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更新日:
 2013年2月20日







◎振動で発電する新素材、弘前大グループが開発(2012年4月27日、読売新聞)
 弘前大大学院理工学研究科の古屋泰文教授(機械材料機能学)らの研究グループは24日、振動を電気に変える「振動発電」に適した素材開発に成功したと発表した。従来素材の2.5倍の出力があり、自然エネルギー分野にも応用が見込めるという。
 新素材は鉄とコバルトの合金で、たたいたり、ふるわせたりすると、素材内部の磁場が変化し、発電する。長さ20ミリ、厚さ1ミリ、幅2ミリの大きさだと0.1ミリ・ボルトの電圧が発生する。これまで使われていた鉄ガリウム合金に比べると、最大2.5倍の発電出力となる。
 研究グループによると、新素材を使用することで、スイッチを押す力で電気を起こす電池いらずのリモコンや、タイヤの振動でバッテリーを給電する自動車の開発に応用できるほか、波の満ち引きの力を使った波力発電などの自然エネルギー分野への展開が有望になる。特許出願中で、すでに国内の電子部品、自動車部品メーカーと実用化に向けた交渉が持ち上がっている。
 3年前から研究を始め、昨年12月に開発。25日に弘前市で開かれる国際シンポジウムで研究成果を発表する予定だ。古屋教授は「今後、特にエネルギー分野への応用に力を入れたい」と話している。

◎石油から「リレンザ」合成、安価な大量生産に道(2011年11月28日、読売新聞)
 石油を原料にして、インフルエンザ治療薬リレンザを化学合成することに、微生物化学研究所(東京都品川区)の柴崎正勝所長らのチームが世界で初めて成功した。
 安価な大量生産に道を開く技術で、耐性ウイルスが出現した際に素早く対応するための基礎技術にもなるという。
 チームが使ったのは、石油から安価に生成できる「ニトロブテン」と呼ばれる化学物質。酸性とアルカリ性の両方の働きをする独自の触媒技術を使って、リレンザを合成した。
 従来は発酵技術で作る「シアル酸」という原料から合成されてきたが、化学構造を変えるのが難しく、価格も高くつくのが難点だった。石油を原料にした化学合成によって、大量生産が可能になるほか、類似物質を簡単に作ることができるため、耐性ウイルスが出現しても、そのウイルスに対応した薬剤を素早く合成できる利点がある。

◎キログラムの基準「原器」廃止へ、長さに続き(2011年10月22日、読売新聞)
 質量の単位「キログラム」の定義として120年以上使われてきた「国際キログラム原器」を将来廃止し、新しい定義へ切り替える方針が21日、パリ近郊で開かれた国際度量衡総会で決議された。長さや時間が現代的な定義に置き換えられる中、最後に残った「原器」が歴史的使命を終える。
 国際キログラム原器は、白金イリジウム合金製の分銅。1889年、メートル条約に基づいてつくられ、パリの国際度量衡局に厳重に保管されている。
 本来、質量は一定のはずだが、洗浄で1億分の6程度軽くなったこともあり、高精度の測定が必要な先端科学の世界では、より正確で安定的な定義が求められていた。

◎ミジンコ遺伝子3万1千個、人間を大きくしのぐ(2011年2月6日、読売新聞)
 湖水などにすむミジンコが約3万1000個もの遺伝子を持つことが分かり、米インディアナ大を中心とする国際チームが4日付の米科学誌サイエンスで発表する。
 人間の遺伝子は約2万3000個に過ぎず、ミジンコの遺伝子はこれまでゲノム(全遺伝情報)が解読された動物の中で最多となる。研究チームは、甲殻類では初めてミジンコのゲノムを解析した。ゲノムのサイズは人間の7%程度にもかかわらず、たんぱく質を作り出す遺伝子はぎっしりと詰まっていた。
 ミジンコは、有性生殖と、自分のコピーを作る単為生殖を使い分けたり、魚など捕食者が出す化学物質を探知して防御のトゲを増やしたりして、環境に適応する。遺伝子の多さはこうした適応能力に一役買っている可能性があるという。

◎隕石衝突の絶滅生き延びた?70万年後にも恐竜(2011年2月6日、読売新聞)
 約6550万年前の白亜紀末に起きた巨大隕石の衝突による恐竜の大量絶滅の後も約70万年間生き延びた恐竜がいたとする研究成果を、カナダ・アルバータ大などの研究チームが発表した。
 延命したのは、全長21メートルに及んだ「アラモサウルス」と呼ばれる草食恐竜。研究チームは、米国南西部ニューメキシコ州サン・ホアン盆地で見つかった恐竜の大腿骨を「ウラン・鉛法」という手法で直接測定し、年代を約6480万年前と導き出した。恐竜は、メキシコのユカタン半島付近に衝突した巨大隕石による環境異変で絶滅したとされるが、どれだけの期間をかけて絶滅したかや、地域的なバラツキなどはまだ十分にわかっていない。
 国立科学博物館の真鍋真研究主幹は「すべての恐竜が一瞬で消え去ったわけではないので、隕石衝突の70万年後に恐竜がいても不思議ではない。ただ、今回の年代測定に伴う誤差のためこの化石が隕石衝突前のものである可能性も残る」と指摘する。

◎カナダ:74万年解けぬ、永久凍土発見、温暖化論争に一石(2008年12月30日、毎日新聞)
 現代以上に暖かい時代でも解けずに残った太古の永久凍土が、カナダ北部で見つかった。北極圏に広がる永久凍土は地球温暖化で解けると、大量の二酸化炭素が放出され悪影響が心配されている。暖かな時代でも解けない凍土が存在することは、温暖化に伴う影響評価の見直しにつながる可能性があるという。
 発見したのはカナダ・アルバータ大の研究チーム。米アラスカ州に近い地域で、この周辺は半分以上が永久凍土に覆われ、氷の厚さは数十メートルに及ぶ。研究チームは7年前、この永久凍土を見つけた。今回、凍土に含まれていた火山灰を放射性年代法で測定し、約74万年前にできたことを突き止めた。
 地球の気候は、気温が高い間氷期を約10万年間隔で繰り返している。特に、約12万年前の間氷期は今より気温が数度も高く、海面水位も8メートル高かったとされる。研究チームは「永久凍土は海氷や氷河に比べて、想像以上に解けにくい。温暖化影響を無視できることにはならないが、将来の気候変動の予測精度を向上させるため、さらに調査が必要だ」としている。

・福田正己・米アラスカ大教授(雪氷学)の話
 温暖化で北極圏の永久凍土が解け、建物崩壊などの影響が懸念されている。しかし、アラスカでの観測では予想以上に解けていない。今回の発見を踏まえ、影響評価の精度を高めることが求められる。

◎27億年前に酸素あった、豪州の地層分析で解明(2008年12月25日、読売新聞)
 海洋研究開発機構と東京大学の研究グループは、豪州の地層の分析から、27億年以上前の地球の大気に酸素が存在した証拠を見つけた。
 定説を3億年以上さかのぼる成果で、この地層ができたころには、光合成を行う微生物が存在した可能性を示す。欧州の専門誌電子版に近く発表する。
 グループは、豪・西オーストラリア州の地層でボーリング調査を行い、地下180メートルに酸化鉄を含む層を見つけ、年代の測定を行った。
 その結果、この地層が含む鉄分は、27億7000万〜29億年前に大気中の酸素を取り込んだ地下水にさらされて、酸化したことがわかった。当時の酸素濃度は、現在の1.5%程度と推定されるという。
 地球の大気の酸素は光合成を行う微生物「シアノバクテリア」が大量に生み出したとされ、その時期をめぐっては、米国のグループが2004年に「24億〜23億年前」と発表、これが定説になっていた。

