真珠のお話
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2008年5月10日





◎真珠(Pearl)
 6月の誕生石にされています。貝が異物を分泌物で包んだもので、厳密には宝石ではありません。炭酸カルシウムが主成分です。貝の体内に侵入した砂粒などの異物を、外套膜(がいとうまく)から分泌された真珠質が包んで、できます。
 結晶系は斜方晶系で、化学式はCaCO3です。硬度は2.5〜4、比重は2.72〜2.78です。屈折率は1.53〜1.686、複屈折率は0.156で、真珠光沢があります。
 真珠の養殖は、日本で開発されました。明治21年、アコヤ貝の乱獲による絶滅を恐れた御木本幸吉が、アコヤ貝の養殖と真珠の養殖を思いついたそうです。そして、明治23年頃、動物学の第一人者であった箕作佳吉の教えを受けて真珠養殖を試み、真珠の核に「さんご」や「万古焼」の種玉を使って、実験を始めたそうです。明治26年には、半円真珠を作り出すのに成功し、明治38年になって真円真珠を作ることに成功したそうです。
 真珠は、貝の種類や育った環境などによって、様々な形、色が産まれます。形は大きく分けて、真円真珠、半円真珠、変形真珠(バロック)があります。真円真珠は、正円に近い「八方ころがし」といわれるものが上等とされています。半円真珠は、マべ貝に半球体が固着してできた半円形の真珠で、明治26年に御木本幸吉が最初に作り出した養殖真珠は、前述のようにアコヤ貝による半円真珠でした。半円真珠は、現在はアコヤ貝では作られていません。変形真珠は、一般にバロックといわれている不定形のもので、ルネッサンス期、ドロップ形や様々な不定形の真珠が大流行したことがあります。淡水真珠にはこの変形が多く、ダブレツト、クロス、ドラゴンなどの形があります。
 真珠の色は、虹の色に例えられるくらい多彩で、ピンク、ホワイト、クリーム、イエロー、ゴールド、シルバー、グリーン、ブルー、ブラックなどがあります。一般に、ピンク系統が珍重され、黄色系は多量に産することから割安になっています。淡水真珠では、このほかに、オレンジ色の濃淡、淡青色から深紫色を含むライラック色、ワイン色系まであり、調色加工されることもあります。
 真珠の評価は、真珠の光沢、形、大きさ、キズの有無がポイントになります。
@真珠の核を巻いている真珠層に厚みがあり、光沢に深みのあるものが良いものです。この厚みのことを「巻き」と言い、巻きが厚いのが良いものです。
A形が「八方ころがし」といわれる正円に近いものほど上等です。
Bサイズは大きい方が良いものです。真珠の大きさは、直径で表します。一般に、中珠といわれるのは6〜7mm、大珠は8mm以上を指し、直径が大きいほど高くなります。
Cキズ、しみが無いものが良いものです。
 以上の4点は、真珠の珠自体の評価ポイントですが、ネックレスなど連になっている場合は、珠が互いによく調和しているかどうかも大切で、これを「連相」と言います。真珠のネックレスは、連相の良いものが高く評価されます。
 真珠は、宝石としては軟らかく、キズがつきやすいものです。また、熱にも弱く、酸にも弱いため、取り扱いには注意が必要です。肌に直接つけた場合は、柔らかい布で、汗や化粧品などの油分を拭き取ってください。やわらかい布を2枚準備して、1枚を40度くらいのお湯で濡らしてよく絞り、やさしく油分を拭き取り、その後、すぐにもう1枚の乾いた布で水分を拭き取ってください。真珠は60度以下の熱なら大丈夫です。
 保管する際は、柔らかい布で包み、キズをつけないように注意します。太陽の光や、蛍光灯の光などで変色します。直接、光が当たらない場所、極端に乾燥しない場所で保管してください。また、真珠のネックレスは、珠に通してある絹糸を年に一度ぐらい取り替えると良いようです。
 模造真珠は、ガラスやプラスティックなどに特殊な塗料を塗って作られています。真珠層がありませんので、判別できます。
 エリザベス女王は大の愛好者であり、真珠は王室の宝石として利用されてきました。また、エジプトの女王クレオパトラが、酢の中に大粒の真珠を溶かして飲んだという話もあります。
 養殖真珠は、その真珠を生む母貝の種類によってアコヤ真珠、白蝶真珠、黒蝶真珠、マべ真珠などに分類されます。そのほか、イケチョウ貝を母貝とする真珠に淡水真珠があります。

