・ウルバーニ医師(46)が勤務。WHOに新型肺炎として報告し、集団感染勃発(ぼっぱつ)が世界に周知されるきっかけになった。ウルバーニ医師は自らも感染して3月29日に死亡した。

◎SARS、退院後に再発のケースも、香港(2003年5月1日、朝日新聞)
香港政府は30日、SARSによる肺炎で、前日午後から新たに7人が亡くなり、17人が感染したと発表した。死者は157人、感染者数は累計1589人となった。死者は44〜89歳の男女で、いずれも他の病気がある人。32人が退院し、退院者数は計791人となった。
 一方、香港紙明報と香港経済日報は30日、香港島・杏花邨の男性SARS感染者が、いったん退院した3日後に再度発熱し、再入院していたと報じた。香港政府はこうした「再発」が12例あったと認めた。
 男性は7日に入院し、22日、肺のX線写真も血液の数値も正常に戻ったとして退院した。しかし、25日、再度発熱し、元の病院へ再入院。SARSと確認された。
 明報は専門家の話として、薬の服用を停止するのが早すぎて再発した可能性があるほか、ステロイドの投薬を止めると、免疫機能が回復する際に肺炎症状が再発することもある、としている。

◎北京のSARS感染者、広東省超え1440人に(2003年4月30日、朝日新聞)
中国衛生省が30日に発表した同日午前10時(日本時間同11時)時点の新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染者数は、北京で101人増えて1440人に達した。SARSの最初の感染者が報告された広東省(1405人)を初めて上回った。全国(香港、マカオなどを除く)の感染者数は166人増の3460人に上った。
 北京では強硬な感染防止策が次々と打ち出されているが、20日に北京市長らの更迭が発表された以降も、1日100人前後の感染者の増加ペースが続いている。
 北京の王岐山市長代理は30日の記者会見で「予想しなかった病気の伝染過程では、必ずこのような(感染急増の)時期があるものだ」と述べた。
 また、王市長代理は呼吸器関係の治療を専門に行える医師と看護師が北京に3000人足らずしかいないことを明らかにした。感染の恐れがあるとして隔離された人はのべ9650人に達しており、感染の広がりの早さに、医療環境が追いついていないことを改めて示した。

◎SARS「第1号」は広東省・40代男性か(2003年4月30日、朝日新聞)
新型肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)の調査などで4月中旬、中国・広東省を訪れた国立国際医療センター(東京都)の切替照雄・感染熱帯病研究部長らのチームは30日、厚生労働省で開かれた会合で、昨年11月に端を発したSARS感染の状況を報告した。肺炎を発症してSARS「第1号」とされる患者は、広東省仏山市に住む40代の男性。しかし、この男性から、SARSウイルスに感染していたことを示す抗体が見つかったかどうかは確認できなかったという。
 切替部長らは、4月10〜16日に広東省を訪れ、現地の在留邦人を対象にSARS対策を指導。あわせて現地の衛生当局や入院先の病院で、聞き取り調査を実施した。
 報告によると、衛生当局が「第1号」と認定する患者は農業協同組合の事務職員。昨年11月に発熱などの症状を起こして、広東省広州市の広州医学院第1付属医院に入院、その後、快復したという。妻には感染したが、4人いる子どもには感染しなかった。
 同医院は今年4月中旬までに98例のSARS患者を治療しており、治療に当たった医師も「この男性が最初の患者だと考えている」と語った。世界保健機関(WHO)の調査チームもこの患者に接触したという。最初の患者や発生源を突き止めれば、感染の拡大防止や再発予防などの対策に役立てることができる。
 SARSウイルスは、野生動物に由来するという説がある。切替部長は「住んでいたのは日本でいう農村ではなく、都市部。発症前の2カ月間、遠方から来た人と接していないことは確認された。山に入ったとか、野生動物に接触したとかなどの情報はないとのことだった。発生源はわからない」と話した。
 また「第2号」とされる患者は同省深セン市の料理店に勤める独身男性の調理師で「動物を扱うことが多かった」という。発症後、実家のある同省河源市内の病院に入院したが、退院後の足取りはつかめていない。
 切替部長は「現地では感染のピークは過ぎたと考えられているようだ。4260人の邦人がいるが、感染者は一人もいなかった」と述べた。
 中国政府は2月14日、WHOに対し、昨年11月から今年2月にかけて、原因不明の肺炎が集団発生、305人の患者(死者5人)が出ていることを初めて報告した。その後、WHOの調査によって、SARSの可能性が高まり、3月下旬から現地調査を実施している。

◎SARS感染、5462人に、中国・香港で9割占める(2003年4月30日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は29日夕、新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の患者が、前日に比べ412人増え5462人(可能性例含む)に、死者は同32人増の353人になったと発表した。
 中国で400人以上の新患者が出たことが、全体の数字を押し上げた。中国と香港で全患者の9割を占める。
 死者は、中国で17人増え148人、香港で12人増えて150人になった。

◎SARS感染、5462人に、中国・香港で9割占める(2003年4月30日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は29日夕、新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の患者が、前日に比べ412人増え5462人(可能性例含む)に、死者は同32人増の353人になったと発表した。
 中国で400人以上の新患者が出たことが、全体の数字を押し上げた。中国と香港で全患者の9割を占める。
 死者は、中国で17人増え148人、香港で12人増えて150人になった。

◎SARS感染5050人、死者28人増321人(2003年4月29日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は28日夕、新型肺炎SARSの感染者が、26日に比べ214人増えて5050人に、死亡者は同28人増の321人になったと発表した。
 新感染者のほとんどは、中国、香港、台湾で出ている。特に中国での増加が目立つ。

◎台湾の立法委員、「SARSは中国肺炎に改名すべき」(2003年4月29日、朝日新聞)
台湾・民進党の蔡同栄・立法委員(国会議員)は28日、中国のSARS感染状況隠しを批判し「新型肺炎のSARSは中国が発生源なのに、SARSという名称では元凶がどこか分からない。政府は大衆の教育のために直ちに名称を『中国肺炎』(China Pneumonia)に変えるべきだ」と提案した。

◎韓国で中国から帰国男性がSARS「可能性例」患者(2003年4月29日、朝日新聞)
韓国の国立保健院は29日、北京から帰国した40代の男性1人が新型肺炎SARSの「可能性例」にあたると発表した。韓国では29日午後現在、15人の「疑い例」が届け出られているが、より感染の恐れが強い「可能性例」は初めて。
 国立保健院は近く世界保健機関(WHO)に報告する方針だが、ウイルスを培養し、数日後に感染者かどうかの最終判断をするとしている。
 発表によると、男性は語学研修目的で北京に約2カ月間滞在していた。28日に帰国したが、仁川空港での検疫段階で高熱などの症状が現れていたため隔離病棟に入った。呼吸器障害や肺炎の症状も出ているという。保健当局は、同じ飛行機で入国した乗客の所在の把握を急いでいる。

◎中国のSARS禍、感染者の2割は医療関係者(2003年4月29日、朝日新聞)
新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染者の急増が、中国の医療現場を直撃している。感染者全体に占める医療関係者の割合は約2割に上る。医師らが不足し、人民解放軍は軍の医療部門の人員1200人の北京への派遣に急きょ踏み切った。中国当局は医師たちの対応が感染拡大防止のカギを握るとみて、士気向上のための優遇措置も打ち出し始めた。
 北京の病院の防疫部門を担う女性(39)は「今こそ、我々の政府への支持を示す時です。感染は怖くはない」と胸を張った。その上で、「ただ、家族はかなり心配しているみたいだけど」と小さな声でつぶやいた。
 28日現在、中国の感染者3106人のうち、医師、看護師、検査技師らは21%の653人に上る。
 当局のSARS対応の遅れで、院内感染が急速に広がったとみられている。山西省では今月中旬の段階で感染者の4割を医療関係者が占めた。
 中国衛生省は27日、病院での感染防止策を強めるように緊急通知を出した。管理者の責任を厳しく追及するという。
 中国当局は病院で感染者1人当たりに必要とされるスタッフは最低6人とみている。北京では3万6千人がSARS治療を担えるとし、感染者が6千人以下ならば十分に対応できるとする。
 しかし、北京では感染の可能性から隔離された人はすでに計8924人に上る。日刊紙の北京青年報は「朝から深夜まで寝る暇もない」との看護師の発言を伝える。
 こうした事態を受け、人民解放軍の医師らが27日から北京に続々と到着している。大学院生らの医者の卵たちが「自発的」に治療現場に駆けつけた、などとの報道も相次いでいる。
 市民の間では、感染を恐れて現場で尻込みする医師も少なくないといわれる。当局は医師たちの士気を高めることを狙った措置を打ち出した。
 SARS禍が深刻になって、北京市朝陽区は、同区の幼稚園から高校までの入学試験で、医療関係者の子弟に対する優遇措置を決めた。
 同区は北京でも有数の進学校が集まっており、子弟の受験問題を緩和させることで、医師らを励まし、SARS治療に専念できる環境をつくる狙いだという。受験の際、一定の点数が加算されるうえ、希望校の合格点数に達しなくても、同区内のほかの進学校への入学を保証する。
 中国財政省は、SARS治療に当たる医療関係者の残業代などに対する個人所得税を減免することを決定。中国では「エリート」の条件とされる共産党入党を医師たちに優先的に認める動きが進んでいるとの情報もある。
 引き締め策も同時進行だ。当局はSARS対策に消極的な姿勢を示したとされる公務員や医師らには厳しい処分を行う。西安市では市民からの相談で対応が悪かったとして衛生局の役人が解雇された。

