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 2013年3月7日








◎スイスの企業家や官僚、国後島に上陸、投資環境を視察か(2012年8月15日、朝日新聞)
 スイスの企業経営者や官僚、大学関係者ら約10人が14日、北方領土の国後島に入り、視察を始めたことが分かった。地元関係者が明らかにした。3日間滞在し、観光などの投資環境を探りたい意向のようだ。
 一行は、南クリル(北方領土)を管轄するロシア極東のサハリン州のホロシャビン知事の招きで訪れたとみられ、チャーター機で上陸した。16日にサハリンに戻るという。
 国後島には、中国や韓国、北朝鮮などから来た技師や労働者、農民らが千人規模で働いていることが明らかになっており、欧州からの視察は異例だという。日本政府は北方四島を「日本固有の領土」とし、日本人やロシア以外の外国人がロシアのビザを取得して北方領土に入ったり、経済活動をしたりすれば、ロシアの実効支配を認めることになるとして強く反対している。

◎「同性愛宣伝」でマドンナさんを告発、ロシアの市民団体(2012年8月12日、産経新聞)
 ロシア第二の都市サンクトペテルブルクの市民団体は12日までに、米人気歌手マドンナさんが同市でのコンサートで「未成年者を前に同性愛を宣伝し市の条例に違反した」として警察に告発した。ロシア通信などが伝えた。
 マドンナさんは今月9日に同市で開いたコンサートで「世界の人々は不寛容になりつつある。私たちは自由でいる権利のために闘いたい」と述べ、同性愛者の権利擁護を訴えるピンク色のブレスレットを着けた手を挙げて観客に挙手を求めた。
 同市では未成年者への「同性愛の宣伝」などを禁じる条例が今年3月に発効した。条例案を起草した市議は「観客の中には12歳の子供もいた。(マドンナさんの行為は)条例違反だ」と主張。市民団体は10日に告発状を提出した。

◎反プーチンの露女性バンド、自由剥奪3年を求刑(2012年8月8日、読売新聞)
 ロシアの検察当局は7日、モスクワのロシア正教会「救世主キリスト大聖堂」で2月、プーチン首相(当時)の大統領返り咲きに反対する歌を歌った女性バンド「プッシー・ライオット」のメンバー3人にそれぞれ自由剥奪3年を求刑した。
 3人は宗教対立をあおったとして、「暴徒罪」でモスクワ市内の裁判所に起訴されていた。この裁判については、プーチン政権による反対派弾圧との批判が国内外から出ている。
 モスクワ滞在中の米国の歌手マドンナさんも7日、コメルサント紙とのインタビューで「国の指導者の行いが気に入らない場合、人々はそれを公言できる権利を持たなければならない」と、3人の訴追を批判した。

◎マドンナ、反プーチンバンドの釈放求める、モスクワ公演(2012年8月8日、朝日新聞)
 ロシアを公演で訪れている米国の人気歌手マドンナさんが7日、ロシア正教の聖堂でプーチン大統領を批判する曲を演奏して逮捕・起訴され、勾留が続いている女性パンクバンド「プッシー・ライオット」のメンバーについて、表現の自由は重要だと述べ、釈放を求めた。
 起訴されたのは3人。ロシア大統領選直前の2月末、モスクワの「救世主キリスト聖堂」で「聖母様、プーチンを追い出して」と歌い、暴徒行為の罪で検察側は7日に禁錮3年を求刑した。
 マドンナさんはこの日、モスクワのコンサートで、曲の合間に「一番重要なのは自由に意見を表現できること。たとえ他人が、あるいは国家が、教会が反対しても。それが民主主義。彼女たちの釈放のために祈りたい。寛大な処遇を求める」と発言。会場からは大きな拍手が起きた。さらに、プッシー・ライオットが聖堂で歌った時にかぶっていた覆面と似たものをかぶり、「Pussy Riot」と書いた背中を見せながら歌った。

◎ロシア、NGO監視へ法改正、「反プーチン」抑え込み(2012年7月19日、朝日新聞)
 ロシア上院は18日、外国から資金提供を受け、政治活動をしている非政府組織(NGO)を「外国の代理人」として扱い、監視を強化する改正法案を可決した。政権・与党は、一連の「反プーチン集会」を主導する野党勢力が欧米から多額の資金を得ているとみており、法改正で野党側の弱体化を図る狙いだ。
 プーチン大統領の署名をへて施行される。改正法案によると、ロシアのNGOで外国や外国機関、外国人などから運営資金を受け取り、政治活動を行っている場合、「外国の代理人」として登録し、毎年国会に財政上の収支や活動内容などを報告する必要がある。印刷物やインターネットなどで組織名を出す場合にも「外国の代理人」と明記しなければならない。
 故意に登録を怠った場合、30万ルーブル(約73万円)の罰金が科せられるほか、悪質なケースでは強制労働や最大2年の禁錮刑の規定もある。

◎罰金引き上げても、プーチン反対、5万人デモ(2012年6月13日、読売新聞)
 ロシアのプーチン大統領の「強権政治」に反対する野党勢力は12日、モスクワで大規模なデモ行進と集会を開いた。
 主催者によると、参加者は5万人以上(警察発表は1万8000人)で、国民の政権不信の根強さが改めて浮き彫りとなった。
 参加者は公正な選挙や自由を意味する白いリボンをつけて都心の約2・5キロ・メートルを行進し、「ロシアに自由を」「プーチンなきロシアを」などと訴えた。集会では、非暴力的方法でプーチン大統領の退陣を求めるなどの今後の運動目標を定めた「自由なロシアのマニフェスト」を採択した。
 政権は今月、デモでの違反行為に対する罰金を大幅に引き上げたのに加え、11日には野党指導者の自宅を一斉に家宅捜索。デモ参加者からは、「スターリンの圧政時代みたいだ」(62歳、年金生活者)「罰金で我々の思いをくじくことはできない」(17歳、女性学生)と、反発の声が相次いだ。

◎露の捜査当局、野党勢力指導者らの自宅など捜索(2012年6月11日、読売新聞)
 ロシア大統領の直属機関、連邦捜査委員会は11日、反プーチン政権の抗議活動を続ける野党勢力指導者らの自宅など10か所以上を一斉に家宅捜索し、パソコンなどを押収した。
 家宅捜索されたのは、いずれも12日に予定される大規模抗議デモで中心的役割を果たすとみられる活動家だ。
 直接の容疑は、プーチン大統領の就任式前日の5月6日に起きたデモ隊と治安部隊の衝突への関与。同委員会は、取り調べのため12日の出頭を求めており、野党勢力側は政権による「露骨なデモつぶし」として猛反発している。

◎抗議デモで違反、罰金最大73万円、ロシア(2012年6月10日、読売新聞)
 ロシアのプーチン大統領は8日、抗議デモなどでの違反行為に対する罰金の引き上げを柱とするデモ規制強化の改正法案に署名。
 同法案は9日、政府機関紙で公布され、発効した。
 改正法は、デモ参加者に最大30万ルーブル(約73万円)の罰金などを定める。プーチン大統領は8日、英独伊などでのデモ規制法と比較し「それよりも厳しい条項は一つもない」と述べた上で、さらなる規制強化を行う可能性を示唆した。

◎プーチン新政権始動、忍び寄る政治危機(2012年5月29日、産経新聞)
 ロシア大統領に就任したウラジーミル・プーチン氏(59)=元大統領、前首相=の新政権が発足した。都市部にくすぶる長期政権批判に配慮して指導部が大幅に刷新されることも期待されていたが、結果的に、古参幹部が枢軸に居座る新鮮味に乏しい陣容となった。新政権が政治と経済の大胆なリベラル化に踏み出す可能性は低く、プーチン大統領が今期6年間の任期中に深刻な政治危機に見舞われるとの予測も出ている。

・新鮮味に乏しい陣容
 露指導部は大雑把に見て、プーチン氏に代表される保守的なシロビキ(治安・特務系機関の出身者など武闘派)と、ドミトリー・メドベージェフ前大統領(46)をはじめとするリベラル派に分類される。プーチン氏は前回大統領期(2000~08年)、両派のバランスをとろうとしながらもシロビキに傾斜し、強権統治と経済の国家統制を推し進めた。
 今回、首相に任命されたメドベージェフ氏は、組閣に先立って大規模な内閣改造を約束。新政府では閣僚の約半数が新顔となり、第1副首相にはイーゴリ・シュワロフ氏(45)=留任、副首相(資源・エネルギー担当)にはアルカジー・ドボルコビッチ前大統領補佐官(40)とリベラル派が就いた。
 昨年12月以降のモスクワでは、数万~10万人規模のデモが断続的に行われるなど反政権機運がじわりと高まっている。今回の組閣は一見、改革を求める都市部中産階層の声に応えているようにも映る。
 しかし、副首相7人のうち5人は前政権からの留任で、セルゲイ・ラブロフ外相(62)やアナトリー・セルジュコフ国防相(50)といった主要閣僚も残留した。新任大臣の多くは次官からの昇格で目新しさはなく、新内閣から外れた前大臣のうち5人は大統領補佐官に“横滑り”している。

・首相の権限は限定的
 人事の主導権を握ったのがプーチン氏であり、守旧路線が重視されたことは疑いない。新政権でのメドベージェフ氏の権限は限定的で、今後は政策決定の重心が大統領府に移るとも指摘されている。
 新政権が改革に本腰を入れない兆候はすでに出ている。国内総生産(GDP)の50%を占めるとも推定され、非効率と腐敗の温床となっている国営セクターの問題がその一つだ。
 「経済近代化」を掲げたメドベージェフ前政権は2010年、320億ドル(約2兆5400億円)規模の国有株式を放出する大規模な民営化計画を打ち出したが、プーチン氏の最側近でシロビキの番頭格、イーゴリ・セチン前副首相(51)らの抵抗で進展しなかった経緯がある。
 そのセチン氏は今回、ロシア最大の石油会社である国営ロスネフチの社長に就任。プーチン氏は民営化どころか、資源・エネルギー部門の放出株式をロスネフチ系列に引き受けさせ、集約する方針を示した。
 また、メドベージェフ氏は前政権末期、反政権運動の高まりを受けて地方知事の直接選挙を復活させると表明。実際の法改正ではしかし、プーチン氏の意向で立候補に様々な制約が設けられた上、政権は選挙を先延ばしにしようと駆け込み的に多数の知事を交代させている。

・脆弱な経済を直撃も
 反政権派はいまだ分裂状態を克服できておらず、街頭デモも夏場にかけていったん下火になるとみられている。だが、有力シンクタンク「戦略研究センター」は5月24日に公表した調査報告書で「政治危機は後戻りできない状態になっている」と警鐘を鳴らした。
 報告書によれば、政権に対する倦怠感や不信は地方部にも広がっている一方、政権と反政権派は建設的対話の糸口を見いだせずに双方が立場を尖鋭化させる兆しを見せている。
 また、欧州連合(EU)での債務危機が深まれば石油・天然ガス収入に依存する脆弱なロシア経済が直撃を受けるのは確実だ。
 戦略研究センターのミハイル・ドミトリエフ所長は「現状の政治不信に経済危機が重なった場合、ロシアは(混乱を伴う)急進的変革の道を歩むことになる」と指摘。報告書は今後の展開について4つのシナリオを示しているが、ドミトリエフ所長は「事態が平和的に推移する可能性は低い」と悲観的だ。

◎ロシア、大統領府と政府の人事も「ポスト交換」(2012年5月23日、読売新聞)
 ロシアのプーチン大統領は22日、大統領府(クレムリン)の幹部を任命した。
 セルゲイ・イワノフ大統領府長官を再任したほか、プーチン氏の首相時代に閣僚を務めた6人を大統領補佐官や顧問に起用した。
 プーチン氏と入れ替わりに前大統領メドベージェフ氏が首相に就いたのに続いて、クレムリンと政府の幹部人事でも「ポスト交換」が行われた格好だ。
 元駐米大使のユーリー・ウシャコフ官房副長官は大統領補佐官に任命され、エリツィン政権時代から15年にわたり外交担当の大統領補佐官を務めてきたセルゲイ・プリホジコ氏は第1官房副長官に転出した。外交はウシャコフ氏が担当するとみられる。
 このほか、外務省出身で在日大使館勤務の経験もあるアントン・バイノ官房長官が大統領府副長官に登用された。対日政策の変化につながるか注目される。

◎ロシア極東 止まらない有力議員の“追放劇”(2012年5月13日、産経新聞)
 ロシア極東地方で有力議員の“追放劇”が相次いでいる。3月には知事が辞任に追い込まれたのに続き、4月末には議会議長が詐欺容疑で逮捕された。9月にアジア太平洋経済協力会議(APEC)が開催されるなど注目を集める極東だが、かねてから政界の深刻な汚職体質が指摘されている。7日にプーチン氏が大統領に返り咲き、政治体制の刷新が図られているロシアだが、極東でも体制刷新の荒療治が行われているようだ。
 「彼の行為が犯罪であったならば、彼が党にとどまることはない」。
 与党「統一ロシア」は4月末、ホームページにこのような声明を発表し、有罪となった議員を追放する姿勢を強調した。
 その矛先を向けられたのは、同党に所属するロシア・沿海地方議会議長のエブゲニー・オベチキン氏だ。
 インタファクス通信などによると、オベチキン氏をめぐっては4月28日、捜査当局が数時間にわたり同氏のオフィスを家宅捜査した。容疑は「巨額の詐欺」で、オベチキン氏が2008年に現地の建設関連企業の役員を務めていた際、少なくとも3800万ルーブル(約1億円)の石油関連製品を横領した疑いをかけられている。オベチキン氏は29日には外出を禁じられ、5月3日には自ら議長職の「自主的」な辞任を申し出たという。
 オベチキン氏は04年から07年まで同地方のセルゲイ・ダリキン前知事の下で副知事を務めており、ダリキン氏との関係が深いと報じられている。これまでにも報じたように、そのダリキン氏もまた、今年3月に知事を「自らの意志で」辞任している。同氏をめぐっては、かねてから汚職の噂が絶えなかった。
 極東は、経済成長が続く中国や、日本、韓国などとも近く、プーチン氏が「ロシアにとり巨大な戦略的意味」を有していると指摘する重要地域だ。ロシア政府は自ら財政面でのテコ入れを進めているが、プーチン新政権はアジア各国の投資を集め、同地域の発展を加速させたい狙いがあるといわれる。
 その阻害要因になると考えられるのが、プーチン氏も認識する極東の政財界の癒着構造の深刻さだ。モスクワからはるか数千キロ離れ、ソ連崩壊後の経済的な混乱が特に激しかった同地では、中央政府の監視が行き届かず、水産業などの利権をめぐる汚職体質がロシア国内でも特に深刻だと指摘されている。
 現地報道によると、地元議員の間では、「ダリキン氏が知事の職を去った今、中央政府による“(ダリキン氏に近い)人材の一掃”が行われる」(共産党のアレクセイ・コルニエンコ議員)などの見方が公然と語られているという。
 ダリキン・オベチキン両氏の政界からの追放は、極東地方の政界の体質を強行的に変えようとする中央政府の意図が働いているようにみえる。

◎軍事力での大国路線決意、復帰のプーチン大統領(2012年5月9日、読売新聞)
 第2次世界大戦の対ドイツ戦勝記念日である9日、モスクワの「赤の広場」でロシア軍による大規模軍事パレードが行われ、約1万4000人が参加した。
 4年ぶりに復帰したプーチン大統領がパレード冒頭で演説し、「我々には自らの立場を主張する道義的権利がある」と述べ、ロシアの国際的発言力を強めていくと共に、軍事力を背景に大国路線を歩んでいく決意を表明した。
 パレードでは、主力戦車T90や大陸間弾道弾トーポリMなどに加え、最新の短距離ミサイル「イスカンデル」や防空システム「S400」も披露された。

◎プーチン大統領就任、首相候補メドベージェフ氏(2012年5月8日、読売新聞)
 ロシア大統領選で当選したウラジーミル・プーチン首相(59)は7日、第4代大統領に就任し、4年ぶりに大統領に復帰した。
 任期は6年で、再選されれば、プーチン政権は2024年まで続くことになる。
 プーチン氏は7日正午(日本時間同日午後5時)から大クレムリン宮殿で始まった就任式で、右手を憲法に置いて宣誓。就任演説で「国民の信頼に応えるようあらゆることを行う。祖国と国民に尽くすことが私の人生の目的であり、職務だ」と訴えた。
 プーチン氏は同日、大統領を退任したドミトリー・メドベージェフ氏(46)を次期首相候補に指名、下院が8日に承認する予定だ。プーチン氏が職責上も最高実力者となり、「2頭体制」は4年で幕を下ろした。
 プーチン氏の大統領返り咲きを巡っては、長期支配に伴う汚職や社会的停滞を背景に変革を求める中間層などが不満を高めており、通算3期目の大統領就任は、かつてない逆風が吹く中での船出となった。

◎「プーチンは泥棒」、モスクワで大規模抗議集会、「治安攪乱要因」400人超拘束(2012年5月7日、産経新聞)
 7日に行われるプーチン首相の大統領就任式を前に6日、モスクワ中心部で大規模抗議集会が繰り広げられた。「プーチンのいないロシアを」「プーチンは泥棒」とのスローガンが叫ばれる中、一部のデモ隊が警官隊と衝突、タス通信によると、400人以上が拘束された。
 警察当局は就任式を控え石の投擲など行動をエスカレートさせた集団を「治安撹乱要因」と判断、徹底した取締りを実施した。拘束された者の中には集会を企画した野党勢力「左派戦線」の指導者ウダリツォフ氏や、野党「連帯」のネムツォフ元第1副首相などが含まれている。
 年金生活者のリュボーブナ・グベーリブナさん(67)は「ロシアの大地にある石油などの天然資源は国民全てに分け与えられるものなのに、プーチン氏は自分たちのものにしている」と訴えた。

◎プーチン「大統領」に反対デモ、450人拘束(2012年5月7日、読売新聞)
 7日に予定されるロシアのプーチン首相(59)の大統領復帰に反対するデモ行進が6日、モスクワ中心部であり、集会を予定した広場で参加者と警官隊が衝突した。
 インターファクス通信によると、野党勢力指導者ら参加者約450人が拘束され、参加者と警官で計約40人が負傷した。
 昨年12月以降続く反政権デモで治安当局との衝突は初めて。通算3期目となるプーチン氏の大統領就任に対する強い不満が浮き彫りになった。タス通信は参加者を少なくとも2万人と推計した。警察は8000人、主催した野党勢力側は10万人が集まったとしている。
 参加者は集会予定地の広場まで「プーチンなきロシアを」などと叫んで行進。しかし、一部の野党指導者がクレムリンにつながる橋のたもとで大統領就任式の中止などを求めて座り込んだため、警察が拘束して連行。それに抗議した参加者と警官隊が衝突した。

◎「反プーチン」行進、警察と衝突、450人逮捕(2012年5月7日、朝日新聞)
 ロシア大統領にプーチン首相が返り咲く就任式を翌日に控えたモスクワ中心部で6日、「反プーチン」の行進があった。3月の大統領選直後に大規模な集会が開かれて以来となる街頭行動。警察当局と参加者が衝突し、集会の主催者らを含め約450人が逮捕される事態になった。
 参加者は、主催者発表で10万人、警察発表で8千人。集会は「数百万人の行進」と名付けられ、選挙違反がなお指摘される大統領選と下院選を違法だと訴える狙いだった。
 参加者たちは「プーチンのいないロシアを」などと叫んでモスクワ中心部を行進し、集会場所に向かった。一部の参加者がゆっくり歩いたり、路上に座り込んだりしたため、行政当局は「許可した以外の行為だ」と判断し、警察官らが取り締まりに着手した。集会は予定した演説などがなされないまま、中止となった。
 集会を主催した社会主義勢力のリーダー、セルゲイ・ウダリツォフ氏らが警察官への挑発行為を実行させ、社会秩序を乱した疑いで逮捕された。リベラル系の野党「国民自由党」共同代表ボリス・ネムツォフ氏、著名ブロガーのアレクセイ・ナバリヌイ氏らも含まれている。参加者と警察官との間で衝突が起き、双方にけが人が出たという。
 集会に参加する予定だったマッサージ師の女性(50)は「集会を中止に追い込む権力側の強引なやり方は許せない」と話した。

◎赤の広場で、乗客無視の地下鉄(2012年5月1日、産経新聞)
 モスクワ地下鉄環状線の主要駅「文化公園」が先日、1年3カ月ぶりにようやく営業を再開した。モスクワで乗降客が最も多い駅の一つであるにもかかわらず、エスカレーター交換(3列)を柱とする修繕工事のためとして、ずっと全面閉鎖されていたのだ。
 この間、“官”に弱いロシア人は乗客無視の工事に文句も言わず、隣の駅から30分近く歩いたり、渋滞のリスクを負ってトロリーバスを利用したりした。
 たしかに修繕工事を経た駅構内は明るくきれいにはなったのだが、なぜこれだけの工事にかくも時間がかかるのか。モスクワ地下鉄に尋ねたところ、報道官氏は「ロシアには地下鉄用のエスカレーターを製造している会社が一つしかなく、そこの作業が遅れたせいだ」と責任を転嫁した。
 1930年代に建設が始まったモスクワ地下鉄は防空壕を兼ねており、深さ約60メートルもの地下を走る。いきおいエスカレーターも驚くほど長いものとなるのだが、それとて設備を整えれば他の企業で製造できない代物ではあるまい。何より、駅を全面閉鎖するというのなら、新エスカレーター設置のメドがついてからにするのが当然ではないのか。モスクワ地下鉄は2016年までに36駅を新設する壮大な拡張計画を立てているのだが、果たしてどうなることやら。

◎有力知事辞任で浮かび上がったロシア地方政治の“現実”(2012年4月21日、産経新聞)
 今年3月に辞任したロシア極東地方の前知事が行方不明となり、ロシア社会でさまざまな憶測を呼んでいる。同氏をめぐっては汚職の噂が絶えず、辞任後に逮捕されたとの報道も飛び交った。極東は今年9月にアジア太平洋経済協力会議(APEC)が開催されるなど国際的な注目が高まるが、前知事をめぐる騒動は、ロシアの地方政治の暗部をさらけ出してしまったとも言えそうだ。
 「私は彼の妻よ。彼が行くところなら、どこにだって行くわ」
 3月23日付の露紙・独立新聞(電子版)によると、記者会見に現れた極東・沿海地方のセルゲイ・ダリキン前知事の妻で、女優のラリーサ・ベロブロワ氏はそう語り、夫と連絡を取れていることを強調した。しかし、居所については言及を避けたという。ダリキン氏の家族は、3月の同氏の知事辞任後にフランスに行ったとの報道もあり、彼女が会見に現れたこと自体がロシア社会において驚きをもって受け止められた。
 セルゲイ・ダリキン氏とはどのような人物か。同氏は船舶会社の経営者から、2001年に37歳の若さで極東・沿海地方の知事選に出馬し勝利。以来、10年以上にわたりその地位を守ってきた。極東は、ロシア政府が「アジアへの窓」と位置づけ、中国など拡大する北東アジアの経済力を取り込むための重要な拠点と目されており、ダリキン氏はその旗振り役としてメディアなどにも頻繁に登場していた。
 しかし、同氏は昨年末、プーチン首相から突然の“辞任勧告”を受ける。それは、プーチン氏が一般市民の質問に電話で答えるというテレビ番組内で起きた。
 極東地方在住のビジネスマンだと名乗る視聴者の一人が、同地域での汚職の深刻さを訴えたのだ。プーチン氏は、極東地方の汚職のひどさを認識していると述べ、地元政府の責任についても言及。そして3月、プーチン氏が大統領復帰を狙う選挙を目前に、ダリキン氏は「自らの希望により」(政府当局)辞任を申し出たという。
 事実、ダリキン氏はかねてから、汚職にまつわる噂が絶えなかった。08年には国有資産の不正売却疑惑をめぐり、ダリキン氏は検察の事情聴取を受けた。そして、その直後に同氏は心臓発作を起こし、その治療を目的にモスクワ郊外の治療施設に入所したとされる。しかし専門家の間では、この入所は治療目的ではなく、実際は中央政府から訴追免除の約束を取り付けるためにモスクワに来たと指摘されている。独立新聞によると、同疑惑をめぐる捜査においては、ダリキン氏こそが資産売却を取り仕切っていたとの証言も出ているという。
 同紙はまた、彼が帰還する可能性があるとすれば、「中央政府の高級官僚から、彼の身の安全を保証するとの合意を得た場合だけだ」と指摘する関係者の意見を紹介している。地方の政治家の命運は、すべてが中央政府の意向次第-。ダリキン氏をめぐる一連の騒動はまた、そのようなロシアの地方社会の現実を、浮き彫りにしていると言えそうだ。

◎逮捕された反プーチン首相のバンド、裁判所が拘束期限を延長(2012年4月21日、朝日新聞)
 ロシアの裁判所は19日、大聖堂でプーチン首相に抗議する曲を演奏したとして逮捕された女性パンク・バンドのメンバー3人について、身柄拘束の期限を6月24日まで延長した。
 バンド「プッシー・ライオット」のメンバー5人は、2月21日にモスクワの大聖堂に覆面をつけて乱入し、プーチン首相に抗議する曲を演奏した。
 裁判所は、2月の演奏について現在も捜査が行われていると検察側が明らかにしたことを受け、拘束期間の延長を決定。3人の弁護士は、保釈金支払いで19日に保釈するよう求めていた。「フーリガン行為」で有罪となれば、3人には最大で禁錮7年の刑が科される。
 逮捕されたメンバーらは「(拘束には)政治が絡んでいる」と述べ、「すべての反政府活動家に対し、ロシアが弾圧を行うと決めたことは明らかだ」と政府を非難した。また、拘束中に家族と連絡を取ることも禁じられていると話した。
 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルも3人の釈放を呼び掛けている。3人の弁護士は、欧州人権裁判所に上訴する方針を示した。

◎学習ノートにスターリン肖像、ロシアで広がる波紋(2012年4月21日、朝日新聞)
 旧ソ連の独裁者スターリンの肖像を表紙にあしらった学習用ノートがロシアで発売され、波紋を広げている。ナチスドイツからの解放者か、多数の国民を処刑した弾圧者か。評価の割れるスターリンは、死後60年近くたっても、亡霊のようにロシア社会をさまよっている。
 ロシアのノート会社「アルト」がこの春、18世紀の女帝エカテリーナ2世、ナポレオンを撃退したクトゥーゾフ将軍、ソ連のロケット開発指導者のコロリョフ博士、作曲家のラフマニノフとともに、「偉大なロシアの名」と題して、5冊セットで250ルーブル(約700円)で売り出した。表紙が額縁のような体裁で、中央の肖像画を際立たせるつくりになっている。
 スターリンの登場はメディアで物議を醸した。ロシア社会院メンバーのスワニーゼ氏はノーボスチ通信に対し、「口ひげ姿のスターリンが美しく描かれた豪華な表紙を子どもが見れば、英雄と思ってしまう。教育上の観点からすれば単なる堕落だ」と批判。人権派やリベラル派から「ドイツ国民がヒトラーに対処したように、ロシア人もスターリンに厳しく対処すべきだ」などの意見が続出した。

◎ロシア「死の商人」に懲役25年、米映画モデルの武器商(2012年4月7日、朝日新聞)
 コロンビアのテロ組織に武器を密売し、米国人殺害の共謀罪などに問われたロシア人武器商のビクトル・ブート被告(45)に対し、ニューヨークの連邦地裁は5日、懲役25年の判決を言い渡した。
 ブート被告は旧ソ連軍の将校で、世界各地で違法な武器取引に関与したとして米国からテロ容疑で国際手配されていた。「死の商人」と呼ばれ、2005年の米国映画「ロード・オブ・ウォー」でニコラス・ケイジが演じた主人公のモデルの一人とされる。
 ブート被告は08年3月、バンコクのホテルにいるところをタイ警察が拘束、その後、米国に移送された。

◎盗撮、盗聴、ロシアで特務機関が暗躍、在露日本大使館の公使も被害(2012年3月26日、産経新聞)
 ロシアで反政権派の政治家や人権活動家が盗撮・盗聴され、面会や電話の内容がインターネットや政府系メディアで暴露される事態が相次いでいる。在露日本大使館の公使(政務担当)も被害にあった。ソ連時代をほうふつさせる盗撮・盗聴劇には治安・特務系機関の関与が疑われており、プーチン首相が次期大統領に就任するのを前に、反政権派の信用失墜や分断を図る狙いだとみられている。
 日本大使館の公使は2月3日、モスクワ市内のレストランで著名な人権活動家、ポノマリョフ氏と面会しているところを盗撮・盗聴された。計5分30秒にわたる2本の盗撮映像が動画投稿サイト「ユーチューブ」に掲載されており、一部は政府系NTVのプロパガンダ(政治宣伝)番組でも放映された。
 この番組は諸外国が資金援助を通じて反政権派や人権活動家の糸を引いていると主張する内容。ポノマリョフ氏が北方領土の色丹、歯舞の「2島を(日本に)引き渡すべきだ」とする持論を展開している映像が使われ、氏が日本の政治的利益と引き換えに「助成金」を求めているとのナレーションが加えられていた。
 こうした盗撮・盗聴は昨年12月、モスクワで下院選の不正疑惑に抗議する大規模な反政権デモが行われるようになったのと軌を一にして相次いだ。
 昨年末には、反政権派のネムツォフ元第1副首相が俗語を多用して“身内”のデモ組織関係者を批判した電話の会話を盗聴され、政権派インターネット・メディアが録音を暴露。今年1月にはルイシコフ元下院議員らがカフェでの面会を盗撮され、人気ブロガーの反政権派指導部からの排除を画策している映像がユーチューブに流出した。
 NTVの前出番組では、欧米の外交官が人権擁護団体に出入りしたり、反政権デモを視察する模様も放映されている。ポノマリョフ氏は「盗撮が連邦保安局(FSB)などの治安・特務系機関によって行われたのは疑いない」と語り、連邦捜査委員会(SK)に調査を求める書簡を送ったことを明らかにした。
 モスクワなど大都市部で反政権機運が高まってきたのに応じ、プーチン次期政権は一定の民主化改革を行って不満層の“ガス抜き”を図る姿勢を見せている。
 これに対し、ポノマリョフ氏は「政権のシロビキ(=武闘派、治安・特務系機関の幹部や出身者など)はプーチンの大統領復帰に活気づき、プーチンがさらに(反政権派に対して)厳しい態度を取るよう圧力をかけている」と指摘。一連の盗撮・盗聴には次期政権の方針をめぐる派閥抗争も絡んでおり、先行きは全く楽観できない状況だといえる。
 在露日本大使館の話「NTVに対しては抗議文書を送付した。大使館員が通常の外交活動として行った面会の映像と音声がわれわれの了解なく放映されたことは遺憾であり、北方領土問題について日本大使館が工作をしているかのように報じられたことも誤解を与えるとする内容だ」

◎ロシア大統領「2015年までにユーラシア連合」(2012年3月20日、朝日新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は19日、旧ソ連諸国でつくるユーラシア経済共同体(EAEC)の首脳会議をモスクワのクレムリンで開いた。会議後の記者会見で、欧州連合(EU)のように旧ソ連圏を経済統合する「ユーラシア連合」に関する包括条約が、2015年1月1日までに署名されると表明した。
 東西冷戦の「東」の大国だったソ連が1991年末に崩壊後、各独立国は再びロシアを軸に経済的つながりを深めつつある。ただ、00年にできたEAECは形骸化しており、その発展的解消を通じて「連合」創設につなげる考えだ。
 19日の会議には経済共同体に加盟するロシア、カザフスタン、ベラルーシ、キルギス、タジキスタンの各大統領のほか、オブザーバー国のウクライナ、アルメニア、モルドバの大統領らが出席。メドベージェフ氏は「統合プロセスを今後どう発展させるかを協議し、予見可能なシナリオで15年に向けて統合を進めることで合意した」と述べた。

◎反プーチンデモ、一気に下火、戦術練り直しも(2012年3月20日、読売新聞)
 今月4日のロシア大統領選で当選したプーチン首相に抗議する集会が18日、モスクワのテレビ塔前であり、約500人が参加した。
 治安当局は無許可集会だとして100人以上を拘束した。
 集会は「反プーチン運動は欧米から資金援助を受けている」とする番組を放送した政府系テレビ局に怒った市民が集まった。参加者は「恥を知れ」「プーチンなきロシアを」と叫んだが、その後当局に拘束された。
 週末の17、18の両日はモスクワなどで複数の反政権デモが行われたが、いずれも参加者は1000人未満とされる。一時は10万人規模(主催者発表)にまでふくれあがった「反プーチン」デモは大統領選後、一気に下火になっており、民主派の野党勢力は戦術の練り直しを迫られている。

◎プーチン氏得票は63.6%、最終結果(2012年3月8日、産経新聞)
 ロシア中央選挙管理委員会は7日、今月4日投開票された大統領選について、プーチン首相の当選を正式に発表した。最終確定結果でプーチン氏の得票率は63.60%だった。投票率は65.34%。
 ロシア主要メディアによると、プーチン氏の大統領就任式は5月7日に行われる。
 2位のジュガーノフ共産党委員長は得票率17.18%で、3位の実業家プロホロフ氏は7.98%。4位の極右、自由民主党のジリノフスキー党首は6.22%、最下位の左派系「公正ロシア」のミロノフ前上院議長は3.85%だった。

◎プーチン氏得票率「10ポイント水増し」、監視組織指摘(2012年3月8日、朝日新聞)
 プーチン首相が圧勝したロシア大統領選について、「反プーチン集会」の参加者らによる独立系の選挙監視組織「有権者連盟」は7日、大規模な不正があったと指摘した。プーチン氏の63%の得票率は10ポイント水増しされたと分析している。
 連盟の監視員が野党陣営の監視団に加わるなどし、投票所で不正の有無を調査。ロシア全土で約4500に上る報告が寄せられたという。第2の都市サンクトペテルブルクなどでは得票数の書き換えがあったとしている。
 入手した得票記録と中央選管の発表との照合などから全体の得票率を推計し、「大規模な不正があった大統領選を承認することはできない」と結論づけた。

◎プーチン氏「不正あった」再選挙には応じず強気(2012年3月7日、読売新聞)
 ロシア大統領選で当選したプーチン首相(59)は6日、大統領選のためモスクワ市内の大学に設置されていた投開票の監視センターを訪れ、「不正はあった。(有権者)全員が理解できるよう解明する必要がある」と述べ、不正を追及する姿勢をアピールした。
 その一方で、公正な選挙を求める抗議集会については「政治的な争いの一部に過ぎない。選挙とは関係がない」と指摘。野党勢力が要求する再選挙などに応じない強気の構えをみせた。
 プーチン氏は不正に対応する構えを示しつつも、自らが当選した選挙の正当性には疑問を差し挟ませない厳しい態度を示したと言える。野党勢力は10日に抗議集会を再び行う予定で、プーチン氏の強硬姿勢に反発を強めそうだ。
 一方、露外務省は6日の声明で、大統領選に国際監視団を派遣した全欧安保協力機構(OSCE)が選挙に不正があったと発表したことについて、「偏見にとらわれ、議論の余地がある評価が含まれており同意できない」と不快感を示した。

◎反プーチン行動封じ込め、著名ブロガーら拘束(2012年3月6日、読売新聞)
 ロシア大統領選での不正と、プーチン首相の大統領返り咲きに抗議する野党勢力が5日夜、首都モスクワやプーチン氏の地元サンクトペテルブルクなどで集会を開き、著名ブロガーのアレクセイ・ナワリヌイ氏ら計550人以上が警察に拘束された。
 インターファクス通信などが伝えた。
 露政府はこれまで、「反プーチン」を掲げる街頭行動を容認してきたが、ここへ来て封じ込めの姿勢を鮮明にした。
 治安当局によると、モスクワのプーシキン広場で行われたデモには1万4000人が参加した。そのうち250人が、事前に届け出ていた終了時刻を過ぎて広場に居座ろうとしたため、警察に連行された。サンクトペテルブルクでも3000人が無許可でデモを行い、少なくとも300人が拘束されたという。

◎プーチン氏当選、モスクワで1万人抗議デモ(2012年3月6日、読売新聞)
 ロシアのプーチン首相(59)が当選した4日の大統領選をめぐり、不正があったと主張する野党勢力は5日夜、モスクワ中心部のプーシキン広場で大規模な抗議集会を開いた。
 全欧安保協力機構(OSCE)などの国際選挙監視団も不正があったとの認識を示しており、今後、選挙の正統性を巡り当局と野党との対立が激化する可能性がある。
 抗議集会は昨年12月から「プーチンなきロシア」を掲げ、数万人を集めて大規模デモを開いてきた勢力が開いた。インターファクス通信は約1万人が集結したと伝えた。大統領選で3位となった富豪のミハイル・プロホロフ氏(46)も参加した。
 次点に終わったゲンナジー・ジュガーノフ共産党議長(67)も、投票は「非合法で、不公平で不透明だ」と、争う姿勢を示した。
 会場の広場にはヘルメットをかぶった警察官が数多く配置され、広場の外へ抗議行動が広がらないよう厳重に警備している。

◎ロシア大統領選、プーチン氏勝利、第1回投票で過半数(2012年3月5日、朝日新聞)
 ロシア大統領選はモスクワ時間の4日午後9時(日本時間5日午前2時)に全土で投票が締め切られ、開票作業に入った。ロシア中央選管の発表によると、開票率約85%の段階で通算3期目への返り咲きを目指すプーチン首相の得票率は64.8%。第1回投票で過半数をとって当選を決めた。
 プーチン氏は4日午後11時前、クレムリン(大統領府)そばのマネージ広場に、「双頭体制」を組むメドベージェフ大統領とともに姿を見せ、勝利宣言した。11万人以上(警察発表)の支持者を前に、「大多数の支持を得た『清い勝利』だ。我々は勝とうと約束した。そして我々は勝った」と力を込めた。
 プーチン氏の目からは涙がこぼれた。昨年12月の下院選の不正疑惑をきっかけに、大規模な「反プーチン集会」が相次ぎ、その逆風を跳ね返す勝利に万感の思いがこみ上げたようだ。

◎全国に監視カメラ20万台、ロシア大統領選、異例の投票(2012年3月5日、朝日新聞)
 ロシア大統領選は4日、全土で投票が締め切られて開票作業に入った。通算で3期目となるプーチン首相(59)の返り咲きが確実な情勢だ。昨年12月の下院選での不正疑惑を踏まえ、全国に20万台の監視カメラを設けた異例の投票だった。反政権側に強かった疑念が解消できるかどうかが焦点となる。
 投票はモスクワ時間の4日午後9時(日本時間5日午前2時)に締め切られた。ロシア中央選管の最初の発表では、開票率約14%の段階でプーチン氏の得票率は61.8%だった。
 世論調査機関の出口調査によると、プーチン氏に投票したと回答した人は58.3%。プーチン陣営は早々と「決選投票にはいかないだろう。第1回投票での勝利を期待する」と述べた。

◎ロシア軍機5機、韓国領空にも接近、緊急発進受け離脱(2012年2月27日、産経新聞)
 27日付の韓国紙、東亜日報は同国政府筋の話として、8日に日本の領空周辺を飛行したロシア軍機計5機が、韓国の防空識別圏にも侵入し、韓国空軍機が緊急発進(スクランブル)していたと報じた。
 同紙によると、ロシア軍機は当時、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進した後、進路を変え韓国領空に接近。韓国軍はF15戦闘機など10機を発進させた。ロシア軍機は韓国の防空識別圏内に約54キロ入った後に離れた。ロシア軍機が韓国の防空識別圏にこれほど深く侵入したのは初めてという。
 日本の防衛省によると、ロシア軍機は8日午前9時ごろから北海道や東北沖などの日本海側、太平洋側を飛行した。

◎プーチン氏の大統領復帰、反対派が「人間の鎖」(2012年2月26日、読売新聞)
 ロシアのプーチン首相の大統領復帰に反対する勢力は大統領選まで1週間となる26日、モスクワの環状道路で「人間の鎖」を作った。
 「反プーチン」の街頭行動は昨年12月以降で4回目。一方、ロシアの宗教界で最大の信徒を持つ正教会は、首相支持の立場から「参加は好ましくない」との見解を示した。
 インターネットなどを通じた呼びかけで集まった人々が両隣の人と手を握り、全長約16キロ・メートルの環状道路を「鎖」でつないだ。主催者は3万人以上が参加したと述べたが、内務省は参加者を約1万1000人と発表した。
 これについてロシア正教会の幹部は24日、記者会見を開き、政治的な主張の違いなどを理由に対立を深めるべきでないと説き、街頭行動への不参加を求めた。多くの国民の精神的な支柱である正教会は、特定の候補を支持しないとの立場だが、事実上、プーチン氏の選挙運動を支えている。

◎仏女性ジャーナリスト追放から見えるロシア政府の“憂鬱”(2012年2月25日、産経新聞)
 ロシア政府が著名なフランス人女性ジャーナリストを追放した後に、その処分を撤回し、責任者が辞任に追い込まれる「事件」が起きた。女性は、チェチェン紛争問題などに関する本を執筆し、世界的に知られるジャーナリストで作家のアン・ニワ氏(42)。今回は、3月4日に迫った大統領選を前に反政権派の活動家らを取材していたという。事件の奇妙な顛末には、彼女の取材活動を快く思わない一方、大統領選前に政権への批判がこれ以上高まることを避けたいロシア政府の思惑も透けて見える。
 事件が起きたのは、2月10日。ニワ氏が滞在するモスクワ近郊ウラジーミルのホテルにロシアの移民庁職員が現れ、彼女を拘束した。その後、彼女に対し4時間にわたる尋問を行った後、3日以内の国外退去を命じた。ニワ氏は12日までにロシアから出国した。
 ニワ氏は今回、本の執筆のためにロシアの一般市民や政党関係者などを幅広く取材していたという。本の内容についてニワ氏は詳細を明らかにしていないが、英紙ガーディアンによると、取材対象者の中には大統領選への出馬を拒否されたリベラル政党「ヤブロコ」のヤブリンスキー党首などが含まれていた。
 尋問の際、移民庁職員は、彼女が反政府側の人物らと話をしたことを「快く思わない」と明確に述べていたという。彼女はまた、拘束前に数日間にわたり監視をされていたと証言している。
 移民庁は、彼女が商用ビザで入国したことを問題視し、彼女を追放する根拠としていた。ただ彼女は、商業的な目的で本を執筆している作家であり、これまでも本の執筆のためにさまざまな取材活動を行っていたが、今回のような扱いを受けた例は過去にないという。
 しかし、事態はその後急転する。ロシア移民庁のロモダノフスキー長官は13日夜になり突然、「決定は間違っていたかもしれない」などと発言。翌14日には、ウラジーミルを管轄する同庁の局長が辞表を提出した。その後さらに、ロシアのオルロフ駐仏大使がフランスに帰国したニワ氏に謝罪し、新たなビザ発給を申し出たという。
 ロシア側が突然態度を豹変させた理由は明らかではない。ただ、昨年秋に行われた下院選挙で大規模な不正が行われたとして国内で政権に対する不満が爆発するなか、反体制派を取材するジャーナリストを追放すれば、大統領選に対しても“不正隠し”との批判が高まることは確実だ。今回の決定の背景には、そのような批判を避けたいロシア当局の思惑があっても不思議ではなさそうだ。
 ニワ氏は1998年にフランスの日刊紙「リベラシオン」の特派員としてロシアに赴任。その後、紛争が激化していたチェチェンに赴き、農民にふんして現地に在住し、ルポを執筆した経歴を持つ。

◎プーチン首相、罰金2500円払う、集会参加者多すぎて(2012年2月13日、朝日新聞)
 3月のロシア大統領選で返り咲きをめざすプーチン首相が、罰金1千ルーブル(約2500円)を支払った。理由は、2月4日にモスクワで開かれた親プーチン派の集会に警察への届け出以上に人が集まりすぎたため。この集会は、同じ4日の反プーチン集会に対抗して催され、警察発表では参加者数で上回った。今回の罰金は、「数」での勝利を改めて見せつけた形だ。
 インタファクス通信によると、親プーチン集会の主催者の一人で政党「ロシアの愛国者」のコルネエワ副代表が11日、「プーチンさんから選対本部を通じて受け取った」として、銀行で1千ルーブルを支払った。同副代表は「問題は額ではない。彼は支持者たちを道義的に支援してくれた。感謝しています」と述べた。
 ロシアでは政権与党が辛勝した昨年末の下院選で不正があったとして大規模な反プーチン集会が相次ぎ、今月4日の3回目の集会には警察発表で3万6千人が参加。これにぶつけて政権支持派が開いた集会には警察発表で13万8千人が集まり、集会許可を当局に申請した際の予定数1万5千人を超えたという。

◎ロシア空軍機が挑発、「近年最大規模」(2012年2月9日、産経新聞)
 複数のロシア軍機が8日、太平洋と日本海で日本領空付近に接近したことが分かった。複数の政府筋が明らかにした。近年最大規模の挑発飛行だという。航空自衛隊は、露軍機が日本を1周する可能性もあるとみて戦闘機を緊急発進(スクランブル)させ、警戒を強めている。
 露軍は長距離爆撃機TU95、戦闘機SU27、空中給油機、空中警戒管制機(AWACS)など少なくとも5機。空中給油機はIL78とみられる。AWACSが日本領空に接近飛行するのは極めて異例で、空自戦闘機は初めてAWACSを目視確認し、写真撮影した。
 SU27は日本領空すれすれを飛行し、日本海を北上した。TU95は日本海を北上後、宗谷海峡を抜け、太平洋を南下。房総半島周辺で反転して北上し、8日夕に北方領土付近で空中給油し、再び日本海に入り南下を続けた。昨年9月にTU95が日本一周した際も北方領土付近で空中給油した。
 今回の挑発は「北方領土の日」の7日、野田佳彦首相が「強い意志でロシアとの交渉を進めていく」と決意表明したことへの対抗措置との見方が強い。

◎プーチン氏、TV討論に代打 他候補激怒「コメディー」(2012年2月7日、朝日新聞)
 3月4日が投票日のロシア大統領選に向け、候補者同士のテレビ討論が始まった。だが、返り咲きを目指すプーチン首相は公務を理由に出演を拒否。専門家を代理出席させる。
 「これは討論じゃなくてコメディーだ」。民族右派「自由民主党」党首として立候補しているジリノフスキー氏は地元メディアに怒りをぶちまけた。2月6日夜、同氏はプーチン氏とテレビ討論を行う予定だったが、収録に現れたのは女性の政治学者。「プーチンの脳みそが政治学者の頭の中に入っているとでもいうのか。滑稽だ。国のトップを目指す人間が討論で代理人を立てるなんて世界中どこにもない」と同氏は話す。
 首相の報道官は、首相は公務を空けてまでテレビ討論に出席することはないとし、「その分の時間を有権者のために自身の選挙公約を仕上げることに使う」と説明している。過去の大統領選でも、プーチン氏やメドベージェフ大統領は討論への参加を拒否してきた。

◎渋滞の大敵は市民のメンツ?(2012年2月5日、産経新聞)
 渋滞はモスクワの“悪しき名物”だ。平日の夕刻など車で数キロ先まで向かうにも時間が読めず、待ち合わせに遅れることもしばしばだ。そこでソビャニン市長率いるモスクワ市は昨年、渋滞解消に向け新たな手に打って出た。日本でいう「バスレーン」の設置だ。改正を重ねて昨年9月に法令が採択された。
 市交通局の公式サイトによると、昨年だけで9カ所、総延長約90キロに及ぶバスレーンができた。今年は総延長230キロまで拡充する計画とされ、ここを一般車両が走ると300ルーブル(約730円)の罰金となる。
 ロシアの有力紙やテレビのサイトによると、モスクワ市民の8割は公共交通機関で移動している。事実なら、バスが渋滞から解放されるのは大多数の市民にとっては悪いことではない。バスの運転手や利用者から歓迎する声も出ている。
 しかし、タクシー運転手からは「私たちも公共交通機関なのに、(客待ちのために)止まっていることもできない。タクシー乗り場をつくるべきだ」との不満が出たほか、例によって緊急でもないのにパトカーなどがバスレーンを走っている-といった役人批判の声も上がっている。
 罰金覚悟でバスレーンを走る輩も当然出てくるわけで、今年7月には、この違反に対する罰金が一気に3千ルーブルに跳ね上がる。
 露有力紙、独立新聞(電子版)は「(市の)狙いは市民に公共の乗り物に乗り換えさせることだ」と賛意を表する一方で、マイカーは暮らし向きが上々であることを示す証しだと信じる市民の「体面」が邪魔をするため、市の思惑通りに行くかは疑問だとしている。
 モスクワ市街を走る車は推計400万台以上。市長は昨年1年間で60万台増えたと述べている。

◎反プーチン数万人デモ、清廉さ象徴の白風船掲げ(2012年2月5日、読売新聞)
 ロシア各地で4日、投票まで1か月となった大統領選を巡り、プーチン首相の大統領復帰に反対する市民らが大規模なデモを行った。
 モスクワ中心部では、市民らが清廉さを象徴する白い風船などを掲げ、公正な選挙実施を求めると共に「反プーチン」をアピールした。モスクワでの参加者は主催者発表で10万人以上。内務省は約3万5000人としている。

◎年間武器輸出8000億円超に ロシア(2012年2月2日、産経新聞)
 インタファクス通信によると、ロシア製武器を独占的に輸出する国営企業ロスオボロンエクスポルトのイサイキン社長は2日、2011年のロシアの武器輸出額が107億1800万ドル(約8160億円)に達したと述べた。
 主要な輸出相手国としては、インドやベネズエラなどを挙げた。
 ロシア政府によると、10年の年間輸出額は約100億ドルだった。

◎ロシア大統領選候補者、5人で確定、2氏は却下(2012年1月28日、朝日新聞)
 3月のロシア大統領選をめぐり、中央選挙管理委員会は27日、リベラル野党「ヤブロコ」の創始者、ヤブリンスキー氏の立候補を却下した。イルクーツク州知事のメゼンツェフ氏も立候補を認められず、5人の候補者が確定した。インタファクス通信が伝えた。
 昨年の下院選以来続く反与党・政権の集会ではヤブリンスキー氏への支持が厚い。国会に議席を持たない政党の候補や無所属の候補は立候補に200万人の署名が必要で、5%以上の不備があると立候補できない。両氏ともこの規定に抵触したという。ヤブリンスキー氏は地元メディアに「裁判に訴える」と語った。
 最終的な顔ぶれは、プーチン首相、共産党のジュガノフ委員長、民族右派「自由民主党」のジリノフスキー党首、中道左派のミロノフ前上院議長、実業家で大富豪のプロホロフ氏

◎ロシア下院選疑惑で捜査着手、投票結果の改ざん容疑など(2012年1月22日、産経新聞)
 昨年12月のロシア下院選での不正疑惑をめぐり、連邦捜査委員会は21日、国民から通報があった350件以上のうち、26件について刑事事件として捜査に着手したことを明らかにした。インタファクス通信が報じた。
 容疑の詳細は明らかにされていないが、同委員会は「選挙権行使や選挙管理委員会業務の妨害」「選挙関係書類の改ざん」「投票結果の改ざん」の疑いがあるといい、捜査対象は票数を水増ししたとの疑惑が指摘されている与党、統一ロシアだけではなく「下院議席を得た事実上すべての党」だとしている。
 下院選での不正疑惑をきっかけにモスクワで数万人規模の反政権集会が繰り返し開かれており、政権側はプーチン首相が出馬する3月の大統領選を前に、国民の反発や疑問に対応する必要に迫られている。

◎ロシア下院選の不正疑惑、当局が捜査着手(2012年1月22日、朝日新聞)
 ロシア下院選での与党による不正疑惑をめぐり、重大事件の摘発にあたる捜査委員会は21日、捜査に着手したことを明らかにした。インタファクス通信が伝えた。情報提供は350件以上あり、そのうちの26件が対象。投票の妨害や結果の改ざんなどの疑いがあるという。捜査委員会の担当者は「全ての党に関係している」と述べた。

