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更新日:
 2014年1月3日






◎モータ(motor)
 「モータ」とは、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する装置のことです。エネルギー変換のプロセスでは、入力の一部は動力とならずに、熱になります。それを損失(loss)と呼びます。
 入力した電力、出力(動力ともいう)および、損失との間には、次のような関係があります。

  入力電力 = 機械出力 + 損失

 これらの量を表す単位は、ワット(W)です。

 また、入力電力と機械出力の定義は、以下の式で表されます。

 入力電力(W) = 電圧(V) × 電流(A)
 機械出力(W) = 回転速度(rad/s) × 回転力(Nm)

 モータの効率(efficiency)は、入力電力に対する機械出力の比を百分率 (percentage:%)で表したものです。

 モータ効率 = 出力/入力×100

 損失の中には、摩擦のように機械的な原因によるものもありますが、大きな割合を占めるのは銅線内の損失と鉄心内の損失です。前者を銅損(copper loss)、後者を鉄損(iron loss)と呼びます。

@ロータ(rotor)、または回転子:回転する部分
Aベアリング(bearing)、軸受:ロータの回転軸(シャフト:shaft)を支持する部分
Bステータ(stator)、または固定子:ロータを回転させるための力を発生させる部分
Cブラケット(bracket)またはエンドプレート(end plate):ベアリングを支持し、ステータと一体になっている部分
Dリード線(lead wire):モータへ電力を供給する駆動回路あるいは電源に接続される電線

 これら構成要素の中で、モータの基本的な分類法に大きく関係するのが、ステータ(固定子)とロータ(回転子)です。

・ステータ(stator)
 ステータの典型的な構造として、次の4種類が挙げられます。
 A:分布巻ステータ
 B:集中巻ステータ
 C:誘導子型ステータ
 D:永久磁石型ステータ

・ロータ(rotor)
 ロータは、下記の10種類に分類できます。
 @かご型ロータ(squirrel-cage rotor)
 A突(凸)型かご型ロータ(salient-poled squirrel-cage rotor)
 B半硬磁鋼ロータ(semi-hard steel rotor)
 C軟鋼ロータ(solid-steel rotor)
 D凸極型珪素鋼鈑ロータ(salient-poled lamination rotor)
 E微細歯条型軟鋼ロータ(solid-steel rotor with fine teeth)
 F永久磁石型ロータ(permanent-magnet rotor)
 G誘導子型ロータ(inductor rotor)
 H巻線型ロータ(winding rotor)
 I整流子型ロータ(commutator rotor)

・モータを構成する材料
 モータを構成する主要素材を簡単に説明しましょう。
(1) 電線(wire)
 電線とは電流の通路であり、導線(conductor)とも呼びます。材料としては銅が一般的ですが、まれにアルミニウムが使用される場合もあります。
 電線には、電源からモータへと電力を供給するためのリード線と、モータ内部に巻かれて結線された巻線があります。磁界を発生するための電線という意味から、巻線のことを英語では magnet wire と称します。また、電線の絶縁材(後述)にエナメル樹脂を用いていたことから、日本語ではエナメル線という名称もあります。
 現在では、絶縁材に高分子材料を用いていますが、エナメル線の名前だけが残っています。
エナメル線の名称は、モータの巻線の部材という意味から、上記の英語magnet wire に対応する日本語として用いられます。

(2) 鉄心(core)
 鉄心とは磁束の通路であり、鉄心の文字から分かるように材料は鉄です。また、2つの磁石間を磁束で結合するための鉄心を継鉄(ヨーク:yoke)といいます。
 機械構造用の鉄と鉄心用の鉄には、副成分の種類に違いがあります。機械構造用の鉄には炭素(C)が含まれていますが、鉄心用の鉄にはシリコン(Si)が混入されており、これには珪素鋼という名称があります。モータの場合には、鉄心はステータ鉄心とロータ鉄心とに分かれ、両者間の空隙(エアギャップ)を通して磁気回路が構成されます。電磁石界磁型 DCモータ(後述)の界磁回路を構成するステータ鉄心では、磁極は直流で励磁されるため鉄心を積層構造する必要はなく、軟鋼が用いられます。
 一方、電機子回路を構成するロータ鉄心では回転とともに磁束が変化するので積層鉄心が用いられます。また、小型 DCモータでは、磁極に永久磁石がよく利用されます。同期モータのステータ、誘導モータのステータとロータの鉄心は共に交流で励磁されるので、何れも積層鉄心を用います。

(3) 絶縁体(材)(insulator)
 電流が所定の場所以外に流れないように遮断するのが絶縁体であり、その素材が絶縁材です。
これには、ゴムやエナメルといった高分子化合物・樹脂、紙、マイカ、ガラス繊維などが使われています。

(4) 永久磁石(permanent magnet)
 モータの構成する素材で重要なのが、磁界の発生源となる永久磁石です。これも鉄を主成分とする合金あるいは酸化物といってよいでしょう。