・アコヤ真珠
 アコヤ貝は、真珠層が美しく微妙な色合いを作り出す点で、優れた真珠です。しかし母貝の大きさ(約10cm)から、珠のサイズに制限があり、10mm以上の珠は少ないです。大、5〜7mmの珠で、8mm以上の真珠は大珠といって、価格が高くなります。普通、養殖真珠というと、アコヤ真珠を指すことが多いようです。

・白蝶真珠
 白蝶貝を母貝とする真珠で、南洋真珠とも言います(一般には、黒蝶真珠も南洋真珠と言いますが、厳密には、白蝶真珠だけを言います。)。南洋珠とも言います。白蝶貝は南洋諸島近海に生息する最大の真珠貝で、殻長は15〜20cmです。真円真珠としては最も大きい珠径10〜13mmが採れます。オーストラリア、ビルマなどの近海で養殖されています。

・黒蝶真珠
 黒真珠ともいう。黒蝶貝から採れるシルバーから黒までの真珠です。黒蝶貝の真珠層は、外縁が帯緑の暗黒色で、中央部が鋼鉄色を帯びています。灰色の真珠が多いですが、ときには、極上等とされている漆黒の珠がとれます。白蝶貝よりもやや小さいため、採れる珠もやや小さめです。市販の黒真珠にはアコヤ真珠を黒く染色したものがかなりありますが、これは本当の黒真珠ではありません。現在、タヒチ島および、沖縄近海で養殖しています。

・マべ真珠
 マべ貝を母貝として採れる半円形の真珠です。マべ貝は比較的大きな貝で、殻に穴をあけ、そこから樹脂を注入して、殻の内側に半球状のかたまりを作ります。それを真珠層がとり囲んで、半球状の真珠ができあがります。半円真珠のほとんどがマべ真珠です。

・淡水真珠
 琵琶湖や、中国の湖水で産する淡水産真珠です。母貝はイケチョウ貝で、アコヤ貝より大きく、殻長が20〜30cmにまで成長します。二枚貝の外套膜を5〜7mmに切除して、これをイケチョウ貝に挿入します。海水真珠は外套膜と核を挿入しますが、淡水真珠の場合、8mm以下の珠であれば、この外套膜を入れるだけで済みます。核がないため、珠は真円にはならず、フラットな米粒状や、スティック状のもの、クロスなど、様々な形のものが出来ます。また、母貝1個で40〜50個の小さな真珠を作ることもできます。現在は琵琶湖のほか、茨城県霞ケ浦、岐阜県海津でも養殖しています。

・真珠光沢の秘密
 真珠は、核とそれをとり巻く真珠層から構成されています。養殖真珠の場合は、核として、ミシシッピ河でとれるドブ貝の貝殻を丸く削ったものが使われるそうです。この核を挿入すると、真珠貝は、刺激物を排除しようとして、外套膜(真珠層)を分泌し、これを取り込み、ついには貝体内に分離します。
 殻を作っている物質のアラゴナイト(炭酸カルシウム結晶)と分泌物の蛋白質であるコンキオリンが層状をなして核に沈着し、ついには美しい真珠を作ります。この層は貝殻の真珠層と同じで、断面を顕微鏡で見ると、アラゴナイトがレンガ状に規則正しく積み重なり、その隙間をコンキオリンが埋めて接着剤の役割を果たしているのが分かります。これを真珠の表面から見ると、六角状のアラゴナイトがうず巻状の条線模様を描いています。オリエントといわれる独特の真珠光沢は、この真珠層が作り出しているのです。真珠層の厚みは0.3〜0.5μm(マイクロメートル)あり、層を形成するまでに、核を挿入してから3〜4年の年月を必要とします。したがって、表面をルーペや顕微鏡で見れば、真珠層の成長模様が見えます。



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