◎SARSで封鎖の工事現場、隔離して工事続行 北京(2003年4月29日、朝日新聞)
重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染者が出て27日に封鎖された北京市の工事現場で、周囲から現場を隔離したまま建設工事が続けられていることが分かった。現場周辺は、2008年の五輪開催を前に急ピッチで街の改造が進んでいる中心部。急速なSARSの感染拡大の中にあっても、再開発のスケジュールを遅れさせたくないという当局の方針があるようだ。
 閉鎖された工事現場は、北京市東城区の「金港101工地」。北京一の繁華街、王府井や北京駅にも近い。周辺では、「胡同」と呼ばれるれんがの家が密集する古い街並みが取り壊され、近代的なビルが次々と生まれている。
 現場周辺の工事関係者らの話によると、封鎖されたのは27日午後4時ごろ。衛生省の職員が、現場の封鎖を告げ、向かいの工事現場の労働者やガードマンらに「SARS感染者が出た。ここの現場の労働者と話したり付き合ったりしてはいけない」と話した。約200人の作業員は、四川省出身者が多いという。ミキサー車などの車が出入りするときに門が開くだけで、作業員が外出することはないという。
 28日午後、トタンで囲まれた現場は、鉄製の門は閉ざされているものの、内部では通常通りに工事が進められていた。ビル3階ぐらいの高さまで鉄骨が組み立てられ、竹製の足場の上を歩く作業員らの姿が見えた。昨年冬から高層マンションの建設が始まり、今年夏に完成の予定だ。
 建設工事続行は、周辺住民に不安を与えている。現場と細い道をはさんで向かい合った美容院の経営者(40)は「SARS感染があったのだから、いったん工事を中止して、ほかの労働者の健康状態をしっかり調べるべきだ。周辺住民にもうつってしまったら取り返しがつかない」と話した。

◎中国のSARS感染、公表より深刻、WHO部長(2003年4月28日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)のデビッド・ヘイマン感染症対策部長は28日、バンコクで朝日新聞と会見し、重症急性呼吸器症候群(SARS)について「中国の感染者数は、現在公表されているよりも深刻」との見方を示した。一方で、制圧宣言をしたベトナムをはじめカナダ、シンガポール、香港については「感染拡大のヤマは越えた」と述べた。
 ヘイマン部長は、WHOの代表として、29日に当地で開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国の緊急首脳会議で、感染の現状などを説明する。
 ヘイマン部長は、香港を除く中国について「情報収集が始まったばかりで、全土の状況を把握するにはあと2週間はかかる」とし、「報告される感染者数は、今も連日増え続けている」と憂慮した。しかし、今回の緊急首脳会議に、中国の温家宝首相が出席することを挙げ、「中国当局は真剣に取り組み始めた」と評価した。
 香港、カナダ、シンガポール、ベトナムについては「日々、報告される感染者数が減っており、感染の拡大という意味ではヤマを越えたと考えている」と述べた。ただ、「世界的な流行が収まったとは言い切れない」と指摘し、「中国で感染拡大を阻止できるかが、制圧のカギになる」との考えを示した。
 ベトナムについては、「最初の感染が発見された時点で、ただちに国内外の専門家を集めて対応に当たったことが制圧につながった」と述べ、迅速な対応と国際協力の重要性を指摘した。
 さらにヘイマン部長は、「人々がSARSに対して必要以上に恐怖感を持っている」と述べ、緊急首脳会議でも、正しい知識の普及を呼びかけたいとした。
 29日午後からタイ外務省で開かれる会議には、マレーシアのマハティール首相を除くASEAN加盟国の首脳と、中国から温家宝首相、香港から董建華行政長官が参加する。
 同会議終了後、温首相も加わり、ASEANと中国が共同の記者会見を開く予定。マレーシアでASEANと日中韓が26日に開いた保健担当相会議の結果を踏まえ、SARSの感染拡大防止に一致して取り組む姿勢を強調する。

◎内陸部の増加目立つ、中国のSARS感染者3106人(2003年4月28日、朝日新聞)
中国衛生省が28日発表した同日午前10時(日本時間同11時)時点の重症急性呼吸器症候群(SARS)感染者数は、全国(香港、マカオを除く)で3106人に達した。前日の発表から新たに203人の感染が報告され、死者数は8人増えて139人になった。内陸部で増加が目立ち始め、感染の広がりが心配されている。山西省で29人増えて243人、内モンゴル自治区では38人増え114人となった。
 北京では96人増えて1199人に上り、100人前後の増加ペースがまだ続いている。
 北京の日本大使館によると、SARS感染を避けるため、北京に住む日本人駐在員、家族、留学生ら約7000人のうち、1割程度がすでに帰国したとみられる。このほかに留学生約400人が近く帰国する見通しという。

◎SARS感染、北京近郊に1000床の大規模隔離病棟(2003年4月28日、朝日新聞)
北京市当局は急増する新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染者を隔離収容するため、同市近郊での大規模な伝染病専門病院(約1千床)の建築を急きょ決めた。4000人以上の労働者が24時間態勢の「人海戦術」で突貫工事を続けており、すでに6割方が完成したという。
 建築は23日に決定され、当日に着工、「早急な完工」を目指している。北京では連日100人前後のペースで感染者が増加し続け、収容施設の確保が迫られた問題となっているためだ。
 工事現場には労働者と工事用車両がひしめき合っていた。白壁の平屋の病棟はすでに外形が整い始めており、周辺にはベッドや戸棚などの設備を満載したトラックが列を作っている。完成した部分のうち30%ほどは内装も終えたという。

◎SARS、地下鉄直撃 北京、ラッシュアワーもガラガラ(2003年4月28日、朝日新聞)
都市化が進む北京で、庶民にとって心強い足となっていた地下鉄が、新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響で、ラッシュアワーでさえガラガラという状態が続いている。混雑し密閉された車内でのSARS感染を恐れ、「乗りたくても乗れない」という市民が大半だ。
 28日朝、通勤時に最も混雑する駅の一つ、市中心部にある朝陽区の国貿駅を見た。
 ふだんの朝なら、それぞれ20人以上の行列ができる三つの切符売り場の窓口は、人影がまばらだった。厚いマスクと手袋をした駅員が手持ちぶさたに座っていた。
 長いホームには6両編成の電車が約3分おきに入ってくるが、1両に乗っているのは10人前後。なるべくほかの乗客と距離を置くようにイスの両端に座っている。
 車内で、SARS関連の新聞記事を読んでいた銀行員の男性(32)は、友人宅に宿泊したため、この日はたまたま地下鉄に乗った。「怖いからできれば乗りたくないが、出勤しないわけにもいかない」と不安げに話した。

◎SARS感染地域指定、深刻さで3〜4段階に、WHO(2003年4月28日、朝日新聞)
新型肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)の世界的な感染拡大を受け、世界保健機関(WHO)は、感染地域か否かの区別しかない現在の指定基準を見直し、事態の深刻さに合わせて3〜4段階に分ける新基準を導入する。各国から「感染者の多い国も少ない国も同列に扱われている」と不満が出ていたためで、近く公式に発表される。
 26日にクアラルンプールで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス日中韓の保健担当相会議に出席した尾身茂・WHO西太平洋地域事務局長が朝日新聞に明らかにした。
 「伝播(でんぱ)確認地域」という名称のWHOの感染地域リストへの指定は、人から人への感染が起きたかどうかだけを基準としている。現在、SARSについてはトロント(カナダ)、北京、香港、台湾、ハノイ(ベトナム)、シンガポールなど11ヶ所がリストアップされている。
 これだと感染者が2000人を超える中国と数十人程度の国が同列に扱われる印象を与えるほか、一件でも感染が見つかればリストに入れられ、その途端に国や地域の観光、経済が大きな打撃を受けかねない。WHOは感染が深刻な地域には渡航自粛勧告も出してきたが、リストとの関連が分かりにくい面があった。
 尾身氏によると、SARSを含む各感染症の地域を指定する新基準では、患者の多寡や感染の形態、海外への感染の有無、ウイルスの特定状況などの要素をWHOが総合的に判断し、「重度」「通常」「軽度」(名称は検討中)といった3〜4の段階に分けた形で、地域を指定する。
 また、その国の医療監視態勢の健全さも加味する方針で、今回の中国のように、情報隠しなど政府の対応に問題があれば、感染者が少なくても「重度」に指定することがあり得るという。
 指定方式の見直しについては保健相会議でも共同声明に各国の要望として盛り込まれていた。またトロントに今月渡航自粛勧告を出されたカナダのように、WHOの感染地域の扱いに不満を訴えるケースも出ていた。

◎ベトナムがSARS制圧を宣言、20日間感染発生ゼロ(2003年4月28日、朝日新聞)
ベトナム保健省は28日、新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の新しい感染者がこの20日間、同国で発生しなかったことを受けて、SARS制圧を宣言した。
 世界保健機関(WHO)は、「30日までにSARSの発生がなければ、ベトナムは制圧に成功したといっていい」として流行指定地域からベトナムを除外する方針。
 ベトナムでは2月23日に中国からハノイに到着した中国系米国人実業家が発症し、ハノイのフランス病院に入院した後で症状が悪化、香港に移送されて死んだ。この際、フランス病院の医師、看護師らが集団感染し、5人が死亡し、63人が感染した。
 しかし、日本から派遣された感染症専門医らによる感染予防の指導をはじめ、隔離と消毒により感染拡大を阻むことができた。首都ハノイでは4日の感染例が最後だったが、首都南方ニンビン省では、8日に感染が報告されていた。
 しかし、国境を接する中国では感染者が増えており、中国からの入国者を通じて新たにSARSが発生する脅威は依然残っている。ベトナム政府は引き続き空港や陸上国境での検疫強化や国民に予防、健康上の注意を呼びかけている。

