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更新日:
 2008年7月22日






◎ギリシャで西ナイル熱流行、蚊で感染、注意呼びかけ(2010年8月31日、朝日新聞)
 重症になると重い頭痛、意識障害を起こす西ナイル熱が今夏、ギリシャで流行し、死者も相次いでいる。蚊で広がるため、国立感染症研究所(東京)は同国への旅行者に蚊に刺されないよう注意を呼びかけている。米国でも今年に入り、140人以上が発症、3人が死亡しており、厚生労働省は日本への上陸を警戒し、飛行機内で蚊を採取して検査するなど監視を続けている。
 同研究所によると、同熱の原因となるウエストナイルウイルスは鳥の体内で増殖。その血を吸った蚊に刺されると、人やウマ、イヌなどが感染する。人の場合、大半は無症状だが、50代以降は重症化する割合が高いという。
 ギリシャでは8月6日に、同国北部の中央マケドニア地方で2人の死亡が報告され、同30日までに発症が134例、死亡が9例出ているという。昨年まで発生は報告されていなかった。
 日本国内での感染例はないが、2005年に、米国から帰国した男性が発症した。
 同研究所の関谷紀貴医師は「秋でも蚊は活動するので、旅行する人は長袖の服や虫よけなどで、蚊に刺されないようにして欲しい」と呼びかけている。(小坪遊)

◎西ナイル熱、鳥にも猛威、全米各地で野鳥が激減(2007年5月30日、朝日新聞)
 鳥から蚊が媒介して人にうつる感染症、西ナイル熱が猛威を振るう米国で、このウイルスが原因とみられる野鳥の減少が広がっている。米国立動物公園スミソニアン渡り鳥センターなどの調査によると、ウイルスが米国に上陸した99年以降、アメリカガラスが地域によってほぼ半減するなど、身近な野鳥7種で大幅に減少が確認された。
 調査チームのリーダーで、同センターのペーター・マラ研究員は「特定の野鳥の減少は、周辺の自然環境を変質させるばかりか、気候や、感染症のはやり方などにも影響を及ぼす可能性がある」と警告している。
 アフリカ発祥の西ナイル熱ウイルスの上陸が99年に確認された米国では、昨年末までに、人では約2万4000人の患者が報告され、962人が死亡している。
 ウイルスは鳥の体内で増殖する。調査チームによると、鳥の死もこれまでに数万件が報告されているが、野鳥の個体数への影響は詳しく調べられていなかった。英科学誌ネイチャー電子版に報告が載った。
 調査チームは、従来の研究で西ナイル熱の被害の危険が「高い」「ふつう」「低い」「わからない」とされた野鳥から各4〜6種、計20種を選定。全米で続けられている野鳥の繁殖状況調査で、80〜05年に得られた26年分の個体数のデータをもとに、ウイルス上陸と個体数の変化の関係を分析した。
 その結果、被害の危険が「高い」とされていたアメリカガラス、エボシガラ、アオカケス、「ふつう」のコマツグミ、イエミソサザイ、アメリカコガラ類、「わからない」のルリツグミの計7種で、個体数の大幅な減少が確認された。
 いずれも98年以前の個体数の推移や、その後の気候条件などからみた予測個体数と比べ、99年を境に激減。西ナイル熱の影響と結論づけた。
 減少が著しかったのはアメリカガラス。05年までに、98年に比べて45%も減った。
 イエミソサザイとルリツグミは、東部バージニア州では減っていないが、他の州では最大25%前後も減るなど地域差があった。この2種の減少地域は、人への感染が著しい地域と重なった。
 また、この2種だけは、03〜04年を境に個体数に回復傾向がみられるが、他の5種は調査最終年の05年まで減少傾向が続いていたという。
 調査チームは「これは控えめな見積もり。北米全体で野鳥の生態系が著しく変わりつつある」と、実態がより深刻である可能性を指摘した。

◎西ナイル熱:国内で初の患者、米国から帰国の30代男性(2005年10月3日、毎日新聞)
 厚生労働省は3日、米国から帰国した川崎市の30代の男性が西ナイルウイルスに感染したと発表した。国内で西ナイル熱の患者が確認されたのは初めて。
 男性は8月28日から9月4日まで米国に滞在し、蚊に何度か刺されたという。同月5日の帰国時、発熱や頭痛、発疹を訴えていた。既に症状は回復している。
 厚労省は、西ナイルウイルスは人から人に直接感染する可能性はなく、2次感染の心配はないと説明している。