◎露大統領選、実業家プロホロフ氏「台風の目」に(2012年1月19日、読売新聞)
 3月のロシア大統領選で「台風の目」になるとみられる実業家ミハイル・プロホロフ氏(46)は18日、立候補に必要な法定署名数(200万人)を上回る210万人分の署名を集め、中央選挙委員会に提出した。昨年12月以来の大規模抗議運動の中核であるリベラルな有権者層は、同氏の支持に回る可能性があり、今後どこまで有権者に浸透するかがカギとなる。
 プロホロフ氏は、署名提出に先立ち、ロイター通信に対して「管理された民主主義の時代は終わった」と述べ、プーチン首相(59)率いる強権体制を改革する必要性を強調。同時に、現政権と政策面では一致点が多いことも指摘し、プーチン氏が返り咲きを果たした場合、首相就任を受ける可能性も示唆した。

◎「半世紀で最大のスパイ事件」カナダ軍将校逮捕(2012年1月19日、読売新聞)
 カナダの捜査当局は、国家機密情報を外国に漏えいしたとして、同国海軍のジェフリー・デライル中尉(40)を情報保全法違反容疑で逮捕した。
 情報の内容や提供先は不明だが、同国CTVテレビは提供先をロシアと報じている。
 カナダのメディアによると、中尉は同国東部ハリファクスの諜報施設に勤務し、2007年から今月13日にかけて外国に情報を提供した疑い。同施設は領海内の艦船を監視し、米英など北大西洋条約機構(NATO)加盟国の機密情報も扱う。カナダ情報将校の逮捕は異例で、「過去半世紀で最大のスパイ事件」(主要紙グローブ・アンド・メール)と国民に衝撃を与えている。

◎ロシア最高峰の劇場をめぐる内紛劇が拡大(2012年1月14日、産経新聞)
 ロシア最高峰の芸術の殿堂、ボリショイ劇場をめぐる内紛劇が止まらない。政府の肝いりで実施された大規模改修工事の出来栄えを「芸術の破壊行為」と非難したトップダンサーが昨年末、劇場の舞台教育担当から解雇された。ダンサー側は劇場に「訴訟も辞さない」と全面対決する姿勢を示しており、両者の争いはエスカレートするばかりだ。改修工事をめぐっては、その費用が着服された疑いも浮上するなどその内容が疑問視されている。争いが長引けば、ロシアが誇る同劇場の国際的な評判にも傷がつきかねない。
 「もし誰かほかの人間を私の役職につかせるというのなら、私は訴訟も辞さない考えだ」
 インタファクス通信によると、ボリショイ劇場のトップダンサー、ニコライ・ツィスカリーゼさんはそう語り、劇場側を相手に訴訟を起こす可能性を示唆した。
 ボリショイ劇場はモスクワ市中心部に位置し、ロシアを訪れる外国人の多くが足を運ぶなど、同国を代表する劇場として知られる。しかし19世紀に完成した同劇場の本館は、老朽化が激しいとして、政府の全面的な支援のもと、2005年に大規模修復工事を開始。昨秋、6年越しの工事が終わり、劇場は再開された。
 しかしその出来栄えに対し、ツィスカリーゼさんは「昔は金箔だったのに、今は金色のペンキで装飾がほどこされている」「バレリーナを高く持ち上げたら頭がぶつかりそうなほどリハーサル室の天井が低い」などと工事の失敗を相次ぎ指摘。「ボリショイ劇場に対して行われたのは、野蛮行為にほかならない」とまで言い切り、上層部の怒りを買ったとされる。
 ツィスカリーゼさんは旧ソ連のグルジア生まれで、現在38歳。2001年には、ロシアで最年少とされる人民芸術家の称号を獲得するなど、同国を代表するトップスターとして知られる。そのスターの発言だけに、ボリショイ劇場側にも相当の痛手となったはずだ。
 劇場側も“反撃”に出る。ツィスカリーゼさんは昨年10月に行われた再開記念コンサートの出演を許されず、客席にも立ち入りを許可されなかった。そして12月31日付で、ツィスカリーゼさんはボリショイ劇場の舞台教育担当者の役職からも解雇。同日はツィスカリーゼさんの誕生日でもあった。
 ツィスカリーゼさんは解雇の通知を受け、インタファクスに対し「ボリショイ劇場の上層部が私に報復したいがために(解雇を)行ったのは明白だ」と断言。「これは、今後劇場を批判したいと考える他のダンサーらへの見せしめだ。劇場の総支配人は、劇場をあたかも自分の“領地”でもあるかのように振る舞っている」などとまくしたてた。
 劇場の改修工事は、その期間が当初の予定より大幅に長引き、コストも最終的に210億ルーブル(約500億円)と巨額になるなど、当初予定をはるかに上回る額となった。報道によると、遅延などの背景には工事業者との不明朗な契約があった可能性が指摘されており、09年には巨額の使途不明金が着服された疑いで検察当局が捜査に乗り出している。
 ボリショイ劇場は、ロシア芸術を世界に知らしめる重要な拠点でもあり、現地報道によれば政府は今月、新たに3000万ドル(約23億円)の支援金を同劇場に供給する計画を明らかにした。政府の肝いりで行われた大規模改修工事を擁護する劇場首脳部と、それを徹底批判するトップダンサー。ボリショイ劇場の醜い内紛劇は、同劇場の歴史の大きな汚点になりかねない。

◎ウラジオLNGプラント、日露が月内にも事業化(2012年1月6日、読売新聞)
 日本とロシアは、2011年に共同建設で基本合意したロシア極東ウラジオストクの液化天然ガス(LNG)プラントについて、1月末にも事業化を大筋で決める。
 プラントは日本のLNG総輸入量の約14%に当たる年産1000万トン規模で、事業費は1兆円規模を見込む。2020年前後の稼働を目指しており、日本のエネルギー安定供給に貢献することが期待される。
 この事業は、伊藤忠商事や石油資源開発など日本の主なエネルギー関連企業と、ロシア国営ガス会社・ガスプロムが事業化に向けた調査を進めていた。ロシア東部で産出される天然ガスを液化して輸出すれば採算がとれるなど事業の大枠が固まったことから、20日のガスプロム首脳の訪日時に日本側から調査結果を最終報告する。2月以降、1~2年かけてLNGの具体的な価格やプラントの建設費用、総事業費など詳細部分を詰める。

◎闘病中の女性企業家に「執行猶予」、ロシア司法に変化の兆しか(2011年12月31日、産経新聞)
 権力に従順でない企業家に容赦のない判決を下してきたロシアの司法制度に変化の兆しが見えつつある。12月26日、モスクワ市内の地方裁判所は、肝臓などに重篤な病を抱えつつ1年以上にわたり審理前勾留下に置かれてきた女性企業家に“執行猶予”の判決を下し身柄を解放した。政府が打ち出した企業家の刑罰の軽減が背景にあるとみられるが、闇に取り残された経済人は数知れず、不透明なビジネス環境がどこまで改善されるかは依然未知数だ。
 「驚きの判決だ」
 ロシアの英字紙モスクワタイムズは28日、ナターリヤ・グレビッチ氏(52)に下された「執行猶予」という判決を、そう表現した。従来のロシアの裁判であれば、有罪判決が下された企業家は拘置を免れないのが通例だったためだ。
 グレビッチ氏は2010年12月に着服の容疑で逮捕された。企業経営者だった彼女は銀行から6億ルーブル(約15億円)の融資を受けたが、その返済の意思がないと判断されたため逮捕されたという。
 しかし現地報道によると、グレビッチ氏側の弁護士は、事件は銀行による企業乗っ取り計画の一環だったと指摘する。グレビッチ氏が経営する企業の経営権を奪取したかった銀行幹部が、彼女に賄賂をわたして経営権を譲るよう要求したが、彼女が拒否したため事件をでっち上げたのだという。
 グレビッチ氏の勾留は不透明な形で幾度も延長された。ある時などは、裁判官が予定の時刻から数時間にもわたり公聴会を開かず、最終的に複数の記者らを裁判所から強制的に追い出し、行ったケースすらあるという。
 長期にわたる勾留中、グレビッチ氏は重度の腎不全をわずらい、膀胱(ぼうこう)の機能を失った。裁判所は「(グレビッチ氏の病気は)政府が規定する病に該当しない」との理由で、勾留を継続していた。判決が出たとき彼女はやせ細り、上着からは彼女の膀胱に装着された管が見えるという痛々しい姿だったという。
 「執行猶予」という判決が出た背景には、メドベージェフ大統領が昨年3月に、経済分野での犯罪に対し「懲役刑を強制しない」という法案に署名するなど、企業家への刑罰を軽減させてきたことなどが背景にあるとみられている。
 これまでロシアでは、当局や、それと関係を持つとみられる企業などの意向に逆らう経済関係者が不明瞭な理由で逮捕され、“拷問”に近い扱いを受けるケースが後を絶たず、国際的にも強い非難を浴びていた。政権の支持率が凋落するなか、ようやくその改善に司法当局も重い腰を上げ始めた格好だ。
 ただ、状況が改善に向かうかは依然不透明なままだ。報道によると、モスクワ市内では2011年だけで、審理前勾留下にも関わらず50人もの人が命を落としているという。
 経済関係者が勾留中に死亡するケースも少なくなく、企業家は当局などの“意向”に逆らえば、常に死と隣り合わせの危険を突きつけられてきたのが現状だ。
 執行猶予判決に対し、グレビッチ氏側は内容を不服として即座に控訴した。モスクワでの大規模デモ発生など、強権的な政府当局に対し人々は不満を爆発させつつある。権力側が企業家を押さえつける事実上の武器だった司法制度にも変化が生まれるのか。注目されている。

◎プーチン首相「選挙やり直しは不可能、無意味」(2011年12月28日、朝日新聞)
 今月4日の下院選をめぐり、与党「統一ロシア」の不正疑惑への抗議が続いているロシアで、プーチン首相は27日、選挙のやり直しは「不可能だ」と述べた。来年3月の選挙で大統領復帰を狙う首相だが、今回の発言でさらに反発を招きそうだ。
 首相は支持層を広げるために創設した運動体「全ロシア国民戦線」の会合で、「新しい下院はすでに始まっており、選挙結果の見直しについて議論することは無意味だ」と発言。「仮に何らかの違反があったとすれば、裁判だけが解決できる」と話した。
 ロシアでは下院選後、各地で抗議集会が相次ぎ、24日はソ連崩壊後最大となる集会がモスクワであった。

◎DIC、ロシアに包装材用印刷インキ新工場(2011年12月27日、化学工業日報)
 DICは、ロシアにパッケージ用リキッドインキの新工場を建設する。モスクワ近郊のペトロフスコエ地区に工場用地を確保した。総投資額は約27億円で、2012年9月の完成・稼働開始を目指す。食品・飲料をはじめとした包装材の印刷向けリキッドインキを中心に、13年内に年約1万5000トンの生産体制を確立する計画。既存のロシア工場に次ぐ第2の生産拠点を構築し現地需要に対応するとともに、新興国を中心とするグローバル展開に弾みをつける。

◎プーチン首相、「上からの改革」路線を鮮明(2011年12月27日、読売新聞)
 ロシアのプーチン首相は27日、自ら創設した政治組織「国民戦線」の会合で、今月10日と24日の大規模抗議集会を主催した組織について、「統一した計画を欠き、目標を達成するための道筋も明確でない。
 具体的な成果を収められる人は誰もいない」と批判した。
 首相は同時に、来年3月の大統領選の選挙戦でインターネットを通じた有権者との対話の場などを設け、「人々の声に耳を傾け、選挙手続きの透明性を高める」との意向を示した。あくまで政権・与党が主体となって、抗議集会に表れた市民の不満を吸い上げようという「上からの改革」路線を鮮明にしたものだ。
 プーチン首相は、前例のない規模の抗議集会に対応していることを示すため、既に人事面などで手を打ってきた。かつて「議会は議論の場ではない」と発言し、政権の言いなりだったボリス・グリズロフ下院議長は退任させた。後任には大統領府長官だったセルゲイ・ナルイシキン氏が就任し、審議の活性化を打ち出した。

◎ロシアで抗議集会再び、モスクワの参加者、前回超える(2011年12月25日、朝日新聞)
 ロシア下院選での不正疑惑を発端に、政権への不満を表明する2度目の大規模な集会が24日、モスクワ中心部で開かれた。「プーチン首相は退陣を」とのシュプレヒコールも起きた。都市部の中流層を中心に、市民は抗議の声をあげ続けている。
 1991年のソ連崩壊後で最大規模といわれた10日の抗議集会に続いて野党勢力が主催し、当局が許可した。参加者は警察発表では最大3万人と、前回の2万5千人を超えた。主催者側は12万人としている。
 与党「統一ロシア」の選挙戦を率いたメドベージェフ大統領は選挙改革に着手し始めたが、不十分だと見る市民が多いようだ。来春の大統領選で復帰を狙うプーチン首相の選挙戦への影響は確実だとみられる。

◎プーチン氏は大統領選断念を、ゴルバチョフ氏(2011年12月25日、読売新聞)
 ソ連が崩壊して25日で20年を迎えたが、旧ソ連圏の15か国は目立った記念行事などを行わず、歴史の節目を迎えた。
 ロシアでは、下院選の不正糾弾に端を発した今月10日と24日の大衆抗議集会が、ソ連崩壊後最多の支持者を集めており、今後、プーチン首相がどのような対応を取るかに関心が集まっている。
 ソ連最後の指導者となったゴルバチョフ元大統領は24日、ラジオ局「エコー・モスクワ」で、20年前に自ら辞任したことを挙げ、「これこそ(プーチン首相が)今すべきことだ。そうすれば彼の功績は残る」と述べ、プーチン氏に対し、来年3月の大統領選立候補を断念するよう求めた。
 プーチン氏は、ソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的悲劇」と呼び、旧ソ連圏での新たな経済統合を模索している。だが、調査機関レバダ・センターによる最新の世論調査では、「ソ連崩壊は残念」という回答が10年前に比べて20ポイント以上下落し、過去最低の53%となった。

◎ロシア全土で反プーチン集会計画、4万人参加へ(2011年12月24日、読売新聞)
 ロシア全土で24日、下院選での不正や、プーチン首相の強権支配に反対する集会が開かれる。
 10日の全国一斉集会に続く大規模抗議行動で、主催者のサイトには4万人以上がモスクワの集会に参加すると表明した。

◎露下院選の不正調査、大統領、ガス抜き狙いか?(2011年12月13日、読売新聞)
 ロシア大統領直属の捜査委員会は12日、下院選挙(4日投票)を巡る不正に関するすべての情報について「調査を始めた」と発表した。
 不正の証拠が見つかれば刑事訴追するとしている。メドベージェフ大統領が11日、「投票所におけるすべての不正申告の調査」を指示したのを受けた措置だ。
 不正疑惑の対象となっている与党「統一ロシア」は、12日、モスクワで政権への支持集会を開き、内務省発表で2万5000人が集まった。この数は不正に抗議して10日モスクワで開かれた集会の参加者(警察発表)と同じで、与党側の対抗意識がうかがえる。
 選挙結果については、ユーリ・チャイカ検事総長が12日、「やり直し選挙を実施する理由はない」と述べ、中央選管も選挙結果の再集計を拒む構えで、野党勢力が求める選挙のやり直しは実現しないとみられる。
 ただ、国営テレビなどは従来と異なり、今回の抗議集会の模様を報道している。これについて経済紙RBCは12日、「大統領から個人的な指示があった」と伝えた。政権は、民意をくみ上げる姿勢を示して「ガス抜き」を図っているものとみられる。

◎露下院選、不正告発、1人で45回投票も(2011年12月12日、読売新聞)
 ロシア下院選を巡って不正行為の告発が相次ぎ、不正の背後にいるとされる与党「統一ロシア」への反発が国民の間で広がっている。
 運動員による複数投票など荒っぽい手口が次々とネットで暴露され、政権側は疑惑の打ち消しと抗議運動の抑え込みに躍起になっている。
 不正行為は、4日の投票直後から動画サイト「ユーチューブ」などに投稿された。主な手口は、同じ人物が複数の投票所をグルグル回る「回転木馬」だ。ユーチューブによると、「統一」から45回の投票を依頼されたという男性が車内で「1番目か2番目の受付に行け」などと指示を受けて投票所に向かう。目印は身分証に張った「青リンゴ」シールで、事情に通じた投票所職員が有権者名簿に名前がなくても、投票用紙を渡した。報酬は4000ルーブル(約9900円)という。
 事前に詰め込まれた票の束が投票箱から大量に見つかる「詰め込み」と呼ばれる手口を示す動画や、投票所職員が集計結果の水増しを認める報道もある。

◎ロシア下院選の不正、大統領が「全件調査」指示(2011年12月12日、読売新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は11日、下院選の不正に抗議して10日に行われた大規模デモに関連し、「集会で示されたスローガンや申し立てには同意しない」と与党「統一ロシア」による組織的な不正行為を否定しつつ、「投票所における不正申告のすべてを調査するよう指示した」ことを明らかにした。
 交流サイト「フェイスブック」を通じてコメントを発表したもので、デモについてロシアの首脳が反応を出すのは初めて。

◎「選挙は無効」「プーチン退陣」と叫ぶ大群衆(2011年12月11日、読売新聞)
 ロシア下院選での不正に抗議する10日のモスクワでの集会は、プーチン首相が大統領に就任した2000年以降では異例の2万5000人規模にふくれあがった。
 「選挙は無効」「プーチン退陣」と叫ぶ大群衆は、強権体制に対する無力感とあきらめに包まれていたロシアの反政権・民主化運動に、潮流の変化が訪れた可能性を示した。
 モスクワでの集会は午後2時、クレムリンに近いボロートナヤ広場で始まった。参加者は若者が中心だが、高齢者の姿もあった。初めて政治集会に参加した会計士のレイラ・レワノワさん(35)は「知人は誰も与党に投票しなかったのに彼らは勝った」と怒りを口にしつつ、周囲を取り囲む警官隊を指さして「私たちに銃はない。抗議行動でロシアが変わるとの希望は持っていない」とも述べた。
 今回の集会を主催したのは、1990年代後半にエリツィン政権で第1副首相を務めたボリス・ネムツォフ氏が率いる反政権の市民団体などで、野党の共産党や公正ロシアが加わった。
 だが、集会参加者は、こうした政治組織を支持しているわけではなく、政権による選挙結果の不正操作がネットなどで伝えられたことでふくらんだ。多くの参加者は与党「統一ロシア」のシンボルマークにバツ印をつけたリボンを胸につけた。
 プーチン氏の地元サンクトペテルブルクでも集会が開かれ約7000人が参加した。明確な指導者を欠く中、簡易投稿サイト「ツイッター」などで運動が拡大する展開は、中東の大衆行動「アラブの春」に重なる。

◎下院選の不正に抗議、ロシア各地で大規模集会(2011年12月11日、読売新聞)
 ロシア下院選(今月4日投票)での不正に抗議し、プーチン首相を頂点とする強権統治の長期化に反対する大規模デモが10日、ロシア各地で開かれた。
 モスクワ中心部のデモには少なくとも約2万5000人(警察発表)が集結。デモは全国の50以上の都市に拡大した。
 モスクワで大規模な抗議行動が行われたのは、プーチン氏が大統領だった2001年、政権によるメディア統制に反対して開かれた集会以来とみられ、今回は「過去20年で最大級」(ロシア通信)という。
 モスクワでの抗議デモは野党「国民自由党」幹部のボリス・ネムツォフ元第1副首相らが組織したもので、主催者側は参加者を5万人以上と発表した。参加者は下院選のやり直しだけでなくプーチン首相の辞任も求め、「プーチンなきロシア」「(政権は)恥を知れ」などと叫んだ。

◎露下院選、与党得票5割届かず、野党は不正訴え(2011年12月10日、読売新聞)
 ロシア中央選管は9日、今月4日に投開票された下院選(定数450)の最終集計結果を発表した。
 プーチン首相率いる与党「統一ロシア」の得票率は49.32%で5割に届かず、議席の過半数を確保したが前回2007年の下院選から77減の238となった。
 投開票で不正を行ったとして「統一」を批判する野党勢力は10日、各地で抗議集会を開く予定だ。「統一」に続いて、最大野党「共産党」が同19.19%で92議席、中道左派「公正ロシア」が同13.24%で64議席、極右「自由民主党」が同11.67%で56議席となり、いずれも伸長した。投票率は60.21%。

◎「プーチンなきロシアを」モスクワで大規模集会(2011年12月6日、読売新聞)
 モスクワ中心部で5日夜、4日に投開票された下院選での不正などに抗議する大規模集会が開かれ、5000~7000人が参加した。
 政権による反政府運動の弾圧が徹底した近年のロシアで、この規模のデモが開かれるのは珍しい。
 デモ参加者は、「中央選管はウソつきだ」「プーチンなきロシアを」などと書いたプラカードを掲げ、野党指導者らの演説に気勢を上げた。ブログやサイトなどには、投票箱にあらかじめ票を詰めたり、同一人物が複数の投票所を回って投票したりするなどの不正行為の動画が投稿され、市民の怒りが広がっている。
 政権幹部は「不正はあったが、規模は誇張されている」などと述べ、火消しに躍起になっている。インターファクス通信によると、内務省は「市民の安全確保」を目的にモスクワ市内に追加の治安部隊を配備した。

◎露下院選、与党が得票大幅減、長期政権に不満(2011年12月5日、読売新聞)
 4日に投票が行われたロシア下院選(定数450、任期5年)は即日開票された。
 中央選管の中間集計(開票率93.2%)によると、プーチン首相(59)が党首を務める政権与党「統一ロシア」が前回2007年の下院選から10ポイント以上も得票率を減らし、長期政権への有権者の不満を示す結果となった。最大野党の共産党が政権批判票の受け皿となり、躍進した。
 「統一」は前回、憲法改正が可能な定数の3分の2を上回る315議席を獲得していた。今回は辛うじて過半数を維持する見通しだが、来年3月の大統領選への出馬を表明しているプーチン氏には打撃となる。
 中間集計によると、前回64.3%だった「統一」の得票率は49.7%にとどまっている。共産党が19.1%、左派系の公正ロシアが13.1%、極右の自由民主党が11.6%で続いている。公正ロシアと自民党は与党寄りとされる。改革派政党「ヤブロコ」など3党は議席が配分される5%に届かない見通し。投票率は前回の63.8%とほぼ同じ60%前後になる見込みだ。
 タス通信は、改選後の議席について「統一」237、共産党94、公正ロシア61、自民党58と予想している。

◎しらけるロシア下院選、プーチン支配で政治離れ(2011年11月30日、読売新聞)
 12月4日に行われるロシア下院選は、国論を二分するような争点もないまま終盤を迎えた。
 選挙戦の最前線では、与党「統一ロシア」の支持率低下に加え、政治への関心自体の低下が顕著になっており、政権・与党は「とにかく投票所に行って」と呼びかける異例のキャンペーンを展開している。
 「どの党に入れてくれとは言わない。12月4日は投票所に行って、1票を投じてほしい」――。ロシア西部・カリーニングラード市の大学を訪れた統一ロシア所属のアレクサンドル・ヤロシュク市長は、100人ほどの学生・教員を前にカリーニングラード市の発展のためまず投票を、と呼びかけた。29日にはメドベージェフ大統領も現地入りした。
 カリーニングラード州では昨年1月、州政府の増税案反対に端を発した大規模デモが起き、1万2000人もの市民が「プーチン首相は辞任を」と訴える騒ぎに発展した。与党は下院選で同州を重点選挙区とし、徹底したどぶ板選挙を展開。連日15か所前後で住民集会を開いている。だが、市長の熱弁を聞いた学生ビクトリア・プチコワさん(20)は、「動員されたから来たけど、目新しい話はなかった。友達にも政治に興味のある人はいない」と素っ気なかった。
 研究機関「世論基金」の調査では有権者の60%が「政治に興味はない」と回答し、「興味あり」との差は27ポイントまで開いた。この政治離れは、プーチン首相が2000年に大統領に就任して以来、強権手法で「政情安定」を図った副作用といえる。法律や裁判、メディアを駆使して政敵をつぶした結果、ロシアでは与党に代わる実質的な選択肢がなくなり、国民は政治参加の意欲を失った。

◎「中ロがサイバー空間スパイ」、米、公文書で名指し批判(2011年11月6日、朝日新聞)
 米国家情報長官室は3日、サイバー空間での米国に対するスパイ活動の報告書を公表した。中国、ロシアの両政府が「米経済や技術の機密情報を今後も積極的に集め続けると判断している」と言及。公式文書での名指し批判は異例で、両政府の反発も呼びそうだ。
 報告書は、サイバー攻撃について「伝統的なスパイの手法よりすでに大きな脅威となっている」と指摘。中国を発信源とした米国のネットワークへの「猛攻撃」が企業や専門家から報告されているとし、「中国の関係者による経済スパイ活動は、世界で最も活発で執拗だ」と批判した。2010会計年度(09年10月~10年9月)に米経済スパイ法で裁かれた7事件のうち、6件が中国絡みだったという。
 また、ロシアについては「情報機関が米国の経済や技術の情報を狙って広範に情報収集活動をしている」と当局の関与に言及した。

◎ロシア政治は化け物じみてた、交代の大統領告白(2011年10月15日、読売新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は15日、モスクワで開いた支持者集会で、「私はしばしば『言葉だけで行動を伴わない』と批判されてきた」と述べた上で、ロシアの政治の実情が「思っていたより化け物じみていた」と告白した。
 大統領は急進改革が不適切であることも強調し、「わが国に必要なのは、段階的な変化だ」と述べた。
 政治の問題点として特に、下院議席の3分の2以上を握る与党「統一ロシア」の現状に警鐘を鳴らし、「草の根の運動や一般市民を取り込み、変革しなければならない」と主張。国家統治に市民社会の声を反映させる必要性を訴えた。
 大統領は先月の与党大会で、次期政権では首相に回るとともに12月の下院選で連邦名簿の筆頭候補となることを受諾した。特権階級集団と広くみなされる与党の支持率は長期低落が続いており、大統領発言は民意離れへの危機感を示した。

◎プーチン氏、大統領候補に、ロシア最大与党が正式発表(2011年10月15日、朝日新聞)
 ロシアのプーチン首相が党首を務める最大与党「統一ロシア」は14日、来年3月の次期大統領選にプーチン氏を推すことを正式に発表した。メドベージェフ大統領が首相に転じて「双頭体制」を保つ構想も改めて示した。政権の維持、強化を目指し、12月4日の下院選から始まる一連の選挙戦を本格スタートさせた。
 下院選に向けて統一ロシアが出した「ロシア国民への施政方針アピール」で、「我々のリーダーであり代表であるプーチン氏を大統領ポストに推す」と記した。また、「勝利した党が新しい政府をつくる。メドベージェフ氏が若くて機動的なチームを組織し、我々の生活をあらゆる面で現代化する作業を続けるために(首相として)ロシア政府を率いる」とも主張した。下院選名簿のトップはメドベージェフ氏を据えている。
 双頭体制の「たすき掛け」構想は9月24日、統一ロシアの党大会で打ち出した。メドベージェフ氏はその後、大統領ポストを譲る理由を「プーチン氏の方が支持率が高いから」と説明。「確執説」の払拭に努めており、14日もモスクワでのコンサートにそろって姿を見せて緊密さをアピールした。

◎露朝鉄道が試験運転、全面開通は来年に(2011年10月14日、読売新聞)
 2008年から行われていたロシア極東のハサンと北朝鮮の羅津(ラジン)を結ぶ鉄道(全長54キロ・メートル)改修の一期工事が完了し、試験運行が13日行われた。
 露朝それぞれの規格である広軌、標準軌の複合路線として開通したのは、ハサンから北朝鮮側の国境・豆満江(トゥマンガン)までの約32キロ・メートルで、残る20キロ・メートル余は来年半ばに完成の見込み。
 タス通信によると、北朝鮮側の国境、豆満江駅で行われた記念式典では、国有ロシア鉄道のワレリー・レシェトニコフ副社長が、露朝間の鉄路改修を「北東アジアとロシアをつなぐ新たな物流ルート構築」の第一歩だと語った。
 ロシアは、今年8月の露朝首脳会談以降、北朝鮮との関係強化を図っており、羅津港のコンテナ施設建設なども支援している。将来的には、朝鮮半島縦断鉄道とシベリア鉄道を直結させる構想だ。

◎ロシア当局、軍事スパイ容疑で中国人の男拘束(2011年10月7日、読売新聞)
 ロシア連邦保安局(FSB)は5日、対空防衛システム「S300」に関する軍事機密を入手しようとしたスパイ容疑で、中国人の男1人を拘束した、と発表した。ロシア通信が伝えた。
 男は中国の情報機関「国家安全部」の任務で公式代表団の通訳を装い、国家機密であるS300の技術や修理に関する文書を金銭と引き換えに手に入れようとした。昨年10月下旬から拘束されており、プーチン首相の訪中を11日に控えたこの時期に露当局が発表に踏み切った意図は不明だ。
 露独立新聞によると、ロシアはS300の改良型20基を中国に売却しており、中国側の狙いについても臆測を呼びそうだ。

◎「プーチン氏支持率、私より高い」露大統領(2011年10月1日、読売新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は9月30日夜に放送された国営テレビなどとのインタビューで、来春の大統領選に再選出馬せず、2頭体制を組むプーチン首相を候補者に指名した理由について「プーチン氏は現在、ロシアで最も権威ある政治家で支持率は私よりもいくらか高い」と説明した。候補者決定の舞台裏を大統領が明かすのは初めて。
 大統領は「かなり前から(次期の)政権構想はあった。しかし、有権者の選択が変われば、その変化も考慮しなければならなかった」と述べ、支持率によっては自ら出馬する可能性があったことも示唆した。最終判断の時期には触れなかった。
 大統領選でのプーチン氏勝利と、メドベージェフ氏の首相就任は確実視される。大統領はプーチン氏と2人だけで次期政権を事実上決定したとの見方について「誰に投票するか、誰に(大統領としての)権威があるか国民に決めてもらう」と述べ、民主選挙であることも強調した。12月の下院選を前に国民の政治離れを防ぐ狙いとみられる。

◎ロシア:メドベージェフ氏「最も権威あるのはプーチン氏」(2011年9月30日、毎日新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は29日、テレビインタビュー(30日夜放映)で、来年3月の次期大統領選にプーチン首相を推薦したことについて「現大統領はかなりの信頼と支持を得ているが、現時点で最も権威ある政治家はプーチン氏だ。支持率も(私より)いくらか高い」と述べた。メドベージェフ氏が再選出馬を見送った理由を明らかにするのは初めて。
 メドベージェフ氏はインタビューの中でプーチン氏と「ポスト交換」の合意があったことを確認した。最近まで自ら出馬する可能性に言及していたのは、プーチン氏の身に何か起きるなどの不測の事態に備えて「保険をかける」ためだったと主張、「だれも欺いていない」と弁明した。
 また、メドベージェフ氏は、自分が次期首相になれば「政府は抜本的に刷新されるだろう」と述べた。再選断念によってメドベージェフ氏のレームダック化がささやかれる中、大規模な内閣改造を示唆することで、自らの求心力を維持したい考えを示した。
 周辺からはプーチン氏に先んじて立候補すべきだと促す声も出ていたが、メドベージェフ氏は「2人は同じ政治勢力を代表している。例えば米国で同じ民主党のオバマ大統領がクリントン国務長官と張り合う局面を想像できるか」と述べ、プーチン氏に対抗する意思がなかった点を強調した。

◎欧州委、露ガスプロムを独禁法違反の疑いで調査(2011年9月28日、読売新聞)
 欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は、中東欧諸国への天然ガス供給で支配的な地位を占めているロシアの国営ガス事業体ガスプロムが、EU競争法(独占禁止法)に違反している疑いがあるとして調査を始めた。
 ガスプロムは27日の声明で、ドイツとチェコの子会社が抜き打ち調査を受けたことを認めた。
 欧州委は調査理由について「他企業によるガス供給網への進出阻害など排他的な行為に関与している疑いがある」としている。
 ガスプロムは調査に協力する意向を示しているが、欧州委による調査着手は、EUとロシアの関係に影響を与える可能性がある。

◎露大統領選、権力闘争に敗れたメドベージェフ氏、佐藤優(2011年9月25日、産経新聞)
 ロシアのプーチン首相の大統領選出馬が決まった背景には、メドベージェフ大統領の力不足、このままでは国家が崩壊するというプーチン首相と官僚、国会議員ら政治エリートの強い危機意識があった。メドベージェフ氏は再選への強い意欲を持っていたが、日本や中国をめぐるプーチン氏との戦略の違いから、大統領職を辞さなくてはならない“包囲網”を敷かれてしまっていた。
 プーチン氏は中国をアジア最大の脅威と見なし、それに対抗するため日本との関係を重視していた。しかしメドベージェフ氏が対日関係悪化を招き、日本というカードを使えない状況を生み出してしまっていた。
 メドベージェフ氏の最大の失敗は対北朝鮮外交だ。メドベージェフ氏は北朝鮮との関係改善で国際社会での地位向上を目指す戦略を打ち出したが、プーチン氏は北朝鮮が日本との間で拉致問題を抱えている事実を強く認識していた。さらに大統領は天然ガスを韓国、北朝鮮に送る方針を示したが、これはガスの対日輸出が細ることを意味する。今回、北朝鮮の金正日総書記はモスクワを訪問しなかったが、これはプーチン氏側が金総書記の公式訪問という形を取らせなかったためだ。
 またメドベージェフ氏はロシアのナショナリズムをあおるため北方領土を訪問し、領土交渉は完全にゼロの状態に陥った。プーチン氏は(平和条約締結後の歯舞、色丹両島の日本への引き渡しを定めた)「56年宣言」をロシアにとって「義務的なもの」と認識しており、この点でも2人の戦略は大きく異なる。
 ただ、プーチン氏が親日家だというわけではない。中国に対抗するために日本が大事だという、乾いた力の外交の考えを持っているということだ。
 プーチン氏が大統領となれば、日本との関係ではまず北方領土問題が動き始めるだろう。交渉は大変で、ロシアが四島をすぐに返すということは考えられないが、日本人の感情を逆なでするやり方はないだろう。また日本へのガス輸出でも、対中牽制(けんせい)という意味合いから日本に優先的に送ると考えられる。
 ただ、プーチン氏はタフ・ネゴシエーターだ。それに向き合うだけの外交的な基礎体力が日本側にあるだろうか。野田佳彦首相は外交に弱いという側面が否めず、ロシアに“してやられる”可能性は少なくない。

◎プーチン氏、大統領選出馬へ、復帰確実、メドべージェフ氏は首相に(2011年9月25日、産経新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は24日、プーチン首相(前大統領)が率いる最大与党「統一ロシア」の党大会で演説し、来年3月の大統領選にはプーチン氏が立候補すべきだと述べた。プーチン氏もこれを受諾して出馬を正式に表明した上で、メドベージェフ氏の首相就任を期待すると語った。最高実力者とされてきたプーチン氏が大統領に返り咲くことはほぼ確実だ。
 プーチン氏には最長で2期12年間、大統領を務める道が開かれることになる。同氏は2000~08年の大統領在任中に民主化を後退させたことを批判されており、統治長期化は国内外の懸念を呼びそうだ。
 党大会でプーチン氏は、12月4日に予定される下院選(定数450)の候補者名簿第1位にメドベージェフ氏を登載することを提案し、メドベージェフ氏もこれを受け入れた。プーチン氏は下院選後にメドベージェフ氏が首相に就くことを期待するとも述べ、「双頭政権」を組んできた両者が大統領と首相職を交代する可能性が濃厚となった。
 プーチン氏は2期務めた後の08年の大統領選で、当時のメドベージェフ第1副首相を後継指名し、自らは首相に退いた。これはロシア憲法が大統領職への連続3選を禁じているためであり、その後も実権を握っているのはプーチン氏であるとみられてきた。
 メドベージェフ氏はプーチン氏への大統領選出馬要請について「同志的関係ができた頃にこの選択肢を話し合っていた」と述べ、当初からプーチン氏の返り咲きを前提とした合意があったことを示唆した。
 メドベージェフ氏は大統領に就任して早々、自らが主導して次期大統領任期を4年から6年に延長する憲法改正を行っている。
 旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身のプーチン氏はエリツィン元大統領の後継指名を受けて2000年の大統領選に当選。大統領在任中は経済・社会に一定の安定をもたらしたとして国民の支持を得た一方、その強権統治で議会や司法、報道機関などが骨抜きにされたことで汚職などの社会問題は深刻化した。

◎ロシアのプーチン首相、大統領復帰へ、来年3月(2011年9月25日、読売新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領(46)は24日、モスクワで開かれた政権与党「統一ロシア」の党大会で演説し、来年3月の次期大統領選の候補として前大統領のプーチン首相(58)を推薦し、プーチン氏はこれを受け入れた。
 他の党には有力候補がおらず、次の選挙でプーチン氏が当選し、4年ぶりに大統領に復帰することが確実となった。メドベージェフ氏は退任後、首相に就任する意向を表明した。
 メドベージェフ氏は演説で「プーチン氏を次期大統領選候補として支持する」と述べた。プーチン首相も続いて演説し、「提案に感謝する」と語った。
 12月の下院選を控えた中で、次期大統領の候補を発表したのは、政策決定で大きな影響力を握るプーチン氏が、政治的な不確定要素を早期に排除する必要があると判断したためとみられる。プーチン氏は大統領への復帰について「かなり前、数年前にメドベージェフ氏と話し合って決めた」と明らかにした。

◎プーチン氏、大統領復帰へ、メドベージェフ氏は首相(2011年9月25日、朝日新聞)
 ロシアのプーチン首相(58)は24日、2012年3月の次期大統領選に立候補する考えを表明した。メドベージェフ大統領(46)は首相に就く意向だ。実権を握るプーチン氏に有力な対立候補は見あたらず、08年まで2期8年務めた大統領に返り咲くのは確実な情勢だ。
 プーチン首相が率いる政権与党「統一ロシア」の党大会で、両氏が表明した。
 12年は米国やフランスで大統領選があり、中国でも最高指導者が交代する。ロシアでは2人がたすきがけの形で入れ替わり、経済や国家を「現代化」する「双頭体制(タンデム)」を保ちつつ、プーチン氏が前面に出る。ロシアの大統領の任期は4年だが、次期から6年に延長されることが決まっている。

◎事故相次ぐロシア民間航空機、平均機齢は21年、老朽化、日本の2倍(2011年9月21日、産経新聞)
 ロシアのレビチン運輸相は20日、同国で民間機事故が相次いだ問題をめぐり下院で報告、同国民間航空会社の保有機材は、使用年数を示す機齢が平均21年だと明らかにした。ロシア主要メディアが伝えた。同国では事故のたびにソ連時代に造られた機材の老朽化が指摘されてきた。
 日本では日本航空グループが平均9.3年、全日空が同11.7年(両社の2010年度版安全報告書)。ロシアの民間機は日本より2倍程度古いことになる。
 運輸相によると、ロシアには1523の民間機があり、うち479機が外国製。国内ではソ連が崩壊した1990年代初頭以降、52機しか製造されていない。

◎北朝鮮経由パイプライン計画、韓国も工程表署名(2011年9月16日、読売新聞)
 ロシアの国営ガス企業体「ガスプロム」は15日、ミレル社長がモスクワの本社で韓国ガス公社の朱剛秀(チュガンス)社長と会談し、ロシアから北朝鮮経由で韓国に天然ガスを供給するパイプラインの建設に向け「ロードマップ(工程表)」に署名したと発表した。
 先月の露朝首脳会談で基本合意したパイプライン計画については、北朝鮮にエネルギー供給停止の可能性を与える形となるため韓国が難色を示すとの観測も出ていた。
 今後の交渉では、北朝鮮による供給保証の付与や、中断した場合の補償措置が焦点になりそうだ。
 ミレル社長は同日、北朝鮮の金煕栄(キムヒヨン)原油工業相とも会談し、パイプライン推進で合同作業委員会設置などをうたう覚書に署名した。

◎北朝鮮、ロシアと初の合同軍事演習、年内にも(2011年9月13日、朝日新聞)
 北朝鮮がロシアと初の合同軍事演習を行うことで合意し、年内にも実施する見通しになった。北朝鮮関係筋が明らかにした。北朝鮮軍が他国軍と合同演習を行うのは極めて異例。朝鮮半島有事に向けて結束する日米韓を牽制する狙いがありそうだ。
 両軍が行うのはパイロットが遭難した場合に備えた捜索救難訓練で、8月の首脳会談で合意した。年内にも極東地域の海上で、両国の海空軍兵士が参加して実施する見通しだ。
 北朝鮮は旧ソ連や中国と軍事協力関係にあったほか、かつてはアフリカなどに軍事顧問団を派遣していた。ただ、思想統制のために一般兵士レベルの交流を嫌う傾向があったほか、国際社会の制裁などで他国軍との交流は減り続ける傾向にあった。
 首脳会談では、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記がロシアのメドベージェフ大統領に対し、攻撃などを伴う本格的な軍事演習を提案した。だが、国連の制裁決議が、北朝鮮への小火器や軽火器を除く全武器と関連物資の輸出を禁じている状況もあり、ロシア側が難色。合同軍事演習としては初歩的な捜索救難訓練をすることで落ち着いたという。

◎露軍機接近10回、北方領土近海で対潜訓練(2011年9月13日、産経新聞)
 ロシア海・空軍が北海道周辺で挑発を繰り返している問題で、10日にロシア軍のIL38哨戒機が10回にわたり日本領空に接近し、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)による対処を迫られていたことが12日、分かった。9日に宗谷海峡を通過した24隻のロシア海軍艦艇は10日、北方領土の北にある海域で対潜水艦戦訓練を実施し、領空接近したIL38もこの訓練に参加したとみられる。
 緊急発進は領空侵犯に備える措置で、領空外側の防空識別圏への侵入があると空自戦闘機が緊急発進し、針路変更などを勧告する。8日にロシア空軍の長距離爆撃機TU95が日本を1周した際には、空自は北部・中部・西部の3航空方面隊と南西航空混成団の各戦闘機部隊が順次エリアごとに緊急発進した。
 これに対し10日は、朝から深夜にかけ北部航空方面隊の千歳(北海道)、三沢(青森)両基地のみの戦闘機が緊急発進した。2機のIL38が長時間、北海道周辺で滞空したためだ。
 2機は交互に防空識別圏への出入りを繰り返し、侵入の都度、空自は緊急発進した。1つの方面隊で10回の緊急発進は極めて異例だ。「日本領空をうかがう執拗な飛行は挑発の意図が明らかで、接触など不測事態を招きかねない」(防衛省幹部)と危険視される。
 ロシア軍は千島列島周辺とカムチャツカ半島東側の3カ所に実弾射撃を伴う訓練海域も設定。さらなる挑発も懸念されている。

◎北方領土開発に31億円、プーチン露首相が追加拠出に署名(2011年9月9日、産経新聞)
 ロシアのプーチン首相は9日までに、北方領土を含む千島列島(クリール諸島)のインフラを整備する「クリール諸島社会経済発展計画」に今年12億ルーブル(約31億円)を追加拠出する政令に署名した。8日に極東ウラジオストクで首相と会談したイワノフ副首相が語った。署名日は「数日前」という。
 ロシア連邦政府の発表によると、副首相は国後、択捉両島へのアクセスを改善するため両島で新空港を建設中であることや、色丹島でヘリコプター用の空港を建設していることを首相に報告。副首相は「快調なテンポで」北方領土での道路や学校、幼稚園などの整備が進んでいると語った。
 今年5月に複数の閣僚と国後、択捉の両島を訪問したイワノフ副首相は、2015年までに84億ルーブルの予算を追加拠出する必要があると連邦政府幹部会で報告していた。

◎ロシア、北方領土の整備に31億円追加拠出(2011年9月9日、読売新聞)
 ロシアのプーチン首相は8日、日本の北方領土に空港や港湾を整備するため、12億ルーブル(約31億円)を年内に追加拠出する指令書に署名した。
 インターファクス通信が首相の訪問先のウラジオストクから伝えた。
 首相は、ロシア本土から遠く離れた北方領土の問題を「交通手段の欠如だ」と指摘。追加予算は国後、択捉両島で建設中の空港と港湾の整備に充てるという。
 ロシアは昨年の大統領訪問以来、北方領土の実効支配強化を進めており、今年5月に訪問したイワノフ副首相は、2015年までに84億ルーブル(約220億円)を追加支出する方針を示していた。

◎ロシア、タジクの露軍駐留を49年延長へ(2011年9月4日、読売新聞)
 インターファクス通信によると、ロシアのメドベージェフ大統領とタジキスタンのラフモン大統領は2日、タジクの首都ドゥシャンベで会談し、同国でのロシア軍の駐留期限を49年間延長することで基本合意した。
 来春にも協定に署名する。
 ロシア軍はタジクに国外最大の地上部隊約6000人を駐留させている。現行協定では2013年が期限だった。米軍がタジクの隣国アフガニスタンから撤退する14年を控え、ロシアは中央アジアでの影響力を維持、拡大する拠点を確保したと言える。

◎ロシア各地で「大戦終了の日」、今年は地味に(2011年9月4日、読売新聞)
 第2次世界大戦で日本が降伏文書に調印した9月2日を「大戦終了の日」として祝う行事が2、3の両日、極東地域を中心とするロシア各地で行われた。
 ナショナリズムの高まりを受けて、記念日制定初年度の昨年は当時の上院議長らが参加する式典などが大々的に行われたが、今年は地方の催しにとどまった。
 サハリン州では両日、献花式やパレードが各地で行われ、当局者は「対日戦勝利を祝う」と趣旨を説明した。ウラジオストクやカムチャツカ州でも同様の記念行事が行われた。ただ、連邦政府幹部らの参加は確認されておらず、全国メディアの扱いも目立たないものとなっている。

◎金総書記、9年ぶり訪ロの情報、東シベリアで首脳会談か(2011年8月20日、朝日新聞)
 韓国政府当局者は20日、北朝鮮を出発した特別列車がロシア極東のハサンに到着したことを確認した、と述べた。列車には金正日(キム・ジョンイル)総書記が乗っているとみられている。金総書記のロシア訪問は2002年8月にプーチン大統領(当時)と会談して以来、9年ぶり。
 ロシアの情報筋によると東シベリアのバイカル湖に近いウランウデで、メドベージェフ大統領かプーチン首相と会談する見通し。首脳会談が実現すれば、両国間の経済協力や北朝鮮へのエネルギー、食糧支援などを話し合うとみられる。北朝鮮の核問題をめぐる6者協議の行方にも影響を与えそうだ。
 金総書記の訪ロについて政府系のロシア紙イズベスチヤ(電子版)は19日、大統領府筋の話として、メドベージェフ大統領と来週、ウランウデの軍事施設の敷地内で会談すると報じた。

◎金正日総書記の特別列車?ロシア側国境に到着(2011年8月20日、読売新聞)
 韓国政府関係者は20日、ロシア訪問情報が流れていた北朝鮮の金正日総書記を乗せたと見られる特別列車が「午前10時5分(日本時間同)、朝露国境のロシア側にあるハサン駅に到着した」と本紙に語った。
 金総書記の訪露は2002年8月以来9年ぶり。
 聯合ニュースは、「ハサンで沿海州政府関係者による歓迎行事が行われた」との韓国政府筋の話を報じた。さらに別の消息筋の話として、金総書記がウラジオストク近くのダムなどを視察し、ロシア滞在は1週間程度になるとも伝えた。
 韓国政府筋の情報などを総合すると、金総書記は、この後、特別列車で東シベリア・ブリヤート共和国の首都ウランウデに向かい、同地で23日か24日に、メドベージェフ大統領かプーチン首相と首脳会談を行うと見られる。
 会談では、経済協力や食糧支援、北朝鮮の核問題を巡る6か国協議再開などが話し合われる見通しだ。

◎ゴルバチョフ氏、プーチン氏の返り咲きに懸念(2011年8月18日、読売新聞)
 ゴルバチョフ元ソ連大統領(80)は17日、ソ連保守派クーデターから20年となるのを機にモスクワで記者会見し、「最高指導者は交代しなければならない。(政治家には)権力の座を去らねばならない時がある」と述べた。
 プーチン首相が来年春の大統領選で返り咲き、通算3期目の任期を目指すとの観測が高まっていることに懸念を示したものだ。
 ゴルバチョフ氏は、クーデター撃退では「人々の役割が重要だった」と述べ、「首謀者らは(民主主義でなく)権威主義こそが効率的だと示そうとしたが間違っていた」などと、民主主義の意義を強調。「今の政治は全てが後退している」と現状を批判した。
 ソ連最高指導者として犯した誤りについて、ゴルバチョフ氏は「民主化しなければならなかったのに(祖国を)崩壊させてしまったことだ」と述べた。

◎米露「リセット」に影、グルジア紛争から3年、2地域占領に批判強く(2011年8月7日、産経新聞)
 ロシアと旧ソ連の親欧米国、グルジアが交戦した「グルジア紛争」の勃発から8日で丸3年となる。双方は自らの行動を正当化する主張を崩しておらず、両国関係は膠着状態が続いている。紛争後のロシアがグルジアの親露独立派2地域を事実上の支配下に入れている状況には米国も非難を強めており、グルジア問題が「リセット」と称される米露関係の改善にも影を落とす。
 ロシアのメドべージェフ大統領は露メディアのインタビューで「紛争の全責任はグルジアのサーカシビリ大統領にある」とし、サーカシビリ氏との対話は拒否する考えを強調。ロシアが紛争後、グルジアの南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立を一方的に承認したことも、両地域を防衛する上で「完全に正しかった」と述べた。
 ロシアはこの紛争で欧州連合(EU)との和平合意に署名し、部隊を戦闘前の位置まで撤退させることを約束した。しかし、その後は「独立承認」を盾に両地域に軍事基地を構え、EU停戦監視団の立ち入りも認めていない。
 米国上院は先月末、アブハジアと南オセチアを「ロシアに占領された地域」とし、ロシアが「グルジアの領土保全」を尊重して和平合意を履行するよう求める決議を採択した。メドべージェフ大統領は和平合意と2地域の独立承認を別問題とし、米上院決議には「根拠がない」と批判する。
 ロシア以外で両地域の独立を承認しているのはニカラグア、ベネズエラ、ナウルの3カ国にとどまる。
 両国関係の「リセット」をうたう米露は2月、新戦略兵器削減条約(新START)の発効にこぎ着けたものの、米ミサイル防衛(MD)計画をめぐっては対立が和らいでいない。
 ロシア内務省幹部らの大規模不正を告発したマグニツキー弁護士が2009年に獄死した事件をめぐり、米国が先月、事件に関係する役人ら約60人の入国拒否を決めたことについてもロシアは強く反発、対抗措置の準備に入った。
 グルジア紛争から3年の節目は、米露間のこうした暗雲をさらに濃くしている形だ。露科学アカデミーのカフカス地域専門家、アレシェフ氏は最近の公開討論会で「グルジア紛争をめぐって米露には譲れない一線があり、『リセット』には明確な限界があろう」との考えを語った。
 グルジアではサーカシビリ大統領が開戦責任を回避して政権を保持している。グルジアは、米国が総論で支持するロシアの世界貿易機関(WTO)加盟に反対しており、これも米露関係を複雑化させる要因になっている。

・グルジア紛争
 2008年8月8日未明、グルジアが親ロシア独立派地域の南オセチア自治州を再統一しようと攻撃を開始し、ロシアが「自国民保護」を掲げて報復。死者は約850人、難民は3万5千人にのぼった。欧州連合(EU)の調査委員会は09年、紛争がグルジア側の攻撃で始まったと断定する一方、ロシアが南オセチア住民にパスポート(市民権)を与えるなど武力衝突の素地を作ったとする報告書をまとめた。

