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更新日:
2008年6月28日
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粉の大きさと危険性
一般に、粉の大きさと危険性については、以下のように言われています。
・10μm以上の粒子は鼻で除去され、肺に達しない。
・5μm前後の大きさの粒子は、気管支の粘膜で覆われた繊毛で咽喉に戻され、タンとともに体外に排出される。
・0.5〜2μmの範囲の大きさの粒子は肺胞に付着して、じん肺を起こしやすい。
・ナノサイズ(ここでは、0.5μm以下)の粒子の危険性については研究中で詳細が不明。
呼吸によって肺の奧まで進入して沈着する可能性のある微粒粉塵を「吸入性粉塵」と言います。吸入性粒粉塵の呼吸器内沈着に関しては、粒子のMMAD(Mass Median Aerodynamic Diameter:空気力学的重量中位径)でほぼ決定されると考えられています。
一般的には10μm以上の大きな粉塵は、鼻で除去され、肺の奧(肺胞)まではなかなか到達しないと言われています。
5μm付近の粉塵の多くは、上部呼吸気道に沈着し、気管支の粘膜で覆われた繊毛の繊毛運動によって、咽喉の方へ戻され、タンに混じって体外へ排出されます。しかし、気管支等で除去できなかった粉塵は、肺(肺胞)まで行き、肺胞に沈着します。
肺胞に沈着して、じん肺を起こしやすい粉塵の粒径は、0.5〜2μmの範囲が最も顕著であると言われています。これは、人や小動物を含む多くの実験で確認されているようです。
しかし、5μm以下の小さな粉塵のみが有害で、それ以上の大きさの粉塵の有害性は小さいかというとそうではありません。肺に入って沈着する粉塵粒子は、その大きさだけでなく、形状、比重、呼吸速度などによっても異なります。
小麦粉のように、肺にほとんど変化を与えないような不活性な粉塵もあるし、肺に変化を与え、正常な肺組織の機能を害する粉塵もあります。肺への障害の度合いは、肺に入る粉塵の種類によって異なるし、吸入される粉塵濃度によっても異なります。以下の粉塵については、危険性が指摘されています。
・アルミナ(1)
アルミナに起因するアルミナ肺の場合、アルミナが気管支、細気管支に強い刺激を与えるので、その炎症を早くから起こし、気管支拡張、肺気腫を起こし、気腫がやぶれて自然気胸を繰り返します。
・アルミニウム(1)
アルミニウムは、ケイ酸、ケイ酸化合物に比べて、じん肺起因性が弱いが、肺気腫が強く、呼吸困難が早期にあらわれるという気管支変化の極めて強いじん肺を引き起こす。
・滑石(タルク)(1)
滑石(Talc)は通常、タルクといい、白色または、淡紅色の脂肪感に富んだ柔らかい鉱物で、化学式は3MgO・4SiO2・H2O(含水ケイ酸マグネシウム)である。しかしながら、一般には蛇紋石や緑泥石などの岩石類をともなうため、酸化鉄や、アルミナを多少、含んでいる。
滑石は、電気の絶縁性を持つと同時に、きわめて柔らかく、容易に粉砕できる特徴がある。粉末タルクには吸収性や固着性が強く、耐火性にも優れている。
滑石を吸収することによって起きる滑石肺の場合、取り込まれた滑石粉塵は肺胞内を充填し、はじめ細胞成分の多い繊維の少ない小結節を形成するが、2mm大以上に達すると粗大な繊維が発生し、巨細胞の出現も多いほかに、組織の変性壊死の傾向が著しくなる。
・酸化鉄(1)
酸化鉄による肺内での作用は次の通りである。作業環境中では0.2〜0.5μm以下とみられる酸化鉄ヒュームは、肺では凝集して1〜5μm以上の大きさとして肺胞内に滞留し、繊維増殖を起こすが、比較的弱く、滞留粉塵が一定量を越えると強い繊維増殖巣を形成する。
・石英(1)
人体、特に呼吸器系に取り込まれたとき、石英粒子の物理化学的性質による細胞毒性と結節性綿維化作用によって細胞を破壊し、吸入した石英の量にもよるが、現代医学でも不治の病であるけい肺になる可能性がある。
一般に、粉塵中に含まれる遊離ケイ酸(石英)の含有率が高いほど、人体に与える影響が大きいと言われる。遊離ケイ酸とは、石英、トリジマイト、クリストバライト、メノウ、オパール等、化学的には二酸化ケイ素(SiO2)で表される。
参考文献
1) 名古屋俊士:“おもしろい粉のはなし”、日刊工業新聞社(1991)
2) 京野洋子:エアロゾル研究、11(3)、211〜217(1996)
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