◎台湾で初のSARSによる死者 56歳男性(2003年4月27日、朝日新聞)
台湾衛生署(厚生省)は27日、中西部の台中市でSARSに感染、入院していた男性(56)が26日夜に死亡したと発表した。台湾では初めてのSARS感染者の死亡になる。
 男性の兄は香港でSARSが集団発生した民間団地アモイガーデンに住んでいて、3月下旬に墓参のために台湾に帰省して再び香港に戻った。死亡した男性は兄との接触によって感染したと見られ、今月3日から入院していた。
 台湾当局は27日、感染者が多い中国と香港からの入境をさらに制限する措置を発表した。中国全域と世界保健機関(WHO)が指定した感染地域から台湾に入った人は、自宅などで10日間の強制隔離を義務づけた。
 台湾の27日夕までの感染者は55人。院内感染のために24日に閉鎖された台北市の市立和平病院を中心に感染者が増えている。台北市によると、同病院では27日までにSARSの疑いのある人がほかにも3人死亡しており、当局は死因の確定を急いでいる。
 同病院では病院関係者930人と患者200人を病院と別の施設に分けて隔離、家族ら4000人は自宅での隔離が必要とされている。ただ、閉鎖の前後に看護師らが勝手に病院を抜け出したり、27日になっても病院関係者40人がなお病院に戻っていなかったりするなど混乱が見られる。

◎「おれはSARSだ」食品脅し取ろうとした男逮捕、中国(2003年4月27日、朝日新聞)
「おれはSARSにかかっている」。新型肺炎が猛威をふるう北京でこのほど、感染者を装って食品を脅し取ろうとした男が逮捕された。
 新華社電によると、商店に入ってきた男は約1000円の加工肉を手にとり、「病院から逃げてきたところだ。それでも代金を払って欲しいか」と店主に迫ったという。
 中国・広東省でも、感染者のふりをした男が150人乗りのバスを乗っ取り、現金を要求して捕まったばかり。同じような手口の事件が続発するのでは、と警察当局は懸念を強めている。

◎SARS、感染者5000人超え、死者も300人超(2003年4月27日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は26日夕、SARSの感染者が前日に比べ187人増えて4836人に、死亡者は同19人増の293人になったと発表した。
 これに中国、香港当局が27日に発表、WHOに報告する新感染者と死亡者を加えると、27日現在の感染者は世界で5000人を超え、死者も310人を上回ることになる。

◎SARSの死亡率さらに上昇、5〜6%に、WHO(2003年4月26日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は25日に行われた会見で、新型肺炎SARSの死亡率について「5〜6%」に達することを明らかにした。
 WHOは当初、死亡率を4%程度、その後、5%前後としていたが、今回、さらにSARSの死亡率は高いとの認識を示した。ただ、年齢や、健康状態によって、死亡率に大きな差があるため、確定にはさらに調査、研究が必要という。
 24日現在でWHOがまとめたSARSの感染者数は4439人、うち死亡者は263人。死亡率は5.9%となっている。

◎SARS予防、基本が大事 手洗い・うがい・睡眠しっかりと(2003年4月26日、朝日新聞)
新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)が、アジアを中心に猛威をふるっている。病原体は新型ウイルスと断定されたが、感染ルートは依然、なぞに包まれている。いつ、日本に侵入してもおかしくない状況の中で、冷静に対応するにはどうしたらいいのか、国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長に解説してもらった。

・どんな症状?
 急に38度以上の高熱が出て咳(せき)をしたり、呼吸が困難になったりします。頭痛や筋肉痛、発疹、倦怠(けんたい)感、下痢といった症状がみられることもあります。胸をX線で撮影すると、すりガラス状の肺炎の影が写ります。
 ただ、このような症状はインフルエンザなど、ほかの感染症でも考えられ、判別がつきにくいので注意が必要です。
 流行地域から帰国して症状のある人は医療機関に受診して欲しい。ただ感染の可能性の高い症状のある人を開業医が管理するのは難しいので、感染症対策がとれる医療施設を選んで下さい。
 症状が出ても8〜9割の人は特別に治療を受けなくても1週間ほどで快復しています。潜伏期間は3〜10日なので流行地域から帰国して10日たっても症状がなければまず心配は要りません。

・死亡する場合も?
 糖尿病、心臓病など別の病気がある人がかかると重症化しやすく致死率が高まるようです。症状が出た人のうち死亡したのは4%前後になります。しかし、感染に気づかないまま治る人もいるとみられ、感染のすそ野が不明なので詳しい致死率は分かっていません。

・感染ルートは?
 原因はSARSウイルスだと突き止められましたが、ルートは十分には解明できていません。今のところ、患者や感染者の咳やくしゃみなどを浴びる「飛沫(ひまつ)感染」が中心とみられます。飛沫感染だと感染源の約1メートル以内に近づかなければ感染しない。
 でも、下水管といった特殊な状況で水しぶきなどを通じて広がったり、1メートル以上の距離で空気感染したりする可能性も消えていません。

・予防法は?
 どの国も、SARSの侵入を水際でシャットアウトするのは難しい。侵入をいかに早く把握し、重症化や2次感染を防ぐのか、がポイントです。
 大切なのは、世界保健機関(WHO)が勧告しているように、緊急の用事がない限り流行地域に行かないこと。普通に生活する上であまり心配する必要はないでしょう。患者が出ても隔離して手洗いや消毒を徹底するなどの標準的な対策で大規模な2次感染を防いでいる国は多い。インフルエンザやはしかより、感染力は弱そうです。
 SARSに限りませんが、感染症の予防策は、手洗い、うがいの徹底に尽きます。帰宅すれば流水で十分に手を洗う。外出して、ものを触った手で、自分の鼻や口に触れることは避ける。十分な睡眠、バランスよい食事を心がけ、体力を良好な状態に保つことが基本です。

・マスクは有効?
 一般のマスクは、感染者がつばなどを飛び散らせるのを防ぐ効果はありますが、完全な感染予防にはなりません。患者や感染者に接触する医療関係者は外科用マスクなどの着用が必要です。感染者からの「飛沫粒子」が目、鼻、口などの粘膜に付着するのを避けるにはゴーグルも有効です。
 仮に家族に感染の疑いがある人が出た場合は、飛沫が飛ばないようマスクをし、外出しないようにして欲しい。つばや尿、便などに触れた心配があるときは、手をきちんと洗って下さい。

・アルコール消毒は?
 有効です。家庭や職場、集合住宅などの共用部分はアルコールや漂白剤でよく消毒して欲しい。ふきん、お手ふきなどは使い捨てにしないと意味がありません。

・どのように診断?
 たんや血液、便などからウイルスの遺伝子の一部を見つける検査や血液中の抗体検査などが開発されつつありますが、症状から総合的に診断しているのが現状です。検査の精度に限界があり「陽性」と出ればかなり確実だが、「陰性」と出たからといって感染していないとは言い切れません。

・治療法は?
 香港などでは抗ウイルス剤リバビリンと免疫抑制剤ステロイドを併用すると一定の効果があるとも報告されていますが、医学的に効果が確認されたわけではありません。副作用もあります。
 根本的な治療法はまだなく、対症療法が中心ですが、原因が分かったので治療法や予防法の開発にも着手できると期待されます。ただ、まだ時間がかかるでしょう。

 岡部信彦(おかべ・のぶひこ)氏 東京慈恵会医大卒、世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局伝染性疾患予防対策課長、同医大助教授(小児感染症)などを経て2000年4月から現職。

◎帰国後に発熱、電話して病院へ→肺炎は個室→確定なら公費(2003年4月26日、朝日新聞)
先日、香港に行ってきた。帰国後、どうも体が熱っぽい。SARSかもしれない。どうしたらいいの?
 香港や中国北京市など流行地から帰国して10日以内に38度以上の発熱やせき、息切れが出たら、SARSの疑いがある。医師の診察を受ける必要があるが、病院へ行く前に、電話で連絡しておくことが大切。病院側がほかの患者への2次感染を防ぐために、待合室を別に用意するなど、迎える準備をしなければならないからだ。
 病院では胸部のX線写真の撮影や血液検査、インフルエンザの簡易検査などを受ける。X線写真で肺炎が確認されなければ、入院の必要はない。快復するまでは、できるだけ自宅で過ごすことが求められる。世界保健機関(WHO)が示している「疑い例」として都道府県を通じて厚生労働省に報告される。
 X線写真で肺炎が確認されたら、より疑いが濃い「可能性例」として厚労省へ報告される。
 病原体を外へもらさない構造の個室を完備した病院へ移って、入院することになる。マイコプラズマなど、肺炎を起こすことが知られている病原体の検査を受け、どれにも該当しない場合は、血液やたんなどの検体が国立感染症研究所へ送られ、SARSウイルスの検査をされる。
 抗生物質による治療を受け、3日たっても症状が改善されなければ、SARSの可能性がさらに高くなる。国立感染症研究所の検査結果でSARSウイルス陽性となるなど、SARSの可能性が極めて高いと判断されると、都道府県から感染症法の新感染症として厚労省へ報告される。
 厚労省が招集する厚生科学審議会の感染症部会で最終的な判定を受け、SARSと確定される。特効薬はないので、肺炎を抑え、熱を下げる治療が続けられる。医療費は入院時までさかのぼって公費負担となる。