◎米滞在の男性が西ナイル熱、国内初確認、現地で感染か(2005年10月3日、産経新聞)
 ことし8月下旬から9月上旬に米国に滞在し、帰国した川崎市の30代男性が西ナイル熱に感染していたことが3日分かった。国内での患者の確認は初めてで、米国で感染した可能性が高いという。
 国内の医療関係者によると、男性は帰国時に発熱などがあり、同市内の医療機関で受診。西ナイル熱の疑いがあったため、国立感染症研究所などが調べていた。
 西ナイル熱は、蚊が媒介するウイルス感染症で、蚊から人へも感染する。蚊を介して感染し、人から人へは感染しないという。
 感染者の約80%は無症状で重症化するのは1%以下とされるが、重症になると高熱や脳炎を起こし、死ぬこともある。
 主にアフリカや中東の風土病と考えられてきたが、1990年代後半に欧州やロシアで流行。99年には米国で初めて患者が発生し、3年ほどでほぼ全土に拡大した。(共同)

◎西ナイル熱、シベリア西部で患者確認(2005年3月5日、日本経済新聞)
 【ワシントン4日共同】鳥から蚊、人間へと感染する西ナイル熱の患者が昨年、シベリア西部のノボシビルスクや周辺で初めて3人確認されたことが3日分かった。西ナイル熱は日本にはまだ侵入していないとみられるが、シベリアからは長距離の感染拡大に重要な役割を果たすとされる渡り鳥が、日本全国に多数飛来している。
 このため国立感染症研究所(東京)は事態を重視。国内の大規模な飛来地を中心に、渡り鳥の感染状況の調査に乗り出すことを決めた。
 患者の検査結果をまとめたロシア・ウイルス生物工学研究所のワレリー・ロクチェフ博士によると、3人は昨年5〜8月にかけ高熱や脳炎を発症。血液などから、原因となる西ナイルウイルスや抗体が確認された。
 シベリア西部は冬季は氷点下約50度にまで冷え込むが、夏季は気温が約40度に上がり、ウイルスを媒介する蚊の活動も活発。ノボシビルスクでは2002年夏に、カラスやマガモからウイルスが検出されていた。シベリアには渡り鳥がウイルスを持ち込んだとみられるという。

◎西ナイル熱、日本接近も、シベリア西部で患者確認 (2005年3月5日、産経新聞)
 鳥から蚊、人間へと感染する西ナイル熱の患者が昨年、シベリア西部のノボシビルスクや周辺で初めて3人確認されたことが3日分かった。西ナイル熱は日本にはまだ侵入していないとみられるが、シベリアからは長距離の感染拡大に重要な役割を果たすとされる渡り鳥が、日本全国に多数飛来している。
 このため国立感染症研究所(東京)は事態を重視。国内の大規模な飛来地を中心に、渡り鳥の感染状況の調査に乗り出すことを決めた。
 患者の検査結果をまとめたロシア・ウイルス生物工学研究所のワレリー・ロクチェフ博士によると、3人は昨年5〜8月にかけ高熱や脳炎を発症。血液などから、原因となる西ナイルウイルスや抗体が確認された。
 シベリア西部は冬季は氷点下約50度にまで冷え込むが、夏季は気温が約40度に上がり、ウイルスを媒介する蚊の活動も活発。ノボシビルスクでは2002年夏に、カラスやマガモからウイルスが検出されていた。シベリアには渡り鳥がウイルスを持ち込んだとみられるという。
 専門家の話では、人口密度が低いシベリアでの患者発生は、ウイルスが既にかなり拡大している可能性を示しており、早急な監視強化が必要。感染研は渡り鳥の採血調査や、鳥に寄生していたダニ、周辺の蚊などの調査を検討している。
 日本にはシベリアで営巣するツルやカモ、シギ・チドリ類など多くの種類の渡り鳥が飛来。シベリア東部からの鳥が多いが、一部のカモなどは西部からも飛来している。

・西ナイル熱
 感染は鳥と蚊の間で広がり、原因ウイルスを持った蚊に刺されると人も感染する。感染者の約80%は無症状で重症化するのは1%以下とされるが、重症になると高熱や脳炎を起こし、死亡することもある。主にアフリカや中東の風土病と考えられてきたが、1990年代後半に欧州やロシアで流行。99年には米国で初めて患者が発生し3年ほどで全土に拡大、2003年には1万人近くが発病し、うち264人が死亡した。(共同)

