銅・鉛・亜鉛のお話

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更新日:
 2008年6月28日







銅・鉛・亜鉛
 非鉄金属といえば、この三つが代表的存在である。なかでも銅は非鉄金属の王といわれる。これら3金属の原鉱はいずれも主として硫化鉱で、秋田県北鹿地方に産する黒鉱にはこの3金属をはじめ、金・銀・鉄・石膏・バライトなどが微細に混在しているので細かく砕いて選鉱し、それぞれの精鉱とする。
 銅は、硫化鉱を空気中で酸化しながら共存する硫黄と鉄を除き、粗銅としたのち電解精製してつくられる。銅は金銀とともに貴金属のI B族に属し、いずれも貨幣として重要であるが、量的には、銅がはるかに多く産し、かつ用途も広範である。
 15〜16世紀の日本は、製錬法は素朴ながら全国的に鉱山が開発され、世界有数の産銅国で年産数千トンに達し、その相当部分を輸出にあてていた。
 銅は熱伝導性・電気伝導性が銀についでよく、耐蝕性にも富んでいるため、熱伝導材料・導電材料としての用途が多い。なかでも電線は銅の用途の60%以上を占めている。しかし最近では、導電性は劣るが軽さのためにアルミニウムの進出も著しい。熱伝導材としては調理器具や冷暖房配管・熱交換器などに使われている。
 耐蝕性を利用するものに屋根材があり、年月をへて緑青(ろくしょう)で覆われた屋根は美しい。緑青は塩基性炭酸銅であるが、日本では古来これが毒であるという俗説があり、調理器具や水配管などとしてはあまり好まれなかったが、しだいに使われるようになりつつある。
 銅は他の金属と合金をつくりやすいことが特徴である。錫との合金は、青銅でかつては天然に産したことから最も古くから人類に使用され、現在も美術品鋳造用に使われる。前10世紀ごろの周の時代に、銅に対する錫の配合量を目的に応じて変えることを示した書物がある。すなわち鐘やかなえは14%、斧は17%、ほこは20%、刃物は25%、矢じりは30%、鏡やひうちがねは50%というように、硬さを必要とするものほど錫の量を多くするよう指示している。
 亜鉛との合金は黄銅、あるいは真鍮(しんちゅう)と呼ばれ、美しい色沢からいわゆる伸銅品や楽器・日用雑貨金具などの主流を占めていたが、最近ではプラスチックとステンレス鋼がとって代わりつつある。そのほかアルミニウムとの合金のアルミ青銅・錫と小量のリンを含む機械用リン青銅・黄銅にニッケル・マンガンなどを加えた強力黄銅の俗称マンガン青銅など、いずれも銅合金のことを青銅と呼んでおり、それぞれ多くの種類と特徴をもっている。錫と亜鉛を含む合金は砲金と呼ばれ、強度・鋳造性に優れ、鍛造もできるので大砲の砲身に用いられた。
 一方、銅は金・銀など貴金属に実用的な強度を与えるための添加成分として用いられ、銅25%を含む金は18カラットとして装飾用などに最も広く用いられている。鉛は重く、やわらかい金属で、硫化鉱を脱硫焼結した焼結鉱を溶鉱炉でコークス還元して容易に製錬される。純度を上げるにはさらに電解精製を行う。硫化鉛は方鉛鉱と呼び、半導体なので鉱石受信機の検波器として用いられた。
 鉛の最大の用途は自動車用バッテリーで、水道用鉛管の用途は少なくなった。鉛は放射線を通しにくい性質があるので、放射線防護用に鉛ブロックが使われる。純鉛の融点はセ氏327度で、合金にするとさらに融点が下がるので、鉛を主成分として種々の易融合金がつくられる。ハンダやヒューズ・活字合金などがその例であり、顕微鏡試料埋込用ウッド合金はセ氏60度で溶ける。鉛は耐蝕性でとくに酸に対する耐蝕性があるので、化学装置の内張用として用いられる。この場合、純鉛ではやわらかすぎて自重に耐えられないので少量のアンチモンを加え、かたくする。これを硬鉛という。
 鉛は、たたいても鈍い音しかしないようにダンピング特性が大きいので、音や振動の吸収体として有効である。新幹線や高速道路あるいは防音室などには鉛の防音壁が用いられている。鉛は身体に蓄積すると有毒で、いわゆる鉛毒をもたらす。従来、ガソリンにノッキング防止用として添加していた4エチル鉛は公害の源として控えるようになった。
 亜鉛は鉛につぐという名称からすれば、鉛に近いように思われるが、性質は相当に異なっており、とくに電気化学的に鉄よりも卑で、鉄と容易に合金をつくるので、溶融亜鉛中に鉄製品を浸してメッキするいわゆるドブ漬メッキが古くから行われた。薄鋼板に亜鉛をメッキしたものを亜鉛引鉄板あるいはトタン板と呼ぶが、亜鉛は鉄がさびようとするとき代わりに溶け出して鉄を守る働きをするので、必ずしもメッキして全面を覆う必要はなく、たとえば吃水線下の船腹などに亜鉛塊を取り付けておくと防蝕の目的が達せられる。このように亜鉛は銅や鉛に比べると卑な性質をもつので製錬するのが難しく、その歴史は比較的新しい。ここで卑というのは対酸素親和性が大きいことを意味するので、硫化亜鉛を空気中で焼くと金属亜鉛とはならずに酸化亜鉛となる。これを高温で炭素還元すると亜鉛蒸気となるから急冷して液体亜鉛を得る。また酸化亜鉛を希硫酸に溶かし、電気分解によって亜鉛を析出させる方法もあり、最近は環境汚染防止の見地からこの方法が多く採用されている。
 亜鉛の硫化鉱に微量ながら随伴するのがカドミウムで、神通川流域のイタイイタイ病の原因の一つとされたように亜鉛の産するところに伴う。カドミウムは優れたメッキ性をもち、黄色顔料としても有名である。カドミウム電池は充電できるので、非常口表示灯や、シェーバーの電源として用いられる。
 亜鉛は融点が低い(セ氏419.5度)と同時に蒸気圧も高く、沸点はわずかにセ氏907度である。したがって製錬の際に簡単に蒸気として得られるし、加熱すれば容易に気化するので石油と同じ原理で蒸留精製が行われる。純亜鉛は結晶が発達して脆いが、アルミニウムを4%加えると非常にかたく強くなるので、精巧な鋳物をつくるダイキャストがメッキについで第2の用途となっている。自動車や家庭電器などの部品として大部分はメッキされて目立たないところに使われているのもいかにも亜鉛らしい。単1〜単4型の普及型乾電池は亜鉛−マンガン電池で、外側が亜鉛板でできており、相当の用途を占めている。亜鉛板はまた写真製版用としても多用される。


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