高脂血症のお話

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更新日:
 2008年6月28日







◎高脂血症について(1997年10月10日)
・はじめに
 近年、栄養の改善にともない、健康診断などで高脂血症を指摘される人が増加しています。特に何の自覚症状もないのに、治療が必要と医師にいわれて戸惑う人もあるかと思います。そこで、高脂血症と言われたらどのように理解し、またどのように対応したら良いかについてご説明したいと思います。

・血清脂質について
 体内に存在する脂質は、コレステロール、トリグリセライド、リン脂質、脂肪酸の4種類に大きく分けられます。
 これらの脂質は、水には親しみにくい油であるため、血液中では水に親しみやすい蛋白(アポ蛋白)と結合しています。
 この脂質(リピッド)とアポ蛋白が結合したものをリポ蛋白といい、このリポ蛋白が血液中の脂質の運搬体となっています。
 脂質の運搬体であるリポ蛋白は、その比重に基づいて5つの分画に分けられます。そしてこの分画の違いによって、コレステロールはHDL-コレステロールとLDL-コレステロールに分けられます。HDL-コレステロールは、体内各部にたまった余分なコレステロールを回収し、動脈硬化を抑制する働きがあることから「善玉コレステロール」と呼ばれており、LDL-コレステロールは、逆に体内各部へコレステロールを供給し、勤脈硬化を促進することから「悪玉コレステロール」と呼ばれています。
 医療機関で測定される総コレステロール値は、善玉と悪玉が合計された値で、一般に、悪玉は善玉の5倍以上を占めているとされています。
 近年、HDL?コレステロールを簡単に測定することが可能になっており、また、総コレステロール値、HDL-コレステロール値、トリグリセライド値から、LDL-コレステロール値を計算することができます。

・高脂血症とは
 高脂血症とは、血清脂質のコレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)のいずれかまたは両者が上昇した状能を言います。
 日本動脈硬化学会は、総コレステロール220mg/d?以上、トリグリセライド150mg/d?以上、HDL-コレステロール40mg/d?以下を高脂血症の判定墓準としています。

・高脂血症治療の重要性について
 コレステロールなどの血清脂質は、高脂血症が病気として認識されることから、有害なものと思われがちですが、実際は体内において細胞表面膜、ステロイドホルモンなどの成分や、エネルギー源として重大な役割をになっています。
 しかしながら、体にとって重要な成分であるコレステロールなども、血液中に多くなり過ぎると動脈硬化の原因となり、これが狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患および脳梗塞などの脳血管障害を引き起こすことが明らかになっています。
 一方、高脂血症に対する治療が、これらの病気の発生を減少させることも近年判明しています。つまり、高脂血症を正しく理解し、適切な治療をすることによって、成人病を予防できる可能性があるわけです。

・高脂血症の治療について
 高脂血症は、糖尿病、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症など脂質に異常を来す疾患が原因で起こる続発性高脂血症と、それらの原因が認められない原発性高脂血症に分けられます。
 続発性高脂血症の楊合は、その原因を除去することによって高脂血症も改善します。したがって、ここでは原発性高脂血症の治療についてご説明します。高脂血症の治療は、一般療法である食事療法と運動療法が墓本となります。そしてこれらの治療が目標レベルに到達しなかった時に薬物療法が行われます。

 ではまず食事療法からお話してゆきましょう。

・食事療法について
 食事療法としてまず大事なことは、食事におけるエネルギー摂取を制限することです。
 また、肥満があれば減量して標準体重にする必要があります。エネルギー摂取量は、標準体重{(身長?100)×0.9}当たり〜30Kcal/dayとします。
 次に食事内容についてですが、これは高コレステロール血症の場合と、高トリグリセライド血症の場合に分ける必要があります。
 まず、高コレステロール血症の時は、食事中の脂肪摂取置を減らすようにします。また脂肪のうちでも、特に飽和脂肪酸の多い獣肉をひかえてください。そして、不飽和脂肪酸の多い植物油を増やします。具体的には、コレステロール含量の多い食物、卵、レバー、牛乳、チーズ、ケーキなどを制限します(卵は1日1個までとされています)。つぎに高トリグリセライド血症の時は、糖質の摂取をひかえ、またアルコールを制限することが必要とされています。

・運動療法について
 運動療法は、特に高トリグリセライド血症の人に有効とされています。運動量を増やすことによって筋肉の消費が増加し、先の食事療法を合わせて行うことによって、血清脂質のかなりの改善がみられます。
 具体的には、心拍数が100/分を越えるぐらいの運動(散歩、ジョギング、ラジオ体操、水泳など)を1回10分以上、週3日以上行うようにしましょう。
 ただし、運動療法を行うにあたっては、心電図異常や心疾患の有無について医師のチェックを受けることが必要です。

・薬物療法について
 適切な食事療法、運動療法にもかかわらず高脂血症が改善されない場合に、医師は薬物療法を開始します。
 現在多数の高脂血症治療薬が使用可能となっており、患者さんの高脂血症の病態にあった薬剤が選択されます。医師に副作用の有無について定期的にチェックを受け、また検査値が改善したからといつて、自分で勝手に治療を中止しないようにしましょう。

・おわりに
 高脂血症治療の目標は、虚血性心疾患や脳血管障害などの成人病予防ということになります。
 この意味において、禁煙や血圧の管理なども、高脂血症治療同様に重要であることを忘れないようにしたいと思います。


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