更年期障害

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更新日:
 2008年6月28日






◎更年期障害について(1997年10月10日)
 「更年期」女性にとって、なんとなく嫌なかんじのするこの言葉です。しかし誰もが、一度は通らなければならない関門でしょう。

・更年期とは
 女性の一生は、とりもなおさず卵巣の一生ということができます。余り特徴のない幼小児期を過ぎると、次第に卵巣の働きが活発になって、急に女の子らしくなり、おっぱいも膨らんできます。つまり卵巣から盛んに卵巣ホルモンが分泌され始めるわけです。この時期を思春期といいます。そして或る日突然初潮を迎えることになります。最近は栄養状態が良くなり、体力が向上して、初潮年齢も早くなり、大半の子供は小学生卒業迄に始まります。これは卵巣がもう一人前に働きだしたという何よりのあかしです。この時から女として30年か40年にわたり、いわゆる性成熟期を迎えることになります。この時期は、女としての最高の営みを持つ時期で、妊娠、分娩、育児といった女性としての特色を発揮します。
 40代後半にはいると、卵巣の働きがだんだん衰え始め、数ケ月から数年かかって、ついにその機能を停止してしまいます。その結果、月経も止まり(閉経)、老年期に移行することになります。この卵巣機能が低下し始めてから閉経までを「更年期」と呼んでいます。早い人では40歳代、遅くても50代後半までには終わります。

・更年期障害とは、ホルモンのバランスの崩れ
 更年期になると、まず卵巣から分泌されるホルモンの量が少なくなり、身体全体のホルモンバランスが崩れます。そのため、時ならぬ出血(更年期出血)が起こったり、また一方、ホルモンと密接な関係のある自律神経に作用して、これらの歯車が噛み合わなくなり、いろいろと不愉快な症状(自律神経失調症)が現れてきます。更にこれが他の生理的な働きにまで及んで、独特の身体的、精神的ないざこざを引き起こします。これが「更年期障害」なのです。その程度は個人差が激しく、日常生活の全く支障のない、ほとんど気付かずにすむ程度から、寝込んでしまう重症のものまでいろいろですが、大半の人はただ何となくおかしいなあと思って過ごしており、約30%の方が何らかの治療を必要とすると言われています。

・更年期障害ではどんな症状がでるか
 次のような自律神経失調症が中心になります。熱感(ほてり)、冷え性、のぼせなどの血管運動神経障害、腰痛、肩こり、しびれ感などの知覚運動神経障害、吐き気、便秘、食欲不振、のどの渇きなどの消化器系の障害などがそれです。それに頭痛、めまい、いらいら、ゆううつなどの精神神経障害が加わるのが普通です。このほか、病変がないのに外陰部がかゆくなったり、尿がきれいなのに頻尿、残尿感などに悩まされるといった局所症状を訴える人もあります。
 訴える症状が非常に多い割に、診察しても特にこれといった異常がみつからず、痛みやしびれにしても患部が一定しなかったり、症状の現れ方もまちまちで、専門家はこのような症状を「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と表現しています。
 それともうひとつ忘れてならないのは、心因的な要素が大きく働くということです。日常のストレスや心配ごとが、心のわだかまりとなって、心身の緊張がたかまり、複雑な症状の後押しをします。症状の強い人では、ご主人との不仲、子供の進学、就職、結婚、仕事の悩みから孤独といったあらゆる人生問題が引金となります。ホルモンと神経のバランスの問題だけでなく、心の問題でもあるわけです。薬などでは治らなかった人が、懸案が解決されたとたん、あるいは積極的な社会参加などによって、見違えるように楽になったという例をしばしば経験します。
・更年期障害の治療について
 一番大切なことは、更年期障害の意味をよく理解して、自分で乗り切るという気構えを持つことです。その前向きの姿勢に加えて、精神的な安定が得られたら、もう半分以上治ったも同然です。しかし、つらいときは早めに診察を受けましょう。不愉快な症状が、なにか別の病気のために起こっているのではないかということを、まず最初にきちっと区別するところから治療は始まります。
 更年期障害と決まれば、最初は、狂った自律神経を調整するための自律神経安定剤や軽い精神安定剤をのんで様子をみるのが普通です。しかし、直接の原因である足りなくなった卵巣ホルモンを補って、ホルモンのバランスを補正してやるのがてっとり早い方法ということは誰にでもわかります。最近婦人雑誌などでみかけるHRT療法(ホルモン補充療法という意味)が、それです。
 いずれにしても薬による治療にはいろいろ問題があります。神経の働く薬の場合、こまかい仕事の妨げになりやすく、人によってはめまいや動悸が起こったりします。ホルモン療法には出血とか肥満などが気になりますが、産婦人科医は昔からかなり広く行ってきました。しかし副作用などの心配から、一時下火になっていました。ところが女性の高齢化が進み、老年期の生活の質(Q.O.L.)の向上を追求する時代的要求から、欧米で再び見直されるようになりました。その結果、副作用の少ない優れた薬剤や投与法が次々に開発され、しかも老年期に多い膣炎、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、尿失禁(尿の漏れ)などの予防に威力を発揮することがわかりブームに火を付けました。
 向神経薬にしろホルモン剤にしろ、相当長期にわたって服用しなければならないので、信頼できる産婦人科医を選び、適切なアドバイス(カウンセリング)を受けながら、薬ののみ方など、その指示をよく守って気長に治療することが必要です。

・その他に気をつけること
 更年期は、女性におって人生の関所でありいわば自然の出来事であります。これ自体は病気ではなく身体のひとつの生理的現象に過ぎません。あまり気にする必要はありません。ただこの時期は、身体の機能が変化する時ですから各種の成人病に注意し、産婦人科的には、子宮がん、こり(子宮筋腫)の最も生じ易い時期なので、定期的に健康診断を受けながら、ホルモンの適度のバランス補正をして、健康であることの裏付けのもとに、心配事のない明るい家庭生活を背景に持つことがまず大切です。そして前途した生活環境や心理的に生じる障害を含めて対応するため、適正な栄養・運動や、生活のストレスとリズムを考えて趣味でも仕事でも何か打ち込めるものを持つことが、この更年期を少しでも楽に明るく過ごせる秘訣でありましょう。
 これからの長寿社会に、深い人生体験を経て肉体的にも精勤的にも、素晴らしい更年期、老年期を過ごし、いつまでも活力に満ちた美しいばら色の人生を過ごしましょう。



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