トパーズのお話
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2008年5月10日




◎トパーズ(Topaz)
 11月の誕生石にされています。和名は黄玉(おうぎょく)です。結晶系は斜方晶系で、化学式はAl2(F,OH)2SiO3です。フッ素とアルミニウムを含むケイ酸塩鉱物です。硬度は8で、比重は3.53です。屈折率は1.619〜1.627です。
 トパーズの硬度は8で比較的硬い鉱物ですが、結晶の上下軸に直角の方向に割れやすい性質(劈開性)を持っています。このため、弱い方向に軽く打っただけでもひびや内部亀裂を起こすことがあり、場合によってはスパっと割れてしまいます。結晶の形からオーバル(長楕円形)やペアシェープ(洋ナシ型)の形にカットされることが多いのですが、その場合、横向きにヒビが入りやすいので、取り扱いには注意が必要です。
 トパーズの日本名は黄玉というように、黄色の宝石を代表する宝石です。しかし、トパーズは黄色の石だけではなく、ブルー・トパーズ、グリーン・トパーズ、カラーレス・トパーズ(無色トパーズ)、イエロー・トパーズ、インペリアル・トパーズ(黄金色)、ピンク・トパーズ、オレンジ・トパーズ、ブラウン・トパーズなどがあり、色彩豊かな宝石です。
 トパーズの色彩は、光や熱の影響で容易に変化することが知られています。褐色のトパーズを500℃までゆっくり加熱すると透明になり、ゆっくりと温度を下げると、ピンク色ないし、赤紫色に変化します。この様にトパーズの色彩が容易に変化するのは、光や熱によって、結晶の歪みが変化するためだと考えられています。つまり結晶に歪みを生じさせてやれば、色が変わると考えられています。実際、無色のトパーズにX線を照射すると、シナモン色に変化します。宝石として利用されているブルー・トパーズのほとんどが、無色の結晶に放射線を照射して、人工的に発色させたものです。
 この宝石の名は、ペリドットの産地であった紅海の島、トパージオ島(現在は、ザバルガット、英名:セントジョーンズ島)からきています。ここでは、紀元前からトパーズが採掘されています。その昔、アラビアの海賊たちがこの島に難破し、たまたま見つけたのが始まりとされています。その後、中世の十字軍によってヨーロッパにもたらされ、キリスト教の儀式に多く使われました。航海技術が発達していなかった当時は、常に霧に包まれたこの島にたどり着く事が困難であったため、ギリシャ語の「捜し求める」という意味の「トパズィオス(Topazos)」に由来して島の名前がつけられ、その島の名前からトパーズと呼ばれるようになったそうです。ペリドットも同じ様に、この島で採れ、昔はトパーズと呼ばれていました。
 トパーズは、東洋では“健康の石”といわれ、胃や陽を丈夫にし、食欲を増進させるのに効果があるとされていました。近代ではビクトリア女王が、ルビー、サファイア、オパールなどとともにトパーズを愛用したことが知られています。また、ヨーロッパには「イギリス人は海水色のアクアマリンを好み、スぺイン人は黄色のトパーズを愛する」という格言があります。
 現在では、トパーズの産地としてはブラジルが有名です。シェリーカラー(シェリー酒色)の上質のトパーズのほか、ピンク、ブルーに熱処理される黄色のトパーズなども産出します。ビルマのモゴック近辺では美しい黄、青、無色の大粒トパーズが多量に産出しています。他にスリランカ、ソ連、アフリカ大陸、アメリカにも産出地があります。日本では岐阜県苗木、山梨県金峰山などで産出します。苗木では、かつて大きな結晶が産出しており、現在、ニューヨークのアメリカ自然史博物館にある1463カラットの卵形にカットされたトパーズは、苗木産といわれています。
 トパーズには2種類あり、OHタイプ(天然インペリアル・トパーズ)とFタイプ(天然トパーズ)に分類されています。

・OHタイプ(天然インペリアル・トパーズ)
 シェリーカラー(シェリー酒色)と呼ばれ、高い価値を認められる宝石はインペリアル・トパーズです。ブラジルを産地としていますが、天然ピンク・インペリアルのみ、アフガニスタンで産出します。ただし、アフガニスタン産は退色が危惧されることと、極めて産出量が少ないため、市場で見ることは滅多にありません。
 シェリーカラーとは、インペリアル・トパーズに含まれる、黄褐色から橙褐色の彩りを指しています。シェリーカラーは、スペイン南部に伝わる美しい黄褐色の山葡萄酒に喩えられたものです。上品なシャンパンカラー、高貴なマリーゴールド、可愛いピンキッシュ・ブラウンといった彩りが広がるインペリアル・トパーズは、どれも自然が創り出しているナチュラルカラーです。

・Fタイプ(天然トパーズ)
 Fタイプのトパーズは、放射線処理によって様々な彩りを与えられるのが特徴です。一般的に、無色トパーズに青色の段階的な濃度の変化を与えた宝石が有名です。これは、人工的なトリートメント処理によって緑色、油色などバリエーションが揃います。無処理状態では薄茶色、淡水色、無色となり、内包物の混入が少なく、透明感の高い巨大な結晶が得られます。



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