肉による食中毒が起こる理由

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更新日:
 2020年5月3日






◎肉による食中毒が起こる理由(2020年5月2日)
 牛、豚や鶏などの動物は健康であっても、人に対して食中毒を引き起こす細菌やウィルス等を体内に持っています。それらの細菌やウィルスは、もともとレバー(肝臓)などの中に潜んでいたり、食肉を処理する時に肉についてしまうことがあります。このため、肉の鮮度には関係なく、肉を生や加熱不足で食べると食中毒になってしまいます。
 食中毒の症状は原因によって異なりますが一般的に下痢(水様便、粘液便、血便)、腹痛、発熱、悪心、おう吐、頭痛、悪寒、倦怠感などで、重症化すると死に至る例もありますので、安易に考えることは危険です。
 食中毒を起こす原因とされる細菌類には、カンピロバクター類、腸管出血性大腸菌、サルモネラ属菌、ぶどう球菌、ウェルシュ菌、セレウス菌などが挙げられます。
 2010.〜2014年度にかけて、市販されている挽肉の食中毒菌汚染実態調査をした結果によると、大腸菌の陽性率は牛で61.2%、豚で69.3%、鶏で81.4%、サルモネラ属菌の陽性率は牛で1.5%、豚2.8%、鶏51.9%も検出されたそうです。
 主な細菌の分裂時間を下記に示します。ここで至適温度とは、最も増殖に適した温度のことです。

菌種 至適温度(℃) 分裂時間(分) 1時間後 2時間後 6時間後 12時間後
腸炎ビブリオ 37 9 64 8,192 1.1×10^12 1.2×10^24
腸管出血性大腸菌 37 18 8 64 1,048,576 1.1×10^12
黄色ブドウ球菌 37 23 4 32 32,768 2.1×10^9
サルモネラ 40 18 8 64 1,048,576 1.1×10^12
カンピロバクター 42 48 2 4 128 32,768

 最も分裂時間が短い腸炎ビブリオでは、1個の菌が1時間後には64個、2時間後には8,000個以上に、6時間後には10兆個にまで増えてしまいます。食中毒のニュースでよく聞く大腸菌やサルモネラでも6時間後には100万個、12時間後には10兆個に増えます。細菌の分裂を防ぐには、肉を冷蔵庫など低温で保存することが重要です。
 肉を安全に食べるには、しっかりと加熱することが重要です。加熱の目安は、肉の中心温度が75℃以上で1分以上です。調理する時には温度計も時計も見ないと思います。肉の色がピンクから褐色に変わり、肉汁が透明になれば大丈夫と考えて良さそうです。分厚い肉やハンバーグなどは、肉の中心部まで加熱されていることを確認しましょう。
 食中毒は夏場に多く発生していると勘違いされがちですが、実際には1年中、常に発生しています。もともと肉に菌がついているのですから、季節には関係ありません。ただし、至適温度で見るように37〜40℃くらいまで気温が上がる夏場は、少しの間、肉を放置しているだけで細菌が増殖しますので被害が大きくなりそうです。また、バーベキューなど屋外で焼肉を楽しむ機会が増えると、危険が増すということもあるかもしれません。
 ただ、いずれにしても肉には菌がついている、ということを認識し、しっかりと加熱して食べるということを徹底しないといけません。


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