◎西ナイル熱:長崎大などがワクチン開発、今秋にも臨床試験(2004年8月27日、毎日新聞)
 米国で流行し、日本への侵入が警戒される西ナイル熱について、長崎大熱帯医学研究所の森田公一教授(ウイルス学)らの研究グループが予防ワクチンの開発に成功し、今秋にも臨床試験を開始する。病原体がよく似ていて、日本が実績を持つ日本脳炎のワクチン製造法を応用した。早ければ2、3年後の実用化を目指す方針だ。
 西ナイル熱の病原体の西ナイルウイルスは、日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス属に分類され、両者は遺伝子をもとに作られるアミノ酸の配列の約8割が同一で、よく似ている。
 日本脳炎ワクチンは1954年に日本で開発された。現在は、生きたマウスの脳でウイルスを増殖し、精製する方法で製造しているが、より安全なワクチンにするため、マウスではなく培養用の細胞を用いてウイルスを増やす方法が開発され、近く切り替わる。
 森田教授は日本脳炎ウイルスの製造法を西ナイル熱ワクチンの開発に応用できないかと考え、02年から研究に取り組み始めた。米ニューヨーク市で99年に分離された西ナイルウイルスを培養用の細胞で増やし、精製してワクチンを製造した。動物実験で安全性や有効性を確認した。「技術的には人で試験する段階に達した」として、準備が整い次第、今秋以降に国内で臨床試験を開始する。
 米でもワクチン開発は進んでいるが、有力とされる方法がワクチン用に毒性を弱めた黄熱ウイルスに西ナイルウイルスの遺伝子を組み込んだ「遺伝子組み換え生ワクチン」であるため、安全性確認に時間がかかる見通しだという。
 森田教授は「米国の状況から判断すると、西ナイルウイルスがいつ日本に侵入してもおかしくない。ウイルスを媒介できる蚊はアジア全域に生息しており、準備を急ぎたい」と話している。【江口一】

【西ナイル熱】
 日本脳炎と同様に、蚊が媒介して感染する。感染者の約8割は無症状だが、3〜15日の潜伏期間を経て急激な発熱、頭痛、めまいなどインフルエンザに似た症状が出る場合がある。ほとんどは1週間程度で回復するが、感染者の約1%は重症化して意識障害などを起こす。致死率は高齢者を中心に重症患者の3〜15%とされる。

◎西ナイル熱、感染を確認できず、血液再採取の協力要請(2004年8月9日、朝日新聞)
 米国から帰国した沖縄県の女性(42)が西ナイル熱に感染した疑いがある問題で、厚生労働省は9日、2次検査の結果、感染は確認できなかったと発表した。女性の協力が得られれば、血液を再び採取して調べる方針。
 2次検査は国立感染症研究所(東京都)で6日から、ウイルスの遺伝子や、感染すると血液中に増える抗体の有無など計4種類を実施した。その結果、ウイルスの遺伝子は検出されず、また抗体反応でも感染は確認できなかった。日本脳炎の検査は陰性だった。
 ただし、抗体が増えるには時間がかかるため、確定には血液を再採取して比べる必要があり、同省は沖縄県を通じて女性に協力を求めた。血液を得られた場合、結果が出るまでに1週間程度かかるという。
 女性は7月31日から発熱などの症状が出て、一時入院したが、回復して5日に退院している。
 また、厚労、外務、農水、国土交通、環境の各省と警察庁の6省庁は9日、西ナイル熱対策の連絡会議を開いた。厚労省は飛行機内の蚊の駆除徹底やカラスの異常死の報告などを改めて求めた。

◎西ナイル熱:米国から帰国の沖縄県女性に疑い、既に退院(2004年8月6日、毎日新聞)
 厚生労働省は6日、米国から帰国した沖縄県の女性(42)から西ナイル熱が疑われる遺伝子を検出したと発表した。西ナイル熱の感染が確認されれば、国内では初。女性は既に症状が緩和し、5日に退院した。厚労省によると、西ナイル熱は人から人に直接感染する可能性がなく、仮に女性が感染していたとしても、2次感染の心配はないという。
 女性は6月17日〜7月31日、米カリフォルニア州やニューヨークなどを家族で旅行した。帰国時の飛行機内で頭痛や発熱、おう吐などの症状を訴え、入院した。家族には症状はなかった。
 今月3日に血液などの検体を採取し、沖縄県の検査機関で5日、西ナイル熱か日本脳炎が疑われる遺伝子が検出された。厚労省によると今後、さらに国立感染症研究所などで確認検査を行い、西ナイル熱かどうかは9日以降に判明するという。【玉木達也】

<西ナイル熱>
 日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス属に分類される西ナイルウイルスによって引き起こされる。蚊を媒介して感染する。感染者の約8割は無症状だが、3〜15日の潜伏期間を経て急激な発熱、頭痛、めまいなどインフルエンザに似た症状が出る場合がある。ほとんどは1週間程度で回復するが、感染者の約1%は重症化して意識障害などを起こし、致死率は高齢者を中心に重症患者の3〜15%とされる。米国では昨年だけで262人が死亡している。

