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更新日:
 2011年5月10日






◎最も遠い「銀河」発見、132億光年先、ハッブル望遠鏡(2011年1月27日、朝日新聞)
 地球から「ろ(炉)座」の方向に約132億光年も離れた所にある銀河とみられる天体が、欧米のハッブル宇宙望遠鏡で観測された。これまでに観測された最も遠い銀河より約1億5000万光年遠く、記録を更新した。観測成果は27日付の英科学誌ネイチャーで発表された。
 米航空宇宙局(NASA)によると、宇宙は約137億年前にビッグバンで誕生したとみられ、初期の宇宙では星が予想以上に速いペースで増えたことが分かった。この「銀河」のサイズは小さく、地球がある銀河系(天の川銀河)の約100分の1という。
 宇宙で最初の星や銀河を発見することは、天文学の最大テーマの一つ。NASAはハッブルの後継となるジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を開発しているほか、日本の国立天文台を含む国際研究グループは次世代超大型望遠鏡「TMT」をハワイ・マウナケア山に建設する計画を検討している。

◎ブラックホール:「草食系」登場、ガスを少しずつ吸収(2010年9月22日、毎日新聞)
 あらゆる物質をのみ込むブラックホールの中で、吸い込むスピードが極端に遅いタイプが存在することを、理化学研究所などの研究グループが初めて確認した。ブラックホールは周囲の天体のガスを吸収する際に光るが、数日〜10日間で吸収と光がピークに達する通常のブラックホールを「肉食系」とすれば、こちらは3カ月かけてゆっくり吸収する、食の細い「草食系」だ。金沢市で22日始まった日本天文学会で同日午後、発表する。
 ブラックホールは太陽の3倍以上の質量を持つ恒星が爆発後、重力崩壊を起こし、中心部に収縮したもの。強力な重力で光までのみ込む。単体での観測は困難だが、複数の恒星からなる「連星系」の中で生まれた場合、周囲の天体のガスを吸い込む際に生じる爆発現象「アウトバースト」の光が観測できる。
 研究グループは昨年10月、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」に設置したX線監視装置を使い、いて(射手)座にアウトバーストを確認。継続観測し、ブラックホールの存在が分かった。ゆっくり明るさが増し、変化のない時期を2回経て、最高光度に到達したのは今年1月だった。
 光度が段階的に変化する原因などは不明。ガスを吸収し光が増すペースが従来のものより遅く、同研究所の三原建弘先任研究員は「従来の理論で説明できない新種。こんなマイペースなブラックホールは初めて」と話している。

◎宇宙:96億光年離れた銀河団発見、東大や京大のチーム(2010年5月10日、毎日新聞)
 東京大と京都大などの国際研究チームは10日、米ハワイ島のすばる望遠鏡と欧州の天文衛星の観測データから、これまでで最も遠い、地球から96億光年離れた銀河団を発見したと発表した。これまで観測された最も遠いものは92億光年だった。
 チームはまず、すばる望遠鏡の観測で、くじら座の方角に遠い銀河団候補があるのを発見。同じ領域を観測した欧州宇宙機関のエックス線天文衛星「ニュートン」のデータで銀河団であることを確かめた。さらに、個々の銀河をすばるの近赤外線装置で観測した結果、96億光年かなたにあることが分かったという。
 昨年、イタリアの研究者が102億光年かなたの銀河団を発見したと発表しているが、東京大などは、この発表は可視光などの画像だけで判断したもので、正確な距離を測っていないとしている。
 研究チームの田中賢幸・東京大特任研究員によると、宇宙では青く見える銀河の多くは単独で存在し、赤く見える銀河は銀河団に含まれることが多い。赤い銀河では、新しい星が生まれて銀河が成長する活動は止まっているという。
 今回発見された銀河団には赤い銀河が多いことから、観測した光が銀河から放たれた96億年前には、既に銀河の成長が止まっていたとみられる。
 田中氏は「137億年前の宇宙誕生後、いつ、どのように銀河の成長が止まったのか調べるため、もっと遠い銀河団を探したい」と話している。

◎「暗黒物質」らしき粒子、観測、米の研究チーム発表(2009年12月18日、朝日新聞)
 宇宙の「物質」の4分の1を占めるとされるが、正体不明の「暗黒物質」らしい粒子が地上で観測された。最終確認には時間がかかりそうだが、宇宙の謎に迫る大発見につながる可能性がある。米ミネソタ大などの研究チームが17日、発表した。
 暗黒物質は、光を出したり反射したりしないが質量は持つ謎の物質で、1980年代に銀河回転の観測から存在が仮定されてきた。
 理論などによると、宇宙の構成要素のうち、我々の世界を作っていると考えられている素粒子は数%に過ぎず、7割強を未知の「暗黒エネルギー」が、2割強を暗黒物質が占めている。
 観測は難しいが、まれに通常の物質に衝突する可能性があり、研究チームはそうした現象を探すため、ミネソタ州北部の地下約700メートルにある施設CDMS2に検出装置を設置した。
 発表によると、2007〜08年、暗黒物質の粒子が装置の中のゲルマニウム原子核に衝突して起こしたらしいわずかな温度上昇が2件観測された。ただ、似た別の現象を誤ってとらえた可能性もあり、チームは「発見したとまではいえない」としている。
 「間違いなく見つかった」と判断されるには5件以上の現象の検出が必要とされ、チームは今後、検出装置の改良などを行う。
 暗黒物質は07年、50億光年離れた銀河団に存在している様子が観測されている。地上での検出には、東京大が岐阜県・神岡鉱山に探索施設「X(エックス)MASS(マス)」を建設しているほか、欧州の世界最強・最大加速器LHCのチームも、人工的に作ることを目指している。

◎世界初!自転と逆向きに公転する惑星を発見(2009年11月5日、読売新聞)
 中心の恒星が自転する向きと逆方向に公転している惑星が、世界で初めてみつかった。国立天文台やマサチューセッツ工科大学などのグループが4日、発表した。
 国立天文台のすばる望遠鏡による観測成果で、惑星系の進化を考えるうえで重要な手がかりになるという。
 発見された逆行惑星は、はくちょう座の方向に地球から約1000光年離れた恒星の周囲を回っている「HAT―P―7B」。恒星の前を横切る惑星の動きを詳細に観測して逆行がわかった。この惑星は木星の1.8倍もの重さがあり、恒星のごく近くをわずか2.2日で1周していた。
 惑星は、円盤状に分布したちりやガスが中心の恒星と一緒に回転しながら誕生したと考えられている。したがって、惑星は恒星の自転と同方向に周回するのが標準的とされており、太陽と太陽系の8惑星の関係もそうなっている。
 しかし、惑星系が進化する過程では、巨大な惑星同士が互いにはじき合うことなどにより、逆行惑星が誕生することもあるはずだとみられていた。このため、世界中で逆行惑星を探していた。
 国立天文台の成田憲保・日本学術振興会特別研究員は「惑星進化の仮説を裏付けるためにも、逆行惑星の誕生に影響したと考えられる巨大惑星などをみつけたい」と話している。

◎130億年前“最古”の星とらえた! NASAの天文衛星(2009年5月1日、読売新聞)
 米航空宇宙局(NASA)は、これまでで最古となる約130億年前の星を天文衛星スイフトで観測した。
 137億年とされる宇宙の歴史の中で、ごく初期の星だ。最初の星はいつ出来たのか、その謎に迫る成果という。
 観測されたのは、巨大質量の星が生涯の最後に爆発する時に放出するガンマ線。これまでに観測された最古の天体は、ハワイにある日本の「すばる望遠鏡」がとらえた約129億年前の銀河だった。

◎宇宙のダイヤモンド、生成の仕組み解明、国立天文台など(2009年4月15日、日本経済新聞)
 国立天文台などの研究チームは、誕生後300万年までの若い星の周りで微小なダイヤモンドができる仕組みの一端を解明した。ほぼ真空状態の宇宙でダイヤモンドをつくるには、強いエックス線や熱放射など複数の条件が整う必要があるという。米ハワイにある日本の大型望遠鏡「すばる」で観測して突き止めた。
 宇宙のダイヤモンドはこれまで、おうし座の方角にある「イライアス1」など若い星の周りから発見されていた。ダイヤモンドは地球では地下深くの高圧環境でできるため、圧力の低い宇宙空間でつくられる仕組みは分かっていなかった。
 すばるで、イライアス1の周辺の物質分布を高解像度に調べた。ダイヤモンドは星から30天文単位(1天文単位は地球と太陽の距離)程度までの近距離に多く存在することが分かった。それより外側では炭素は別の分子構造になっていた。

◎米ロの通信衛星が衝突、シベリア上空、「宇宙ごみ」大量発生(2009年2月12日、日本経済新聞)
 米国の商業通信衛星とロシアの通信衛星が10日、シベリア上空の約780キロメートル付近で衝突したことが11日、明らかになった。米航空宇宙局(NASA)や米軍の話として、米メディアが同日、一斉に伝えた。ロイター通信が伝えた米軍当局者の話によれば、軌道上での衛星の衝突は初めて。
 米国側の衛星は衛星携帯電話サービスを手がける米イリジウム・サテライトが1997年に打ち上げた。ロシア側の衛星は通信中継を目的として93年に打ち上げたもので、現在は使用していない。いずれも重さ450キロ以上の大きな衛星で、衝突による「宇宙ごみ」が大量に出ている。
 専門家によると国際宇宙ステーションなどへの影響は考えにくいという。ロイター通信などによると、イリジウムは多くの衛星を併用しており、同社は大きな影響が生じていないと説明しているという。

◎米ロの衛星同士が衝突、初の「宇宙交通事故」か(2009年2月12日、朝日新聞)
 米主要メディアは11日、米国の衛星携帯電話システム「イリジウム」の衛星と、機能停止したロシアの通信衛星が衝突し、宇宙ごみ(デブリ)がまき散らされたと一斉に報じた。微小なデブリと衛星の衝突は過去にあるが、衛星同士がぶつかる宇宙の「交通事故」は初めてとみられる。
 CBSテレビ(電子版)によると、衝突は米東部時間10日正午(日本時間11日午前2時)ごろ、北シベリア上空約790キロで起きた。両衛星とも破壊され、約600のデブリとなって漂っているという。ロシアの衛星は93年に打ち上げられた「コスモス2251号」で、10年ほど前から機能停止していたらしい。
 報道によると、米軍は衛星のほか10センチを超えるデブリの軌道を監視しており、国際宇宙ステーション(ISS)など有人の宇宙船に接近していないかどうか調べている。
 ISSの高度は約400キロと低いため、今回の衝突の直接の影響は考えにくい。デブリの高度が下がってくると、影響を受ける可能性もあるが、ISSや米スペースシャトルのような有人宇宙船は軌道を変える装置を備えているため、監視網でとらえたデブリなら回避できる。
 イリジウムは衛星を利用して世界中どこでも携帯電話が使えるサービスで、予備を含め約80個の衛星が高度約800キロの軌道を回っている。米イリジウム社は、今回の衝突で「携帯電話通信への影響はほぼない」としている。
 デブリ問題は近年深刻化しており、一昨年、中国が衛星破壊実験をしたときは「デブリが多数発生する」と国際的に非難された。米航空宇宙局(NASA)によると、10センチを超えるデブリは現在約1万2千個が確認されている。