◎続く試行錯誤、ロシアのネット事情(2011年7月3日、産経新聞)
 ロシア語の読み書きに使う、キリル文字によるインターネット・ドメイン名の普及を目指すプロジェクト「.РФ」が、ロシアで進んでいる。「РФ」は「ロシア連邦」の略で、昨年11月には一般の人々のドメイン登録も解禁となった。
 プロジェクトのゴルブノフ国際部長によると、ドメイン登録件数はすでに82万件に達し、年内に100万件を超える可能性もある。が、「コンテンツは魅力に欠け、訪問者が増える将来を当て込んだ形だけの登録に止まっている」(コンピューター関連企業幹部)との見方が多い。
 それも当然だろう。ドメイン名がどんな言語であろうと、ロシアで人気の「яндех」(ヤンデックス)など国内外の検索エンジンを使えば、言葉の壁を越えるのは容易だ。英語が公用語と化したネット空間で、ドメイン名をキリル文字にすることで喜ぶのは、ロシア語を“世界の標準語”の地位に押し上げたい政府ぐらいではないか。
 とはいえ、ロシア語サイトは百花繚乱の様相を呈す活況ぶりだ。昨年後半には、ブロガーが「(国営企業の)トランスネフチが、石油パイプライン建設にからんで40億ドル以上の損害を国に与えた」と“告発”、政権が調査を命じるなど市民権も獲得しつつある。
 最先端の情報技術(IT)がお気に入りのメドベージェフ大統領も、ブログや短文投稿サイト「ツイッター」で自らの考えを発信している。4月には自らもブログを開設している人気サイト「ライブジャーナル」がハッカー攻撃でダウン、「違法行為だ」と警察に捜査を求める騒ぎに発展した。
 すかさず、政治に関する小話を集めたロシア語サイトには、「プーチン首相は(多国籍軍による)リビア攻撃を批判する。メドベージェフ大統領は、ライブジャーナル(への攻撃)に文句をいう」と、大統領を揶揄するジョークが掲載された。
 6月下旬には、大統領の名をかたった“偽のつぶやき”がツイッターに投稿されたことも明らかになり、大統領府が「本人のアカウントではない」と否定に走る騒ぎも起きた。
 双頭体制を共に率いるプーチン首相はネット空間での露出を控え、全国各地に行き渡る3大テレビ局に委ねている観がある。“IT大統領”を打ち出すのも楽ではない。

◎ロシア、北朝鮮にガス供給検討か、核開発断念条件に(2011年7月22日、産経新聞)
 21日の国営ロシア通信は、22日付のロシア紙モスコフスキエ・ノーボスチの報道として、ロシアが北朝鮮に対し核開発断念を条件に天然ガス供給の可能性を検討していると伝えた。
 同紙によると、ロシア政府系天然ガス独占企業ガスプロムが既に政府から計画の準備を指示されている。来年9月に極東ウラジオストクでアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を開催するロシアにとって、国際的懸念を招いている北朝鮮核問題の政治的解決への貢献をアピールできるとの判断から、ロシア外務省と大統領府が計画を進めているという。
 同紙は消息筋の話として、今年6月28日に北朝鮮の金英才駐ロシア大使がモスクワのガスプロム本社を訪れた際、サハリンからハバロフスク、ウラジオストクをつなぐ天然ガスパイプラインに北朝鮮向け支線をつくる構想の協議のためミレル社長の平壌訪問を要請したと伝えている。

◎北朝鮮大使館に違法カジノ、露外務省が閉鎖要求と報道(2011年7月21日、産経新聞)
 20日付のロシア紙イズベスチヤは、モスクワの北朝鮮大使館敷地内で違法カジノが運営されていたことが発覚し、ロシア外務省が閉鎖を要求したと伝えた。
 同紙によると、北朝鮮大使館は昨年9月に敷地内の約2千平方メートルの建物を民間企業に貸し出した。レストラン経営が名目だったが、実際には同12月からカジノが運営され、ルーレットやポーカー、スロットマシンなどによる賭博が行われていた。大使館が運営に関与していたかどうかは不明。
 ロシア外務省は18日に北朝鮮大使を本省に呼び、カジノの即時閉鎖を求める文書を手渡した。同紙によると、大使は事実関係を否定しなかったという。
 違法カジノはモスクワのベラルーシ大使館に付属するホテルでも見つかり、ロシア側が抗議。ロシアでは2009年7月に特定地域を除いてカジノが禁止されたが、違法カジノが存続しているといわれる。

◎弁護士が獄中死、ロシア大統領が再捜査を命令(2011年7月6日、読売新聞)
 ロシア内務省高官らによる巨額横領を告発して拘束された弁護士が2009年に獄中死する事件があり、露大統領直属の人権評議会は5日、獄中死を巡る捜査に違法性があったと認定する報告書をメドベージェフ大統領に提出した。
 大統領は再捜査を命じた。
 報告書は、横領への関与が疑われた人物らが獄中死の捜査に加わり、勾留手続きも法的根拠に乏しいと断じた。病気を患っていた弁護士に勾留施設側が適切な処置を施さなかったことが死を招いたとも指摘した。
 露捜査当局は4日、施設医師を近く刑事訴追する方針を示していた。露政府が人権問題で当局者の責任を認めるのは極めて異例。大統領が唱える司法改革の一歩として注目される。
 弁護士はセルゲイ・マグニツキー氏(当時37歳)。同氏は08年、自身が顧問を務める投資会社を内務省高官らが悪用し、国庫から約54億ルーブル(約157億円)を横領したと暴露。直後に拘束され、09年11月にモスクワの勾留施設で死亡した。

◎露、ベラルーシ向け送電再開、滞納額支払いで(2011年7月4日、読売新聞)
 ロシアの国営電力企業インターラオは2日、代金未払いで停止していたベラルーシ向けの電力供給を再開した。
 ベラルーシが未納額を支払ったことを受け、メドベージェフ露大統領が再開を指示した。
 同社は6月29日、12億ルーブル(約35億円)の滞納を理由にベラルーシへの送電を全面停止していた。

◎ロシアも新規空母建造へ、太平洋配備(2011年6月30日、読売新聞)
 タス通信によると、ロシアの国営造船会社USCのロマン・トロツェンコ社長は29日、2016年に新型航空母艦の設計・建造に着手することを明らかにした。
 現在、露海軍が運用している空母は、1985年建造の「アドミラル・クズネツォフ」1隻のみ。軍事専門家によると、ロシアは原子力空母を2隻以上つくり、1隻は太平洋艦隊に配備することを検討している。中国の空母建造計画とともに、米軍の海軍力に挑戦する動きとなりそうだ。

◎露国営電力企業、ベラルーシ向け電力供給停止(2011年6月30日、読売新聞)
 ロシアの国営電力企業インターラオは29日、ベラルーシ向けの電力供給を停止した。
 12億ルーブル(約35億円)の代金未払いが理由で、ベラルーシの経済危機がさらに深刻化する恐れがある。ベラルーシ政府は29日、近く代金を支払う方針を示した。

◎ロシア美人スパイ「あえて拘束された」、法廷で証言(2011年6月28日、朝日新聞)
 昨年夏の米ロのスパイ交換に絡む裁判で、「ロシアの美人スパイ」として話題を集めたアンナ・チャップマンさんが27日、モスクワの軍事裁判所に出廷し、自らが米司法当局に拘束されるまでの詳細を語った。
 裁判では、米中央情報局(CIA)にロシアのスパイ網の情報を漏らしたとして、米国に逃亡中の対外情報局のポテエフ元大佐が国家反逆罪などに問われた。その公判の中でチャップマンさんは米ロのスパイ合戦の一端を明かした。
 インタファクス通信によると、ロマンという見知らぬ男が(モスクワの)本部からの依頼と称し、「イリヤ・ファブリチヌィ」という秘密コードも使って接触してきた。パスポートを別のスパイに渡せとのことだった。だがチャップマンさんは変だと感じ、ルールに反して本部に電話確認したところ、そんな指示はしていないとのことだった。その後間もなく、車やヘリも使った尾行を感じた。本部の指令でパスポートを警察に届け、あえて拘束された。
 裁判官は、彼女の拘束でロシアのスパイ網を掌握しようという米国側の計画は阻止されたと評価した。元大佐にはこの日、禁錮25年の判決が言い渡された。

◎ロシア:「人民自由党」の政党登録申請却下、政権批判で?(2011年6月23日、毎日新聞)
 ロシア法務省は22日、民主派連合の「人民自由党」の政党登録申請を却下した。不正な党員登録があった点を理由に挙げているが、同党が12月の下院選や来年3月の大統領選への参加を目指して政権批判の立場を取っていたことが原因のようだ。
 人民自由党はカシヤノフ元首相やネムツォフ元第1副首相ら反政権派有力者が参加し昨年12月に結成、自由主義経済の促進などを訴えている。政府が下院選で官製野党の「正義」を後押しすることから、支持層が重複する人民自由党を排除したとみられる。

◎ロシア、反政府野党の登録認めず(2011年6月23日、産経新聞)
 ロシア法務省は22日、カシヤノフ元首相、ネムツォフ元第1副首相らが昨年設立した反政府野党「国民自由党」の政党登録を認めない決定をした。これにより同党は今年12月の下院選から排除された。
 ロイター通信によると、クリントン米国務長官は決定に「失望した」との声明を発表。インタファクス通信によると、欧州連合(EU)のアシュトン外交安全保障上級代表は「有権者の選択を制限し多党制の障害となるものだ」との声明を出し、強い懸念を表明した。
 国民自由党は「専制と汚職のないロシア」を掲げ、プーチン首相の政治手法を厳しく批判している。カシヤノフ氏は「わが党を選挙に参加させないためのプーチンの決定であることは明らかだ」と非難した。

◎中露、ガス供給対立解消せず(2011年6月17日、産経新聞)
 ロシアのプーチン首相と中国の胡錦濤国家主席は16日、モスクワで会談し、ロシアから中国への天然ガス供給計画について協議。ロシア主要メディアによると、首相は「われわれが合意できれば、両国の経済関係発展にさらなる可能性を生みだす」と述べ、最終合意に至っていないことを示唆、供給計画合意による両国関係強化を胡主席に促した。
 ガス供給計画について、両国は胡主席の訪露中の合意を目指していたが、価格をめぐる対立が依然解消していないもようだ。
 両首脳はロシア政府系天然ガス独占企業ガスプロムの本社で会談。会談に同席した同社のミレル社長は「契約が調印されれば、パイプラインの建設を今年半ばに開始できる」とし、2015年末に供給開始が可能との考えを示した。

◎主犯格の容疑者を拘束、政権批判のロシア紙記者殺害(2011年6月1日、朝日新聞)
 ロシアのプーチン前政権への批判で知られたリベラル紙ノーバヤ・ガゼータのアンナ・ポリトコフスカヤ記者が2006年に殺害された事件で、ロシア捜査委員会は31日、指名手配されていた主犯格とされる容疑者の男を拘束したことを明らかにした。インタファクス通信によると、男は南部・チェチェン共和国で拘束され、モスクワに移送される。
 同事件では、銃撃を手配したという元内務省職員と見張り役とされる男ら計3人が起訴され、09年に無罪判決が出た。その後、最高裁が無罪判決を取り消し、再捜査を要請していた。記者の遺族は「殺人を依頼した首謀者が特定されない限り事件は解明されない」と話している。

◎元石油王事件でロシア側に支払い命令、欧州人権裁(2011年5月31日、産経新聞)
 ロシアのプーチン首相の政敵とされ、横領罪などで拘置中の石油大手ユコスのホドルコフスキー元社長をめぐる事件で、仏ストラスブールの欧州人権裁判所は31日、ロシア政府に対し、慰謝料など総額約2万5千ユーロ(約290万円)を元社長に支払うよう命じる判決を下した。インタファクス通信によると、長期にわたる拘束などが人権侵害に当たると認定、ロシア政府関係者は控訴する意向を示唆した。同氏は03年に逮捕されて禁錮8年の実刑判決を受けた後、昨年12月に再訴追され、刑期は2016年まで延長された。

◎露大統領、出馬に意欲、でも首相と協議してから(2011年5月19日、読売新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は18日、モスクワ郊外のスコルコボで内外の報道関係者を集めて記者会見を開き、2012年に予定される大統領選について「出馬するなら、これまで私を推してくれた勢力を基盤にしたい」と述べ、間接的表現ながら立候補の意欲を示した。候補者については「近く発表される」と述べるにとどまり、出馬するかどうかは明言を避けた。
 大統領は候補者決定について「政治ショーではない。明確で賢明なシナリオに従い行われなければならない」と述べ、事実上の最高実力者であるプーチン首相と協議して決める道筋を示した。
 対立が指摘される首相との関係について「重要な戦略に関する立場は非常に近い」と述べ、「2頭体制」の不和説を否定した。

◎ロシア、国後・択捉に軍事拠点、大統領が承認へ(2011年5月12日、読売新聞)
 ロシア国防省は11日、北方領土に駐留する部隊の増強計画案を近く国家指導部に提出する方針を明らかにした。
 大統領が承認する見通しだ。国後、択捉の両島に新たに2か所の軍事拠点を構築し、移動式対艦ミサイルシステムなど最新鋭兵器を配備する内容で、ロシアは北方領土の軍事要塞化に踏み出すことになる。
 インターファクス通信によると、ロシア軍のニコライ・マカロフ参謀総長は、今年後半にも軍備増強に着手するとし、「2014年か15年までに駐留部隊は近代兵器を装備した全く新たなものに変貌し、戦闘能力は数倍向上する」と言明した。
 北方領土には、移動式対艦ミサイルシステム「バスチオン」や、「上陸部隊」を想定した防空ミサイルシステム、対戦車攻撃ヘリが配備されるという。一方、約3500人とされる駐留兵士は増員しない方針だ。

◎露で軍・治安機関パレード、軍事大国の威容示す(2011年5月10日、読売新聞)
 第2次世界大戦の対独戦勝記念日にあたる9日、モスクワの「赤の広場」でロシア軍や治安機関による軍事パレードが行われ、約2万人が参加した。メドベージェフ大統領とプーチン首相がそろって観閲した。
 大統領は「勝利の結果として手に入れた平和を守ることがロシアの責務」と演説した。主力戦車T90や最新鋭の防空システム「S400」、大陸間弾道弾「トーポリM」も登場した。
 戦勝66年の今年は、節目だった前年のほぼ倍の兵士らが参加し、軍事大国の威容を示す狙いがうかがわれた。

◎日露共同建設のLNGプラント、生産能力倍増へ(2011年4月26日、読売新聞)
 日本とロシアが、ウラジオストクで共同建設する液化天然ガス(LNG)プラントの生産能力について、当初予定の年産500万トンから1000万トンに倍増することがわかった。
 東京電力の福島第一原子力発電所の事故を受け、日本側は、電力不足を補うため、火力発電所やガスタービンで使うLNGの需要が高まっており、エネルギーの安定確保を図る。
 日露は25日、モスクワで事業化調査を行う詳細合意書を締結する。2013年にも建設に着手し、17年に稼働する計画だ。日露は1月に年500万トンの生産で合意していたが、生産能力を倍増することで、総事業費は当初予定の数千億円から1兆円規模に膨らむ。伊藤忠商事と丸紅などの日本勢と、ロシア国営ガス会社ガスプロムがすでに事業化調査会社を設立しており、日本向けには年500万トン以上供給できる見通し。

◎ロシアの人気サイトにハッカー攻撃、露大統領のブログも中断(2011年4月7日、産経新聞)
 タス通信などによると、ロシアで人気のインターネットサイト「ライブジャーナル」が6日、ハッカー攻撃を受け、一時アクセスできなくなった。同サイトに開設されているメドベージェフ大統領のブログも1時間近くにわたってダウン。同サイトへの攻撃は先月末から連続しており、「サイト上での自由な言論を妨害する試みでは」と指摘する声も出ている。

◎「大統領と不一致なし」露のプーチン首相が十字軍発言で釈明(2011年3月23日、産経新聞)
 多国籍軍のリビア攻撃をロシアのプーチン首相が「十字軍」と非難した一方、メドベージェフ大統領は攻撃に一定の理解を示し、首相発言を批判するなど2人の見解が衝突したことについて、首相は22日、訪問先のスロベニアでの記者会見で「外交を指揮するのは大統領。不一致は起こらない」と釈明した。インタファクス通信が報じた。
 「双頭体制」下で大統領が首相を公然と批判したのは異例で、特に「十字軍」と首相が述べたことは「容認できない」と強調していた。メディアが、来年の大統領選に向け両者の本格的な対立が始まった可能性があるとみて大きく報道、首相側は火消しを図った形だ。

◎露の大統領×首相、リビアめぐり真っ向対立(2011年3月23日、読売新聞)
 リビアに対する英米仏など多国籍軍による空爆の根拠となった国連安保理決議を巡って、ロシアのメドベージェフ大統領とプーチン首相の見解が対立し、「二頭体制」が発足した2008年以来、「最も激しいやりとり」と注目を集めている。
 首相は21日、安保理決議を「不完全で欠点がある」「(決議は)中世の十字軍を想起させる」と批判した。一方、大統領は同日、「決議はリビア情勢を反映しており間違いとは思わない」と述べ、「十字軍」との表現についても「文明の衝突につながる表現は容認できない」と批判した。重要な外交政策を巡り2人が公然と争うのは異例。地元メディアでは来年の大統領選をにらんだ動きなのか、単なる見解の相違なのか臆測が飛び交っている。

◎ロシア武器輸出7900億円に、中印など3国で6割以上(2011年3月9日、産経新聞)
 ロシア製武器を独占的に輸出する国営企業ロスオボロンエクスポルトのイサイキン社長は9日、記者会見し、今年の武器輸出額は最大で95億ドル(約7900億円)に達するとの計画を明らかにした。昨年の輸出額は86億ドルだった。
 同社の輸出は2000年以降、年々伸びており、取引相手は70カ国以上。輸出額の43%がスホイ型戦闘機、ヘリコプターなど航空関係、次いで艦船関係が23%。昨年、一昨年ともインド、アルジェリア、中国が三大輸出国で全体の60%以上を占めた。中国の割合はここ数年「5~10%」だと述べた。

◎モスクワ空港テロ:実行犯を特定、遺体のDNA鑑定で確認(2011年2月10日、毎日新聞)
 モスクワ近郊のドモジェドボ国際空港で36人が死亡した自爆テロ事件で、ロシア南部・北カフカス地方にあるイングーシ共和国のエフクロフ首長は9日、実行犯が同共和国出身のマゴメド・エブロエフ容疑者(20)であることを明らかにした。現場に残された遺体の一部がDNA鑑定で同容疑者と確認されたという。
 空港テロでは、イングーシに住む同容疑者の姉(22)と弟(16)、知人の男(23)の3人がテロ関与の疑いで逮捕され、エフクロフ首長はこのうち姉と弟について「容疑者が何をしているか知っていながら、両親に伝えなかった」と述べた。
 エブロエフ容疑者は昨年8月ごろ、出稼ぎに行くといってイングーシを出たまま行方不明になっていた。捜査当局はこれまで自爆犯は北カフカス出身の20歳の男とだけ発表していた。
 自爆テロをめぐっては、北カフカスの武装組織指導者、ウマロフ司令官が犯行声明を出しており、実行犯グループとの接点の解明が今後の焦点となりそうだ。

◎カイロの南西、反政府デモ隊と警察が衝突、3人死亡(2011年2月10日、朝日新聞)
 エジプトの首都カイロ南西約500キロの砂漠地帯にあるオアシスの町ハルガで8、9両日、反政権デモと警察が衝突し、警官が実弾を発砲。少なくとも3人が死亡し、100人がけがをした。AFP通信が伝えた。
 発砲に怒った群衆が、警察署2カ所や裁判所、与党・国民民主党事務所などに放火したという。反政権の動きはカイロなどの都市部だけでなく、地方にも広がっている。

◎ロシア時間「常夏」に、3月末、冬時間を廃止へ(2011年2月9日、朝日新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は8日、3月末の夏時間への移行を最後に夏と冬の時間移行制を廃止すると表明した。「生体リズムに反している」というのが理由。ソ連時代から30年続いた「伝統」が幕を閉じる。
 メドベージェフ氏は、季節によって時間が変わることが体のストレスとなり、病気の原因になっているとし、廃止は有益だと強調した。ドボルコビッチ大統領補佐官も時間移行による省エネ効果はほとんどないとの見解を示した。
 メドベージェフ氏は2009年11月の年次教書演説で、「効率的な国家運営」のために国内に11あった標準時を減らすよう提案。夏時間と冬時間の廃止の検討も投げかけていた。標準時は昨年3月、九つに削減された。夏季は午後遅くまで明るい地域が多いロシアでは、ソ連時代の1981年に夏と冬の時間移行制を導入した。

◎モスクワ空港テロで犯行声明、北カフカスの武装指導者(2011年2月9日、朝日新聞)
 ロシア南部・北カフカスのイスラム系武装勢力と関係の深いインターネットサイト「カフカス・センター」が7日夜、米国から国際テロリストに指定されているドク・ウマロフ指導者の新たなビデオ声明を掲載した。その中でウマロフ指導者は、36人が犠牲になったモスクワ郊外のドモジェドボ国際空港での1月24日の爆弾テロ事件は「私の命令で実行された」と明言した。
 声明の信憑性は不明だが、事件当日に撮影したとしている。テロは、カフカスだけでなく全世界でのイスラム教徒への迫害や殺害に対する報復だと主張。「モスクワでのテロを非難する勢力は、パキスタンやアフガニスタン、イラク、パレスチナなどでのイスラム教徒の犠牲に沈黙している」などとし、米ロのほかイスラエルや中国も批判した。
 また、「カフカス解放のためプーチン体制への作戦を続ける」とも述べた。
 ウマロフ指導者のビデオ声明は4日にも掲載され、「今年を血と涙の年にする」などと表明。隣には、空港テロ事件で自爆した男と酷似した青年が映っていた。
 ウマロフ指導者は2007年に「カフカス首長国」の樹立を宣言。かつてはチェチェン独立派戦士だったが、チェチェン共和国に親ロシア政権ができて以降は隣のダゲスタン共和国などに逃れている。

◎モスクワ空港テロ、北カフカス武装勢力が「犯行声明」(2011年2月6日、朝日新聞)
 ロシア南部・北カフカスのイスラム系武装勢力と関係の深いインターネットサイト「カフカスセンター」が、米国から国際テロリスト指定されているドク・ウマロフ指導者の「今年を血と涙の年にする」などとのビデオ声明を掲載した。36人が犠牲となったモスクワ郊外・ドモジェドボ国際空港での1月24日の爆弾テロ事件に対し、事実上の犯行を認める声明と見られている。
 同指導者は、昨年3月に40人が死亡したモスクワ地下鉄自爆テロ事件でも犯行声明を出した。今回のビデオ声明は4日夜にアップされたが、撮影時期は明示していない。同指導者の隣に映っている若者が、空港テロ事件で自爆した男と酷似していることから、現地メディアは犯行前に撮影されたものとみている。
 声明の中で同指導者は、テロの目的として「プーチン首相やその一味がカフカス人を攻撃し、ムスリム同胞に憎悪を向けていることへの対抗だ」と主張。「特殊作戦(テロ)は毎週、毎月起こる。自爆を準備した戦闘員は50~60人いる」とも述べた。
 同指導者は2007年に自称「カフカス首長国」の樹立を宣言した。かつてチェチェン武装勢力に所属。チェチェン共和国に親ロシア政権ができて以降は隣のダゲスタン共和国などに逃れている。

◎国後島:新岸壁が完成、ロシア、実効支配強化へ(2011年2月6日、毎日新聞)
 ロシアが北方領土・国後島の古釜布(ロシア名ユジノクリリスク)港で建設していた新たな岸壁が完成し、北方領土とサハリンを結ぶ貨客船「イーゴリ・ファルフトジノフ」(排水量4575トン)が5日、試験入港で初めて接岸した。事務手続きが整い次第、運用開始される予定。
 新たな岸壁の完成によって国後島への人や物資の輸送能力が高まることで、ロシアの北方領土でのインフラ整備が進み、実効支配が強まる可能性がある。
 建設会社によると、新たな岸壁は長さ135メートル、深さ8メートル。タス通信によると、喫水6.5メートルまでの船が古釜布港に入港可能となる。これまで未整備だった同港では、イーゴリ・ファルフトジノフなど比較的大きな船は、港の沖合に停泊し、乗客や物資は、はしけ船が港まで運んでいた。
 新たな岸壁は、ロシア政府の北方領土を含む千島列島の社会経済発展計画の一環として9億ルーブル(約25億円)を投じ昨年12月に完成。昨年11月に国後島を訪問したメドベージェフ大統領をはじめ、その後、同島を訪れたロシア要人もこの岸壁を視察していた。

◎ロシア・北カフカスでまたテロか、乗用車爆発、4人死亡(2011年1月27日、朝日新聞)
 ロシア南部・北カフカス連邦管区にあるダゲスタン共和国のハサブユルトで26日夜、カフェのそばに止まっていた乗用車が爆発した。インタファクス通信によると、カフェの従業員や客ら計4人が死亡、6人が負傷した。治安当局がテロの可能性があると見て調べている。ハサブユルトでは14日にも、別のカフェで同様の爆発事件が起き、死傷者が出ている。
 24日にモスクワ郊外のドモジェドボ国際空港で発生した無差別爆弾テロ事件では北カフカス出身者の関与が指摘されるなど、北カフカスの不安定な情勢が続いている。

◎ロシア大統領、警察の交通部門責任者を解任、空港テロ(2011年1月27日、朝日新聞)
 モスクワ南部のドモジェドボ空港で24日に起きた爆破テロ事件で、ロシアのメドベージェフ大統領は26日、モスクワを含む連邦中央管区の警察交通部門責任者を解任した。また政府に対し、空港の保安システム強化に関する提案を2週間以内に提出するよう指示するなど、安全への信頼回復を急いでいる。
 メドベージェフ氏は同日、交通の安全に関する会議を開催。警察による交通機関の警備態勢が「受動的だ」と指摘し、「働かない者は罰せられる」などと強い言葉で現状を批判した。ヌルガリエフ内相は、ドモジェドボ空港の警備責任者3人を更迭したことを報告した。
 また緊急事態省は26日、爆破テロによる死者35人のうち実行犯以外の34人の身元を確認したと発表した。

◎空港の警備部門の捜査開始、ロシア、爆発テロ(2011年1月26日、朝日新聞)
 モスクワ南部のドモジェドボ空港で起きた爆破テロ事件で、ロシア捜査委員会は25日、同空港内での安全確保義務が守られていなかったとして、警察など警備担当部門に対し、捜査を開始したと発表した。インタファクス通信などが伝えた。
 同委員会によると、捜査対象は警察の交通関係の警備担当部門のほか、ドモジェドボ空港の運営責任者らが含まれるという。空港側は、「テロが発生した場所の警備は警察の担当で、空港に事件の責任はない」と主張している。
 メドベージェフ大統領は同日、連邦保安局との会合で、同空港は空港側が来訪者の動きを把握できない「無秩序状態」だったと批判。警備に当たっていた警察だけでなく、空港管理者の処分を求めていた。

◎突然の爆風「目の前真っ暗になった」、モスクワ空港テロ(2011年1月25日、朝日新聞)
 目の前が真っ暗になり、そのまま気を失った。ドモジェドボ空港で爆発現場のすぐ近くにいた花屋経営のリュドミラさん(60)は24日、朝日新聞の取材に対して驚きの瞬間を振り返った。
 数店の花売り場を営むリュドミラさんが、空港の国際線到着ロビーにある売り場を点検に訪れた時だった。突然、強い爆風を感じ、売り場は瞬時に崩れ落ちた。爆発地点から4メートルほどの距離だったという。「ガラス片でけがをし、目の前が真っ暗になった。30分ほどたって、やっと意識が戻りました」
 恐怖でしばらく口がきけなくなった。「いったい何が起きたのか全くわからなかった。誰も爆発現場に近づいてこようとしなかった。しばらくして、ストレッチャーで人が運ばれているのが見えました」と語った。
 爆発の約1時間後にポルトガルからドモジェドボ空港に到着した医師のゲオルギーさん(29)の搭乗便は、何の理由説明もないまま、いったんモスクワ北西郊外のシェレメチェボ空港に着陸。その後、本来の到着地のドモジェドボ空港に移ったという。「到着ロビーから出ようにも出られず、治安警察部隊が列をなしているのに驚いた」と話した。

◎モスクワテロ:ロビーに突然火柱、悲鳴(2011年1月25日、毎日新聞)
 「ドーンというすごい音が響いた。最初は改装工事中の一部が壊れたのかと思ったが、しばらくして血を流した人たちが次々と運ばれていった」。モスクワ・ドモジェドボ国際空港の爆発現場から数百メートルの地点で働いていた空港職員アレクセイさん(28)は、爆発直後の様子を振り返った。
 氷点下5度近くに下がった空港の外では、爆発から数時間が過ぎても、救急車や遺体搬送用の車が次々と到着し、警官が交通整理に当たっていた。
 成田発の日本航空機が爆発の1時間余り前に到着したばかり。現場に居合わせた日本人は簡易ブログ「ツイッター」で「空港の外には肉片を浴びた人がいた」などと生々しい様子を伝えた。
 ニュース専門局「ロシア24」は爆発直後の監視カメラの映像などを流した。
 カートを押す利用客でにぎわう到着ロビーという普段通りの映像に突然、真っ赤な火柱が上がる。何を叫んでいるのか聞き取れない悲鳴で充満した一帯は真っ白な煙に覆われ、血まみれの客や空港職員が何人も倒れたまま動かない。警官が怒声を上げながら駆けつける脇を、よろよろとした足取りの人たちが出口へ殺到した。
 捜査当局は24日夜になってから、死者の中に英国人2人が含まれていると発表した。だが、情報収集に当たる英大使館職員は「乗客名も明らかにしないで2人が死んだといわれても、対応できない」と困惑の表情を見せた。
 モスクワでは昨年3月にも約40人が死亡した地下鉄連続爆破テロが発生。ロシア国民にはテロが「身近な脅威」という感覚が芽生えているようだ。ロビーで夜行便を待っていた60歳の女性は「怖いかと聞かれれば確かに怖い。今は便が無事に出ることを祈るだけ」と言葉少なに語った。

◎ロシア:首都、再び標的に、空港テロ(2011年1月25日、毎日新聞)
 ロシアの首都モスクワが、またも無差別テロの標的となった。24日のドモジェドボ国際空港で起きた爆発事件の背景は今のところ不明だが、ロシアは今年12月に下院選、来年春に大統領選を控えており、国内の不安定化を狙った犯行の可能性もある。
 ロシアのメドベージェフ大統領は事件直後、治安維持を担当する内務省や空港を管理する運輸省に対して、必要な対策を講じるよう指示。その模様はテレビで全国に中継された。
 モスクワでは昨年3月、中心部の地下鉄駅2カ所で爆発テロが発生して多数が死傷。チェチェン独立派武装勢力が犯行声明を出した。02年10月にも劇場がチェチェン武装勢力に占拠される事件が起き、特殊部隊の突入で人質ら130人が死亡するなど悲劇が繰り返されてきた。
 今回の空港爆破テロで、チェチェン独立派の犯行と結びつける犯行声明のようなものは今のところ出ていない。しかし、ロシア南部のチェチェン共和国や隣接するダゲスタン共和国などでは治安部隊と武装勢力の衝突が散発的に発生し、不安定な状況が続いている。チェチェン独立派はロシアの心臓部を狙ったテロ攻撃を行う可能性を繰り返し示していた。
 下院選、大統領選を前にロシアは「政治の季節」に入っており、メドベージェフ政権は国内の安定を最優先課題として取り組んでいた。
 そうした中での大規模テロだけに政権側の衝撃は大きいとみられ、政権側はテロ対策のため国内の締め付けを一層強化する可能性がある。

◎惨状、ドモジェドボ国際空港ロビー爆破の現場(2011年1月25日、読売新聞)
 血まみれのロビーに横たわる遺体、うめきながら助けを求める女性。
 24日夕、モスクワ郊外のドモジェドボ国際空港で起きた爆破テロ事件は、内外の利用客であふれる近代的な空港を一瞬にして惨劇の場と化した。
 「スーツケースを持った男が突然、閃光に包まれ爆発した。ちぎれた足や手が床に転がって。ひどすぎる。あれが地獄でなければ何なのか教えてくれ」。友人を迎えるため、現場から約10メートルのところに居合わせた飲食店員の男性(30)は空港内で爆発の瞬間について、こう証言した。男性の紺色ジャンパーやズボンには生乾きの血や肉片がこびりついている。
 年間2200万人が利用する露最大のドモジェドボ国際空港。到着ゲート前にはこの日も普段通り、観光客を待つ多くのタクシー運転手らで人だかりができていた。
 男性によると、運転手らに紛れていた「スーツケースを持ったカフカス系の男」が、人だかりから前に数歩踏みだした途端、爆発したという。この男性も爆風で3メートル吹き飛ばされた。「自分が生き残ったのはたまたま前に人がいたからだ」と、言葉を詰まらせた。
 ネットに流れた現場の映像によると、爆発直後、ターミナル内には煙が立ちこめ、犠牲者が折り重なるように床に倒れた。近くにいた別の男性(29)は、「ついさっきまで元気に立っていた人が、(一瞬後には)血まみれで倒れていた」と振り返った。

◎モスクワの空港で爆破テロ、35人死亡(2011年1月25日、読売新聞)
 ロシア通信などによると、モスクワ南部のドモジェドボ空港の国際線ターミナルで、24日午後4時32分(日本時間同10時32分)頃、爆発があり、少なくとも35人が死亡、130人が負傷した。
 当局は爆破テロと断定し、捜査を始めた。日本人に被害があったかどうかは不明。在モスクワ日本大使館が確認を急いでいる。
 メドベージェフ大統領は24日、治安関係閣僚らと会談し、「犯行の背後にいる連中を追跡し、処罰する」と述べた。さらに、ロシア全土の空港などに特別警戒態勢を敷くよう指示した。
 捜査当局は、自爆テロの可能性もあると見ている。インターファクス通信は、爆弾を爆発させたのは、チェチェン共和国がある露南部・北カフカス出身の男の可能性があるとの当局者の見方を伝えた。

◎モスクワの空港自爆攻撃、煙立ち込める到着ロビーは血の海に(2011年1月25日、朝日新聞)
 外国人を含む死者35人、負傷者150人以上を出す惨事となったモスクワ南部郊外のドモジェドボ空港で起きた自爆攻撃。目撃者は発生直後の様子を生々しく証言した。
 自爆攻撃は旅行客で混雑する時間帯を直撃。到着ロビーには濃い煙が立ち込め、爆発によって火災も発生した。
 出迎えに訪れていたエカテリーナ・アレクサンドロバさんは、到着口付近で現場を目撃。「わたしのすぐ近くで爆発が起きた。衝撃を感じ、何人もの人が倒れるのを見た」と語った。
 雪に覆われた到着ロビー外の道路にも血が散乱。アルチョム・ジレンコフさんは、「到着口付近で列を作っていたタクシーの運転手が吹き飛ばされた。爆破でバラバラになった体の一部がこっちに飛んできた」と、コートに付着した肉片を指さしながら話した。
 空港の女性地上係員は、「ドーンという音が聞こえた。誰かが何かを落としたと思った。その後、犠牲者が運び出されていった」と語った。
 簡易ブログ「ツイッター」のユーザーは、ロビー一帯に濃い煙が立ち込める中、血の広がった床に倒れた負傷者らを携帯電話で撮影した動画を投稿。爆破直後の映像では、ライトを照らしながら、混乱する現場に立ち入る空港スタッフが映っていた。
 また、その後に投稿された動画には、救急隊が負傷者を担架に乗せて運び出す様子も映し出されていた。

◎北カフカス武装組織の3人をテロ容疑で指名手配、ロシア(2011年1月25日、朝日新聞)
 モスクワ南部のドモジェドボ空港国際線ターミナルで24日に起きた爆発事件で、ロシア緊急事態省は25日、外国人を含め死者35人、負傷者は180人に上ったと発表した。ロシア捜査委員会は爆弾テロと断定し、捜査を開始。インタファクス通信などによると、捜査当局は、犯行の準備にかかわったとして、ロシア南部の北カフカスに拠点を置く武装組織のメンバー3人をテロ容疑で指名手配した。
 同通信によると、爆発は午後4時半(日本時間午後10時半)ごろ、大勢の出迎えの人で混雑していた到着ロビーで発生。爆発物の威力はTNT火薬換算で2~5キロという。金属片が多数組み込まれ、殺傷能力を高めてあった。自爆テロとみられ、実行犯は現場で死亡した模様だ。
 英国人やドイツ人など外国人8人が巻き込まれた。英国人の死者が出たとの情報がある。在ロシア日本大使館によると、日本人の被害者はいないとみられるという。
 爆発直後はロビーに煙が充満し、多くの人々が折り重なるように倒れた。爆発5分前にロビーを通ったという男性は「爆発音の後、大声で叫びながら血だらけになって走る警官を見た。別の男性は、血を流しながら携帯電話で話していた」と地元ラジオに語った。
 ロシアのメドベージェフ大統領は24日、被害者の支援と徹底した捜査、交通機関の警備強化などを担当大臣に指示。同大統領は26日からスイスで始まる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で基調講演をすることになっているが、出発を延期した。
 モスクワではロシアからの分離独立を求める北カフカスの武装勢力によるとみられるテロが散発。昨年3月、地下鉄駅で起きた連続自爆テロも北カフカスを拠点とする武装勢力が犯行声明を出している。今回の事件では、犯行声明などはまだ出ていない。
 同空港はモスクワの南約35キロにあるロシア最大の国際空港で、昨年は2230万人が利用した。日本航空の成田―モスクワ便が乗り入れており、爆発の前後に到着便、出発便があったが、乗客らは難を逃れた模様だ。

◎モスクワの空港で爆弾テロ、35人死亡、126人けが(2011年1月25日、朝日新聞)
 モスクワ南部郊外にあるロシア最大の空港、ドモジェドボ空港の国際線ターミナルで24日午後4時半(日本時間同午後10時半)ごろ、爆発があった。ロシア捜査委員会によると少なくとも35人が死亡、126人が負傷した。同委員会はテロと断定し、捜査を開始した。
 インタファクス通信などによると、爆発は大勢で混雑していた到着ロビーの出迎えの人垣の中で発生。自爆テロと見られ、爆発物の威力はTNT火薬換算で約7キロという。イタル・タス通信によると、爆発は2度あったとの証言もある。
 AFP通信によると、空港のインフォメーションセンターに居た男性は「人が燃えながら走っていた。何かとんでもないことが起きていた」と地元ラジオ局に語った。また、別の乗客は「ストレッチャーで運ばれている、けがをして血を流している人をみた」と話した。
 治安当局は、テロ犯はロシア南部北カフカスの地下組織に所属している可能性を指摘。現場付近にいた不審な男性3人の行方を追っているという。ロシアのメドベージェフ大統領は24日、「自爆テロ組織を追跡し、処分する」との決意を表明。同大統領はまた、自身のツイッターで「主要なハブ空港ではセキュリティーを強化する」と宣言した。
 モスクワではロシアからの分離独立を求める北カフカスの武装勢力によるとみられるテロが散発。昨年3月、地下鉄パルク・クリトゥールイ駅とルビャンカ駅で起きた連続自爆テロでは、北カフカスを拠点とする武装勢力が犯行声明を出している。
 同空港はモスクワの南約35キロにある国際空港で、昨年は2230万人が利用した。在ロシア日本大使館によると、事件に邦人が巻き込まれたとの情報はないという。

◎突然火柱が、国営テレビが爆発の瞬間の映像公開(2011年1月25日、スポーツニッポン)
 ロシア国営テレビは25日、モスクワ南部郊外のドモジェドボ国際空港で24日起きた爆弾テロの瞬間を記録していた監視カメラの映像を放映した。
 映像には、車輪付きの旅行用スーツケースなどを引きながら利用客が行き交うロビーの奥で突然火柱が上がる様子が写っている。
 治安当局は監視カメラに写っていた3人の不審な男の行方を追っているとされるが、映像で見る限り、写っている人々の顔などははっきりせず、実行犯とみられる人物が写っているかどうかも不明。

◎人混みの中で爆発が、現場にいた男性「30人ほどの遺体見た」(2011年1月25日、スポーツニッポン)
 暗闇の中に明るく浮かび上がる空港ビルに救急車のサイレンが響き、担架に乗せられた負傷者が運ばれてゆく。警察官が大きな荷物を持った利用客を呼び止めては、中身をチェックしていた。24日午後、自爆テロとみられる爆発が起きたモスクワ南部郊外のドモジェドボ国際空港。捜査関係者や報道陣が集まったロシア最大の空港は、物々しい雰囲気に包まれた。
 「到着ロビー出口で迎えの人たちが集まっている場所の真ん中で爆発が起きた」
 現場近くに居合わせた男性はこう証言する。「顔は見えなかったが、人混みの中に誰かが入った途端、爆発した。かなり大きなかばんを持っていた。あの中に爆弾が入っていたんじゃないか」
 ちょうど背を向けた瞬間に爆発が起きたと話す男性。背中には血のりが付いていた。30人ほどの遺体を目撃したという。
 ロシア国営テレビが放映した爆発直後のビデオ映像によると、ロビーには白い煙が充満。床には割れたガラスが散乱し、赤黒い血が広がる。手押しのカートが放置された中を人々が逃げ惑った。空港から出てきた若い女性は「耳をつんざくような爆発音だった」と恐怖の表情で語った。
 多数の犠牲者が出た後も、通常通り飛行機が発着。同じ空港内でも、爆発現場を少し離れると途端に静かになる。
 しかし出発ロビーでは、カフカス系とみられる顔立ちの利用客らを警官が呼び止め、身分証の提示を求めていた。南部チェチェン共和国とその周辺を含む北カフカス地域のイスラム過激組織はロシアで度々テロを起こしてきた。今回もカフカス出身者の関与を疑う見方が出ている。

◎空港で自爆テロ、35人死亡、180人負傷、発生1時間前に日航機到着(2011年1月25日、スポーツニッポン)
 モスクワ郊外にあるロシア最大のドモジェドボ国際空港で24日午後4時半(日本時間同10時半)すぎ、爆発が起き、当局によると35人が死亡、約180人が負傷した。連邦捜査委員会のマルキン報道官は、現場の状況から自爆テロとみられると述べた。
 ロシアでは、独立紛争で揺れた南部チェチェン共和国を含む北カフカス地域のイスラム武装勢力が関与したテロがしばしば起きており、今回も北カフカスの勢力が政権に打撃を与えようとして実行したとの見方も出ている。
 当局はモスクワの他の空港でも警戒態勢を強化。メドベージェフ大統領はテロ犯を見つけ出し処罰すると述べ、捜査に全力を挙げる決意を表明した。在ロシア日本大使館によると、現時点で邦人が巻き込まれたとの情報はない。
 同空港には、テロ発生の約1時間前、成田空港発の日本航空便が到着。その後、成田に向けて折り返した。日航モスクワ事務所によると、テロに巻き込まれた乗客はいないもよう。
 インタファクス通信によると、治安当局筋は自爆犯とみられる遺体の頭部が現場で見つかり、30代前半ぐらいの男性だったと説明。爆発の瞬間は監視カメラが捉えていたとされ、当局は3人の不審な男が写っていたとして行方を追っている。
 爆発は出迎え客が待つ国際線の到着ロビー付近で起きた。この区域は金属探知機でのチェックを受けずに自由に出入りできるため、空港の外から爆発物を持ち込んだ可能性が高い。当時は多くの到着便があり、混雑を狙った犯行とみられる。
 同空港はモスクワ周辺にある3カ所の主要民間空港の一つ。日航を含む内外の航空会社が乗り入れ、昨年は2200万人以上が利用した。
 モスクワでは昨年3月、地下鉄で連続爆破テロが起き、40人が死亡。当局は北カフカス地域のダゲスタン共和国のイスラム武装勢力に関係する女2人が自爆テロを行ったとしている。

◎中露国境の島に大規模な観光施設、ロシア側が520億円投入(2011年1月13日、産経新聞)
 ロシア極東ハバロフスク地方のシポルト知事は12日、2008年に長年の中国との領土問題が解決された中露国境の大ウスリー(中国名・黒瞎子)島のロシア領内に大規模な観光施設を建設する構想を発表した。
 構想では、大ウスリー島のロシア領内に15年までに、娯楽施設や公園、ホテルなどを建設予定で、将来的に中国から少なくとも年間150万人、ロシア国内からも年間約35万~58万人の観光客を呼び込む。構想実現のために、国家予算や民間資金を含めて約190億ルーブル(約520億円)を投じる予定。
 大ウスリー島の中国領内でも観光施設の建設計画があり、既に橋などの建設がロシアに先行して進んでいる。

◎露最大のガス田開発事業、三井・三菱が参画検討(2011年1月7日、読売新聞)
 三井物産と三菱商事が、北極海に面するロシア・ヤマル半島でロシア政府が計画中の大規模ガス田開発事業への参加を検討していることが6日、明らかになった。
 ロシアのプーチン首相が両社に参加を要請したもので、ロシア最大のガス田開発事業となる見通しだ。ロシアは2011年中頃に事業化調査を終え、20年にも生産開始を見込んでいる。
 両社が検討しているのは、ロシア国営ガス会社ガスプロムが開発主体となるヤマル半島の液化天然ガス(LNG)事業だ。総事業費は10兆~20兆円規模に達すると見られ、北極圏にLNG基地を建設するには高度な技術が必要なことから、ロシア単独での開発は困難とされる。
 このためロシア側は、すでにサハリン沖の資源開発事業「サハリン2」に参加し、アジアや日本向けの販売力と資金力で高い評価を受けた両社に参加を求めた。日本勢の出資比率は数%~10%前後を想定している。
 このほか、国際石油資本のロイヤル・ダッチ・シェルや米エクソン・モービルなどにも参加を求めている。

◎ウクライナ、高濃縮ウランをロシアに移送(2011年1月2日、読売新聞)
 ウクライナは昨年末、キエフの原子力研究所など国内3か所に保管されていた高濃縮ウラン約50キログラムをロシアに移送した。
 ロシア通信などが伝えた。核兵器製造に使用可能なウクライナの高濃縮ウランについては、2010年4月にワシントンで開催された核安全サミットで、ヤヌコビッチ大統領がオバマ米大統領と会談した際、12年までにすべて放棄すると表明していた。

◎元石油王有罪判決批判、露外務省が声明発表(2010年12月29日、読売新聞)
 ロシア外務省は28日、同国の石油会社「ユコス」元社長のホドルコフスキー受刑者らを石油横領などで有罪としたモスクワの地区裁判所判決について米国などが批判したことに対し、声明を出し、「ロシアの司法制度にかかわる問題だ。裁判に影響を及ぼそうとする試みは受け入れられない」と反論し、内政問題に干渉しないようけん制した。
 判決を巡っては、米国のギブス大統領報道官が27日の声明で「恣意的に見える法の運用は、法治国家としてのロシアの評判を傷つける」などと批判。政敵を狙い撃ちにしたとの見方を示していた。
 これに対し、露外務省は「大統領も司法権に介入できないことは強調している。ロシアで法が恣意的に適用されているとの見解には根拠がない」と抗議した。

◎モスクワの空港で停電、8千人2日間夜明かし(2010年12月29日、読売新聞)
 モスクワ郊外のドモジェドボ空港は氷雨による送電線切断で26日から停電が続き、約8000人が28日までの2日間、暗闇の空港で寝泊まりを余儀なくされた。
 ロシア通信は専門家の話として、この季節としては例外的に暖かい空気が上空に流れ込み、降雨が地表の冷気で凍結したと伝えた。送電線は、氷や湿った雪の重さで切断された模様だ。
 空港の停電は28日までに復旧し、離着陸が一部再開した。ただ、混乱は続いており、航空当局は「正常化には2~3日かかる」とみている。空港には、振り替え便を待つ人々がとどまっているという。

◎プーチン氏の政敵、元石油王に有罪、リベラル勢力は反発(2010年12月28日、朝日新聞)
 ロシアのプーチン首相の政敵とされる服役中の元石油王、ホドルコフスキー被告(47)に対する新たな刑事裁判で、モスクワの裁判所は27日、有罪判決を言い渡した。事件は欧米ではロシアの民主主義と法治レベルの指標と位置づけられ、注目を集めてきた。ロシアのリベラル勢力は反発している。
 被告は石油横領や資金洗浄など新しい罪状で懲役14年を求刑されたが、刑期は今後判明する。当初の罪状だけなら来年10月に刑期が終わる予定だったが、有罪とされたことで、来年末の下院選や12年春の次期大統領選までには出所できないことになる。
 野党勢力のカシヤノフ元首相やネムツォフ元第1副首相らは同日、「裁判所は現政権の命令を実行した。わが国の政治・経済の将来に禍根を残す」との声明を発表。人権活動家らも「落胆した」と地元メディアに語り、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのロシア支部は「最高裁の取り消しを期待する」と述べた。
 プーチン首相と「双頭体制」を組むメドベージェフ大統領は、司法権の独立というリベラル改革に取り組んでおり、この事件に対する2人のスタンスの差も注目されてきた。
 判決を前にした今月16日、プーチン首相はテレビ生放送の国民対話で、ホドルコフスキー被告の長期にわたる服役は公正かと尋ねられ、「泥棒は監獄に入るべきだ。米国ではマドフ氏(巨額詐欺事件で服役中の米ナスダック元会長)は禁錮150年。我々の方がよりリベラルに見える」と回答。放送後に「司法への圧力だ」との批判を招いた。
 一方のメドベージェフ大統領は24日のテレビ生放送の対談「今年の総括」で、「大統領としても、その他の公職者も、判決言い渡しまでは自分の意見を述べる権利はない」と言明。プーチン首相への批判とも受け取れる言葉が話題を呼んでいた。だが、有罪判決が出たことで「双頭体制」に亀裂はないとの見方も出ている。
 ホドルコフスキー被告は獄中からもプーチン首相批判を続け、最近は独立新聞への寄稿で、同首相の16日のテレビ対話での発言を批判。サッカーファンの殺人事件を機にロシアで起きた若者らの民族摩擦に触れ、「若者たちは将来が見通せなくなっている。それは、プーチン流の『安定』がもたらした恐ろしく明白な結果だ」と主張している。

◎露「ユコス」元社長、有罪判決、石油横領など(2010年12月28日、読売新聞)
 ロシアのプーチン前政権と対立した末に脱税などの罪に問われて服役し、新たに横領などで追起訴されていた石油会社「ユコス」元社長のミハイル・ホドルコフスキー受刑者(47)に対する判決公判が27日、モスクワの地区裁判所で始まった。
 判決は、起訴事実のうち石油横領と資金洗浄について有罪を認定した。
 判決文朗読は続いており、量刑の言い渡しは数日後とみられる。判決を前にプーチン首相が示唆してきた通りの有罪判決となったことで、メドベージェフ大統領が優先課題に掲げている「司法の独立」に疑念を抱かせる結果となった。
 検察側は、ホドルコフスキー元社長らが1998~2003年に石油約2億1800万トンなどを横領し、収益を資金洗浄したと主張。拘置・服役期間の7年を含む懲役14年を求刑していた。だが、政権批判の論陣を張るノーバヤ・ガゼータ紙は、「これほど大量の石油を盗むのは物理的にも技術的にも不可能」との専門家の意見を紹介し、追起訴には政治的背景が濃厚であるとの見方を伝えている。
 弁護側は27日、控訴する方針を表明した。
 かつて、「ロシア最大の富豪」と言われた元社長は、03年の下院選で野党支援を公言したうえ、自身の大統領選出馬など政治的野心を見せて、プーチン大統領(当時)の逆鱗に触れた。このため、元社長の訴追は当初から、プーチン政権による「懲罰」の色彩が濃いと指摘されてきた。

◎氷雨で大規模停電、空港が全面閉鎖、モスクワ(2010年12月26日、読売新聞)
 モスクワで26日、氷雨による送電線切断などで大規模な停電が発生、主要空港のひとつドモジェドボ空港は午前10時(日本時間午後4時)から、離着陸をすべてキャンセル、6時間後の午後4時前に一部復旧したものの空の便は大幅に乱れている。
 住民20万人の家屋や14の病院でも停電しており、同日午後の時点で復旧のメドはたっていない。