◎もみ殻から先端素材、栗本や阪大など、シリカ抽出技術(2008年9月20日、日本経済新聞)
 栗本鉄工所は大阪大学などと共同で、もみ殻から省燃費タイヤや半導体封止材などに使う高純度シリカ(二酸化ケイ素)を取り出す技術を開発した。このほど全国農業協同組合連合会(全農)などと量産化に向けた実証設備を建設、2010年度の事業化を目指す。原料の大半を輸入に頼るシリカは資源高の影響で過去2年間で価格が2倍程度に急騰している。農産廃棄物を活用し、国産技術で安定供給を目指す。
 実証設備として滋賀県に1日10キログラムのもみ殻を処理できる装置を稼働させた。栗本鉄工所、阪大、全農のほかプリント基板を製造する昭和KDE(東京・渋谷)も運営に参加する。09年度までに量産技術を確立し、新潟県や東北地方など稲作の盛んな地域に量産設備を建設する計画。

◎鉄:「格子欠陥」運動を確認(2007年11月25日、毎日新聞)
 鉄の結晶に高エネルギーの粒子が当たって原子配列に生じる「ひび」が、結晶内を勝手に動き回ることを大阪大学超高圧電子顕微鏡センターの荒河一渡助教と森博太郎教授らが初めて確認した。これまでは何らかの力が必要と考えられていた。この現象は原子力発電所の原子炉が放射線を浴び、「ボイド」というナノメートルサイズ(ナノは10億分の1)の空洞ができて劣化する過程にかかわる。劣化しにくい原子炉材料の開発につながる可能性があるという。
 荒河助教らは超高圧電子顕微鏡から発する高エネルギー電子を鉄に照射し、直径数ナノ〜数十ナノメートルの輪の形をした格子欠陥(ひび)を作成。この輪を別の電子顕微鏡で観察し、ランダムに直線的な往復運動をすることを確認した。格子欠陥の輪は、高エネルギー電子によって正常な位置からはじき出された鉄原子が寄り集まって作られる。後に残る空洞も、互いに寄り集まり大きくなってボイドとなる。荒河助教は「格子欠陥の輪の動き方を指標化すれば、ボイドができにくい条件を予測できるだろう」と話している。米科学誌サイエンスに掲載された。

◎水酸化マグネシウム使うと、赤潮9割駆除(2007年7月30日、産経新聞)
 赤潮対策として水酸化マグネシウムを使うと、養殖の魚介類への影響が小さく、赤潮の原因となる微生物を90分間で9割駆除できたとの結果を、前田広人・三重大教授らがまとめた。
 効果的な方法になる可能性があり、今後、大規模な試験で効果を実証したいとしている。
 宇部マテリアルズ(山口県宇部市)、ニチモウ(東京)との共同研究。
 前田教授によると、水酸化マグネシウムは海底の泥を浄化する薬剤として使われており、赤潮への応用を考え実験。直径3マイクロメートル(マイクロは100万分の1)程度の微粒子にし、海中に長時間漂うようにした。赤潮の原因となる代表的な3種類のプランクトンがいる海水に、1リットル当たり0.2グラムを混ぜ効果を確認。瀬戸内海で赤潮が発生した海域を仕切り実験し、同様の効果があったという。
 魚介類のえらに微粒子が詰まる可能性があり、養殖のいけすではなく、赤潮発生海域に散布する方法が有効とみている。約100平方メートルに必要な薬剤は20キロ(約5000円)。
 前田教授は「なぜ効くかは現在調べている段階だが、水酸化マグネシウムの効果が弱い生物もいるので改良を進める」と話している。
 研究結果は、8月30日から大阪府吹田市で開かれる日本防菌防黴(ぼうばい)学会で発表する。

◎NTT:光速を5万分の1に抑制、シリコン製結晶使い(2006年12月23日、毎日新聞)
 NTTは、シリコン製の特殊な結晶を使って光の速度を5万分の1に抑えることに成功した。大量で高速の情報処理に光は欠かせないが、制御が非常に難しかった。光は光ファイバーなど通信に利用されているが、今後パソコンなど情報処理での実用化にも道を開くと期待される。今回の成果は、日本の科学誌「ネイチャーフォトニクス」に掲載される。
 同社によると、次世代の情報通信を担うと期待されるシリコン製の「フォトニク結晶」(厚さ200ナノメートル、1ナノは10億分の1)を使った。光がこの結晶の中に入ると反射を繰り返し、通常より1.45ナノ秒遅く出てきた。これは、光の速度(秒速約30万キロ)の5万分の1に当たる秒速5.8キロまで減速したことを示し、400〜500分の1だった従来の減速率を大幅に更新した。
 パソコンなどの大規模集積回路(LSI)では電気信号が使われているが、すべて光になれば情報処理の速度が100〜1000倍も高まるとみられる。
 納富雅也・NTT特別研究員(応用物理学)は「通信だけでなく、情報処理も含めたオール光化への第一歩になるのではないか」と話している。【田中泰義】

◎透明マント実現できる? 「見えなくする」理論確認(2006年10月19日、朝日新聞)
 かぶれば姿が見えなくなる「透明マント」実現の第一歩?――米デューク大など英米の研究グループが、特殊な微細構造の金属素材で物体を囲うことにより、物体に当てた電磁波を反射させずに裏側へ迂回(うかい)させる実験に成功した。ものが見えるのは、電磁波の一種である光が当たって反射し、目がその反射光をとらえるからだ。この反射がなければ何もないように見えるはず、という発想を確かめる試みだった。19日発行の米科学誌サイエンスに論文を発表する。
 実験の基となった発想は、欧米の別の研究グループが今年5月、「理論的には物体を見えなくする素材は作れる」と同誌に発表した。物体から反射光が返らないと、目が物体の存在を認識できず、あたかも物体が透明になったようにみえる、との理屈だ。
 今回のグループは、物体に当てた電磁波をねじまげて反射させずに、裏側へ迂回させるような特殊な構造の素材を考案。その素材で囲んだ直径約10センチの銅製の円筒に電磁波を当て、反射を大幅に抑えるのに成功した。
 完全に見えなくするためには、反射する光のすべての波長を迂回させる必要があるため、今回の実験成果のままでは「透明マント」の実現は遠い。ただし、レーダーを無力化する技術に応用するため、米軍が研究しているとも言われている。

◎放射線:香辛料への照射検討を、原子力委が報告書(2006年10月3日、毎日新聞)
 政府の原子力委員会は3日、殺菌などのため、香辛料への放射線照射を検討すべきだと主張する報告書を正式にまとめた。実際に照射が認められる前には、食品衛生法などに基づき、厚生労働省が食品安全委員会の意見を聞いて、照射された食品の安全性を調べることになる。
 報告書は、食品への放射線照射を「食品衛生の確保などに有効な技術」と位置づけた。その上で特に香辛料への照射について「諸外国で実績があり、わが国で(実施の)要請がある」とし、「実用化の意義は高く検討・評価が行われることが妥当だ」と主張している。
 この問題では、業界団体「全日本スパイス協会」(東京都千代田区)が照射の実現を要望。一方で消費者団体からは反対の声が出ている。
 報告書は、同委の食品照射部会が今年7月に原案を作成。国民からの意見公募を経て、同委が承認した。