◎土星の台風は六角形、探査機カッシーニが撮影(2008年10月16日、朝日新聞)
 米航空宇宙局(NASA)は13日、土星の両極にある台風の赤外線映像を公開した。土星を周回する探査機カッシーニが撮影した。台風の雲が鮮明にとらえられ、北極にある台風には、地球二つ分ほどの大きさの六角形の構造があることがよくわかる。
 両極の映像は6月中旬、雲の上空約60万〜65万キロから撮影された。北極にある六角形は半径が約1万2千キロ。時速500キロにも達する速さで動く雲は、水硫化アンモニウムと呼ばれる物質だと考えられている。
土星の台風。北極にあるもの(左)は六角形の構造を持つが、南極にあるもの(右)はそうした構造がない=6月中旬撮影、米航空宇宙局、アリゾナ大など提供
 六角形構造は1980〜81年に土星に接近したNASAのボイジャー1号、2号の観測で見つかった。
 研究チームのケビン・ベインズ博士によると、六角形構造は地球の台風でも見られるが、せいぜい数日間しか続かない。28年間もこの構造が安定して存在するのは土星の北極以外では知られておらず、理由はわかっていない。土星の北極にあるのに南極にない理由もわかっていない。

◎火星に水、米探査機が地中から検出、地球外生命探査は新段階へ(2008年8月1日、読売新聞)
 【ヒューストン(米テキサス州)=増満浩志】火星の北極付近に着陸した米探査機フェニックス・マーズ・ランダーが、地中から氷を掘り出して、水を検出することに成功した。
 米航空宇宙局(NASA)とアリゾナ大が31日、発表した。
 火星の極域には水が大量に存在することが、様々なデータから信じられてきたが、直接確認したのは初めて。生命にとって不可欠な物質が確認されたことで、地球外生命の探査は、新たな段階へと踏み出す。
 フェニックスはロボットアームで地面を掘り、深さ約5センチの層から土壌を採取。それを装置に入れて加熱し、蒸発するガスを分析した。水の融点であるセ氏0度に達したところで温度上昇が鈍くなり、水分子の放出が確認された。

◎NASA:衛星タイタンに液体、地球以外で初確認(2008年7月31日、毎日新聞)
 【ワシントン草野和彦】米航空宇宙局(NASA)は30日、無人探査機「カッシーニ」による観測の結果、土星最大の衛星タイタンの湖と見られてきた地形に、液体(液化炭化水素)が存在することが確認されたと発表した。地球以外の天体で液体が現存することが確認されたのは初めて。31日付の英科学誌ネイチャーに掲載された。
 液体が確認されたのは、タイタンの南極付近の湖。広さは北米大陸のオンタリオ湖(約2万平方キロ)よりやや広い。カッシーニが昨年12月、タイタンに接近した際の赤外線による観測データを解析した結果、炭化水素が液体の状態で存在し、少なくともエタンが含まれることが分かった。
 これまでの観測で、タイタンでは湖のような画像が複数撮影され、周囲に比べて暗く、表面が滑らかであることから液体が存在する可能性が高いと見られていた。
 タイタンは太陽系で唯一、大気がある衛星で、窒素とメタンで構成されている。タイタンは大気や地表の組成が太古の地球に似ていると言われ、地表温度は氷点下約150度という。

・宇宙航空研究開発機構の今村剛・准教授(惑星大気科学)の話
 地球では水という液体による物質循環が、河川や海、陸上などの地形を作り出した。それだけでなくエネルギーを惑星全体に行き渡らせ、鉱物や生命を誕生させる重要な役割を果たした。水とは違うとはいえ、地球以外に液体が確認されたということは、地球のような物質循環が起こっているということであり、大変興味深い。

◎年4000個の星生む「モンスター銀河」発見(2008年7月11日、朝日新聞)
 123億光年かなたに、私たちの天の川銀河と比べて数百倍の速さで次々と星を生み出す「モンスター銀河」があることを、愛媛大学や米カリフォルニア工科大学などのチームが見つけ、天体物理学ジャーナル誌に11日発表する。
 モンスター銀河は活発に星を生み出し、「星々の生成工場」とも呼ばれる。ハワイにある国立天文台すばる望遠鏡と米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡がろくぶんぎ座方向にモンスター銀河を発見。NASAのスピッツァー宇宙望遠鏡などで詳しく観測、計算した。
 その結果、年に約4千個の星が作り出されていることがわかった。年に10個程度の星が生まれる天の川銀河に比べて数百倍のハイスピードだ。約5千万年後には、天の川銀河より大きな銀河に育つと推定された。
 今まで知られていた最も遠いモンスター銀河は約110億光年だったが、今回は123億光年。宇宙の年齢は137億年とされるので、宇宙誕生の14億年後にはすでに生まれていたことになる。小さな赤ちゃん銀河が徐々に合体しながら、大きな銀河に成長したという従来の銀河形成理論と相反する発見になった。
 愛媛大学の谷口義明・宇宙進化研究センター長は「宇宙が生まれて、こんなに早い段階でモンスター銀河ができていたとは思わなかった。暗黒物質やガスの密度には場所ごとに差があり必ずしも均一ではないので、こういうこともありうるのだろう。銀河形成理論の試金石となるような発見と思う」と話している。(久保田裕)

◎冥王星型天体:惑星から除外した冥王星などに新名称(2008年6月12日、毎日新聞)
 国際天文学連合(IAU)は11日、惑星から除外した冥王星(プルート)をはじめ、海王星の外側にあって、惑星の基準を満たさない天体の正式名称を「冥王星型天体」(プルートイド)とすると発表した。ノルウェー・オスロで開いた執行委員会で決定した。
 これまでは惑星より小さく、冥王星に似た天体はすべて準惑星に分類していた。今回の新名称の対象となるのは現在のところ冥王星と、その外側でやや大きい「エリス」だが、今後さらに増える可能性があるとしている。
 準惑星「セレス」は火星と木星の間の小惑星帯にあるため、冥王星型天体には含まれなかった。
 IAUは、大きさが冥王星に近い天体の発見が相次いだことを受け、06年の総会で惑星を「太陽の周りを回り、質量が大きくほぼ球形で、軌道付近にほかの天体がない天体」と定義。冥王星を惑星から除外し、代わりに「dwarf planet」と名付けた。当初は日本語で「矮(わい)惑星」と訳されていたが、一般的でないなどとして日本学術会議が「準惑星」という名称に変更していた。

◎太陽系に第9惑星? 理論予測、海王星の外側に氷の天体(2008年2月28日、産経新聞)
 太陽系の8つの惑星のはるか外側に、「未知の惑星」が存在する可能性が高いとする理論予測を、神戸大学大学院理学研究科のパトリック・リカフィカ特別研究員と向井正教授が27日、発表した。理論とコンピューターシミュレーションから導かれた科学的な“予言”で、「10年以内に発見される可能性がある」という。米天文学専門誌「アストロノミカル・ジャーナル」(4月号)に論文が掲載される予定。
 「未知の惑星」は、質量が地球の0.3〜0.7倍で、水を主成分とする氷の天体だと考えられる。最も太陽に近づいたときの距離は80天文単位(1天文単位は地球−太陽の距離、約1億5000万キロ)。太陽からの平均距離(軌道長半径)は100〜175天文単位で、海王星のはるか外側に大きな楕円(だえん)軌道を描いているとみられる。水星や火星よりも重く、国際天文学連合が一昨年採択した「惑星」の定義を満たす可能性が高いとみられる。
 リカフィカ研究員(ブラジル)らは、海王星の外側でこれまでに発見された1100個を超す天体の軌道のゆがみや傾きに着目。「惑星クラスの天体が外側に存在し、太陽系外縁天体の軌道に影響を及ぼした」との仮説を立て、40億年にわたる軌道進化をシミュレーションにより検証した結果、現在観測されている太陽系外縁天体の特徴が、精度よく自然に説明できたという。
 これまでにも、海王星の外側に惑星クラスの天体を想定する研究者はいたが、今回は理論モデルに基づく緻密(ちみつ)なシミュレーションを行い、観測結果とも非常によく合致していることから、渡部潤一・国立天文台准教授は「格段に精度の高い理論予測」と評価している。
 この天体が太陽に近づいた位置にあれば、14.8〜17.3等の明るさになるはずで、米国などで計画が進む大規模サーベイ(探索)による発見が期待できるという。

◎海王星外側に第9番惑星の可能性、神戸大が理論予測(2008年2月28日、読売新聞)
 太陽系9番目となる未知の惑星が海王星の外側に存在する可能性が高いことを、神戸大のパトリック・S・リカフィカ研究員と向井正教授が、詳細な理論計算で世界で初めて突き止めた。
 今後、観測体制が整えば、10年以内にも発見されそうだという。この成果は、4月発行の米天文学専門誌「アストロノミカル・ジャーナル」に発表される。
 太陽系の縁では、「太陽系外縁天体」と呼ばれる1100個以上の小天体が、海王星軌道の外側を回っている。その多くは、8惑星と同じようなほぼ円形の軌道をとるが、なかにはそれと大きくずれている天体もあり、なぜそのような変則的な軌道を持つのかが大きななぞとして残されていた。
 リカフィカ研究員らは、太陽系ができ始めて間もない40億年前から現在までの惑星や太陽系外縁天体の軌道の変化を、最も有力な太陽系形成理論にもとづいてコンピューターで計算した。その結果、水星から海王星までの8惑星では変則的な外縁天体の軌道を説明できず、新たな「惑星X」を仮想的に加えて計算することで初めて、それが可能になることがわかった。これが、惑星Xが存在することの理論的な証拠になるという。
 リカフィカ研究員らによると、突き止められた惑星Xは海王星の外側にあり、長半径が150億〜260億キロ・メートルの楕円(だえん)軌道を回っている。重さは地球の3〜7割で、この領域に多い氷と岩石でできた天体だと仮定すると、直径は、地球の約1万2700キロ・メートルに匹敵する1万〜1万6000キロ・メートルになるという。
 惑星Xが太陽に最も近づく120億キロ・メートルの地点では、2006年に惑星から除外された冥王(めいおう)星と同じくらいの14.8〜17.3等の明るさで見えるはずだが、他の惑星が回る平面と20〜40度の傾きを持つため、見つからなかったらしい。