◎民族対立、ロシア揺らす、サッカー乱闘が市民の不満に火(2010年12月26日、朝日新聞)
 サッカーファンの乱闘による一つの殺人事件が、ロシア全土を揺るがしている。多民族国家に潜在する民族間対立感情を呼び覚ましたからだ。「ロシアはロシア人のために」。そんなスラブ民族主義のスローガンを掲げた若年層のデモまで頻発し、一触即発の緊張を政権側が力で封じ込めている。そこには、汚職体質から抜けきれない官僚国家への市民の不満も影を落とす。
 「民族の多様性こそロシアの大いなる長所であり力だ」
 「過激主義者に利用されないようにしてほしい」
 プーチン首相は21日、中央ロシアと南部・北カフカス地域のサッカーファンクラブ代表らと面会し、そう訴えた。その後、乱闘で殺されたロシア青年の墓を訪れて献花した。国を揺るがす内乱に発展しかねない民族対立を鎮めるための窮余の策ともいえた。
 かつて泥沼の内戦を経験したチェチェン共和国などを含むカフカス地域はイスラム教徒が多い。治安は安定せず、失業率も高い。出稼ぎでモスクワなど主要都市への流入が増加し、風習の違いや相次ぐモスク建設などが、ロシア正教のスラブ系住民との間に摩擦を生んでいる。
 発端は今月6日にモスクワの通りで起きた乱闘だった。プロサッカーチーム「スパルタク」のファンだったスラブ系の青年1人が死亡、カフカス系の6人が拘束された。だが警察は、首謀者以外の5人の拘束を解いた。賄賂が渡されたはずだと、スラブ系が不満を募らせた。クレムリン脇のマネージ広場で11日に開かれた青年の追悼集会には約5千人が集結。過激な民族主義者らが扇動して治安部隊と衝突し、65人が拘束された。
 こうした動きに、カフカス系が15日に抗議集会を開くとの情報がネットで出回り、モスクワなどで民族対立が一触即発状態に。予防介入した警察が全土で1700人を拘束し、ナイフやバット、武器類などを多数押収。18日にも全土で約2千人が拘束されたが、未成年者が多数含まれていたことが衝撃を与えた。
 この日、モスクワのオスタンキノ・テレビセンター付近に集まったのは、日本の中高生にあたる8~10年生の生徒たちだった。「愛国主義はナチズムではない」との横断幕を掲げて行進したところ、無許可集会を理由に警察に一時拘束された。地元紙によると、生徒の一人は「大学に入れるのはカフカス系だけ。ロシアに将来はない」などと、賄賂が優先される実態を示唆した。
 プーチン首相は「若者が軽はずみに民族主義的スローガンを唱える事実を憂慮すべきだ」と発言。首相が党首を務める最大与党「統一ロシア」は、徳育を充実化させる教育カリキュラムの見直しを提案するまでになっている。
 「若者は革命のバロメーター」(レーニン)とも言われるロシアでは、今回の騒動は社会全体の不満の表れだと指摘する声も目立つ。下院安保委員会のグロフ議員は「汚職や警察・役人の横暴、犯罪検挙の低さ、移民労働者の増加などで不満が充満している」と語る。反政権のノーバヤ・ガゼータ紙も「ロシアの現代化に対するロシア人の反乱」との見出しで「政府の不首尾な財政政策、賄賂の横行、役人の身勝手」を指摘。メドべージェフ政権が進める現代化が、国家の体質改善につながっていないと批判している。

◎ロシアの元美人スパイ、プーチン首相傘下の政治組織に(2010年12月23日、産経新聞)
 米国で6月に逮捕された後、スパイ交換によりロシアに戻り、「美貌の女スパイ」と騒がれたアンナ・チャップマンさん(28)は22日、ロシアのプーチン首相率いる与党「統一ロシア」傘下の若者組織「若き親衛隊」がモスクワで開いた集会で演説、同組織に加わったことが明らかになった。
 AP通信によると、チャップマンさんは舞台に上り、「私たちがまず変わることによって国を変えよう」などと呼び掛けた。同組織の幹部には「愛国主義の手本」とたたえられている。役職は明らかにされていない。
 旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身のプーチン首相は、米国で捕まったチャップマンさんらスパイ団の将来について「立派な仕事があるだろう。明るい人生が待っている」と約束。その後、チャップマンさんは銀行顧問にも就任していた。

◎苦境の露国営「ガスプロム」(2010年11月23日、産経新聞)
 天然ガス生産世界最大手のロシア国営ガス会社ガスプロムが苦境に立たされている。欧州の景気低迷や中東、米国のガス生産増で市場価格が急落。主力顧客から値下げ要求が噴出しているためだ。豊富な資源を武器に他国に影響力を与えるロシア外交の象徴的存在ともいわれるガスプロムだが、市場の波にその力が飲み込まれつつある。

・市場価格が急落
 「欧州はこれまでも、また今後も当面は我が社にとり最重要市場にとどまる。しかし、アジア向けのガス輸出量は近く、欧州向けを上回るだろう」
 ガスプロムのアレクセイ・ミレル社長(48)は10日、訪問した韓国でそう述べ、欧州市場からアジア市場への移行を進めざるを得ない状況を吐露した。
 最大の問題はガス価格の世界的な低下だ。ロシアは主にパイプライン経由で主要市場の欧州に天然ガスを輸出。欧州需要の約25%を担っている。しかし欧州の景気低迷や、中東・カタールのLNG(液化天然ガス)増産、さらに米国でのシェールガスと呼ばれる新たなガスの生産拡大を受け、スポットLNGと呼ばれる価格の変動性が高いガス製品と、ロシア産ガスの価格差が拡大。ガスプロムに対し違約金を払ってでもスポットLNGを購入した方が安くつく状況が生まれるなか、欧州のエネルギー会社間で値下げ要求の動きが本格化した。
 そのためガスプロムはドイツのエネルギー大手などと今年初め、長期契約を維持しつつ事実上の値下げで合意した。「欧州の大手顧客はさらなる値下げを要求する可能性がある」(11月8日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル、電子版)なか、主力の欧州市場で抜本的な戦略見直しを迫られている。

・アジア向けに活路
 そのガスプロムが目を向けるのが中国市場などでの需要拡大が見込めるアジアだ。採算性の低さなどからアジア向けの極東ガス田開発は遅れが続いていたが、ガスプロムは今年、長年開発が中止されていた東シベリアのチャヤンダ・ガス田の開発を再開。2016年のガス生産開始を目指す。あわせてハバロフスク、ウラジオストクなどを結ぶガスパイプライン建設も計画する。
 顧客確保も急ピッチで進めつつある。ミレル社長は10日、17年までに現在の対フランス輸出に匹敵する年間100億立方メートルのガスを韓国に輸出すると発表。11日付の英字紙モスクワ・タイムズ(電子版)は、ガスプロムが「需要が低迷する欧州の代わりにアジア市場開拓を進めてきた」結果だと指摘した。
 ただアジア向け輸出拡大にはパイプライン建設など巨額のインフラ投資が必要。今年の設備投資計画は総額9052億ルーブル(約2兆4000億円)というが、これは09年度の最終利益の約1・5倍にものぼる金額で、今後のインフラ拡充には海外からの投資拡大が不可欠だ。

・不可欠な日本の協力
 ガスプロムはすでに、欧州市場向けのシュトックマン・ガス田などの開発を大幅遅延させる方針を決めるなど、設備投資計画の大幅組み替えに動いているが、業界では、これまでの設備投資に無駄が多すぎたとの声が強く、今後さらなる見直しが必要になる可能性もある。 
 ミレル社長は韓国を訪問する一方、政治的対立が深まる日本には訪問せず、LNGプラント建設事業の調印を見送った。しかし、LNGは日本企業が生産技術を独占し、日本との関係拡大は不可避な分野で、調印見送りはガスプロムには得策ではなかったとの指摘もある。“強面”のロシア資源外交の看板ともいえるガスプロムだが、その影響力の維持は決して容易ではない。

◎「美人すぎるスパイ」、露大佐の裏切りの犠牲に(2010年11月12日、読売新聞)
 米司法当局が6月にロシア対外情報局(SVR、旧KGB)のスパイとして男女10人を摘発した事件で、露有力紙コメルサントは11日、摘発の裏に、SVRの対米諜報担当幹部、シェルバコフ大佐による米当局への情報提供があったと報じた。
 同紙によると、大佐は対米スパイ要員を統括する「セクションS」と呼ばれる部門の責任者だった。1年以上前から米当局と協力関係にあったとみられ、6月のメドベージェフ大統領訪米の直前に米国に出国。米当局によるスパイ1人の尋問にも関与したという。
 ロシアでは摘発当初から内部の情報提供者の存在が疑われていたが、SVR幹部の裏切りは想定外だった。同紙によると、露政権内部に激震が走り、SVR解体論や長官更迭論も浮上しているという。
 摘発された一人のアンナ・チャプマン元情報員は「美人スパイ」として有名になった。

◎露地方選はプーチン与党が圧勝へ、野党は「不正」と反発(2010年10月11日、産経新聞)
 2012年春のロシア大統領選に向けた重要な指標となる統一地方選挙が10日、各地で投票され、今回改選された6地方議会でプーチン首相(前大統領)の率いる与党「統一ロシア」が首位に立つなど圧勝の見通しだ。同党が勢いを維持した場合、大統領選ではプーチン氏もしくは氏の後継指名する候補者が難なく当選するシナリオが強まる。野党や民間の選挙監視団体は選挙に「多数の不正があった」と反発している。
 中央選管が11日、6地方議会選について集計作業をほぼ終了した結果によると、統一ロシアは63~91%の得票率でリード。野党の共産党、親政権野党の「公正ロシア」と自民党が大差で続いている。統一ロシア幹部は市議会選なども含めた地方選全体での同党支持率が58%にのぼり、今年3月の地方選から7ポイント上昇したとしている。
 これに対し、野党や反政権派からは、「エリツィン(元大統領)期以降で最も汚い選挙だった」(共産党のジュガーノフ党首)などと大規模な不正があったことを訴える声が出ている。民間監視団体「ゴロス」では、在宅投票や居住地外投票の制度を悪用した投票強制や組織的投票、投票所からの監視員排除といった違反が多数記録されたとしている。

◎モスクワ市長解任劇、動揺見せたロシア社会(2010年10月5日、産経新聞)
 ロシアでは、選挙で選ばれた地方首長の解任権が大統領に与えられている。民主化を果たしながらも、中央集権体制が堅持され、ソ連時代と同様、クレムリンが地方ににらみをきかせている。
 メドベージェフ大統領は9月末、首都モスクワ市政を18年間、担ってきたルシコフ市長を解任した。その理由を「信頼の失墜」としたが、ソ連崩壊後の頽廃(たいはい)したモスクワを国際的な商業都市へと変貌(へんぼう)させたルシコフ氏の手腕は国内外から高く評価されており、政権に盾突いたルシコフ氏が政争に敗れたとの見方が支配的だ。
 大物政治家の解任劇は、世論を二分させた。民間会社が全国で行った緊急世論調査によると、ルシコフ市政を評価する人が33%、否定的に見る人が34%、「答えられない」が34%。しかし、モスクワだけの結果を見ると、評価する人が65%にのぼり、大統領の決断を疑問視する市民が多数派であることが浮かび上がってくる。
 モスクワ市民の動揺は、政権がコントロールする大手メディアも伝えている。9月29日付の露紙独立新聞(電子版)は、ルシコフ氏の功績を高く評価しつつ、大統領の強権発動に「モスクワは大きな衝撃に直面している」と報道。首都はさまざまな社会問題を抱えており、「ルシコフ氏のかわりに、市場を重視する思考を持つ新しい市長を就かせることは困難だろう」と解説する。
 露紙ブレーミャ・ノボスチェイ(電子版)も「ルシコフ氏は実際、モスクワ市民にとって多くの良い仕事をした」と指摘。ソ連時代、資金難などで何十年間も放置されてきた老朽施設は、この18年で“ルシコフ式建築”といわれる文化的で近代的な建造物へと改修・改築が進められた。この復興を、同紙は「ルシコフ時代は、モスクワ市民の記憶に残るだけではなく、首都の外観にも(長く)刻まれるだろう」と伝えている。
 ルシコフ氏は、自らの罷免に逆襲する構えを見せており、今後、メディアや治安当局を巻き込んだ政争が激化、「政治の危機」を訴える専門家も少なくない。しかし、政界の汚職体質や、権力者が法律を無視するロシアの根深い社会問題との決別を図るメドベージェフ大統領を後押しする声も当然あり、英紙フィナンシャル・タイムズの社説は「そろそろ、(旧勢力の)一掃を始める潮時だ」と指摘している。

◎露、政局波乱含みに、大統領のモスクワ市長更迭で(2010年9月28日、産経新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は、首都モスクワの市長を18年間務めたルシコフ氏(74)を更迭する大統領令に署名した。大統領府が28日、発表した。在位期間が長い地方首長の中でも“重量級”のルシコフ氏の更迭で、2012年の大統領選を前に政権が進めてきた地方政界の再編は山場を超えた形だ。半面、中傷合戦の末の解任劇は政争の火種としてくすぶる可能性もあり、政局は当面、波乱含みの情勢が続きそうだ。
 大統領府はルシコフ氏の解任理由を、「大統領の信頼を損なった」と説明した。大統領は28日、モスクワ第一副市長のレシン氏を市長臨時代理に任命した。
 ルシコフ氏は1992年、エリツィン元大統領の指名で市長に就任。98年には中道政党「祖国」を結成、00年の大統領選出馬をにらんだ動きと目され、当時1期目の首相だったプーチン氏を相手に権力闘争を繰り広げた。
 プーチン氏の大統領就任後は忠誠を誓って信頼を勝ち得たとされ、プーチン前政権は地方首長の公選制廃止後の07年、ルシコフ氏を5期目の市長に指名した。
 そのルシコフ氏への逆風が強まったのは今年8月。森林・泥炭火災が深刻化するなか、海外で休暇を取った同氏について、大統領府当局者が「早く帰国しなかったのは残念だ」と批判したのが発端だった。
 9月には政府系、国営の3大テレビ局が夫人の蓄財問題やモスクワの交通渋滞などを挙げ、こぞってルシコフ市長を攻撃する番組を流した。大統領府の意向を反映した動きとの観測が強く、市長は名誉棄損罪で各局を提訴、全面対決する姿勢を示していた。メドベージェフ大統領にすれば解任に踏み切ったことで、権力の失墜を免れた形となる。
 来年夏の任期切れを待たずにルシコフ氏を解任した背景として、週刊誌ロシア版ニューズウィークは「権力側が集票組織を作り直すのなら、いま市長を交代させないと大統領選に間に合わない」などとする政界関係者の談話を掲載した。
 ロシアの選挙戦では、メディアへの候補者の露出度や組織票固めなどで、各地の行政府の意向が色濃く反映される傾向がある。政権が今年、90年代から居座る地方首長を相次いで退任させているのも、“選挙の季節”の到来に備えて中央の意向に忠実な首長を据え直す狙いからだとされる。
 プーチン首相は28日夕、「大統領の市長解任は、権限の範囲内で法に従った行動だ」と述べて、大統領を支持する意向を示唆した。政治評論家のペトロフ氏は「ルシコフ氏は選挙での集票力を盾に政権を脅しにかかっていた。現政権全体に悪影響を及ぼす恐れがあった」との見方を示した。

◎ロシア大統領、モスクワ市長を解任、「信頼を損なった」(2010年9月28日、産経新聞)
 【モスクワ=佐藤貴生】ロシア大統領府は28日、メドベージェフ大統領が首都モスクワのルシコフ市長(74)を解任する大統領令に署名したと発表した。インタファクス通信によると、「大統領の信頼を損なったことからルシコフ氏を罷免した」という。大統領はレシン第1副市長を市長臨時代理に任命した。
 ルシコフ氏は今夏の大規模な森林・泥炭火災への対応などをめぐり、大統領府との間で対立が表面化。同氏は27日にも自ら辞職する意向がないことを強調していた。

◎去就に注目、重量級モスクワ市長、「考える時間必要」とクレムリン(2010年9月20日、産経新聞)
 ロシアの首都モスクワの市長を18年間も務めるルシコフ氏が20日、オーストリアで休暇に入り、辞任に向けた動きでは-との観測が広がっている。政府系3大テレビ局が今月、同氏を批判する番組を相次ぎ放映する異例の事態が起きており、同氏を辞任に追い込むクレムリン(露大統領府)の差し金との見方も出ている。
 インタファクス通信は18日、大統領府当局者が「彼には考える時間が必要だ」と述べ、ルシコフ市長の休暇を許可したと伝えた。休暇は1週間の予定だ。
 ルシコフ氏をめぐっては、今夏の大規模な森林・泥炭火災への対応が遅れた-と大統領府当局者が匿名で非難、ルシコフ氏が反論するなどして、双方の対立が表面化した。
 3大テレビ局の一つ、政府系NTVは18日、市長と国内屈指の富豪である実業家、バトゥリナ夫人の汚職疑惑に関する番組を放映した。10日の批判番組に続くもので、残る国営テレビ2局も深刻化するモスクワの交通渋滞などを挙げ、市長を批判する番組を流した。
 「3大テレビ局が同時にこうした番組を流すには、政権の関与が不可欠」(露政治評論家)との見方が支配的だ。
 プーチン前政権は2004年、地方首長の事実上の大統領任命制を導入した。今年はタタルスタンやバシコルトスタン、カルムイキアなどの共和国で、1990年代から率いてきた首長を交代させており、2年後の大統領選を前に、権力基盤の再編を図る政権の狙いもちらつく。
 来年6月に任期切れを迎える“重量級”のルシコフ氏について、在モスクワのシンクタンク、カーネギー・センターのペトロフ氏は、「彼は自らのために働く“集票マシン”を持っている」とし、事実上の最高実力者であるプーチン首相が、ルシコフ氏に引けを取らない後継市長をいつ選定するかが今後の焦点になる-との見方を示している。

◎森林火災で2人死亡、ロシア南部(2010年9月3日、産経新聞)
 ロシア南部ボルゴグラード州の当局者は2日、同州で森林火災の延焼により、2人が死亡したと述べた。非常事態省によると、同州とサラトフ州で約470の建物が焼失した。インタファクス通信などが伝えた。
 ボルゴグラード州政府は、高温と強風が被害拡大の原因になったとしている。
 ロシアでは6月から8月にかけて猛暑のため各地で森林火災が発生。これまでに2千以上の家屋が焼失し、火災に巻き込まれて54人が死亡した。

◎ロシア大統領、地方指導者の世代交代推進、再選へ足場固め(2010年8月31日、産経新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は、ロシア連邦を構成する民族共和国の大統領や州知事ら地方指導者には「新しい現代的な人材が絶対に必要だ。若返りを進めなければならない」と述べ、在任期間が長期化している古参知事らの交代を今後も進めていく考えを示した。30日放映のロシア国営テレビのインタビューで述べた。
 地方指導者は来年末の下院選や2012年の次期大統領選で政権側の集票に大きな役割を果たす。「ロシアの近代化」を掲げる大統領にとり、地方指導者の世代交代推進は「子飼い」の知事らを増やし、再選に向けた足場を固める意味があるとみられる。
 ソ連崩壊前後から地方に君臨し続けている古参地方指導者らは連邦政府の意向に従わない傾向があり、大統領は2008年の就任以来、世代交代を進めてきた。

◎ロシア、森林火災の非常事態終結(2010年8月24日、産経新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は23日、記録的猛暑による森林火災のためモスクワ南東のリャザニ州に出していた非常事態宣言を解除した。ロシア大統領府が発表した。これにより今月2日にモスクワ州など5州2共和国に出された非常事態はすべて解除された。
 今回の森林火災ではロシア全体で88万ヘクタール以上が焼け2千以上の家屋が焼失。火災に巻き込まれて54人が死亡した。

◎ロシアの非常事態宣言、全域で解除、猛暑火災(2010年8月24日、朝日新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は23日、記録的な猛暑による森林や泥炭の火災のため今月2日に発令したロシア西部リャザニ州の非常事態宣言を解除した。
 非常事態宣言は七つの州や共和国に出されたが、12日にうち3カ所、20日にさらに3カ所で解除され、リャザニ州だけが残っていた。火災は一部で続いているが、ロシア緊急事態省は「すべて管理下にある」としている。
 緊急事態省によると、この夏の森林火災は2万8千カ所で出火、約88万ヘクタールが焼失し、54人が犠牲となった。損害額は約120億ルーブル(約334億円)という。

◎ロシア森林火災、大統領「ほぼ終息」(2010年8月21日、読売新聞)
 【モスクワ=山口香子】ロシアのメドベージェフ大統領は20日、森林や泥炭火災のためモスクワ州など3地域に出していた非常事態宣言を解除した。
 これにより、非常事態が宣言された7地域のうち、まだ解除されていないのは、西部リャザン州だけとなり、大統領は訪問先のアルメニアで「非常事態は、ほぼ収まった」と述べた。
 露非常事態省によると、今夏の森林、泥炭火災では、約88万ヘクタールが焼けた。

◎ロシア森林火災、収束へ、大統領「事実上、正常化した」(2010年8月21日、朝日新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は20日、記録的な猛暑でロシア西部に広がった森林や泥炭の火災のためモスクワ州、モルドビア共和国、ニジェゴロド州に発令していた非常事態宣言を解除した。
 同大統領は訪問先のアルメニアで森林火災について「情勢は事実上、正常化した」と話した。火災に伴う非常事態宣言は今月2日、七つの連邦構成体で出された。12日にボロネジ州など三つの構成体で解除されており、リャザニ州が残るだけとなった。
 緊急事態省によると、今回の火災で88万ヘクタールが焼け、2500以上の住宅が焼失。54人が死亡した。被害は少なくとも120億ルーブル(約334億円)にのぼるという。

◎ウオツカ夜間販売禁止 でもビールは“酒じゃない”から対象外(2010年8月19日、スポーツニッポン)
 “飲酒大国”ロシアの首都モスクワ市は18日、ウオツカなどの強い酒を午後10時から午前10時まで販売禁止にすると発表した。政府が進める節酒キャンペーンに沿った措置で、9月1日から始める。ただし、ビールなどアルコール度数15%以下の飲料は対象外。
 インタファクス通信によると、市当局者は「問題なのは、ビールは連邦法で酒として扱われないため規制できないことだ」と説明。同市は、消費が増えているビールなどの低アルコール飲料を酒に分類するよう、連邦議会に法改正を働き掛けているという。
 強い酒については、これまでも午後11時から午前8時まで販売を禁じていたが、当局から許可を得た店は24時間販売が可能だった。今後はこのような“抜け道”がなくなる。飲食店での酒の提供は規制されない。
 ロシア国民の飲酒量は世界平均を大きく上回り、飲酒絡みの死者が年8万人に達するとの推計もある。アルコール依存症も社会問題化。政府はウオツカの最低販売価格を引き上げるなど対策に力を入れている。

◎スパイ?ロシア当局、ルーマニア大使館員逮捕(2010年8月17日、読売新聞)
 インターファクス通信によると、ロシア連邦保安局(FSB)は16日、在モスクワ・ルーマニア大使館1等書記官を、軍事機密情報を入手しようとしたスパイ容疑で拘束した。
 露外務省は、外交ルートを通じてルーマニアに抗議し、同1等書記官に48時間以内の国外退去を命じた。
 FSBは、この書記官がルーマニアの対外情報局員だとしている。ロシアは、米国のミサイル防衛(MD)システムを受け入れる方針を2月に明らかにしたルーマニアに対し、警戒を強めていた。

◎人里離れた「ロシアのベガス」、客来ず悲鳴、計画見直し(2010年8月14日、朝日新聞)
 ロシアに4カ所のカジノタウンを作る政府の計画が見直しを迫られている。国が指定した地区はいずれも人里離れた場所。唯一、開業したアゾフ海沿岸では売り上げが上がらず、費用を負担した地元が悲鳴を上げているためだ。
 「住宅地から離れた区域は、客も投資家も引きつけない」。12日付経済紙「ベドモスチ」によると、ロシア南部クラスノダール地方のトカチョフ知事は数週間前、ロシアのメドベージェフ大統領にカジノを別の場所に移すよう懇願する手紙を送った。
 同地方とロストフ州にまたがるアゾフ海沿岸を政府は「カジノ地区」として指定。今年1月末にカジノがオープンしたが、客はほとんど来ないという。知事は移転先として「もっと良い場所を用意できる」とアピールしている。
 ロシアでは、1990年代初めから2000年代初めにかけてカジノが大繁盛。依存症で生活が破綻(はたん)する人が増えたほか、犯罪組織との関係も取りざたされ、政府は07年、「賭博規制法」を制定。極東の沿海地方、シベリアのアルタイ地方、ロシア北西部のカリーニングラード州、アゾフ海沿岸に「ロシアのラスベガス」を作り、09年7月以降、この場所以外でのカジノ営業を全面的に禁止した。
 だが、これらはへき地ばかりで投資も進んでいない。唯一、開業したアゾフ海沿岸では、インフラ整備だけでクラスノダール地方は10億ルーブル(約28億円)、ロストフ州は1億7千万ルーブル(約4億8千万円)をつぎ込んだが、失敗に終わった格好だ。
 メドベージェフ氏はすでに政府に対策を指示しているとされ、下院も指定場所の変更など法改正の検討を開始。国民は「最初からわかっていたことなのに」と冷ややかだ。

◎露の人権活動家が無許可集会で拘束後、入院(2010年8月13日、産経新聞)
 インタファクス通信などによると、ロシアの著名な人権活動家レフ・ポノマリョフ氏(68)が12日、モスクワ市役所付近での無許可集会参加を理由に警官隊に拘束された後、体調不良を訴えて救急車で市内の病院に入院した。弁護士によると高血圧症の兆候があるという。
 ポノマリョフ氏は同日、郊外で続く森林や泥炭の火災によるスモッグにモスクワ市が覆われていた今月初めに外国で休暇を取っていたルシコフ同市長の辞任を要求する野党勢力の集会に参加していた。警察によると、ポノマリョフ氏を含む35人が拘束された。
 市保健局は9日、有害物質を含むスモッグと猛暑のため市内の1日当たりの死者数が通常の2倍の約700人に上っていると発表。市の対応の遅れに批判が高まっていた。

◎ロシア森林火災、チェルノブイリ汚染の森に拡大(2010年8月12日、読売新聞)
 ロシア森林保護庁は11日、同国で広がる森林火災が、1986年のチェルノブイリ原子力発電所(現ウクライナ)事故で汚染された西部ブリャンスク州の森林にも広がったことを明らかにした。
 インターファクス通信が報じた。環境保護団体グリーンピースは10日、「高度に汚染された州内の森3か所で火災が発生している」と公表し、放射能が大気中に拡散する恐れを指摘していた。

◎クレムリンvs首相、モスクワ市長に賛否(2010年8月10日、産経新聞)
 森林・泥炭火災による煙害の続くモスクワのルシコフ市長が休暇を切り上げて10日までに帰国したのを受け、クレムリン(露大統領府)筋は同日、「より早く戻るべきだった」などと市長を批判した。インタファクス通信が伝えた。これに先立ち、プーチン首相は市長との面会で「適切な時期に休暇を切り上げた」と述べ、市長を賞賛していた。
 露政界にはかねてクレムリンが在任18年のルシコフ市長を退任させるとの観測が強まっており、市長の責任問題や人事をめぐって「双頭政権」内に見解の相違が生じている可能性がある。

◎猛暑とスモッグで?モスクワの死者が倍増(2010年8月10日、読売新聞)
 観測史上最悪の猛暑が続き、森林火災による強烈なスモッグに襲われているロシアの首都モスクワで、死者数が通常の2倍に跳ね上がっている。
 モスクワ市保健当局の責任者は9日、インターファクス通信に対し、死者数は通常1日あたり市全体で360人程度だが、最近は約700人に達していると述べ、暑さとスモッグが原因だとの認識を示した。露メディアは、火葬場などが通常の2.5倍の死者でパンク状態だと報じている。
 高齢者や呼吸器系疾患のある人が犠牲になっているとみられるが、正確な死者数は明らかにされていない。ロイター通信は、患者の死をスモッグや酷暑と関連づけないよう指導があったとする医師の話を紹介。森林火災への政権の対応が批判を浴びる中、当局による実態の隠蔽疑惑も浮上している。

◎猛暑で広がる森林火災、露政権批判へ飛び火(2010年8月9日、読売新聞)
 【モスクワ=貞広貴志】猛暑による森林火災に歯止めがかからないロシアで、メドベージェフ政権の「無策」を批判する声が高まってきた。
 本格的な火災発生から3週間以上たつのに火勢は強くなるばかりで、死者は5日の集計で計50人に達した。政府は、地方当局や現場担当者の責任を追及し火の粉を振り払うのに躍起となっている。
 露非常事態省によると、今年5月以降、計約6700平方キロ・メートルの森林などが焼失した。大統領は2日に非常事態を宣言したが、状況は悪化し、西・南部を中心に1日に300~400件の森林火災が新たに発生。モスクワ近郊の海軍飛行場が延焼し、原子力発電所に火が迫った。首都モスクワにも煙が立ちこめ、大気汚染の濃度は一時、基準値の10倍に達した。
 事態が深刻化した最大の要因は観測記録を更新し続けている猛暑だが、消防活動の出遅れや消火設備の不備も次々明らかになった。
 南部ソチでの休暇を中断して4日に安全保障会議を緊急招集したメドベージェフ大統領は、「今起きていることは、犯罪的な怠慢の結果だ」と断じ、飛行場火災の責任で軍幹部5人を罷免した。連日、被災地入りしているプーチン首相は、対応が遅れた地方首長に辞任を迫っている。
 だが、研究機関カーネギー・モスクワ・センターのニコライ・ペトロフ研究員は、「クレムリンが進めた極度の中央集権が、対応の出遅れを招いた」と指摘する。ロシアではプーチン前政権以降、「権力の垂直構造」と呼ばれるトップ・ダウン体制への移行が進んだ。広い国土で統一的な施政を実現する狙いだったが、今回の火災では、各地の実態把握と指示が遅れ、地方も都合の悪い情報を中央に報告しないという弊害が出た。
 ウェブ新聞「GZT・RU」が2日に実施した非公式世論調査では、「責任は中央政府にある」とする回答が最多の49%を占め、インターネットのブログは政府批判であふれている。
 政権は明らかに世論の動向に神経質になっている。北西部トベリ州の住民が、地元の消防局にヘルメットと防火服しかないことを糾弾し、「これでは長生きなどできないから、年金の支払いをやめて消防車を自腹で買う」とブログに書き込んだところ、プーチン首相が「指摘はもっとも。連邦予算を既に手当てした」と素早く回答した。
 ただ、計1800平方キロ・メートルの森で燃えさかる火を消せない限り、不満を抑え込むことは難しそうだ。

◎ロシア猛暑火災拡大、空港マヒ、各国が渡航自粛呼びかけ(2010年8月7日、朝日新聞)
 記録的な猛暑による森林や泥炭の火災がロシア西部で拡大を続け、首都モスクワは7日、この夏最悪のスモッグに覆われた。米国務省はモスクワ周辺地域への渡航を差し控えるよう求める警告を出し、英BBCなどによると、ドイツ、フランス、イタリア各政府もモスクワへの渡航自粛を呼びかけた。1986年のチェルノブイリ原発事故で放射能汚染された森林への延焼も懸念され、「首都脱出」の動きが始まっている。
 スモッグは6日から悪化し、視界不良でモスクワの空港も混乱。南部郊外のドモジェドボ空港や南西部のブヌコボ空港では6日には100便を超える発着に影響が出た。7日も視界は300メートル程度しかなく、40便がキャンセルされ、7便が近隣都市の空港に着陸先を変更。50便近くが飛び立てない事態になった。
 懸念されているのは、旧ソ連ウクライナで起きた原発事故で汚染された森林を抱えるロシア西端部のブリャンスク州。ショイグ緊急事態相は5日、汚染地域に延焼すれば、放射性物質が大気中に拡散する恐れがあると指摘した。
 現地の報道では、この発言をきっかけに、各国の在ロシア大使館でモスクワ脱出の動きが加速。カナダ、ポーランド、オーストリア、チェコが一部の外交官や家族を本国に戻すと伝えられている。
 ノーボスチ通信によると、7日現在、ロシア西部を中心に577カ所で火災が起き、焼けた面積は約19万ヘクタールに達している。
 原発事故による汚染森林の火災について、原発事故に詳しい今中哲二・京都大原子炉実験所助教は「汚染地帯まで火災が来れば、大気中の放射性物質の濃度が高くなり、消防士が被曝(ひばく)する可能性もある」と話す。一方、長瀧重信・長崎大名誉教授は「火災がチェルノブイリ原発の原子炉近くに及べば別だが、汚染地帯の放射性物質が広がっても地域住民の健康には特に問題はないだろう」とみる。

◎ロシア、穀物輸出を年末まで禁止へ、猛暑の被害深刻(2010年8月6日、朝日新聞)
 記録的な猛暑で穀物被害が深刻化しているロシアが、小麦など穀物の輸出を今月15日から12月末まで禁止することを決めた。プーチン首相が5日、政府決定に署名した。ロシアは世界第3位の小麦輸出国で、かねて上昇している国際穀物市場の小麦価格がさらに高騰しそうだ。今後、世界的な食糧危機につながるとの懸念も出始めた。
 インタファクス通信などによると、ロシア全土では作付面積の2割近い1千万ヘクタールが壊滅し、農業省は今年の小麦の収穫は7千万~7500万トンまで減ると予測。ロシア穀物連盟はさらに厳しい予測をしており、4500万トン程度まで落ち込む可能性を指摘している。国内需要は年間7500万トンとされており、備蓄分を含めても輸出分を確保するのは厳しい状況だ。
 ロシアは昨年、小麦を2150万トン輸出したが、穀物連盟は今年は1700万トンまで減ると予測。米農務省は1400万トンまで落ち込むとみている。
 シカゴの穀物市場ではすでに小麦価格が上昇し、今月2日には2008年秋以来の高値を記録。ロシアの輸出禁止でさらに上がると予測されている。小麦輸出は米国、カナダ、欧州連合(EU)、ロシアで世界の3分の2を占めている。

◎ロシア、放射性物質を退避、火の手迫る核開発都市(2010年8月5日、朝日新聞)
 記録的な猛暑と乾燥によるロシアの森林火災が被害を広げている。核開発の中枢を担い、一般人の立ち入りが禁止されているロシア西部の閉鎖都市では、火災の接近に備え、4日までにすべての放射性物質が運び出された。ロシア全土での死者は48人に達し、近隣諸国が航空部隊を派遣するなど支援も国際化している。
 首都モスクワは4日、郊外の泥炭層などの火災で濃いスモッグに覆われ、視界は500メートル程度に低下。着陸空港を変更する旅客機も出た。
 放射性物質の退避措置が取られた閉鎖都市は、ソ連時代から核兵器開発の中核だったニジェゴロド州サロフ(旧アルザマス16)。国営原子力企業ロスアトムのキリエンコ社長は4日、大統領が主宰した拡大安全保障会議で、連邦原子力センターから爆発性の物質や放射性物質をすべて運び出したと報告、「核の安全は確保されている」と述べた。
 同センター周辺の森林では2千人以上を投入して集中的に消火作業を進めている。ボロネジ州では原発の防火に300人規模の軍隊も投入された。
 ロシア国営テレビによると、極東を含めたロシア全土の森林火災は現在800カ所以上で、計18万ヘクタールに及ぶという。ウクライナやアルメニアなど旧ソ連諸国が航空機による消火支援に乗り出したのをはじめ、ドイツやイタリアなども支援を申し出ている。

◎露の森林火災で政権が“火消し”に躍起(2010年8月4日、産経新聞)
 ロシアで猛暑と干魃(かんばつ)を受けた森林火災が深刻さの度を増し、西部の核開発閉鎖都市サロフ(旧アルザマス16)でも4日までに火の手が上がった。同市にある核兵器開発拠点、連邦原子力センターの施設に延焼した場合には破局的な事故につながる恐れがあり、関係当局による懸命の消火作業が続いている。森林火災は各地で拡大の一途をたどっており、政権の対応を批判する声も強まってきた。
 サロフ市では4日、消防車両116台と航空機6機などを投入し、2千人以上による消火活動が続いた。軍や原子力センターの職員も作業に加わっている。市当局は「火の手はいくつかに分散され、炎上面積も狭まっている」としている。
 3日に現地入りした国策原子力統合企業「ロスアトム」のキリエンコ総裁は「原子力センターにはいかなる脅威もない」と強調。ただ、実際の火勢や核施設との距離、原子炉と核燃料の保護状況や延焼した場合の影響は全く不明だ。原子力分野に最も重要な情報公開の面で、この国が大きく立ち遅れている現実が改めて浮き彫りになっている。
 サロフ市の人口は約9万人。外国人はおろか自国民も自由に立ち入りできない「閉鎖都市」の一つだ。ソ連時代には軍事基地や核関連施設が存在するとの理由で150ともいわれる都市や居住区が“鎖国状態”に置かれ、現在も40近くの閉鎖都市が残っている。
 森林火災による死者は西部と中部を中心に48人にのぼり、3500人以上が住居を失った。20以上の地方が非常事態を宣言しており、15万人態勢の消火活動が続く。メドベージェフ大統領は3日、ウクライナとアゼルバイジャン両国が申し出た航空機提供の支援を受け入れる考えを示した。
 モスクワ郊外の軍事基地では7月末、基地本部と13の格納庫などが焼けたことも明らかになっている。
 4日付の独立新聞は、プーチン前政権が国の森林行政機関を解体したことが今の被害拡大につながっているとし、火の猛威を押さえ込めない政権を真っ向から批判した。モスクワ州によると、森林火災の大半はたき火やたばこの不始末など人為的要因で発生している。
 ロシアの干魃を受け、小麦の国際先物価格は7月に4割も上昇。ロシアの一部地方では穀類の買い占めが始まっており、政権が食料品価格の統制に乗り出すとの観測も出ている。

◎ロシア猛暑火災、大統領が非常事態宣言、死者40人に(2010年8月3日、朝日新聞)
 猛暑による森林火災が広がっているロシアで、メドベージェフ大統領は2日、被害が特に深刻な同国西部のモスクワ州やニジェゴロド州、モルドビア共和国など七つの連邦構成体に非常事態を宣言する大統領令に署名した。保健社会発展省によると、ロシア全土での森林火災による死者は2日までに40人に達した。
 大統領令では対象地域への市民の立ち入りを制限し、必要規模の軍の出動を命じた。これまで地方レベルで独自の非常事態宣言は出されていたが、国家規模の災害対策が迫られた形だ。
 緊急事態省によると、ロシア全土で先週末だけで1200件の火災が発生、2日現在で580件が燃え続け、計15万人以上が消火作業にあたっている。これまでに1100棟以上の住宅が焼失、2千人以上が焼け出された。被害総額は65億ルーブル(約190億円)以上と見積もられ、焼失面積は12万ヘクタールを超えるという。

◎露で「集会の自由」求め抗議、95人一時拘束(2010年8月1日、読売新聞)
 モスクワ中心部の広場で7月31日、政治団体などが「集会の自由」を求める抗議活動を行い、参加者35人以上が警察に一時身柄を拘束された。
 インターファクス通信によると、この中には、エリツィン政権下で第1副首相を務めたボリス・ネムツォフ氏も含まれた。サンクトペテルブルクでも同様のデモが行われ、ロイター通信によると、60人が一時拘束された。

◎猛暑火災、住宅襲う、28人死亡、千棟以上焼失、ロシア(2010年7月31日、朝日新聞)
 記録的な猛暑に見舞われているロシア西部で、高温による乾燥と強風で泥炭層や森林の火災が深刻化し、30日までに1千棟以上の住宅が焼失、少なくとも28人が死亡した。連日の猛暑傾向は衰えず、被害はさらに拡大しそうだ。メドベージェフ大統領は同日、国防省に軍の出動を命じ、政府に対応強化を指示。プーチン首相はモスクワ東方ニジニノブゴロド州の被災地に入った。
 緊急事態省によると、ニジニノブゴロド州やボロネジ州、リャザン州、モスクワ州などで死者が発生、全体で住宅1170棟が焼け、2200人近くが焼け出された。イタル・タス通信によると、猛暑による火災確認は2万1690件にのぼり、23万8千人が消火作業にあたっている。
 プーチン首相はニジニノブゴロド州で被災者を訪問し、「被災者1人当たり20万ルーブル(約60万円)を支給する」と約束。消火活動の陣頭指揮を執った。

◎「猛暑スモッグ」モスクワかすむ、郊外の泥炭層が発火(2010年7月27日、朝日新聞)
 モスクワが「猛暑スモッグ」にかすんでいる。26日に観測史上最も暑い37.5度を記録したが、郊外に広がる泥炭層などが猛暑で発火し、煙が中心部まで漂ってきた。酷暑による息苦しさに、スモッグが追い打ちをかけている。
 イタル・タス通信によると、26日から27日にかけて泥炭層30カ所(計約20ヘクタール)、森林28カ所(計約28ヘクタール)で火災が発生。航空機やヘリから散水するなど消火作業が続けられている。
 スモッグによる視界は2~4キロ。空気中の不純物は基準値の5~8倍といい、健康被害も懸念され始めた。地下鉄駅もスモッグの侵入を防ぐため換気装置をフル稼働させている。

◎90年ぶり記録更新、酷暑のモスクワ37.4度(2010年7月27日、朝日新聞)
 【モスクワ=副島英樹】記録的な猛暑が続くロシアの首都モスクワで26日、ついに気温が37.4度に達し、130年の観測史上、最も暑い日となった。これまでは1920年8月の36.8度が最高気温だった。予報では今後40度近くまで記録を更新する可能性も見込まれている。「寒い首都というイメージが吹き飛んだ」と言われている。

◎プーチン首相、スパイ交換の10人に「明るい人生」約束(2010年7月26日、CNN)
 ロシアのプーチン首相は米国とのスパイ交換で帰国した10人と面会し、一緒に愛国歌を歌うなどして労をねぎらった。国営ノーボスチ通信が伝えた。米国はこの10人をスパイ容疑で摘発し、国外追放処分としていた。
 プーチン首相は24日、10人との面会の様子を記者団に語り、「彼らはふさわしい職に就き、楽しく明るい人生を送ることになる」と明言した。
 プーチン首相は旧ソ連国家保安委員会(KGB)の出身。裏切りによってスパイ網が発覚したが、裏切り者の名は分かっていると述べ、「(裏切り者は)酒か薬物におぼれてみじめな末路をたどるのが常だ」とした。
 スパイ生活の厳しさについては「外国語を自国語として習得し、その言葉で考えたり話したりし、外交特権を与えられることなく長年にわたり本国の利益のために職務を遂行しなければならない」と述べた。
 ロシアのスパイとされた10人は今月米国で開かれた公判で、全員が外国の工作員として登録していなかった罪を認め、国外追放を命じられた。ホルダー米司法長官によれば、10人とも機密情報を受け渡していた事実は認められなかったため、スパイ罪での摘発は見送った。その後、米ロのスパイ交換により、西側の情報機関と接触していたとしてロシアで服役中だった4人との交換が行われた。

◎モスクワで36.7度、7月では130年間の観測史上最高(2010年7月25日、産経新聞)
 タス通信によると、記録的猛暑が続くモスクワで24日、午後の気温が36.7度に達し、7月としては130年間の観測史上で最高を記録した。
 これまでの7月の最高気温は1936年の36.5度だった。
 ロシアでは上空に居座る高気圧の影響で6月から猛暑に見舞われ、干ばつや森林火災などの被害が広がっている。

◎世界の気象が変だ、ロシアで熱波・南米では寒波(2010年7月25日、朝日新聞)
 連日猛暑の日本。だが、世界に目をやると、各地を異常気象が襲っている。ロシアは記録的な暑さに見舞われ、中国は大雨続き。一方、季節が逆の南米では寒波が猛威をふるい、各地で多くの死者が出ている。原因の一つは上空で吹く偏西風の異変とされる。
 ロシアは西部やシベリアを中心に猛暑となり、同国気象庁によると、1日の平均気温が平年より9~10度も高い状態が長く続き、「130年の観測史上最も暑い年になる」(フロロフ同庁長官)。緊急事態省によると、水死者は全土で昨年より倍増、6月は1244人、7月も891人に達し、計2千人を超えた。干ばつや自然火災で26の連邦構成体が非常事態を宣言した。
 モスクワはここ連日、最高気温が33~35度台を記録し、24日には36.7度に。クレムリン恒例の護衛交代式典が「参加者や観客の安全のため」中止された。エアコンが品切れ状態になり、救急車の出動要請も1日8千~1万回と通常の倍近くに増え、エアコンのない地下鉄で乗客の死者も出た。郊外の泥炭地が自然発火して煙が舞い、異臭とともに市中心部に迫っている。
 干ばつ被害も広がり、小麦輸出大国のカナダやカザフスタン、欧州連合(EU)での被害とも相まって、小麦の国際価格は20%ほど上昇した。
 中国南部では6月中旬から続く大雨で、7月23日現在で742人が死亡、367人が行方不明となっている。世界最大の三峡ダムは過去最多の水が流れ込み、長江は1987年以来で最大規模の洪水被害が出ている。被災者は約1億2千万人、倒壊した家屋は約67万軒に上っている。
 福建、湖北、河南などの各省では、例年の3割増から2倍の降水量が続いている。水利省によると、約230の河川で警戒水位を超えており、六つの小型ダムが決壊した。2009年に完成したばかりの三峡ダムの23日の水位は159メートルで過去最高となり、満水時の175メートルにじわじわと近づいている。約100万人が避難生活を強いられている。
 広東省には台風が上陸し、北上する見込みで、被害が拡大する恐れがある。北部の遼寧、吉林両省でも21日ごろから、94年以来、最大の大雨が降り始めており、全国的に被害が広がりつつある。
 一方、冬の南半球。南米各地では、寒波で少なくとも200人以上の死者が出ている。
 ボリビアでは過去に降雪記録がない地域で雪が降り、チリでは各地で吹雪による停電で交通が止まり、町が孤立した。アルゼンチンでは寒さで少なくとも14人が死亡、ホームレスの人を屋内に収容するなどの対策に追われ、ガス需要が増えたため炭で料理するレストランもあるという。ペルーでも、標高3千メートル以上の地域で零下24度を記録し、政府が緊急事態宣言を出した。
 ブラジル西部の州では寒さで家畜2万7千頭が死に、損害額は400万レアル(約2億円)に上ったという。
 こうした熱波や寒波は、偏西風の異変がもたらしている。西から東に向かって地球を一周して吹いているが、気象庁によると、北半球では7月から南北に大きくうねる状態が続いている。
 ヨーロッパ東部からロシア西部、シベリア東部の地域では、北極寄りに大きく波打ち、その内側に、大気の下層から上層にまで及ぶ「背の高い高気圧」が発生。暖かい空気を吐き出して一帯の気温を上昇させている。日本付近でも太平洋高気圧の勢力を強め、梅雨明け以降の連日の猛暑を招いている。
 南米の大寒波も南半球の偏西風が原因だ。当初、南極側に蛇行していた風が逆に赤道側に波打ったため、低気圧ができて南極からの冷たい空気が引き込まれたとみられる。
 一方、中国の大雨は、インド洋の水温が関係しているとの見方がある。東京大の山形俊男教授(気候力学)によると、インド洋はここ50年で水温が0.6度上昇。今春までエルニーニョ現象が太平洋中央部の赤道近くで続いた影響でさらに水温が上がり、活発な上昇気流ができた。その気流がフィリピン近海に下降して高気圧を生んだ。暖かく湿った風が中国南部から日本の九州付近に停滞していた梅雨前線に大量の水蒸気を送り込み、豪雨をもたらしたという。

◎猛暑ロシア、干ばつ広がる、小麦の国際価格、20%上昇(2010年7月21日、朝日新聞)
 猛暑が続くロシアで干ばつ広がり、全土の3割近い26の地域が非常事態を宣言、ロシア政府によると穀物の作付面積の2割が深刻な打撃を受けている。世界有数の小麦輸出国ロシアからの輸出量が減る可能性が高まり、国際市場の小麦価格はすでに上がり始めている。国内では食品価格高騰などインフレへの懸念が強まっている。
 緊急事態省によると、シベリアやウラル、ボルガ川沿岸などで干ばつ被害や自然火災が広がっている。農業省のまとめでは、穀物の作付面積4800万ヘクタールのうち960万ヘクタールが干ばつで壊滅。スクリンニク農相は12日、今年の小麦生産の予想を9500万トンから8500万トン以下に下方修正すると述べた。
 その後も記録的な猛暑が続き、ロシア農工業連盟は、今年の小麦収穫は前年比約2割減になると予測している。保険業界は損失を10億ドル(約900億円)と見込んでいるが、その倍になるとの見方もある。ロシアの独立新聞などによると、米シカゴの穀物市場の小麦価格はここ2週間で23%上昇。ロンドン市場でも7月に入って20%上昇しているという。
 ロシア国内の穀物消費量は年間7500万トンとされ、今年の生産がこの水準を割り込んだ場合、輸出を維持するには備蓄分(約2400万トン)を回すしかない。しかし、備蓄の3分の1以上は内陸部のシベリアにあり、輸送コストがかかるなど難点も多い。
 小麦価格の上昇はパンの値上がりにとどまらず、穀物飼料の上昇で肉や牛乳など他の食品価格の値上がりに連鎖するため、インフレが懸念されている。今後、こうした食料価格が10~20%上昇するとの専門家の予測も出ている。
 今年の記録的な猛暑に伴い、ロシアでは水死者が急増。ノーボスチ通信が緊急事態省のまとめとして報じたところでは、6、7月に全土で計約1900人が水死した。

◎モスクワ「史上最も暑い7月」、涼求め水死、110人に(2010年7月19日、朝日新聞)
 モスクワで連日、記録的な猛暑が続き、「130年の観測史上最も暑い7月になりそう」(リャホフ・モスクワ地方気象台所長)な勢いだ。17日には、この日としては過去最高の35度を記録。今週末には38度まで上がると予報されている。レールの膨張で地下鉄が一時止まったほか、19日には熱で発火した郊外の泥炭地からの煙がモスクワ南部や東部を覆った。
 モスクワの7月の平均最高気温は24度。高気温は6月から続き、涼を求めた末の水死者は110人に達し、今月17日だけで11人が死亡した。
 日中の外出を控える人が増え、モスクワ名物の渋滞はやや解消されている。一方で、猛暑で気が荒くなったヘビにかまれる事故が増えたという。モスクワでは家やオフィスの水槽で魚類を飼うのが人気だが、インタファクス通信は専門家の話として、約80万あるとされる水槽の7分の1で、水温が上がりすぎて魚が死ぬなどの被害が出ていると伝えた。

◎帰国スパイ、露が生活費確約、米と交換後(2010年7月11日、読売新聞)
 米露が9日行った、東西冷戦終結後最大規模のスパイ交換は、米国主導で描かれた綿密な筋書きに沿って進められていた内幕が明らかになった。
 米国によるスパイ団摘発が米露関係を損ねることを恐れたオバマ大統領の意向を強く反映した措置とされる。
 AP通信など米主要メディアによると、オバマ大統領が米国内で活動する露スパイ10人の存在について知らされたのは6月11日。司法省や連邦捜査局(FBI)は、一部が近く出国することを察知し、10年にわたったスパイ団への監視を急きょ切り上げ、一斉逮捕に踏み切る準備を進めていることを説明した。
 司法省やFBI高官は、米露関係への影響を最小限に抑えたい大統領の意向をくんで、スパイ団を米国に長期拘束せず、露国内で長期収監されている米国のスパイを釈放させる取引材料とする「スパイ交換」を提案した。欧米に重要な露機密情報を提供したとされるアレクサンドル・ザポロジスキー元露対外情報局(SVR)大佐らは監獄での健康悪化も伝えられ、救出を急務と見なしていた。
 大統領のゴーサインを得た司法省は6月27日に10人を逮捕。30日、中央情報局(CIA)はスパイ交換をSVRに打診し、SVRは2日後に交換に応じると回答した。パネッタCIA長官とフラトコフSVR長官との計3回の電話協議を経て、7月3日に交換の詳細が合意に至った。
 合意内容の一部は、スパイ団が8日に国外追放処分を言い渡されたニューヨーク連邦地裁の法廷でも明らかにされ、ロシア政府がスパイたちに帰国後、住宅や月額2000ドルの生活費を一生支給することを確約していたことも判明した。米国内に残されていた一部のスパイの子供も9日までにロシアに送り返された。

