レイノルズ数のお話

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更新日:
 2008年6月28日






◎レイノルズ数の話

 慣性力と粘性力の比をレイノルズ数(Reynolds number)と呼びます。

 流体力学において、流れの性質を調べるために利用される重要な値です。イギリスの物理学者オズボーン・レイノルズ(Osborne Reynolds)が定義しました。

 レイノルズ数、慣性力と粘性力の関係は、以下の式で示されます。

 レイノルズ数 = (慣性力)/(粘性力)
        = (密度)/(粘度)×(長さ)×(速度)
    慣性力 = (質量)×(加速度)

 Re = (U×L)/ ν
   = (U×L)/ (μ/ ρ)

 ここで、
  Re:レイノルズ数
  U:代表速さ(m/s)
  L:代表長さ(m)
  ν:動粘性係数(m2/s)
  μ:粘性係数(Pa・s)
  ρ:密度(kg/m3)

 例えば、蜂蜜や人間の血のようなどろどろした流体では、レイノルズ数は低くなります。水や空気などは、これらよりも高いレイノルズ数となります。

 レイノルズ数が大きければ粘性力は無視することができ、慣性力だけを考えれば良いのです。レイノルズ数が小さければ、粘性力だけを考えれば良いのです。レイノルズ数を知れば、その物体に働く力の種類や物体の周りの流れの様子が分かるので、流体力学では最も基本的な数値となっています。


・円管中を流れる流体の流れは、レイノルズ数によって、以下のように分類されています。
 Re > 4000 :乱流
 2100 < Re <4000 :遷移域
 Re < 2100 :層流

 レイノルズ数が2100よりも小さい値の流れは、整った流れ(層流)になっています。


・微生物の世界とレイノルズ数
 微生物の世界では、体長1mmをほぼ境にして、生き物の生きている世界ががらりと変わります。これは、「小さい世界」と「大きい世界」とでは、働く物理法則が違っているからです。
 「大きい世界」はニュートン力学が支配する世界であり、慣性力が主役となっています。一方、「小さい世界」では慣性力は主役に成り得ません。
 というのは、慣性力は質量に比例しており、質量は長さの3乗に比例するため、サイズが小さくなれば急速に質量が減少し、慣性力が非常に小さくなってしまうからです。
 このため、「小さい世界」では、慣性力に代わって分子間力の引力が主役になります。これは、「環境がべたべたと粘りついてくる世界」です。
 また、この「小さい世界」では、熱運動による分子のゆらぎも無視できなくなってくるため、統計力学が支配する世界でもあります。
 レイノルズ数が大きければ粘性力は無視でき、慣性力だけを考えればよい。レイノルズ数が小さければ、粘性力だけを考えればよい。レイノルズ数を知れば、その物体に働く力の種類や物体のまわりの流れの様子が分かるので、流体力学では最も基本的な数値となっています。
 体長1mm以下では、粘性力が慣性力よりも大きい。粘性力の支配する世界では、環境がベタベタと粘りついてくる。サイズの小さいものにとっては、水は水飴のようにベタベタと粘っこいものなのだ。
 体長1cm以上の生物は慣性力が支配する世界に住んでおり、0.1mm以下のものは粘性力の世界に住んでいると考えて、まあ、間違いはない。その中間の1mm前後の動物では、レイノルズ数が1程度であり、粘性力と慣性力の両方が関わってくる。しかし、レイノルズ数はサイズだけでなく、速度にも比例するので、動く速度を変えて、粘性力と慣性力の世界を自由に行き来することができる。


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