色の三原色のお話

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更新日:
 2008年6月28日







 色には三原色がありますが、なぜ3なのでしょうか。それは、人の目には色を感知する細胞が3種類あるからだと考えられています。
 “色”とは、厳密には“明るさ”、“色相”、“彩度”という要素が合わさったものとされています。その内の色相が、赤、黄、緑など、一般に“色”と呼んでいるものを指しています。私たちが“色”を見る時は、およそ380nmから770nmの電磁波の波長領域(可視光線)を3種類の細胞を通して、感覚しています。
 人の網膜には、色を感知する役割を果たす錐体(すいたい)という細胞があります。錐体には、“視物質”という蛋白質があり、この蛋白質が特定の波長の光を吸収して、細胞が興奮し、私たちに“光がある”と認識させます。視物質は3種類あり、それぞれが560nm、530nm、430nmの波長の光を最も吸収します。
 各錐体は、どれか一種類の視物質だけを含み、その視物質が吸収する波長に対して興奮します(刺激を感じます)。この560nm、530nm、430nmの各波長が、それぞれ赤、緑、青(RGB:Red, Green, Blue)として認識されます。また、複数の色の感覚が同時に起こると、それらが混じった色として認識されます。
 どの錐体にも光刺激がない時は、私たちは色を感じません。赤の錐体にだけ刺激があると、世の中は赤く見え、緑と青の錐体も同様に、単独の刺激の場合は、それぞれ緑と青の世界が見えます。赤の錐体が興奮している時に、緑の錐体が同時に興奮すると、私たちには黄色がかって見え、青の錐体が同時に興奮すると紫がかって見えます。
 黄色や紫への偏りの度合いは、同時に興奮する緑や青の錐体の数が多いほど大きくなります。また、同時に興奮している3種類の錐体の数の比によって、茶色やうぐいす色などの微妙な色が認識されます。3種類の錐体が、同時に全て1:1:1の割合で興奮すると、白として認識されます。
 このように、私たちが認識する全ての色が、3種類の錐体の興奮の組み合わせ具合で決まります。私たちが、たった3種類の錐体を通して、全ての色を見ているならば、その3種類の錐体の興奮をコントロールすることによって、全ての色の認識を“作り出す”ことができるはずです。
 実は、その原理を応用しているのが、テレビ、パソコンや、最近、街角で見かける大型LEDパネルなどの画面です。
 インターネット用にホームページをつくるときに、6桁の数値を使って背景の色を指定する場合があります。6つの桁は、先頭から2桁ずつ、それぞれ赤、緑、青(RGB)の光の強さを指定していますが、これは、見る人の目の錐体をどのように興奮させるかを操作しているわけです。画面を赤くするなら、最初の2桁だけに数値を入力し、後ろの4桁はゼロにしておく。そうすると、画面からは赤の光しか出ないので、赤の錐体だけが刺激されて、赤く認識されます。画面を黄色にするなら、赤の錐体と緑の錐体を1:1の強さで刺激するために、赤の桁(初めの2つ)と緑の桁(真ん中の2つ)に同じ数値を入れ、青の桁はゼロにしておきます。光の強さが弱いと画面全体が暗くなりますが、赤と緑の強さを1:1に保つ限り、画面は黄色く見えます。
 3種類の錐体を“刺激”して色の認識を作り出せるのに対して、逆に、光刺激を取り除いて錐体の興奮を“静める”ことによっても同じ結果が得られます。例えば、赤の認識を作りたい時は、全ての錐体が興奮していない状態で、赤の錐体だけを“刺激”する方法と、全ての錐体が興奮している状態で、緑と青の錐体への光刺激を取り除いて興奮を“静める”方法とがあります。つまり、結果的に、赤の錐体だけが興奮している状態を作り出すことができれば、赤の認識が生まれるのです。この後者の方法で色を見せるのが印刷で、ここから印刷(インク)の三原色が出てくるのです。
 印刷にはシアン、マゼンタ、イエロー(CMY:Cyan, Magenta, Yellow)というインクの三原色があります。ちょっとややこしいのですが、結論からいうと、シアン(青緑)は赤の錐体への刺激をとりのぞくインク、また、マゼンタ(明るい赤紫)は緑の錐体への刺激を、イエローは青の錐体への刺激をそれぞれ取り除くインクなのです。
 “錐体への刺激を取り除く”というのは、インクが“錐体を興奮させる波長の光”だけを吸収してしまうということなのです。一般に、紙からの反射光は、全ての波長の光を含んでいるため、私たちの網膜の3種類の錐体がすべて興奮して、紙は“白く”見えます。この状態から、“興奮してほしくない錐体を刺激する波長の光”だけを吸収してしまうインクを紙に載せることによって、反射光の中からその波長の光を取り除いてしまい、錐体の興奮を静める操作をするのです。
 赤い文字を印刷したい場合は、赤の錐体だけを興奮状態にしたいので、マゼンタ(緑の錐体を刺激する波長の光を吸収する:明るい赤紫)のインクと、イエロー(青の錐体を刺激する波長の光を吸収する)のインクを重ねて印刷します。また、青い文字にしたいなら、同様に青の錐体を残して、赤と緑の錐体を刺激する波長の光を吸収するシアン(青緑)とマゼンタ(明るい赤紫)を重ねます。また、茶色などの微妙な色は、3種類のインクの分量を変えて、それぞれの錐体への刺激の度合いを調整して作り出します。
 すなわちCMYの3種類のインクの重ねかた次第で、3種類の錐体への刺激がコントロールでき、紙の上にも全ての色が作れるのです。もちろん印刷では、三原色を重ねると、赤、緑、青の錐体への光刺激がすべて吸収されて、色は黒になります。
 “補色”という言葉がありますが、これは、最初の色に重ねると色がなくなる第二の色のことです。光の場合の補色は、重ねるとすべての錐体が1:1:1で興奮して白くなる色のことです。一方、印刷の場合の補色は、重ねるとすべての錐体への刺激がなくなり、黒になる色のことです。
 つまり、赤:緑:青の錐体が、それぞれ異なる割合で興奮している色の場合の補色とは、それぞれの割合を足しあわせると、3つの錐体の興奮度合いが、光なら1:1:1、印刷なら0:0:0となる色のことです。
 青の錐体が興奮している状態で、色をなくすには、テレビなどの画面なら、緑と赤の錐体を刺激する光を重ねます。一方、印刷では、青の錐体を刺激する波長の光を吸収するインクを載せることになります。実は、この場合は、どちらもイエローです。したがって青の補色は、光でも印刷でもイエローです。
 “色”の三原色は、なかなか奥が深いです。560nm、530nm、430nmの錐体に対応する三原色は、人間にしか当てはまりません。錐体の中の視物質が吸収する光の波長が、人とは異なる動物の場合には、世の中が全く違って見えるはずです。また、もしも、人間に赤外線領域の電磁波を吸収して興奮する第4の視物質を持つ4種類目の錐体があったとすると、私たちの色の世界は“四原色”で再現されることになり、食べ物は暖かいか冷めているかが色彩で見ることができます。また、空の虹には色の帯があと2本くらい加わって見えるでしょう。


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