◎SARS感染止まらぬ中国、180人増え2601人に(2003年4月25日、朝日新聞)
中国衛生省の25日の発表によると、前日夜現在で新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染者は全国(香港、マカオ除く)で180人増え、計2601人に達した。死者も5人増の115人となり、感染の急速な拡大が続いている。北京市の感染者は103人増えて計877人に、また死者も3人増えて、計42人に及んだ。
 教育省は5月の連休中、大学生が帰省することを禁止した。また、北京市では、感染者が多い一部の大学の宿舎を鉄のさくで囲むなど封鎖措置をとった。

◎上海は当面「安全」SARSでWHO調査団(2003年4月25日、朝日新聞)
新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の上海での感染状況を5日間にわたって調べていた世界保健機関(WHO)の専門家チームは25日夕の会見で、これまでは医療体制がうまく機能し、患者の発生が抑制されているとして、当面は「安全」との考えを明らかにした。
 感染者2人、疑いのある人18人との市当局の発表に対し、「1600万の大都市にしては少なすぎる」との疑問の声も出ていた。医療施設10カ所を自ら選んで視察した調査団はこの数字について「感染を故意に隠している形跡は見られない。大きなずれはないだろう」と述べた。「安全」と判断した理由について、同チームは(1)感染者が上海に入る前に予防措置を整えた、(2)感染の疑いのある人が出た場合、周辺関係者の大量隔離策を採っている、などを挙げた。ただ上海市が22日から新しい判断基準を導入したため感染者などの数は少し増えるかも知れないとしている。
 今後の見通しについては、「2カ月前に北京がこんなにひどくなるとはだれも予想しなかった。今後、地方の感染を防げなければ上海だけでなく世界の安全も保証できない。すでに地方の半分が感染している」と述べ、医療設備が整っていない内陸部の感染防止がSARS退治のカギになるとの考えを示した。

◎北京市、大病院を「封鎖」、SARS隔離強化の第一弾(2003年4月24日、朝日新聞)
新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)による感染者が北京市で増え続けているなか、北京市政府は24日、北京大学人民病院などいくつかの病院の診察を停止する措置をとった。同時に病院職員を一斉診察するなど、感染を防ぐための「封鎖」措置といえる。市政府は23日、市民に対して、感染の危険のある場所を隔離するとの通告を出しており、この第一弾と見られる。北京大学人民病院は1200床。同病院は診察停止を認めた。
 通告は(1)感染者(2)感染の疑いのある人(3)これらの人と密接に接触した人、は、それぞれの隔離(4)SARS汚染を受けた病院、工場、建設現場、ホテル、オフィスビル、住宅、村落、学校などの封鎖(5)汚染された動物や物品の処分、などを定めている。
 違反者に対しては、衛生部門が阻止するが、必要に応じて警察機関が協力し、強制措置をとるとしている。また、隔離期間中、政府の担当部門は、隔離者に対する指導や、生活必需品の確保などを求められている。
 北京市の感染者は696人、死者は35人。このほか、疑いのある人が782人に達する(22日夜現在)。これまでも、感染者を隔離したり、建物を消毒したりしているが、不十分だと判断した結果の通告と見られる。
 北京市の人口は約1300万人だが、地方から流入している流動人口が200万〜300万あり、合計で1500万人前後に達する。中心地では住宅が密集している。

◎SARSの死亡率上昇、WHOは「5%前後」(2003年4月24日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は23日会見し、新型肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)の死亡率が5%前後に達することを明らかにした。当初、SARSの死亡率は、3〜4%と見られていた。
 23日までにWHOへ報告のあった感染者は、27ヶ国・地域で4288人、死亡者は251人だった。最近は、死亡者の増加率が高い。同日現在、感染者数に占める死亡者の割合は5.9%で、今月中ごろに比べ、1%以上上昇している。

◎SARS対策、体温測定機を試験設置、成田空港(2003年4月24日、朝日新聞)
重症急性呼吸器症候群(SARS)を水際で阻止する対策として、厚生労働省は23日、成田空港の検疫ブース前に人の体温を測定できるサーモグラフィーを試験的に2台設置した。北京、広州、香港便からの入国者が対象で、装置が置かれた通路を通るよう協力を求める。測定していることを知らせる掲示をしてプライバシーに配慮するという。24日から約2週間、性能や効果を調べる。

◎SARS予防薬で中学生100人余が中毒症状(2003年4月23日、朝日新聞)
中国の観光地・西安の東約100キロの陜西省洛南県の中学校で16日、生徒100人余りが新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の予防に効くとされる漢方薬を飲みすぎて中毒を起こした。12人は症状が重く入院したが、すでに退院したという。国営通信・新華社が22日伝えた。
 校医が漢方薬を購入し、大鍋でせんじて全校教師、生徒1500人余に飲ませた。直後から翌17日にかけ、めまいや吐き気、熱を出す生徒が続出。41人が病院に運ばれ、点滴を受けた。薬には8種類の解熱・解毒の漢方薬が含まれていたという。
 医療専門家は新華社に対し「漢方薬は服用が適切であれば予防に役立つが、多すぎれば有害だ。決して乱用してはならない」と語っている。

◎SARS感染の花嫁が挙式、出席者は式後に検査(2003年4月23日、朝日新聞)
インド西部の都市プネーのキリスト教会で21日、花嫁がSARSに感染しているのを承知のうえで、結婚式が行われた。式後、花婿や牧師ら出席者25人が検査を受けた。
 インド各紙の報道によると、感染源は花嫁の兄。式に出席するため、8日に勤務先の東南アジアから帰国した際、機内で感染したらしい。兄から花嫁と母親にも感染し、3人とも入院した。
 地元の保健当局は式の中止を求めたが、花嫁は症状が軽かったため、花婿らの希望で式を開催した。医師や当局の係官が立ち会い、花嫁はマスクをつけて指輪を交換後、すぐに救急車で病院に戻ったという。インドのSARS感染者は、この3人を含め、計4人になった。

◎SARSで北京渡航の危険情報引き上げ、外務省(2003年4月23日、朝日新聞)
外務省は22日、新型肺炎・重症急性呼吸器症候群(SARS)に絡み、北京への渡航に関する危険情報を、12日に出した「十分注意する」から「渡航の是非を検討し、不要不急の渡航は延期を勧める」に引き上げた。中国政府が20日、北京市の感染者、死亡者数を大幅に修正したことを受けた措置だ。同レベルの危険情報を出した地域は、北京、香港、広東省の3地域となる。
 また、23日から、在北京日本大使館と在広州日本総領事館で来日のための査証申請を受理する際は、問診票の提出を求め、SARS感染の疑いがある場合は医療機関の発行する非感染証明書の提出を求めることも決めた。このほか、北京の日本大使館にマスク3000枚を送る。
 茂木敏充・外務副大臣は22日の記者会見で「北京での死者数が、香港などに危険情報を出した当時の死者数を上回っていることや、これまで同レベルの危険情報だったカナダ、ベトナムなどと異なり、感染経緯が明らかになっていないことを勘案した」と述べた。

◎SARS、突然変異で毒性強まる?被害大きい香港(2003年4月22日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)によると、香港ではSARSウイルスが突然変異して、毒性を強めた疑いが出ている。
 22日までにWHOに患者発生を報告した国・地域は27。大半の国では患者を隔離して、手洗いや消毒など標準的な対策で、大規模な2次感染を防ぐことに成功している。
 発症しても、8〜9割は自然快復。重症化して死亡するのは、糖尿病など他の病気を持つ高齢者が中心で、致死率は4%程度だ。
 ところが、集団感染が起きた香港のマンション「アモイガーデン」では、重症化する割合が2割と他の地域の2倍。健康な若者でも死者が相次いでいる。また、他地域では数%しか見られない下痢症状が7割の患者で出ている。
 WHOは、特殊な環境の中で大量に増えたウイルスが一度に体内に入った可能性に加えて、ウイルスが毒性の強い型に変異した可能性を新たに指摘している。
 ウイルスは他の生物に感染して自分の遺伝情報を複製して増えていく。ところが、何回かに1回、複製に失敗して遺伝情報が変わる。この結果、毒性の強い型になったという可能性だ。
 日本の国立感染症研究所など9カ国13機関は共同で、発症から約10日後には感染を示す血液中の抗体を確認できる検査法や、たんや血液からウイルスの遺伝子の一部を検出する方法などを開発中。しかし、精度に限界があり、決定的なものではない。WHOは「結果が陰性でも『感染していない』と断定できない」としている。

◎中国のSARS感染者数2000人突破、衛生省発表(2003年4月22日、朝日新聞)
中国衛生省は21日夜(日本時間22日未明)、香港などを除く中国国内での重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染者が、同日までに2001人に上ったことを明らかにした。同省は前日の記者会見で18日時点での集計を発表したが、19〜21日の3日間で194人の感染が新たに報告されたという。死亡者も13人増え92人となった。国営通信・新華社が伝えた。
 また、同省が感染者数を大幅に増やす修正を行った北京市では、感染者数がさらに136人増えて482人、死亡者も7人増の25人になった。これ以外に、同市で感染の疑いが持たれている人の数も、402人から610人に急増。疑いのある人の数は全国で753人になった。

