漆のお話
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更新日:
 2009年1月28日






◎漆(Lacquer)(1996年1月19日)
 ウルシ科の落葉高木です。中央アジア原産で、高さ3m以上になります。日本では古くから植栽されていました。葉は大形の羽状複葉で、枝先に互生します。六月頃、葉腋に黄緑色の小花からなる円錐花序をつけます。秋には黄褐色の球形の実がなります。雌雄異株の植物です。
 葉などに触れるとかぶれることがあります。漆で皮膚がかぶれるのは、ウルシオール(urushiol)という成分が原因です。しかし、漆が皮膚に作用するにはラッカーゼという酵素が必要です。また、ラッカーゼが働くためには水分が必要です。漆塗りの工芸品は水分が2〜3%程度と低いため、ラッカーゼやウルシオールの働きが弱いため、皮膚がかぶれないのです。
 英語ではLacquer Treeと言います。塗料で使うラッカーのことです。日本語の「うるし」は、「うるしる(潤汁)」、あるいは「ぬるしる(塗汁)」に由来すると言われています。また、「うるわしい」という言葉が由来とする説もあります。
 昔から、塗料や接着剤として使われ、その塗膜は耐久性、耐薬品性(酸やアルカリに強い)に優れ、優美な肌合いと独特の情感を持っています。漆を採るヤマウルシの原産地は中国、チベット、インドなどの高原地帯です。
 塗料にしたり、蝋(ろう)を採るために、日本各地で古くから栽培されてきました。幹を傷つけて漆液をとり、果実の皮からは蝋を採ります。葉や幹にふれるとかぶれます。ウルシ科の植物で有名なのは、櫨(ハゼ)の木です。やはり蝋が採れますし、かぶれますね。他に変わったところで、マンゴー(マンゴー属)、ピスタシオ(ピスタシオ属)、カシューナッツ(カシューナッツ属)などもウルシ科の植物です。
 漆器は英語でjapanと言います(jは小文字)。Chinaとchinaの中国と陶器の関係と同じです。漆は、縄文時代前期、約5500年前の遺跡からも、漆を塗った櫛や盆などが出土しています。縄文時代晩期(B.C.1000-B.C.300)には、土器・弓・装身具などに塗料として用いられます。日本書紀に、漆部造兄(ぬりべのみやつこあに)と言う人物名があり、漆を製作するグループの存在がうかがわれます。大宝律令(A.D.701)では大蔵省の管理下に漆部司、漆部がおかれます。
 また、正倉院文書では地方に漆部があったと伝えています。正倉院宝物には、さまざまな漆技法をつかった楽器や調度品が残っています。奈良時代には、蒔絵(まきえ)技法が興ります。螺鈿(らでん)の技法も中国より伝わりました。
 鎌倉時代には、浮彫彫刻に漆をかけた鎌倉彫が考案されましたし、蒔絵の基本的な技法も完成します。室町時代には堆朱(ついしゅ)が行われ、桃山時代には、平蒔絵に絵梨地(なしじ)などの技法をあわせた大胆な意匠感覚の蒔絵があらわれました。江戸時代には、会津、輪島、津軽など各地方でも特色ある漆器がつくられるようになり、現在に至っています。

注1)蒔絵:漆で文様を描き、乾かないうちに金銀粉や色粉などを蒔いて付着させ、文様を表すものです。
注2)堆朱:朱漆を厚く塗り重ねて文様を彫ったものです。
注3)梨地:漆面に金銀の梨子地粉を蒔き、その上に透明な梨子地漆を塗って、粉を研ぎ出さずに漆を透かして見せるものです。仕上がりの肌が梨の皮に似ているのででこの名がつきました。
注4)螺鈿:夜光貝・あわび貝など、真珠光を放つ貝殻を文様に切って、木地や漆塗りの面に嵌(は)めこんだり、貼りつけたりしたものです。




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