ビタミンCのお話

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更新日:
 2008年6月28日





◎ビタミンCの話(2000年8月10日)
 現代では誰もが知っているビタミンCも、その存在が明らかになるのに何百年もの歳月を要しました。ビタミンCは生体内における各種の物質代謝に関与していますが、最も重要な作用はコラーゲンの生成と保持です。ビタミンCの不足によりコラーゲンの生成と保持ができないと体じゅうの血管がボロボロになり、出血性の傷害が各器官に起こる「壊血病」になります。
 この病気は16世紀から18世紀の大航海時代には海賊以上に恐れられました。バスコ・ダ・ガマのインド航路発見の際には160人の乗組員のうち100人が「壊血病」で死亡しています。
 1747年に至って初めてイギリス海軍医ジェームス・リンドがオレンジやレモンなどの柑橘類を食べることで予防できることを発見しました。その後、イギリス海軍では水兵に毎日ライムジュースを飲ませるようにしたため、イギリス海軍の水兵は今でも“ライムジューサー”と呼ばれるそうです。経験的に「壊血病」予防の方法は見いだしたものの、それがビタミンCによるもので、更にビタミンCの構造が決定され、合成に成功するのは1933年のことです。
・1747年:ジェームス・リンド、柑橘類で「壊血病」予防に成功
・1932年:キング、レモン果汁からビタミンCを単離し結晶化
・1933年:ハワース、ビタミンCの構造式を決定
・1933年:ライヒスタイン、ビタミンCの合成に成功、後にノーベル賞を受賞
 ところで、ビタミンCが不足すると何故コラーゲンの生成と保持ができなくなり血管がボロボロになるのでしょうか。それは、血管を構成しているコラーゲンが合成できなくなるからです。コラーゲンに存在する特異的なアミノ酸のヒドロキシリジンとヒドロキシプロリンは、リジンとプロリンがビタミンCによって水酸化されて初めて作られるのです。血管だけでなく、皮膚や骨など全身の組織も支えているコラーゲンの生成に、ビタミンCは必要不可欠なのです。
 現代人の難病ともいうべき骨粗鬆症は、原因としてカルシウム不足ばかりが注目されていますが、案外ビタミンCとコラーゲンの不足が原因の「壊骨病」とでも呼べる病気なのかもしれません。

・安定型ビタミンC
 ビタミンCは、不安定で熱や酸化に弱いのが欠点でした。そこで登場したのがビタミンC誘導体です。誘導体の形にすることで安定性を高め、ビタミンCが本来の効果を発揮するようにしたものです。
 比較的多く使われていたのは、ビタミンCにリン酸をくっつけたAPM(アスコルビン酸2-リン酸)や、硫酸をくっつけたAA?2S(アスコルビン酸2-硫酸)などがあります。
 林原生物化学研究所は、ビタミンCにグルコース(ブドウ糖)をくっつけ、安全性と高い安定性をもつビタミンC誘導体AA?2G(アスコルビン酸2-グルコシド)を開発しました。ビタミンCもブドウ糖も、どちらも体内に存在する物質であり、安全性が高いのです。

・ビタミンCの働き
 ビタミンCには、以下の働きがあると言われています。

1. コラーゲンの合成
 体のたんぱく質の30%を占めるコラーゲンの合成の促進、保持に不可欠です。コラーゲンは、細胞と細胞を結びつける接着剤の役割を果たしていて、丈夫な血管や筋肉、皮膚、粘膜、骨などを形づくります。不足すると、血管や粘膜、皮膚などの細胞間の結合が緩み、歯ぐきなどから出血しやすくなる、切り傷が治りにくくなる、病原菌の侵入を防げずにカゼなどの感染症にかかりやすくなる、皮膚に張りがなくなる、などの症状が現れます。

2. 免疫力の強化
 免疫機能の中心である白血球の働きを助けると同時に、ビタミンC自体も病原体に攻撃を仕掛けます。このため、風邪などの感染症にかかりにくくなるばかりでなく、回復も早めます。

3. 発がん防止
 免疫力を強化し、コラーゲンで細胞を守ることでがんを防ぎます。また、胃がんや肝がんの原因となるニトロソアミンという発がん物質に反応して、無害な物質に変えてしまう作用があるようです。さらに、抗がん剤としても使われているインターフェロンの体内での生成を促進します。

4. 抗酸化作用で細胞の老化を防止
 活性酸素は細胞の老化を促進し、やがては狭心症や心筋梗塞、脳卒中、がんなどの命にかかわる病気を誘発することにもなります。この活性酸素が大量に発生すると、ビタミンCは、ビタミンEやβカロチンと協力して無毒化します。

5. ストレスを撃退
 ストレスがかかったときに、副腎から抗ストレスホルモンであるアドレナリンが分泌されてストレスに対抗します。この抗ストレスホルモンの生成にはビタミンCが欠かせません。ストレスが強いと、ビタミンCは大量に消費されます。ですから、十分に補給されないとストレスに対する抵抗力がすぐに弱ってしまいます。

6. 尿酸の排泄を促進
 関節などにたまった尿酸を腎臓に運びます。その結果として、尿酸は腎臓でろ過されて、尿として体外に排泄されます。

7. メラニンの生成を抑制してシミ、ソバカスを予防
 紫外線を浴びると、表皮の一番下にある基底層の中のメラノサイト(色素生成細胞)がメラニン色素を生成して、肌を守ろうとします。つまり、日焼けは本来体の防御反応によるものなのですが、暑さによる疲れや乾燥などで肌のコンディションがくずれたり、年齢を重ねることで肌の新陳代謝(ターンオーバー)がスムーズにいかなくなると、メラニンが肌内部に蓄積されたままになって、シミ・ソバカスとなります。ビタミンCは、メラニンの生成を抑制してくれます。

8. その他
 血中コレステロール、中性脂肪を低下させます。リウマチ、アレルギー疾患の予防効果があります。肝臓の解毒機能の強化や、鉄と銅の吸収を促して貧血を予防する効果もあります。

・ビタミンCを摂るには
 ビタミンCの供給源は野菜と果物です。ほとんどの野菜に含まれていて、日本人は3分の2を野菜から摂っています。ビタミンCは熱と水に弱いため、調理による損失を考慮する必要があります。ゆでる、煮るよりも、炒め物のほうが損失が少なくてすみます。加熱するたびにビタミンCが失われるから、温め直しも避けた方が良いでしょう。ゆで汁、煮汁にはビタミンCが溶け出しているため、スープは有効な調理法と言えます。いずれも「調理は短時間」を心がけるべきです。その点、生で食べられる果物は最適な供給源と言えます。
 成人一日の必要量は100mg、レモン一個分と言われています。体内に取り込まれてから2〜3時間程度で体外に排出されるので、1日に何回かとるように心がけましょう。特にタバコを吸う人やストレスの多い人、毎日のようにお酒を飲む人などは、多め(所要量の3倍程度が目安)に摂るようにしたほうが良いと言われています。
 薬局やスーパーに行くと、ビタミンCのサプリメントが並んでいて、これを使った方が便利そうに見えます。食事とサプリメントでは、その吸収速度が違います。飲んで1、2時間で吸収されてしまうサプリメントに対し、食事でとったビタミンCは緩やかに吸収され、長持ちします。3度の食事でビタミンCを十分とれば、体内のビタミンCは一日中途切れることはありません。ですから、基本量は食事でとって、激しい運動をする時や、炎天下に出る時は大量のビタミンCを一気に取れるサプリメントが有効でしょう。


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