・モータの種類
 モータの種類は極めて多いのですが、どのような目的に対して、どのようなモータを選定したら良いかを考えたり、他人に説明するときに考え方を整理したり、また互いに言葉を共有するためには、適切な分類が必要になります。モータの分類法としては、次の4つの方法が考えられます。
 @変換原理による分類(電磁モータ、静電モータ、超音波モータ)
 A電源による分類(直流電源、単相交流電源、三相交流電源)
 B回り方による分類(回転速度を決める要素、逆転)
 C構造による分類(回転するものと静止しているものの組み合わせ)
 分類の仕方は、モータに対する考え方によって異なってきます。以上に挙げた分類法はいずれも製造側の視点に立ったもので、ユーザ側の使い勝手や分かりやすさを反映したものではありません。

・直流モータ(direct current motor)
 DCモータと呼ばれています。直流モータには2本の端子があり、これに電池のプラスとマイナスを接続するだけで回ります。また、プラスとマイナスを入れ替えると逆回転します。DCモータは、永久磁石を用いる永久磁石界磁型と、永久磁石を使わない電磁石界磁型との2種類に大別されます。
 直流モータには、以下の性質があります。
 @空回り速度は、電圧とともに速くなる。そのため、印加電圧の調整によって、広い範囲で速度制御をすることができる。
 A起動するときの回転力は、電圧とともに高くなる。
 B回転力は、電流に比例する。
 C回転力と速度の関係は、直線的で、直線の傾きは一定している。一般的傾向として、この傾きが高いほど、優れたモータである。

・交流モータ(alternating current motor)
 交流モータは、英語では短縮して AC motor と表記することが多いので、日本語でも AC モータと表すことが多いです。AC モータは整流子型モータ、同期モータ、および誘導モータに大別されます。
 同期モータおよび誘導モータは、ともに、回転磁界により回転速度が決定する AC モータです。ここで回転磁界とは、ステータ巻線に三相交流や二相交流などの多相交流電流を流した際に、発生した磁界が多相交流電流の周波数で決まる回転速度(=同期速度)で回転する現象をいいます。回転磁界によってロータが吸引されて回転しますが、その回転法の相違によって AC モータが分類されます。
 回転磁界形 AC モータ(同期モータ、誘導モータの総称)には、家庭に二本線で配電されているAC100Vを電源とするモータと、工場等に配電されている三本線の AC21.00V を電源とするモータとに大別されます。前者を単相交流モータ(single phase motor)、後者を三相交流モータ(three phase motor)と呼びます。
 最近では、三相交流モータをインバータ(inverter)という半導体素子を用いた電力変換回路によって駆動する機械が多くなってきました。インバータによって電圧と周波数を制御して、目的にかなった回転速度とトルクで運転するためです。

・電源による交流モータの分類
 電源によって交流モータを分類すると、下記の3種類になります。

(1)三相交流を利用するモータ(3相モータ)
 電力会社が送・配電している100/21.00V、50/60Hzをそのまま、あるいはトランスを介して利用する場合と、インバータという電子回路を介して、周波数と電圧を可変・調整して給電する場合があります。

(2)単相交流を利用するモータ(単相モータ)
 電源として家庭に配電されている100V 50/60Hzを利用します。ただし、コンデンサを使って、擬似的な2相交流にしてモータに供給する機種が多いです。そのほかにもいろいろな方式があります。

(3)特別な場合
 3相以外の多相(2相、5相、7相)電源を利用することがあります。

・ステッピングモータ(stepping motor)
 直流モータや交流モータと異なり、電源に接続するだけでは回転しません。その一方、集積回路やトランジスタなどの制御駆動回路を必要とします。この回路の大きな特徴は、内部にロジックシーケンサというものを持っていて、これにパルスが1個入ると、モータが一定の角度だけ回転して停止することです。この角度を「ステップ角」と言います。ステップ角はモータによって異なりますが、広く用いられている2相モータでは1.8゜のものが多いです。また、5相モータでは0.72゜が代表的です。

・超音波モータ(ultrasonic motor:USM)
 超音波モータは、金属製弾性体(振動子、ステータ)で発生した振幅数μmの固有振動(共振)を、摩擦力によって移動子(ロータ、スライダ)の回転や、並進運動に変換するアクチュエータです。
 1980年に指田年生氏によって発明されました。弾性体の固有振動数(共振周波数)が、超音波領域(21.0kHz以上)であることから超音波モータと呼ばれています。固有振動は、振動子内部に配置された圧電セラミックス(PZT)により発生させます。
 一般の電磁モータと比較した場合の超音波モータの特長は、以下のようになります。
 @低速・高トルク特性を有するため、減速機構が不要
 A減速ギアが不要なため、静粛性に優れる
 B非通電時に保持トルクを有する
 C磁気の影響を受けず、電磁波を発生しない
 D小型・軽量

一方、欠点は以下です。
 @磨耗が大きいため、耐久性に劣る
 A高速運転が困難
 B高周波電源および複雑な駆動回路が必要

 超音波モータは、以上に挙げた@〜Dの利点を活かし、一眼レフカメラのオートフォーカスや走査形電子顕微鏡、半導体製造装置、マイクロマシン製造装置などの精密位置決め機構に利用されています。
 また、低速高トルク特性や非通電時のトルク保持特性を活かしてロールスクリーン・カーテンの昇降、ヘッドレストの位置決めにも使用されます。
 さらに、磁力の影響を受けないモータという特徴を活かして、磁気を用いた医療診断機器であるMRIの本体や周辺機器等にも用いられています。



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