◎太陽系に「惑星X」の可能性、神戸大など計算(2008年2月28日、朝日新聞)
 太陽系の外縁に、地球とほぼ同じ大きさの「惑星X」が存在する可能性を、日本の研究グループが数値計算で明らかにした。約1000年かけて太陽の周りを公転しているという。太陽系の惑星は、06年に冥王星が準惑星に降格され、現在は8個だが、惑星Xが観測で見つかれば、冥王星に代わる第9惑星になる可能性が高い。米天文学会誌「アストロノミカルジャーナル」の4月号に発表する。
 太陽系の外縁部には、エッジワース・カイパーベルトと呼ばれる氷の小天体群でできた帯がある。この小天体群は、太陽から50天文単位(1天文単位は地球と太陽の平均距離=約1億5000万キロ)を超えるとまばらになり、軌道が細長い楕円(だえん)形にゆがむが、その理由の説明がつかなかった。
 神戸大学惑星科学研究センターの向井正教授とパトリック・リカフィカ特別研究員は、惑星Xが帯の外側にあった小天体をはじきとばし、重力で軌道をゆがめていると仮定。コンピューターで数値計算した結果、太陽から20天文単位ほど離れたところで生まれた惑星Xが、太陽系形成初期の約1億年で80〜175天文単位離れた軌道上に移動したと考えると、つじつまが合ったという。
 計算では、惑星Xの大きさは直径が1万〜1万6000キロで、約1万2800キロの地球とほぼ同じ。氷状のメタン、アンモニア、水などと岩石からなり、地球の3〜7割の質量(重さ)を持つ。太陽に最も近づくと14.8〜17.3等星と冥王星なみの明るさになるとみている。

◎ブラックホール:内部、超弦理論で解明、高エネ研、スパコン使い再現(2008年1月20日、毎日新聞)
 究極の理論とされる「超弦理論」に基づくブラックホール内部を、高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)などの研究チームがシミュレーションで再現し、英国のホーキング博士の理論に一致することを確かめた。謎の多いブラックホール研究を進展させると共に、極めて困難な超弦理論の証明にスーパーコンピューターのシミュレーションが有効であることを初めて示した点でも注目されそうだ。
 ブラックホールは、質量が大きな星の進化の最終段階などで作られる天体。重力が極めて強いため、光さえも抜け出せないと考えられていた。これに対し、ホーキング博士は74年、真空中でも粒子と反粒子が対になって生成と消滅を繰り返す量子効果と、アインシュタインの一般相対性理論を組み合わせ、外から見るとブラックホールから熱的な放射が生じているようになるとする理論を提案。ブラックホールは最終的には「蒸発」すると主張し、大きく注目された。しかし、ブラックホールの中心付近は一般相対性理論を適用できず、どのような状態かは謎だった。

◇宇宙の起源、解き明かせるか
 超弦理論によると、ブラックホールの内部は強い重力のため、素粒子を表す「弦」が中心に凝縮。中心に両端を持つ多数の弦が揺らいだ状態になっていると予測される。
 そこで研究チームは、同機構のスーパーコンピューターを使ってこの予測を検証した。「弦」の振動を周波数に応じて効率よく計算する新しい手法で計算した結果、ホーキング博士が示した理論と一致することが分かった。
 研究責任者の西村淳同機構素粒子原子核研究所准教授(素粒子物理学)は「ブラックホールの性質が超弦理論で理解できたということは、ほとんど明らかでなかった超弦理論の実在を示す有力な証拠になる。今後もこの理論に基づく計算機シミュレーションによって、宇宙の起源や素粒子の性質などを解明したい」と話している。
 米科学誌「フィジカル・レビュー・レターズ」(電子版)に15日掲載された。【河内敏康】

◇超弦理論
 すべての素粒子は「粒」ではなく、一次元的な広がりを持った極めて微小な「弦」として考える理論。「超ひも理論」とも呼ばれる。弦の振動の仕方などによってさまざまな素粒子を表すことができる。
 素粒子の間に働く基本的な相互作用には、電磁気力、弱い相互作用、強い相互作用、重力の4種類がある。重力以外の三つを記述する理論はあるが、重力まで含めた究極の理論はこれまでなかった。超弦理論では、重力を伝える素粒子「重力子」も含むため、四つの相互作用を統一して考えることが可能な理論として期待されている。しかし、弦の間に働く相互作用が強いため、具体的な計算が非常に難しく、実証された例はほとんどない。

◎鉄粒子:宇宙空間に存在観測、100億年前に爆発(2007年9月26日、毎日新聞)
 銀河の集団から遠く離れた宇宙空間に鉄の粒子が存在することを、藤田裕・大阪大大学院准教授らの研究グループが、日本のX線天文衛星「すざく」を使った観測で発見した。約100億年前に多数の超新星が一斉に爆発する「スターバースト」が起き、宇宙空間に重元素がばらまかれたことを意味するという。誕生直後の宇宙には水素などの軽い元素しか存在せず、鉄のような重い元素は星の内部で生成され、超新星爆発で広がったとされるが、時期は不明だった。26日始まる日本天文学会で発表される。
 藤田准教授らは、地球から約10億光年の距離にある「エイベル401」と呼ばれる銀河団から約500万光年離れた、ほとんど何もない宇宙空間を観測。ここから放射されるX線を分析した結果、鉄が存在することが分かった。超新星爆発でできた鉄がこの空間に到達するのにかかる時間や、爆発の規模を計算したところ、約100億年前に多数の超新星が一斉に爆発したと考えられることも判明した。
 銀河が集まって銀河団ができると、その中で超新星爆発が起きても、周囲に鉄などの元素がばらまかれにくい。藤田准教授は「約100億年前には銀河団ができていなかった。若い銀河から重元素を含むガスが次々に噴き出していたのだろう」と話している。【須田桃子】

◎「ブラックホールは存在しない」米物理学者らが新説(2007年6月21日、読売新聞)
 巨大な重力であらゆる物質をのみ込むとされる宇宙の「ブラックホール」について、米オハイオ州の名門ケース・ウエスタン・リザーブ大の物理学者らが「存在しない」という新説をまとめた。
 近く物理学の一流専門誌「フィジカル・レビューD」に掲載される。
 従来の理論では、ブラックホールは非常に重い星が自らの重力で小さくつぶれることによってできる。ブラックホールに近づくと、次第に重力が強くなり、どんな物質も外へ脱出できなくなる境界面がある。ただ、境界面から物質が逃げ出すように見える現象が起き、ブラックホールが“蒸発”する可能性もあるとされていた。
 新説は、新たな計算により、物質の流出が星がつぶれていく途中にも活発に起きるため、ブラックホールになり切れないと主張している。それでも複雑な効果により、外から観測した場合はブラックホールがあるように見えるという。

◎惑星:水、金、土星が西空に並ぶ、全国で観測可能(2007年5月31日、毎日新聞)
 水星、金星、土星の3惑星が日没後の西空に並んで輝く様子を、6月上旬にかけて全国で見ることができる。最も太陽に近い水星を見るチャンスは少なく、国立天文台によると、水星と金星が夕方に好条件で見られるのは5年ぶりだという。
 水星は太陽の近くを回っているため、限られた期間の日没後か日の出前の低空に、わずかな時間しか見えない。地動説を唱えた天文学者のコペルニクスも生涯、見たことがなかったという逸話も残るという。
 現在、日没直後の西空では、金星が「宵の明星」としてひときわ明るく輝いている。水星は、金星と太陽を結んだ線上の低空に0.4等級の明るさで見える。さらに、金星より高い位置には土星が、水星と同じくらいの明るさで並んでいる。
 同天文台は「西の空が開けている場所なら、一般の人でも肉眼で水星を見つけられるはず。この機会にぜひ見てほしい」と呼びかけている。【西川拓】

◎宇宙:「暗黒物質」分布図作製に成功、日米欧の共同チーム(2007年1月8日、毎日新聞)
 宇宙空間に膨大に存在するとされる正体不明の物質「暗黒物質(ダークマター)」の分布図作製に、日米欧の共同研究チームが初めて成功した。暗黒物質の分布と銀河の分布は、ほぼ一致していた。星のもとになるガスやちりが暗黒物質に引き寄せられて銀河が形成された、とする現在の理論を観測で初めて裏付ける成果として、7日付の英科学誌「ネイチャー」電子版に発表した。
 暗黒物質は宇宙の全質量の2割以上を占めるが、光や電波を出さないため、直接観測することができない。このため、研究チームは、暗黒物質の重力で周囲の空間がゆがみ、背後からやってくる光もゆがんで見える「重力レンズ効果」を活用して間接的に観測した。
 米ハッブル宇宙望遠鏡と国立天文台のすばる望遠鏡(米ハワイ島)で、六分儀座の方向にある10億〜80億光年先の銀河約50万個を観測。その姿のゆがみ具合から、暗黒物質による重力レンズ効果を逆算して暗黒物質の分布状況を割り出し、三次元画像化した。
 宇宙空間での暗黒物質の分布は不均一で、暗黒物質が集まっている部分に銀河も集中していることも確認できた。
 暗黒物質がちりやガスを引き寄せて銀河をはぐくむ母体となり、宇宙の大規模構造ができたとする理論と一致しており、日本側研究代表者の谷口義明・愛媛大教授は「仮説だった宇宙形成論を裏付けられた。観測精度を上げ、より細かい構造を明らかにしたい」と話している。【山田大輔】

◎暗黒物質の分布、銀河そっくり、誕生と進化裏付け(2007年1月8日、朝日新聞)
 宇宙に満ちる正体不明の「暗黒物質(ダークマター)」の分布図の作製に、愛媛大など日米欧の研究チームが成功した。ダークマターの存在は知られていたが、分布を突き止めたのは初めてで、銀河とよく似た分布が確認された。ダークマターが銀河の誕生と成長を促したという現在の宇宙論を裏付ける成果だ。7日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表する。
 ダークマターは宇宙の質量の4分の1近くを占めながら、光や電波を出さないために観測できない未知の物質。ダークマターによって、宇宙のちりやガスが集まって星や銀河が誕生したと考えられている。
 研究チームは、ダークマターの重力によって、その背後にある銀河の形がゆがんで見える「重力レンズ効果」に着目。米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡や米ハワイにある国立天文台のすばる望遠鏡で、50万個の銀河のゆがみ方を観測、80億光年先までのダークマターの3次元分布図を描いた。
 その結果、ダークマターが集まる空間には銀河も集中していることが確認された。現在の宇宙論では、ダークマターの密度の濃淡によって銀河が密集したり、ほとんどなかったりという宇宙の大規模構造が形作られたとされている。研究チームの谷口義明・愛媛大教授は「ダークマターが集まる空間で銀河が誕生し、進化していったという現在の理論が観測によって検証された」という。今後はさらに遠方の宇宙の観測を進める方針だ。

