タバコのリスクのお話

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更新日:
 2008年6月28日





◎たばこのリスクQ&A(2003年5月1日、朝日新聞)

Q 改めて聞くけど、たばこはどうして体に悪いんだい?
A 煙に含まれる発がん物質、一酸化炭素、ニコチンなどがいろいろな病気を引き起こすんだ。もともとタバコ葉に含まれている成分のほか、火をつけて燃やすことで様々な有害物質が生じる。煙の中には約4000種類もの化学物質が含まれ、少なくとも60種類は発がん性がある。味や香りの調合などのために使われている添加物も約600種類になるんだよ。

Q どんな病気になるの?
A 一酸化炭素やニコチンは、動脈硬化を促進させ、心臓病などを引き起こす。多くの発がん物質が含まれているから、肺がん、喉頭(こうとう)がんなど多くのがんで、たばこが原因のものが多い。がん全体でみても、2割から3割が、たばこが原因と推定されている。

Q がんはよく言われるけど、リスクはいろいろあるのね。
A 喫煙者は、非喫煙者に比べて、35〜69歳では死亡のリスクは約3倍になることが、英国や米国の大規模な追跡調査でわかっている。厚労省研究班は、たばこで死ぬ人を年間約10万5000人と推定している。交通事故の10倍以上だね。一時、ダイオキシン類の健康影響が問題になったけど、喫煙にくらべると、発がんリスクは100分の1以下という研究もある。

Q たばこを吸うとリラックス出来るとか聞くけど。メリットもあるんじゃないの。
A 喫煙者は、たばこを長い間吸わないでいるとイライラしてくる。たばこに含まれるニコチンには、強い依存性があるんだ。ヘロインやコカインに匹敵すると言われているんだよ。イライラするのは禁断症状で、たばこを吸えば、それが緩和されてリラックスした気分になるだけと言う研究者もいるよ。

Q 隣でたばこを吸うと煙くっていや、という人もいるわ。
A 実はね、喫煙者が直接吸う煙(主流煙)よりも周囲に広がる煙(副流煙)の方が化学物質を多く含んでいるんだよ。ベンゼンだと8〜10倍だし、ホルムアルデヒドは50倍なんだ。周囲の人がこの副流煙を吸うのを受動喫煙というんだけど、かなり害を受けるんだ。

Q 煙いだけじゃないのね。
A 国立がんセンターはこんな推計をしている。他人のたばこによる肺がんで死亡する人は年に1000人から2000人。心臓病などを含めると、日本では年に1万9000人が受動喫煙で亡くなっているという推定もある。

Q 大人は吸ってもいいのに、なぜ未成年は吸ってはいけないの?
A 大人は健康上のリスクを十分知った上で、吸って下さい、ということなんだ。子どもは危なさの判断ができないし、健康への害も大人より大きい。吸わない人が60歳までに肺がんで死ぬ割合に比べ、15歳になる前から吸っている人は30倍になる。

Q どうしてなの?
A 子どもの肺はね、大人と違って分裂の盛んな細胞が多い。たばこの発がん物質は、これを肺がんの「芽」に変えやすいんだ。それに、子どもの時に喫煙を始めるとニコチン依存になりやすいし、急速に進んでやめられなくなるよ。

Q でも、たばこの害は証明されていない、という意見を聞いたことがあるよ。再現実験もできない
A 喫煙が病気を引き起こすことは、たばこ会社も認めている。ただ、どうやって病気が起こるのか、詳しいメカニズムがわかっていない部分もある。だからといって害が無いというわけではない。受動喫煙が健康被害をもたらすことは、日本たばこ(JT)は認めていないが、2003年3月にまとまった「たばこ規制枠組み条約」では、「科学的に明白」とされた。JTの最大株主である日本政府もこれを認めている。

Q 軽いたばこなら害も少ないんでしょ。
A 「ライトという表現で健康被害が少ないかのような印象を与えた」と言って米国で喫煙者がたばこ会社を訴えた訴訟で、裁判所は先日、たばこ会社に損害賠償金を払うよう命じた。日本でも「マイルド」「ライト」などと銘打ったブランドが多いけど、健康被害が少ないと科学的に証明されてはいないんだ。

Q 有害物質が少ないのに?
A 厚労省の調査では、箱に表示されたタールの量が少ない方が、むしろ発がん物質が多いことさえあった。軽いたばこを吸うと、ニコチンを沢山とろうと、吸う回数が増えることが知られているので、発がん物質も多くとってしまうかも知れないよ。