◎米露スパイ交換、「大物二重スパイ」も放出(2010年7月10日、読売新聞)
 米司法当局が男女10人をロシアのスパイとして逮捕した事件で、米露両政府が8日、冷戦終結後初めてとなるスパイ交換で合意し事態の幕引きを図ったのは、米露が新核軍縮条約への署名に代表される関係緊密化の機運の維持を最優先したためだ。
 しかし、米当局による10人の拘束期間は10日余り。「米露協調」のかけ声に押され、米国内の露スパイ網の全容解明がなおざりにされたのでは、との懸念が残る結末となった。
 英メディアなどによると、米国で国外退去処分を受けた10人は9日夕、露非常事態省の航空機でモスクワの空港に到着。また、ロシア側の4人を乗せた米国機も同日午後、英中部の空軍基地に到着した。
 10人が逮捕されたのは、ワシントンでオバマ大統領とメドベージェフ露大統領が会談し、「両国関係の強化」をうたった3日後の6月27日。米政府高官は、「(スパイのうち)1人が出国を図ったのを察知し、一斉逮捕に踏み切った」と説明した。
 10人が露対外情報庁(SVR)から指令されていた主要任務である「米政策担当者との関係構築および機密情報の入手」をどこまで進めていたのか全容をつかむ前に、見切り逮捕せざるを得なかった可能性もあるということだ。
 同高官はまた、「ロシア政府とは、一緒に達成すべき多くの課題がある。オバマ大統領による新たな対露姿勢は、我が国の戦略的な国益を増進させる」と強調し、今回の合意が「外交主導」の政治判断の産物であることを隠さなかった。
 一方、別の米政府高官は、10人を早々に露側に引き渡した理由について、「これ以上拘束しても新たな成果はない」と述べ、スパイ団が重要な国家機密の入手に至っていなかったことを示唆したが、せっかく捕らえたのに徹底的に尋問もせず釈放してしまったのは、諜報専門家の間から疑問の声も出ている。
 米国とは対照的に、ロシアが今回の交換合意に基づき釈放した4人は、5~11年もの間、露国内の刑務所に収監されていた。その中には、アレクサンドル・ザポロジスキー元SVR大佐も含まれる。
 同大佐は、オルドリッチ・エイムズ元中央情報局(CIA)対ソ連防諜部長(1994年逮捕)やロバート・ハンセン元連邦捜査局(FBI)特別捜査官(2001年逮捕)など、米政府内で活動するスパイの存在を米側に通報したとされる「大物二重スパイ」だ。既に徹底的な尋問を受けて情報を搾り取られているのは確実。露側としては利用価値のなくなった人物を取引材料として放出したに過ぎない。
 米高官は今回の摘発を、「今後、米国で同様の活動を企図する他国政府への警告としたい」と述べたが、仮に逮捕されても国外追放されるだけとの印象を与えれば、防諜対策上、逆効果ともなりかねない。

◎スパイ交換、引き渡された2人が米に到着(2010年7月10日、読売新聞)
 米国とロシア間で9日行われたスパイ交換で、ロシア政府が釈放したスパイを乗せたとみられる旅客機が9日夕(日本時間10日朝)、ワシントン郊外のダレス国際空港に到着した。
 複数の米メディアによると、ウィーンで米側に引き渡された4人のうち2人は英国で降り、米国に到着したのはアレクサンドル・ザポロジスキー元露対外情報局(SVR)大佐ら2人。
 一方、AP通信はオバマ政権高官の話として、ホワイトハウスが今年2月の段階でロシアのスパイ団に関する報告を受けていたと報じた。司法省と連邦捜査局(FBI)は6月初旬にスパイの一部が出国しようとしていることを察知して摘発を決め、6月11日にオバマ大統領と協議した際にスパイ交換を提案して了承を得たという。
 司法省は27日にスパイ団を逮捕。その後、パネッタ中央情報局(CIA)長官が露SVRに対し、露側が収監中のスパイ4人との交換を持ちかけたという。

◎露スパイ10人の任務「ネットで誰でもできる」(2010年7月9日、読売新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は、服役中の西側スパイ4人に特赦を与えたことが9日明らかになった。
 露側の釈放が4人にとどまったのは、米国が拘束したロシア人スパイ10人が「極秘情報に近づいてさえいなかった」(露紙)証左などと受け止められている。
 今回の交換条件について、露元情報機関幹部は9日、本紙に対し、「米連邦捜査局(FBI)が今回拘束した10人の脅威を誇張していたことが裏付けられた」と語った。ロシアでは、10人の任務は「インターネットで調べれば誰でもできるもの」(英字紙モスクワ・タイムズ)との見方も強い。
 事件が米側の策略だとの見方も根強く、9日発表された調査機関「レバダ・センター」の世論調査では、53%が「米露関係を傷つけようとする米情報機関の挑発」であると回答。拘束された10人が「本物のスパイ」だと答えたのは10%に過ぎなかった。

◎ロシア:米国とスパイ交換準備、逮捕の1人と服役囚を(2010年7月8日、毎日新聞)
 米司法当局が先月、ロシア人10人をスパイ容疑で逮捕した事件で、米露両国の間で、逮捕したスパイを交換する動きが浮上している。ロイター通信などによると、露政府は、米中央情報局(CIA)のスパイとして露国内で服役している科学者の身柄を海外へ移す代わりに、米当局に逮捕された容疑者のうち1人を引き取る準備を進めているという。
 この科学者はイーゴリ・スチャーギンというロシア人の原子力問題の専門家。99年にCIA関連企業へ機密情報を漏らした国家反逆罪で起訴され、04年に懲役15年の判決を受けた。ロシア北部アルハンゲリスク州で服役していたが、今月5日にモスクワの刑務所へ移され、近くウィーン経由でロンドンへの移送を告げられたという。
 服役囚の弁護士は、ロシア側が米国との「交換要員」を用意しているとの見解を示し、服役囚の家族も身柄交換の準備が進んでいることを認めた。
 米露はこの1年間に進めてきた関係改善の動きを重視し、スパイ交換を通して、早期の事態収拾を模索している模様だ。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)も、米司法当局が容疑者の罪状を軽減し、容疑を認めさせた上でロシア側へ引き渡すなどの解決策を検討していると報じた。

◎米露がスパイ交換? B級スパイ映画さながら(2010年7月8日、産経新聞)
 ロシアのスパイ11人が米司法当局に訴追された事件で、ロシアで米国のスパイとして収監されている受刑者らとの交換が行われるのではないかとの見方が強まっている。ロシアのスパイ摘発で、冷戦時代を彷彿させる古典的な情報収集活動が世間を驚かせたが、今度はスパイ交換という“超法規的措置”で幕引きを図る「B級スパイ映画」(米紙ワシントン・ポスト)のような展開に、米国内での関心は高まるばかりだ。
 スパイ交換説が浮上したきっかけは、バージニア州アーリントンで米連邦捜査局(FBI)に逮捕、アレクサンドリア連邦地裁に訴追された3被告の公判前審理が7日、突然中止されたことだ。
 同地裁判事は3被告を、5被告が訴追されているニューヨークの連邦地裁に移送する決定を下した。ボストンで逮捕された他の2被告も、同じニューヨークの連邦地裁に身柄を移されることになり、逃亡中のカナダ国籍のメトソス被告(55)以外の10被告が同地裁に集められ、一部被告の本格審理が始まった。
 確かに事件の性格上、同一裁判所で審理した方が公判はスムーズに進む。しかし、司法当局の措置が突然だったことから「スパイを交換するためではないか」との憶測を呼んだ。
 これに拍車をかけたのが、7日の米政府高官の言動と、スパイ罪でロシアで服役中の受刑者周辺の動きだ。
 国務省のバーンズ国務次官は7日、キスリャク駐米ロシア大使と会談した。この会談で、スパイ交換などが議題になったかどうか記者団に聞かれた国務省のトナー報道官は「スパイ事件が主な議題ではないが、当然話し合われたと思う」と含みを持たせた。
 逆にホワイトハウスのギブズ大統領報道官は7日の記者会見で「何も情報がない。司法省に聞いてくれないか」と述べるだけで、歯切れが悪い。7日の時点で米政府高官のだれも明確に否定していない点も、スパイ交換説に現実味を持たせている。
 極め付きは、ロシアで服役中の受刑者の弁護士や家族の話だ。
 報道によれば、米国のスパイとして収監されている軍備管理・核兵器の専門家、イゴール・スチャーギン受刑者(45)の弁護士は「スチャーギン受刑者は5日、服役中の地方刑務所からモスクワ市内の刑務所に身柄を移された」と証言した。
 弁護士の話では、両親から7日朝に電話があり、両親は「米国で逮捕されたロシアのスパイ10人と『10対10』で交換することを示す文書に署名させられたと息子が話していた」と語ったという。
 人による情報収集に加え、現代はコンピューターへの侵入や偵察衛星、ハイテク機器による通信傍受などの情報収集が主流だ。こうした中で、冷戦時代さながらのスパイ摘発に続き、「スパイ交換」が果たしてあるのかどうか-。

◎露「美人スパイ」大人気、米大衆紙アイドル扱い(2010年7月8日、読売新聞)
 米司法当局が先月、ロシアのスパイとして逮捕した男女10人は、ロシア対外情報局から「十分にアメリカ的になれ」との指令を受けて米国で暮らしていた。
 「普通の隣人が実はスパイ」「しかも美人」――好奇心をかき立てる舞台と配役に夢中な人々は、安全保障論議などそっちのけだ。
 ニューヨークで不動産業に携わっていた女性スパイ、アンナ・チャプマン容疑者(28)は、「赤毛のスパイ」として、もはやアイドル並みの人気ぶりだ。米タブロイド紙は連日、同容疑者の写真を満載、5日付のニューヨーク・ポスト紙はついに、ヌード写真を1面に掲載した。見出しは、映画007シリーズから拝借して、「ロシアより愛をこめて」。記事では、英国人の元夫の証言に基づく夫婦生活を報じた。
 「子連れスパイ」として有名になったリチャード・マーフィー容疑者の自宅はニューヨークの西約25キロ、ニュージャージー州モントクレアの閑静な住宅地にある。ここで妻役のスパイ、小学生の娘2人と共に暮らしていた。
 近所を訪ねると、妻と付き合いがあったというメアリー・チャレクさん(56)は、「ベルギー人だと言っていたが、ロシア人だったとは」と話した。妻は休日のたびに娘と庭いじりを楽しんでいたという。
 向かいに住むクリス・デラニーさん(38)は「父親が毎日、娘をスクールバスの停留所まで送り迎えしていた」と言う。隣人たちの話題もまた、「普通の隣人」への驚きだった。

◎米ロ、スパイ交換で手打ちか、逮捕者返還・服役者に恩赦(2010年7月8日、朝日新聞)
 米連邦捜査局(FBI)がロシアのスパイとして男女10人を逮捕した事件をめぐり、ロシアと米国が「スパイ交換」という形で手打ちをする可能性が出てきた。ロシアの通信社ロスバルトは7日、米英に情報を流したスパイ罪に問われてロシアで服役中の軍事専門家ら3人が釈放され、米で逮捕された10人と交換されるとの見通しを伝えた。米政府当局者が米ロの取引について認めたとの報道もある。
 インタファクス通信によると、米中央情報局(CIA)関係の英企業にロシアの国家機密を漏らしたとして2004年に懲役15年の実刑判決を受けた米国カナダ研究所の軍事専門家スチャーギン氏の弁護士は7日、同氏が交換要員の1人に含まれる可能性を明らかにした。
 さらに通信社ロスバルトはスチャーギン氏に加え、英情報局秘密情報部(MI6)に情報を渡していたとして06年に懲役13年の実刑判決を受けたロシア軍参謀本部情報総局(GRU)のスクリパリ元大佐と、さらにもう1人のスパイ罪受刑者が、近くロシア大統領の恩赦を受けてウィーンに向かうとの見通しを報道。いずれもスチャーギン氏の親族からの情報としている。
 また、米国メディアが非公式情報として、オバマ政権が取引について検討し、今回の逮捕者が罪を認めればロシアに返すとしているほか、米国は交換人数を同数にしたい意向とも伝えられている。
 男女10人の逮捕は米司法省が先月28日に発表し、ロシア出身の女性実業家アンナ・チャップマン容疑者(28)の写真が多数出回るなど報道は過熱。1990年代からロシア連邦対外情報局(SVR)の指示で米国民を装い、核兵器開発に携わる米政府職員らに接触するなどしたとされた。
 米ロ関係の「リセット」が進む中、メドベージェフ大統領が米国公式訪問を終えた直後の逮捕発表だっただけに政治的思惑も指摘されたが、その後は米ロ両政権とも抑制的な対応を見せていたため、それがまた憶測を呼んでいた。
 一方、米ホワイトハウスのギブズ報道官は7日、「スパイ交換」について「何も言うことはない。法的な問題なので司法省に聞いてほしい」と述べた。
 米検察当局は7日、逮捕された10人と、逃亡中の1人についてスパイ罪で起訴した。うち9人についてはマネーロンダリング(資金洗浄)の共謀に問われている。

◎“美しすぎる女スパイ”ら11人起訴(2010年7月8日、スポーツニッポン)
 米ニューヨーク連邦地検は7日、ロシアのスパイとして活動していたとして逮捕した10人と、逃亡中の1人の男女計11人を起訴した。適用罪名は「米司法長官への事前告知なしに外国政府機関員として活動しようとした共謀」で、うち9人は「マネーロンダリング(資金洗浄)の共謀」にも問われている。連邦地検が発表した。
 起訴状などによると、11人は1990年代ごろからニューヨークなどでロシア政府の情報員として活動。ロシア国連代表部関係者らから活動資金を受け取り、核兵器研究関連の米政府職員と会うなどした。「美ぼうの女スパイ」としてメディアの注目を集めているアンナ・チャップマン被告(28)は、マンハッタンのカフェなどで無線LANを使いロシア政府職員にデータを送信した。
 地中海の島国キプロスで拘束後、保釈中に失踪したクリストファー・メトソス被告は、現在も逃走中。

◎「東西情報機関の冷戦は終わらない」旧ソ連軍スパイが証言(2010年7月6日、読売新聞)
 米連邦捜査局(FBI)がロシアの非合法スパイ11人を訴追した事件で、英国在住の元ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)特務担当官、ボリス・ウォロダースキー氏(55)が産経新聞の取材に対し、「旧ソ連時代も含めて米国で活動する非合法スパイは最高でも5人程度。11人というのは非常に多く、かなりの数の情報網が構築されていたとみられる」と語った。
 同氏によると、ロシアのスパイは(1)大使館・領事館の外交官、貿易代表団、特派員の身分を持つ合法スパイ(2)外交特権に守られていない非合法スパイ-に二分される。対外情報を担当した旧ソ連国家保安委員会(KGB)第一総局の後継機関ロシア対外情報庁(SVR)か、GRUの指揮下に置かれるという。
 訴追された11人はSVRが組織した非合法スパイ。合法スパイはFBIや中央情報局(CIA)に監視されているため、政府中枢や科学者らの情報源には非合法スパイが接触し、それぞれ合法スパイに連絡する仕組みになっているという。
 「美しすぎるロシアの女性スパイ」と話題をまいたアンナ・チャップマン被告(28)は2001年から5年間、ロンドンで暮らした。同氏は「米国に行く前にカナダや英国で暮らし生活習慣や英語を覚えるのは旧ソ連時代から80年以上続く非合法スパイの養成法」と解説。同被告が英国人と結婚したのは米国で活動しやすいよう英旅券を取るためだとの見方を示した。
 離婚後、いったんロシアに帰国した同被告は連絡方法やコンピューター操作の特別訓練を受け今年2月、米国に入国。ロシアの基金から支給された助成金を元手に会社を起業した。決められた数分だけ開くコンピューターネットワークを通じて、在ニューヨーク国連政府代表部の合法スパイと連絡を取り合っていた。
 同氏は「彼女ほどの美貌があれば米国の支配階級に食い込むのは容易だっただろう。冷戦は終わったかもしれないが、東西情報機関の冷戦は終わらない。他国の軍事、産業、経済の機密を入手する必要性は変わらないし、スパイの役割もなくならない」と話した。

◎ロ極東で難民受け入れ演習、北朝鮮からの流入想定(2010年7月5日、産経新聞)
 ロシアの非常事態省と国境警備局などは5日までに、北朝鮮や中国と国境を接するロシア極東沿海地方ハサン地区で近隣国からの難民受け入れに備えた演習を実施した。難民の出身国は特定していないが、朝鮮半島の情勢変化に伴う近隣国からの難民流入を想定した訓練という。同省当局者が5日、共同通信に明らかにした。
 ロシア極東、シベリアの各地で行われている大規模軍事演習「ボストーク2010」の一環として3日と4日に実施。難民がロシア領内に流入する事態に備え、臨時の収容施設となるテントの設営や医療検査などの演習を行った。参加者数は不明。
 ロシア政府は北朝鮮や中国など隣国との外交関係に影響を及ぼすとして、今回の演習実施を発表していないが、ソ連崩壊後に沿海地方で同様の演習が数回行われているという。

◎シベリア開発、露が意欲、日中韓の投資活用(2010年7月5日、読売新聞)
 壮大な構想が打ち出されては挫折する歴史を繰り返してきたロシア政府の極東・シベリア開発戦略に、現実の成果が出る兆しが見えてきた。
 ウラジオストク開港150年を迎えた今年、ロシアは、日本、中国、韓国から資金と先端技術を呼び込み、景気低迷が続く広大な地域で経済発展を図る青写真を描いている。

・成長センター
 「ウラジオストクがこれから毎年、毎日、いや毎時間ごとに発展していくことを望む」。メドベージェフ大統領は3日夜、市内のスタジアムで開かれた開港記念式典で、ロックスターのような手ぶりを交えながら極東・シベリア発展への並々ならぬ意欲を示した。成功のカギは、今や世界の成長センターになった東アジアと一体化することだ。
 ウラジオストク近郊の軍需産業都市ボリショイ・カーメニでは近く、石油や液化天然ガス(LNG)輸送用タンカーの造船事業が始まる。今はもっぱら原子力潜水艦補修を手がけるズベズダ造船所のアンドレイ・ラソマヒン所長は、「燃料タンカーという一部門で世界チャンピオンになる」と語った。韓国大手・大宇造船海洋の出資と、ガスプロムなど国策企業からの受注を頼みに、日中韓3か国が支配する造船市場に参入する。
 ウラジオストクでは昨年末、露ソラーズ社による極東初の自動車組み立て工場が稼働した。政府の「輸送費無料化」という極東優遇策を利用し、韓国・双竜ブランドの車をシベリア鉄道でモスクワに売り込む。
 中国との共同事業も目立つ。露地方開発省は6月、総額2000億ルーブル(約6000億円)の中露国境協力事業を決定した。中国の支援で社会資本整備や農林業産品の製品化を進めるもので、2004年まで領有権を争った大ウスリー島(中国名・黒瞎子島)の観光地化も決まった。
 露金融大手でシベリア資源開発にも携わるメトロポール社のミハイル・スリペンチュク社長は、「極東・シベリア開発は本格始動した。日本企業は最も効率的な投資家であり、社会資本事業などで重要な役割を演じると確信する」と話した。

・モスクワ不信
 地元住民の多くは懐疑論を口にした。09年に政府が突然実施した輸入関税引き上げで、日本からの中古車輸入事業が台無しになったというゴロドフ・ビクトロビッチさんは、「政府には何の期待も持っていない」と言い切った。10年に1度、大開発構想が示されながら何も実現しなかった末の「モスクワ不信」には、抜きがたいものがある。
 07年にプーチン大統領(当時)は、12年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議ウラジオストク開催に向け、連邦政府主体で7000億ルーブル(2兆円超)を投じる計画を策定した。最近は、それが現実に動き始め、地元でも「巨大な橋の建設などが目の前で進むのを見て、ようやく『ひょっとすると今回は』という雰囲気が出てきた」(外交筋)という。

・極東・シベリア開発
 帝政ロシアは1860年、北京条約で清国から沿海州一帯を獲得、東方政策の拠点とした。中心都市・ウラジオストクの名は「東方を征服せよ」というロシア語に由来する。ソ連のゴルバチョフ書記長(当時)は1986年、ウラジオストク演説でアジア太平洋諸国との協力による極東再生を打ち出したが失敗。エリツィン大統領(同)の「極東ザバイカル長期発展計画」(96年)も失敗した。結果として、極東・東シベリアでは過去20年間で人口が4分の3に減少する窮状となっている。

◎ロシア:元石油王横領裁判、摘発時の閣僚、法廷で擁護証言(2010年7月4日、毎日新聞)
 ロシアでかつて「石油王」と呼ばれた人物に対する横領事件の刑事裁判が先月、モスクワで開かれた。元石油王は既に別の刑事事件で服役中だが、一連の事件はプーチン大統領(現首相)時代、元石油王が野党を支援してプーチン氏に反抗したことへの「政治弾圧」とみられてきた。だが、今回の法廷では当時の閣僚ら2人が元石油王を擁護する発言をし、憶測を呼んでいる。
 被告は、ロシアの旧石油大手ユコスのミハイル・ホドルコフスキー元社長(47)。下院選挙に向け野党を支援していた03年に脱税と横領容疑で逮捕。05年に懲役8年の実刑を受け、シベリアの刑務所に送られた。
 今回の裁判は、「社長時代に3億5000万トンの石油を横領した」としてプーチン大統領時代に摘発、昨年起訴された事件を巡るものだ。来年に刑期を終えて自由になるのを阻止する狙いの「出来レースのような裁判」とみられていた。
 先月21日の法廷で擁護の証言をしたのは、国内最大の政府系商業銀行「ロシア貯蓄銀行」のグレフ頭取(プーチン政権時代の00~07年に経済発展貿易相)。「大規模な横領があったなら私自身が知っていたはずだ」と言い切った。翌22日には、現閣僚のフリステンコ産業貿易相が、「そのような規模の石油抜き取りは聞いたことがない」と述べた。
 元社長側が今回求めた証人出廷で、応じたのはこの2人だけ。弁護人は「無罪主張を裏付ける重要な証言」と評価したが、一方で有罪判決は揺るがないとの見方が一般的で、最長で22年6月の追加的な懲役が言い渡される可能性があるという。
 08年にプーチン政権を引き継いだメドベージェフ大統領は「司法改革」を公約している。このためグレフ氏らがメドベージェフ氏の意向を受け、元社長を擁護することで、西側諸国に改革推進をアピールしたのでは、との憶測が流れた。
 また、「(有罪が決まった裁判に)正統性を与える目的に過ぎない」(反政府市民連合「連帯」の指導者ネムツォフ元副首相)との冷ややかな観測もある。

◎人肉を食らいケバブ屋に売ったロシアの猟奇殺人(2010年7月3日、産経新聞)
 殺した男の肉を食い、その残りを肉料理店に売り払った-。そんな猟奇的な殺人事件がロシアで発生し、逮捕された男らが有罪判決を受けた。人肉食いに加え、その残りの肉が市民の口に入った可能性があるという考えがたい事件は、ロシア社会のみならず海外にも大きな衝撃を与えている。
 事件が起きたのは、ウラル山脈にほど近いロシア中部の都市ペルミの郊外。バス停近くの林のなかで、男性の遺体の“残骸”が発見された。
 警察は昨年11月に容疑者として3人のホームレスの男たちを逮捕した。ホームレスらは2人が30代、1人が50代で、いずれも犯罪歴があったという。殺害がいつ行われたかについては明らかにされていないが、殺されたのは25歳の男性で、犯人らは男性に対し「個人的な恨みがあった」という。
 人々が耳目を疑ったのは、殺害後の行動だ。現地紙などによると、犯人らはまず男性をまずナイフで刺し、ハンマーで殴り殺した。その後、殺された男性の肉の一部を食べ、残りの肉を街角でケバブや肉詰めのパイを販売していた街中の店に売り払ったのだという。
 ケバブはミンチにした羊の肉などをくしに巻いて焼き上げ、野菜やパンとともに食べる料理だ。その手軽さが受け日本や欧米でも人気があるが、ロシアでも大衆料理として幅広く食べられている。
 露紙コムソモルスカヤ・プラウダによると、犯人が店に持ち込んだ人肉は4キロとされる。警察がその店舗を調べた時点で人肉は残っていなかったというが、豪州紙ヘラルド・サンによると、事件を担当したセルゲイ・モルチャノフ捜査官は「男性の肉はすでに販売されたか、食べられてしまった模様だ」と述べたという。
 ロシアの裁判所は6月23日、2人に懲役18年、1人に懲役13年の有罪判決を下した。刑期が短い1人は殺人のみに関与し、残りの2人は“死人の体に対する侮辱”の罪が加わり、刑期がより長くなった。
 ただ、人肉を食べた事件はロシアだけで起きているわけではない。最近では07年1月にフランスの刑務所で男が同じ独房囚を絞め殺し、その肺を切り取り“タマネギと一緒に炒めて”食べたという信じられない事件が発生している。犯人の男に対してはロシアの事件の判決が下された翌日の6月24日、フランスの裁判所で懲役30年の実刑判決が下されている。

◎露スパイ、1人が容疑認める(2010年7月2日、産経新聞)
 米CNNテレビ(電子版)によると、米連邦捜査局(FBI)にロシアの工作員として訴追された男女11人のうち、男1人がスパイ行為を認めていることが1日、連邦検察が裁判所に提出した供述書で分かった。
 容疑を認めたのはフアン・ラザロ容疑者。CNNが入手した供述書によると、同容疑者は(1)ニューヨーク州にある自宅の購入費用はロシア対外情報局(SVR、旧KGB)が負担(2)ラザロは偽名(3)自分がウルグアイ生まれというのは事実と異なる(4)息子は大切だが、それ以上に情報局への忠誠が重要-と語った。
 同容疑者の妻(訴追済み)も、夫の代わりにSVR工作員に文書を手渡すなどの役割を果たしたという。
 同容疑者は1日、ニューヨークの連邦裁判所で開かれた保釈をめぐる審理に出廷した。

◎スパイ逮捕で露「反オバマ勢力の仕掛け」、なお対米批判は抑制(2010年6月30日、産経新聞)
 メドベージェフ露大統領の訪米からの帰国直後にロシアのスパイ団逮捕が発表されたことについて、ロシアでは、オバマ米大統領の対露融和政策に反発する“タカ派”が仕掛けたスキャンダルだとする見方が強まっている。露外務省は6月29日、米国の発表に対し、「根拠がなく、よからぬ目的を追求するものだ」と激しく非難した。
 露科学アカデミー米カナダ研究所のクレメニュク副所長は30日付独立新聞に「米国は全体として、まだオバマ大統領ほど対露関係改善に前向きでない」とし、「これまでの合意事項は凍結されるだろう。両国関係はとてももろい」と事件の影響に懸念を示した。
 メドベージェフ大統領は就任以来、経済の「近代化」を最優先課題に掲げ、プーチン首相(前大統領)との差別化を図ってきた。欧米接近を進めてきた背景にも、外交を外資誘致や技術移転など自国の「近代化」につなげるべきだとの方針がある。今回の摘発劇はそうした大統領の顔に泥を塗った形であり、ロシア国内でもメドベージェフ路線に反発する守旧派が勢いづく可能性がある。
 「ちょうど良い時に来た。お宅では警察が好き放題にやり、人々を投獄している」。旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身のプーチン首相は29日、モスクワを訪れたクリントン元米大統領との会談でこう述べ、クリントン氏の爆笑を買った。プーチン氏は「でも、それは仕事だ。米露関係に影響がないことを期待している」と続けた。
 KGBの後継機関、対外情報局(SVR)は各国大使館に「外交官」として多数の諜報(ちょうほう)員を送り込んでいる。今回、逮捕されたのは配下のエージェントで、外交官の追放などには至っていない。情報筋には、プーチン首相がこうした事情を踏まえて批判を抑えているとの見方がある。

◎スパイ事件、米露関係に暗い影、ナゾ残る逮捕のタイミング(2010年6月30日、産経新聞)
 ロシアのスパイ11人が米連邦捜査局(FBI)に逮捕された事件は、米露両首脳が親密ぶりを演出する裏で、冷戦時代さながらのスパイ活動がいまなお行われていることを浮き彫りにした。特に、強制捜査が訪米したメドベージェフ大統領の帰国直後だっただけに、露側は顔に泥を塗られた格好だ。「リセット」(オバマ大統領)したはずの今後の米露関係に暗い影を落としそうだ。
 「(今回の事件を)オバマ大統領には十分かつ適切に伝えた。司法省は適切に法を執行した」。ギブズ米大統領報道官は6月29日の記者会見でこう強調し、大統領に捜査を事前報告していたことを明らかにした。
 ただ、強制捜査が首脳会談3日後の27日であることをホワイトハウスが正確に把握し、大統領に伝えていたかどうかは不明だ。米当局者の一人は、「オバマ大統領はこのタイミングでの強制捜査に不快感を持っていた」と証言する。
 米紙ニューヨーク・タイムズによると、米政府当局者は強制捜査に踏み切った理由について「容疑者のうち1人が27日に第3国経由でロシアに向けて出国し、米国に戻らないことが判明したためだ」と語った。司法省のボイド報道官は逮捕時期をめぐり「さまざまな検討」があったことを認めており、政治的判断が働いた可能性を示唆した。
 29日にキプロスで逮捕された容疑者以外の10人はカップルで、うち4組が夫婦。ニュージャージー州で捕まった自称リチャード・マーフィーとシンシア両容疑者には小学生の娘がおり、近隣住民も「スパイには見えなかった」という。
 バージニア州アーリントン市内の公園で接触した容疑者の一人はFBIのおとり捜査官の前で、協力費として5000ドル(45万円)入りの封筒を包んだ新聞紙をわざと落としたという。同市内に住むミハイル・セメンコ容疑者は露英中西の言語に堪能で旅行代理店に勤務。ビッキー・ペラス容疑者はスペイン語紙記者という顔を持っていた。
 容疑者らは、旧ソ連国家保安委員会(KGB)が前身のロシア対外情報局(SVR)の指令で米政府の政策決定者に接近、小型核爆弾の開発やアフガニスタン情勢、米露新核軍縮条約への米政府の立場などを探っていたという。米連邦裁判所の訴状によると、特殊ソフトを使った携帯用パソコンでSVR関係者と暗号化した文章で交信していた。
 スパイ特有の手口を割り出しながら、FBIはなぜスパイ容疑ではなく司法長官に事前通告せずに政治活動を行った容疑を適用したのか。スパイ容疑なら協力した側の米国人の摘発が不可欠なため、立件の容易な非合法政治活動容疑を適用したものとみられる。

◎外交問題に発展せず、ロシアのスパイ訴追で米大統領報道官(2010年6月30日、産経新聞)
 ギブズ米大統領報道官は29日の定例記者会見で、連邦捜査局(FBI)がロシアのスパイとして11人を訴追した事件について「(米露2国間の)関係に影響を及ぼすとは思わない」と述べ、外交問題に発展する可能性を否定した。
 ギブズ氏は、オバマ政権発足後に両国関係は、新たな核軍縮条約「新START」に調印するなど大きく改善したと指摘し、事件は「司法機関が適正に処理した」と強調。オバマ大統領は事件の概要について事前に説明を受けていたという。
 米国務省のゴードン次官補(欧州・ユーラシア担当)は「情報機関を使った古い企ての名残があったからといって、誰も大きなショックは受けないだろう」と指摘し、米露間で依然としてスパイ活動が続いていることを暗に認めた上で「さらに信頼できる関係に向かっている」と強調した。

◎米スパイ団摘発に「根拠なし」、露外務省(2010年6月29日、産経新聞)
 ロシアのスパイとされる一団が米国で摘発された事件で、ロシア外務省のネステレンコ報道官は29日、「このような行為に根拠はなく、よからぬことを目的としている」「すべてが米政権によって宣言された米露関係『リセット』を背景に起きたことはたいへん遺憾だ」とする声明を発表した。

◎米でロシアのスパイ10人拘束、1人逃走(2010年6月29日、読売新聞)
 米司法省は28日、ロシアのスパイとして核開発計画などの情報収集を行っていたとして、男女10人を拘束し、1人の行方を追っていると発表した。
 連邦捜査局(FBI)の内偵捜査で、ロシア対外情報局(SVR、旧KGB)のスパイと判明した。
 発表などによると、10人は27日、自宅のあるニューヨークやボストンなど複数の都市で一斉拘束された。パスポートを偽造し、数年前から米国に居住。元米政府高官らに接触を図っていた。10人の中にはカップルを装い、子供をもうけている男女もいた。
 軍事・外交をめぐる情報を集め、文書や写真などに暗号を埋め込む「ステガノグラフィー」などの手法で仲介人を通じてSVRに供給。南米で報酬の受け渡しを行ったこともあったという。

◎映画みたい、ロシアスパイ団摘発「米国人脈に食い込み情報を送れ」(2010年6月29日、スポーツニッポン)
 米司法省は28日、ロシアのスパイとして米国内で核弾頭の開発計画情報などを収集していたとして、男女の容疑者10人を逮捕し、1人の行方を追っていると発表した。
 司法省は11人がロシア対外情報局(SVR)のスパイだと指摘。小型核弾頭の開発情報や、中央情報局(CIA)への就職希望者の背後関係調査などを行った疑いがあるとしている。
 ロシア側の反応は明らかになっていない。容疑が事実なら、冷戦終結から20年が経過した後も、映画さながらのスパイ活動が続いていたことになる。米ロ関係に微妙な影を落としそうだ。
 司法省によると、連邦捜査局(FBI)が2009年、ロシア側からメンバーに送られた「米国の政策決定人脈に食い込み情報を送れ」との暗号文を解読。捜査の結果、27日にニューヨークやバージニアで一斉に10人を逮捕した。
 メンバーは偽造旅券を与えられたほか、マネーロンダリングに関与した疑いももたれている。

◎ベラルーシ向け天然ガス15%削減、ロシア「料金滞納」(2010年6月21日、朝日新聞)
 ロシアの政府系天然ガス独占企業「ガスプロム」は21日、ベラルーシ向けに供給している天然ガスを15%削減したと発表した。インタファクス通信などが伝えた。
 同社は、ベラルーシが約2億ドル(約180億円)のガス料金を滞納しているとして、ベラルーシ側と交渉を続けていたが決裂した。滞納が続けば、今後、段階的に削減幅を85%まで増やすとしている。
 同社のミレル社長によると、交渉でベラルーシ側は負債の存在を認めたが、代金の代わりに機械や生産物で支払うと主張した。報告を受けたロシアのメドベージェフ大統領は「外国の支払いは外貨でのみ受け取りが可能だ」として、供給量の削減を命じた。
 ロシアから欧州向けに供給される天然ガスは、ウクライナ経由が7割、ベラルーシ経由が3割に上る。ミレル社長は、「欧州に影響を及ぼすことはない」と話し、問題が起きた場合には、ウクライナ経由で供給するとしている。
 一方、ベラルーシ側は、ガスプロムがベラルーシに対し、ガス輸送通過料約2億ドルを滞納しているとも主張。またベラルーシのエネルギー省は、ロシアの削減量が85%になった場合、欧州へのガス中継輸送は十分に維持できなくなると警告した。

◎露とノルウェー40年の争いに幕、海域境界(2010年5月3日、読売新聞)
 ロシアとノルウェーは約40年前から争ってきた、石油や天然ガスが豊富なバレンツ海の境界を画定することで基本合意した。
 メドベージェフ露大統領が4月27日、訪問先のオスロでストルテンベルグ・ノルウェー首相と会談した際、同海域を両国がほぼ同じ面積で分割する境界線を引くことで一致した。
 ロシアとノルウェーは同海の約17万5000平方キロ・メートルの海域について、1970年ごろから自国の権益を主張し対立してきた。この歴史的な合意は、北極圏のエネルギー開発という戦略的な利益を重視し、両国が歩み寄ったものだ。
 露紙コメルサントによると、バレンツ海の係争海域には、推計で地球上の原油埋蔵量の1%があるとされる。この開発についてメドベージェフ大統領は「(ノルウェーとの)合弁事業による開発が最善だ」と述べた。
 北極圏では近年、開発技術の発達や温暖化の影響で氷が解けたことにより、周辺国が資源開発の動きを活発化させている。海域の分割をめぐる争いに終止符を打つことで、ロシアとノルウェーの資源の共同開発に弾みがつく可能性がある。
 ロシアは旧ソ連時代から自国に有利な境界を求めていた。海域をほぼ二等分する今回の合意はロシア側が妥協したことを示し「ロシアの新しい柔軟路線の一環」(英紙フィナンシャル・タイムズ)との指摘もある。
 ロシアは最近、ポーランドやウクライナなど近隣諸国との友好関係を強化する動きを見せている。

◎ロシア、ノルウェーとの海の境界画定へ、2等分方式で(2010年4月28日、朝日新聞)
 ロシアが隣国ノルウェーと40年に及ぶ海域の境界画定論争に終止符を打った。ロシアのメドベージェフ大統領が27日、訪問先のオスロでノルウェーのストルテンベルグ首相と会談し、バレンツ海と北極海での係争海域を2等分する形で解決することで基本合意に達した。2004年に中国との国境問題を決着に導いた時と同様、係争地を分け合う「フィフティーフィフティー(2等分)方式」を採用した。
 イタル・タス通信によると、会談後の共同記者会見でストルテンベルグ首相は「40年来の最も困難な問題を解決した」と強調。メドベージェフ大統領も「(新しい)ページをめくることは喜ばしい」と応じた。
 係争海域は日本の領土の半分近い約17万平方キロ。エネルギー資源のほか水産資源も豊富で、70年代から旧ソ連とノルウェー間で漁業にかかわる排他的経済水域をめぐる対立が深まっていた。最終合意文書に署名すれば、エネルギー資源開発も進むとみられる。
 日本と北方四島の領土問題を抱えるロシアは04年、日本とも2島引き渡しで決着したい意向を示した。日本側はあくまで四島の日本への帰属確認を求めている。

◎人権と言論の状況が悪化、露の女性ジャーナリストが警告(2010年4月17日、産経新聞)
 国際的な人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(本部・ニューヨーク)の2009年人権賞を受賞したロシア人女性ジャーナリスト、エレナ・ミラシナさん(32)が17日、東京都千代田区の明治大学で来日講演し、昨年だけで6人の人権活動家らが暗殺されるなど、悪化するロシアの人権と言論状況について報告した。露ノーバヤ・ガゼータ紙記者のミラシナさんは、殺された6人中4人が友人だったと指摘。暗殺原因は、露政権が「人権活動家=反体制派」という烙印を押したことにあると政権を批判した。

◎ロシア長者番付、資産10億ドルの富豪倍増(2010年4月16日、スポーツニッポン)
 16日発売の経済誌フォーブス(ロシア版)最新号は、同国で資産10億ドル(約926億円)以上の富豪の数が、32人だった1年前に比べてほぼ倍の62人になったと伝えた。同誌は石炭など資源価格の上昇が原因と分析している。
 同誌掲載のロシア長者番付によると、首位は鉄鋼大手NLMKを経営するウラジーミル・リシン氏(53)で資産158億ドル。2位は昨年首位だった投資会社オネクシム・グループ総帥のプロホロフ氏(44)で134億ドルだった。
 サッカーのイングランド・プレミアリーグ、チェルシーのオーナーとして知られるアブラモビッチ氏(43)は112億ドルで4位。経済危機の影響で2008年の首位から昨年10位に後退した世界最大のアルミニウム生産企業オーナー、デリパスカ氏(42)は107億ドルで5位だった。

◎呪われている?「カチンの森」わずか20KM(2010年4月11日、読売新聞)
 ポーランドのカチンスキ大統領の専用機が10日、墜落したのはロシア西部スモレンスク郊外の森の中だった。
 ちょうど70年前、2万2000人のポーランド軍将校らが命を落とした「カチンの森」からわずか20キロ・メートル。4月になっても葉が茂らない暗い森で起きた悲劇に、静かな集落の住民は「ここは呪われているのだろうか」と声を失った。
 墜落現場は、滑走路から約200メートルの地点。ポーランド国旗と同じ白と赤に塗り分けられた機体は、ひん曲がった無数の破片と化し、数百メートル四方の範囲に飛散。翼の一部が地面に突き刺さり、機体がかすめていったシラカバの木々のこずえは、ナイフで切り落とされたように鋭く折れている。
 家具修理業ピョートル・グリゴリエフさん(56)は、大統領一行を歓迎する行事の準備をしていて惨事を知った。「ポーランドとの親善が進むはずだったのに。街全体が悲しみに包まれている」
 「カチンの森」事件が起きた当時、1歳だった主婦タマラ・パブロワさん(71)は「カチンの森の事件と墜落は関係ないのだろうけど怖い」と肩を震わせた。
 地元報道によると、専用機は濃霧の中、4回にわたり着陸を試みた末に墜落した。カチンスキ大統領はロシアとの歴史的和解に向け「カチンの森」事件の追悼式典への出席を強く願った。だがその思いはさらなる悲劇を1ページ加える結果に終わった。

◎ポーランド大統領機墜落、大統領ら97人全員死亡(2010年4月11日、朝日新聞)
 ポーランドのカチンスキ大統領(60)夫妻が乗った政府専用機(ツポレフ154)が10日午前10時50分(日本時間同日午後3時50分)ごろ、ロシア西部スモレンスクの空港近くの林に墜落した。ロシア緊急事態省によると、同機には97人が乗っていたが、地元当局は生存者はいないと発表した。大統領はこの日、旧ソ連によるポーランド人虐殺の「カチンの森事件」70年の追悼式典に、高官や遺族ら代表団とともにワルシャワから出席する予定だった。
 メドベージェフ大統領は同日、プーチン首相をトップとする事故解明委員会を立ち上げるよう命じた。インタファクス通信によると、事故当時は濃霧で視界が悪いなか、4回着陸を試みた後、機体が樹木に接触し、その後炎上したという。専用機は約20年間使われ、老朽化していたとの情報もある。ポーランドからの代表団は88人で、政府高官や下院副議長、国立銀行総裁のほか、カチン事件の遺族ら約50人が乗っていたという。
 カチンスキ大統領は1949年ワルシャワ生まれ。70年代から反共産主義運動に加わり、80年結成の自主管理労組「連帯」で副議長に就任。05年の大統領選で当選。

◎モスクワ地下鉄テロ「プーチン氏に報復」、武装勢力声明(2010年4月1日、朝日新聞)
 モスクワ中心部の地下鉄で39人が犠牲になった連続自爆テロ事件で、ロシア南部・北カフカスに拠点を置く武装勢力のウマロフ指導者がテロ実行を認めるビデオ声明が3月31日、イスラム過激派系のウェブサイト「カフカス・センター」で流された。
 ビデオ声明はテロ発生日の3月29日の撮影とされる。戦闘服に長いあごひげ姿のウマロフ指導者が約4分半にわたって登場、モスクワのテロは自らの個人的命令で実行されたと語り、今後もロシア領内でテロ攻撃は続くと強調した。
 さらに、テロは1990年代末にチェチェン武装勢力を力で抑え込んだプーチン首相の北カフカス政策への報復だと主張。直接の原因として、チェチェンに隣接するイングーシ共和国で2月11日にロシア連邦保安局(FSB)が実施した特殊作戦を挙げた。
 このビデオ声明に対してロシア指導部は反応していない。また、ビデオ声明が流れる前には、ロイター通信がイスタンブール発で、ウマロフ指導者が率いる武装勢力のスポークスマンがテロへの関与を否定したと報道していた。

◎世界の雑記帳:ロシア経済の冷え込み、異常な寒さが原因=経済省(2010年3月24日、毎日新聞)
 ロシア経済省は23日、2月の同国経済が冷え込んだことについて、今冬の異常な寒さが原因との見方を示した。
 ロシアの国内総生産(GDP)伸び率は過去数カ月にわたってプラスが続いていたが、2月は季節調整済みで前期比マイナス0.9%となっている。
 ロシア経済省は、月次報告で「経済活動の減速は、まず第一に例年以上の冬の寒さに関係がある」と指摘。厳冬によって「建設部門での生産急減と投資の動きの悪化がもたらされた」としている。
 気象当局によると、2月の気温は1985年以降で最も低く、冬季全体では1987年以来となる厳冬となった。

◎「怒りの日」ロシア各地で反政府集会(2010年3月20日、読売新聞)
 ロシア各地で20日、プーチン首相率いる政府の経済政策などに抗議する集会が開かれた。
 野党勢力が20日を「怒りの日」と名付けて統一行動を呼びかけたもので、インターファクス通信によると、モスクワ中心部では集会に参加しようとした約30人が警察に身柄を拘束された。また極東ウラジオストクでは主催者の発表で約1500人が集会に参加し、連邦政府や沿海地方政府の幹部辞任などを求めた。
 ロシアでは世界的な経済危機による不況が深刻で、国民の間に雇用への不安や賃金引き下げへの不満が広がっている。このため政府は抗議行動の拡大に警戒を強めている。

◎露、インドに原子炉16基建設へ、戦略関係強化(2010年3月13日、読売新聞)
 インドを訪問したロシアのプーチン首相は12日、ニューデリーでシン首相と会談し、ロシア製空母の売却や原子炉16基の建設など、軍事・エネルギー分野を中心とした戦略関係の強化を確認した。
 インドのPTI通信によると、首脳が合意した取引総額は、100億ドル以上に達する見通し。
 シン首相は会談後に声明を発表し、「原発建設のロードマップ」で合意したことを明らかにした。AFP通信によると、プーチン首相に同行したロシアのイワノフ副首相は12日、ロシアがインドの3か所で16基の原子炉を建設することで合意した、と述べた。ロシアは現在、インド南部で原子炉2基を建設中。
 軍事面で両首相は露空母「アドミラル・ゴルシコフ」の売却額で合意に達し、ロイター通信によると、2012年末までに引き渡される。シン首相は、プーチン首相の訪印前の10日、内閣安全保障委員会で、この空母を約23億4000万ドル(約2114億円)で購入する承認を取り付けていた。この空母は04年、売却で基本合意したが、その後、決裂していた。このほか、ミグ29戦闘機29機などの売買でも合意した。
 インドは米印原子力協力協定(08年調印)を契機に、米国とのエネルギー協力、合同軍事演習、テロ情報交換などを活発化させ、戦略関係を拡大している。しかし、シン首相は昨年12月に訪露、冷戦期以来の友好国ロシアとも関係を強化し、多角的な外交関係の構築を図っている。

◎フランスの免税品、買い物王者は中国人 ロシア人抜く(2010年2月1日、朝日新聞)
 【パリ=国末憲人】中国人がフランスで買ったブランド品などの免税品の額が昨年、ロシア人を抜いて1位に躍り出た。還付請求代行業者グローバル・リファンド社が発表した。
 中国人の免税品購入額は2009年、前年比47%増の1億5800万ユーロ(約208億円)。その87%はファッション関連に費やされていた。ブランド志向が強いうえ富裕層が急増していたロシアは、金融危機の影響のためか前年から約23%減の1億1100万ユーロ。1位の座を明け渡した。
 かつて圧倒的1位だった日本人は07年にロシア人に、08年は中国人に抜かれ、昨年も3位だった。ただ、円高の影響から約17%伸びて約1億ユーロだった。4位米国人は2%増の6100万ユーロ。
 ロシア人と並ぶブランド好きで知られるウクライナ人は、1人あたり購入額が1481ユーロで、前年に続いて1位。

◎露、リビアに武器13億ユーロ売却へ(2010年1月31日、産経新聞)
 インタファクス通信によると、ロシアのプーチン首相は30日、リビアに対する計13億ユーロ(約1620億円)の武器売却契約が成立したと述べた。
 詳しい契約内容は明らかにされていないが、インタファクスは軍事外交筋の話として、ロシアの最新鋭戦闘機スホイ35十数機のほか、地対空ミサイルや戦車などが売却される見通しだと伝えている。
 リビアは1980年代に当時のソ連から大量の軍用機を購入。2008年に大統領だったプーチン氏がリビアを訪問、リビアの最高指導者カダフィ大佐も同年ロシアを訪問するなど、関係強化が進んでいた。

◎1万人が露首相の退陣要求、西部カリーニングラード(2010年1月31日、産経新聞)
 ロシアの民間ラジオ「モスクワのこだま」などによると、ロシア西部のカリーニングラードで30日、地元州政府による自動車税の引き上げに抗議する集会に約1万人の市民が参加、プーチン首相やボース州知事の辞任を要求した。
 メドベージェフ大統領と権力を分け合う「双頭体制」の実力者で、高い政治的権威を維持しているプーチン氏への退陣要求は異例。長引く経済危機の中、国民が政権への不満を募らせていることを示している。
 野党勢力「連帯」の指導者ネムツォフ元第1副首相も集会に参加し「連邦政府はカリーニングラードのことなど頭にない」と首相らを批判した。
 カリーニングラード州はリトアニアとポーランドに囲まれた飛び地で、経済発展が遅れている。

◎露では警官=刑法犯? 昨年1年間で5千件超 法令違反は10万件(2010年1月26日、産経新聞)
 ロシア内務省は26日までに、昨年1年間の警察官による刑法犯罪が5190件(前年比11%増)にのぼったことを明らかにした。国営イタル・タス通信などが伝えた。警官が法令に違反した事案は約10万件(同17%増)あったといい、底なしの警察腐敗が改めて裏付けられた形だ。
 ロシアでは収賄や犯罪のでっち上げにとどまらず、警官による殺人など凶悪犯罪の頻発が大きな社会問題となっている。政権は大規模な警察改革に取り組む考えを示しているものの、いまだ具体策は乏しいのが実情だ。内務省は市民からの通報制度や内部調査を強化、警官の職務評価基準を改定したほか、職員の人事には“ウソ発見器”を導入する方針だ。(モスクワ 遠藤良介)

◎ロシアとベラルーシの石油紛争、泥沼化(2010年1月16日、産経新聞)
 ロシアが隣国ベラルーシ向けの石油価格引き上げを通告、ベラルーシ側が強く抵抗して昨年末からの交渉が泥沼化している。ベラルーシにとって石油価格の急激な上昇は国家破綻(はたん)に直結しうるため、ロシアはベラルーシの実質的併合を視野に、「欧州最後の独裁者」と称されるルカシェンコ大統領の排除に動き出したものとみられている。両国とカザフスタンは今月、共通関税導入を柱とする「関税同盟」を発足させたが、早くも機能不全を露呈した形だ。
 問題となっているのはロシアがベラルーシ向け石油に課す輸出税だ。これまでロシアはベラルーシに特恵関税を適用、09年の関税割引率は65%にのぼったが、10年以降はこうした条件を継続しない方針を示した。
 これに対し、ベラルーシは「関税同盟」に基づいて石油供給は無関税であるべきだと主張。対抗策として、ロシア産石油の欧州向けトランジット(通過)料引き上げ▽ロシアの飛び地、カリーニングラード州への電力供給停止▽関税同盟からの脱退▽対空防衛協定の破棄-といった選択肢を突きつけている。
 ドイツは石油消費量の15%、ポーランドは75%をベラルーシ経由のパイプラインでロシアから輸入している。07年初頭には同様の問題からロシア産石油の供給が停止しただけに、交渉の行方が懸念される状況だ。
 両国が対立する背景には、ベラルーシが従来、ロシアの安価な石油を購入して自国の製油所で精製、石油製品を“国際価格”で欧州に輸出して多大な利益を得てきた構図がある。そうした“再輸出”はロシアから購入する石油の約8割にのぼり、ロシアはこの部分に関税を適用してベラルーシへの“補助金”を断ち切ろうというわけだ。
 ロシアは例年、天然ガス供給をめぐってウクライナと対立してきたが、17日投票のウクライナ大統領選で「親欧米派」対「親露派」の対立構図が弱まったのに伴い、“戦線”はベラルーシに移っている。
 ベラルーシの独立系シンクタンク「MISESセンター」のロマンチュク所長によると、特恵関税が完全に廃止された場合、同国の国内総生産(GDP)は約10%減少する可能性がある。同国では11年初頭に大統領選が予定されており、政治的影響は大きい。
 露・ベラルーシは過去に「連合国家」の枠組みを創設、「関税同盟」も結成した。だが、ロマンチュク氏は「この種の合意は政治ゲームにすぎない。ロシアが旧ソ連圏再統合の野心を抱いているのに対し、ルカシェンコ大統領はそれにつけ込んで安いロシア産資源を獲得、権力保持を狙っているからだ」と指摘。もはや両国政権の同床異夢が続かない状況になったとみる。
 ロシアはベラルーシが欧米に接近することはないとみて強気の姿勢を貫いており、石油関税での妥協と引き換えに、ベラルーシの石油関連施設を買収する“インフラ支配”で決着を図る可能性も指摘される。