◎地球表面温度:過去30年間で0.6度上昇(2006年9月26日、毎日新聞)
 地球の表面温度が過去30年間で0.6度上昇し、05年に過去1万2000年間で最も高くなったとの分析を、米航空宇宙局(NASA)などの研究者らが25日付の全米科学アカデミー紀要に発表した。
 NASAゴダード宇宙研究所のジェームズ・ハンセン博士らによると、地表や海面の年間の中位温度は過去1世紀で0.8度上昇。うち0.6度は1975年以降の上昇分で、北半球の高緯度地方で上昇が顕著だった。
 二酸化炭素の排出量が21世紀半ばまで年間2%増加し、メタンなど他の温室効果ガスの排出も増え続ければ、表面温度は2100年までに00年水準から少なくとも2〜3度上昇すると見られる。過去に表面温度が同水準に達したのは約300万年前という。
 温暖化で動植物の分布は10年に6キロのペースで両極方向に移動しているとの研究もある。研究者らは、気温上昇が続けば「現在見られる植物・動物種の大部分が生息域の消失や生態系の破壊で絶滅する可能性もある」と指摘している。

◎腹時計:脳内のメカニズム解明、日米がマウス実験で(2006年8月1日、毎日新聞)
 おなかのすき方でだいたいの時刻が予想できる「腹時計」のメカニズムを、米テキサス大の柳沢正史教授(分子遺伝学)と東京医科歯科大の三枝理博助手(神経科学)らがマウスを使った実験で明らかにした。脳内の時計遺伝子が餌の時間を記憶し、餌を食べるよう指令を出す体内時計。腹時計と食欲の関係を解明すれば、肥満予防策を編み出す一歩になるという。米科学アカデミー紀要オンライン版で31日に発表された。
 マウスは夜行性で、夜に動き回って餌を食べるが、昼にだけ餌を与えると昼夜逆転する。柳沢教授らはこの時のマウスの脳を分析した結果、食欲に関係するとされる脳の背内側核(はいないそくかく)で、時計遺伝子が餌の時間に合わせて24時間周期で動いていることを突き止めた。
 時計遺伝子は、多くの生物が持っており、一定周期で活性化して睡眠や血圧などのリズムの基になっている。特に光に連動し脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)にある「主時計」が主な役割を果たすが、昼夜逆転したマウスではこの情報は無視されていた。
 肥満の人は1日のカロリーの半分以上を夜間に食べる「夜型」が、正常人の40倍多いとの報告がある。柳沢教授は「腹時計と主時計のせめぎ合いから解明してゆけば、肥満の予防策につながるだろう」と話している。

◎なぜなぞ科学:双子の指紋はまったく違うの?(2006年3月8日、毎日新聞)
 「万人不同」といわれ犯罪捜査に使われる指紋。一卵性双生児(双子)でも指紋は違うのだろうか。
 指紋はその模様から弓状紋▽蹄状(ていじょう)紋▽渦状紋、に分類される。英国の遺伝学者ゴールトン(1822〜1911)は、指紋を形作る線の起点や合流点、分岐点などの特徴点に着目し、これが一致する確率は約640億分の1と推測した。地球の人口は約65億人だから、同じ指紋を持つ人が同じ時代に生きていることは、ほとんどなさそうだ。
 では、一つの受精卵が二つの個体に育ち、同じ遺伝情報を持っている一卵性双生児はどうなのだろうか。岡嶋道夫・東京医科歯科大名誉教授(法医学)は「赤の他人やきょうだい同士に比べると、指紋はかなり似ている」と言う。
 岡嶋さんは双子の相似性を研究する過程で、指紋についても調べた。398組の一卵性双生児の指紋を、模様によって4種類に分類すると、双子同士の親指が同じ種類になる確率(一致率)は78%だった。
 「指紋は身長や体質と同じく、複数の遺伝子や環境の影響を受ける。一卵性双生児でも、指紋が形づくられる過程で微妙な違いが出るのかもしれない。でも本当の理由は謎のまま」と岡嶋さん。
 「その人だけ」という性質を利用して、指紋は個人認証にも使われている。富士通研究所の新崎卓・主任研究員は「双子でも、特徴点に注目すればかなり違う」と話す。現在の水準では、誤って他人を認証する確率は100万分の1。「あらゆる条件下で間違わないことが目標。双子の指紋が似ているといっても、きちんと他人だと区別できる技術レベルです」という。【元村有希子】

◎0.15ミリ角の世界最小ICチップ、日立が開発(2006年2月6日、朝日新聞)
 バーコードにかわる技術と期待されるICタグ(電子荷札)用の無線ICチップを、わずか0.15ミリ角まで小さくすることに、日立製作所中央研究所が成功した。厚さも新聞紙(約0.07ミリ)より薄い0.0075ミリで、世界最小・最薄という。米サンフランシスコで開催中の国際固体素子回路会議で発表する。
 チップにアンテナをつけると、製造工程で内部に書き込んだ固有の番号を、接触しなくても読み取ることができる。日立はすでに0.4ミリ角のチップを使ったICタグ「ミューチップ」を1個10円台(100万個単位で受注した場合)で販売。愛知万博の入場券にも採用されている。
 同研究所の宇佐美光雄主管研究長らは、チップ内部の半導体基板の製法を高度化して、今回の小型・薄型化を実現した。アンテナをつけてもコピー用紙(厚さ0.1ミリ前後)より薄くできるという。生産コストを下げることもでき、用途の広がりが期待される。
 インターネットと組み合わせて宅配便の追跡や、食品の履歴管理などに使うほか、偽造防止のため、紙幣や有価証券、公的証明書などに埋め込むこともめざしている。数年後には量産し、1億個単位の注文で1個5円以下にするのが目標だ。

◎ユイノウ遺伝子:植物などの受精に関係、立教大チーム発見(2006年1月4日、毎日新聞)
 種子が果肉で覆われた被子植物の受粉(受精)に欠かせない新しい遺伝子を立教大の研究チームが発見、結婚前の儀式にちなんで「ユイノウ(結納)」と名付けた。研究チームは、植物の結実を促して生産性を上げる研究や受精の仕組みそのものの解明に役立つとしている。英科学誌「ネイチャー・セル・バイオロジー」に発表した。
 被子植物の雌しべの下部には、子房と呼ばれるふくらみがある。雌しべについた花粉は、細い管(花粉管)を子房まで伸ばす。花粉の中で作られた精細胞がこの管を伝って移動し、子房の中にある卵細胞などと受精すると種子ができる。
 研究チームは、被子植物のテッポウユリの花粉から精細胞の元になる細胞を分離、精細胞でだけ働く遺伝子を見つけた。
 その後、この遺伝子が作るたんぱく質は精細胞の表面にあり、卵細胞などとの結合に欠かせないことが分かった。遺伝子を働かなくすると、受精しないことも確認した。
 他の生物の遺伝子データベースとの比較から、同様の遺伝子は藻類や高等植物に加え、マラリア原虫など植物以外の生物も持つことも判明した。
 研究チームの黒岩常祥教授は「この遺伝子は、植物以外の受精にもかかわっている可能性がある。マラリア原虫の生殖を阻害し、マラリアの流行を防ぐ研究にも応用できる」と話している。【永山悦子】

◎アインシュタインやっぱり正解、精密実験で証明、誤差0.00004%(2005年12月22日、産経新聞)
 科学のすべての分野で最も有名なアインシュタインの公式「E=MC2」を高精度な実験で検証した結果が、二十二日発行の英科学誌「ネイチャー」に報告されている。カナダの研究者らの精密な実験によって、エネルギーと質量が物理的に等価であることを表すこの式が、0.00004%内の誤差で正しいことが確かめられた。
 研究チームは、シリコンと硫黄の同位体が中性子を捕獲するときに起こる質量変化(中性子分を含まない)と、このときに発生するガンマ線のエネルギーを精密に測定した。この結果、これまでの検証よりも五十五倍の精度で、現代物理の根幹を支える特殊相対性理論の正しさが保証された。ネイチャー誌は「世界物理年のフィナーレにふさわしい成果」と評している。