◎SARSの死者、世界で200人超える、WHO発表(2003年4月22日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は21日、新型の肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)の死者が世界で200人を超えたことを明らかにした。100人を超えた8日から2週間足らずで死者が倍増した。
 同日までにWHOへ報告のあった感染者は、27ヶ国・地域で3861人、うち死者は217人だった。
 感染者が多いのは、中国(1959人、うち死者86人)と香港(1402人、死者94人)。そのほかでは、シンガポールで16人、カナダで12人の死者が出ているのが目立つ。

◎SARS死亡率、6.7%に上昇 香港(2003年4月21日、朝日新聞)
香港政府は21日、重症急性呼吸器症候群(SARS)による肺炎で、20日午後からの新たな感染者は22人、感染者は計1402人と発表した。死者は48歳から79歳までの6人で、いずれも別の病気があったという。香港の死者総数は94人となった。
 新たな感染者の数は、61人の入院が発表された11日をピークに少しずつ下がってきたが、1日あたりの死者は4〜12人と多くなっており、総感染者に対する死亡者の割合は11日から10日間で、3%から6.7%に上昇している。
 3月末の民間団地アモイガーデンでの集団感染で入院した人に重症者が目立ち、抗ウイルス剤リバビリンやステロイド剤も効かない事例が増えているという。持病のない30〜50代の感染者の死亡例も目立ちはじめた。
 政府衛生当局などは、ウイルスが変異し、毒性を強めた可能性もあるとみて研究を続けている。

◎SARS、死者200人超す、約8割は中国・香港(2003年4月21日、朝日新聞)
中国衛生省が20日、新型肺炎・重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染者数と死者数を大幅に修正したことで、21日までのSARSによる死者は世界で計200人を超えた。
 同省は、北京市でこれまで40人としていた感染者数を346人に、4人としていた死者数を18人に修正した。
 世界保健機関(WHO)の19日までのまとめで、患者または疑いのある症例は3547人、うち死者は182人となっていた。感染者、死者ともに中国と香港で世界全体の約8割を占めることになる。

◎対応追われる日本企業、SARS被害、北京直撃(2003年4月21日、朝日新聞)
 重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染者が北京を中心に多数出ていることが明るみに出たことを受け、中国に進出する日本企業は対策に一層頭を悩ませている。
 中国各地に工場を持つ松下電器グループは、すでに日本人従業員の家族を帰国させた。国内出張を禁じ、テレビ電話会議システムを活用している。各工場では定期的に消毒、専用バスで通勤させ、来客にもマスクをしてもらうなど感染防止策を徹底している。
 トヨタ自動車などほかの主要企業でも、希望する従業員家族を帰国させる措置をとった。東芝の北京事務所では従業員の危機意識が高まり、「昼に外食せず弁当を持ってくるようになった」。
 北京では、情報通信系の日本企業の中国人従業員がSARSに感染し、日本企業が入るオフィスビルで感染者が出るなどしたが、加えて根拠のない情報が日々飛び交い、各社ともピリピリしている。キヤノンでは4月はじめにいち早く高性能マスクN95を全従業員に配布したのが、逆に「感染者が出たらしい」という話になって広まってしまった。

◎北京のSARS被害、大幅修正、市長と衛生相を更迭(2003年4月21日、朝日新聞)
中国衛生省の高強・次官は20日の記者会見で、北京市の19日現在の新型肺炎・重症急性呼吸器症候群(SARS)感染者数を、同省が発表していた40人から346人へ大幅に修正、4人としていた死亡者も18人に上ることを明らかにした。また、共産党中央が20日までに孟学農・北京市長と張文康・衛生相を更迭したことを国営通信・新華社が報じた。正確な情報を公開せず、感染拡大を招いたことの責任を問うたとみられる。発足して1ヶ月の胡錦涛・国家主席ら新指導部の国際的信用も、大きく損なわれる事態となった。
 北京市の感染者数をめぐっては、衛生省の統計に軍の病院の患者数が含まれていない、と世界保健機関(WHO)が16日に指摘。高次官は会見で「病院間での情報交換が十分でなく、正確に状況を把握できなかった」と、統計が不正確だったことを認めた。だが、「意図的に隠したケースはなかった」と述べた。
 高次官によると、18日時点で中国の感染者は香港などを除き、1807人、死亡者は79人になった。最も多い広東省では感染者1304人、死亡者46人。北京市では感染者のほかにも、402人が感染の疑いを持たれているという。北京市の軍の病院数カ所の患者数が235人に上る実態も初めて公表された。
 感染の疑いのある402人のうち外国人は4人。この中に日本人1人が含まれているとの情報があり、北京の日本大使館が確認を急いでいる。また大使館関係者は、日本政府の無償援助でつくられた北京の「中日友好病院」でも医師らがSARSに院内感染したことを明らかにした。
 SARSの感染拡大をめぐっては、中国政府が3月末まで実態の公表を渋り、世界から批判が集中。今月初めに温家宝・首相が情報公開やWHOとの連携を指示した。
 だが、その後も衛生省の統計は軍の病院の患者数を含んでいない、と米誌などが医師の告発に基づき報道。衛生省は否定したものの、WHOも同様の指摘をし、17日には北京市疾病予防対策センターもこれを認めた。
 こうした事態に、胡主席や温首相が17日以降、虚偽報告には厳しく責任を追及する考えを表明していた。

<SARS>
「重症急性呼吸器症候群」の略称。サーズと読む。主な症状は38度以上の高熱、たんを伴わないせき、息切れと呼吸困難など。発生源は中国広東省とみられる。世界保健機関(WHO)は16日に新型のコロナウイルスが原因と発表し、原因ウイルスをSARSウイルスと命名した。
 2月に香港やベトナムで患者が報告されて以降、世界各地に拡大。19日時点のWHOのまとめでは、27の国・地域で患者または疑いのある症例が3547人、うち182人が死亡した。20日の中国と香港政府の発表分を加えると、それぞれ4266人、203人となり、中国と香港で世界全体の8割を占める。
 感染した人が飛ばすつばや体液に接触することが感染の主要経路とみられる。予防や治療に効果のある薬はまだないが、安静を保つなどの対症療法で症状が軽くなった例もある。

◎団地のSARS集団感染、排水管の水蒸気が原因、香港(2003年4月17日、朝日新聞)
香港・九竜湾の民間団地アモイガーデン(淘大花園)で発生した新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の集団感染で、香港政府は17日、SARSウイルスを含んだ水蒸気が排水管を通じて下水管から浴室に流れ込んだのが原因とみられる、と発表した。
 同衛生署によると、排水管にはU字に曲がった部分があり、水がたまって害虫や臭気を遮断する仕組みになっている。しかし、水がない状態で浴室を密閉し、換気扇を回すと、気圧の変化によって下水管内の空気が浴室に入ることを確認した。
 感染者の排泄(はいせつ)物にもウイルスが確認されていることから、下水管から水しぶきや水蒸気に混じって各戸の浴室にウイルスが拡散したらしい。
 これを防ぐには、あまり使わない排水口にも薄めた消毒液を流すなど、U字部分に水を切らさないことが重要という。
 発生源となったのは郊外の病院に通院していた深セン在住の男性とみられる。男性はアモイガーデンE棟の中層階に住む弟をしばしば訪れていた。同じ下水管を使っているE棟7、8号室に多くの感染者が出ている。
 香港政府は17日、新たな感染者が29人報告され、累積感染者数が1297人となったと発表した。4人が死亡し、死者は65人になった。

◎「SARSウイルス」と命名、WHOが新型肺炎で断定(2003年4月16日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は16日、東アジアを中心に多数の死者を出している新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)は、新型のコロナウイルスが原因と確認されたと発表。「SARSウイルス」と名付けた。日本を含む各国の専門家をジュネーブに招集し、オランダ・エラスムス大によるサルの感染実験などをもとに検討し、断定した。
 病原体が断定されたことで、流行地への旅行を避けたり患者を隔離したりといった「守りの対策」に加え、ワクチンの開発など「攻めの対策」が可能になる。WHOがSARSの警戒情報を出してから1ヶ月よ。未知の病原体がこれほど早く確認されたのは、感染症対策史上、初めてだ。
 SARSウイルスはすでにRNAの塩基配列も解読され、世界各国の研究機関が協力して対策確立を目指している。
 病原体の特定を受け、厚生労働省はSARSを「指定感染症」に指定する。強制入院などの措置をとる際、患者ごとに厚生労働相の指導を受ける手続きは不要で、機動的に対応できる。

◎「SARS、動物から人間に伝染」香港研究チーム発表(2003年4月16日、朝日新聞)
重症急性呼吸器症候群(SARS)による肺炎で、香港大学医学部の研究チームは16日、ウイルスは人間のものでなく、動物から人間に伝染したと考えられる、と発表した。
 同チームはコロナウイルスの遺伝子配列を解読した結果、人間のものではない、との結論が出たとしている。具体的な動物の種類はまだ特定できていないという。
 香港紙の報道では、中国広東省での初期の病例には野生動物の食肉を扱う業者や調理師が含まれており、動物から感染したとの見方は以前から強かった。
 香港政府は16日、前日からの感染者が新たに36人増え、1268人になったと発表した。死者は5人増え、計61人となった。

◎SARS発生備え疫学チーム編成へ、厚労相表明(2003年4月15日、朝日新聞)
坂口厚生労働相は15日の閣議後の記者会見で、新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)が国内で発生したときに備え、感染状況や感染経路などを調べる疫学の専門家チームを編成する意向を明らかにした。厚労省から発生地域に派遣して調査を実施し、感染の拡大防止などにあたる。坂口厚労相は、都道府県に対しても、地元の専門家から助言が得られるような体制をつくっておくよう要請する。