◎ロシア:ウオツカ最低価格を2倍に、節酒を促すため(2010年1月3日、毎日新聞)
 アルコール消費量が多いことで知られるロシアで、節酒を促すため、最も安いウオツカの値段が新年から約2倍に引き上げられた。
 同国はロシア正教のクリスマスを7日に控え、飲酒の機会が最も多い新年の休暇シーズン中。これまで500ミリリットル瓶の最も安い市場価格は40~50ルーブルだったが、政府は1日から最低価格を89ルーブル(約270円)と設定した。
 ロシア男性の平均寿命は61.4歳(07年)。世界平均を大きく上回るアルコール摂取は依存症など多くの社会問題を引き起こしており、メドベージェフ大統領は節酒の促進策を強化している。
 ただ、ロシアではウオツカの自家製造も広く行われており、最低価格設定の効果を疑問視する声も出ている。

◎ウオツカを倍額に値上げ ロシア「飲酒癖は国家的脅威」(2010年1月2日、産経新聞)
 ロシアで1日、ウオツカの最低小売価格を0.5リットルあたり89ルーブル(約273円)とする庁令が発効した。これは従来、ロシアで普及していた最も安いウオツカのほぼ2倍にあたる価格。メドベージェフ大統領はロシア人の飲酒癖を「国家的脅威」として節酒政策に乗り出しており、ウオツカの最低価格導入もその一環とされている。
 ロシアではソ連末期の1985年、当時のゴルバチョフ政権が厳しい節酒法を実施したものの、国民の猛反発を招き、密造酒による死者が急増した。(モスクワ 遠藤良介)

◎ロシア人と酒の深~い関係、買えない人はどうする?(2009年12月26日、産経新聞)
 飲酒大国ロシアでは、アルコールに起因する死者が年間で最も多いのが1月だという。新年を祝って大量に酒を飲む人が続出するからだ。政府は国民の酒量を減らすため、2010年1月からウオツカの最低販売料金を設けることを決めた。しかし、密造酒はおろかアルコールを含む薬品さえ飲んでしまう国民性を変えられるかは大いに疑問だ。「アルコールとの戦い」と呼ばれる政府と国民の駆け引きは、今回もいたちごっこに終わるのだろうか。(モスクワ 佐藤貴生)
 1月は死者が最も多いだけではない。政府系研究機関によると、5~7日は病院に運ばれるアル中患者が年間で最も多くなる。ロシアでは年明けから約1週間も休日が続くため、自宅などで酒浸りになる人が増えるといわれ、長い休みが終わりに近づくにつれて仕事に行くのがいやになるという心理も働いているようだ。
 ロシアでも現在ではビールが広く浸透しており、特に若年層はウオツカを欲しがらない。ところが、2009年は年初からの5カ月間にビールの売り上げが落ちた半面、安いウオツカが2割以上も売り上げを伸ばしたという統計もある。不景気になると安くても酔えるウオツカに手を出し、憂さを晴らす年配の男性が増えるようだ。
 こうしたなか、ロシア政府は10年1月から、ウオツカ0.5リットル当たり89ルーブル(約260円)という最低販売価格を設けることを決めた。09年まではこの半額程度で同量のウオツカが手に入っただけに、酒好きの国民には大きな仕打ちとなる。しかし、「料金を上げれば飲む量も減るはず」という理屈が通らないのがこの国だ。
 露ガゼータ紙は09年12月11日付で、アルコール問題の大型特集を組んだ。それによると、ロシア人は化粧水のほか、浴槽やガラスの汚れを取る薬品類など、アルコールが入っていれば何でも飲んでしまう。03-04年に西部イジェフスクで専門家が行った調査によると、25-54歳の男性の死因の42%がアルコールの乱用だった。飲料に適さないアルコールを飲んで重い中毒にかかった人も少なくなかった。「金がなければ買わずに飲む」のがロシア流、ということか。
 05年現在のロシア人男性の平均寿命は58・8歳で、女性に比べて10年以上も短い。科学者らは男女の寿命の格差とアルコール乱用には深い関係があると結論づけている。08年には23万件を超える犯罪が飲酒者によって引き起こされたとの統計もある。政府が“酒断ち”に躍起になるのは、国力を左右する人口問題にアルコールが大きな影を落としているからなのだ。
 ソ連末期の1985年、ゴルバチョフ政権は大規模な節酒法を実施した。販売店を減らしたり、購入できる時間帯を制限したりしたのだが、密造ウオツカがヤミ市場に大量に流れたほか、酒を買う人の行列が長くなるなどして国民の不興を買い、緩和せざるを得なかった。
 切っても切れない酒との縁は、いにしえの歴史を伝える年代記にも記されている。ロシアの前身であるキエフ・ルーシの大公は10世紀末、さまざまな宗教の中からギリシャ正教を受け入れて国教に定めたのだが、このさい、イスラム教の受容を勧めた者から、この宗教では飲酒を禁じているという話を聞いた大公は、「ルーシの民の楽しみは飲むことである。これなしには生きることができぬ」といって断ったという(外川継男著「ロシアとソ連邦」)。国民の習性は今も昔も変わらないようだ。

◎露南部・ダゲスタンでも走行中列車爆破(2009年11月30日、読売新聞)
 タス通信によると、ロシア南部ダゲスタン共和国で30日朝、走行中の8両編成旅客列車の下で爆発が起きた。
 爆発は小規模で車体や線路に大きな損傷はなく、けが人もなかった。列車は西シベリアのチュメニ発で、点検後、目的地アゼルバイジャンのバクーに向けて出発した。
 隣接するチェチェン共和国からの武装勢力流入により治安が悪化しているダゲスタンでは、10月と、11月下旬にも列車が通過する際に線路に仕掛けられた爆弾による爆発事件があったが、いずれも負傷者はなかった。

◎露脱線現場に爆弾の一部、テロと断定(2009年11月29日、読売新聞)
 ロシア北西部で27日夜に発生した特急列車「ネフスキー・エクスプレス」の脱線は、28日に現場で爆弾の一部が発見され、ロシア検察当局が「これはテロだ」と断定した。
 ロシア連邦保安局のボルトニコフ長官は28日、脱線がTNT火薬7キロ・グラム相当の手製爆弾によって引き起こされたとメドベージェフ大統領に報告した。大統領は関係省庁責任者を招集し、徹底捜査を指示した。ロシア政府は同日、死者が26人、負傷者95人、行方不明者18人になったと発表した。
 28日午後6時(日本時間29日午前0時)現在、犯行声明は確認されていないが、2007年8月に同じ列車が狙われた爆弾テロ事件では、ロシア南部チェチェン共和国の独立派勢力の関与が取りざたされた。

◎ロシアで特急脱線、25人死亡、テロの可能性(2009年11月28日、読売新聞)
 ロシア北西部トベリ州ボロゴエ近くで27日夜(日本時間28日未明)、走行中のモスクワ発サンクトペテルブルク行き特急列車の後部車両が脱線した。
 ロシア非常事態省によると、少なくとも25人が死亡し、87人が負傷した。
 インターファクス通信が捜査当局者の話として伝えたところによると、現場のレール近くで直径約1メートルの穴が見つかったほか、脱線直前に大きな爆発音を聞いたという証言があり、爆弾テロの可能性がある。メドベージェフ大統領は27日深夜、連邦保安局や検察に対し、捜査の徹底を指示した。
 現場は、モスクワの北西約350キロの地点。列車は14両編成で、後部の4車両が脱線して一部が横転し、乗客が下敷きになったという。
 非常事態省によると列車には約680人が乗っていた。在モスクワ日本大使館によると、日本人が巻き込まれたとの情報はない。

◎テロか ロシアの特急脱線、25人死亡 95人負傷(2009年11月28日、朝日新聞)
 27日午後9時30分(日本時間28日午前3時30分)ごろ、ロシア北西部ノブゴロド州とトベリ州の境界付近でモスクワ発サンクトペテルブルク行き特急列車「ネフスキーエクスプレス」が脱線した。インタファクス通信などが伝えた。ロシア保健社会発展省は、25人が死亡、95人が負傷したと発表。ロシア治安当局は、テロの可能性があると見て捜査している。
 同通信などによると、列車は客車13両と食堂車で編成され、後部の数両が脱線した。線路付近で直径約1メートルの穴が発見され、当時、大きな爆発音を聞いた人がいるという。脱線した車両には約100人が乗車していて、負傷者や残りの車両の乗客ら約500人は別の列車でサンクトペテルブルクに運ばれた。行方不明者も多数いるもようだ。
 「ネフスキーエクスプレス」は4時間半で両都市を結ぶ特急。ロシア最重要の幹線で、この路線では07年8月にも爆弾テロがあり、約60人が負傷。ロシア南部チェチェン共和国出身の男ら数人が逮捕された。

◎汚職の闇を告発した「YOUTUBE警官」(2009年11月27日、産経新聞)
 ロシア南部の警察中堅幹部が11月上旬、上層部の腐敗をウラジーミル・プーチン首相(57)に訴える告発ビデオをインターネット上で公開し、動画サイトYOUTUBEでの視聴が100万回を超える大きな反響を呼んだ。この警察官はモスクワに上京して記者会見も開き、一部メディアでは一躍“時の人”に。この後、元職を含む治安当局者ら7人が同様の告発ビデオをネット上で公開し、ある種の社会現象と化している。

・無実の人を拘束
 発端となったのは、南部クラスノダール地方ノボロシスクで勤務する薬物捜査担当の刑事、アレクセイ・ディモフスキーさん(32)。制服姿で出演した自作ビデオで、実績をあげたり、わいろを要求したりするために「架空の犯罪をでっち上げ、無実の人を拘束させられるのはもうたくさんだ」などと上司の職権乱用や汚職の実態を暴露している。
 さらに、「土日も無給で働かされる。2人の妻に逃げられた」と待遇の悪さを訴え、「あなたと差しで話がしたい。全土の警察に独立した調査を行うべきだ」とプーチン首相との面会を求めた。
 地元の警察当局はこのビデオの内容を「中傷だ」としてディモフスキーさんを解雇。しかし、この後も北西部コミ共和国の元検察幹部と元警官がドミトリー・メドベージェフ大統領(44)に「終身刑の判決を受けた2人の放火犯は無実だった」と“直訴”するなど、同調する動きが相次いでいる。いずれもネット上での注目度が高く、ロシアに蔓延(まんえん)する汚職の根深さとともに、この問題への関心の高さを浮き彫りにしている。

・わいろなしに生活できず
 実際、国民の警察不信はとうに極まっている。「交通違反」でわいろをむしり取ったり、事件の被害届や証言を握りつぶすのは日常茶飯事だ。庶民の間では、警察は「わいろを求めてたかる連中」「ごろつきと変わらない」というのが相場と決まっている。
 警官自身が引き起こす重大事件も珍しくない。24日には、モスクワで酔って少年(19)を警棒で撲殺したとして警官3人が拘束された。10月には2件の無理心中で警官2人を含む5人が死亡。4月にはモスクワの幹部警察官がスーパーで拳銃を乱射し、9人を死傷させている。専門家によれば、「警官による犯罪は立件されるものだけで年間数千件」とみられている。
 腐敗の最大の理由は、旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後継機関の連邦保安局(FSB)など特務機関関係者を除いて、一般警官の給料が低く抑えられている点だ。ディモフスキーさんの場合で月1万4000ルーブル(約4万3000円)といい、わいろなしには生活が立ちゆかない額だ。

・歴史的な国民病
 大統領付属の市民社会発展・人権問題委員会メンバー、マーラ・ポリャコワさんは「相応の給与がなくては人材を選ぶ余地がない。現実に犯罪性癖のあるような不適格者が採用されてきた」と指摘。「冤罪(えんざい)をなくすために、非現実的な検挙率目標といった職務基準を改めることも不可欠だ」と話す。
 一連の告発ビデオの信憑(しんぴよう)性は十分に究明される必要があるが、ポリャコワさんは「警察改革の必要性は長らく指摘されながら進まなかった。ディモフスキー氏の行動は重要な一歩であり、ネットは社会の透明性を高める上で有益だ」としている。
 もっとも、当局は「臭い物にはふたを」とばかりに告発者への圧力を強めており、汚職への抗議が今後、どれだけ現実世界での社会運動に発展するかは不透明だ。ネットによる告発や“直訴”が相次ぐのは、民主主義を支える司法や議会、報道があまりに脆弱(ぜいじやく)だからという疑いない現実もある。大統領自身が「歴史的な国民病」と認める汚職を根絶するには、何本かの告発ビデオだけでは甚(はなは)だ不十分だ。

◎ロシアの「国家的脅威」は酒と麻薬、大統領が対策に大号令(2009年9月21日、産経新聞)
 人口急減に悩むロシアのメドベージェフ大統領が、死亡率の主因となっているアルコールや麻薬中毒を減らすべく上からのキャンペーンに乗り出した。ロシア人の死因の少なくとも4分の1は飲酒関連とされるなど、もはや人口問題が国家の根幹を揺るがしかねないとの危機感からだ。ただ、飲酒や麻薬蔓延(まんえん)の根底にはソ連崩壊に伴う社会体制の急変や国民のモラル低下があり、一朝一夕に結果を出すことは難しそうだ。
 メドベージェフ氏は8日、臨時招集した国家安全保障会議で麻薬使用者が250万人にのぼるとの推計を示し、事態は「国家安全上の脅威だ」と発言。ヘロインや覚醒(かくせい)剤に加え若者には各種の合成麻薬が浸透しており、麻薬使用による死者は年間3万人とみられている。政府は全学生・生徒への強制的薬物検査や刑罰の厳格化を検討し始めた。
 大統領はこれに先立ち、アルコールについても「節酒令」を出すべく政府に号令をかけている。国民1人あたりの年間飲酒量が世界最多の純アルコール18リットル(ウオツカ50本に相当)、アルコール中毒患者は300万人にのぼっており、広告・販売規制や酒税引き上げで飲酒に歯止めをかけたい考えだ。疾病のみならず飲酒に伴う火災や交通事故、自殺、殺人なども含めれば関連死者が年50万人とも指摘され、経済的損失も大きい。
 ロシアの人口は1992年の約1億4870万人をピークに1億4200万人まで急減した。ソ連崩壊後、少子化傾向に加え、死亡率が出生率を大きく上回る構造が定着したためで、2050年には1億1100万人まで落ち込むとの予測もある。特に男性の平均寿命が60歳前後にとどまっており、体制転換の精神的打撃から過度の飲酒や麻薬使用に走る者が急増した影響が大きい。
 もっとも、ロシアでは帝政時代以来、時の権力が節酒令を出してはなし崩しにされてきた歴史があり、「酒との戦い」は容易でない。ソ連末期の1985年には当時のゴルバチョフ政権が厳しいアルコール制限を打ち出したものの、国民の猛反発を招き、密造酒による死者が急増した。専門家は「ロシア人は昔も今も憂鬱(ゆううつ)で明日への希望を持てないから酒を飲むのだ」(ガゼータ紙)とし、表面的な節酒令にとどまらない社会改革を訴えている。
 麻薬対策でも警察の腐敗などが障害となるのは間違いなく、「プーチン首相の陰で目立たないメドベージェフ氏が存在感を誇示しているにすぎない」(観測筋)との冷めた見方すらある。

◎露最大の水力発電所で12人死亡、62人不明(2009年8月19日、産経新聞)
 ロシア中部ハカシア共和国にあるロシア最大の水力発電所で17日、発電所内に大量の水が流れ込み、従業員ら12人が死亡、62人が行方不明となる事故があった。かつて「ソ連エネルギー技術の粋」「巨大プロジェクトの象徴」と喧伝(けんでん)された発電所に何が起きたのか-。専門家からは構造上の欠陥や設備の老朽化を指摘する見方が出ており、人命や生活にかかわる旧ソ連・ロシアの技術に改めて疑問符を突きつける大惨事となった。
 事故が起きたのは、1978年に稼働を開始したサヤノ・シュシェンスク発電所。17日未明、通常は取水路からタービン、排水路へと流れるべき水が何らかの理由で制御室になだれ込んだ。発電設備10基のうち4基が全壊もしくは破損しており、完全復旧には2~4年を要するという。
 国営ロシア水力発電や検察当局は事故原因として、(1)水圧によるタービン類の破損(2)保全作業に絡む爆発(3)導水路の開閉などでの作業ミス-といった可能性があるとみている。
 ただ、多くの識者が強調しているのは、全般的な設備の老朽化に伴う問題だ。有力紙ブレーミャ・ノボスチェイ紙は「(各地の)水力発電所は悲惨な状況にある」「今回の事故は保全作業や設備更新の資金が不足してきたことのツケだ」との見方を伝える。ロシアは2000年以降、石油価格の高騰に潤いながらも社会基盤や医療・福祉分野の整備を後回しにしてきた経緯があり、水力発電所の事故も01年以降で少なくとも9件目となる。
 一方、ミロフ元エネルギー省次官はラジオ番組で「この発電所には設計上の深刻な問題があり、かねて危険な施設とみなされていた」とも指摘。高等経済大学のヤシン研究部長も有力経済紙ベドモスチ紙に「本当の原因は(ソ連技術者らの)建築基準に対するいいかげんな態度にあると確信する。この意味で(1986年に大事故を起こした)チェルノブイリ原子力発電所に似ている」と語った。
 サヤノ・シュシェンスク発電所の管内には世界最大のアルミ企業「ルスアル」や鉄鋼大手「エブラズ」など基幹産業の工場が集中している。他の発電所から電力をまわすなど緊急措置が講じられているものの、電力の不足や価格高騰でこれら企業や経済全体に影響が出るのは必至だ。電力需要がピークに達する冬場の住民生活も懸念され始めている。 

・チェルノブイリ原発事故
 1986年4月26日、旧ソ連ウクライナ共和国のチェルノブイリ原子力発電所4号炉が炉心溶融(メルトダウン)を起こして爆発、大量の放射性物質が放出された史上最悪の原発事故。ソ連は当初、事故を公表せず国際的な非難を浴びた。国際機関が公式に認定した事故による死者は60人だが、放射能被害による推定死者数は4千人から数万人に上る。

◎ガス戦略、揺れるトルコ、ロシアとEU双方に協力表明(2009年8月16日、朝日新聞)
 天然ガスの供給をめぐって綱引きが続くロシアと欧州の間で、トルコが揺れている。ひと月足らずの間に、双方が進める競合するパイプライン計画にそれぞれ協力を表明した。欧州連合(EU)入りという夢と、エネルギー戦略でロシアに頼る現実の間で難しい選択を迫られた形だ。
 「ロシアとの関係強化は最優先事項の一つだ」。トルコのエルドアン首相は6日、アンカラを訪問したロシアのプーチン首相と、幅広い経済協力について合意文書に調印したあと、こう強調した。
 合意の中で注目されたのは、ロシアが進めるガスパイプライン「サウスストリーム」への協力だ。ロシアの天然ガスを黒海を経由してオーストリアやイタリアに運ぶ計画で、年間630億立方メートルの輸送能力を見込む。トルコ本土は通らないが、ロシアと関係の悪いウクライナが黒海の自国経済水域の使用を認めない構えのため、トルコの経済水域の利用が不可欠だった。
 サウスストリームは、EUがロシアへの依存度を減らす目的で計画するパイプライン「ナブッコ」への対抗策。ナブッコは310億立方メートルの輸送能力を想定し、カスピ海沿岸諸国の天然ガスを、トルコ全土を東西に横切るルートでオーストリアまで運ぶ。トルコは先月13日、アンカラでEUの関係4カ国との協定調印式典を実施したばかりだ。
 それからひと月もたたない時期のプーチン氏の訪問。エルドアン氏との共同会見では2人とも「サウスストリームは欧州のエネルギー安全保障にとって重要だ」「ナブッコと対立するものではない」と述べて、「ナブッコつぶし」との見方を否定した。
 トルコにとってナブッコは経済的な利害を超えた戦略的な意味がある。「エネルギーでの脱ロシアを目指すEUへの協力で、念願であるEU加盟に向けてはずみにしたい」(バフジェシェヒル大のビルギン准教授)からだ。
 しかし、エネルギー資源に恵まれないトルコにとって、天然ガスの約3分の2を頼るロシアの影響力は無視できない。電力需要の増加に対応する原子力発電所計画にもロシアの技術支援は欠かせない。
 さらに、ロシアという確実な供給源のあるサウスストリームに比べ、ナブッコは十分なガスが確保できるかどうか課題が残る。現時点で確実なアゼルバイジャンの天然ガスだけでは、想定輸送量の半分程度。イランやイラクの供給能力は大きいが、イランは西側との外交関係が冷え切っており、イラクは国内の治安や法整備の遅れに不安がある。
 二つのパイプラインとも、政治的な思惑が色濃く反映する。6日のトルコとロシアの文書調印にはイタリアのベルルスコーニ首相も立ち会った。サウスストリームを主導するのが、ロシアの政府系企業ガスプロムとイタリアのエネルギー会社ENIだからだ。EU内にもロシアとの関係をめぐり思惑の違いがあることを浮き彫りにした。(イスタンブール=平田篤央)

・「南」の足場固めたロシア
 欧州に供給するガスの約9割がウクライナを経由するロシアにとって、1月に起きたウクライナとのガス紛争のような混乱を避けるには、ウクライナを迂回(うかい)するルートの確立が急務だ。そのため、南欧に至る「サウスストリーム」とドイツと海底で直結する「ノースストリーム」の南北2ルートの計画を進めている。ロシアは今回、トルコを取り込むことで「南」の足場を固めた。
 プーチン首相はEUのナブッコ計画を「実現不可能」と主張してきたが、今回は「競争的共存」を打ち出した。ガス供給源の確保などで先行しているため、ナブッコより早く着工すれば勝算ありと見込んでいるようだ。
 ロシアとトルコはさらに、黒海経由で中東に向かう「ブルーストリーム2」計画でも合意した。ただ、供給すべきガスをロシア外で十分確保できるか、不透明さが残る。アゼルバイジャンはナブッコへの供給も秤(はかり)にかけている。トルクメニスタンはロシアとの関係のこじれから、中国への供給に重点を移し始めている。

◎ロシア・イングーシの建設相、銃撃され死亡 執務室で(2009年8月13日、朝日新聞)
 ロシア南部イングーシ共和国の首都マガスで12日、アメルハノフ建設相が執務室で銃撃され、死亡した。インタファクス通信などが伝えた。
 アメルハノフ氏は、建設事業を巡る大規模な監査を行っており、捜査当局は、アメルハノフ氏の職務と関連があるとみている。
 イングーシでは、6月に最高裁副長官が殺害されたほか、大統領も自爆テロで重体となるなど、共和国要人の襲撃が続発している。

◎露、北方領土への人道支援を拒否(2009年8月8日、読売新聞)
 ロシア外務省は7日、日本が北方領土に提供してきた医薬品などの人道支援物資の受け取りを中止する、とモスクワの日本大使館に通告した。
 メドベージェフ大統領は7月、麻生首相との会談で領土問題について厳しい態度を示している。今回の措置は、人道支援を提供する枠組みとなっている日本との「ビザなし交流」の制限に踏み切ったことを意味しており、北方領土問題を巡る日露の緊張が一段と強まりそうだ。
 ロシア外務省は同日、日本が1990年代初めから南クリル諸島(北方4島)に提供してきた人道支援に「心からの感謝」を表明した上で、「今後、人道支援を受ける必要性はないと日本に説明した」との声明を発表した。
 ロシア上院は7月上旬、日本の国会が北方領土を「日本固有の領土」と明記した「改正北方領土問題等解決促進特別措置法」を成立させたことに反発し、メドベージェフ大統領にビザなし交流の停止を検討するよう求める決議を採択していた。

・ビザなし交流
 北方4島の領有権を主張している日露両国がお互いの主張を棚上げし、旅券や査証(ビザ)なしで両国民の相互訪問を認める仕組み。〈1〉元島民とロシア人住民らによる4島交流〈2〉人道支援事業〈3〉元島民の北方墓参〈4〉元島民とその家族による自由訪問―を指す。人道支援事業は、旧ソ連崩壊後の混乱で生活に困窮した島民を支援するため1992年に始まった。毎年、医療品や燃料などを提供し、最近は住民の健康診断も実施している。

◎南オセチア付近で砲撃、グルジア、露を非難(2009年7月31日、産経新聞)
 グルジア外務省は30日、同国からの独立を主張する南オセチア自治州との境界に近いグルジアの村が29日に自治州の州都ツヒンバリの方向から迫撃砲などで攻撃されたとの声明を発表。南オセチアを「支配」するロシアに責任があると非難した。
 南オセチアは、ツヒンバリがグルジア側から迫撃砲で攻撃を受けたと反論。死傷者はなかったという。
 グルジアの紛争地域では、ロシアの反対で欧州安保協力機構(OSCE)や国連グルジア監視団(UNOMIG)の停戦監視団が撤収に追い込まれたばかり。グルジアは声明で、ロシアの「不法活動」の国際監視ができなくなったと訴えた。

◎住民の死亡確認は162人、南オセチアで露調査(2009年7月3日、産経新聞)
 インタファクス通信によると、ロシア検察庁のバストルイキン捜査委員長は3日、昨年8月のグルジア紛争で、グルジアの攻撃によって死亡した南オセチア自治州の住民162人を公式に確認したと述べた。
 紛争に軍事介入し、自治州の独立を承認したロシアはこれまで南オセチア住民の死者を1500~2千人と主張してきたが、人権団体などは疑問視。ロシアの調査で、紛争から1年近くになる現時点でも、その約1割しか確認されなかったことになる。
 捜査委員長は「調査団の到着前に埋葬された犠牲者はかなり多いと推測される」とし「数字は最終的なものではない」と強調した。確認された負傷者は255人という。

◎ロシアからカジノ消える? 賭博禁止、失業30万人の懸念も(2009年7月3日、産経新聞)
 ロシアで1日、一部地域を除いてカジノやスロットマシン場などの営業を禁止する賭博規制法(2006年成立)の規定が発効した。モスクワには約30軒のカジノを含む500軒以上の賭博場があるとされ、警察当局は6月30日夜にすべてが閉鎖されたとしている。1日以降は西部カリーニングラード州、極東・沿海州、シベリア・アルタイ地方、南部クラスノダール地方境界付近にある指定地域だけで賭博業が認められることになった。
 同法は社会の健全化を唱えたプーチン前大統領(現首相)の主導で制定され、国は賭博場を4カ所の指定地域に移して米ラスベガス風の「賭博地帯」を整備する方針だった。しかし、指定地域はいずれも人口の希薄な辺境にあり、計画はほぼ白紙状態だ。業界からは「30万人以上が失業する」「賭博業が地下に潜って犯罪を助長するだけだ」といった反発が出ている。
 ロシアではソ連崩壊後に賭博業が解禁され、モスクワやサンクトペテルブルクにはきらびやかな賭博場が雨後のたけのこのごとく現れた。

◎露、国内4カ所のぞきカジノ御法度、モスクワ500軒営業停止(2009年7月1日、産経新聞)
 ロシアで1日、ルーレットやスロットマシンなどの賭博場の営業を、国内4地域を除いて禁止する法規制が始まった。タス通信によると、首都モスクワの当局者は1日、市内に500軒以上ある賭博場の営業停止を確認したと述べた。
 ロシアでは賭博場の増加が社会問題となり、当時大統領だったプーチン首相が規制を提唱、議会が約3年前に法案を可決した。
 犯罪の温床とされた賭博場を、西部の飛び地カリーニングラード州や極東の沿海地方など首都から遠く離れた4地域に集約し、米ラスベガスのような町をつくる構想だが、経済危機もあって移転計画はほとんど進んでおらず、40万人が失業するとの指摘もある。
 業界団体は経済危機をさらに悪化させ、税収減にもつながるとして反対したが、メドベージェフ大統領は規制実施の延期に応じなかった。

◎記者殺害事件の無罪判決取り消し、ロシア(2009年6月26日、朝日新聞)
 ロシアのプーチン前政権への批判で知られたアンナ・ポリトコフスカヤ記者が06年に殺害された事件で、ロシア最高裁は25日、被告全員を無罪としたモスクワ管区軍事裁判所の判決を取り消し、審理を差し戻した。検察当局が上告していた。ただ、被告の中に事件の首謀者は含まれておらず、当局側が黒幕を解明しないまま「有罪」を勝ち取ることで事件の幕引きを図ることを、遺族側は警戒している。
 銃撃を手配したという元内務省職員と見張り役とされる男2人の計3人が起訴され、軍事裁判所の審理では陪審団が証拠不十分などとして無罪評決を出した。最高裁は無罪取り消しの理由として、「目撃者証言が検察側によって曲げられた」など被告側弁護士の違法な発言が陪審員の判断に影響を与えた――など手続き上の問題を挙げている。
 この事件は、ロシアの言論状況を象徴するものとして国際的に注目されている。同記者の死にはロシアの現体制に責任があると考えている人が多いため、政権側が誰かを有罪にして幕引きを図ろうとしている、との見方も出ている。
 遺族とその弁護士は25日、再審理ではなく、捜査自体のやり直しを求める声明を出した。

◎女性記者殺害、3被告「無罪」を露最高裁が破棄(2009年6月26日、読売新聞)
 ロシアのプーチン体制のチェチェン政策を批判していた女性記者アンナ・ポリトコフスカヤさんが2006年に殺害された事件で、ロシア最高裁は25日、殺人ほう助罪などで起訴された元警察官ら3人を無罪としたモスクワ地区軍事裁判所の判決を破棄し、審理のやり直しを命じた。
 タス通信などが伝えた。
 同裁判所の陪審団は今年2月、証拠不十分として3被告に無罪判決を下したが、検察が上訴していた。
 事件では、捜査当局が10人の容疑者を逮捕したが、実行犯はいまだに起訴されていない。

◎露「火薬庫」北カフカス 不安定化に拍車も 要人暗殺続発(2009年6月23日、産経新聞)
 ロシアの「火薬庫」と呼ばれる南部の北カフカス地方で、イスラム武装勢力が着実に勢力を拡大している。イングーシ共和国で22日、連邦政府が任命した共和国大統領が自爆テロで重傷を負うなど、要人暗殺を狙った事件が多発、連邦政府による制御は不能に陥っているとの指摘も聞かれる。北カフカスの不安定な情勢に拍車がかかる恐れも出てきた。
 イングーシのエフクロフ共和国大統領の車列に爆弾を積んだ乗用車が突っ込んだのは22日朝。内臓破裂のほか、全身にやけどを負った大統領はモスクワの病院に空路搬送された。イングーシでは10日に共和国最高裁の副長官が、13日には元共和国副首相が殺害されており、今月に入り3件目の要人襲撃となった。
 ロシアのメドべージェフ大統領は5日、同じ北カフカスのダゲスタンで共和国内務相が射殺されたさい、「政権に対する挑戦だ」と武装勢力の鎮圧を命じたが、それをあざ笑うかのようにテロが頻発している形だ。
 北カフカス地方は平均月収が国内最低レベルで、慢性的な貧困が若年層を武装組織へと駆り立てる。連邦政府への依存度も高い。政治腐敗も蔓延(まんえん)し、イングーシでは共和国政府が関与した不正会計が昨年だけで5000万ドル(約48億円)に上るとされ、汚職撲滅を目指す大統領に反感を持つ共和国内の利権集団が、武装勢力と犯行に及んだとの見方も出ている。23日付露独立新聞は、この地域一帯は「潜在的な内戦状態にある」との論評を掲載した。
 エフクロフ大統領襲撃事件を受け、メドべージェフ大統領は22日、イングーシに隣接するチェチェン共和国のカディロフ大統領と会談、武装勢力の掃討に全力を挙げるよう指示した。
 カディロフ氏は強大な私兵組織を背景に敵対勢力の排除を進め、独裁色を強めているといわれている。連邦政府は、独裁的な同氏の力を借りて治安回復を図る意向とみられるが、多民族からなる北カフカスに安定をもたらすかは不透明なのが実情だ。

◎ロシア、180件の協力要請、日本政府にリスト、総額2兆5000億円超す(2009年5月29日、日本経済新聞)
 5月中旬のプーチン首相の訪日に合わせてロシアが日本に提示した経済協力プロジェクトの全容が28日、明らかになった。地熱発電所などインフラ整備や工場建設を中心に約180件で、事業総額は2兆5000億円以上。地域別では極東が2割を占めた。両国は貿易経済に関する日ロ政府間委員会などで実現可能性を検討する見通し。「互恵的協力」を強化し、懸案の平和条約締結への環境整備にもつなげる。
 日本経済新聞が入手したプロジェクトリストは「日本企業が参加できる投資プロジェクトの実現に関するロシア連邦自治体の提案」。共和国や州など各自治体の提案を取りまとめ、事業内容や資金計画も記されている。12日の日ロ首相会談を前に、外交ルートを通じ日本政府に渡された。

◎実質的「プーチン支配」、メドベージェフ大統領の就任1年(2009年5月6日、読売新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は7日、就任から1年を迎える。前任のプーチン氏が首相を務める「二頭体制」でスタートしたが、大統領は前政権の基本路線を忠実に踏襲し、実質的に「プーチン支配」が続いている状況だ。
 資源頼みだったロシア経済のもろさが金融危機で露呈する中、有効な景気対策は打ち出せず、国民の不満が強まりつつある。
 メドベージェフ大統領は4月中旬、クレムリン批判の急先鋒である「ノーバヤ・ガゼータ」紙と会見し、汚職対策に取り組む姿勢を強調した。さらに人権問題に関する会議では、民間活動団体(NGO)の環境改善に向けて法改正する方針を示すなど、独自色を打ち出す兆候と注目された。政権幹部の資産公開や自身のブログ開設など、新たな取り組みも始めた。

・国民の信頼度:プーチン53%、メドベージェフ41%
 だが、国民の間ではプーチン首相の存在感が依然として大きい。「全ロシア世論調査センター」が4月下旬に行った信頼度調査では、プーチン首相の53%に対して、メドベージェフ大統領は41%と水をあけられ、就任以来、首相を下回る状況が続いている。
 大統領にとって、最初の試練は昨年8月のグルジアとの戦争だった。軍事的な勝利に続き、南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立を承認し、欧米との関係は冷却化した。11月には米国のミサイル防衛(MD)の東欧配備に対抗措置を発表したが、一連の強硬姿勢は、軍や治安機関を掌握するプーチン首相が指揮したといわれる。
 大統領任期を4年から6年に延長した憲法改正にしても、プーチン氏が国家元首へ復帰するためのおぜん立てとの見方が強い。

・独自人脈なく、政策はプーチン頼み
 政治学者のドミトリー・オレシキン氏は、「大統領には政権運営に必要な独自の人脈がなく、政策決定で首相と緊密に調整している」と、プーチン首相に頼らざるを得ない現状を指摘する。
 大統領にとって、誤算だったのが経済の急速な悪化だ。輸出収入の3分の2を占める原油や天然ガスの価格が下落し、4月の外貨準備高は就任時より約30%も減少。資源輸出の利益で積み立てた基金を取り崩し、歳入不足を補う事態に陥っている。
 雇用情勢も深刻だ。政府発表の失業者は約230万人だが、長期の自宅待機を命じられるなどして700万人以上が働き口を失ったとの推計もある。「経済の悪化が社会不安につながることが、政権にとって最大の懸念材料」(外交筋)となっているが、財政悪化で大胆な景気刺激策は取れない状況に追い込まれている。

◎ロシア富豪凋落、長者数6割減る、フォーブス・ロシア版(2009年4月19日、朝日新聞)
 17日発売の米経済誌フォーブス・ロシア版で、世界金融危機下でのロシア富豪の衰退ぶりが浮かび上がった。資産10億ドル(約1千億円)以上の富豪数が08年は87人と米国に次ぐ世界第2位まで躍進したが、今年は32人に激減。番付上位100人の資産総額も昨年の5220億ドル(約52兆円)から7割減の1420億ドル(約14兆円)まで下がった。
 象徴的なのが、昨年はロシアの1位で世界でも9位だった「世界のアルミ王」の異名をとるデリパスカ氏。株価急落などで資産は昨年の280億ドルから35億ドルに激減、ロシア国内での順位は10位に、世界では164位に後退した。
 世界金融危機による金属需要の落ち込みや原油価格下落などが、資源依存型のロシアに深い影響を及ぼしている。

◎サハリン2のLNG船、日本に到着、東電など調達先多様化(2009年4月6日、日本経済新聞)
 ロシア・サハリン沖資源開発事業「サハリン2」で産出した液化天然ガス(LNG)を搭載した最初のLNG船が6日、日本に到着した。フル生産に入る2012年には日本全体で天然ガス輸入量の約8%に相当する年間960万トンを輸入する計画。最大の輸入先であるインドネシアが供給量を絞るなか、新たなエネルギー調達先としてサハリンの位置づけが高まりそうだ。
 今回東京電力と東京ガスが共同運営する袖ケ浦基地(千葉県袖ケ浦市)に到着したLNGは約6.7万トン。東電と東ガスが半分ずつ受け入れる。都市ガスとして使用すれば約20万世帯の年間使用量に相当する。サハリン2産出のLNGは東ガスをはじめとする都市ガス5社と電力4社の計9社が購入する。
 サハリンからの輸送日数は3―4日と中東(約20日)に比べて大幅に短縮するため、輸送コストの低減が期待できる。緊急時に短時間でLNGが調達できる利点もある。

◎「サハリン2」がLNG初出荷、国内への安定供給に期待(2009年3月29日、読売新聞)
 三井物産と三菱商事は29日、出資するロシア・サハリン沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」で液化天然ガス(LNG)を初出荷したと発表した。
 サハリン発のタンカーは通常、東京湾まで2~3日で到着し、約2~3週間かかる中東発に比べ輸送日数は大幅に短縮される。
 サハリン2のLNGは今後、全生産量の5~6割が日本向けに出荷される。軌道に乗れば年間960万トンまで生産量を増やせるため安定供給源として期待される。

◎サハリン2、LNGを初出荷、東ガス・東電向け6万トン(2009年3月30日、朝日新聞)
 ロシアの資源開発計画「サハリン2」で生産された液化天然ガス(LNG)が29日、初めて出荷された。開発会社に出資している三井物産と三菱商事が発表した。初出荷分は東京ガスと東京電力に販売されたもので、計約6万トン。サハリン2では、LNGは年間960万トンが生産され、6割が日本向け。

◎モスクワ劇場占拠事件、死傷人質の金、盗まれていた(2009年3月21日、朝日新聞)
 02年10月にモスクワで約130人が死亡した劇場占拠事件をめぐり、特殊部隊の突入後、死傷した人質の所持金などが捜査当局側に盗まれたと遺族らが訴えていた裁判で、モスクワの裁判所は19日、原告の訴えを一部認め、計約13万ルーブル(約36万円)を支払うようロシア財務省に命じた。
 インタファクス通信などによると、原告は死亡した男性の遺族と、負傷した当事者の女性。慰謝料を含め計120万ルーブルを求めたが、慰謝料部分は認められなかった。ただ、同様の訴えが近く15件起こされる予定といい、原告代理人らは一定の評価をしている。

◎イタリアの聖ニコラス教会、ロシアに返還(2009年3月2日、読売新聞)
 イタリア南東部バーリで1日、ロシアの皇帝一族により20世紀初めに建てられた聖ニコラス教会(ロシア正教会)が、イタリア政府からロシア側に返還された。
 返還式には、ロシアのメドベージェフ大統領が出席し、イタリアのナポリターノ大統領から、教会所有権を象徴する鍵を受け取った。
 教会の返還は、ロシアのプーチン首相が大統領時の2007年3月に要請し、イタリア政府とカトリック教会(ローマ法王庁)が承諾していた。約1000年前に分裂した正教会とカトリック教会は再統一に向けての協議を継続中。ナポリターノ大統領は返還式で、「この鍵は教会間対話を象徴している」とし、両教会の良好な関係を強調した。
 バーリは、両教会があがめる4世紀の聖人ニコラスの埋葬地で、中世からロシア人巡礼者が多く訪れている。聖ニコラス教会は1917年ごろ建てられたが、ファシスト時代の37年、地元自治体が接収した。
 返還式は当初、昨年12月の予定だったが、ロシア正教会の前総主教アレクシー2世の急逝で、延期されていた。

◎ロシア大統領・首相の支持率低下、経済危機で不満広がる(2009年2月25日、読売新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領とプーチン首相の支持率がともに低下していることが明らかになった。
 露メディアが24日、調査機関「世論調査基金」の調査結果として一斉に報じた。経済危機で、政権に対する不満が国民に広がっている模様だ。
 調査は14、15の2日間に実施。大統領支持率は50%で、1週間前の前回調査より5ポイント減、首相の支持率は前回比3ポイント減の66%だった。また、不支持率は大統領が前回比4ポイント増の17%、首相も4ポイント増の12%だった。
 昨年5月の就任直後、40%台だった大統領の支持率は、昨年8月のグルジア紛争後に56%まで上昇。以後も安定していたが、今回、急激に低下した。大統領時代の2006年以降は下がっていた首相の不支持率も、当時に近い数字となった。
 経済紙「ベドモスチ」によると、専門家は「長期的な傾向を語るのは時期尚早だが、経済危機は、今後も支持率に影響を及ぼすだろう」との見通しを示した。
 ロシアでは3月1日に統一地方選が予定され、国民の不満が強く反映される可能性もある。

◎サハリン2:LNG工場、稼働、日本、露から初の輸入(2009年2月19日、毎日新聞)
 ロシア・サハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の液化天然ガス(LNG)製造工場が18日稼働し、3月中に日本向けの輸出が始まる見通しになった。LNGの輸出はロシア初で、日本にとっては新たなエネルギー調達先としての期待が大きい。世界的にLNGの需要が高まる中、最大の天然ガス埋蔵国であるロシアとの資源面での友好関係の構築がより重みを増している。【プリゴロドノエ大木俊治、平地修、森禎行】
 18日は、サハリン州南部のプリゴロドノエのLNG工場で稼働式典があり、麻生太郎首相やロシアのメドベージェフ大統領が出席。麻生首相は「サハリンという日本の隣接地にエネルギー源を持つことは長年の夢だった」。メドベージェフ大統領も「世界的なエネルギー供給国としてロシアの立場を強化する」と、サハリン事業の意義を互いに強調した。
 サハリン2は、日本から三井物産と三菱商事が参加して、総額約200億ドルをかけて開発が進められてきた。既に原油の生産が始まっており、今回のLNG工場稼働で事業の総仕上げとなる。ガスはサハリン北東沖で採掘され、パイプラインで約800キロ南のプリゴロドノエに運搬、LNGに加工して海上輸送する。
 経済産業省によると、08年の日本の天然ガス供給量は約6900万トンで、ほとんどをインドネシアなどからの輸入に頼っている。サハリン2からは最大で年600万トン近い供給が見込まれ、国内のガス・電力会社9社が20年程度の長期契約を結んでいる。
 日本は原油を含め中東依存度が高いエネルギー調達先の多様化を進めており、ロシアからの初のLNG輸入は大きな意味を持つ。日本と地理的に近いため2~3日で国内に輸送でき、約2週間かかる中東に比べ、コストが大幅に安くなる。
 天然ガスの供給先が欧州に偏っているロシアは今後、アジア・太平洋向けに極東地域での資源開発を進める方針。日本に対しては資金や技術面での協力を求めたい意向がある。日本にとっても、欧米や新興国でLNGの需要が高まる中、安定した調達先の確保が重要な課題となっており、開発を積極的に支援する構えだ。
 ただ、サハリン2を巡ってロシア政府は、環境問題を理由に三井物産や三菱商事の事業主体への出資を半減させ、政府系のガスプロムが過半数を握った経緯があり「何をするか分からない国」(大手商社幹部)との懸念もある。両国間には領土問題などの難問も多いが、官民ともに友好関係を深めることが課題になりそうだ。

◎露で初の液化天然ガス生産「サハリン2」始動、半量が日本へ(2009年2月19日、読売新聞)
 ロシア極東サハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」が18日稼働し、ロシア初となる液化天然ガス(LNG)の本格生産が始まった。
 年間生産量960万トンの半分強にあたる約500万トンが東京電力など日本の電力、ガス会社向けで、需要拡大が予想されるLNGの新たな供給源となる。日本への輸出は3月に始まる予定だ。
 サハリン南部プリゴロドノエで同日開かれた稼働式典には、麻生首相とロシアのメドベージェフ大統領が出席した。麻生首相は「(近接地からエネルギーを調達することは)日本にとって長年の夢だった」と述べ、メドベージェフ大統領も「世界規模のエネルギー安全保障に貢献すると思う」との考えを強調した。

◎ロシア:中国に20年間石油供給、250億ドル融資見返り(2009年2月18日、毎日新聞)
 中露両国は17日、中国がロシアに対し250億ドル(2兆3000億円)を融資する見返りとして、ロシアが20年間にわたり中国に対し石油を供給する長期契約に合意した。これにより東シベリアの原油を太平洋岸に輸送する「太平洋パイプライン」の中国支線の建設など、2国間のエネルギー協力事業が加速するとみられる。
 インタファクス通信などによると、ロシア側の国営石油会社「ロスネフチ」、パイプライン建設会社「トランスネフチ」と、中国側の中国石油天然ガス集団(CNPC)、国家開発銀行が同日、北京で合意文書に署名。融資の内訳は、ロスネフチに対し150億ドル、トランスネフチに対し100億ドルとなる見通し。一方、ロスネフチは現在の契約が切れる2011年以降、CNPCに対し毎年1500万トンの原油を供給する。
 両国は昨年10月、東シベリアのスコボロジノから中国・大慶まで延びる同パイプライン中国支線の建設で基本合意したが、融資条件など条件交渉が長引いていた。ロシアでは経済危機の影響を受け、ロスネフチ、トランスネフチ両社とも資金不足に陥っており、パイプラインの建設続行に際して、中国からの融資を求めていた。

◎米ロの衛星同士が衝突、初の「宇宙交通事故」か(2009年2月12日、朝日新聞)
 米主要メディアは11日、米国の衛星携帯電話システム「イリジウム」の衛星と、機能停止したロシアの通信衛星が衝突し、宇宙ごみ(デブリ)がまき散らされたと一斉に報じた。微小なデブリと衛星の衝突は過去にあるが、衛星同士がぶつかる宇宙の「交通事故」は初めてとみられる。
 CBSテレビ(電子版)によると、衝突は米東部時間10日正午(日本時間11日午前2時)ごろ、北シベリア上空約790キロで起きた。両衛星とも破壊され、約600のデブリとなって漂っているという。ロシアの衛星は93年に打ち上げられた「コスモス2251号」で、10年ほど前から機能停止していたらしい。
 報道によると、米軍は衛星のほか10センチを超えるデブリの軌道を監視しており、国際宇宙ステーション(ISS)など有人の宇宙船に接近していないかどうか調べている。
 ISSの高度は約400キロと低いため、今回の衝突の直接の影響は考えにくい。デブリの高度が下がってくると、影響を受ける可能性もあるが、ISSや米スペースシャトルのような有人宇宙船は軌道を変える装置を備えているため、監視網でとらえたデブリなら回避できる。
 イリジウムは衛星を利用して世界中どこでも携帯電話が使えるサービスで、予備を含め約80個の衛星が高度約800キロの軌道を回っている。米イリジウム社は、今回の衝突で「携帯電話通信への影響はほぼない」としている。
 デブリ問題は近年深刻化しており、一昨年、中国が衛星破壊実験をしたときは「デブリが多数発生する」と国際的に非難された。米航空宇宙局(NASA)によると、10センチを超えるデブリは現在約1万2千個が確認されている。

◎ロシア:08年成長率5.6%増にとどまる(2009年2月3日、毎日新聞)
 インタファクス通信によると、ロシア経済発展省は2日、08年の国内総生産(GDP)成長率が前年比5.6%増にとどまったことを明らかにした。ロシアは07年までの5年間、GDP成長率が6~8%台で推移してきたが、08年秋に金融危機と原油価格下落で経済が失速。09年の成長率はさらに大きく落ち込むとみられている。

◎ロシア:経済危機で野党が集会、与党は「官製集会」で対抗(2009年2月2日、毎日新聞)
 経済・金融危機の影響が深まるロシアで1月31日、野党勢力が複数の都市で抗議集会を開く一方、与党「統一ロシア」も各地で政府支持集会を開き対抗した。与党は国民の関心が反政府集会へ集まることを恐れ、「官製集会」を催し、不安の解消をアピールしたが、経済危機が社会不安へつながる懸念を指導部が抱いていることをうかがわせた。
 統一ロシアはモスクワ、極東ウラジオストク、ハバロフスクなどで集会を開いた。モスクワの集会は氷点下10度前後の中、5000人以上が参加し「メドベージェフ(大統領)とプーチン(首相)とともに戦い、彼らを守る」と支持を訴えた。軍が会場内で温かい紅茶を配った。
 一方、モスクワで共産党が開いた集会には約1000人が参加し、ジュガーノフ委員長が企業の再国有化などを主張。市警察は集会に参加しようとした極左組織の構成員ら約40人を拘束した。ウラジオストクでは共産党と自動車販売事業の関係者が合同で反政府集会を開き、1月から実施された輸入車への関税値上げ措置の撤回を要求し、プーチン首相辞任を求める声も上がった。
 ロシアの昨年12月の失業率は7.7%で過去2年半で最悪を記録。社会不安への懸念が広がっている。

◎カード提出は「法の要請」、外務省職員上陸断念で露外務省が声明(2009年1月29日、産経新聞)
 北方四島への人道支援事業が中止に追い込まれた問題で、ロシア外務省は28日、「近年の日露関係における良好な雰囲気が冷却化したとしても、それはロシア側の選択ではなく、ロシアは責任を負わない」などとする声明を発表した。
 問題が起きる発端となった「出入国カード」の提出要求について、声明は「法律上の要請であり不可欠なものだ」と正当化した上で、「技術的な手続きを政治問題化しようとする試みは非生産的だ」と警告している。一方で、「相互に受け入れ可能な選択肢の模索は放棄しない」とも述べ、日本側との協議には応じる姿勢を示した。
 北方四島への支援事業は、日本国民と四島のロシア人住民が旅券や査証(ビザ)なしで相互訪問する「ビザなし交流」の手続きにのっとって実施されてきた。しかし今月下旬、支援物資を届けるため国後島に上陸しようとした日本外務省職員らに対し、ロシア側は出入国カードの提出を要求。日本側は四島がロシア領であることを認めることになるとして提出を拒否、上陸を断念した。
 ロシア側は平成18年の国内法改正でカードの提出が必要になったと説明、23日に日本側に通告してきたという。日本外務省は遺憾の意を表明、20年度の人道支援の中止を決めた。