◎始祖鳥:鳥類ではなく恐竜だった? 骨格に特有の特徴(2005年12月2日、毎日新聞)
 長く最古の鳥類と考えられてきた始祖鳥(ジュラ紀後期、約1億5000万年前)の骨格に恐竜特有の特徴があることを、米ワイオミング恐竜センターなどの研究チームが発見し、2日付の米科学誌「サイエンス」に発表した。研究チームは「始祖鳥は、鳥類ではなく恐竜の特徴を持つ動物だった」と結論付けている。日本の高校教科書(生物)には始祖鳥は「最も古い鳥類と考えられている」と紹介されている例もあるが、今回の発見は恐竜であることの有力な証拠となる。
 研究チームは、ドイツの約1億5000万年前の地層から発掘された始祖鳥類(全長約50センチ)の骨格を分析。その結果、脚や口、胸の骨格が鳥類より恐竜に近い特徴を持っていた。特に、足の親指が、木をつかむ鳥のように後ろ側に伸びていなかったこと、中指に恐竜のように大きく動く関節があったことが明らかになった。
 真鍋真・国立科学博物館主任研究官は「始祖鳥と鳥類に共通のわずかな特徴がなくなり、始祖鳥と恐竜の間に境界線を引く必然性がなくなった」と話している。

◎なぜなぞ科学:左半身は、なぜ右脳が制御?(2005年11月30日、毎日新聞)
 右脳を損傷すると左半身の自由がきかなくなることは、経験的に知られている。なぜわざわざ逆転しているのだろう。
 これは、大脳からの指令を運動神経が筋肉に伝える際、それを中継ぎする神経が体の中心線を境に「交叉(こうさ)」しているためだ。理化学研究所脳科学総合研究センター(埼玉県和光市)の岡本仁グループディレクターによると、ハエも魚も人間同様「体の中心線を1回だけ横切る決まりがある」という。
 なぜ1度だけなのか。
 受精卵から脳が作られる段階で、神経細胞は「軸索」と呼ばれる腕を伸ばし、他の神経とつながろうとする。その際、一部の軸索の先端は、中心線付近から分泌される「ネトリン」というタンパク質に引き寄せられる。
 ネトリンに誘われて中心線を横切ると、今度は中心線付近から「スリット」という物質が分泌される。これが軸索の先端が戻ってくるのを阻むらしい。
 神経がすべて交叉しているわけではない。例えばヒトの視神経は半分だけが交叉する。つまり視野の左半分の情報を右脳で、右半分を左脳で処理している。これを「半交叉」と呼ぶ。
 魚は、体の左側をつつかれると、右側に体を丸めながら逃げる。左半身の刺激は脊髄(せきずい)に伝わり、一度だけ交叉する神経を介して右の運動神経に伝えられる。その運動神経が右半身の筋肉を収縮させているのだ。「とっさに危険から逃げるためには神経交叉が合理的。進化の過程でこの仕組みが発達し、ヒトにも受け継がれたのだろう」と岡本さんはいう。

◎体内時計:朝の光で調整するメカニズム解明、神戸大教授ら(2005年11月13日、毎日新聞)
 朝の光で全身の体内時計が調整される仕組みを、神戸大大学院医学系研究科の岡村均教授(時間医学)らがマウスの実験で突き止めた。目で光を受けると、腎臓の隣にある副腎に情報が伝わり、細胞を活性化するステロイドホルモンが分泌されるという。岡村教授は「朝の光でそう快に感じるのは、このためではないか」と話している。9日付米医学誌「セル・メタボリズム」に発表された。
 人やマウスの体には24時間周期の活動のリズムがあり、ホルモン量や体温などが変化する。このリズムをつくる体内時計が狂うと、睡眠障害や活動意欲の低下などの症状が表れ、ひどくなるとうつに陥る。通常は朝に光を浴び、体内時計と実際の時間のずれを修正しているが、全身に“朝”という情報がどのように伝わるかは不明だった。
 岡村教授らは、ステロイドホルモンの一種の副腎皮質ホルモンが24時間周期で増減することに着目。マウスに30分間光を当てると、このホルモンの量が約3倍に増えた。一方、体内時計の本体とされる脳の一部と副腎を結ぶ神経を切ると、光を当てても量は変わらず、光を受けると副腎皮質ホルモンが出て、全身の体内時計が修正されると結論づけた。
 岡村教授は「うつ病治療への応用が考えられる。また、ステロイド剤はぜんそく治療などに使われるが副作用がある。光を浴びせることで、ステロイドを効果的に使えるようになる可能性がある」と話している。

◎液体の可燃性、数秒で判別、東京ガスが装置発売(2004年11月7日、読売新聞)
 東京ガスは、ペットボトルやアルミボトルに入った液体がガソリンなどの可燃性の液体かどうか、数秒で判別できる検査装置を発売した。
 価格は262万5000円と高価だが、空港やイベント会場などで、危険物の持ち込みをチェックする荷物検査などの需要が見込めるという。
 装置は、縦32センチ、横45センチ、高さ20センチ。容器の中身がガソリンや灯油などの可燃物かどうか、容器を装置の上に置くだけで判別できるという。
 容器がペットボトルの場合は、周囲に弱い電気を流し、中身の液体の反応の違いで可燃物かどうか見分ける。アルミボトルは、液体への熱の伝わり方で判定する。東京ガスは昨年11月に装置を開発し、羽田空港などで試験を行っていた。

◎アインシュタイン予言通り、「慣性系の引きずり」確認(2004年10月22日、読売新聞)
 物理学者アインシュタインの一般相対性理論をもとに1918年に予言されていた「慣性系の引きずり」という現象が、米航空宇宙局(NASA)の人工衛星2基を使った観測で確認された。NASAなどの国際チームが21日発表した。斬新すぎてノーベル賞を逃した大理論を裏付ける、新たな証拠が見つかった。
 真空の宇宙空間で地球のまわりを人工衛星が回っているとき、地球が自転していてもいなくても、人工衛星の軌道は影響を受けないというのが一般の“常識”。ところが、一般相対性理論によると、重い物体が自転すると、「蜂蜜(はちみつ)の中でボウリングの球が回転したときに周囲が引きずられる」(NASAゴダード宇宙飛行センターの科学者)ように、空間そのものにゆがみが出て、周囲の物体が影響を受ける。
 国際チームは、レーザー測定装置を搭載した2基の衛星で、93年から昨年まで、精度数ミリの観測を実施。両衛星が年に約2メートルずつ、地球の自転方向へ余分に引っ張られていることを確認した。観測結果は誤差を含むものの、予想された値と99%合致するという。
 NASAは、今年4月に打ち上げられた観測精度の高い科学衛星「グラビティ・プローブB」を使って、さらに詳細な観測を行う方針だ。

◎重力変化:十勝沖地震で世界初の測定に成功、東大海洋研(2004年10月15日、毎日新聞)
 東京大海洋研究所の今西祐一助手や国立天文台の佐藤忠弘助教授らの研究グループは、昨年9月25日の十勝沖地震の発生に伴う国内3カ所の重力変化を、超伝導重力計で測定することに成功した。地震に伴う重力変化を高感度の重力計で観測したのは世界初で、15日付の米科学誌「サイエンス」に掲載された。
 論文によると、十勝沖地震(マグニチュード=M8.0)による重力加速度は▽岩手県江刺市0.58マイクロガル▽新潟県松代町0.1マイクロガル▽京都市0.07マイクロガルそれぞれ増えていた。増加量は地球の重力(980ガル)の10億分の1以下だが、地震波などから推定される震源断層モデルで計算した理論値とほぼ一致した。
 今西助手は「観測能力が立証されたことは大きい。地震の震源断層モデルの決定や地球内部で起きる現象を解明する手がかりとなるかも知れない」と話している。