◎SARS患者3000人突破、WHO発表、死者144人(2003年4月15日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は14日、新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)の患者が3000人を突破し、23の国・地域で3169人に達したと発表した。死者は144人に上った。中国と香港で患者・死者の約8割を占めた。
 WHOによると、患者が最も多いのは広東省をはじめとする中国の1418人で、次いで香港の1190人。死者は中国が64人、香港が47人。
 感染の可能性例として、新たにインドネシア、フィリピン、スウェーデンでそれぞれ1人が報告された。日本はこれまで4人が集計に入っていたが、SARSではないとわかり、除外された。

◎SARS、香港で1日に7人死亡、抗ウイルス薬効かず(2003年4月14日、朝日新聞)
香港政府は14日、重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染者が前日から40人増え、1190人になったと発表した。1日あたりの数としては最多の7人が亡くなり、死者は47人となった。効果が高いとされる抗ウイルス薬リバビリンが効かないケースが多く、衛生当局は別の治療法の開発を急いでいるという。

◎SARS起こすコロナウイルスのDNA解読 米機関(2003年4月14日、朝日新聞)
米疾病対策センター(CDC)は13日、新型肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こす新種のコロナウイルスのゲノム(全遺伝情報)をほぼ解読したと発表した。
 カナダやオランダ、ドイツの研究施設と協力し、1万7500の塩基配列を解読した。通常は風邪しかおこさないコロナウイルスが凶暴化した理由については「今回の解読結果からは分からない」という。塩基配列とウイルスたんぱくの系統図は、CDCのホームページに掲載されている。

◎香港のSARS死者40人に(2003年4月14日、朝日新聞)
重症急性呼吸器症候群(SARS)による肺炎で、香港政府は12日、前日からの感染者が新たに42人増え、1150人になったと発表した。同日、1日としては最多の5人が亡くなった。3人は40歳代。死者は40人になった。

◎香港と広州の病原体は同じコロナウイルス(2003年4月12日、朝日新聞)
重症急性呼吸器症候群(SARS)による肺炎が流行している香港、中国・広東省の病原体が同じコロナウイルスと分かった。香港大学医学部と広州医学院の共同研究チームが12日、同省広州で発表した。
 香港公共ラジオによると、両研究チームが広州の患者19人の血清を分析したところ、香港の感染者から検出されたものと同じコロナウイルスの抗体を発見、同ウイルスへの感染が確認された。2人の感染者の鼻腔(びくう)の分泌物からも同ウイルスを検出したという。
 世界保健機関(WHO、本部ジュネーブ)や米国疾病対策センター(CDC)、香港大などは早くからコロナウイルス説を唱えてきたが、中国側はこれまで一貫して「病原体はクラミジア類」と主張していた。
 同日、香港政府は新しい感染者が前日午後から49人増え、1108人となったと発表。死者は3人増えて35人。退院した人は46人おり、計215人となった。

◎SARS、北京にも危険情報、外務省(2003年4月12日、朝日新聞)
外務省は12日、世界的に広がっている新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)について、新たに北京への渡航に関して「十分注意して下さい」との危険情報を出した。4段階の危険情報のうち最も低いレベル。WHOが同市をSARSの感染が連鎖的に伝播している域内感染地域に指定したことなどを踏まえた措置だ。

◎SARSの原因はコロナウイルス、オランダの大学が確認(2003年4月12日、朝日新聞)
東アジアで流行している重症急性呼吸器症候群(SARS)は新型のコロナウイルスが原因であることが、オランダのエラスムス大によるサルを使った動物実験で初めて確認された。世界保健機関(WHO)などは今後、診断法や治療法の開発を急ぐ方針だ。
 同大学では、患者から分離された新型のコロナウイルスを使い、サル2匹で実験。サルの血液から、感染したことを示す抗体が見つかった。解剖で肺炎を起こしていることも確かめられ、ウイルスも回収できた。
 同大学などと連携して原因の解明を進めている国立感染症研究所の田代真人・ウイルス第3部長は「ほかのウイルスと重複感染している可能性は残るが、これで新型のコロナウイルスがSARSの原因であることは、ほぼ間違いないことが分かった」と話している。

◎フィリピンで初のSARS感染確認(2003年4月11日、朝日新聞)
フィリピンのアロヨ大統領は11日、重症急性呼吸器症候群(SARS)に感染したとみられる外国籍の男性(64)が国内の病院に入院していると発表した。フィリピンで感染が確認されたのはこれが初めて。
 発表などによると、男性は香港とマニラを行き来しており、3月末に香港からマニラの国際空港に入った。その後、SARSとみられる症状が出たことから4月1日に入院、治療を受け、ほぼ全快しているという。医療関係者は香港で感染したとみている。

◎インドネシアで初のSARS感染疑われる患者(2003年4月11日、朝日新聞)
インドネシア保健省は11日、同国で初めて重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染が疑われる患者が発生したと発表した。この患者は中国系英国人男性(47)で、香港やシンガポールを旅行した後、インドネシアに入国した。9日からジャカルタの病院に隔離入院しており、症状は改善しているという。

◎香港SARS感染、1000人超える、死者は32人(2003年4月11日、朝日新聞)
香港政府は11日、重症急性呼吸器症候群(SARS)とみられる肺炎の感染者が前日から61人増え、1059人になったと発表した。流行開始から1ヶ月で1000人を超えた。2人が亡くなり、死者は32人となった。
 香港政府は同日、感染者と接触のあった人、38度以上の発熱がある人の出境を禁止すると発表した。
 一方、香港の民間グループは独自調査で感染者が出た集合住宅、学校や病院の一覧をインターネットで公表した。集合住宅は約90ヶ所。香港島の太古(タイクー)、香港仔(アバディーン)などの邦人が多数住むマンション群も含まれている。
 在香港日本総領事館によると、在留邦人の感染者や隔離対象者はいない模様という。

◎予防策奏功、香港の隣りのマカオ、SARS感染者ゼロ(2003年4月11日、朝日新聞)
重症急性呼吸器症候群(SARS)とみられる肺炎をめぐり、中国広東省と香港の間に位置する旧ポルトガル植民地のマカオ特別行政区が10日まで感染者ゼロを続けている。周辺の流行に政府がすばやく対応し、市民総動員態勢で予防に努めた成果という。
 マカオ政府が50万人の市民に警戒を促したのは2月10日。肺炎が流行していた広東省の政府発表より早い。手洗い、室内の通気、人ごみを避けるなどの予防法も教え、以後学校や老人ホーム、住民団体に呼びかけて、市民ぐるみの建物・街路消毒キャンペーンを続けた。
 マカオは2001年にデング熱が発生、観光に依存しているだけに、イメージ悪化を避けようと住民総動員の予防キャンペーンに取り組んだ。街の清潔さには定評がある。

◎フィリピンで初のSARS感染確認(2003年4月11日、朝日新聞)
世界保健機関(WHO)は11日、新型肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)の最新症例数をまとめ、公表した。日本が報告した「可能性例」4例を含んだもので、感染の可能性を報告したのは21ヶ国・地域で、症例数は2890例、死者は116人となった。

◎SARSを「新感染症」に認定、政府、検疫態勢も強化(2003年4月4日、朝日新聞)
新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)が世界的に広がっている問題で、日本政府は3日、患者の強制入院も可能となる「新感染症」として取り扱う一方、感染の中心地である香港と中国広東省への渡航延期を勧め、国内空港の検疫体制を強化するといった緊急対策を決めた。福田官房長官が同日午後の記者会見で発表した。政府が新感染症としたのはSARSが初めて。
 渡航延期の勧告を出したことについて、小泉首相は同日夜、「それだけ多くの方がこの病気にかかっているんですから、健康に気をつけて皆さんも注意していただきたい」と記者団に述べた。
 厚生労働省がSARSを「新感染症」として取り扱うことを決めたことで、患者を診断した医師は厚労省への届け出が義務づけられる。患者が診察や入院を拒んだ場合は、都道府県知事の権限で強制的な健康診断や入院などの措置もとることができる。
 厚労省はまた、香港と広州空港から日本に到着するすべての航空機の乗客に、発熱や激しいせきなどの症状の有無を記入する問診票や、帰国後10日以内に症状が出た場合、医療機関が受け入れ態勢をとれるように受診前に連絡することを求めるカードを配る。
 地方空港を含め、国際線の発着がある空港での検疫体制も強化する。
 一方、外務省は3月中旬から、渡航にあたって注意を呼びかける「スポット情報」を出していたが、今回初めて「危険情報」に切り替えた。危険情報は通常、治安情勢の悪化などが理由で出され、感染症だけで出すのは今回が初めて。
 同省は今回の危険情報について、中国の広東省と香港について「渡航の是非を検討し、不要不急の渡航は延期を勧める」と付け加えた。4段階のうち危険度は下から2番目だが、従来の第2段階より強めた表現だとしている。
 同省では2日、世界保健機関(WHO)が渡航延期を勧告したことを受け関係省庁と対応を協議したが、同日の段階ではWHOの渡航延期勧告を紹介するスポット情報にとどめていた。

◎SARS、原因は?感染防ぐには?(2003年4月3日、朝日新聞)
世界各地に広がる重症急性呼吸器症候群(SARS)の病原体や治療法は依然不明のままだ。どうすれば感染を防げるのか。かかったらどうすればいいのか。