◎北方領土への訪問船引き返す、官房長官が露対応を批判(2009年1月29日、読売新聞)
 河村官房長官は29日午前の記者会見で、人道支援事業で北方領土・国後島に向かった日本の訪問団を乗せた船が、ロシア当局から出入国カードの提出を求められた上、ロシア外務省がカード提出を拒否した日本の対応を批判したことについて、「理解できない。ロシア側に対して、(カード提出要求の)撤回と同時に、人道支援ができるよう強く求めている」と述べ、ロシアの対応を批判した。
 一方、政府は29日午前、訪問団を乗せた船が、同日午前9時過ぎ、待機していた国後島沖から北海道・根室港に向けて引き返したと発表した。
 人道支援事業で北方領土・国後島に向かった日本の訪問団を乗せた船が、ロシア当局から出入国カード提出を求められた上、ロシア外務省がカード提出を拒んだ日本の対応を批判するなど態度を硬化させていることについて、日本政府内にはロシアを批判する意見や真意をいぶかる声が出ている。
 河村官房長官は23日午前の記者会見で、「これまで領土問題に関する法的立場を害さないに(支援を)やってきた。その方向が変わるなら、話し合いがなければならない」と指摘した。
 北方4島の領有権問題で対立する日露両国は、領土問題に関する主張は棚上げし、92年4月から「ビザなし交流事業」を続けてきた。政府内では「ロシアの対応は両国の合意に反し、筋が通らない」との批判が強い。
 一方で、政府には「ロシア側の明確でない」(河村長官)との戸惑いもある。
 メドベージェフ大統領が今月24日、麻生首相に電話し、2月中旬にサハリンで首脳会談を行うことを提案。「2国間のすべての問題について話をしたい」と、領土問題解決に前向きと取れる発言をしていたからだ。
 政府内では、「ロシア側が領土問題を非常に意識している表れ。トップ同士が前向きな発言をしても、現場レベルではそう簡単には行かないというアピールではないか」(首相周辺)との見方がある。
 日本としてはビザなし交流中断は避けたいのが本音だが、ロシアの要求を受け入れることは、領土主権を認めることにつながる。河村長官は「首脳会談まで行かずして、日本側の要求通りになることを期待する」と強調したが、事態の早期収拾を図ることができるかどうかは不透明だ。

◎北方4島、ビザなし交流中断の恐れ、露が入国手続き要求(2009年1月28日、読売新聞)
 北方4島の住民に医薬品などを提供する「人道支援物資供与事業」で国後島に向かった日本の訪問団が、ロシア国境警備当局から出入国カードの提出を求められ、訪問を断念して28日、北海道・根室港へ戻ることを決めた。
 ロシア政府は、2006年の国内法改正を理由に、自国の出入国手続きに従った北方4島への入域を求めており、元住民らの「ビザなし交流」なども中断される恐れが出てきた。日本政府は合意に反するとして抗議するとともに、ロシアが北方4島の支配を強めようとしている可能性もあると見て警戒している。
 外務省によると、国後、択捉、歯舞、色丹の北方4島に、旅券や査証(ビザ)なしで訪問できる仕組みとして、人道支援事業のほか、〈1〉ビザなし交流(4島交流)〈2〉元島民らの墓参り(北方墓参)〈3〉元島民とその家族の自由訪問――がある。今回の訪問団は元住民らでつくる「千島歯舞諸島居住者連盟」と外務省職員の計7人で構成され、27日未明に医療品などを船に積み込み、根室港を出航した。しかし、同日朝、国後島に到着したところ、ロシア側から出入国カードの提出を求められた。
 訪問団は、カードを提出すればロシアの入国手続きに従うことになり、北方4島をロシア領と認めることにつながるとして拒否した。訪問断念は初めて。
 人道支援事業は、1998年に両国外務省が交わした「口上書」により、日本の外相が発行する身分証と、行き先などを明記した「挿入紙」と呼ばれる資料をロシア側に提示するだけで入域が認められてきた。
 しかし、ロシア側は今回の訪問に先立つ1月23日、「2006年の国内法改正で出入国カードの提出が必要になった」と外交ルートで通告してきた。
 外務省の兒玉和夫外務報道官は28日の記者会見で、「外務省ロシア課長から在京ロシア大使館に遺憾の意を申し入れた」と述べた。

◎ロシア:人権派弁護士と記者射殺される、モスクワで(2009年1月20日、毎日新聞)
 ロシアの著名な人権派弁護士、スタニスラフ・マルケロフ氏(34)が19日、モスクワ中心部で頭を撃たれて殺害された。近くにいたリベラル系ロシア紙「ノーバヤ・ガゼータ」のアナスタシヤ・バブロワ記者(25)も頭に銃弾を受け死亡した。
 マルケロフ氏は、チェチェン紛争時の00年にロシア軍元大佐に誘拐・殺害されたチェチェン人少女の遺族の弁護活動をしていた。チェチェン問題でプーチン政権を批判していた同紙のアンナ・ポリトコフスカヤ記者の殺害事件(06年)をほうふつさせるだけに、衝撃を広げている。
 マルケロフ氏は19日、少女殺害で禁固10年の有罪判決を受け服役していた元大佐の仮釈放(15日)に抗議する記者会見を開いた直後に射殺された。同氏は他にも多くの人権擁護活動に携わっており、捜査当局が関連を調べている。

◎EU:ウクライナ経由の露産天然ガスが到達(2009年1月20日、毎日新聞)
 タス通信などによると、欧州連合(EU)のバローゾ欧州委員長は20日、ロシアが供給を再開したウクライナ経由の欧州向け天然ガスがEU域内に到達したことを確認した。委員長は「ガス供給は順調に進んでいる」と歓迎する一方、「欧州向けガスがロシアとウクライナの争いの人質にされた」と長期化した供給停止に不快感を表明した。

◎露ガス供給停止:欧州へ供給再開(2009年1月20日、毎日新聞)
 ロシア産天然ガスの供給停止問題で、同国の政府系天然ガス独占企業ガスプロムは20日早朝(日本時間同日午前)、ウクライナを経由する欧州向けのガス供給を再開した。ウクライナのティモシェンコ首相がインタファクス通信などに語った。ロシアが今月7日に欧州向けガスの完全停止に踏み切ってから約2週間で、ガス供給の再開に漕ぎ着けた。
 モスクワに滞在中だったティモシェンコ首相が帰国に先立ち、供給作業がはじまったことを報道陣に明らかにした。ロシアとウクライナは19日、2国間のガス供給に関する合意文書に署名。ロシアのプーチン首相も「早期に欧州向けのガス供給が再開されるだろうう」と表明していた。
 欧州連合(EU)は、ロシアが供給を再開すれば36時間以内に域内に到達するとの見通しを示している。
 ロシアは昨年末まで続いたウクライナとのガス交渉の決裂を受け、今月1日に同国に対する供給停止に踏み切った。両国は当初「欧州向けのガス供給を保証する」との立場を取っていたが、大幅な供給低下が発生し、ロシアは7日に完全停止へと転じた。ロシアは13日にいったん、欧州向けの輸送を再開したが、技術的な問題が発生したため中断されたままだった。

◎ガス供給停止:欧州向け近く再開、露、ウクライナ首相表明(2009年1月18日、毎日新聞)
 ウクライナを経由したロシア産天然ガスの欧州向け輸送が停止している問題をめぐり、ロシアのプーチン首相とウクライナのティモシェンコ首相は17日から18日にかけてモスクワで協議。両首相は共同記者会見で、ウクライナ向けガス供給価格の値上げで基本合意し、欧州向け輸送を近く再開できると表明した。
 ティモシェンコ氏は、両国のガス企業に対し、19日までに合意文書を準備するよう指示したと述べた。文書署名にこぎ着ければ、一部でガス暖房停止など深刻な影響が出ている欧州の混乱が正常化に向かうことになりそうだ。
 ただ経済危機が深刻なウクライナはガス値上げへの支払い余力が乏しく、ガス紛争への対応をめぐるユーシェンコ大統領とティモシェンコ氏の意見対立も露呈。大統領が今回の基本合意を受け入れるかどうか、予断を許さない状況だ。
 プーチン氏は会見で、ウクライナへのガス供給価格と、ウクライナに支払う欧州向けガスのパイプライン通過料を来年からともに欧州並みの価格に引き上げることになったと説明。ただ今年はガス価格を欧州の2割引きに、通過料は据え置くという。しかし、ウクライナが支払う今年のガス価格は昨年に比べ約2倍にはね上がる見通しだ。
 ロシアはガス価格値上げなどの交渉が昨年末に決裂したため、今月1日からウクライナへのガス輸出を停止。7日には、ウクライナによるガスの抜き取りなどを理由に同国経由の欧州向けガス供給も停止していた。

◎欧州へガス供給停止1週間、ロシア、輸送網支配狙う(2009年1月15日、日本経済新聞)
 ロシアがウクライナを通じた欧州への天然ガス供給を完全に停止してから14日で1週間が過ぎた。厳冬期にあるバルカン諸国や東欧で深刻な影響が出ているが、供給は滞ったままだ。ウクライナの親欧米政権を窮地に追い込むとともに、エネルギー供給国の立場を誇示し、欧州向け輸送網の支配を狙うロシアの思惑が鮮明になっている。
 ブルガリア、スロバキアの首相は14日、ウクライナとロシアを訪問し、供給正常化を訴えた。供給を再開したとするロシアはウクライナが輸送をブロックしているなどと主張。一方ウクライナは、ロシアが特定ルートだけを再開し、技術的に欧州への供給が不可能になっていると指摘した。欧州連合(EU)が両国に派遣した監視団もうまく機能していない。

◎ガス再開めどなし、ウクライナ、輸送ルートの変更要求(2009年1月14日、朝日新聞)
 ロシアがウクライナ経由の欧州向け天然ガスの供給を再開したものの、再び中断した問題で、ウクライナの国営ガス企業ナフトガスは14日、ロシアが指定したパイプラインの輸送ルートでは技術的に困難だとして、別ルートへの変更を求めた。さらにウクライナのチモシェンコ首相は同日、パイプラインの圧力維持に必要なガスもロシアが供出するよう要求した。
 経済的負担の軽減を狙うウクライナの新条件提示で、事態は膠着(こうちゃく)。欧州への供給回復のメドは立っていない。
 ロシアの政府系企業ガスプロムは13日朝、バルカン諸国に至るパイプラインにガスの供給を再開。日量7600万立方メートルを送る予定だったが、約3時間後、約150万立方メートルを送った段階でガスが進まなくなった。送り済みのガスも欧州には届いていない。
 ガスプロムは、ロシアの指定したパイプラインは欧州への輸出用ルートだったのに、今月1日からウクライナが国内用に転用していたと指摘。「その時点から欧州への中継輸送をする気はなかった証しだ」と批判している。
 ロシアのプーチン首相は14日、ブルガリアやスロバキアなどガス輸入国の首相らを招き、「ウクライナによる妨害だ」と改めて主張した。

◎ガス問題だらだら、欧州いらいら、EU議長、法的措置も(2009年1月14日、朝日新聞)
 ロシアから欧州への天然ガス供給再開が遅れている問題で、燃料不足に陥った欧州各国に不安と不満が広がっている。欧州連合(EU)のバローゾ欧州委員長は14日、法的な措置も辞さない態度を表明。経由地ウクライナとロシアとのトラブルの長期化を見込んで対策を取る動きも急だ。
 バローゾ委員長はこの日、仏ストラスブールで開かれた欧州議会で「モスクワとキエフに明確なメッセージを送りたい」と前置きして演説。「もしEUとの合意が早急に守られなければ、企業に対してこの出来事を法廷に持ち込むよう働きかける」と述べ、議場の喝采を浴びた。
 また、委員長は「ロシアとウクライナは約束を守ることができないと判明した」と批判。ロシアがウクライナを「ガスを抜き取っている」と非難、ウクライナが「技術的な問題」と反論していることについて「技術的問題か政治的意思がないだけか、すぐにわかる。その暁には、もはや信頼できるパートナーとは見なさない」と述べた。
 ブダペストからの報道によると、ハンガリーのガス会社エムフェスは12日、ガス供給を妨げたとして、ウクライナの国営企業ナフトガスを相手取って提訴。ロシアからのガスに燃料を依存する旧東欧諸国では特に不安が強く、EU議長国チェコのトポラーネク首相は14日の欧州議会で、EUが石油と天然ガスを120日分備蓄するよう提案した。

◎露ガス供給:「抜き取りはない」ウクライナが反論(2009年1月14日、毎日新聞)
 ウクライナのユーシェンコ大統領は13日、キエフで記者会見し、欧州向けロシア産ガスの供給停止につながる措置は一切取っていないと強調し、ロシア側が指摘するガスの抜き取りやロシアに対するガス債務の存在を全面的に否定。ロシアとの「ガス紛争」を「独立と主権のための戦い」と位置付けた。タス通信などが伝えた。大統領はまた、供給再開実現のためロシアと新たな技術協定を締結する必要があると述べた。
 一方、ウクライナ国営ガス企業「ナフトガス」のドゥビナ社長は同日、技術的な理由でウクライナの欧州向けパイプラインを開けられなかったことについて、ガスプロムから要請された方法を使うと国内のいくつかの地域でガス供給ができなくなると釈明。別の方法を提案していることを明らかにした。

◎露ガス供給:ガスプロムがウクライナ非難、欧州向け不能で(2009年1月14日、毎日新聞)
 【モスクワ大木俊治】ロシア政府系天然ガス独占企業「ガスプロム」のメドベージェフ副社長は13日夕、モスクワの同社で記者会見し、ウクライナがロシア産ガスの供給停止に備えて、今月1日から欧州向けガスをすべて国内向けに回すよう輸送システムを変更していたと非難した。
 同副社長は会見で、ウクライナのパイプライン現場監督が手紙で「国内のガスの流れは今年1月1日から全面的に変更された」と記述していると指摘。ウクライナが当初から欧州向け供給の維持を想定していなかったとの見方を示した。
 ガスプロムは13日、欧州向けガス供給を一部再開したが、ウクライナ側がパイプラインを閉鎖しているため供給不能の状態が続いていると説明。ウクライナ国営企業「ナフトガス」も、技術的な理由でパイプラインを開けることができなかったと認めている。

◎ロシア:欧州向けガス供給を一部再開、EUは「届かない」(2009年1月14日、毎日新聞)
 ロシア政府系天然ガス独占企業「ガスプロム」は、7日から全面停止していたウクライナ経由の欧州向けガス供給を13日に一部再開した。しかし、ガスの供給は滞っており、欧州に届かない状態が続いている。
 タス通信によると、ガスプロムはモスクワ時間の13日午前10時(日本時間同日午後4時)、南東欧向けに日量7660万立方メートルのガス供給再開を指令した。しかし、同社のメドベージェフ副社長は「ウクライナ側がパイプラインを開いておらず、供給できない」と非難した。
 欧州連合(EU)欧州委員会は13日、「(欧州向けガスが)ほとんど、あるいは全く流れていない」と懸念を表明。バローゾ委員長はロシアのプーチン首相に電話で「失望」を伝えた。
 欧州委員会は、ガス輸送状況を調べるEUの監視員が関連施設への立ち入りを認められず、活動に支障が出ていると指摘。ロシアとウクライナ双方に監視活動への協力と、欧州向けガス供給の早期実現を要請している。

◎露ガス供給:欧州向け13日再開、ウクライナへは停止継続(2009年1月13日、毎日新聞)
 ロシア産天然ガスの供給停止問題で、欧州連合(EU)の行政府・欧州委員会のバローゾ委員長は12日、欧州向けガスの供給が13日朝から再開されるとの見通しを表明した。しかし12日には、ウクライナが11日署名したガス輸送状況を調べる監視団設置に関する合意文書について、独自に「わが国は欧州向けガスの抜き取りはしていない」などとする付属文書を添付させていたことが判明。ロシアが反発し、ウクライナは付属文書を破棄したうえで合意文書に再署名した。ガス供給が再開されてもロシア、ウクライナ、EUの間にはしこりが残りそうだ。
 ロシアのラブロフ外相は11日夜、メドベージェフ大統領との会談で、ウクライナが独自に付属文書を作成したことを報告。大統領は同国が付属文書を破棄するまで、欧州向けのガス供給の再開など合意内容を履行しないよう指示した。
 ロシアから抗議を受けたEUのバローゾ委員長は同日深夜、ウクライナのティモシェンコ首相と電話協議を行い、付属文書の撤回を要求。ウクライナ政府は12日、文書を破棄し再署名に応じた。EUも同日、署名した。
 これを受けバローゾ委員長は同日夕、「合意が成立し、ガスは遅くとも明日(13日)朝までには流れ出す」と述べた。ロシア政府系天然ガス独占企業ガスプロムのメドベージェフ副社長も訪問先のブリュッセルで「何の障害もなければ」モスクワ時間の13日午前10時(日本時間同日午後4時)に欧州向け供給を再開すると確認した。価格交渉が決着していないウクライナ向けのガス供給は引き続き停止される。
 EUは監視団の合意取りまとめでロシアとウクライナを仲介。22人のEU監視団は12日までに目的地の大半に到着し、活動を開始した。バローゾ委員長はプーチン露首相から電話で「監視員が配置され次第、ガス輸送が開始される」との確約を取り付けていた。
 EUは同日、ブリュッセルで緊急エネルギー担当相会議を開催。今回の事態を教訓にエネルギーの対露依存度を軽減し、供給源と輸送路の多様化を促進する方針を確認する。

◇相互不信の深さ浮き彫り
 一度はロシア、ウクライナ双方が署名したガス監視団合意文書をめぐるドタバタ劇は、両国間の根強い不信感を改めて浮き彫りにした。ロシアはこれを理由に今後のガス供給価格交渉で一層強硬姿勢に出るだけでなく、ウクライナ経由のパイプラインの権益奪取に動く可能性もある。
 ウクライナが独自に添付した付属文書は、ガスの「抜き取り」を否定し、今回の危機でウクライナに責任はないと主張したものだ。「盗みを合法化するもの」(ガスプロムのミレル社長)とロシアの神経を逆なでした。付属文書は監視団の活動期間についても「30日間」と規定し、長期的な監視活動を求めるロシアは反発した。
 インタファクス通信によると、欧州連合(EU)は付属文書について「(ウクライナの)一方的な宣言で、監視団に関する合意文書には何の影響も及ぼさない」と説明し、ロシア側の理解を求めたが拒否された。最終的にウクライナ側を説得し、付属文書を破棄した合意に再署名させたが、供給再開を目前にロシアとウクライナに「二枚舌」を使っていたことを露呈した形になった。
 ロシアのプーチン首相は11日、ドイツのテレビ局との会見で、現在はウクライナが所有する同国経由のパイプラインを民営化させ、ロシアが参入する可能性に言及した。ロシアによる事実上の「乗っ取り」を示唆したともいえ、ウクライナへの圧力を一層強めていく姿勢を鮮明にした。

◎露ガス供給停止:EU、戦略備蓄を検討、調達先拡大も(2009年1月13日、毎日新聞)
 欧州連合(EU、加盟27カ国)は12日、ブリュッセルで開いた緊急エネルギー担当相会議で、ロシア産天然ガスの供給停止を教訓に、エネルギー安全保障への取り組みを強化する方針を決めた。ガス戦略備蓄の検討に着手する一方、エネルギーの対露依存を軽減させるため、調達先や輸送ルートの多様化を目指す。
 EUは天然ガス輸入の4割をロシアに依存しており、ロシアによるウクライナ向けガスの供給停止で影響を受けるのは06年1月に続き2度目となる。EUは「欧州へのガス供給がうまく機能していない」(バローゾ欧州委員長)と事態を重視し、3月のEU首脳会議までに再発防止策をまとめる。
 エネルギー担当相会議は、(1)早期警戒システムの導入(2)域内エネルギー網の連結強化(3)輸送にパイプラインを必要としない液化天然ガス(LNG)への切り替え促進--などを検討した。また、ロシアを迂回(うかい)して中央アジアなどからガスを欧州に運ぶ「ナブッコ・パイプライン」の関係国は今月下旬、ブダペストで閣僚級会合を開き、計画推進を確認する。
 ガス供給停止で電力不足など深刻な打撃を受けた旧東欧諸国の一部では、EU加盟の条件として停止した旧ソ連時代の原子力発電所の再稼働を求める声が強まっている。6日に「非常事態」を宣言したスロバキアは昨年末に運転を止めたばかりの原発の再稼働準備に着手。ブルガリアも原発運転再開の可能性をちらつかせつつ、EUに資金援助を要請している。

◎ロシアがガス供給再開、欧州向け、対ウクライナ不透明(2009年1月13日、産経新聞)
 ロシアがウクライナと欧州への天然ガス供給を停止した問題で、ロシア国営企業ガスプロムは13日午前10時(日本時間同日午後4時)、ウクライナ経由の欧州向けガスの試験的供給を再開した。全面停止から1週間をへて、事態は正常化に向け動き出した。ただ、ウクライナの国内消費用ガスについては供給再開のメドは立っていない。ロシア側は「ウクライナでのガス抜き取りが確認された場合、供給を減らすか再停止する」(メドべージェフ大統領)と警告している。
 イタル・タス通信によると、ガスプロムは13日、ウクライナ方面へのパイプラインへのガス供給を再開した。ガスはバルカン諸国やトルコ、モルドバに送られる見通しだ。ウクライナ側関係者は、欧州にガスが到達するまでに再開から36時間はかかるとしている。
 供給量は1日当たり約7700万立方メートルと停止前の25%前後で、ロシア側は欧州連合(EU)などとウクライナ国境の入り口と出口で、ガスが抜き取られないか監視する方針だ。
 ロシアとウクライナは、パイプラインを再稼働させるのに必要なガスをどちらが負担するかをめぐり対立している。また、ウクライナの国内消費用ガスの供給再開をめぐっては、ロシアが昨年比2倍以上となる1000立方メートル当たり450ドルでの買い取りを要求しているほか、ウクライナ側にガス料金滞納の罰金など約6億ドル(約530億円)の支払いを求めており、協議は難航が予想される。
 ロシアは、2006年にも4日間、ガスの供給を停止したが、今回の停止期間は1週間に及び、AP通信によると少なくとも15カ国でガス供給が停止、工場が操業停止に追い込まれるなど、前回とは比較にならないほどの被害が出た。

◎ロシア、ガス輸出再開もウクライナで供給妨害?欧州に届かず(2009年1月13日、読売新聞)
 ロシアの天然ガス企業「ガスプロム」は13日、ウクライナ経由による欧州向け天然ガス輸出を6日ぶりに再開した。
 しかしタス通信によると、ウクライナ側はロシアからのガスが通るパイプラインの弁を閉じたままで欧州にガスが届かない状態になった。ガスプロムは、「責任はウクライナ側にある」と、供給妨害を非難している。
 ガスプロムは13日、バルカン諸国向けに7700万立方メートルのガスを供給すると発表した。ガスの全量がウクライナを通過して欧州側に届くか確認するため、ウクライナとロシア、欧州連合(EU)の専門家が合同で輸送の監視にあたる。
 ロシアは今月7日、ウクライナ経由の欧州向けガス輸出を全面停止した。ウクライナが領内を通るパイプラインからガスを抜き取れないようにする措置だったが、欧州諸国では暖房システムが停止するなど市民生活に影響が及んだ。
 問題の発端となったロシアとウクライナのガス契約をめぐる対立は解消しておらず、ウクライナ向けガス輸出は停止したままだ。

◎ロシア、欧州向けガス再び停止、一時再開の3時間後(2009年1月13日、朝日新聞)
 ロシアがウクライナ経由の欧州向け天然ガス供給を停止していた問題で、ロシアの政府系天然ガス独占企業ガスプロムは13日午前10時(日本時間午後4時)、欧州向けガスの供給を再開した。しかし約3時間後、ウクライナ側がガスを通さないとして再び供給を停止した。欧州のガス不足は解消に向かうとみられたが、ロシアとウクライナの泥沼の対立は依然続いている。
 インタファクス通信などによると、ガスプロムは日量7600万立方メートルのガス供給を始めた。まずはロシアからのガスへの依存度の高いバルカン諸国やモルドバ、トルコなどに送り、中継輸送するウクライナの「抜き取り」がないことを確認してフル供給に踏み切るとしていた。
 ロシア側は「我々はガス供給を始めたのに、ウクライナがブロックしている。すべての合意に反した行為だ」と批判、問題が再燃した。
 根本には、「抜き取り」問題を巡る両国の論争が解決していない問題がある。「盗んでいる」と非難するロシア側に対し、ウクライナ側は「欧州にガスを中継輸送するため技術的に必要なガス」と反論。パイプラインの圧力確保などのための「技術的ガス」は日量2100万立方メートル必要だとし、欧州向けガスから今後も取り込むと主張している。ロシア側は「技術的ガスはウクライナが自力で調達すべきだ」と平行線だ。
 ロシアが供給再開の条件として中継輸送を監視する国際監視団の派遣にこだわったのも「抜き取り」に圧力をかけるのが狙いだ。ロシアのプーチン首相は「抜き取りが再度確認されれば、その分の欧州への供給量を減らす」と警告。再び欧州をガス不足に陥れる可能性も残る。
 一方、欧州への供給が再開しても、ロシアとウクライナの間では、今年のガス価格を決める契約交渉が昨年末に決裂したままだ。ロシアは1日からガス供給の停止を続けている。この問題も泥沼化しており、交渉再開の席さえ設けられない状態だ。
 両国は昨秋、市場価格には一気に上げないとの覚書に署名。当初、ロシアは前年から4割増の千立方メートル当たり250ドルを提示したが、ウクライナが受け入れなかったため、覚書は無効になったとして一気に欧州向け市場価格の450ドルまで上げると宣言した。
 しかし、ウクライナ側は、原油に連動してガス価格も安くなると主張、覚書も有効として約200ドルを提示した。ロシアがウクライナに払う輸送料や昨年のガス代金を巡っても対立は続いている。

◎露ガス供給:合意、再開へ、当面の欧州危機回避を優先(2009年1月12日、毎日新聞)
 欧州連合(EU)の仲介でロシア、ウクライナ双方が天然ガス輸送監視団の活動開始で合意し、欧州向けガス供給の再開で欧州の当面の危機は回避される見通しになった。しかし、問題の根本原因であるロシアとウクライナの供給価格などをめぐる対立は解決されておらず、ウクライナへのガス供給開始はめどが立っていない。監視団の活動は短期間に限定され、両国間の対立が再び欧州のエネルギー危機を招きかねない構造的な問題は解消されていない。
 ロシアは1日にウクライナ向けガス供給を停止したが、ウクライナ経由欧州向けのガス供給には影響しないと保証した。しかし、その後「ウクライナが欧州向けガスを抜き取っている」として供給を削減。さらに7日、「ウクライナが欧州向けパイプラインを閉鎖したため意味がなくなった」として供給停止に踏み切った。これに対しウクライナはパイプライン閉鎖を否定し、ロシアの供給停止が問題を引き起こしたと非難してきた。
 EUの仲介で署名された合意文書は、危機の原因をめぐる両者の対立や、ウクライナが実際に「抜き取り」をしていたかどうかには言及していない。監視団は、ロシアが供給再開の条件としてウクライナの「抜き取り」を防ぐため提案したものだが、供給再開を最優先するEUの要請でウクライナも受け入れた。またウクライナは当初、自国内の施設監視団にロシア側が加わることに難色を示したが、ウクライナ側もロシアの施設監視に同等の条件で加わることで妥協したようだ。
 監視団が駐留すれば、供給再開後の一方的な削減・停止を抑止する効果はあるとみられる。ただウクライナのティモシェンコ首相によると、監視団の活動は「1カ月程度」。当面の危機は回避できても、対欧米関係をめぐるロシアとウクライナの対立構図、欧州向けロシア産ガスの2割がウクライナ経由という現状に変わりはなく、今後も同様の危機が再発する危険性は解消されていない。
 騒動の発端となったロシアとウクライナのガス価格交渉も未解決だ。モスクワでガスプロムと交渉を続けていたウクライナ国営ガス企業ナフトガスのドゥビナ社長は10日、キエフに戻り、交渉に進展がなかったことを認めた。「欧州近隣諸国と同等の価格水準」として1000立方メートルあたり450ドルを求めるロシアと、同235ドルを「合理的な価格」と主張するウクライナの隔たりは大きく、交渉は長期化しそうだ。

◎欧州向けガス供給、再開さらに遅れか、ウクライナは署名(2009年1月12日、朝日新聞)
 ロシアがウクライナによる「ガス抜き取り」を理由に、同国経由の欧州向けガス供給を停止した問題で、ウクライナは11日、欧州連合(EU)とロシアが10日に合意した中継輸送をめぐる国際監視態勢づくりの文書に署名したと発表した。これで欧州向けガス供給再開の条件は整ったが、ロシア側はウクライナが署名した文書の内容確認がまだできていないと主張し、再開はさらに遅れる見通しだ。
 ウクライナは当初、監視団にロシアや欧州の関係企業が参加することに難色を示していたが、EU議長国チェコのトポラーネク首相がウクライナのチモシェンコ首相と会談。11日未明、同首相は文書に署名したと表明し、トポラーネク氏も「36時間以内に供給再開の可能性がある」と述べていた。
 だがロシアの政府系ガス企業は、11日夕になっても署名文書のコピーさえ届かないと不信感を表明。ロシアのメドベージェフ大統領も、ロシアがEUと合意した内容と同一であることの確認などができなければ、供給再開はできないと述べた。
 チモシェンコ首相は会見で、署名文書に「ウクライナはガスを不法にはとっていない」などの文面が盛り込まれていると説明した。これらはロシアが署名した文書にはなく、こじれる可能性がある。

◎欧州向けガス供給、再開さらに遅れか、ウクライナは署名(2009年1月12日、朝日新聞)
 ロシアがウクライナによる「ガス抜き取り」を理由に、同国経由の欧州向けガス供給を停止した問題で、ウクライナは11日、欧州連合(EU)とロシアが10日に合意した中継輸送をめぐる国際監視態勢づくりの文書に署名したと発表した。これで欧州向けガス供給再開の条件は整ったが、ロシア側はウクライナが署名した文書の内容確認がまだできていないと主張し、再開はさらに遅れる見通しだ。
 ウクライナは当初、監視団にロシアや欧州の関係企業が参加することに難色を示していたが、EU議長国チェコのトポラーネク首相がウクライナのチモシェンコ首相と会談。11日未明、同首相は文書に署名したと表明し、トポラーネク氏も「36時間以内に供給再開の可能性がある」と述べていた。
 だがロシアの政府系ガス企業は、11日夕になっても署名文書のコピーさえ届かないと不信感を表明。ロシアのメドベージェフ大統領も、ロシアがEUと合意した内容と同一であることの確認などができなければ、供給再開はできないと述べた。
 チモシェンコ首相は会見で、署名文書に「ウクライナはガスを不法にはとっていない」などの文面が盛り込まれていると説明した。これらはロシアが署名した文書にはなく、こじれる可能性がある。

◎EUとロシア・ウクライナ、ガス供給再開で合意(2009年1月10日、日本経済新聞)
 欧州連合(EU)の欧州委員会は9日、ロシア、ウクライナの両国と欧州向け天然ガスの供給再開で合意した。両国がEU主体の国際監視団を受け入れ、監視団は現地で供給量やパイプライン輸送の状況などを検証する作業に入った。欧州委は3日程度で欧州向けの供給が再開されるとみている。ただ、両国の価格交渉は妥結のメドが立っておらず、欧州向けの供給の全面的な再開はなお不透明だ。
 欧州委員会の報道官は9日の記者会見で「監視団の派遣で両国の合意が得られた」と語った。さらに「ロシアのプーチン首相は供給再開をEUに公約した」と述べ、欧州向けの供給再開の条件が整ったと表明した。監視団は9日から現地に入っており、ロシアからの供給量を監視するとともに、ウクライナが欧州向けガスをパイプラインから抜き取れない体制を整える。EU主体の監視団にはロシアとウクライナも加わる方向だ。

◎露ガス供給:チェコ首相がウクライナ訪問、再開へ最終調整(2009年1月10日、毎日新聞)
 ロシア産天然ガスの供給停止問題で、欧州連合(EU)議長国チェコのトポラーネク首相は9日、ウクライナを訪問し、ユーシェンコ大統領、ティモシェンコ首相と会談した。キエフからの報道によると、ティモシェンコ首相は会談後の会見で、ウクライナ経由パイプラインのガス搬送状況を調査するEU主体の監視団にロシア代表の参加を認める考えを表明した。監視団へのロシア代表の参加は、「ウクライナがガスを抜き取っている」と指摘するロシアが求めていたもので、ウクライナが歩み寄った形だ。ウクライナが監視団設置に関する合意文書に正式署名すれば、7日から完全停止している欧州向けガスの供給再開に向けて前進する。
 トポラーネク首相は10日にモスクワを訪れ、プーチン・ロシア首相と会談し、ガス供給の早期再開を求める見通しだ。
 EU欧州委員会によると、ウクライナ国内のガス搬送監視にあたるEUの高官やガス会社の専門家ら20人が9日、キエフに到着し、活動を開始した。ただ、ロシア側は監視団設置の合意文書に全当事者が署名していない現状では「正式な監視要員として認められない」と主張している。

◎ガス供給停止:監視団の派遣条件で合意、露・チェコ両首相(2009年1月9日、毎日新聞)
 ロシア産天然ガスの欧州向け供給停止問題で、欧州連合(EU)議長国チェコのトポラーネク首相は8日、ロシアのプーチン首相と電話協議し、ウクライナを経由するガスの流れを監視する独立監視団の派遣条件で合意した。チェコ政府が発表した。ロシア政府はこれについて確認していない。ロシア政府系天然ガス企業ガスプロムは、「監視団が現場に配置されれば直ちにガス供給を再開する」と主張しているが、監視団の構成など詳細は明らかにされておらず、流動的だ。
 ガスプロムのミレル社長は8日、ブリュッセルでバローゾ欧州委員長らEU代表と会談し、独立監視団設置で合意したと述べた。その後、「ウクライナ側が、ロシア人の監視団受け入れを拒否した」として、合意を撤回する考えを示し、チェコ政府の発表と食い違いが出ている。
 EU側は9日にもウクライナへ監視団を派遣したい考えだが、監視団の詳細については同日、引き続き協議される見通しだ。
 ロシアとウクライナは、欧州向けのガス供給が停止された理由について、互いに相手に責任を押し付けあっている。監視団が派遣された場合でも、供給停止の原因となったガス価格などを巡る両国間の交渉は打開のめどは立っておらず、双方の不和は長引きそうだ。

◎ガス供給停止:ロシア、ウクライナ両首脳が初の電話協議(2009年1月8日、毎日新聞)
 ロシアのメドベージェフ、ウクライナのユーシェンコ両大統領は7日、両国間で対立している天然ガス供給問題について電話協議を行った。ロシアが1日にウクライナ向けガス供給停止に踏み切ってから、両首脳の対話は初めて。
 ロシア大統領府によると、メドベージェフ大統領は「ウクライナは昨年後半のガス代金支払いの遅滞罰金を支払うべきだ」などと従来の立場を主張。ウクライナ側は会談内容を明らかにしていないが、両国の主張の隔たりは解消されなかったとみられる。

◎ロシア産ガス供給停止、国際監視受け入れ要求、EU首脳協議(2009年1月8日、日本経済新聞)
 欧州連合(EU)議長国のチェコと欧州委員会は7日にプラハで首脳協議を開き、天然ガスの供給停止問題を打開するため、ロシアとウクライナに国際的な監視の受け入れを求める方針を決めた。8日に両国の政府とガス企業に正式に伝える。厳冬期の欧州では中・東欧などの約15カ国でウクライナ経由のガス供給が途絶えている。EUは国際監視を通じて供給ルートを正常に稼働させ、欧州向け供給の早期再開につなげる考えだ。
 欧州委員会のバローゾ委員長は7日の記者会見で「ロシアとウクライナが適切に行動すれば欧州向け供給の問題はなくなる」と語り、両国の供給体制の監視で欧州向けの天然ガスを確保する考えを表明した。チェコのトポラーネク首相はEUの監視活動が始まれば「ロシアは供給を再開するだろう」と述べた。

◎ロシア:天然ガス問題、欧州全土に波及、ロシア産、7カ国完全停止(2009年1月7日、毎日新聞)
 ロシアからウクライナ経由で欧州向けに輸送される天然ガスの供給停止が相次いでいる問題で、供給が完全に止まった国は6日、セルビアなど東・南欧の7カ国に広がった。AFP通信によると、供給減少・停止の影響を受けた国は17カ国。ブルガリアでは一般家庭の暖房用ガス供給がストップ。欧州は氷点下10~20度の寒さを迎えており、事態は深刻だ。
 ブルガリアの黒海沿岸の町バルナなどでは一般家庭約1万2000戸が暖房を使用できなくなった。同国では天然ガスの備蓄が数日分しかなく、パルバノフ大統領は2年前に停止した原発の運転再開を検討する考えを表明した。
 スロバキアは6日、「非常事態」を宣言し、企業へのガス供給制限に踏み切った。一般家庭に対して、当面はガス備蓄で乗り切れるとして、動揺しないよう落ち着いた対応を呼びかけている。
 供給量大幅低下の影響は独、仏、伊にも及び、ドイツでは一両日中にウクライナ経由のガス供給が完全停止する見通し。ただ、3カ国ではそれぞれ数週間~40日間分のガス備蓄があり、大きな影響は出ていない。
 一方、ロシア政府系天然ガス独占企業ガスプロムとウクライナ国営ガス会社ナフトガスは6日、先月31日以降停止していたガス価格などを巡る交渉を8日に再開することで合意したが、歩み寄りは困難な情勢だ。タス通信によると、欧州連合(EU)は6日、EU、ロシア、ウクライナによる緊急首脳会議の早期開催を提案した。

◎露天然ガス:7カ国完全停止、影響、欧州全土に(2009年1月7日、毎日新聞)
 ロシアからウクライナ経由で欧州向けに輸送される天然ガスの供給停止が相次いでいる問題で、供給が完全に止まった国は6日、セルビアなど東・南欧の7カ国に広がった。AFP通信によると、供給減少・停止の影響を受けた国は17カ国となった。ブルガリアでは一般家庭の暖房用ガス供給がストップ。欧州は氷点下10~20度の厳しい寒さを迎えており、事態は深刻だ。
 ブルガリアの黒海沿岸の町バルナなどでは一般家庭約1万2000戸が暖房を使用できなくなった。同国では天然ガスの備蓄が数日分しかなく、パルバノフ大統領は2年前に停止した原発の運転再開を検討する考えを表明した。
 スロバキアは6日、「非常事態」を宣言し、企業へのガス供給制限に踏み切った。一般家庭に対して、当面はガス備蓄で乗り切れるとして、動揺しないよう落ち着いた対応を呼びかけている。
 供給量大幅低下の影響は独、仏、伊にも及び、ドイツでは一両日中にウクライナ経由のガス供給が完全停止する見通し。ただ、06年のロシアとウクライナのガス紛争の反省から3カ国ではそれぞれ数週間~40日間分のガス備蓄があり、大きな影響は出ていない。
 一方、ロシア政府系天然ガス独占企業ガスプロムとウクライナ国営ガス会社ナフトガスは6日、先月31日以降停止していたガス価格などを巡る交渉を8日にモスクワで再開することで合意した。ただ、歩み寄りは困難な情勢だ。タス通信によると、欧州連合(EU)は6日、EU、ロシア、ウクライナによる緊急首脳会議の早期開催を提案した。

◎米、ロシア・ウクライナのガス紛争解決を要求(2009年1月7日、日本経済新聞)
 米国務省のマコーマック報道官は6日、ロシアがウクライナ経由の天然ガス供給を削減した問題について「ガスの停止は容認できない」と事態を憂慮する声明を発表した。「誠意ある努力に基づき、問題を解決するよう双方に要求する」と強調し、ロシア、ウクライナ両国が解決に向けて取り組むよう求めた。
 供給側のロシアの独占天然ガス会社ガスプロムと、ウクライナの国営ガス会社ナフトガスは8日から交渉を再開する予定。報道官声明では交渉に向けた動きが出てきたことを「歓迎する」とした。
 欧州はガス消費量の25%をロシアに依存し、ウクライナ経由での輸入は8割に達する。ロシアがウクライナへのガス供給を停止したことにより、中東欧、ギリシャなどのバルカン諸国に影響が出ている。

◎バルカン諸国への天然ガス止まる、ロシア供給停止(2009年1月6日、産経新聞)
 ロシアが契約切れを理由に、ウクライナ向けの天然ガス供給を停止した問題で、同国経由のパイプラインでガスを買っているブルガリア、ギリシャ、トルコ、マケドニアへの供給が6日未明、全面停止した。インタファクス通信などが伝えた。備蓄分を使用する国もありそうだが、マケドニアのように備蓄が2日分しかない国もある。ロシアからの供給量はさらに約20%減少する見通しで、欧州各国に深刻な影響が出かねない情勢となってきた。

◎ロシア、ウクライナ向けガス削減、欧州、さらに供給不安(2009年1月6日、朝日新聞)
 ロシアとウクライナの天然ガス供給をめぐる問題で、ロシアの政府系天然ガス独占企業「ガスプロム」は5日、ウクライナ経由の欧州向け天然ガスの供給量を減らすことを決めた。インタファクス通信などが伝えた。削減量は、同社が「ウクライナが抜き取っている」と主張する6530万立方メートル。これにより、欧州でのガス供給がさらに不安定になる可能性がある。
 ガスプロムのミレル社長はこの日のプーチン首相との協議で、ウクライナ向け供給を停止した1日以降、欧州向けの出荷量と欧州側の受け取り量の差は6530万立方メートルだったと説明した。首相は同量をウクライナ経由のガスから減らすことを了承するとともに、別ルートを使って欧州へのガス供給量を維持するよう指示した。
 一方、ウクライナの裁判所は5日、国営ガス企業に対し、ロシアの天然ガスを従来の通過料で中継輸送することを禁止する決定を下した。報道などによると、ウクライナの燃料エネルギー省が、権限のない同社の元幹部が契約したもので、契約は無効だとして首都キエフの経済裁判所に提訴していた。

◎天然ガス供給停止:露とウクライナ対立、余波は欧州に拡大(2009年1月6日、毎日新聞)
 ロシアのウクライナ向け天然ガス供給停止をめぐる両国の対立が、長期化の様相を見せている。ロシアが06年1月に供給停止した際は3日間で解決したが、今回は双方とも強硬姿勢を貫いており、供給停止から5日過ぎても再開のめどは立っていない。対立の余波は欧州に拡大している。
 ロシアは3年前のウクライナへのガス供給停止で、影響が出た東・南欧はじめ、ドイツ、フランスなど西欧主要国から強い批判を浴びた。危機感を募らせた当時のプーチン政権は、国産ガスに安価な中央アジア産ガスを混ぜてウクライナに輸出する異例の措置で再開にこぎ着けた。
 しかし、両国は今回、欧州関係国との折衝を強めているものの、2国間で中断しているガス価格などの交渉を再開する兆しはない。
 ロシア政府系天然ガス企業ガスプロムは4日夜、ウクライナ向けガス価格について、これまで提示していた額より値上げすると表明し、ウクライナへの圧力を一層強めている。ロシアの強硬姿勢の背景には、昨年8月のグルジア紛争でグルジアを支援したウクライナのユーシェンコ政権に対する懲罰的な意味合いが指摘されている。
 一方、ウクライナが歩み寄りに応じない要因として、06年の教訓から天然ガスの国内備蓄を増やしたことが挙げられる。英紙フィナンシャル・タイムズによると、年間消費量の2割が備蓄されているという。また国際的な金融危機で、ロシア側の要求に容易に同意できない事情も絡む。
 ロイター通信などによると、欧州では5日までに、ウクライナを経由するロシア産ガス供給の低下がギリシャ、ブルガリア、クロアチア、トルコなどでも確認された。ロシアとウクライナの対立が長引けば、影響を受ける国がさらに増えることも予想される。

◎「輸送量減らせ」とプーチン首相、ウクライナ経由の欧州向けガス(2009年1月6日、産経新聞)
 ロシアがウクライナに供給する天然ガスの輸送を停止した問題で、プーチン首相は5日、ウクライナ経由のパイプラインで欧州に供給しているガスの輸送量も減らすよう指示した。露国営企業ガスプロムのミレル社長との協議で明らかにした。ロシアからガスを購入している欧州各国では供給量の低下が確認されており、混乱が長引けば被害が深刻化する可能性が出てきた。
 ミレル社長は首相との協議で、ウクライナはロシアが輸送したガスのうち約6500万立方メートルを抜き取ったとし、「この量に相当する分を減らして輸送してはどうか」と提案。首相は同意し、5日から実施するよう指示した。インタファクス通信によると、昨年のウクライナ経由の欧州向けガス輸送量は1日当たり約3.2億立方メートル。輸送量は約2割減る見通しだという。
 一方、ウクライナの首都キエフの裁判所は5日、従来のパイプライン使用料ではロシアのガス輸送を認めないとする決定を出すなど、一歩も引かない姿勢を見せている。厳冬期を迎えて焦りを強める欧州が本格的な調停に乗り出すかが焦点になりつつある。

◎ロシア:ウクライナ向けガス停止、「ガス抜いた」露、提訴へ、ウクライナは声明で反論(2009年1月5日、毎日新聞)
 ロシアとウクライナの天然ガス価格をめぐる対立からロシアの欧州向けガス供給量が低下している問題で、ロシア政府系天然ガス企業「ガスプロム」のミレル社長は3日、ウクライナがロシアの欧州向けパイプラインから天然ガスを抜き取り、通過国の義務を順守していないとして、ストックホルム商業会議所仲裁裁判所に提訴する意向を表明した。
 メドベージェフ大統領も、この措置を承認したという。タス通信などが伝えた。
 一方、ウクライナ国営ガス企業「ナフトガス」は4日、欧州向けガス供給量が低下しているのはロシア側の供給削減が原因だとし、ガスプロムに元通りの供給再開を求める声明を発表した。ガスプロムはウクライナに責任があると反論し、非難合戦になっている。
 ガス価格をめぐっても、ロシア側が決裂の原因はウクライナ側にあるとして交渉の早期再開を呼びかけるのに対し、ウクライナ側はロシア側の提示価格は根拠のない不当な高額だと主張している。

◎ロシア:ウクライナ向けガス停止、EU議長国「仲介しない」、露ガスプロムに(2009年1月5日、毎日新聞)
 ロシアからウクライナ向けの天然ガス供給停止に絡み、欧州連合(EU)議長国チェコのボンドラ副首相は3日、プラハで「ガスプロム」のメドベージェフ副社長と会談した。副首相はその後、記者会見し「(ロシアとウクライナの)仲裁役になるつもりはない」と明言。「ビジネスをめぐる交渉だ」として当事者による早期解決を求めた。
 ウクライナを経由する欧州向け天然ガス供給について副首相は、欧州には当面の需要をまかなえる備蓄があるとの見解を示した。

◎欧州へのガス輸送停止決定、ウクライナの裁判所(2009年1月5日、産経新聞)
 インタファクス通信などによると、ウクライナの首都キエフの裁判所は5日、同国経由でのロシア産天然ガスの欧州向け輸送について、従来の通過料では行わないようウクライナ国営ガス企業ナフトガスに命じる決定を出した。
 ロシアが1日からウクライナへのガス供給を停止したことに対する対抗措置とみられる。輸送停止は確認されていないが、既にロシア産ガスの供給量が減っている欧州で影響が深刻化する恐れが高まった。
 提訴したのはウクライナの燃料エネルギー省で、ロシア側とのガス輸送の契約は、権限のなかったナフトガス元幹部が結んだもので無効だと主張。無効確認をめぐっては9日に審理されるもよう。

◎ロシアがウクライナ提訴へ、ガス紛争、長期化の様相(2009年1月4日、産経新聞)
 ロシア政府系天然ガス企業ガスプロムのミレル社長は3日、ウクライナ経由で欧州に送っているロシア産ガスをウクライナ側が違法に抜き取っているとして、国際的商取引の係争を扱うストックホルム商業会議所仲裁裁判所にウクライナ国営ガス企業ナフトガスを近く提訴すると述べた。
 提訴はロシアのメドベージェフ大統領が承認。ガスプロムは供給減少の被害を受けた欧州諸国にもウクライナ側への法的手段を取るよう、うながしている。
 ガスプロムはナフトガスが昨年のガス代金を完済していないとしているほか、今年のガス代金も値上げを要求。さらに値をつり上げる構えも見せ、溝は埋まっていない。

◎ウクライナ向け天然ガス供給停止、ロシア側が法廷闘争へ(2009年1月4日、朝日新聞)
 ロシアがウクライナ向け天然ガス供給を停止したことで、欧州にまで影響が出ている問題で、ロシアの政府系天然ガス独占企業「ガスプロム」は3日、ウクライナ側に対し、欧州向けガスの確実な中継輸送を求め、ストックホルム商業会議所仲裁裁判所に提訴することを決めた。インタファクス通信などが伝えた。
 ガスプロムは、ウクライナ側がガスを抜き取っているため欧州向け供給が減っていると主張。「両国間には欧州向けガス中継輸送契約がある」(ミレル社長)としてウクライナ側に履行を求めている。
 一方、ウクライナ側はガスの抜き取りを否定。09年の中継契約も存在しないと主張している。ロシア側の動きに対抗して法的措置を取る意向を示しており、問題は長期化する可能性が出てきた。
 ウクライナ経由のパイプラインでロシアのガスを輸入しているポーランドやブルガリアなどでは4日も供給量の減少が続いている。ガスプロムはベラルーシやトルコ経由のパイプラインでガス供給を増量して対応している。

◎ロシア:欧州3カ国供給量低下、ウクライナ向けガス停止で(2009年1月4日、毎日新聞)
 ロシアがウクライナ向け天然ガスの供給停止に踏み切ったことを受け、同国経由でロシア産ガスを輸入しているポーランドなど欧州3カ国で2日、ガス供給量の低下が確認された欧州連合(EU)は、供給量低下の影響が広がった06年の再現を懸念しており、ロシア、ウクライナ両国に早期解決を呼びかけた。
 AFP通信などによると、ロシア産ガスの供給量がルーマニアで30~40%、ハンガリーで約25%、ポーランドで6%減少した。
 ロシア政府系天然ガス企業ガスプロムは当初、「欧州へのガス供給を保障する」(ミレル社長)としていたが、欧州市場での供給低下を受け、同社のメドベージェフ副社長は「ウクライナがガスを抜き取っている」と批判した。同社はベラルーシなどウクライナを迂回(うかい)するパイプラインによる供給量を増やして対処した。
 EUは域内のガス需要の2割をウクライナ経由のロシア産に依存する。今月EU議長国となったチェコは2日、「欧州への即時完全供給再開を求める」と緊急声明を発表。インタファクス通信によると、EUは9日にロシア、ウクライナを交え、この問題で会合を開く見通しだ。
 先月31日まで続いたウクライナとの交渉では、ロシアは1000立方メートル当たりのガス価格を08年の約180ドルから09年は250ドルに値上げする姿勢をみせた。だが、交渉決裂を受け、ガスプロムは1日、欧州と同レベルの418ドルに大幅値上げすると表明、打開は困難な情勢。ウクライナ側のガス代金未払いに関する延滞金6億ドルの扱いやウクライナ領内を経由する欧州向けガスの通過料についても双方は対立している。
 ロシアがウクライナに対し強硬姿勢を見せた背景には北大西洋条約機構(NATO)への早期加盟を求めるユーシェンコ大統領へ圧力を強める一面もある。同大統領とティモシェンコ首相が政争を続けていることも、同国の立場を弱めている。