◎沖縄で西ナイル熱感染の疑い例、米から帰国の女性(2004年8月6日、産経新聞)
 米国旅行から帰国した沖縄県の女性(42)が発熱や頭痛などの症状を訴えて帰国直後に入院し、検査の結果、米国やカナダで流行している西ナイルウイルスか、日本脳炎に感染している疑いのあることが6日、分かった。
 西ナイル熱の日本上陸が確認されれば初めて。女性の検体は国立感染症研究所(東京)に送られ、6日から詳しい検査が行われる。結果判明は9日以降になる見通し。
 女性は既に退院し、症状は軽くなっている。同行した夫や息子は症状は出ていない。西ナイル熱は感染した鳥の血を吸った蚊などがウイルスを媒介するとされ、人から人へは感染しない。
 厚労省結核感染症課によると、女性は夫や息子と一緒に6月17日からカリフォルニア、アリゾナ、ワシントンDC、ニューヨーク、ボストン、ペンシルベニアを旅行し、7月31日に帰国。
 帰りの飛行機内で発熱、頭痛、嘔吐(おうと)、眠気の症状を訴え、帰国直後に沖縄県内の病院に入院した。
 県が3日に血液や脳脊髄(せきずい)液から検体を採取、5日にウイルス遺伝子検査法(PCR法)で調べた結果、西ナイル熱か日本脳炎が疑われる遺伝子を検出した。
 西ナイル熱は1999年に米国ニューヨーク周辺で感染が報告され、西海岸に感染が広がり、日本上陸が懸念されている。通常は1週間以内で回復するが、抵抗力が弱いお年寄りなどは死亡することもある。

◎西ナイル熱感染の疑いの女性を検査、検疫所で注意喚起へ(2004年8月6日、朝日新聞)
 米国から帰国した沖縄県の女性(42)が西ナイル熱に感染した疑いがある問題で、厚生労働省は6日、成田空港や関西空港などの検疫所で、流行地への渡航者に対して蚊に刺されないよう改めて注意喚起する方針を決めた。また、女性の血液を国立感染症研究所(東京都)に送り、同日午後から確認検査を始める。
 西ナイル熱のウイルス遺伝子は日本脳炎と似ていて、区別が難しく、沖縄県内での1次検査とは別の方法で最終的な確認をする。9日ごろに結果が出る見通しだ。
 しかし、西ナイル熱は人から人へは感染しないため、女性の感染が確認されても女性から感染が拡大する可能性は考えなくていい。新型肺炎SARSのように、患者を隔離する必要もなく、女性はすでに退院している。
 西ナイル熱のウイルスはカラスなどの野鳥と蚊の間を行き来しており、人はウイルスを持った蚊に刺されると感染する。
 米国では99年にニューヨークで患者が確認されて以来、西に向かって感染拡大が続いている。
 米疾病対策センター(CDC)によると、米国ではこの夏、アリゾナ州やカリフォルニア州などの西海岸で西ナイル熱が初めて流行、3日までに406人の患者が確認され、7人が死亡した。現在も、ロサンゼルス近郊やアリゾナ州フェニックスなどで患者が急増しているという。
 米西海岸は日本との直行便も多く、成田空港などの検疫所では、米国やカナダへの渡航者に対して、▽蚊が活動する夕方から夜明けの外出をなるべく避ける▽虫よけ剤を使う▽長袖、長ズボンを着用する、などの予防対策を改めて呼びかける方針だ。
 国内での感染拡大の観点から警戒されるのは(1)ウイルスを持った蚊が航空機や船で運ばれる(2)ウイルスを持った鳥が輸入されたり、野鳥が飛来したりして持ち込む、といったケースだ。国立感染症研究所ウイルス1部の高崎智彦室長は「鳥や蚊を通してウイルスが国内に侵入すれば封じ込めは難しい。そうなると蚊を減らし、蚊に刺されないようにして感染者を減らすしかない」という。

