レオロジーのお話

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更新日:
 2008年6月28日







◎レオロジー(Rheology)(1998年8月8日)
 レオロジーとは、物質の流動と変形を取り扱う近代科学の一分野です。対象とする物質は問わず、弾性論、塑性論、流体力学等で取り扱うには複雑すぎる物質や、現象が研究対象になります。レオロジーの目的は、物質の複雑な力学挙動を分子論的、構造論的に解明すること、及びそれらの成果を工業に応用し技術の革新や、製品の性能の向上に役立てることです。
 工業材料のレオロジー挙動が、実際の作業工程において重要な役割を演じることは多く、プラスチック、繊維、ゴム、パルプ、油脂、接着剤、セラミック、薬品、金属材料など、レオロジーが関与する工業分野は広がっています。最近では、自動車、電気、航空機工業などの、材料のユーザーや、石油、石炭の採掘関係などにおいても、レオロジーの役割が大きく重要になってきています。
 レオロジー(Rheo1ogy)とは、物質の変形と流動を取り扱う比較的新しい科学の一分野です。物体の変形や流動に関する物理学は、古くから、弾性論や流体力学として存在しました。弾性論は、フックの法則を基本にして弾性固体を、流体力学は、粘性のない流体および、ニュートンの法則を基本とする粘性流体を、できる限り厳密に、その挙動を迫求しようとするものです。それに対し、レオロジーでは、弾性固体とか粘性流体など、理想的な“物体”に限ることなく、我々が日々、遭遇する一般に存在する“物質または材料”のすべてをその対象に含んでいます。
 対象とする物質・材料を問わず、その変形と流動を取り扱うという意味で、レオロジーは物理学、化学、工学、医学、生物学、農学、薬学、食品学、家政学、時には心理学までもを含む、多くの学問分野に横断的に関係する極めて学際的な学問でもあります。何か物質でも材料でも工業製品でも、何かが変形する、または流れる場合を頭に浮べてください。そこにレオロジーが存在するのです。
 哲学の手法に、演繹と帰納があるように、レオロジー研究にも二つの立場が存在します。一つは、特定の物質材料を設定せず、多くの物質に共通する力学的性質、例えば弾性、粘性、粘弾性、塑性などを用いて、一般的に変形、流動挙動を考える立場です。対象が限定されないので応用範囲は広いですが、個々の物質の特別な性質を説明できない場合も多いです。この立場は現象論的レオロジーと呼ばれ、弾性論や流体力学のとる立場に似ています。
 多種多様な物質がレオロジーの対象ですが、個々の物質は、特有の性質や、その使用目的をもっています。これらに注目した立場に立つレオロジーは、対象名を前に付して、例えば高分子レオロジー、生体(物)レオロジー、食品レオロジーなどと呼ばれます。これらの領域では、対象とする物質の特殊性、すなわち物質の内部構造に深く立ち入り、分子論的ないしは構造論的にそのレオロジー挙動を迫求しようとするものであり、物性論的あるいは材料学的レオロジーとも言えます。
 この二つの立場は別々に存在するものではなく、互いに助け合い、融合し合って、過去のレオロジーの発展を推進して来たのです。
 上に述べたように、レオロジーの特徴は対象を限定しないことにあります。このことは極めて複雑な物質を取り扱う必要があることを意味しています。したがって、レオロジーの目的は、複雑な物質または材料の力学挙動を現象論的・材料学的に解明することにあるとも言えます。また、レオロジーは工業製品の品質の向上や技術の革新に応用され、その達成に直接寄与できる学問であることも容易に理解することができます。この意味で、レオロジーは典型的な実学なのです。
 工業材料のレオロジー挙動が、実際の作業工程および製品の性能評価において本質的な役割を演じる場合は多いです。プラスチック、繊維、ゴム、紙、接着剤、セラミックス、セメント、塗料、印刷インキ、化粧品、食品、医薬品、金属材料など、レオロジーが関与する工業分野は広いです。最近では、自動車、電機、航空機工業など材料のユーザーや、石油・石炭の採掘などでも、レオロジーの役割が重要になりつつあります。
 レオロジーは、漢字の日本語訳をもたず、カタカナで書かれる数少ない学問領域であるためか、非常に難解な学問かと敬遠されがちでした。しかし前述のように、工業において日々遭遇する“変形と流動”が関係する諸問題の解決もレオロジーの重要な目的の一つであれば、工業界において日常的に問題に取り組んでいる多くのレオロジスト(自身では意識していないかも知れないが)が存在しているはずです。科学の各分野においても、単純な系を取り扱うほど難しく、複雑な系を扱うにしたがってやさしくなるものです。複雑な系を扱う場合には、思い切った単純化が可能な(というよりは、せざるを得ない)のですが、簡単な系では、まじめに取り組まなければなりません。レオロジーの学問の内部でも同じことが言えるのです。

参考文献
 日本レオロジー学会偏:“講座・レオロジー”


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