◎理化学研究所、最も重い元素発見(2004年9月28日、日本経済新聞)
 理化学研究所は28日、これまでに確認されている中で最も重い113番目の元素を発見したと発表した。実験で1個を人工的に作り出すことに成功した。原子番号113。国際的に認められれば新元素として命名できる。新元素の発見は日本で初めて。発見したのは理研の森田浩介先任研究員らの研究グループ。ノーベル化学賞受賞者で理研の野依良治理事長は「科学の歴史に永遠に残る成果。新元素の名前は『ジャポニウム』という案もあるが、個人的には『リケニウム』と名付けてほしい」と話している。
 理研のグループは加速器などを使い、原子番号30の亜鉛原子を同83のビスマスに照射して合成した。亜鉛がビスマスと衝突した瞬間に核反応が起こり、中性子を1個放出して新元素が1個できた。新元素は極めて不安定で、つくり出してから344マイクロ(マイクロは100万分の1)秒後にはヘリウムの原子核を放出し始め、別の軽い元素に変わってしまった。新元素の命名権を得るためには他の元素に変わっていく過程を示し、国際的に認知される必要がある。

◎金の超微粒子、磁石にくっつく、北陸先端大など確認(2004年9月15日、朝日新聞)
 金(きん)は100万分の数ミリ程度の超微粒子にすると、磁石にくっつく――。こんな新たな性質を、北陸先端科学技術大学院大学と高輝度光科学研究センターのチームが確認した。「将来的には、超小型で超大容量の磁気記録ディスクなどへの応用も期待できる」という。米物理誌フィジカル・レビュー・レターズ10日号で発表した。
 同大の山本良之助手らは、塩化金酸などを超純水に入れて反応させ、直径2〜3ナノメートル(ナノは10億分の1)の金微粒子(金原子で約220個)を作った。大型放射光施設「スプリング8」(兵庫県)で、これに放射光X線をあてて磁性を持つか調べた。温度を零下約270度まで下げると、微粒子が強い磁性を帯び、そろって磁場の方向を向いた。
 これまでも、金微粒子が磁性を持つ可能性は指摘されていたが、従来の研究設備では磁性を帯びた不純物に邪魔され、金微粒子そのものの性質ははっきりしなかった。
 金微粒子は常温では磁性を持たないが、鉄などの磁性金属を金微粒子で包めば、常温でも応用できると期待される。鉄などに金や白金など貴金属元素を組み合わせると、記録容量も飛躍的に高まるという。

◎三角形の原子核あった、理論的に証明(2004年4月28日、産経新聞)
 原子核の形は球に近いと考えられていたが、三角形もあり得ることを大塚孝治東大教授(原子核理論)らが28日までに理論的に証明し、米物理学誌フィジカル・レビュー・レターズに発表した。
 三角形の原子核は通常よりも高エネルギー状態にある。超新星爆発で合成されたばかりの原子には多く存在するとみられ、大塚教授は「原子が今ある姿になった道筋や、存在の割合を解明する手掛かりになる」としている。
 原子核は陽子と中性子からできている。核の中では、それぞれが2つ集まってできるアルファ粒子を単位として、ぶどうの房のような姿になるケースもあることが知られていた。ただし核をつなぎ留める力が強いため通常、房はつぶれ、全体として球に近い形をしている。
 大塚教授らは、アルファ粒子が3つ集まってできる炭素原子に余分な中性子2つを加えた炭素同位体を考えた場合、粒子が相互にどのような力を及ぼすかなどを計算。アルファ粒子が正三角形の頂点を占める構造になりうることが分かった。
 この成果について、ドイツの研究グループが実験を行い、ほぼ正しいとする結果を得ているという。

・原子核
 原子の中心にあり、陽子と中性子からなる。周囲を回る電子とともに原子を構成する。原子の大きさは約1億分の1センチだが、原子核はその10万分の1。原子核の大きさを砂粒に例えると、原子の大きさは野球場ほどになる。原子核が球以外の形でも、すき間の大きい原子の形にはほとんど影響はないという。

◎東レ、先端素材を米で一貫生産・新型旅客機向け(2004年4月26日、日本経済新聞)
 東レは軽量で高強度の先端素材である炭素繊維を米国で一貫生産する。約160億円を投じて原糸の生産設備を設けるほか、加工設備を増強して米ボーイングの新型旅客機「7E7」向けなどに供給する。東レは仏でもエアバスの新型旅客機向けに炭素繊維の生産能力を拡大中。日米仏で世界最大の1万トン体制を構築する。
 炭素繊維は原糸を焼成し、樹脂を混ぜてシート状の複合材料にして顧客に供給するのが一般的。これを成型して航空機部品などを作る。東レは現在、原糸を日本から持ち込み、米国では焼成工程と、複合材料に加工する工程を手掛けている。
 今回の一貫生産ではアラバマ州に原糸の生産設備を新設し、焼成設備の能力を2006年に2倍の年間3600トンに引き上げる。ワシントン州の複合材料設備も生産能力を2倍に増やし年間1120万平方メートルにする。

◎単為発生:卵子だけでマウス誕生、東農大、ほ乳類で世界初(2004年4月22日、毎日新聞)
 受精をしていない雌の卵子だけを使い、新たに雌マウスを誕生させることに東京農業大の河野友宏教授(発生工学)らが成功し、22日発行の英科学誌「ネイチャー」に発表した。雌の遺伝情報だけからの個体発生は「単為発生」と呼ばれ、ほ乳類での成功は世界初。研究チームは「家畜の品種改良などに役立つ」としている。理論的にはヒトへの応用も可能で「男女両性の関与による生殖のあり方を脅かす」などの論議も呼びそうだ。
 ほ乳類の受精卵は母親(卵子)と父親(精子)の双方から染色体を1組ずつ受け継ぐ。染色体には遺伝子があり、特定の遺伝子は片方の親から受け継いだものだけ働くことが、受精卵の成長に欠かせない。ゲノム刷り込みと呼ばれる現象だ。
 研究チームはマウスの遺伝子を操作し、染色体が精子に近い刷り込み状態になる雌をつくった。生後間もないこの雌の未熟な卵子(卵母細胞)の核を精子代わりに使い、別のマウスの成熟卵子に移植して胚を作成した。
 胚を別のマウスの子宮に戻したところ、28匹の妊娠に成功。このうち2匹は健康な状態で生まれた。1匹は処分して詳しく調べたが遺伝子の異常などはなかった。残り1匹は「竹取物語」のかぐや姫にちなみ「かぐや」と名付けた。かぐやは通常の交尾をし、2度の出産に成功した。
 河野教授は「研究は、ほ乳類の発生メカニズムの解明が目的で、ヒトへの応用は考えていないし、許されない」と話している。

・単為発生
 卵子が受精することなく細胞分裂し、成長すること。自然界では昆虫やは虫類、鳥類、魚類、植物などで単為発生がみられる。卵子が作られる過程で遺伝子の組み換えが起きるため、単為発生で生まれた子のゲノム(全遺伝情報)は親とは異なり、クローンにはならない。体細胞の核から作るクローンは、核に父親由来と母親由来の遺伝情報を含むため、単為発生ではない。