◎西ナイル熱、次は日本?往来多い米西海岸で流行の兆し(2004年7月25日、朝日新聞)
 米国で02、03年と続けて200人以上の死者を出した西ナイル熱が、この夏は米西海岸で大流行の兆しを見せている。日本との直行便も多く、厚生労働省などでは警戒を強めている。「ウイルスが侵入してくれば封じ込めは難しい」と専門家が語る一方、流行予防策の柱となる蚊やボウフラの駆除については、ほとんどの自治体で準備ができていない状態だ。
 この4月、鳥取県のある病院に脳炎患者が入院した。西ナイル熱の流行地域近くからの留学生。病院側は西ナイル熱を疑い、保健所に届け出た。保健所は万が一に備え、病院周辺の蚊を駆除する準備を始めた。国立感染症研究所で陰性の検査結果が出るまで、関係者は緊張に包まれた――。
 西ナイル熱は、いつ日本に上陸してきてもおかしくない。
 もともとアフリカや中東の風土病だが、99年、米ニューヨークに患者が突如発生。62人の患者が確認され、7人が死亡。
 ニューヨーク市を中心にした大規模な蚊の駆除で00年の患者は21人に減り、封じ込めたかに見えた。だが、02年以降、西に向かって感染拡大を続けている。
 今年はカリフォルニア州とアリゾナ州でこの1カ月に約150人の患者が出て、少なくとも3人が死亡するなど、ついに西海岸で患者が多発。さらに増える見通しだ。
 日本への侵入経路としては(1)ウイルスを持った蚊が航空機や船で運ばれる(2)ウイルスを持った鳥の輸入、飛来(3)現地で感染した人がウイルスを持ち込む、が考えられる。
 西ナイル熱は人から人には感染せず、(3)の場合にウイルスが広まる可能性は低い。新型肺炎SARSのように患者を隔離する必要も生じない。
 蚊や鳥が持ち込む(1)と(2)のケースは、厄介だ。感染研ウイルス1部の高崎智彦室長は「侵入後の封じ込めは難しい。ワクチンがない以上、蚊を減らしたり蚊に刺されない努力をしたりして感染者を減らす以外にない」と語る。
 厚労省は、成田や関西など19カ所の空港検疫所と、東京や福岡など40カ所の港湾検疫所で定期的に蚊を採取、ウイルスの有無を監視する。また都道府県と連携、全国110カ所の公園でカラスが異常な死に方をしていた場合には、死体を分析する態勢を取っている。

・蚊の駆除、進まない対策
 国内には、蚊が媒介する日本脳炎がある。現在でも年間10人程度の患者が出ている。しかし、感染研昆虫医科学部の小林睦生部長は「西ナイル熱とは大きな違いがある」と指摘する。
 日本脳炎ウイルスは豚と蚊の間を行き来する。豚は都会や住宅地にはおらず、主に水田で繁殖する一部の蚊しか媒介しないので、都市部での感染は少ない。しかも、小さいころに予防ワクチンを接種した人が多いので、かかりにくいという。
 「けれども、西ナイル熱は、都会や住宅地でも感染のサイクルが成立する」と小林さん。
 米国では感染予防のために、▽外出時には虫よけのスプレーをする▽バケツや空き缶、植木鉢などボウフラが育つ水たまりを周囲からなくす、などの自衛策を住民に周知する一方、行政が駆除に乗り出している。
 厚労省は昨年、西ナイル熱の予防で都道府県知事が認めたときは蚊を駆除できるように法律を改正した。小林さんは「蚊や死んだ鳥からウイルスが見つかれば、その時点でウイルスは広まっていると考えるべきだ。隣接都道府県も含め広く蚊やボウフラを駆除することが望ましい」という。
 厚労省は昨年、蚊の駆除方法を記したガイドラインを都道府県や政令指定都市に配布、蚊の生息場所を把握しておくよう求めた。だが、朝日新聞社が各自治体に問い合わせたところ、蚊の駆除を想定した準備を進めているのは横浜市や富山県などごく一部に限られた。
 横浜市は3月、独自の対応指針を作った。「国内でウイルスが見つかった場合」「市内でウイルスが発見された場合」など4段階に分け、市内でウイルスが見つかったときは周囲1〜2キロで、道路の側溝などボウフラが育つ所に薬剤を投入するなどとしている。
 富山県では、県衛生研究所が昨年から県内の保健所と連携し、十数カ所で蚊やボウフラの生態調査をしている。「蚊を有効に駆除するには、発生源やいつごろ多くなるのかを把握しておく必要がある」と担当者。
 だが、多くの自治体が「今のところ考えていない」などの答え。「薬剤使用に抵抗感のある住民もおり、駆除は難しい」と漏らす担当者もいた。
 厚労省結核感染症課は「意味のない場所で薬剤をまくなど過剰対応も考えられる。パニックが起きないよう準備を進めて欲しい」と話している。

・シベリアで野鳥感染か
 中東方面から米国経由の西回りでの感染拡大に警戒が高まる中、6月下旬、インターネットの感染症専門メーリングリストで流れた情報が注目されている。ロシアの研究機関がシベリア・ウラジオストク近郊で回収した野鳥の死体から、西ナイル熱のウイルスが見つかったというのだ。
 99〜03年に死んで凍っていたと見られる約220羽のハゲワシの死体の一つから、ウイルスの遺伝子が見つかった。遺伝子配列は、99年にロシア・カスピ海周辺で見つかったウイルスと似通っていたという。
 カスピ海周辺では同年に西ナイル熱が流行、480人が発症し、40人が死亡している。国内の研究者らは「情報が確かならシベリアからの渡り鳥でウイルスが日本に持ち込まれる可能性も否定できない」と話している。