◎超巨大銀河:分子ガス30倍、続々新星誕生か(2006年12月25日、毎日新聞)
 地球から約88億光年離れた銀河に、星の材料となる分子ガスが我々の銀河系の約30倍もあることを、国立天文台の伊王野大介研究員と東京大大学院生の田村陽一さんらが発見した。宇宙全体でも最大級の超巨大銀河で、銀河系の1000倍以上の速さで新しい星々を生んでいるとみられる。25日発行の日本天文学会欧文誌に掲載される。
 この銀河はうしかい座の方角にある。同天文台野辺山宇宙電波観測所(長野県南牧村)の電波干渉計で今年1〜2月に観測した。銀河系より約10倍高密度で、平均温度も約40度高く、星の誕生が活発なことを裏付けた。
 こうした巨大銀河は初期宇宙には多数あったとされるが、今回の発見は、誕生から約50億年後の宇宙にも星の誕生が活発な巨大銀河が存在したことを示しており、川辺良平・同天文台教授は「宇宙にある多様な銀河の形成史を知る好材料だ」と話す。【山田大輔】

◎原始太陽系物質「大規模混合」 NASAが彗星ちり分析(2006年12月15日、朝日新聞)
 太陽系ができた当時、太陽に近い高温部でつくられた鉱物が、温度の低い外縁部まで運ばれる「物質の大規模な混合」が起きていたらしいことを、米航空宇宙局(NASA)などのグループが突き止めた。NASAの無人探査機「スターダスト」が今年1月、地球に持ち帰った彗星(すいせい)のちりの成分から推定した。15日付の米科学誌サイエンスに発表する。
 スターダストは04年1月、地球から約3億9000万キロ離れた場所でビルト2彗星が噴出するちりを採取。今年1月15日、ちりがつまったカプセルを持ち帰った。
 計画主任科学者のドナルド・ブラウンリー米ワシントン大教授らのグループが、数千個のちりの分析を進めている。その結果、多くに高温下でできる鉱物の「かんらん石」や「輝石」が含まれていることがわかった。
 また、このうち少なくとも1個は、1100度以上の高温下で生成されたことも突き止めた。水星の内側、太陽に極めて近い場所で生成されたことになるという。
 太陽系は約46億年前、ちりやガスが円盤のような形で回る原始太陽系星雲から形成されたとされる。この彗星は海王星より遠い太陽系の外縁部でつくられ、太陽系誕生当時の物質が含まれていると考えられている。
 こうした結果から、高温下でできた物質と、遠く離れた低温の場所でできた物質が混ぜ合わされるダイナミックな動きがあった、と結論づけた。

◎国際天文学連合:「第10惑星」を「エリス」と命名(2006年9月18日、毎日新聞)
 国際天文学連合(IAU)は14日、冥王星が惑星から降格されるきっかけとなった矮(わい)惑星(仮訳)「2003UB313」を、ギリシャ神話に登場する不和や争いの女神にちなんで「エリス」と命名したと発表した。
 エリスは、03年に米カリフォルニア工科大のマイケル・ブラウン教授らが発見、05年に冥王星より大きい太陽系の天体だと判明した。「第10惑星」と騒がれた一方、「冥王星は惑星か」の論争を招き、IAUが8月末の総会で冥王星を惑星から除外する定義を決めるきっかけとなった。
 エリスの名はブラウン教授が提案し、IAUが承認した。神話では、エリスは、英雄アキレスの両親の婚礼に招かれなかったことに怒り、女神たちの間に不和をもたらした。それが、トロイ戦争につながったとされる。
 エリスの衛星も、エリスの娘で混とんと争いの女神「デュスノミア」の名がつけられた。

◎冥王星外し、米惑星科学者団体が「改善」求める声明発表(2006年9月1日、朝日新聞)
 冥王星を太陽系の惑星から外した国際天文学連合(IAU)の定義について、米天文学会の惑星科学部会は「将来的に改善が熱望されている」とする声明(8月30日付)を発表した。冥王星の「発見国」の米国では、著名天文学者らが定義を拒否する署名をインターネット上で集めるなど、新定義への反発が表面化している。
 声明は、IAUの新定義決定の権限と、決定過程で同部会メンバーの意見が採り入れられたことを「理解している」としながら、定義にすべての点で「不明確な部分がある」と指摘。将来的に改善していくよう求めた。
 また声明は、定義は一般社会と科学者の双方が納得するものになるべきだ、との考えを提示。冥王星を惑星とした「現在の学校の教科書を捨てる必要はない」とした。
 IAUは8月24日、惑星を「水金地火木土天海」の8個とし、従来は第9惑星とされていた冥王星を「矮(わい)惑星」という新たな分類に振り分けることを決めた。冥王星は1930年、米天文学者のクライド・トンボーにより発見され、これまでは「米国人が見つけた唯一の惑星」という地位にあった。

◎「発見国」の米国に悲嘆の声、冥王星「降格」(2006年8月26日、朝日新聞)
 冥王星は惑星ではない――。長年続いた冥王星をめぐる論争に、24日の国際天文学連合(IAU)の決議が終止符を打ったことで、冥王星の「発見国」である米国には、「格下げ」への悲嘆の声がある。だが、今回の結論を冷静に受け止めようとする反応も強まっている。
 ワシントン・ポスト紙は25日付朝刊の1面トップ級の扱いで「惑星・冥王星は死んだ」「ある人々にとっては合理性が感傷に勝利した結果だが、他の人々に大きな失望をもたらした」と書いた。
 冥王星は惑星でなく、もっと小さな矮(わい)惑星だと位置づけられた。IAUの惑星定義委員会で座長を務めたハーバード大のオーウェン・ギンガリッチ教授(天文学、科学史)は、同紙上で「われわれはいま、矮惑星は惑星ではないという不合理さと直面している。小さい人は人ではないのか」と疑問を投げかけた。
 AP通信によると、1930年に米ローウェル天文台で冥王星を発見したクライド・トンボー(97年没)の妻パトリシアさんは、「私は傷ついてはいないが、動揺しています」と語った。
 トンボーは生前、冥王星を「降格」させる動きには反対していた。しかし、「彼は科学者だから、近くに同じような天体が見つかってきたことが問題だと、理解したでしょう。もちろん、落胆するに決まっていますが、今回は受け入れたに違いない」と話した。
 一時は「惑星」とする案も浮上した「第10惑星(2003UB313)」を発見した、カリフォルニア工科大のマイケル・ブラウン教授は大学のプレスリリースの中で「惑星になれず、もちろんがっかりした。しかし、冥王星がもし今日見つかったとしたら、絶対に惑星だとはみなされない。最初は受け入れられにくいが、決定は科学的にも文化的にも正しい。天文学にとって偉大な前進だ」とコメントした。

◎【主張】冥王星降板、第9惑星よ、さようなら(2006年8月26日、産経新聞)
 この約10日間、世界の人々の関心がチェコのプラハで開催された国際天文学連合総会に集まった。「惑星の定義」をめぐる白熱した議論が戦わされたからである。
 討議の核心は冥王星を惑星として認め続けるかどうかだった。
 冥王星の扱い次第で、これまでの9惑星から、12惑星に増えたり、8惑星に減ったりする。そういう可能性の幅がある議論だった。
 「水金地火木土天海冥」として親しんできた惑星の顔ぶれが変わるのだから、ニュースが地球を駆け巡ったのも当然だろう。
 最終日に会場で行われた採決の結果、冥王星は新たに定められた惑星の定義に当てはまらなくなって除外され、太陽系の惑星は8個となった。
 新惑星を仲間に迎える楽しみは消えたが、科学的には非常に明快な結論である。それを歓迎したい。
 冥王星が新惑星として、太陽系の果てで発見されたのは1930年のことだった。米国の天文台による、公転軌道の高度な計算と大型望遠鏡を駆使した科学技術の勝利だった。
 しかし、その後、技術のさらなる進歩で観測精度が向上すると、冥王星が非常に小さいことが判明した。公転面も傾いていて、他の惑星とは異質であることが明らかになってきた。
 そうした科学的事実を踏まえての総会だった。近年、太陽系には冥王星より大きな天体も見つかっていた。だから冥王星の扱いを含めて、惑星とはどんな天体のことなのか、その定義をはっきりさせる必要があったのだ。
 定義案は二転、三転したが、今回の活発な議論には意味があった。そのひとつは人々の天文学への関心を呼び覚ましたことである。惑星とは何かを多くの人が考えた。家庭や職場でも話題になったことだろう。
 天文学は基礎科学だ。特許や産業応用とは直結していない。「お金にならない」分野の研究は近年、片隅に追いやられがちだった。そうした天文学の成果を反映した話題が大きな反響を呼んだ。惑星科学が文化や歴史にしっかり根を下ろしている証しだろう。
 第9惑星として親しまれた冥王星は遠方にある他の小天体発見のきっかけにもなった。76年間の長きにわたって果たした役割は大きい。

◎[冥王星降格]「観測技術が変えた『惑星』像」(2006年8月26日、読売新聞、社説)
 「惑う星」と書く呼び名の通り、紆余(うよ)曲折の末、やっと「惑星」の定義が決まった。
 最大の焦点は、冥王(めいおう)星が惑星に残れるかどうかだった。チェコのプラハで開催された国際天文学連合(IAU)の総会は、冥王星を惑星から降格させる定義を採択した。
 これにより、太陽系の惑星は、「水金地火木土天海」の八つに減る。
 定義では、〈1〉太陽を周回し、〈2〉自らの重みで球状に固まり、〈3〉周回軌道の周辺に、衛星を除いて他の天体がない、ことが惑星の条件となる。
 冥王星の近くでは、同じような天体がいくつも見つかっていて、〈3〉の条件を満たさない。惑星とは別に設けられた天体の種類「矮小(わいしょう)惑星」に分類される。
 冥王星については、これまでも、惑星と呼んでいいかどうか論議があった。
 地球の衛星である月よりも小さい。周回軌道も、他の惑星と違って、大きく傾いている。惑星と呼ぶには、確かに、科学的に疑問があった。
 そうした問題があるのに、基本的な天体である「惑星」の定義はなかった。それを科学的に語れるほど、宇宙観測技術が進歩し、知見が蓄積されたということだろう。
 ただ、惑星は天文学者だけのものではない。今回の定義が一般の人に誤解されないよう、この分野の専門家は、きちんと説明し、理解を広めてほしい。
 冥王星は1930年、9番目の惑星として見つかった。米国人が発見した、ただ一つの“惑星”でもある。これまで惑星とされてきたのは、そうした米国内の愛着が理由の一つだった。
 IAUも当初、定義案に冥王星を含めていた。そのため、惑星の条件を広げる付帯事項があり、定義の内容が複雑なものになっていた。だが、これではいずれ惑星は50個以上になり、太陽系が惑星だらけになる、と反対された。
 科学の歴史を振り返れば、定義や原理の多くは、簡明で分かりやすい内容になっている例が多い。その方が結果的に応用範囲も広がる。
 天動説から地動説への転換は、その例だろう。惑星の軌道がすっきりと計算できるようになり、後に、万有引力の法則の発見につながった。
 米国では、決定を許した天文関連の博物館に抗議が殺到するなど、波紋が広がっている。日本でも、教科書をどう書き換えるか、博物館の展示をどう変えるかといった動きが相次いでいる。
 だが、これは好機だ。宇宙と太陽系に注目が集まった。理解が広がり、宇宙の研究が進む足がかりになるといい。

