急性の呼吸伝染病のお話

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更新日:
 2008年6月28日






◎急性の呼吸伝染病:Acute Respiratory Infections(ARI)
 発展途上地域への旅行者は、一ヶ月あたり1%強の頻度で、発熱を伴うARIに罹患する。

・一般的予防法
 感染性疾患の多くは飛沫感染症と思われる。

・早期診断・早期治療
 原因は雑多で、適切な診断と治療が要求される。

・予防接種・予防内服
 一部(麻疹、百日咳、ジフテリア)はワクチンによる予防が有効。
 ARIとは比較的新しい疾患概念で、以下いずれかの症状を呈する場合をいう(しばしば発熱を伴う)。
 ・咳あるいは呼吸困難
 ・咽頭痛
 ・耳の異常
 ARIは上気道炎あるいは下気道炎を疑わせるが、花粉症や喘息などのアレルギー性疾患も含む可能性がある。これを呼吸器感染症と翻訳するのは適切ではない。ARIと呼ぶのが妥当であろう。
 ARIの多くは自然治癒する。しかし、ARIの一部は時に重大な問題をひきおこす。
 ・咳あるいは呼吸困難:肺炎→低酸血症、敗血症→死亡
 ・咽頭痛:溶連菌感染→リウマチ熱→関節障害、心臓病
 ・耳の異常:中耳炎→乳様突起炎、髄膜炎→難聴
 こういった事態を避けるために、適切なケア(抗生物質使用を含む)が求められる。 ARIと呼吸器感染症の関係は、下痢と消化器感染症の関係とほぼ同じと考えてよいであろう。

・細菌性の肺疾患
 ARIの中では、細菌性の感染症が重要である。というのは、低酸素血症や敗血症による死亡をもたらす疾患を含んでいるからである。特に、「咳あるいは呼吸困難を伴う発熱」は、肺炎(pneumonia)を想定していると思われる。これに、胸部の打聴診、胸部レントゲン所見が加われば、ほぼ肺炎と診断できる。ただし想定すべき病原体は数多い。

・細菌
 肺炎球菌、黄色ぶどう球菌、化膿連鎖球菌、炭疽菌、リステリア菌、緑膿菌、類鼻疽菌、鼻疽菌、肺炎桿菌、大腸菌、在郷軍人病、インフルエンザ桿菌、百日咳菌、野兎病菌、ペスト菌、ブルセラ、髄膜炎菌、レプトスピラ、嫌気性菌、抗酸菌(結核菌、非定型抗酸菌)、マイコプラズマ、クラミジア(おうむ病)、リケッチア(Q熱、ツツガムシ病)など

・真菌、高等細菌
 ヒストプラズマ、コクシジオイデス、ブラストミセス、クリプトコッカス、ウシ放線菌、ノカルジアなど

・原虫
 ニューモシスティス、トキソプラズマ、赤痢アメーバなど

・蠕虫
 蛔虫、糞線虫、旋毛虫、糸状虫、鉤虫 肺吸虫、住血吸虫など。非感染性疾患も含まれる。

・呼吸器疾患の発生状況
 熱帯病の症状は、発熱、消化器症状(下痢)、呼吸器症状(ARI)、皮膚症状(発疹)が重要といわれる。発展途上国における小児の死因統計では、下痢に次いで呼吸器疾患(特に肺炎)が多い。そして、この背景にあるARIも多いようである。ただしARIの詳細は未だ不明である。

・慢性閉塞性肺疾患
 熱帯地方では、慢性の湿性咳嗽を訴えるものが多い。慢性気管支炎、喘息、肺気腫と診断される者も多い。

・気管支拡張症
 熱帯地方で多い。細菌性肺炎に対する不十分な治療が主因と疑われるが、結核や住血吸虫症が気管支拡張症をおこすことも知られている。

・気管支肺炎
 細菌性あるいはウィルス性の気管支肺炎が多い。小児の初期結核が気管支肺炎の像を呈する場合もある。

・大葉性肺炎
 肺炎球菌による大葉性肺炎が多く、これが死因の上位にあがる国もある。腸チフス、赤痢アメーバ症、結核、ペストなどが類似の症状を呈する場合がある。

・各種の胸部異常陰影
 結核が非常に多く、しばしば寄生虫症や真菌症も問題となる。

・PIE症候群(Pulmonary Infiltrate with Eosinophilia)
 胸部異常陰影(非定型肺炎に類似)に肺の好酸球増加を伴う場合をいう。一過性のものはレフレル症候群と呼ばれ、腸管寄生虫(回虫、鉤虫 糞線虫など)によるものが多い。持続性の場合、熱帯性好酸球増加症や肺真菌症などが疑われる。


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