〈西ナイル熱〉
 ウイルスを持った蚊に刺されて感染するが、8割の人は無症状で終わる。発症した場合、3〜15日の潜伏期間の後、発熱や頭痛、筋肉痛、吐き気などの症状が出る。ほとんどが自然に治るが、米疾病対策センター(CDC)によると、感染者150人に1人の割合で脳炎や髄膜炎を起こして重症化する。重症患者の死亡率は約10%。治療薬やワクチンはまだ実用化されていない。

◎西ナイル熱、米西部で流行・厚労省が注意呼び掛け(2004年7月6日、日本経済新聞)
 米国で患者が増え始めた西ナイル熱について、厚生労働省は6日までに、米西部が今夏、大流行の中心地になる恐れがあるとの見方を示した。「過剰に恐れる必要はないが、ウイルスを媒介する蚊に刺されない工夫を」と旅行者に注意を呼び掛けている。
 日本からの観光客が多いカリフォルニア州では既に、昨年を上回る10人の患者が報告され、隣接州でも増加中。同省は現地の領事館に患者への対応法などを通知した。
 西ナイル熱は、感染した鳥などの血を吸った蚊が媒介。夏―秋に発生し、発熱や頭痛、意識障害などが起き、死亡することもある。米大陸では1999年にニューヨークで初めて患者が出て以来、流行地域が西に広がっている。
 6月29日現在、患者はアリゾナ州で38人、カリフォルニア州10人、ニューメキシコ州3人、ワイオミング州1人と西部で52人。ほかに南部フロリダ州の2人など計5人がいるが西部で目立つ上、例年より気温が高く、発生が昨年より約1カ月早い。〔共同〕

◎西ナイル熱、獣医師の届け出義務化、人への感染予防狙い(2004年7月6日、朝日新聞)
 米国で流行が続く西ナイル熱対策として、厚生労働省は5日、獣医師が感染したと疑われるペットの鳥類などを見つけた場合、都道府県知事への届け出を義務づける方針を固めた。感染症法の施行令を改正し、10月から実施する。ウイルスを早期発見し、人への感染を未然に防ぐのが狙いだ。
 西ナイル熱の原因ウイルスは蚊を媒介にして人や鳥、動物に感染する。カラスなど大型の鳥類は特に感染しやすく、03年に240人が死亡した米国では、人が感染する数カ月前にカラスに流行している。今のところ、日本で感染の兆候は確認されていないが、厚労省はウイルスの上陸に備え、感染鳥類の届け出を政令で規定することにした。
 さらに、厚労省は、航空機の機内に紛れ込んだ蚊が媒介するケースもあるとみて、米国との発着便が多い成田空港周辺で野鳥の感染状況を調べるなど、警戒を強めている。
 また、西ナイル熱のほか、北海道以外でも確認されるようになったエキノコックス症の犬や、細菌性赤痢にかかったサルなどのペットについても、届け出を義務づけることにした。

◎「西ナイル熱」上陸に備えよ、厚労省が関係機関に指針(2004年6月10日、読売新聞)
 米国などで流行している治療法のない感染症「西ナイル熱」が日本に初上陸する可能性が高まったとして、厚生労働省は10日、国内で感染の疑いがある患者が出た場合の対応指針をまとめ、自治体や医師会などの関係機関に通知した。
 西ナイル熱は米国のほか、カナダやメキシコ、カリブ海地域、チュニジアやイスラエルでも発生。昨年は米国で9862人の感染者(うち死亡者264人)が出た。夏の観光シーズンを前に、訪日する外国人や帰国した旅行者が発症する懸念が高まっている。
 指針では、感染の疑いがある患者を「高熱や脳炎症状がある人で、発病の2週間以内に流行地域に滞在していた場合」と定義。〈1〉疑いがあるケースは保健所へ連絡し、病因を特定する〈2〉野鳥から蚊を介して人にうつる西ナイル熱は、人間同士の接触や蚊を媒介とした人から人への感染はないので、患者の隔離などの必要はない――と対応方法を列挙した。
 同時に、米疾病対策センター(CDC)が制作した説明書を翻訳してCD−ROMで配布。感染経路や症状などの説明に加え、流行地では蚊を避けるため長袖を着用するといった防御策を動画でまとめた。
 厚労省によると、感染経路や防疫法といった基本的知識が行政関係者の間でも行き渡っていないという。

◎西ナイル熱:大型連休前に空港などで情報提供始まる(2004年4月28日、毎日新聞)
 厚生労働省は28日、米国で猛威を振るう西ナイル熱の流行が早まる恐れがあるとして、大型連休を前に各空港などで旅行者に情報提供を始めた。米国では例年7月ごろに患者が増えるが、今年は暖冬で蚊の発生が早く、既に一部の州で患者が確認されている。
 西ナイル熱はウイルスで感染する。感染すると約2割の人が発症し、39度以上の発熱や頭痛、筋肉痛などの症状が出る。【江口一】