・「もう男は不要?」、進化の謎、解明期待
 生命の歴史上初めて、雌からの遺伝情報だけしか持たないほ乳類が生まれた。東京農大の河野友宏教授らが遺伝子操作や核移植などの技術を駆使し、マウスの卵子だけから子どもを誕生させた。論文を掲載した英科学誌「ネイチャー」は「もう男性は不要?」との見出しを付けた。
 マウスを遺伝子操作し、2匹の卵子を使うことから「単為発生とはいえない」との批判もある。しかし、科学的には、ほ乳類の発生メカニズムに迫る画期的成果だ。東京医科歯科大の石野史敏教授(分子生物学)は「生殖細胞で、父と母のどちらかに由来する遺伝子だけが働くゲノム刷り込みの解明につながる。ほ乳類は、雄と雌による両性生殖でしか生まれないのはなぜかという進化のなぞを説明できる日が近づいてきた」と評価する。
 一方、「マウスで成功した以上、ヒトへの応用も論理的には可能」と警告する専門家もいる。
 米国のベンチャー企業は02年、カニクイザルの卵子を単為発生させ、どんな細胞にも変わる能力を持った胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を作った。機能を失った臓器などの再生医療のためで、ヒトでも試みる方針を示した。
 今回は、遺伝子操作を含む非常に複雑な手法を使っており、河野教授は「ヒトへの応用は考えられない」と強調する。日本では、国の指針で生殖細胞の遺伝子操作は禁止されている。妊娠に成功した28匹のうち、健康に生まれたマウスはたった2匹で、成功率も低い。
 だが、人間の欲望は限りがない。子どもを持つことを望んだ同性カップルが、技術の利用を求めるかもしれない。いまだに完成した技術ではないことを念頭に、研究の進展を注視することが必要だろう。

◎アゴ弱り脳膨らむ、遺伝子レベルで裏付け、米チーム(2004年3月25日、読売新聞)
 人類の脳が大きくなった原因につながる遺伝子を、米ペンシルベニア大などの研究チームが突き止め、25日付の英科学誌「ネイチャー」に発表する。この遺伝子は本来、類人猿の強じんなアゴの筋肉を作る働きがあったが、人類では偶然、約240万年前に機能を喪失。このため、アゴの筋肉で縛りつけられていた頭の骨が自由になり、脳が大型化するのを可能にしたらしい。
 人類は、約250万―200万年前に猿人から原人へ進化し、脳は大きさが猿人の2倍程度になったとされる。今回の遺伝子が機能を失ったのは約240万年前と推定され、原人への進化時期と一致する。
 これまでの化石研究などから、頭の骨が膨らんだのは、頭頂部に近い所から続いていた猿人のアゴの筋肉が弱くなり、解放されたためではないかと考えられていたが、この進化過程を遺伝子レベルで裏付ける証拠が見つかったのは初めて。
 チンパンジーやゴリラは今も、この遺伝子が働いていて、アゴの筋肉が頭部を広く覆っている。人類は原人に進化した段階で、硬い木の実に加え、軟らかい肉なども食べるようになり、アゴの筋肉の退化も不利にならなかったようだ。
 斎藤成也・国立遺伝学研究所教授の話「化石で見られる頭骨の形の変化を、遺伝子レベルで突き止めた成果で興味深い。遺伝子から人類進化を明かす研究はますます活発化するはずだ」

・人類の脳の進化
 約700万〜600万年前に誕生した猿人の脳容量は350〜500cc程度だったが、現生人類では約1400ccにまで大きくなった。脳の大きさを制限していたアゴの筋肉の減少に加え、二足歩行で自由になった両手を使うことで、脳の発達が促されたとする説もある。

◎酸素も有機物も不要、深海底に原始生命に近い細菌群(2004年3月29日、読売新聞)
 日本の潜水調査船「しんかい6500」が、インド洋の深海底(水深約2500メートル)で、地球で最初に誕生した原始生命に近い細菌群を発見した。
 海洋科学技術センターと北海道大の共同研究グループの調査。300度以上の熱水と共に水素が噴出する「熱水孔」から採取した。
 見つけたのは、水素と二酸化炭素を取り込みメタンを出す細菌2種類と、その死がいとメタンを食べる細菌1種類。どの細菌も、酸素に触れると死んでしまうことも確認した。
 これまでも深海底などの極限環境で酸素を嫌う細菌が見つかっているが、生存には、プランクトンなど有機物が必要だった。酸素も有機物も要しない微生物の発見は初めて。
 約38億年前に原始地球に出現した微生物も、地球の表層を避け、地球内部から出る物質だけに依存して生きていたと推測されている。太古の細菌群が深海で相互に依存し合う生態系を築き、生き永らえていた可能性がある。

◎米研究グループ、物質の第6の「相」を発見(2004年1月29日、日本経済新聞)
 物質は周囲の温度などに応じて気体、液体、固体など五つの状態(相)をとることが知られていたが、米研究グループは28日、極低温下で6番目の物質の相を発見したと発表した。物質の電気抵抗がゼロになる超電導と深い関係があるとみられ、研究グループは産業分野への応用も期待している。
 米国立標準局と米コロラド大の共同研究チームの成果。同チームは1995年に物質の5番目の相となる「ボーズ・アインシュタイン凝縮」を極低温下で見つけ、2人が2001年にノーベル物理学賞を受賞した。今回の発見はそれに匹敵する業績とみられている。
 物質は周囲の温度が上がると固体から液体、気体、プラズマへと相を変える。一方、極低温の絶対零度(セ氏マイナス273度)に近づくと、物質は超電導など奇妙な性質を示すようになるが、新たに見つかった6番目の相である「フェルミ凝縮」はこれらの現象と密接な関連があるという。

◎マイナス同士が引き合う(1997年3月31日、朝日新聞)
 マイナスの電荷を持ったもの同士は、お互いに反発し合うというのが電磁気学の常識だが、この常識を破る奇妙な現象がコロイド溶液で起こるのを富山大学工学部化学生物工学科の伊藤研策助教授らが発見、「米国化学会誌」に発表する。
 ふつうの水からイオンなどの不純物を除去した超純水に直径0.5μmのプラスティック微粒子が混ざっているコロイド液。微粒子にはあらかじめ水中で負電荷を帯びる物質が混ぜてある。この液をガラス容器の中にいれ、共焦点レーザースキャン顕微鏡という特別な顕微鏡で見ると、微粒子が液中でどのように分布しているかが分かる。
 伊藤さんらは、この液中に負に帯電させたガラス棒を置いた。電磁気学では「負に帯電しているもの同士だから反発し合って、微粒子はガラス棒の壁の近くの方が遠いところよりも少なくなる」と考えられた。しかし、実際には壁に近いところに微粒子が集まり、引き合っているように見えた。ガラス壁から約50μmのところまで、微粒子は高濃度で寄り集まり、最高で3〜4倍の濃度になっていた。液中にイオン性の不純物を入れて電荷の影響を取り除くと、この現象は起こらなくなった。帯電による粒子とガラス壁の間の静電相互作用が原因になっているのは確かだが、これまでの理論では説明できないという。

◎カシミール効果を測定(1997年2月24日、朝日新聞)
 「何もない空間」のはずの真空に潜むエネルギーが引き起こす現象を精密測定することにアメリカ、ワシントン大学の物理学者が成功し、アメリカの物理誌「フィジカル・レビュー・レターズ」に発表した。「カシミール効果と呼ばれ、予言されたのは半世紀前。基礎にある「真空の変化」と言う考えは、宇宙論や素粒子論など物理学の様々な分野で応用されている。
 この現象では、真空の中に二枚の金属板をごくわずかに離して置くと、万有引力の他に、板を引きつける微小な引力が働く。オランダの物理学者カシミール博士が1948年に理論的に予言した。
 量子力学が研究される前は、真の真空は物もエネルギーもない空間とされた。しかし、量子力学では「ある量の組み合わせは、同時には確定しない」という不確定性原理のために、完全な真空にも「零点振動」と呼ばれる電磁波などのわずかな揺らぎと、それにともなうエネルギーが残ることが分かった。このエネルギーは、通常は見えないが、カシミール博士は、金属板を引きつける力となって働くはずだと考えた。
 零点振動は、様々な波長で振動している。しかし、板の間の空間は、板によって振動の波長が制限されるために、板の外側に比べて振動のエネルギーが小さくなる。外側の、より大きなエネルギーが板を内向きに押すはずだと考えたのだ。予言の10年後に、引力が実際に存在することが確認されたが、理論値とは異なる値だった。ワシントン大学のラモロー博士は、表面に銅と金を蒸着した円形の石英版を使った。直径は一方が2.54cm、もう一方が4cm。1μmほど離したこの二枚の間に、通常の電磁気力などの他に、カシミール博士の予言と5%しか違わない10ng重ほどの力が働いていることを確かめた。