◎冥王星外し、惑星数8に、国際天文学連合が新定義(2006年8月25日、朝日新聞)
 チェコのプラハで総会を開いている国際天文学連合(IAU)は24日午後(日本時間同日夜)、惑星の新しい定義について採決し、太陽系の惑星を「水金地火木土天海」の8個として冥王星を惑星から外す案を賛成多数で可決した。冥王星は1930年の発見から76年で惑星の地位を失い、世界中の教科書が書き換えられることになった。
 総会に提示された四つの決議案の採決の結果、冥王星は、惑星とは別に新しく設けられた「矮(わい)惑星」というジャンルに入ることになった。冥王星を含む海王星以遠の天体を総称して「プルートニアン(冥王星族)天体」と呼ぶ決議案は、否決された。
 太陽系の惑星の定義は「太陽の周りを回り、十分重いため球状で、軌道近くに他の天体(衛星を除く)がない天体」とされた。
 これは、近くにあった天体のほとんどを吸収して、軌道上で圧倒的に大きな重さを占めるようになった天体を意味し、定義の脚注で「水金地火木土天海」の8個のみと明記された。
 矮惑星は「太陽の周りを回り、十分重いため球状だが、軌道近くに他の天体が残っている、衛星でない天体」と定義され、近くに同程度の小天体が多数見つかっている冥王星は、その代表と位置づけられた。
 矮惑星には冥王星のほか、米観測グループが昨夏「第10惑星」と発表した「2003UB313」、火星と木星の間にある小惑星で最大の「セレス(ケレス)」などが含まれる。
 当初案では、惑星を「自己の重力で球形を保ち、恒星の周りを回る恒星でも衛星でもない天体」などと定義し、専門家の間で「本当に惑星といえるのか」と議論のあった冥王星だけでなく、冥王星の衛星とされていたカロン、第10惑星、セレスも含めて12個に増やすとした。しかし、反対意見が続出、修正案がつくられていた。

◎冥王星が“降格”「寂しいけど仕方がない」(2006年8月24日、産経新聞)
 太陽系の9番目の惑星とされてきた冥王星が"降格"し、太陽系惑星が8個になることが決まった。チェコのプラハで開かれた国際天文学連合(IAU)総会最終日の24日、「太陽系惑星の定義」ついて投票による採択が行われた。採択された新しい定義では、太陽系惑星は水金地火木土天海の8個に限定される。1930年に発見された冥王星が惑星の地位を失ったことで、太陽系の姿は76年ぶりに書き換えられる。
 採択で承認された太陽系惑星の定義は、(1)太陽の周りを回り(2)自己の重力で球形となった天体で(3)軌道上で他の天体(衛星を除く)がないこと−と規定している。
 この条件をすべて満たすのは、太陽に近い方から、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星の8個だけ。(3)を満たしていない冥王星は、小さな惑星を意味する天体として新たに定義された「矮惑星(ドワーフ・プラネット)」の1つとなる。
 冥王星は、細長い軌道の一部が海王星と重なり、他の8惑星の公転面に対して大きく傾いている。このため、多くの研究者が科学的な知見から「惑星とするには無理がある」としていたが、IAUは1999年に「惑星としての地位に変更はない」と発表した。
 しかし、海王星や冥王星より外側のカイパーベルトと呼ばれる太陽系外縁部で、次々と新しい天体が発見され、その1つの「2003UB313」は、冥王星よりも大きいことが判明。米航空宇宙局(NASA)が昨年夏に「第10惑星」と発表したことがきっかけで、惑星の定義がIAUで改めて議論されることになった。
 今月16日には、冥王星を惑星にとどめたうえで3つの天体を新たな惑星とする「太陽系12惑星案」が提示されたが、研究者の反対が続出。IAUは一転して、冥王星を外す「8惑星案」での決着を目指した。
 最終的な決議案には、8惑星を「古典的惑星」として冥王星などを「古典的ではない惑星」と解釈する道も盛り込まれたが、研究者による投票の結果、科学的にも明解で惑星の定義がシンプルな「8惑星案」が、多数の賛同を得た。
名付け親「寂しいけど仕方がない」 関係者の思い交錯
 「寂しいけど仕方がない」「惑星を知るきっかけになれば」。第9惑星として親しまれてきた冥王星が“降格”され、太陽系惑星からその名が消えることになった24日の国際天文学連合(IAU)の決定。和名の名付け親の遺族や教科書関係者らの間では、さまざまな思いが交錯した。
 昭和5年に米国人が発見した新天体「PLUTO(プルート)」に冥王星という和名を提案したのは天文研究家、故野尻抱影(本名・正英)さん。五女の堀内英子さん(83)は24日、「(惑星から)名前が消えるのは寂しいが、仕方がないですね」と感慨深そうに話した。
 野尻さんは明治18年、横浜市生まれ。作家、大仏次郎の兄で、出版社に勤務しながら星座や天文に関する随筆などを多く執筆した。昭和48年に「日本星名辞典」をまとめ、52年に91歳で死去した。
 PLUTOは神話に出てくる冥界の王。「周囲には冥王星という名前に反対もあり、ずいぶん激論を交わしたようです。本人は『海王星と比べても、とてもいい名前なんだ』と、名付けたことを喜んでいました」と、堀内さんは振り返る。
 教科書会社は「時間的に非常にシビア」と頭を抱える。翌年度用の教科書は秋口に印刷を始める必要があるからで、「最先端の科学ならともかく、これだけ大掛かりな変更は初めて」(大日本図書)、「会社によって不統一が生じることがあってはならない。学会など国内の対応が定まるのを待つしかない」(東京書籍)と困惑顔だ。
 一方、思わぬ影響が広がっているのは音楽業界。「クラシック界で今年一番の話題作でしたが、ますます注目を集めそう」と期待するのは東芝EMIのクラシック音楽担当、児玉洋子さん。
 同社は今月23日、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が演奏するホルストの組曲「惑星」のCDを発売したばかり。最後の楽章「冥王星」は、ホルストの作曲当時、冥王星が未発見で、存在していなかった曲だ。
 英国の作曲家が数年前に作曲。児玉さんは「冥王星が惑星でなくなれば、もうこの曲を録音する人はいないでしょう。貴重盤になると思います」とアピールする。
 全国の科学館も対応に追われそうだ。横浜こども科学館では、冥王星のパネルを撤去する必要があるという。山田陽志郎天文指導員は今回の論争について「科学の人間くさい魅力を伝える効果があった」と評価している。

◎太陽系12惑星へ、新定義「自己重力で球形」提案(2006年8月17日、産経新聞)
≪国際天文学連合総会 候補さらに12個≫
 太陽系の惑星が、これまでの9個から12個に増える可能性がでてきた。チェコのプラハで開催中の国際天文学連合(IAU)総会で16日、新たな惑星の定義の原案が示された。原案のまま承認されれば、冥王星の発見(1930年)以来、76年ぶりに太陽系の全体像が大きく書き換えられることになる。IAUは、24日に新定義を承認するかどうかを投票で決める予定だ。
 国立天文台によると新しい惑星の定義の柱は、「恒星を周回する天体で、自己の重力でほぼ球形になるもの」としており、直径800キロ以上が目安になる。この定義だと、火星と木星の間に位置する最大の小惑星「セレス」、冥王星の衛星とみなされてきた「カロン」、昨年夏に米航空宇宙局(NASA)が「第10惑星」と発表した「2003UB313」が、新たに惑星の仲間入りをする。
 しかし、近年は観測技術の進歩で太陽系の外縁部で次々に新たな天体が発見されており、3個の新惑星候補のほかにも、12個の天体が惑星に昇格する可能性があるという。
 惑星の定義をめぐる議論は、昨年7月に米国の研究チームとNASAが、冥王星より大きいことを理由に「2003UB313」を第10惑星と発表したことが直接のきっかけ。それ以前にも、直径が月の7割しかなく、公転軌道も他の惑星に比べて特異な冥王星を惑星とすることの妥当性が議論されてきた。
 こうした経緯を踏まえて、原案では、(1)水星から海王星までの8個の惑星を「古典的惑星」とする(2)冥王星とカロン、「2003UB313」の3個は「プルートン(冥王星族)」と呼ぶ(3)セレスについては「矮(わい)惑星」と呼ぶ−ことを提案している。
 また、小惑星や彗星(すいせい)などと呼ばれている惑星より小さい天体についても「太陽系小天体」と総称することを提案した。
 これまで、科学的に明確な惑星の定義がなかったことが議論の根底にある。原案では明確さはあるが、惑星の中に「古典的」な8個とそれ以外の区別ができることになる。また、今後は新たな惑星候補が次々と見つかり、惑星の総数が収拾がつかないほど増える可能性も否定できない。
 24日の議決で、原案への反対意見や慎重論が多い場合には、3年後の次回総会に決着が持ち越される可能性もあるという。

◎太陽系の「第10惑星」、大きさは冥王星並み(2006年4月12日、日本経済新聞)
 【ワシントン11日共同】米航空宇宙局(NASA)は11日、「太陽系10番目の惑星」と昨年発表された新発見の天体の大きさが、冥王星とあまり変わらないことがハッブル宇宙望遠鏡の観測で分かったと発表した。
 これまではドイツ・ボン大などによる地上からの観測で、冥王星より30%ほど大きいと推定されていたが、大気の影響を受けず誤差が小さいハッブルで昨年末に調べたところ、直径は約2400キロ。同じハッブルで測った冥王星の直径約2300キロよりやや大きいだけで「双子のようなもの」(NASA)という。
 この天体は地球から約160億キロ離れ、太陽を約560年で1周するとみられる。明るいのは表面をメタンの氷が覆い、太陽光をよく反射するためらしい。正式に惑星となるには国際天文学連合の認定が必要だが、第9惑星の冥王星をめぐっても「惑星とは呼べない」との強い主張があり、決着は簡単ではなさそうだ。

◎衛星に大気なし、地表は「逆温暖化」、冥王星の「ナゾ」(2006年1月6日、朝日新聞)
 太陽系の第9惑星の冥王星を回っている衛星(月)の「カロン」には大気がないことを、米マサチューセッツ工科大などの研究グループが突き止めた。直径が冥王星の半分もあるカロンがどうやってできたのかは謎。グループは、冥王星に天体が衝突し、吹き飛ばされたちりが集まってカロンができた、という説と観測結果が合うとしている。5日付の英科学誌ネイチャーで発表した。
 冥王星は太陽から最も遠い惑星で、探査機が到達したことがなく、大気や表面の様子は詳しくわかっていない。
 研究グループは、カロンが恒星の前を横切る様子を、ブラジルやチリにある天体望遠鏡で観察。表面に大気があれば、光が大気を通過して徐々に変化するはずだが、大気の存在を示すデータはなかったという。
 カロンは衛星としては大きいことなどから、別の軌道にあったものが冥王星の重力につかまったという説もある。
 冥王星の表面温度は従来の推計より10度も低い零下230度とみられると、米ハーバード・スミソニアン宇宙物理学センターが発表した。薄い窒素の大気と、地表の窒素の氷とが「逆温暖化現象」をもたらし、地表を冷やしているらしい。衛星カロンの表面温度は、従来推計と同じ零下220度ほどだったという。
 同センターはハワイ・マウナケア山にある「サブミリ波干渉計」で冥王星と衛星カロンから届く短波長の電波(サブミリ波)を観測、表面温度を割り出した。
 冥王星の表面温度はこれまで、太陽からの距離(44億〜74億キロ)などから零下220度ほどと推計されていた。
 研究グループは、わずかに届く太陽光が表面の窒素の氷を蒸発させ、熱を奪っている可能性を指摘。この冷却効果が、太陽光が地表を暖める効果を上回り、「予想以上の寒さ」の原因になっている、とみている。