◎喫煙と健康障害(1997年10月10日)
・5月31日は世界禁煙デー
 世界保健機構は1988年から、毎年5月31日(第1回は4月7日)を“世界禁煙デー”と定め、その日を中心に世界的規模の禁煙キャンペーンを実施しています。
 “世界禁煙デー”には、毎年スローガンが決められており、最近3年間のスローガンは次のとおりです。
 1990年:「子どもに無煙環境を」
 1991年:「公共の場所や交通機関は禁煙に」
 1992年:「たばこの煙のない職場?もっと安全にもっと健康に?」
 1992年:「たばこの煙のない職場?もっと安全にもっと健康に?」
 わが国では、世界保健機構のこれら一連の一大キャンペーンと1987年に東京で開かれた「第6回喫煙と健康世界会議」を契機として、「喫煙と健康障害」が社会的にも大きな関心を呼び、その後の禁煙運動に一層拍車がかかることになりました。
 公共施設、病院、列車、飛行機、職場など禁煙ないし分煙するところが次第に多くなってきています。
 他方、国内のたばこ販売本数は史上最高と報じられ、喫煙開始年齢の若年化、未成年者と若い女性喫煙者の増加、たばこのテレビ広告や自動販売機の野放しなど憂慮すべき問題も山積しています。
 厚生省は平成4年から、5月31日の“世界禁煙デー”から始まる1週間を「禁煙週間」と定め、各種の事業を展開しています。
 また、学校においても、中学校では平成5年度から、高等学校では平成6年度から、たばこの健康に及ぼす悪影響について教えることになりました。

・「喫煙は健康に有害である」
 喫煙の健康障害に関する研究は1950年代に始まり、わずか40年ほどしかたっていません。しかし喫煙が喫煙者自身のみならず、その周囲の人たちの健康を害する悪習であることは今日世界の常識となっています。先進諸国では早くから、たばこの包装紙にその有害性を明記していましたが、わが国では昭和47年から”健康のため吸いすぎに注意しましょう”、平成2年からやっと”あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょう”と明記しました。
 なぜ喫煙が健康に有害であるのでしょうか。それはたばこの煙の中に、人体に有害な物質が200〜300種類も含まれているからです。その中でもニコチン、タール(やに)、CO(一酸化炭素)は悪の三横綱で人体にきわめて有害です。ニコチンは血管を収縮させ、血液の流れを悪くし、心臓や脳へゆく血流を低下させますし、COは血液によって体の各所に運ばれる酸素の運搬を阻害します。またタールの中には各種の発がん物質が含まれています。
 このような有害物質を含むたばこを毎日毎日吸っていると、やがて「たばこ病」と言われる色々な病気にかかることはちょっと考えればわかることです。

・「たばこ病」とは
 喫煙者にみられる「たばこ病」には、喉頭がん、肺がん、など各種のがん、慢性気管支炎や肺気腫など呼吸器疾患、心筋梗塞など虚血性心疾患、脳卒中など脳血管疾患、胃潰瘍、十二指腸潰瘍など消化器疾患があります。さらに女性の場合は未熟児産や流早産の原因ともなるので、これらも「たばこ病」と数えることができます。
 もちろん、これらの病気が、たばこだけで起こるわけではありませんが、たばこがその原因の一つとなったり、またそれを悪化させたりいたします。つまり、たばこがこれらの病気の危険因子として重要な役割を果しているということです。
 その中でも、近年がん、虚血性心疾患、老化の危険因子としてたばこが益々注目されてきています。
 ある著名な学者が、「たばこは発がん商品である。がんを起こさせる商品である。喫煙者は発がん商品であるたばこを、わざわざお金を出して買っている。発がん物質を自ら買いもとめ、早く芽を出せ柿の種と一生懸命がんにかかるように努めているようなものだ」と言っています。
 最近の研究によりますと、たばこに含まれている発がん物質が、がん遺伝子、特にP53というがん抑制遺伝子に変異をひき起こし、がんをつくることがわかってきました。
 肺がんによる死亡率は、非喫煙者に比べ喫煙者では約5倍、一日50本以上吸う人では約15倍と言われています。また喫煙開始年齢が15歳以下の場合は、同じ喫煙本数、喫煙年数の人より死亡率が高くなります。
 虚血性心疾患は現在、がんに次いで死亡原因の第2位ですが、この病気の三大危険因子は、たばこ、高血圧、高脂血症であることはみなさまよくご存知のとおりです。
 虚血性心疾患による死亡率は、非喫煙者に比べ喫煙者では約2倍で、喫煙本数が多くなる程死亡率も高くなります。これはたばこに含まれているニコチンとCOの作用によるものです。
 たばこは、ひとたび吸い始めるとその習慣性のため中々止めることができなくなりますが、この習慣性はたばこに含まれるニコチンのせいです。
 また、たばこは老化を5年早めるということが実証されています。人間は年をとるほど虚血性心疾患やがんにかかりやすくなりますが、たばこを吸っていると5歳年上の人と同じ危険率で病気にかかるということです。

・禁煙、今からでも遅くない
 以上の説明で、“喫煙は百害あって一利なし”、“喫煙に安全な吸い方や安全な量などはない”
 ことはお分かりいただけたことと思います。しかしながら、先述のとおり、たばこには強い習慣性があり、禁煙したくても止められないという人の多いようです。
 朝起きて、30分たってから吸う人の9割以上が自分の努力で禁煙できるといわれています。禁煙に成功すると、虚血性心疾患の再発と死亡を50%以上防ぐことができるし、胃潰瘍の治癒率も高まるといわれています。禁煙は「たばこ病」の最良の予防法であり治療法です。喫煙者のみなさま、健康はあなた自身のものです。愛する家族のものです。禁煙に挑戦してみてはいかがでしょうか。


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