◎燃料電池を浄水場に導入(1996年3月13日、朝日新聞)
 「都市部での小型発電設備」として期待されながら、生じた直流電力を交流に変える手間とコストなどが普及の課題になっている燃料電池に対し、東京ガスと東京都が、直流電力をそのまま使う新用途を開拓した。直流電力で、飲み水の消毒剤を作ろうというもの。まず、燃料電池を板橋区の浄水場に設置し、5月から発電を始める。4年間の実験が成功すれば、他の浄水場にも導入する計画だ。
 燃料電池は、原料の天然ガスから取り出した水素に、空気中の酸素を反応させて、電気と水を作り出すシステム。化学反応による発電なので、振動、騒音や、光化学スモッグの原因になる物質の発生がほとんどないなどの利点があり、通産省・資源エネルギー庁の支援でガス、電力会社や電機メーカーが開発に取り組んでいる。
 普及すれば、新規建設が難しくなっている大型発電所に代わる「分散電源」になるともいわれ、各地のガス会社などがホテルや商業施設、学校で実験中。まだ量産していないので設置コストが高いのが難点で、起こした直流電力を交流に変える装置も、その要因になっている。
 東京都は、直流電力がそのまま、水道水の消毒剤となる次亜塩素酸ナトリウムの生産に使えることに目をつけ、東京ガスに浄水場で利用することを提案した。現在は消毒剤に液化塩素を使っているが、タンクローリーでの運搬などに危険が伴うため、「浄水場内での消毒剤を生産できる効果は大きい」(都水道局)という。発電時に発生する排熱を100%回収し、浄水後の泥の処理に役立てる計画もある。板橋区の三園浄水場に置く燃料電池の(200kW)は約7,000万円。耐久性などを試験するという。

◎高温超伝導記録10倍に(超電導工学研究所)(1996年2月20日、朝日新聞)
 人間を乗せた円盤が、5cm浮いた。超電導工学研究所(東京)は19日、高温超伝導物質を使って、磁石のついた円盤を浮かせる実験を公開した。
 円盤と人間を合わせた重さは約120kg。零下約196度の液体窒素で超伝導状態になった物質が、磁場をはじく現象を利用した。電力貯蔵に使うフライホイール(はずみ車)や、リニアモーターカーへの応用が期待されている。
 同研究所は1990年、人間を約5mm浮かせる実験に成功している。今回は、約200個使った超伝導物質の結晶が3〜5cmと大きく、はじく力が前回の約3倍になった。さらに、円盤につける磁石の並べ方を工夫して磁力も強めた。

◎クオークより小さい粒子存在の証拠発見?(1996年2月8日、朝日新聞)
 米フェルミ国立加速器研究所の国際共同実験グループは、物質をつくる最も基本的な粒子とされているクオークが、さらに小さい粒子(サブクオーク)からできている可能性を示す証拠を見つけた。2月9日付の米科学誌「サイエンス」で報じられる。
 サブクオークがあるという理論は以前からあったが、その存在を裏付けるような実験結果が見つかったのは初めて。完全に立証できれば、素粒子物理学や宇宙物理学の基礎になっている「標準理論」を見直さなければならなくなるという。
 同実験グループの日本側代表、近藤都登・筑波大教授の説明などによると、今回の実験は、原子核の構成要素である陽子に、それにそっくりで電荷が反対のマイナスになっている反陽子をぶつけて得られた。2つの粒子が衝突するとさまざまな強さの粒子の束(ジェット)が飛び散るが、強いジェットが出る頻度が予想より大きかった。
 最も分かりやすいのが「クオークが内部構造をもつ」という解釈。クオークの中にある「より小さい粒子」同士がぶつかって起きる現象と考えられるからだ。
 同グループは一昨年、それまで見つかっていなかった最後(6番目)のクオーク、トップクオークを見つけている。標準理論:物質は6種類のクォークと電子など軽い粒子(レプトン)6種類でできている。これら「分割できない究極の粒子」の組み合わせや相互作用で、様々な物質ができているという理論。アメリカフェルミ国立加速器研究所のように、巨大な設備を使った実験と理論の発展の積み重ねで次第に出来上がった。現在の物理学は、この標準理論を基礎に成り立っており、これが崩れるとなると衝撃は大きい。

◎殺虫効果1000倍のタンパク質の構造を解明(1996年2月7日、朝日新聞)
 植物工学研究所(本社、東京都千代田区)は、東京農工大学と共同で、害虫退治に使うウィルスの効果を1000倍に高めるタンパク質の構造を突き止めた。タンパク質は同大農学部の福原敏彦教授らが見つけたもので、蛾などを殺す「昆虫ポックウィルス」が作る。同研究所事業企画室の早川孝彦部長代理らが、ウィルスの中でこのタンパク質を作る遺伝子(DNA)を見つけ、その構造からタンパク質の構造を決めた。
 このタンパク質を「核多角体病ウィルス」という、別な病気を害虫に起こすウィルスと一緒に使うと、ウィルスを単独で使うときの1000分の1の量のウィルスで同じ効果があった。
 ウィルスを使う農薬は、特定の種類の害虫だけを殺して、ほかの生物に被害を与えない利点がある。また、化学農薬は年に4回前後散布しなければならないが、ウィルスは1回で効果が続く。しかし、ウィルスを増やすには、これに感染する害虫を大量に飼育する必要がある。人手がかかるなど、生産コストが化学農薬の10倍程度になり、普及の弊害になっている。このタンパク質を、DNAを大腸菌に組み込む方法などで大量に作れば、コストを低減できるという。

◎遺伝子が高圧下で活発に活動(1996年2月5日、朝日新聞)
 地上の大気圧下にある大腸菌を深海と同じような高圧下にさらすと、突然活発に働き出す遺伝子があることを、海洋科学技術センター(神奈川県横須賀市)の深海微生物研究グループが見つけた。圧力に反応する遺伝子が地上の微生物で見つかったのは初めてで、生命が深海で誕生したとする学説を裏付ける研究成果として注目されている。
 深海微生物研究グループは1992年から1993年にかけて、同センターの潜水調査船「しんかい6500」で琉球海溝(水深約6400m)にすむ深海微生物を採取し、遺伝子レベルで調べたところ、圧力が高いほど活発に働く「好圧性」の遺伝子や、圧力が変わっても働きがほとんど変わらない「耐圧性」の遺伝子があることが確認できた。このうちの数種類が分類学的に大腸菌に近いことを突き止め、大腸菌に圧力をかけたときの遺伝子の働きの変化を調べた。その結果、乳糖を分解する酵素を作るのに関係する遺伝子の一部の働きが、水深3000mにあたる300気圧で地上の約100倍も活発になることが分かった。500気圧での働きは、地上の約4倍だった。
 体内で抗生物質を作る遺伝子の働きは、圧力が変わっても変化しない耐圧性だった。大腸菌の繁殖率は、圧力が高いほど下がる性質(圧力感受性)があり、遺伝子レベルでも、例えば細胞壁を作るのに関係する遺伝子は高圧ほど働きが抑制される。
 研究グループの加藤千明さんは、「深海で誕生した生命は、もともと好圧性だったはずで、それが地上に近づくにつれて耐圧性、圧力感受性を獲得していったと考えられる。大腸菌の遺伝子が3つの性質を併せ持っているのは、そのためではないか」と話している。