◎最初の星:137億年前の宇宙誕生直後の光検出、NASA(2005年11月3日、毎日新聞)
 約137億年前の宇宙誕生直後に形成され、「宇宙最初の星」と呼ばれる一群の星から出たとみられるかすかな光の検出に成功したと、米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターのチームが、3日付の英科学誌ネイチャーに発表した。
 こうした星は、大きさは太陽の100倍もあるが、ごく短命だったと考えられており、既存の望遠鏡での観測は無理。今回も光の発生源を直接特定することはできていないが、スピッツァー宇宙望遠鏡を使い、星が放出した赤外線を捕まえたという。
 チームは、星や銀河の存在がよく調べられている「りゅう座」の方角を、スピッツァーの赤外線カメラで精密に観測した。得られた観測データから、星や銀河の影響とみられる赤外線や“雑音”を丹念に取り除いた。
 その結果、なお不均一に広がる赤外線が検出されたため、チームはこれが「最初の星」から放出された赤外線である可能性が極めて高いと結論付けた。(ワシントン共同)

◎月面にチタン鉄鉱、NASA観測、酸素の供給源に期待(2005年10月20日、読売新聞)
 米航空宇宙局(NASA)は19日、月面には、酸素を含んだチタン鉄鉱が広く分布している可能性が高いとする観測結果を発表した。ハッブル望遠鏡の高性能カメラによる初の紫外線観測で明らかになった。
 ブッシュ大統領は月への有人飛行再開を提案し、2018年には有人月探査を実施する方針を明らかにしている。NASAは、チタン鉄鉱が、将来の月面活動で酸素やロケット燃料の供給源になる可能性が高いとしている。
 観測したのは、アポロ15、17号の着陸地点のほか、これまで詳細な月面調査がされていなかった「アリスタルコス」(直径42キロ)と呼ばれるクレーター付近。
 倉本圭・北海道大院助教授(地球惑星学)の話「酸化チタンが月面に広く存在することは予想されていたが、高精度で確認できたことは有人探査に有益なデータとなるだろう。酸化チタンからは酸素を取り出しやすく、大量に存在するならば有効な供給源になる」

◎月のクレーター:小惑星が集中的に落下しできた(2005年9月16日、毎日新聞)
 月のクレーターはほとんどが約40億年前にできたが、これは、火星と木星の間の軌道にある小惑星が集中的に落下してできたことを国立天文台などの研究チームが突き止めた。月の表面のクレーターの大小の比率と、小惑星の大小の比率の分布が一致した。従来は、すい星の集中衝突の可能性もあるとされていた。16日付の米科学誌「サイエンス」に掲載される。
 約40億年前にできた月のクレーター約1万個の大きさと、すばる望遠鏡などで観測した小惑星約10万個の大きさの分布状況が非常によく一致した。
 さらに、火星や水星の表面にある同時期にできたクレーター数千個で同様の比較をしたところ、やはりよく一致した。
 このため、約40億年前に月や火星、水星でできたクレーターは、すい星ではなく小惑星が降り注いでできたと、研究チームは結論付けた。
 同天文台の伊藤孝士・主任研究員は「約40億年前は、天王星と海王星が形成された時期とされる。その影響で木星と土星の軌道がずれ、小惑星の軌道も不安定になったことが集中落下の原因ではないか」と話している。【下桐実雅子】

◎ブラックホールからガス噴出・京大など初めて撮影成功(2005年8月4日、日本経済新聞)
 京都大学の菅井肇助手と国立天文台などのグループは4日、ブラックホールの周囲にあるガスが高速で広がっていく「銀河風」の様子を撮影することに、世界で初めて成功したと発表した。銀河の進化に大きな影響を与えるとされる銀河風が発生する仕組みを解明する手掛かりになるという。10日付の米天文学会誌アストロフィジカルジャーナルに掲載される。
 撮影したのは、地球から6000万光年離れた銀河「NGC1052」にある超巨大ブラックホールの周辺。通常、ブラックホールは質量が大きいために何でものみ込んでしまうが、周囲にガスが集まると、逆に猛スピードでガスをまき散らすことがある。
 研究グループが撮影したブラックホールは質量が太陽の1000万倍。国立天文台のすばる望遠鏡(米ハワイ州)を使って、ガスに含まれる酸素が光を放ちながら秒速数百〜1000キロメートルで広がっていく様子を撮影することに成功した。

◎宇宙人の電波?うお座とおひつじ座の間から3回観測(2004年9月3日、読売新聞)
 【ワシントン=笹沢教一】地球外の知的生命体からの信号を探している米カリフォルニア大などの天文学者チームは2日、プエルトリコのアレシボ電波天文台の観測で、うお座とおひつじ座の間の方角から、これまで知られた天文現象とは違う謎の電波信号を受信したことを明らかにした。
 英科学誌ニューサイエンティスト電子版が報じた。
 未知の天文現象や電波望遠鏡自体からの雑音の可能性が高いが、観測を進めている同大などの地球外知的生命体探査の天文学者らは万が一の可能性に強い期待を寄せている。
 電波は昨年2月までに計3回観測され、次第に強くなる傾向があった。世界中のボランティアのパソコンをインターネットで結んだ解析作業によって、電波の受信が確認された。現在、電波は消えているという。
 電波の周波数は1420メガ・ヘルツで水素が放つ周波数と同じ。水素は宇宙で最も基本的な元素で、この周波数は宇宙で最も雑音の少ない帯域のため、知的生命体が交信に使う可能性が最も高いとされている。

◎隕石から太陽系形成前の「星くず」発見、東工大など(2004年4月29日、朝日新聞)
 太陽系の形成以前から存在して地球の材料になった「スターダスト」を、東京工業大などのグループが隕石(いんせき)中から発見した。スターダストは古い恒星から放出された原子でできた鉱物。独自開発の顕微鏡によって、ケイ酸塩鉱物のスターダストを初めて見つけた。ケイ酸塩鉱物は惑星の主成分となった。29日発行の英科学誌ネイチャーに発表する。
 同大の永島一秀研究員らが、モロッコとアルジェリアの砂漠で採取された二つの隕石を調査。0.1〜1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)のスターダストを7個見つけた。太陽系ができた46億年前より古いもので、それぞれ別の恒星から放出されたと考えられる。
 同グループの圦本(ゆりもと)尚義・東工大助教授は「生命の起源につながる宇宙空間の有機物質の解明や、太陽系の起源を探る手がかりになる」と話している。

◎相対性理論の「予言」検証する衛星、NASAが打ち上げ(2004年4月21日、朝日新聞)
 巨大な質量をもつ物体の周囲では時空がゆがんでいる。物理学者アインシュタインの「予言」を観測するため、米航空宇宙局(NASA)は20日、人工衛星GP−Bをバンデンバーグ空軍基地(米カリフォルニア州)から打ち上げた。うまく行けば、1年半ほどのうちに結果が出る。
 光を曲げる重力レンズが宇宙空間に存在することなどから、アインシュタインが一般相対性理論(1916年)に書いた「予言」の正しさは、おおむね証明されている。今回のGP−Bは、地球の質量が周囲の時空をゆがめている様子を、初めて直接検出するのが目的だ。
 GP−Bは18カ月にわたり、高度640キロの軌道を97.5分ごとに1周する。従来の3000万倍という史上最も精密なジャイロスコープ(姿勢観測装置)を四つ搭載。「予言」が正しければ、衛星が地球を周回するうちにジャイロスコープの回転軸がかすかにずれるはずで、そのずれを遠方の星からの光を使って検出する。
 地球の周囲の時空のゆがみを観測するアイデアは50年代からあった。資金面や技術面の問題から延期されてきたが、7億5000万ドル(約817億円)かけて実現した。

◎ソユーズ:打ち上げに成功、ロシアの宇宙船(2004年4月19日、毎日新聞)
 【モスクワ杉尾直哉】タス通信によると、国際宇宙ステーション(ISS)に宇宙飛行士を運ぶロシアのソユーズ宇宙船は19日午前(日本時間同日昼)、中央アジア・カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げに成功した。ロシア、米国、オランダの宇宙飛行士3人が搭乗している。03年2月の米国のスペースシャトル「コロンビア」の事故以降、ISSではロシアの宇宙船が代替用に使用されており、今回で3回目。

◎宇宙論を補強、宇宙空間「温かいガス」観測に初成功(2004年3月23日、読売新聞)
 銀河と銀河の間を満たしているとされながら、これまで観測できなかった「温かいガス」をとらえることに、宇宙航空研究開発機構などが初めて成功、22日、名古屋市で開かれた日本天文学会で発表した。
 現在の宇宙論を補強する観測結果で、宇宙の成り立ちに迫る研究として注目されそうだ。
 これまでに観測できた星や銀河、1000万度以上の超高温ガスなどの質量を全部足しても、宇宙論が想定する物質の量の2割から4割にしかならず、残りは謎のままだった。温度が10万度から1000万度ある「温かいガス」はその有力候補と考えられていたが、強い光やX線を発しないため観測が難しかった。
 研究者は、このガスが特定の波長を持つ光線を吸収することに着目。地球から約30億光年の所にある天体の光が、約6000万光年のおとめ座銀河団を通過する際、この波長の光線が減少することを観測、ガスの存在を裏付けた。
 今回の観測で、おとめ座銀河団周辺のガス量がかなり多いことが分かり、これを宇宙全体に当てはめて計算すると、物質の不足分の大半を「温かいガス」が占める可能性が強いという。

◎太陽系に新天体、冥王星発見後で最大「セドナ」と命名(2004年3月16日、朝日新聞)
 もう一歩で「惑星」と呼べるような最大直径約1700キロの天体が見つかり、15日、米航空宇宙局(NASA)が発表した。冥王星(直径約2300キロ)が発見された30年以降では、太陽系で最大の天体確認という。
 カリフォルニア工科大やエール大の観測チームが昨年11月、パロマー天文台(米カリフォルニア州)の大型望遠鏡で見つけ、イヌイット族の海の神にちなんで「セドナ」と名付けた。
 現在の太陽からの距離は、冥王星までの倍以上の約130億キロ。楕円(だえん)軌道を描いており、最も遠いときは約1300億キロになる。1万500年かけて太陽の周りを公転する。火星と同様に赤い色で、地表の温度は零下240度以下という。
 冥王星以降に見つかった太陽系の天体でこれまで最大だったのは、直径約1250キロの「クワーオワー」。