◎西ナイル熱媒介?の蚊、日本の宅地にも、全体の1割以上(2004年4月4日、朝日新聞)
 日本の住宅地にいるアカイエカの1割以上が人と鳥の両方を刺すタイプで、米国で流行している西ナイル熱を媒介する危険性が高いことが国立感染症研究所昆虫医科学部の小林睦生部長らの調査でわかった。5日から福井市で始まる日本衛生動物学会で発表する。
 アカイエカは、鳥を刺すタイプと人を刺すタイプがすみ分けをしていると考えられてきた。ところが、米国では交雑が進み、人と鳥の両方を刺すタイプが確認されるようになった。
 小林さんらは、東京や大阪などで捕集したアカイエカ69匹が、どんな血を吸っているかを分析した。鳥の血だけを吸っていた蚊が51匹、鳥と人の両方が10匹、人だけが8匹だった。鳥ではカモとスズメの血が大部分を占めていた。
 アカイエカは日本の住宅地でよくみられる蚊だが、米国のように、両タイプが交雑を起こしている可能性があるという。
 西ナイル熱のウイルスはふだん、鳥とそれを刺すアカイエカなど蚊の間を行き来している。人がウイルスを持った蚊に刺されると感染する。このため、人と鳥の両方を刺す蚊は西ナイル熱流行の原因と考えられ、小林さんは「日本にウイルスが入ってくれば米国のように流行する可能性がある」と話す。
 米国では過去2年、毎年200人以上が西ナイル熱で死亡しているが、いまのところ日本への上陸はない。

◎人も鳥も刺す蚊の発生が原因か、米で流行の西ナイル熱(2004年3月8日、朝日新聞)
 米国で西ナイル熱が大流行しているのは、アカイエカのうち人を刺すタイプと鳥を刺すタイプの交雑によって、両方を刺す系統が生まれ、その個体数が増えているためと考えられる、と米国立自然史博物館のチームが5日付の米科学誌サイエンスに発表した。西ナイル熱のウイルスは、普通は鳥とそれを刺すアカイエカの間を行き来している。
 アカイエカのうち、鳥を刺すタイプは主に地上で活動するのに対し、人を刺すタイプは主に下水道や地下鉄など地下に生息し、両者は遺伝子の型も違う。
 だが、米国ではここ2年、西ナイル熱で年間200人以上が死亡しており、鳥と人の両方を刺す蚊が増えているのではないか、と見られていた。
 研究チームが米、英、仏などで捕らえた約600匹のアカイエカの遺伝子を解析した結果、米の蚊の約半分では、両タイプの遺伝子が交じっており、交雑した系統であることが分かった。一方、欧州では交雑した系統の個体はほとんど見つからなかった。
 同チームは、こうした交雑系統の蚊が人と鳥の両方を刺すようになったと推測。欧州ではあまり広がらない西ナイル熱が、米国で大流行している理由だと考えている。
 〈国立感染症研究所昆虫医科学部の沢辺京子室長の話〉 日本でも、人と鳥の両方を刺すアカイエカの存在がすでに確認されており、状況は米国に近いだろう。西ナイル熱のウイルスが入ってきた場合、大きな流行を起こす可能性は否定できない。

◎鳥の死で西ナイル熱察知、厚労省など「先手」作戦(2003年9月29日、朝日新聞)
 米国で猛威をふるう西ナイル熱は、いつ日本へ上陸してもおかしくない。発見のカギは、人間への感染の前兆となる野鳥の感染。全国の公園でカラスなどの大量死を見張る「デッドバード・ネットワーク」が完成し、情報収集が始まった。新たな感染症に「先手」を打つ作戦だ。
 西ナイル熱の原因ウイルスは、蚊を介して人や動物に感染する。特にカラスやフラミンゴなど、大きな鳥が感染しやすい。米国では、人が感染する数カ月前に、カラスに流行し、数十羽単位の死が相次いだ。
 厚生労働省がこの現象に着目。人で流行する前に、ウイルスの日本上陸を見極めようと、都道府県と共同でカラスの大量死を調べることにした。
 代々木公園(東京都)や大阪城公園といった大きな公園や、成田空港周辺など、管理人が毎日巡回する120カ所を対象に、カラスの死体を見つけたら、厚労省へ報告してもらう。公園以外の場所でも、各地の交番を通じて連絡を受ける。
 不審な例があれば、国立感染症研究所が調査し、カラスのウイルス感染の有無を調べる。
 情報は、インターネットを通じて都道府県で共有する。ウイルスの上陸地域や感染の広がりなどを推測できれば、蚊の駆除などによって人への感染の可能性を減らすことができる。
 西ナイル熱は米国やカナダで流行している。感染しても発熱や頭痛の症状が出るのは約20%だが、ワクチンはない。米国で昨年、高齢者を中心に重症化した284人が死亡。今年も約5千人が発病している。
 これまでカラスの大量死の報告は、多い都道府県でも週5羽程度にとどまっている。厚労省の感染症情報管理室は「今のところ国内感染の兆候はないが、異変を見逃さないようにしたい」と話す。市民からの通報も今後、受け付ける方針だ。

