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更新日:
2012年10月7日
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◎カカオ豆(cacao beans)(2012年9月14日)
カカオ豆は、チョコレートやココアの主原料で、カカオの樹の果実の中にある種子のことです。カカオの学名は、「あおぎり科テオブロマ属カカオ(Stercurliaceae Theobroma Cacao (Linnaeus))です。テオブロマとは、「神様のたべもの」という意味で、メキシコ・アステカ族の神話に由来します。昔は王様や貴族あるいはお金持ちだけの貴重な食べものでした。
カカオは、赤道の南北緯度20度以内、年間平均気温27℃以上の、しかも年間を通じてその上下する範囲がごく狭い、高温、多湿な地方で栽培される熱帯植物です。樹高は5〜10メートル程度、幹の太さは10〜20cmの常緑樹で、カカオノキ、ココアノキとも呼ばれます。標高約300メートル程度の丘陵地に自生しており、産地は西アフリカ、東南アジア、中南米です。
カカオの樹は、樹齢4年程度で直径3cm程度の美しい花を、1個または房のように、年中、幹や枝に咲かせます。白、ピンク、バラ色、黄色、赤など小さくてデリケートでやわらかみのある美しさはパステル調といわれていますが、香りはありません。多数の花の一部は結実し、6ヵ月後に完熟します。結実率は1%未満で、花期は原産地では周年、栽培地では気温によるようです。日本では5月以降に開花することが多いようです。
果実は、長さ15〜30cm、直径8〜10cmで、カカオポッドと呼ばれます。形は卵型が多いですが、品種によっては長楕円形、偏卵型、三角形などもあり、外皮の色も赤、黄、緑など多様です。厚さ1cm以上の堅い殻の中にパルプと呼ばれる甘く白い果肉に包まれた20〜60粒の種子を持っています。これがカカオ豆(cacao beans)となります。この種子は40〜50%の脂肪分を含んでいます。
収穫期は産地によって異なりますが、概ね年2回で乾期と雨期に行われています。乾期の収穫はメインクロップ、雨期の収穫はミッドクロップと言います。収穫された果実は果皮を除いて一週間ほど発酵させます。
発酵方法には2種類の方法があります。1つ目は、バナナの葉でカカオの種子を包んで発酵させる方法で、ヒープ法と呼ばれています。これは西アフリカなど、バナナの葉が容易に手に入る地域で主流の方法です。もう1つは、木箱による方法で、ボックス法と呼ばれています。これは中南米などのプランテーションで主流の方法です。豆の種類によりますが、発酵期間は約1週間です。この発酵過程で種子の中の成分が変化し、カカオ豆の香りの成分が醸成されます。
発酵が終わった種子は、水分を6%以下に乾燥させます。乾燥は天日乾燥で、極一部では、熱風乾燥も行われています。ガーナなどの西アフリカでは、約1mの高さに組んだ木組みの上にスノコを敷いて、その上に豆を広げて乾燥させる方法が行われています。一方、中南米のプランテーションでは、パティオと呼ばれる広場に豆を広げ、ビニールの覆い等で日照時間を加減して乾燥度のコントロールをする方法が行われています。一部の国、地域や小規模農家では、道路端や空地などの適当な所に広げて乾燥させている例もあるようです。
乾燥されたカカオ豆は、ココアやチョコレートの原料となります。現在、栽培されているカカオの品種は、下記の3系統が知られています。
・フォラステロ種(FORASTERO)
南アメリカのアマゾン渓谷、オリノコ渓谷等が原産地です。一般的に成長が早く、病害虫に対する耐性が強く、栽培は容易で、現在は世界の主流となっています。現在は東南アジアや西アフリカなどで多く栽培されています。
ポッドの色は、緑から成熟すると黄色になり、豆は偏平型で苦味が強いのが特徴です。主な品種に、ガーナ、コートジボワール、ナイジェリア、ブラジルなどがあり、これらはアマゾンフォラステロとよばれることがあります。派生種としては、花の香りに特色を持つエクアドル(アリバ)があります。
・クリオロ種(CRIOLLO)
中央アメリカ、メキシコ、西部ベネズエラに有史以前から生育していたもので、特に、メキシコ南部からニカラグア、ベネズエラにかけて分布し、古代から利用されてきたようです。病害虫に極めて弱く、栽培が非常に難しい種で、19世紀半ばには、ほとんどが病害で死滅したそうです。
豆の品質は良く、独特の香りを有していて、フレーバービーンズとして珍重されています。ポッドの色は、成熟すると赤または黄色になり、豆は丸く、苦味が少ないのが特徴です。
チョコレートのブレンド豆として貴重な存在です。現在では、ベネズエラ、メキシコなどで、ごく少量が生産されています。
・トリニタリオ種(TRINITARIO)
フォラステロ種とクリオロ種を交配したハイブリッド種で、トリニダード島で育種に成功したことから命名されました。クリオロ種とフォラステロ種の性質を受継いでおり、栽培が容易で品質も優れています。ブレンド豆として、不可欠な存在になっています。
現在ではベネズエラ、トリニダード・トバゴなど、中南米地域で栽培されています。
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