<国立天文台の渡部潤一・助教授(惑星科学)の話>
 冥王星自体が惑星ではないという考え方もあり、大きさからいってもセドナは惑星と呼べない。冥王星周辺やその先には太陽の周りを回っている大きな天体が多数ある。望遠鏡の性能向上で、もっと遠方で大きな天体が見つかるかもしれないが、その天体がある空間で突出した存在でない限り、惑星とは呼びがたい。

◎太陽系最遠の小惑星「セドナ」発見、NASA発表(2004年3月16日、産経新聞)
 米航空宇宙局(NASA)は15日、太陽からの距離が冥王星の3倍以上になる、太陽系で最も遠方に位置する小惑星を発見したと発表した。
 小惑星は、だ円軌道で太陽の周りを1万500年かけて1周。最も遠いところで、地球から太陽の距離の900倍に当たる約1300億キロも太陽から離れているため、表面温度がセ氏零下240度を上回ることはないとみられる。北極圏などに暮らす先住民イヌイットの海の女神にちなみ「セドナ」と名付けられた。
 NASAなどによると、セドナは直径1700キロ以下で、めい王星の約4分の3の大きさ。1930年に冥王星が太陽系の9番目の惑星として発見されて以降、太陽系で見つかった天体としては最大という。
 極寒の氷の世界にもかかわらず、セドナは赤みを帯びており、太陽系では火星に次ぐ赤色をしているのも特徴。小さい月を伴っている可能性もあるという。
 セドナは昨年11月、米カリフォルニア工科大のグループが同大運営の天文台で発見。NASAのスピッツァー宇宙赤外線望遠鏡などで確認した。(共同)

◎質量の謎解く「クォーク凝縮」東大・早野教授らが確認(2004年3月6日、読売新聞)
 物質の質量が生まれる仕組みの一つとして予言されていた「クォーク凝縮」という現象を、東京大学の早野龍五教授や理化学研究所などの研究チームが実験で確認、米物理学会発行の「フィジカル・レビュー・レターズ」に発表した。
 物質の構成要素である陽子や中性子は3個のクォークから出来ているが、このクォーク3個の質量を足しても、陽子や中性子の質量の2%にしかならず、残りの質量がどこから来るかは謎とされてきた。
 それを説明しようと考えられたのが「クォーク凝縮」という現象。陽子などを構成するクォークとは別の性質を持つクォークが、対になって陽子などの周囲にひしめきあって存在し、このクォーク対が陽子などに質量を与えるとされる。
 クォーク対の密度は真空中で最も強く、高温高圧になるほど弱まるとされ、その割合については約20年前に予測されていた。
 早野教授らはクォーク対の密度の変化を調べるため加速器でスズの原子核内にクォーク2個でできたパイ中間子を入れ、その結合エネルギーから密度を割り出した。その結果は予測された理論値とほぼ一致。これは「クォーク凝縮」という現象の存在を間接的に証明したことになるという。
 物質の質量の起源については、ヒッグス粒子という未知の粒子の関与が予測されており、世界の研究機関はヒッグス粒子発見を目指している。今回、確認されたクォーク凝縮はヒッグス粒子によって生まれた質量が、さらに増えるメカニズムを明らかにしたもの。

・クォーク
 物質を形づくる基本粒子。アップ、ダウン、チャーム、ストレンジ、トップ、ボトムの6種類がある。いずれも単独では観測されず、2個集まった中間子、3個集まった陽子や中性子が物質の基礎となっている。

◎東大教授ら、質量生み出す仕組み発見(2004年3月6日、日本経済新聞)
 宇宙誕生の大爆発ビッグバンから10万分の1秒後に起き、物の重さである「質量」を生み出したメカニズムの存在を裏付ける決定的証拠を、東京大の早野龍五教授や理化学研究所などの共同チームが加速器実験で6日までにつかんだ。質量を生む仕組みはよく分かっていなかったが、約40年前、質量を生むメカニズムとして理論的に予言された「クォーク凝縮」という現象の存在を世界で初めて証明した。今回の結果は、物になぜ質量があるのかという物理の基本問題の謎解きを大きく前進させる成果として注目される。
 物質の主要な構成要素である陽子や中性子は、物質の基本粒子クォーク3個でできている。しかしクォーク3個分の質量は陽子や中性子の総質量のわずか約2%で、残る98%の由来が謎だった。原因として考えられたのがクォーク凝縮。陽子などの周囲の空間に、目に見えない無数のクォークが対になって潜み、現実のクォークはそれらにまとわりつかれることで動きにくくなった結果、質量が増えるとした。〔共同〕

◎NASA「火星は生物生存に適した」、かつて大量の水(2004年3月3日、朝日新聞)
 米航空宇宙局(NASA)は2日、火星探査車オポチュニティーの着陸地点に、かつて大量の水が液体の状態で存在していたと発表した。周辺の岩石の構造や化学的な特性から結論づけた。時期や期間は不明だが、「生物の生存に適した環境だった」と見ており、火星の有人探査を求める声が強まりそうだ。
 オポチュニティーは、1月25日の着陸直後に見つけた、板状の岩石がたくさん重なった地点で、顕微カメラやX線分光計などにより岩石の成分や構造を調査してきた。
 その結果、岩石に、各種の無機硫酸塩が高濃度で含まれる▽水と関係の深い鉄ミョウバン石が含まれる▽多数の細長い空洞が無秩序に走っている▽小さな球状の物体が散在している、といった特徴のあることが分かった。
 NASAは「地球の岩石が今回のような高濃度の無機塩類を含む場合、水中で形成されたか、形成後、長く水につかっていたことを示す」と説明。鉄ミョウバン石の存在は、酸性の湖か温泉のような環境だったことを示唆しているという。
 細長い空洞は、塩水の中で無機塩類が結晶化した後、脱落してできたと見られる。その空洞に再び塩水が浸入し、無機物が雪だるま式に固まって球状の物体ができた可能性があるという。
 過去の火星探査機の観測で、大量の水が流れたらしい地形や、地下水が噴き出したような跡、地表近くの氷の存在など、火星にかつて大量の水が存在していたことをうかがわせる「間接証拠」が見つかっていた。NASAは、今回の一連の分析結果は最も強力な証拠だとしている。
 主任科学者のスティーブ・スクワイアーズ教授(コーネル大)は「パズルのピースがあるべき場所に収まった」と話した。
 今のところ、生物の存在を示す証拠は見つかっていないが、同教授は「(今回の調査地点は)過去のある時期、生物の生存に適した場所だった」と述べ、生命が誕生したとしても不思議ではないとの見方を示した。

◎NASAが「重大発表」、火星に水の証拠発見か(2004年3月2日、朝日新聞)
 米航空宇宙局(NASA)は1日、2台目の火星探査車オポチュニティーの探査活動について、米東部時間2日午後2時(日本時間3日午前4時)からワシントンのNASA本部で「重大な記者会見をする」と発表した。かつて火星に大量の水が存在することを示す何らかの物証が見つかったとの見方が出ている。
 NASAは1月の探査開始以来、管制所のあるカリフォルニア州パサデナのジェット推進研究所(JPL)で記者会見を続けてきた。2日の会見は初めて本部で開かれ、主任科学者のスティーブ・スクワイアーズ教授(米コーネル大)や、エド・ワイラーNASA次官補らが出席する。
 大きな進展があったのは間違いないとみられ、ロイター通信は「かつての火星が温暖湿潤な気候で、微生物を育める惑星だったことを示す証拠が見つかったのではないか」と伝えている。
 今回の火星探査は、1月3日に着陸したスピリットと、1月25日に着陸したオポチュニティーの2台態勢。オポチュニティーは、薄い岩石が積み重なった地形などを詳しく調査してきた。これまでは、過去に大量の水が存在したことを示唆する程度の証拠しか見つかっていない。

◎仏研究チームが最遠の銀河を発見(2004年3月1日、産経新聞)
 地球から約132億3000万光年離れ、これまで見つかったものとしては最も遠い銀河を、南米チリの大型光学望遠鏡VLT(口径8.2メートル)を使って発見したと、フランスなどの研究チームが1日、発表した。
 この銀河からの光は132億3000万年前に出て地球に届いた。研究チームは「宇宙は137億年前にできたと考えられており、宇宙誕生から4億7000万年後の、生まれたての銀河の姿をとらえた」としている。
 この銀河は活発に星をつくっているが、重さは太陽系が属する天の川銀河の1万分の1程度。太陽のような恒星約1000万個からできているとみられる。
 これだけ遠方の銀河の光は弱すぎて、普通は口径40〜80メートルもの望遠鏡でなければ見えない。研究チームは、重い天体のそばで空間がゆがみ、向こう側からの光が増幅されて見える「重力レンズ」を利用。地球から30億光年先にある銀河団の重力レンズによって25〜100倍の明るさになった銀河の光を、近赤外線の波長で観測するのに成功した。

◎太陽系外縁部に新小惑星、めい王星以来、最大(2004年2月21日、産経新聞)
 地球から約70億キロ離れた太陽系の海王星やめい王星より遠い外縁部に、直径がめい王星の6〜7割の小惑星が存在することを米カリフォルニア工科大などのグループが20日までに確認した。
 2004DWと呼ばれるこの新天体は、海王星の軌道の外側に広がり、地球など太陽系の惑星が形成された時に残された物質が集まった「カイパーベルト」という場所にあった。明るさは18.5等級と非常に暗い。
 直径は推定で1400〜1600キロ。同グループが2002年にカイパーベルトで見つけた直径約1300キロの小惑星クワオアーよりも大きく、太陽系内で見つかった天体としては1930年に発見されためい王星以来、最大だという。
 カイパーベルトでは氷でできた小惑星が多く見つかっており、2004DWもこの1つとみられている。(共同)

◎冥王星の外側に新たな大型小惑星(2004年2月21日、日本経済新聞)
 太陽から最も遠く離れた惑星、冥王(めいおう)星の外側を回る新たな天体を発見したと米研究グループが発表した。1930年に冥王星が見つかって以来、太陽系で発見された最大の天体だとみられる。
 米カリフォルニア工科大のマイケル・ブラウン博士らが米パロマー山天文台などを利用して発見し、「2004DW」と名付けた。新天体の直径は1400キロメートル程度とみられる。
 ブラウン博士らは2002年にも冥王星の外側を回る小惑星「クワウワー」を見つけているが、クワウワーの直径は推計約1250キロメートル。新たに見つかった2004DWの方が一回り大きいと同博士らはみている。
 2004DWは太陽から43億〜75億キロメートル離れたところを楕円(だえん)を描きながら、約252年かけて周回している。冥王星の外側には、彗星(すいせい)の巣と呼ばれる「カイパーベルト」が広がっており、今回見つかったような大型の小惑星がほかにも存在するとみられている。