◎反物質(1996年1月5日、朝日新聞)
 世界で初めて反物質の水素原子の合成に成功したと、欧州合同原子核研究機関(CERN)が発表したことで、これまで理論上のものとされていた反物質が実験室で作られたことになる。
 電子と質量が同じで、正反対のプラスの電荷を持つ「陽電子」が見つかったのは1932年。その後、陽子と反対のマイナスの電荷を持つ「反陽子」なども見つかり、粒子には質量や寿命は同じだが、電荷などの性質が逆転した「反粒子」があることが分かった。
 粒子を加速して衝突させたときなどに、粒子と反粒子が対になって生まれることがある。逆に粒子と反粒子が出会うと一瞬にして消滅し、光などのエネルギーに変わる。
 宇宙線の中に反粒子が見つかることがあるが、宇宙にはほとんど普通の物質しか存在しない。宇宙が生まれたとき、物質と反物質が対になって生じたはずなのに、どうして偏っているのかが大きな謎になっている。
 これに対し、実は粒子と反粒子は性質が逆転した完全に対称なものではなく、わずかにずれがあるため、物質の方がわずかに多く生じ、出会って消滅した後、物質だけが余ったと考えられている。今回の成果は、原子と反物質の原子にわずかな違いがあるかどうかを調べる端緒として期待されている。
 また、東大理学部の佐藤勝彦教授は、「たまたま我々の宇宙に普通の物質が多いだけで、反物質が多い反物質宇宙もあると考えることもできる」と言う。全体としては物質、反物質のバランスが取れていて対称的というわけだ。しかし、物質の宇宙と反物質の宇宙が同時に存在するならば、その境界で接触した瞬間にこの宇宙が消滅することになる。

◎反物質の水素の合成に成功(1996年1月5日、朝日新聞)
 欧州合同原子核研究機関(CERN)は1月4日、国際研究チームが「反物質」の原子の合成に世界で初めて成功したと発表した。合成されたのは水素原子で、約40ナノ秒後に消滅した。反原子の合成の成功は、反物質からなる「反世界」の研究に道を開くものとして注目される。
 CERNの発表によると、反原子の合成に成功したのは、スイスのチューリッヒ工科大、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大、イタリアのジェノバ大などの研究者からなるチーム。1995年9月に、反陽子をキセノン原子と衝突させる実験を3週間続け、9つの水素の反原子を合成した。
 物質を作る最小の粒子である素粒子には、多くの場合に反粒子があることが知られている。その反粒子が集まってできた物質が反物質であるが、この世界では反物質は安定的には存在しにくい。物質と反物質が接触すると、合体して光などに変わってしまうためだ。理論上、反原子からなる反物質は普通の物質と同じ性質を持ち、反物質でできる「反世界」でも普通の世界の物理法則が当てはまるとされるが、この確認が期待される。
 国内では、1994年には早野龍五、東京大学助教授たちが反粒子を含むヘリウム原子をつくるなどの成果を上げている。

◎プールの水が飲める(1995年8月4日、朝日新聞)
 住友商事、東レ、日本アルミの3社は、大地震の時などにプールの水を飲料水として利用できる災害対応型プールシステム「アクア・リリーフ」を共同開発したと8月3日に発表した。
 耐振性プールに高性能の浄水装置を組み合わせたもので、25mプールなら2000人の2ヶ月分の飲料水が確保できる。非難所となる大都市圏の学校を中心に年30箇所の受注を見込んでいる。
 プール本体は震度7でもほとんど被害のないステンレスを用い、排水口は震度5で自動的に遮断し、水漏れを防ぐ。浄水装置には非常用電源を装備する。費用は25mプールを新設した場合、約5,300万円。従来のプールよりも2,000万円程度多く費用がかかる。

◎半導体の洗浄に新技術(1995年7月17日、朝日新聞)
 東北大学工学部の大見忠広教授らのグループがこのほど、半導体表面の新しい洗浄技術の開発に成功した。洗浄工程や使用する超純水が大幅に減り、環境に優しく、コストの削減につながるという。
 高品質の半導体を製造するには、シリコンの基盤表面についた金属や有機物のゴミを取り除く洗浄が不可欠。この精度はゴミをコンタクトレンズの1枚の大きさとすると、これを宮城県全域から探し出す作業に匹敵する。
 現在はアメリカで開発された濃硫酸やアンモニアなどを組み合わせた強酸・強アルカリ薬液を使うRCA洗浄法が用いられている。ただ、薬品処理に大量の超純水が必要で、例えば直径約20cmのウエハー(単結晶板)1枚を仕上げるには約8トンの超純水が消費される。また、100℃前後の高温洗浄工程が含まれるため、空調や排ガス処理にかかるエネルギーコストも膨大であった。
 開発した方法は、フッ酸に過酸化水素水や界面活性剤を加えた洗浄液を作り、超音波とフッ酸に耐えられる金属容器中に入れ、特殊な水槽を用いて950kHzの高周波超音波で洗浄する。これによって、超純水で薬品を洗い流す工程が5分の1に、1回の洗浄に必要な超純水量が3分の1に減った。さらに全工程が室温で行えるようになった。
 1994年7月から20社と協力してプラント装置の開発を進めており、早ければ1995年中にも実用化できる見込み。

◎ウイルス進化論(1992年5月1日、読売新聞)
 ダーウィン進化論は、社会進化論や科学的進化論として疑わしいものとして考えられはじめている。ウイルス進化説を簡単に言うと「進化は、ウイルスによる伝染病」ということになる。進化は生物の遺伝子が変化しなくてはならない。これまでの進化論は、遺伝子は親から子へという垂直方向にしか移動しないと考えられてきたために、複雑な推論を必要としてきた。しかし進化を引き起こす原因として、ウイルスが種をこえて運ぶ遺伝子が生物の遺伝子に影響を与えるという事実を認めれば、単純に理解ができる。
 ダーウィン進化論で説明できないことのひとつに、キリンの首がある。キリンの化石は、首の長いものと、首の短いものしかなく、中間的な化石は発見されていない。ダーウィンの説では、中間的な化石が存在しなくてはならない。しかし、現在まで発見されていない。ウイルス進化説では、キリンはある時に首が長くなるウイルス性の伝染病になったと考えるため、中間的な化石は存在しなくてもよい。
 人間の遺伝子の中に潜んでいるウイルスを発見すれば、ウイルス進化説の正しさが証明されるし、見つからなければ否定される。このことは、ウイルス進化説が検証可能な仮説であり、検証不能の自然淘汰に頼るダーウィンの説よりはるかに科学的仮説としての価値が高い。

◎水素ガス第3の発生法(1990年12月4日、読売新聞)
 北里大学衛生学部微生物教室が、次世代のエネルギーといわれる水素ガスを澱粉から効率よく発生させる細菌を発見、1991年3月、大阪府で開かれる日本細菌学会で発表する。
 水素ガスの発生方法には天然ガスを熱で分解する方法と、水を電気分解によって抽出する二つがあるが、今回の第三の方法は、環境を全く汚染しないバイオテクノロジーの成果で、世界で初めてという。田口教授は、家などに巣くう白蟻の体内に、大量の水素ガスを発生させる「クロストリジウム・ベイヤーリンキー」(CB)という細菌がいることを突き止めて実験を続けてきた。1Lの水と10gの澱粉にCBをいれ、繁殖を促進させるため酵母やアミノ酸を加えて二時間たつと気泡上の水素ガスが発生。5、6時間でピークに達し、1時間に600mL、12時間の総計は、3145mLになった。この方法だと、澱粉を炭素と酸素、水素に分解できるため、醸造工場などでやっかいな、澱粉廃棄物を分解、浄化できるとして環境汚染の防止面からも役立つという。





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