亜硫酸塩の話

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更新日:
 2009年1月27日







◎亜硫酸塩(2001年3月24日)
 ワインのボトルの裏ラベルを見ると、ほとんどのワインに「酸化防止剤(亜硫酸塩)」と書いてあります。これは、何でしょうか?
 「亜」というのは、「次ぐ、次」という意味です。「亜熱帯」、「亜流」という言葉がありますが、化学用語でも「究極の状態の一つ手前」のような意味で使います。したがって、「亜硫酸」も、硫黄を徹底的に酸化してできる硫酸よりも一歩手前の酸化状態の化合物を言います。
 亜硫酸には、まだ酸化される余力があるので、ワインの中に酸素が存在した場合、ワインを酸化させる前に、先に亜硫酸がその酸素を取ってしまいます。すなわち、「亜硫酸」が酸化することによって、ワインの酸化を防止(酸化防止剤)しているのです。
 温泉地や火山にいくと、黄色い硫黄の固まりが転がっていることがありますが、この硫黄(S)が酸化(普通には、酸素と反応すると考えて良い)されると、亜硫酸ガス(二酸化硫黄)ができ、これを水に溶かすと亜硫酸という酸ができます。これは酸ですから、ここにアルカリをもってきて、中和すると、「亜硫酸塩」ができます。化学式で書くと、
 S → SO2(亜硫酸ガス) → H2SO3(亜硫酸) → Na2SO3(亜硫酸塩の一例)
となります。
 このように、亜硫酸ガス、亜硫酸、亜硫酸塩は、それぞれ異なるものです。しかし、その働きは、ほとんど同じです。なぜなら、3つとも水の中で亜硫酸イオンというものを出して、以下のような働きをしているからです。

・亜硫酸塩の働き
 酸化防止剤として使用されている亜硫酸塩には、ワイン醸造中の酸化防止と、野生酵母などの殺菌作用があります。ワインは酸化に弱く、酸化防止剤の入っていないワインは長期間保存ができません。ワインは、製造直後は未だ十分に熟成していないお酒で、製造後に品質が向上して行くことに大きな特徴があります。
 酸化防止剤の入っていないワインは、短期間で酸化されてしまい、ワインとしての品質を失ってしまいます。つまり、酸っぱくなってしまうのです。
 また、ワインは発酵や熟成の途中でバクテリアや腐敗酵母が繁殖してしまいます。これを殺菌するのが亜硫酸塩なのです。

・亜硫酸または亜硫酸塩の導入法
 数百年前は、硫黄を燃やしたガスをワイン(または、前処理)に導入していました。この方法は現在でも使われている伝統的な方法です。
 また、メタ重亜硫酸カリウムという薬品をワインに加えると、液中で化学反応をおこして亜硫酸塩になり、ワイン全体によく行き渡ります。最近は、この方法が主流になっているようです。ただし、この場合も、ラベルには「メタ重亜硫酸カリウム」とは書かれず、「亜硫酸塩」と表記されています。

・亜硫酸塩の安全性
 亜硫酸(塩)は、大量に、特にガスの状態で摂ったりすれば、呼吸器系に害があります。しかし、ワインのように少量で、液体の状態ではほとんど問題なく、大量に摂った時、喘息患者に悪影響が出るくらいです。厚生省がワインに添加を許可しているレベル以下であれば問題はありません(日本では350ppm以下、フランスでは450ppm以下)。
 世界中で、数百年にわたってワインが飲まれていますが、亜硫酸塩による悪影響は報告されていません。体重50kgの人が、毎日9リットルずつ90日間、ワインを飲み続けても慢性毒性の症状は起きないという動物実験データもあるそうです。
 世界のワイン生産国では、酸化防止剤として亜硫酸塩の使用が認められています。フランス、ドイツ、イタリアなどのEU国では、亜硫酸塩を使用しても表示は義務付けられていませんが、日本で販売するワインは、国産、輸入とも酸化防止剤(亜硫酸塩)を使用していれば、表示が義務付けられています。



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