◎観測史上もっとも遠い銀河を発見、米の研究グループ(2004年2月16日、読売新聞)
 観測史上もっとも遠い、地球から約130億光年離れた銀河を、米・カリフォルニア工科大学の研究グループが発見した。日本の東北大、国立天文台のチームが昨年「すばる望遠鏡」で観測した128億3000万光年の記録を塗り替える成果だ。
 宇宙の年齢は約137億年とされている。誕生後7―10億年くらいまでは、星や銀河から光が発せられても、周囲のガスに吸収される「暗黒時代」が続いたと考えられている。今回見つかった銀河は「暗黒時代」の終了直前、誕生から7億5000万年後の宇宙の姿を現していることになる。
 米のグループはハッブル宇宙望遠鏡と、「すばる」と同じハワイ・マウナケア山頂にあるケック望遠鏡を使った。巨大な重力の銀河団が周囲の空間をゆがめて凸レンズのように働いて後ろの天体を大きく見せる「重力レンズ」現象を活用し、天の川銀河の50分の1しかない非常に暗く小さい銀河の観測に成功した。

◎地球から約130億光年の銀河(2004年2月16日、産経新聞)
 地球から約130億光年離れた、最も遠いとみられる銀河を見つけたと、米カリフォルニア工科大などの研究チームが15日発表した。左上の白い線に囲まれた部分にほのかに写っており、直径約2000光年。ハッブル宇宙望遠鏡とハワイのケック望遠鏡でとらえた。宇宙は138億年前に誕生したとされるが、この銀河は、その7億5000万年後というこれまで見つかった中では最古のもので、宇宙誕生後に続いた暗黒時代が終わり、最初の銀河や星が輝き始めた時代だという。

◎大規模磁気嵐の危険警告、太陽で爆発、過去30年で最大か(2003年10月29日、産経新聞)
 太陽表面で28日、フレアと呼ばれる大規模な爆発現象が発生、米海洋大気局(NOAA)は地球が激しい磁気嵐に見舞われる可能性があると警告した。
 磁気嵐は、フレアで発生した電気を帯びた粒子が地球に到達し電離層を乱す現象。通信や放送の障害、電子機器の誤作動、停電などの原因となるほか、人工衛星が影響を受けることもある。一方、中緯度帯でもオーロラが発生しやすくなる。
 NOAAによると、今回は、カナダの一部で停電などを引き起こした1989年の大規模なフレアより規模が大きく、過去30年間で最大の可能性もある。磁気嵐は29日から30日にかけて地球に到達、NOAAの5段階の分類で最も激しい磁気嵐となる可能性が高いという。
 米東部時間の28日午前6時10分(日本時間同日午後8時10分)ごろ、太陽観測衛星「」が太陽の表面で巨大フレアの発生を観測。同時に、電気を帯びた大量のガスが噴き出すコロナ質量放出という現象も確認した。
 磁気嵐は24時間近く続くと予測され、NOAAは、送電線や変圧器の電圧異常やテレビやラジオ放送、カーナビにも使われる衛星利用測位システム(GPS)の障害などを警告している。
 フレアに伴う磁気嵐では、日本でも過去に、火星探査機「のぞみ」やエックス線天文衛星「あすか」、放送衛星「ゆり3号a」に障害が発生、機能を停止する被害が出ている。(共同)

◎欧州初の月探査機衛星打ち上げ、イオン化燃料使用(2003年9月28日、朝日新聞)
 欧州宇宙機関(ESA)は27日(日本時間28日)、欧州初の月探査機スマート1(重さ約370キロ)など三つの衛星を載せたアリアン5ロケットを南米のフランス領ギアナから打ち上げた。スマート1は、月まで1年半かけて飛行する予定。月の水や氷の有無を調べるほか、イオン化させた燃料を使うエンジンの試験を主目的にしている。
 スマート1は、イオン化させた燃料を電気的に加速させ、噴射させて進むシステムを使って飛行する。このシステムは、長い時間をかけると大きな加速度を得ることができ、未来の惑星探査技術として期待されている。

◎カシミール効果を測定(1997年2月24日、朝日新聞)
 「何もない空間」のはずの真空に潜むエネルギーが引き起こす現象を精密測定することにアメリカ、ワシントン大学の物理学者が成功し、アメリカの物理誌「フィジカル・レビュー・レターズ」に発表した。「カシミール効果と呼ばれ、予言されたのは半世紀前。基礎にある「真空の変化」と言う考えは、宇宙論や素粒子論など物理学の様々な分野で応用されている。
 この現象では、真空の中に二枚の金属板をごくわずかに離して置くと、万有引力の他に、板を引きつける微小な引力が働く。オランダの物理学者カシミール博士が1948年に理論的に予言した。
 量子力学が研究される前は、真の真空は物もエネルギーもない空間とされた。しかし、量子力学では「ある量の組み合わせは、同時には確定しない」という不確定性原理のために、完全な真空にも「零点振動」と呼ばれる電磁波などのわずかな揺らぎと、それにともなうエネルギーが残ることが分かった。このエネルギーは、通常は見えないが、カシミール博士は、金属板を引きつける力となって働くはずだと考えた。
 零点振動は、様々な波長で振動している。しかし、板の間の空間は、板によって振動の波長が制限されるために、板の外側に比べて振動のエネルギーが小さくなる。外側の、より大きなエネルギーが板を内向きに押すはずだと考えたのだ。予言の10年後に、引力が実際に存在することが確認されたが、理論値とは異なる値だった。ワシントン大学のラモロー博士は、表面に銅と金を蒸着した円形の石英版を使った。直径は一方が2.54cm、もう一方が4cm。1μmほど離したこの二枚の間に、通常の電磁気力などの他に、カシミール博士の予言と5%しか違わない10ng重ほどの力が働いていることを確かめた。

◎宇宙は平らか(1996年5月15日、朝日新聞)
 アインシュタインの相対性理論によれば、重力には空間を曲げる効果がある。宇宙空間が平らになるには、宇宙の広さに対して物質の密度がちょうど良い大きさでなければならない。
 空間が平らだと、平行線は決して交わらず、三角形の内角の和は180度になる。地面は一見、平らに見えるが、東京とハワイとニューヨークを結ぶ三角形を描けば、内角の和は180度より大きくなり、地球が曲がっていることが分かる。この場合、曲がり方が正であるという。平行線は遠くへ行くほど狭くなり、いつかは交わる。これを宇宙空間に当てはめると、物質の密度が大きい場合に当たる。逆に密度が小さい場合は、平行線は遠くに行くほど広がり、曲がり方が負であるという。
 銀河などの運動の観測では、物質密度は宇宙空間が平らになるのに必要な大きさの10分の1しかないことが分かっている。ビッグバン理論の予測でも、星など普通の物質の量はそれくらいになる。
 もともとのビッグバン理論に基づく宇宙のゆっくりした膨張では、初めにわずかでも空間が曲がっていると、曲がり方は膨張とともに激しくなる。だが、実際の宇宙は観測で曲がっているかどうか決めるのが極めて難しいほど、平らに近い。この謎は、インフレーション理論が正しければ解決するという。宇宙が最初に超高速で急膨張してしまえば、地球から観測できる程度の範囲は平らになるのが当然だからだ。
 宇宙が曲がっているかどうかを確かめるのに、遠くにある銀河の数を数える方法がある。曲がり方が負になるほど望遠鏡の視野に入る遠くの面積は広くなり、正だと狭いからだ。しかし東京大学理学部天文学教育研究センターの吉井譲教授は、各国の天文台での観測結果をもとに、遠くの銀河の数は多すぎて、宇宙の密度が小さくて曲がり方が負だとしても到底、説明しきれないことを指摘した。計算で、物質の重量と宇宙項を合わせて宇宙が平らになる場合が、観測された遠方の銀河の数と一致し、世界の研究者の間で評判になった。宇宙項には遠くの銀河の数を多く見せるほか、重力と同じように空間を曲げる効果もあって、物質の密度が足りない分も補える。
 宇宙がもし、平らでないとすると、インフレーション理論に不自然な調製を加えなければならない。宇宙項がある方が都合がいいが、宇宙項を一切考慮せず、未知の素粒子など見つかっていない物質の重力で、宇宙が平らになっていると考える研究者もいる。一方、物質密度の低い、負に曲がった宇宙でも構わないという説さえある。

◎宇宙の温度(1996年5月8日、朝日新聞)
 ビッグバン理論によると宇宙は膨張すると、その大きさに比例して温度が下がる。理論の提唱者たちは現在の宇宙が絶対温度で数度のはずと予言した。1965年、絶対温度約3度に当たるマイクロ波という電波が宇宙のあらゆる方向から来ているのが見つかり、宇宙背景放射と呼ばれるようになった。
 これはビッグバンから数十万年後、宇宙が約3000度だったころの名残と考えられている。数万度以上だったとき、水素など元素は原子核と電子がバラバラに飛び回るプラズマ状態。光や電波は電子と衝突し、散乱され、外に出てこない。約3000度まで下がると電子は原子核と安定な原子を作り、宇宙はこの波長の光で満ちた。このとき、宇宙は今の1000分の1ぐらいの大きさだったという。
 理論を裏付けた宇宙背景放射は一方で、あらゆる方向の強さが1万分の1以下の差で一致するという新たな謎を生んだ。宇宙の始まりが均一でなかったとすると、ビッグバンの数十万年後、温度が均一になることができるのは光が届く数十万光年の範囲だけ。今、観測可能な百億光年以上の広さで背景放射が均一なことは説明できない。
 宇宙が初めから均一であったとすれば均一でもよい。しかし、証明する理論がない。この新たな難問は、インフレーション理論によって解決できる。物質や電波は宇宙の中を高速より速く動けないが、宇宙空間そのものが光より速く膨張することは禁じられていない。最初、部分的に均一だった範囲が急膨張すれば、結果的に光が到達できる以上の広い範囲が均一になる。
 1990年代の初め、アメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙背景放射探査衛星コービーは背景放射に約10万分の1のわずかなでこぼこがあることを確かめた。高温の部分は物質の密度も高い。最初は小さな密度差でも、重力でさらに物質が集まり、次第に銀河団などが生じたと考えられる。
 コービーの観測したでこぼこの大きさや分布はインフレーション理論の予測と一致した。宇宙には銀河など数億光年にわたって物質が密集する場所と、ほとんど物質のない空虚な場所が存在する。巨大な構造の差も、宇宙の初めにあった小さなでこぼこが急膨張で引き伸ばされたと解釈すれば説明は可能だ。
 コービーは数億光年のおおまかなでこぼこを観測しただけだが、イギリス、ケンブリッジ大学のポール・スコット博士らは1996年3月、電波望遠鏡で数千万光年単位の細かいでこぼこをとらえたと発表した。このデータの解析から、インフレーション理論の検証や、銀河の誕生に迫る新たな情報が得られるかもしれない。





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