◎米国の西ナイル熱患者数、最多の昨年を突破(2003年9月20日、朝日新聞)
 米疾病対策センター(CDC)は18日、西ナイル熱を発病した人が4325人に達したと発表した。1999年に米国で確認されて以来、最多だった昨年(4156人)を超えた。ガーバーディング所長は「感染検査の普及で人数が増えた面もあるが、脳炎は昨年より多い」と警告している。
 この1週間で約1200人も増えた。患者が出ているのは37州で、コロラド州1542人、サウスダコタ州675人、ネブラスカ州583人など、中西部で目立つ。
 今のところ死者は81人で、昨年(284人)より少ない。また、米食品医薬品局が7月から輸血用血液を検査しているため、輸血からの感染は2件で、昨年(23件)より減った。
 CDCは、軽い発熱だけですんだ人は10万人、未発症の感染者は50万人とも試算している。
 厚生労働省は、米国への旅行者向けに西ナイル熱の注意点などをまとめたチラシ2万5千枚を作り、近く空港などで配布する。症状や感染ルートの説明、関連情報のホームページを紹介している。

◎西ナイル熱のワクチン開発 米研究所が発表(2003年8月19日、産経新聞)
 米国立アレルギー感染症研究所は18日、北アフリカの風土病、西ナイル熱の治療に有望なワクチンを開発した、と発表した。動物実験で有効な成績を上げたとしている。
 ワクチンは、デング熱を起こすウイルスに西ナイル熱のウイルスの成分を掛け合わせて合成。12匹のサルを使った実験では、12匹とも抗体が体内にでき、西ナイル熱に感染しなかった。人に対する臨床実験は年内に開始する予定。

◎164人感染、4人死亡、米国の西ナイル熱が拡大(2003年8月9日、朝日新聞)
 米疾病対策センター(CDC)は7日、西ナイル熱を発病した人が16州で164人に上っていることを明らかにした。すでに4人が死亡したという。4000人が感染するという史上最悪の夏となった昨年を上回る勢いで広がっている。
 患者数はこの1週間で一挙に3倍になった。昨年は患者数ゼロだった中西部のコロラド州で特に目立っている。地元の衛生当局によると、患者111人(CDC集計では72人)、死者4人(同1人)。同州に集中している理由は不明だ。
 昨年同時期の患者数はわずか4州で112人、死者はまだ出ていなかった。今年は38州で西ナイルウイルスの存在が確認されており、今後、16州以外にも感染の広がる危険性が極めて強い。
 CDCのガーバーディング所長は「(8月に)昨年と同じペースで広がるとすれば、最終的な患者数は昨年を上回る恐れがある」と述べ、ウイルスを媒介する蚊を警戒するよう呼びかけた。
 米国内では、1999年に初めて西ナイル熱が確認された。昨年は最終的に40州の4156人が感染、284人が死亡した。

◎西ナイルウイルス、北米で今年の感染者第1号確認(2003年7月9日、読売新聞)
 【ワシントン=笹沢教一】米疾病対策センターは7日、西ナイルウイルスの今年の感染者第1号を確認したと発表した。患者はサウスカロライナ州の男性で、症状は軽いという。
 カナダ保健当局も8日、同国東部に住む60代の男性の感染を今年初めて確認したと発表した。
 蚊が媒介する同ウイルスは昨年、北米で大流行し、米国だけで4000人以上が感染、284人が死亡した。

◎西ナイル熱の日本上陸防止へペット鳥類の輸入検疫始まる(2003年4月21日、朝日新聞)
 2002年、米国で大流行した西ナイル熱の日本への上陸を防ぐため、厚生労働省は21日、ウイルスを持ち込む可能性のあるオウムやインコ、フクロウなどのペット用鳥類の輸入検疫を始めた。
 業者に対し、輸出前の2週間は蚊が侵入できない施設で飼育されたことを示す輸出国発行の証明書の提出を求める。証明書がない場合は、日本国内の指定施設で2週間、異状がないか観察してもらう。鳥がウイルスを保有する期間は最長2週間とされている。
 厚労省は、病原体を持ち込む危険のあるペット用の鳥類などについて、輸入規制できるよう来年度中の感染症法の改正を目指している。しかし、西ナイル熱が今夏にも上陸する可能性があるため、任意で業界に依頼し、業界側も同意している。




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