【感染すると】
 3〜6日の潜伏期を経て急に38度以上の発熱。筋肉痛、悪寒、せき、息切れなどの症状が出る。インフルエンザやこれまでの肺炎に似ているので区別は難しい。世界保健機関(WHO)によると、約1週間で8割ほどは改善するが、重症化すると死亡することもある。
 ただ「感染に気づかずに快復したケースもあると考えられ、詳しい感染率、致死率は不明」(国立感染症研究所)だ。

【原因は?】
 WHOなどは「新型のコロナウイルスが主因」との見解を示す。
 白木公康・富山医科薬科大教授(ウイルス学)によると、コロナウイルスは風邪の原因になる一般的な病原体。風邪の5〜30%を占め、2〜3年ごとに流行するが、たいてい自然に快復する。なぜ、SARSでは重症化するのか。
 白木教授らは「一般論だが、複数のウイルスに重複感染すると相互作用して重症化することがある」という。

【感染は防げる?】
 当初、患者のせき、くしゃみを近くで浴びてうつる「飛沫(ひまつ)感染」が感染ルートと考えられた。だが、香港のマンションで上下階の住民らが集団感染。換気や上下水道など生活環境の中で広がっている可能性も出てきた。
 だが国内のウイルス研究者の一人は「空気感染するなら、航空機内や公共施設などでもっと多くの人に感染が広がるはず。感染力はそう強くないのではないか」と話す。
 米疾病対策センター(CDC)は航空関係者や乗客らに対し感染予防の具体策を指示する。大切なのは作業時に使い捨ての手袋をし、せっけんかアルコール系洗剤で頻繁に手を消毒することだ。
 客や患者、家族が症状を示した場合、マスクをさせて隔離する。つばや尿、便などに触れた恐れがあればすぐ消毒する。
 マスクで予防できるとは限らないが、国立感染症研究所感染症情報センターの岡部信彦センター長は「飛沫を防ぐ効果はあるので危険は減る」という。
 予防策として注目されるのは医療用マスクだ。市販され、インターネットで紹介されているものもある。インフルエンザウイルスなど0.1マイクロメートルの微粒子を95%以上カットできるものも。国内メーカーは「予防効果はわからないが、ふつうのマスクより効果は高いと思う」という。
 58人の患者が報告されているベトナム。患者がハノイの病院に入院し、その後半月間で病院職員を中心に感染が急速に広がった。しかし、感染症の専門病棟がある別の病院に患者を移した途端、感染が抑えられた。
 派遣され、帰国した国立国際医療センターの川名明彦医師は「ウイルスの感染を防ぐ医療用マスクの着用、手洗いの徹底など基本的な感染症対策がかなり効果があることがわかった」という。

【かかったら?】
 抗ウイルス薬などで一定の効果はあるようだが、根本的な治療法はまだない。CDCは香港などからの帰国者に、少なくとも帰国後10日間は健康に気を付けるよう呼びかけ、せきを伴う発熱などの症状があるときは受診を勧めている。

◎成田発サンノゼ行き旅客機の乗客らにSARSの疑い(2003年4月2日、朝日新聞)
 米国時間1日午前(日本時間2日未明)、成田発米国サンノゼ行きのアメリカン航空128便で、搭乗客ら数人が中国や香港などで流行している重症急性呼吸器症候群(SARS)に似た症状を訴えたため、機長が隔離と医療関係者の派遣を要請。サンノゼ国際空港に到着した同機はエプロンで約1時間半待機した後、正午過ぎに乗客全員を降ろした。
 現地の報道によると、香港から乗り継いだ乗客ら5人がSARSらしい症状を訴えた。検査の結果、70代の男女と50代の女性が地元の医療機関に運ばれて診察を受けているという。
 この路線はJALとの共同運航で成田とIT関係のハイテク企業などが多数立地するシリコンバレーの中心地サンノゼを1日1往復しており、日本人客の利用が多い。アメリカン航空によると同機には乗客125人と乗員14人が乗っていた。
 乗客の米サンタクララ市在住の新島敦彦さん(32)によると、同機は午前10時半ごろに着陸し、いったんシートベルト着用サインが消えたが、「流感らしい乗客がいたため調査している」として席に戻るようアナウンスがあった。日本人客は3〜4割ほどだったという。乗客には、最低10日間容態をみて、せきや呼吸困難などの症状が現れたら医療機関に連絡するよう求める文書が配られた。

◎成田発サンノゼ行き旅客機でSARS騒ぎ、感染なし(2003年4月2日、朝日新聞)
 1日午前、米サンノゼ空港に到着した成田発の米アメリカン航空128便の乗客3人が、重症急性呼吸器症候群(SARS)に感染した疑いがもたれ、現場が騒然とした。3人は病院で検査の結果、感染していないことが分かった。
 サンノゼ空港の広報担当者などによると、着陸前に同機から「SARSの疑いがある乗客がいる」との連絡があったという。乗客は125人で、3人はファーストクラスに搭乗していた。
 ほかの122人の乗客も機内での検査などのため、正午ごろまで機内に閉じこめられた。米テレビはイラク戦争報道を中断して、空港内で「隔離」された状況の同機を生中継で映し出し、空港一帯には大勢の報道陣が詰めかけた。
 一時、SARSとみられた乗客が成田空港を通過したことについて、同空港の検疫担当者は戸惑いを見せている。乗り継ぎ客は通常、数時間、乗り継ぎ待機所で過ごした後に出発機に乗り込むが、入国しないため検疫の対象外となるからだ。
 同空港検疫所では3月17日から、患者が発生した香港やシンガポールなどから到着した旅行者を対象に、症状が出た場合などの対処法などを記したチラシを配っている。だが、これまでにSARSと疑われる申告は特にないという。

◎SARS肺炎拡大 情報非公開の中国に批判も(2003年3月31日、朝日新聞)
 「なぞの肺炎」と呼ばれる重症急性呼吸器症候群(SARS)が香港、台湾、シンガポール、カナダなど各国に拡散しつつある。世界保健機関(WHO)は世界中の医療機関や学者に協力を呼びかけ、阻止に懸命だ。一方でSARSの情報を公開せず、非協力的だとして中国当局への風当たりが強まっている。
 香港政府は31日、感染者が多発したマンションの住民を出入り禁止にする措置を決めた。九竜のマンション開発地区アモイガーデンでは、高層マンションの1棟を中心に241人の感染・疑感染者が見つかった。政府は住民264個に、4月9日まで無断外出と外来者訪問を禁じた。食料は政府が供給し、この間に住民全員の診断をする。
 同政府はこれまでに感染者と接触した人の監視や学校閉鎖など、前例のない厳しい措置を次々に打ち出している。3月29日から9日間、小中学校は休校、大学も自主休講に。香港政府は香港での31日までの感染者は610人、死者は15人となったと発表した。
 批判の矛先は、流行の兆しが昨年から見えていた中国に向いている。香港紙明報は3月27日、社説でSARS問題の中国の対応を批判した。「広東省が数字をもっと早く出せば、香港は早く手を打てた」と。香港中文大学の呉国光助教授(中国政治)は「世論を刺激する問題を隠すのは中国の政治での常套手段」と指摘する。
 一方、香港を訪れた中国の竜永図・前対外貿易経済協力省次官は29日、記者団に「六百数十万人の香港で二百何人感染しても比率はわずかだ。メディアは騒ぎすぎ。香港経済に損害だ」と言った。
 広東省で「奪命肺炎」の情報が流れたのは2002年11月ごろ。年末には香港紙も「原因不明の肺炎の流行」を報じ始めた。せき、高熱など病状は当初からSARSと一致していた。
 2003年1月末から感染者は急増したが、省衛生当局は何の発表もしなかった。2月、「漢方薬の板藍根(パン・ランケン)がきく」「酢を熱して部屋を薫蒸すれば殺菌できる」といったうわさで広州(コワン・チョウ)、深セン(シェン・チェン)など各地で買い占めパニックが起き、2月11日、省当局はやっと感染状況を発表した。
 「感染者305人、死者5人。流行は峠を越した」。以後、省当局は6週間、新しい数字を出すことをしなかった。
 2月下旬以後、SARSは香港からハノイ、シンガポール、トロント、フランクフルトへと広がった。中国の張文康衛生相は3月22日、記者団の質問に中国でのSARSの存在を認めたものの、感染者数は「調査中」。広東省当局が新たな感染者数を発表したのはさらに4日後の26日だった。
 「2月末までの感染者792人、死者31人。感染者の75%は快復した」
 WHOは広東省の肺炎の原因を中国側の依頼で分析し、26日、「香港と同種のウイルスの可能性が高く、SARSとみられる」と発表した。
 広東省は外資の投資で毎年10%を超す経済成長を達成、省都広州には大空港も建設、香港の地位を脅かす勢いだ。その一方、今回は体制の動揺や投資の減少をおそれ、「不祥事隠し」に走ったと言える。
 呉助教授は「不特定多数の市民を犠牲にしたことに、中国は重大な責任がある」と怒る。香港とは対照的に、人民日報など中国メディアはSARSに対し、黙殺を続けている。

◎SARS、香港のマンションで拡大、空気感染のおそれも(2003年3月30日、朝日新聞)
 重症急性呼吸器症候群(SARS)による肺炎が流行している香港で、九竜(カウルン)のマンションで30日までに121人の感染が確認された。米疾病対策センター(CDC)のガーバーディング所長は29日の記者会見でこのケースを取り上げ、「唾液など分泌物による飛沫感染だけではなく、空気感染の可能性も示している」と警告した。また、新たに中国南方航空とドラゴン(港龍)航空に感染者が搭乗していたことが分かった。30日付の香港紙明報はSARSのウイルスが、野生動物から人間に感染した可能性がある、と報じた。
 世界保健機関(WHO、本部ジュネーブ)は29日、ハノイでSARS治療に従事していた同機関のイタリア人専門家、カルロ・ウルバニ医師(46)がSARSにかかり、タイの病院で死亡したと発表した。SARSでWHOの専門家が犠牲になったのは初めて。

◎SARS肺炎、コロナウイルスが原因、香港大チーム(2003年3月27日、朝日新聞)
 香港などで多発している重症急性呼吸器症候群(SARS)について香港大学医学部の研究チームは27日、風邪をおこすコロナウイルスの新種が原因、と発表した。これにより感染や病状の診断が容易になるという。鼻、口、目に触れた手から伝染するケースが多く、手洗いが予防に有効とされる。同チームは先週ウイルスの分離に成功し、分析を進めていた。
 また世界保健機関(WHO、本部ジュネーブ)は26日、中国広東省で流行している肺炎について「香港などで流行しているものと同種とみられる」と結論づけた。中国当局は2月、「原因はクラミジア菌」と発表したが、WHOに再調査を要請していた。
 WHOによると、同日までの感染者(死者含む)は世界で1323人(うち死亡49人)。地域別では中国広東省792(同31)、香港316(同10)、シンガポール74(同1)、ベトナム58(同4)、カナダ19(同3)、米国40(同0)など。
 27日付の台湾紙中国時報は、北京へ出張、台北へ帰った建設会社員6人がSARSに感染したと報じた。香港で感染した北京の男性が乗った15日の香港発北京行き中国国際航空機に乗り合わせていた。
 香港で公演予定だったローリング・ストーンズは28、29日のコンサートの中止を発表。4月12日に予定していたアンディ・ウィリアムスも6月6日に延期した。

◎原因不明肺炎、日本の「疑い」報告8人、すべて「シロ」(2003年3月27日、朝日新聞)
 香港やベトナムなどで患者が増えている原因不明の重い肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)の問題で、厚生労働省は26日、専門家による対策専門委員会を開いた。国内の医療機関から「感染の疑いがある」などと厚労省に報告された8人について、抗生物質で症状が改善されたことなどから「SARSではない」と結論づけた。また、現時点では感染地域への渡航制限を勧告する必要性はない、とした。

◎香港の肺炎感染源ほぼ特定 感染者197人、死者6人に(2003年3月21日、朝日新聞)
 香港政府は21日、香港で流行中のパラミクソウイルスが原因とみられる肺炎の感染者が197人に増加したと発表した。38人は重症。死者は6人。
 同政府は重要な感染源の一人を2月中旬に香港に入った中国・広州の男性医師(64歳=病死)と特定。医師は発病状態で九竜地区のメトロポールホテルに宿泊。同じ9階に泊まった7人が感染、うちカナダ人女性1人が死亡、ベトナム・ハノイで入院した米国籍の華人も滞在していた。香港北郊の病院に入院、当初発生源と疑われた香港男性(26歳=快復)も9階に宿泊した知人を訪ねていた。医師は病院では肺炎患者担当だったという。
 21日、児童・生徒の感染者がいた幼稚園、小中学校3ヶ所が休校、中学校1校も感染者の出た教室の使用を見合わせた。

◎香港の肺炎、感染者145人に、死者5人(2003年3月19日、朝日新聞)
 原因不明の肺炎について、香港政府は19日夜、九竜地区のホテルの同じ階の宿泊客7人が感染、2人が死亡していたことを明らかにした。ホテルでの感染が確認されたのは初めて。香港の基幹産業の一つである観光業にとって打撃となりそうだ。同日までに確認された感染者は145人で、死者は5人という。
 同政府によると、ホテルの感染者はカナダ人2人、シンガポール人3人、中国・広州から香港入りした人と地元香港の人。カナダ人1人と広州の中国人1人が死亡。この中国人は元から感染していたとみられる。香港北郊の病院に入院、最初に感染したとみられる26歳の男性も宿泊者を訪問していた。

◎原因不明の肺炎患者87人に、香港(2003年3月18日、朝日新聞)
 香港政府は18日、原因不明の急性肺炎の疑いで入院している患者が87人に達したと発表した。病原菌はまだ特定されていない。
 病院管理局によると、患者の内訳は発生源とみられている北郊の病院など3箇所の医療施設の医師や看護婦67人、医学実習生17人、病院関係者と接触のあった家族や知人が3人。楊永強・衛生福利食物局長は「高熱で北郊の病院に入院した26歳の男性が発生源の疑いがある」と報告した。
 同政府は公共交通機関や飲食店に予防策の徹底を要請。市民には手洗いやうがいの励行、人込みを避けることなどを呼びかけている。キャセイ航空は疑わしい症状の旅客の搭乗を断っている、という。

◎原因不明の肺炎、香港では83人が感染(2003年3月17日、朝日新聞)
 香港政府は17日、東南アジア一帯で広がっている流行性の肺炎について同日までに香港でも北郊の病院を中心に、83人の感染者が確認されたと発表。公共交通機関や飲食店などに予防策の徹底を呼びかけている。
 香港北郊の病院で10日ごろから医師、看護師の間で発熱やせきなどインフルエンザと似た症状による欠勤が出始めた。院内で広がった模様で、確認されている感染者はこの病院の職員と実習医学生、家族、友人が大半。
 楊永強・衛生福利食物局長は「この病院の入院者の一人が今回の発生源の可能性がある」と報告した。香港では97年にトリインフルエンザが大流行したが、楊局長は「関連はない」と否定した。
 香港に隣接する中国広東省でも昨年末から似た症状の肺炎が流行、300人以上が感染、5人が死亡した。その後、原因はクラミジア菌と断定、収束したが、香港ではウイルスや菌体がまだ特定されておらず、関連は不明だ。

◎原因不明の急性肺炎世界に広がる、9人死亡、WHO警告(2003年3月17日、朝日新聞)
 世界保健機関(WHO)は15日、アジアから世界に拡散し、死亡者が出ている原因不明の急性肺炎について、今後も、旅行者を通じて感染がさらに広がる恐れがあるとし、異例の「警報」を出した。通常の薬では治療できず、原因も特定できていないという。
 WHOによると、これまでに発症が報告されたのは、中国、香港、フィリピン、シンガポール、ベトナムなどアジア諸国が中心。先週だけで、150人の新たな発症の報告があったという。これまでの発症者は500人を超えるとみられる。高熱やせき、呼吸困難などの症状が伴い、重い肺炎に進むという。
 死亡者はこれまでに9人。うち2人は香港旅行から帰った親子で、カナダで死亡した。ニューヨークからシンガポールに向かう途中、肺炎の症状が出たためドイツで隔離された乗客もいる。
 WHOは「健康への世界的な脅威」として、旅行者への注意喚起と各国の公衆衛生当局に、警戒と発症の通報を呼びかけている。
 日本の厚生労働省は17日までに、感染者が報告された地域から帰国した人で、原因不明の重い肺炎患者が出た場合には国に報告するよう都道府県に通知した。また、空港などで旅行者に情報提供し、帰国後に高熱や息切れなどの症状が出たら、すぐ医療機関で受診するよう呼びかけている。
 同省によると、日本では原因不明の重い肺炎とみられる患者は今のところ確認されていない。

◎アジアに広がる原因不明の肺炎、日本でも3人感染の疑い(2003年3月19日、朝日新聞)
 原因不明の重い急性肺炎がアジアを中心に広がっている問題で、厚生労働省は19日、国内の医療機関から「感染の疑いがある」として患者3人が報告されたと発表した。3人はいずれも快復、快方に向かっている。厚労省は、症状などから、この肺炎の可能性は「極めて低い」とみており、世界保健機関(WHO)には報告しないという。日本で感染の疑いが報告されたのは初めて。
 3人は2月以降、感染が報告されている地域から帰国し、発熱やせきなどの症状が出た。3人のうち2人が肺炎と確認されて入院した。この2人について18日に報告され、この時点では2人とも肺炎は治っていた。もう1人は19日に報告され、肺炎は確認されていない。3人は行動をともにしておらず、いずれの家族などでも同じような症状が出た人はいないという。
 WHOは、問題の症状を重症急性呼吸器症候群(SARS)とし、「疑い例」として、2月1日以降に38度以上の急な発熱、せきや息切れなどの呼吸器症状があり、発症前の10日以内に、ベトナムや香港などSARSの発生が報告されている地域へ旅行するか、SARS患者と接触した場合、と定義している。厚労省は、疑われる患者が受診したら厚労省へ報告するよう、都道府県を通じて医療機関に求めている。

◎“謎”の急性肺炎 独と香港の患者からウイルス発見(2003年3月19日、朝日新聞)
 アジアを中心に患者が出ている原因不明の急性肺炎について、ドイツの患者から、はしかの仲間のパラミクソウイルスが見つかったことが19日、分かった。香港でも、複数の患者からよく似たウイルスを見つけたとの報道があった。これが原因かどうか詳しい検査を進めている。
 ドイツのフランクフルト大の報告によると、同国の空港で発病が分かった内科医のたんなどを電子顕微鏡で調べ、ウイルスを見つけた。国際感染症学会に速報した。原因のウイルスが確定すればワクチンづくりなどにつながる。
 国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は「このウイルスが原因と決まったわけではないが、原因を追究する上で、注目すべき情報だ」と話している。




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