◎ウクライナ経由ガス、欧州諸国への供給減る(2009年1月4日、朝日新聞)
 ロシアが1日からウクライナへの天然ガス供給を停止したことで、ウクライナ経由でロシアのガスを輸入する欧州諸国への供給量が減るなどの影響が出始めた。欧州連合(EU)は両国に、全量供給の早急な再開を求めている。
 イタル・タス通信などによると、影響が出ているのはハンガリー、ポーランド、ルーマニアなどで、ルーマニアでは供給量が3~4割減少したという。EUの欧州委員会によると、ハンガリーへの供給量も約4分の1が減った。
 ウクライナの国営ガス企業は2日、欧州向けのガスから日量2100万立方メートルを使っていると発表。安定したガス通過のため技術的に必要だとしているが、これが欧州への供給減の要因とみられる。
 EUがロシアからパイプラインで輸入するガスのうち約8割がウクライナ経由。欧州委は「市民が危機的状況になるような差し迫った状態ではない」としながらも、早急な全量供給の再開を求めた。

◎露ガスプロム:ウクライナへ供給停止、欧州に影響も(2009年1月3日、産経新聞)
 【モスクワ大前仁】ロシア政府系天然ガス企業ガスプロムは1日、ウクライナ向けのガス供給を全面停止した。価格などを巡る交渉が決裂したためだ。供給停止が長期化すれば、ウクライナ経由でロシア産ガスを輸入する欧州諸国にも影響が出る恐れがある。
 ロシアがウクライナへのガス供給を停止したのは06年1月以来。ウクライナの政権が、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を求め、昨年8月のグルジア紛争でグルジアを支持したことなどもロシアの強硬姿勢の背景にあるとみられる。

◎ロシア:ウクライナ向けガス供給停止(2009年1月3日、毎日新聞)
 ロシア政府系天然ガス企業ガスプロムは1日、ウクライナ向けのガス供給を全面停止した。価格などを巡る交渉が決裂したためだ。供給停止が長期化すれば、ウクライナ経由でロシア産ガスを輸入する欧州諸国にも影響が出る恐れがある。
 ロシアがウクライナへのガス供給を停止したのは06年1月以来。ウクライナのユーシェンコ政権が、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を求め、昨年8月のグルジア紛争でグルジアを支持したことなどもロシアの強硬姿勢の背景にあるとみられる。
 ガスプロムは「ガス供給の契約が結ばれていない以上、供給する義務がなくなった」としている。同社は、ウクライナ経由以外のパイプラインによる欧州向けガス輸出量を増加させ、欧州への供給低下を招いた06年の再現を防ごうとしている。
 キエフからの報道によると、ウクライナのユーシェンコ大統領は1日発表した声明で、数日以内にロシアとの交渉を再開し、今月7日までには合意に達せられるとの見通しを示した。大統領は、政敵であるティモシェンコ首相と共同声明を出し、同国を経由する欧州向けのガス供給を保障すると強調した。

◎ロシア:ウクライナ向けガス供給を停止、欧州には継続(2009年1月2日、毎日新聞)
 ロシア政府系天然ガス独占企業ガスプロムは1日、ウクライナとの間で続いていたガス供給をめぐる交渉が決裂したことを受け、ウクライナへのガス供給を停止した。
 供給停止は、昨年八月の南オセチア紛争でグルジアを支持した親欧米のユーシェンコ・ウクライナ大統領への政治的圧力との見方がある。欧州連合(EU)と米国は一日、ガス供給の正常化を呼び掛ける声明を出した。
 ロシア産ガスの七割をウクライナ経由で受け取っている欧州への影響が懸念されていたが、ガスプロムは1日、欧州向けのガス供給は継続していると説明。ウクライナ側も欧州向けガスを抜き取ったりせず、輸送を保証すると表明した。
 ウクライナは数カ月分のガスを備蓄。しかし供給停止が長引けば、冬だけに市民生活への影響は深刻。金融危機で打撃を受けたウクライナ経済もさらに悪化しそうだ。
 ウクライナ側は12月30日、紛争解決に向け、2カ月分のガス代金として約15億ドル(約1360億円)を送金。しかしガスプロムは、滞納の罰金を含めた債務は20億ドルを超えると主張しているほか、今年のガス価格を現行の1000立方メートル当たり約180ドルから250ドルに値上げするよう求め、ウクライナ側が拒否。供給契約が昨年末までに更新されず、期限切れとなった。
 ウクライナ向け供給でガスプロムは2006年初め、値上げ交渉決裂後に一時停止し、欧州への供給量が一時低下。昨年3月には代金滞納を理由に一時削減しており、欧州ではロシアへのエネルギー依存に対する警戒感が高まっている。

◎ロシアがウクライナへのガス供給停止(2009年1月1日、産経新聞)
 ロシアがウクライナに売却する今年の天然ガスの価格をめぐる交渉は1日午前零時(日本時間同6時)で期限切れとなり、ロシアの政府系ガス企業ガスプロムは契約が切れる同日朝、午前10時にウクライナ向けのガス供給を停止したと述べた。ウクライナ経由のパイプラインでロシアからガスを買っている欧州各国にとってもひとごとではなく、強い関心をもって推移を見守っている。
 両国の価格交渉は年が変わる直前の12月31日まで行われた。ロシアはウクライナ側のガス滞納料金は罰金を含めて約21億ドルに上り、全額返済しなければ1日からガスを止めると警告していた。金融危機にあえぐウクライナは12月30日、罰金を除く滞納分に相当する約15億ドルを返済したと主張したが、罰金の6億ドルの返済時期を含めて総括的な合意には達しなかった。
 ロシアのプーチン首相は31日夜、メドべージェフ大統領との会談で、価格を1000立方メートル当たり250ドルに設定する方針を示し、ウクライナ側に妥協するよう求めた。昨年の売却価格は約180ドルで、ロシアは先月、2倍以上の418ドルまで引き上げると述べて圧力をかけていた。
 ロシア国営テレビによると、1日午前の段階ではウクライナ経由で欧州に向かって延びるパイプラインの輸送は継続しているもようだ。

◎ロシア:ウクライナ向けガス供給、停止も(2008年12月31日、毎日新聞)
 ロシア政府系天然ガス企業「ガスプロム」のメドベージェフ副社長は31日、同日中にウクライナと新規ガス供給契約に合意できなければ、1日午前10時(日本時間午後4時)からウクライナ向け供給を停止する方針を確認した。価格交渉のもつれで供給停止に踏み切った06年の再現になれば、ウクライナ経由のロシア産ガスに依存する欧州各国も懸念を深めそうだ。

◎ロシア:産業界の不況深刻、治安悪化の懸念も(2008年12月27日、毎日新聞)
 世界的な経済危機の影響でロシアの産業界が深刻な不況に陥っている。首都モスクワの建設業界や地方都市の基幹産業では、操業縮小に伴って大量の従業員が解雇・休職に追い込まれ、社会不安の拡大を懸念する声も出始めた。下落を続ける通貨ルーブルへの不信感も募り、国民は不安な年末を迎えている。
 ロシア各紙の報道によると、特に深刻な影響を受けているのは、需要の落ち込みで生産縮小に追い込まれた鉄鋼業や自動車産業だ。ウラル地方のマグニトゴルスクでは、基幹産業の鉄鋼コンビナートがこの3カ月で約3800人の従業員を解雇し、治安の悪化が懸念されている。また南部ボルガ川沿岸地方の自動車企業「カマズ」と「アフトバズ」は1月まで大半の生産ラインの稼働を停止することを決め、給与の不払いが問題化した90年代の混乱を想起させる事態になっている。
 ロシア政府の統計では、全国の失業者は11月だけで37万6000人増え、失業率は6.5%になった。また国民1人あたりの所得は11月、前年比で6.2%低下した。
 このため政府は主要企業に対する国家支援の方針を打ち出し、25日には対象となる295企業のリストを公開するなど、不安を打ち消すのに躍起になっている。メドベージェフ大統領も24日放映された対談番組で、国民が不安視する財政破綻(はたん)やルーブルの大幅切り下げの可能性を改めて強く否定した。
 一方、極東地方では14日と21日に、輸入車の関税引き上げを決めた政府への大規模な抗議行動が起き、治安部隊が参加者を拘束する事態も発生。内務省は24日、政府関係者の会議で、抗議活動や治安悪化への懸念から警戒を強めていることを明らかにした。またモスクワではこの数カ月で旧ソ連諸国からの出稼ぎ者を中心に約6万人の建設作業員が失職したとされ、同省は外国人による犯罪や逆に外国人を狙った犯罪の増加を警戒している。

◎ロシア:産業界の不況深刻、治安悪化の懸念も(2008年12月27日、毎日新聞)
 世界的な経済危機の影響でロシアの産業界が深刻な不況に陥っている。首都モスクワの建設業界や地方都市の基幹産業では、操業縮小に伴って大量の従業員が解雇・休職に追い込まれ、社会不安の拡大を懸念する声も出始めた。下落を続ける通貨ルーブルへの不信感も募り、国民は不安な年末を迎えている。
 ロシア各紙の報道によると、特に深刻な影響を受けているのは、需要の落ち込みで生産縮小に追い込まれた鉄鋼業や自動車産業だ。ウラル地方のマグニトゴルスクでは、基幹産業の鉄鋼コンビナートがこの3カ月で約3800人の従業員を解雇し、治安の悪化が懸念されている。また南部ボルガ川沿岸地方の自動車企業「カマズ」と「アフトバズ」は1月まで大半の生産ラインの稼働を停止することを決め、給与の不払いが問題化した90年代の混乱を想起させる事態になっている。
 ロシア政府の統計では、全国の失業者は11月だけで37万6000人増え、失業率は6.5%になった。また国民1人あたりの所得は11月、前年比で6.2%低下した。
 このため政府は主要企業に対する国家支援の方針を打ち出し、25日には対象となる295企業のリストを公開するなど、不安を打ち消すのに躍起になっている。メドベージェフ大統領も24日放映された対談番組で、国民が不安視する財政破綻(はたん)やルーブルの大幅切り下げの可能性を改めて強く否定した。
 一方、極東地方では14日と21日に、輸入車の関税引き上げを決めた政府への大規模な抗議行動が起き、治安部隊が参加者を拘束する事態も発生。内務省は24日、政府関係者の会議で、抗議活動や治安悪化への懸念から警戒を強めていることを明らかにした。またモスクワではこの数カ月で旧ソ連諸国からの出稼ぎ者を中心に約6万人の建設作業員が失職したとされ、同省は外国人による犯罪や逆に外国人を狙った犯罪の増加を警戒している。

◎ロシア:軍が無人偵察機購入を検討、イスラエルから(2008年12月26日、毎日新聞)
 ロシア軍は兵器近代化の一環としてイスラエルから無人偵察機の購入の検討を始めた。実現すれば、第二次大戦後に独自の兵器システムを維持してきたロシアが、西側諸国から軍事技術を導入する初めての例となる。
 イスラエル国防省幹部は今月中旬、モスクワを訪問し、同国製の無人偵察機の売却について協議した。インタファクス通信によると、ロシア軍のマカロフ参謀総長は「無人偵察機の試験的な購入を話し合った」と述べた。下院国防族から国内メーカーによる開発を求める声も出ているが、ロシア軍は2、3年後をめどにイスラエルから100機近くの無人偵察機を購入したい考えとみられる。
 今年8月に起きたグルジア紛争で、ロシアが軍事作戦上の勝利を収めたとされる一方、全地球測位システム(GPS)を使った精度の高い兵器を所有しない弱点などを露呈した。ロシアは性能の低い無人偵察機は所有しているが、グルジアがイスラエル製を駆使し、ロシアとの技術力の差が如実に表れた。
 冷戦末期からロシアはイスラエルとの関係構築に着手し、90年代後半から兵器の共同開発を始めた。これは第三国向けの輸出用であり、ロシアがイスラエルの技術を導入したことはなかった。軍事評論家のパーベル・フェリゲンガウエル氏は、ロシア軍需産業が先端技術の開発で後れを取っていると指摘。「先端技術を持つイスラエルやフランスへ依存を強める可能性がある」との展望を示す。
 イスラエルとの交渉に臨む一方で、ロシアはイランを相手に対空ミサイル施設「S300」の売却交渉を進めている。イラン国営通信によると、イラン国会のコサリ安全保障・外交政策委員会副委員長が21日、「ロシアとの交渉が決着し近く同システムの引き渡しが行われる」との見解を示したが、ロシア側は翌日に報道を否定した。
 S300がイランへ引き渡された場合、同国の対空防衛能力が格段に向上するため、イランと敵対するイスラエルが強く反対している。イスラエル紙「エルサレム・ポスト」(電子版)は一連の動きについて、ロシアが無人偵察機の売却でイスラエルへ圧力をかけるため、交渉についてリークしたと報道した。

◎日清食品、ロシア企業と提携、268億円出資へ(2008年12月26日、朝日新聞)
 日清食品ホールディングスは26日、ロシアの即席めん最大手アングルサイドと資本業務提携し、最終的に33.5%を出資して第2位の株主になると発表した。総投資額は268億円の見込み。来年1月にまず約15%を出資し、当面は現地ブランド商品について生産面で技術指導する。日清はすでに米国など海外11カ国で自社ブランド商品を販売しているが、ロシアへの進出は初めて。

◎即席めん事業でロシア進出、日清食品、270億円投資(2008年12月26日、産経新聞)
 日清食品ホールディングス(HD)は26日、ロシアの即席めん最大手マルベンフードセントラルの持ち株会社アングルサイド(キプロス共和国)と資本業務提携し、ロシア市場に初めて参入すると発表した。総投資額は約268億円。
 少子高齢化で国内市場が縮小する中、成長が見込める新興国を中心に海外事業を拡大するのが狙い。
 来年1月に約93億円でアングルサイドの株式約15%を取得し、2010年9月ごろまでに33.5%まで引き上げる。今回の提携で、日清は生産技術などのノウハウを提供。アングルサイドの生産、販売体制を活用し、「カップヌードル」など主力商品の販売も検討するという。
 アングルサイドの売上高は約310億円(08年見込み)で、ロシアの即席めん市場で4割超のシェアを握っている。
 日清食品HDは、明星食品の完全子会社化や国内の冷凍食品メーカーの買収などで国内の事業基盤を強化する一方、海外では米国や中国、インドなど世界11カ国で即席めんを販売。今年10月には持ち株会社制に移行している。

◎国益のため武力行使辞さず、ロシア大統領が強調(2008年12月25日、産経新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は24日、「許容されるあらゆる手段を用いて国益を擁護する」と表明、必要なら武力の行使も辞さないと強調した。ロシア3大テレビ局との年末の共同会見で述べた。
 大統領は「世界には紛争やテロ、国際犯罪など数多くの脅威が存在し、必要な場合には力による厳しい対応をしなければ国の主権は守れない」と説明。「ロシア国民であればどこにいようと保護する。これはあらゆる国家の義務であり、国際法に違反しない」と述べ、南オセチア自治州のロシア人保護を理由とした今年8月のグルジア侵攻を正当化した。

◎露、国産車保護に躍起、日本製中古車締めだしで極東猛反発(2008年12月20日、産経新聞)
 ロシアのプーチン首相が国内自動車産業の保護を目的に決めた中古車の輸入関税引き上げに対し、日本製中古車が人気の極東部の住民が猛反発している。中古車の輸入拠点であるウラジオストクでは14日に引き続いて20日にも大規模デモが発生し、金融危機が深まる中で社会不安が表面化してきたとの見方も出ている。
 問題となっている政令は、これまで約25%だった輸入中古車の関税を来年1月11日から30%以上に引き上げる内容。国の西部に集中する国産メーカーや外国メーカーの現地工場に、操業縮小などの動きが広がっていることを受けた措置だ。
 これに対し、日本製中古車が9割以上を占めるウラジオストクでは14日に数千人規模のデモが発生し、動きはシベリア各地まで波及した。ウラジオストクでは20日の1000人規模のデモで数十人が拘束されており、デモ主催者は21日にも鉄道封鎖などの行動を予告している。
 同市など沿海地方では約20万人が中古車関連の仕事に携わっており、関税引き上げは死活問題とみられていることが背景にある。
 他方、国産メーカーの工場がある西部のウリヤノフスクやトリヤッチでは18日、保護関税を支持する従業員らが大規模な対抗デモを組織した。プーチン首相は19日、国産車を鉄道で各地に移送する際の費用を政府が負担、国産車をクレジットで購入する際の利子を補助する措置を発表し、国産車価格の高い東部の住民をなだめようと躍起になっている。
 ロシアではソ連崩壊後、一貫して外車が増え続けており、国産メーカーの販売シェアは3割にも満たない。極東部やシベリア東部では「安価で高性能」と日本製中古車が主流になっている。

◎「先に攻撃した」グルジア大統領認める、「正当」とも(2008年11月29日、朝日新聞)
 グルジアのサアカシュビリ大統領は28日、南オセチア自治州をめぐる8月のロシアとの軍事衝突で、最初に軍事行動を始めたのはグルジア軍だったことを初めて公に認めた。ロシア軍の侵攻を阻止するための「正当で適切な措置だった」と弁明したが、グルジア軍の行為を検証する動きは国内外で強まっており、「先制攻撃」は認めざるを得ない立場に追い込まれたようだ。
 インタファクス通信などによると、この日開かれたグルジア紛争をめぐる議会調査委員会で証言した。大統領は「ロシア軍がグルジア領内に入っているという情報を何度も確認した」とし、「自国の領土と市民を守るために重大な決定をした。他に選択肢はなかった」などと説明した。
 グルジアからの分離独立を求める南オセチアの州都ツヒンバリで、砲撃などの軍事行動が始まったのは8月7日夜。グルジア側はこれまで、南オセチアを支援するロシア側から挑発があったため反撃したと主張してきた。
 しかし、親欧米のサアカシュビリ政権の頼みの綱でもあったBBCなど欧州メディアも最近になって、グルジア軍がツヒンバリで無差別攻撃を仕掛けた可能性をとり上げ始め、欧州連合(EU)も調査に乗り出すことを決めた。国内では野党勢力が大統領の責任追及の声を強めている。
 ロシア軍のノゴビツィン参謀次長は「国際社会も、北大西洋条約機構(NATO)さえも、グルジアが先に攻撃したのは確信していた。(正当化の発言は)攻撃を始めた責任を逃れるためのものだ」と批判した。

◎ウラジカフカス市長射殺される、北オセチア(2008年11月26日、産経新聞)
 インタファクス通信によると、ロシア南部の北オセチア共和国の首都ウラジカフカスで26日、ビタリー・カラエフ市長(46)が銃撃を受け、病院で間もなく死亡した。犯人や動機は不明だ。
 ウラジカフカスは8月、グルジア・南オセチア自治州に対するロシアの軍事介入の拠点となった。北オセチアは隣接するイングーシ共和国との民族衝突も起こしている。
 カラエフ氏は長年、地元自治体の高官として勤務した後、2月に市長に就任。出勤のため、車で自宅を出た際に銃撃されたようだ。

◎ロシア大統領任期6年に延長、上院も可決(2008年11月26日、産経新聞)
 ロシア上院は26日、大統領の任期を現行の4年から6年に延長する憲法改正案を賛成多数で可決した。下院はすでに可決。今後、州や共和国などの地方議会で審議されるが、年内に承認される可能性が高い。
 任期延長はメドベージェフ大統領が5日の年次報告で提案。プーチン首相が大統領職に復帰し、長期政権を敷く布石との憶測を呼んでいる。メドベージェフ大統領の現在の任期には適用されない。

◎サハリン2からLNG対日輸出、2月19日開始、露報道(2008年11月24日、読売新聞)
 インターファクス通信によると、ロシアの政府系企業「ガスプロム」のアレクサンドル・メドベージェフ副社長は22日、日本商社が出資する原油・天然ガス資源開発事業「サハリン2」から日本へ向けた液化天然ガス(LNG)の輸出を2月19日に開始すると明らかにした。
 リマでの日露首脳会談後に述べた。

◎欧州で最も高いビル建設を中止、金融危機直撃で、モスクワ(2008年11月23日、CNN)
 モスクワ――ロシアのインタファクス通信は21日、首都モスクワ中心部に建設中だった欧州大陸で最も高いビルが、国際金融危機の中で資金難に遭遇し、工事が中止になったと伝えた。高さ約600メートルの「ロシア・タワー」で、開発元が中断を明らかにした。
 モスクワの新開発地域に建てられていたもので、工事は昨年始まっていた。2011年に完工予定で、ロシア政府が目指すモスクワの世界の金融センター化を象徴するビルになるはずだった。
 開発元によると、テナント確保にもめどが付かない状態だった。
 豊富なエネルギー資源で国庫が潤い、大国復帰の政策を進めていたロシア政府だが、金融危機と原油価格の落ち込みで経済失速に襲われている。住宅価格が下落するなど不動産需要も冷え込み、事業中止も相次いでいるという。

◎ロシア:大統領任期延長へ、改憲法案、下院で可決、「プーチン氏復帰」憶測(2008年11月22日、毎日新聞)
 ロシアの下院本会議は21日、大統領の任期を現行の4年から6年へ延長する憲法改正に関する法案を賛成392、反対57で可決した。憲法改正には上院と連邦構成体の議会による承認も必要となるが、可決が確実視されている。同法案はメドベージェフ大統領が下院へ提出してから、10日で採択された。異例のスピード採択の背景で、ロシア政界では大統領が任期中に辞任し、プーチン首相が大統領に返り咲くとの憶測がくすぶり続けている。
 任期延長をめぐる動きについて、政治評論家のドミトリー・オレシュキン氏は英字紙モスコー・タイムズで、ロシア国内で石油価格の下落と金融危機による政治的な混乱が生じる可能性が出ていると指摘。そのためプーチン氏が大統領の座に復帰し、引き締めを図るとの見方を示している。
 下院の法案採択に先立ち、メドベージェフ、プーチン両氏は前日の20日に与党「統一ロシア」の党大会に出席し、両首脳が国内をけん引する「双頭体制」をアピール。しかし党大会では党首を兼ねるプーチン氏が1時間近く演説し、メドベージェフ氏との存在感の差を示す皮肉な結果となった。
 21日に採択された法案は、今後、上院の4分の3以上と、州や地方など83すべての連邦構成体の議会の3分の2以上の賛成を得て、早ければ来月中旬までに発効する。新任期は次の大統領選の当選者から適用される。

◎露大統領任期4年→6年、下院、1週間のスピード審議で承認(2008年11月20日、読売新聞)
 ロシア下院は19日、大統領任期を現行の4年から6年に延長する憲法修正案を承認した。
 与党「統一ロシア」が支配する下院はメドベージェフ大統領の提案から1週間あまりというスピード審議で承認した。修正案が成立すれば、次期大統領の任期は再選された場合12年まで伸び、プーチン首相が大統領に復帰し長期政権を目指す布石とも見られている。
 修正案には「統一ロシア」と「公正ロシア」が賛成、共産党は反対した。政権支持の極右「自民党」は大統領任期を7年に延長すべきだとの立場で棄権した。修正案は字句の微調整を経て上院に送られる。憲法修正には上下両院の承認と、全国80あまりの地方議会のうち3分の2以上の承認が必要だが、年内にも手続きが完了する見通しだ。
 1993年に制定された憲法が修正されるのは今回が初めて。

◎ロシア原潜が実験航行中に事故、20人以上死亡(2008年11月9日、読売新聞)
 ロシア国営テレビによると、ロシア太平洋艦隊所属の原子力潜水艦が8日、実験航行中に事故を起こし、乗組員ら20人以上が死亡した。
 負傷者21人は脱出し、救助艇に収容された。露海軍当局者は、「火災防止装置の誤作動が起きた」と説明している。原子炉は通常通り作動しており、原潜内の放射能レベルに異常はないという。
 事故現場の詳しい位置や、事故発生時の状況などは一切、明らかにされていないが、原潜には208人が乗っていた。犠牲者には、造船会社の作業員らが含まれており、極東地方の日本近海を航行していた可能性もある。船体に損傷はなく、原潜は9日未明(日本時間同日早朝)現在、救助艇とともに沿海地方の基地に向かっているという。
 メドベージェフ大統領はセルジュコフ国防相から事故の報告を受け、原因究明と遺族への支援補償対策を命じた。

◎ロシア原潜で事故、20人以上死亡、放射能漏れ「ない」(2008年11月9日、朝日新聞)
 ロイター通信によると、演習航行中のロシア太平洋艦隊の原子力潜水艦が事故を起こし、少なくとも20人が死亡、21人が負傷した。タス通信などロシアのメディアが報じたもので、ロシア海軍の当局者は事故の発生を認め、航行場所や原潜の名前などは特定しなかったが、事故を消火装置が誤作動したもので、原子炉からの放射能漏れなどはないと述べた。原潜には208人の乗組員がいるという。ロシアの艦船が原潜を支援し、港へ向かっているという。

◎露大統領:イングーシ共和国大統領を解任(2008年10月31日、毎日新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は30日、南部イングーシ共和国のジャジコフ大統領を事実上解任し、後任にボルガ・ウラル軍管区参謀本部の幹部エブクロフ氏を指名した。同共和国では反大統領派によるテロが続発しているため、ロシア政府は指導部の交代で鎮静化を狙っている様相だ。エブクロフ氏は99年の旧ユーゴスラビア空爆に関連した軍事作戦で活躍し、高い知名度を誇る。

◎ロシア大富豪の損失22兆円超? ロシア紙、金融危機で(2008年10月31日、朝日新聞)
 ロシアの大衆紙モスコフスキー・コムソモレツは、ロシアの大富豪たちが世界金融危機で軒並み資産を減らし、その損失総額は少なく見積もっても2300億ドル(約22兆6500億円)に達すると伝えた。
 同紙の「損失トップ10」によると、1位はロシア一の大富豪で「世界のアルミ王」の異名をとるデリパスカ氏。世界最大のアルミ企業ルスアル、非鉄大手ノリリスク・ニッケルなど株価急落などによる損失額は推計284億ドル(約2兆8千億円)。
 デリパスカ氏とともに米経済誌フォーブスの08年版長者番付に名を連ねた英サッカーチーム「チェルシー」のオーナー、アブラモビッチ氏は損失額151億ドルで4位。損失トップ10には製鉄やエネルギー関係の富豪が名を連ね、上位10人の損失総額は1560億ドルにのぼるという。
 最近の4カ月でロシアの富豪たちの損失を1時間当たりの額に計算すると8556万5476ドル(約84億円)だと同紙は伝えている。

◎グルジアとアブハジア境界の橋、爆破(2008年10月25日、朝日新聞)
 インタファクス通信などによると、グルジアからの独立をロシアが承認したアブハジア自治共和国とグルジアとの境界付近で24日、鉄道橋が爆破された。欧州連合(EU)の停戦監視団が展開する緩衝地帯にあり、アブハジア側はグルジア特務機関の破壊活動だと主張。反対にグルジア側は、ロシアが仕掛けたと反発している。
 橋はアブハジアのガリ地区とグルジアのズグジジ地区をつなぐ。グルジア内務省は同日、ガリ地区をグルジアから引き離すためのロシア側の工作だとする声明を出した。
 アブハジアの「独立」が既成事実化する中、境界付近では緊張が高まっている。ガリでは23日、アブハジア国防省の高官が殺害され、バガプシ大統領が緊急会議を開催し、境界付近の警備強化を命じていた。同大統領やロシア側は「EU監視団がグルジアの破壊活動を阻止できず、その意思もないことを示している」と批判していた。

◎南オセチア新首相に旧KGB出身者、ロシアの支配強化鮮明に(2008年10月24日、読売新聞)
 インターファクス通信によると、グルジアからの独立をロシアが承認した南オセチア自治州の新首相に22日、ロシア・北オセチア共和国出身で旧ソ連国家保安委員会(KGB)に所属したこともあるアスランベク・ブラツェフ氏が就任した。
 ココイトゥイ大統領の指名を同日、議会が承認した。同氏の就任で、ロシア政府による南オセチア支配の強化が鮮明になった。
 ブラツェフ氏は、ロシア連邦税務局の北オセチアの最高責任者で、2006年まで連邦保安局や前身のKGBに在籍した。治安機関出身者を枢要ポストに配置したいプーチン首相の意向を反映した人事だ。
 23日付露有力紙「ブレーミヤ・ノーボスチ」は、ブラツェフ氏について「プーチン首相が起用」との見出しで、南オセチア側は本音では、「大統領も議会も乗り気でなかった」と報じた。露政府に徴税、財政権限を握られかねないと考えたためだという。

◎失った資産何と23兆円、露の大富豪25人、株暴落で(2008年10月13日、産経新聞)
 ロシアの大富豪たち上位25人が、今年5月以降のロシア株式市場暴落で資産の62%にあたる2300億ドル(約23兆1500億円)以上を喪失したことが、13日までの金融通信社、ブルームバーグの調査で明らかになった。米フォーブス誌のロシア長者番付に基づき、保有資産の価格動向などから推計した。
 それによると、長者番付1位の「アルミ王」デリパスカ氏は160億ドル、同3位で英サッカーチーム「チェルシー」のオーナーとしても知られるアブラモビッチ氏は203億ドルの損失を出した。他方、一部には大口保有株を売り抜けた富豪もおり、市場ではソ連崩壊後の国有資産私有化や1998年の金融危機に続き、オリガルヒ(新興寡占資本家)による大規模な資産再配分が起きるとの見方が出ている。
 ロシアの株式市場は5月以降、経済に対する国家統制懸念やグルジア紛争、米金融危機の影響で6割以上下落した。一般国民の証券保有率は低いものの、今後は実体経済への影響も避けられない情勢とみられている。

◎ロシア最後の皇帝、ニコライ2世の名誉回復、露最高裁(2008年10月2日、読売新聞)
 【モスクワ=森千春】ロシア革命翌年の1918年、ボリシェビキ(のちのソ連共産党)勢力によって銃殺された最後のロシア皇帝、ニコライ2世とその家族について、ロシア最高裁は1日、「根拠なしに迫害された」と判断し、名誉回復するとの裁定を下した。
 皇帝の家系であるロマノフ家の子孫たちが起こしていた名誉回復の訴えを認めたもの。
 ロマノフ家の事務局代表は、「90年前の犯罪が指弾されることは大切だ」と歓迎の意を表した。ニコライ2世はロシア革命で皇帝の座を追われ、1918年7月にアレクサンドラ皇后と5人の子どもとともに、ウラル地方のエカテリンブルクで、裁判を経ずに罪状もないまま銃殺された。90年代初頭のソ連共産体制崩壊に伴い、ロシアでは遺骨発掘など銃殺の真相究明が進められ、今年7月には最後まで不明だった皇太子と第3皇女の遺骨が確認された。

◎「露スパイ、公然と活動」とチェコの情報機関(2008年9月26日、産経新聞)
 チェコの情報機関、BISは25日、ロシアのスパイが最近、チェコ国内で活動を活発化させていることを明らかにした。米国のミサイル防衛(MD)施設の設置を妨げるのが最大の狙いという。
 BISによると、ロシアのスパイは、チェコでのMD施設の設置に懐疑的なNGOや政治家、メディアに近づき、設置に反対するよう工作しているという。チェコの国会議員、ヤン・ビディム氏はAP通信に対し、「驚くべきことは、ロシア人が公然と、チェコ社会に影響を及ぼそうとしていることだ」と、警鐘を鳴らした。
 米製レーダー基地を設置するチェコは7月、米国との間で、施設の設置に正式に調印した。ただ、国内では設置に反対する声が強く、今後、国会での承認も必要となる。現時点では、一部の野党勢力を取り込まない限り、国会通過は難しいのが実情だ。ロシアの狙いは、劣勢を余儀なくされている与党に、“とどめ”を刺すことにある。
 トポラネク政権は10月にも、承認を求める法案を提出する予定だ。ただ、米大統領選が実施される11月前に、採決が行われる可能性はないとみられる。

◎【主張】グルジア合意、これでは露の策略通りだ(2008年9月10日、産経新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領がグルジア紛争について、南オセチア自治州とアブハジア自治共和国を除くグルジア全土からロシア軍部隊を今後1カ月以内に撤退させることで欧州連合(EU)の議長国、フランスのサルコジ大統領と合意した。
 これによりグルジア紛争の収束に向けた一歩が踏み出されたかのようにみえる。だが、今回の合意は、ロシアが8月12日にEU側と合意しながらこれまで履行してこなかった紛争の和平原則に「今後1カ月」という期限を設定したにすぎない。
 むしろ、ロシアが先に南オセチア自治州など2地域を独立承認したという暴挙に出たことに、何の方向性も出せなかった方が問題なのである。
 今回の合意は、これら2地域の外にあるグルジア領内で駐留し続けるロシア軍部隊が、10月1日までに欧州の200人を含む国際監視団が展開した後10日以内に撤収するとの内容だ。
 もともと、ロシアは前回の合意にもかかわらず、「秩序と治安の維持」の名目で、軍の撤退を履行せず、違法な駐留を継続した。今後の情勢の変化によっては、今回の合意も反故(ほご)にされかねない。
 しかも、肝心の南オセチアとアブハジアに駐留するロシア軍の今後については、まったく言及しなかった。それどころか、ロシアは、両地域への軍事支援を行う姿勢を示している。
 さらに気がかりなのは、ロシアが今回の合意を実行すれば、EUが停止していた対ロシア協力交渉を10月にも再開すると約束したことである。
 エネルギーの多くをロシアに依存する欧州としては、決定的な対立を避け、対話を継続することでロシアを説得してゆこうという戦略なのだろう。だが、その対話を半ば永久的に続けて時間を稼ぎ、経済カードで欧米の分断を図り両地域の独立、ひいては併合を既成事実化しようというのが、まさにロシアの策略だろう。
 グルジアをめぐる紛争は、長期にわたる欧米とロシアとの外交交渉が始まったばかりである。
 北方領土問題を抱える日本は、ロシアとグルジアの間で生じている領土問題にもっと関心を払うべきだ。少なくとも、主要国首脳会議(G8)の議長国として、首相自身が違法は許さないというメッセージを出してほしい。

◎独立の既成事実化へロシア布石、軍駐留へ外交関係仮調印(2008年9月10日、朝日新聞)
 ロシアのラブロフ外相は9日の記者会見で、ロシアがグルジアからの独立を承認した南オセチア自治州とアブハジア自治共和国について、双方と外交関係を樹立したと表明した。また、友好・協力・相互援助条約案に仮調印したことも明らかにした。欧米諸国は独立承認に反対しており、国際社会の批判が高まるのは必至だ。
 8日には欧州連合(EU)議長国フランスとロシアの両大統領が、1カ月後にロシアの平和維持部隊が南オセチアとアブハジアを除くグルジア領から完全撤退することで合意したが、ロシアは米欧が批判する独立承認に関しては既成事実化を着実に進めている。
 ラブロフ外相は9日、南オセチア、アブハジアの両外相と会談し、外交関係を結ぶ文書を交換。仮調印した友好・協力・相互援助条約案については今後、大統領レベルで正式調印する方向だ。
 同条約に関してラブロフ外相は、両地域にロシアの軍事基地を置くことも可能だと説明。侵略の脅威が生じた場合には、相互に軍事援助することになるとも述べた。
 さらに、10月15日にジュネーブで開くことで仏ロ大統領が合意した両地域の安全保障をめぐる国際会議について、「このような討議に、南オセチアとアブハジアは完全な権利を持った立場で参加するべきだ」との考えを示した。
 ラブロフ外相は9日、オーストリア外相とも会談。その後の記者会見では、南オセチアとアブハジアに今後、「ロシア平和維持部隊はいなくなるが、グルジアからの再侵攻に反撃できるようロシア正規軍がいることになる」と述べ、ロシア軍が長期にわたり駐留することを示唆した。
 両地域が「独立国」である以上、国際的な法秩序に従った軍事協定を結ぶことでロシア軍の駐留が可能となることを強調したとみられる。
 一方、ロシア国営のイタル・タス通信は9日、独立承認と外交関係樹立を受けて、南オセチアとアブハジアに支局を開設すると表明した。

◎ロシア軍、1ヵ月後にグルジア領撤退で合意、2地域除き(2008年9月9日、朝日新聞)
 ロシアとグルジアの衝突を巡り、欧州連合(EU)議長国フランスのサルコジ大統領は8日、モスクワを訪問し、ロシアのメドベージェフ大統領と会談した。両大統領は、1カ月後にロシア軍を南オセチア自治州とアブハジア自治共和国以外のグルジア領から撤退させることなどで合意。だが、ロシアが承認した両地域の独立についての立場は一致しなかった。
 会見で両大統領は、8月に合意した基本原則(停戦合意)に追加し、(1)グルジアが武力行使をしないとの条件で、1週間以内にグルジア西部ポチとセナキ間の監視所を撤去する。1カ月後にロシア軍を両地域以外のグルジア領から撤退させる(2)10月1日をめどに両地域周辺の緩衝地帯にEUの200人を含む停戦監視員を配置する(3)10月15日をめどにジュネーブで両地域の安全保障に関する国際会議を開始する――ことで合意、署名したと明らかにした。
 メドベージェフ氏は、ロシア軍のグルジア領からの撤退は、両地域周辺の緩衝地帯に国際的監視団を配置した後、10日以内と説明した。
 サルコジ氏は「信頼を得て、完全撤退の約束を得た。世界は冷戦に逆戻りしないし、その必要がないことも示し得た」と主張。仲介に自信を見せた。
 メドベージェフ氏は「独立の承認を巡る見解の違いはあるが、EUは私たちにとって建設的でカギとなるパートナーだ」と話した。
 両地域のグルジアからの独立をロシアが承認した問題についてサルコジ大統領は「合意できない。グルジアの国境を決めるのはロシアでない」とした。メドベージェフ大統領は「私たちは、最終的で戻ることの出来ない選択をした」と述べ、撤回する意思がないことを重ねて強調した。
 また、1日のEU緊急首脳会議で決まった「撤退がない限り戦略的パートナーの協議を延期する」という決定について、サルコジ大統領は「撤退の確約が得られた以上延期する理由はなくなった。EUとロシアはパートナーだ」と話し、予定通り開催する意向を示した。
 サルコジ氏は8日中にグルジアに移動し、サアカシュビリ大統領と会談。人道援助や復興支援の具体策についてEUの立場を伝える。

◎ロシア、強まる国家主義、グルジア紛争、メディアが政権擁護(2008年9月3日、日本経済新聞)
 グルジア紛争をきっかけにロシアでナショナリズム(国家主義)が一段と高まっている。政権が支配するメディアが政府の動きを擁護する一方的な主張を報道。米欧と対抗する「強いロシア」のイメージを強調して愛国心をあおっている。世論調査によると国民の大半がグルジア侵攻を支持しており、政権の強硬姿勢を後押ししている。
 ロシアの調査会社「世論基金」が8月末に発表した全国調査によると75%がグルジア侵攻を支持し、反対は8%にとどまった。「世界で最も強い影響力を持つ国を目指すべきだ」と答えた国民は82%に上った。

◎「露への編入考えず」アブハジアの大統領が会見で方針(2008年9月2日、読売新聞)
 【スフミ(グルジア・アブハジア自治共和国)=緒方賢一】ロシアから独立承認を受けたグルジア・アブハジア自治共和国のセルゲイ・バガプシ大統領は2日、自治政府庁舎で本紙など外国メディアと会見し、共和国の今後の地位について「独立を求める意思が、住民投票を通じてすでに示されている」と述べ、ロシアには編入せず「独立国家」としての地位を国際的に確立する方針を示した。
 また、共和国の独立を承認する国が今後10か国程度まで増えるとの見通しを示した。
 大統領は「ロシア軍には平和維持部隊として従来通り駐留するよう期待している」と述べ、軍事協力を含むロシアとの基本的な協定を「2週間以内に準備する」と明言した。自治共和国政府によると、アブハジアには約3000人のロシア軍兵士が駐留しているという。

◎反体制サイト責任者、拘束後に銃殺か、ロシア南部(2008年9月1日、CNN)
 モスクワ(AP) ロシア南部イングーシ共和国を拠点に、インターネット上で反体制サイトを運営していたマゴメド・エブロエフ氏が8月31日、警察当局に拘束された後、銃で撃たれて路上に倒れているところを発見され、搬送先の病院で間もなく死亡した。サイト関係者は「警察に銃殺された」と主張している。
 エブロエフ氏は同日、モスクワからの飛行機でイングーシのメガス空港に到着。着陸直後に警察が機内へ突撃し、同氏を拘束した。サイト関係者は、警察が連行中の車内で同氏の頭部を銃撃し、路上に放置したとの見方を示している。
 一方、ロシア検察当局は、同氏が警察本部での取り調べに向かう途中の「出来事」で死亡した、と発表。詳細は明らかにせず、状況調査を開始したと述べた。
 イングーシでは、旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身のジャジコフ共和国大統領の下、当局が反体制派やイスラム教徒らを不当に拘束、虐待、処刑しているとして、国際人権団体からの批判が強まっている。エブロエフ氏は、警官による民間人の扱いなどを批判したことで地元当局の怒りを買っていた。同氏のサイトは「過激思想を広めた」として、6月に裁判所から閉鎖命令を受けたが、その後、別の名前で復活していた。

◎ロシア:米産鶏肉を輸入禁止へ、グルジア問題で「制裁」?(2008年8月31日、毎日新聞)
 【モスクワ杉尾直哉】インタファクス通信によると、ロシア連邦農産物衛生監督局は29日、米国の鶏肉生産19業者を来月1日以降、ロシアへの輸出許可業者リストから除外すると発表した。ロシア農業省は「許容限度を超えたヒ素やサルモネラ菌、大腸菌の検出」を理由にしているが、グルジア問題を巡り、欧米諸国と対立が先鋭化している時期だけに、ロシアによる「対米制裁」と目されるのは避けられない情勢だ。
 プーチン首相は28日の米CNNとの会見で、この措置を予告し、「グルジア問題とは一切関係ない。政治的意図はなく、制裁でもない。過去にもこうした禁輸措置を取ってきた」と語った。
 近年、ロシアはポーランド産の食肉やグルジア産のワインを食品安全上の問題を理由に輸入禁止してきた経緯がある。いずれもロシアとの外交的関係が悪化した際に取られた措置だった

◎グルジア情勢:中国や中央アジア諸国にも「ロシア離れ」(2008年8月31日、毎日新聞)
 【モスクワ大木俊治】グルジア情勢について、中国や中央アジア諸国は、軍事介入したロシアへの明確な支持を打ち出すことを避けている。28日開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議で採択された「ドゥシャンベ宣言」も、各国の懸念を色濃く反映。ロシアの孤立ぶりが浮き彫りにされている。
 宣言では、軍事衝突の舞台になった南オセチア自治州での「平和構築でロシアが果たす積極的な役割を支持する」との文言が盛り込まれた。タス通信は、この部分は最後の段階で補足されたと伝えている。「支持」の一言がどうしてもほしかったロシアと、欧米との対立を避けたい他国との妥協の産物だった可能性が高い。
 欧米も、軍事介入までロシアが「平和維持軍」として南オセチア住民を保護してきたことや、停戦後、平和構築のため南オセチアに部隊を駐留させることには反対していない。批判しているのは独立派勢力の支配地域を超えたグルジア支配地域へのロシア軍の進駐や空爆であり、南オセチアとアブハジア自治共和国の独立を一方的に承認したことだ。
 この点で宣言は、欧米と同様に「国家統一と領土保全の原則」や「交渉による解決」を求めており、ロシアの姿勢を支持する文言は一切盛り込まれていない。むしろ「他国の安全を犠牲にした安全保障はありえない」とまで指摘している。
 05年の首脳会議は、ウズベキスタンで起きた反政府暴動に対する政府の武力鎮圧で、ウズベク政府を全面的に擁護する宣言を採択した。これに比べると、今回の宣言は中立的とさえ言える。ロシアは孤立していないことを示す必要があったが、宣言は、実際には各国のロシア離れを示したといえる。

◎ロシア:米鶏肉9月から輸入禁止、「対米制裁」の意図否定(2008年8月30日、毎日新聞)
 【モスクワ杉尾直哉】インタファクス通信によると、ロシア連邦農産物衛生監督局は29日、米国の鶏肉生産19業者を来月1日以降、ロシアへの輸出許可業者リストから除外すると発表した。ロシア農業省は「許容限度を超えたヒ素やサルモネラ菌、大腸菌の検出」を理由にしているが、グルジア問題を巡り、欧米諸国と対立が先鋭化しているだけに、ロシアによる「対米制裁」と見られるのは避けられない情勢だ。
 一方、プーチン首相は28日の米CNNとの会見で、この措置を予告し、「グルジア問題とは一切関係ない。過去にもこうした禁輸措置を取ってきた」と語った。だが近年、ロシアはポーランド産の食肉やグルジア産のワインを食品安全上の問題を理由に輸入禁止してきた経緯がある。いずれもロシアとの外交的関係が悪化した際に取られた措置だった。

◎グルジア:ロシアと外交関係断絶へ、外務次官が発表(2008年8月30日、毎日新聞)
 【モスクワ大木俊治】グルジアのワシャゼ外務次官は29日、ロシアとの外交関係を断絶すると発表した。議会が28日、政府に対露断交を求める決議を採択したことを受けた措置。ロシアのグルジア南オセチア紛争への軍事介入で始まった危機の打開は当面、極めて困難になった。
 次官によると、グルジアはモスクワに残る大使館職員全員を30日に召還する。一方、ロシア政府も対抗措置として、トビリシのロシア大使館を閉鎖する方針だ。ただ、領事関係は存続させるという。
 ロシアはすでにグルジアのサーカシビリ大統領を「交渉相手とは見なさない」として直接交渉を拒否。これに対し、欧米や、中国を含む上海協力機構(SCO)も28日、当事者間の対話による解決を求めていた。

◎グルジア、ロシアとの外交関係断絶へ(2008年8月30日、読売新聞)
 【モスクワ=緒方賢一】タス通信によると、グルジア外務省の高官は29日、ロシアとの外交関係を近く断絶する方針を明らかにした。
 グルジアは軍事衝突に続いて、自国領の南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の二つの地域の独立を承認したロシアに強く反発している。
 モスクワのグルジア大使館員は、30日に引き揚げる予定。ロシアはグルジアのサアカシビリ大統領を交渉相手と認めない立場だが、外相による接触は続けるとしていた。
 グルジア側は今後、ロシアとの交渉を第三国で行うと説明している。

◎プーチン首相、欧州を猛烈批判「米国の言いなり」(2008年8月30日、朝日新聞)
 【モスクワ=大野正美】ロシアのプーチン首相は29日、ドイツARDテレビとのインタビューで「欧州諸国は米国ホワイトハウスの指令をすべて実行してきた。こんなことなら、我々は欧州の問題をワシントンと協議せざるを得なくなる」と述べ、欧州諸国の外交姿勢を激しく批判した。
 グルジア紛争をめぐって対ロシア制裁問題などを協議する9月1日の欧州連合(EU)緊急首脳会議を前に、ロシアとの対決姿勢を強める米国とは別の対応を欧州側に促し、両者の分断を図ろうとした発言と見られる。
 プーチン氏は、国連安保理決議でセルビアの領土保全を保証しながら欧州諸国の多くが米国に従ってコソボ独立を承認した例を挙げ、「自国の利益ではなく、他国の対外政策上の利益に奉仕するような国々の権威は低下してゆくだろう」と強調した。その一方で米国に対しても、「米政権の与党候補を大統領選で優位に立たせるためにグルジアを支援し、危機を挑発した」などと改めて強く非難した。
 またグルジア領の「安全地帯」に駐留するロシアの平和維持部隊については、「グルジア側が新たな軍事紛争のためにひそかに兵器を集積するのを防ぐ必要がある」とし、駐留の長期化を示唆した。

◎「グルジア紛争はロシアの失地回復作戦」(2008年8月29日、産経新聞)
 【パリ=山口昌子】グルジア紛争でロシアのメドベージェフ大統領は「冷戦を恐れず」と対米欧への対決姿勢を見せつけた。フランス戦略分析研究所のフランソワ・ジェレ所長は産経新聞との会見で、ロシアは紛争を好機としてソ連崩壊以来の「失地回復」を狙っているとの見方を示した。発言の要旨は次のとおり。
 グルジアは非常にまずい行動を取った。ロシアの反撃を過小評価し米国の支援を過大評価したからだ。ブッシュ米政権が2期目の初期であったら多少、米国の反応は違ったかもしれないが、現在の米国にとってグルジア紛争はしょせん、ロシアの内政問題だ。次期米政権にとっての最優先事項は国内の経済再建であり、外交面ではイラク、イラン、イスラエルの中東問題とアフガニスタンだ。
 ロシアにとってグルジア紛争は、ソ連崩壊から2004年に旧ワルシャワ条約機構加盟国のポーランドなど10カ国が欧州連合(EU)に加盟するまでに失った影響力を回復する好機となった。ロシアにとっては、これらの国のEU加盟や北大西洋条約機構(NATO)加盟は我慢の限界であり、グルジア、ウクライナのNATO加盟は許すわけにはいかなかった。ロシアは今後、グルジアでの親ロシア政権樹立を画策するはずだ。
 クシュネル仏外相がロシアの次のターゲットはクリミア半島、ウクライナ、モルドバだと指摘したのは正しい。帝政ロシア時代から黒海は地政学上、重要だからだ。
 今回、サルコジ仏大統領はEU議長として迅速に動いたが、EUは対ロシアの具体的方策を持っていない。中・東欧と仏独英とは内部分裂状態だ。仏独英はロシアのエネルギー源に依存している。英国の発言は強硬だが、石油大手BPがロシアの世話になっているから実際の態度は極めて慎重だ。フランスも石油大手トタルがロシアに進出している。メルケル独首相はロシアを嫌悪しているかもしれないが、経済的にも政治的にもドイツはロシアと良好な関係を維持する必要がある。
 グルジア紛争はロシアが強硬に出た場合、NATOもEUも国連も無力だということを示す結果になった。いや、NATOもEUもロシアのこうした面を熟知しているからこそ、これまで“戦略的パートナー”としてロシアを取り込んできたわけだ。EUが繰り返す“政治的解決”とはロシアとうまくやっていくという意味にほかならない。残念ながらグルジア紛争はロシアの勝利だ。

◎露大統領「新冷戦は望まないが、西欧のパートナー次第だ」(2008年8月27日、読売新聞)
 【モスクワ=大内佐紀】ロシアのメドベージェフ大統領は26日、内外のテレビとのインタビューで、ロシアがグルジア・南オセチア自治州と同アブハジア自治共和国の独立を承認したことで対米関係などが急速に冷え込んでいることについて、「我々には、新冷戦の到来を含め何も恐れるものはない。むろん、新冷戦は望まないが、これは西欧のパートナー次第だ」と述べ、露側が譲歩する考えがないことを強調した。
 大統領は、「人道支援」の名目でグルジア沖の黒海に入った米艦船について、「人道物資ではなく、武器を供与している」と非難。また、米国が進めるミサイル防衛(MD)網計画に関連し、ポーランドやチェコに迎撃ミサイルなどが実戦配備されれば、「ロシアへの明らかな脅威であり、軍事的な対抗措置を取る」と言明した。北大西洋条約機構(NATO)との関係についても、「別れを告げても痛くもかゆくもない」と対決姿勢を改めて示した。
 大統領はさらに、欧米が支援するグルジアのサアカシビリ政権を「相手にする気はない」と一蹴した。

◎南オセチアとアブハジア、ロシアが独立承認、日米欧は反発(2008年8月27日、日本経済新聞)
 【モスクワ=古川英治】ロシアのメドベージェフ大統領は26日、グルジアから分離独立を主張する南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立を承認する大統領令に署名した。グルジアの領土保全を尊重するよう要求してきた日米欧への対決姿勢を鮮明にしたもので、各国は一斉に反発した。同大統領はロシア地元テレビで「新冷戦を恐れていない」と発言、欧米との緊張が一気に高まる恐れもある。
 メドベージェフ大統領はロシア南部のソチでプーチン首相ら政権幹部を集めた安全保障会議を開いた後で国営テレビを通じて南オセチアなどの独立承認を発表した。「グルジアが国際法に違反して武力行使をした」などと主張し、各国にも独立を承認するよう呼び掛けると発言した。
 これに対し、グルジアのサーカシビリ大統領は同日声明を発表し、「ロシアは欧州の国境を武力により変えようとしている。法的根拠はまったくない」と強く非難した。

◎グルジア:石油輸送列車が爆発、露軍の地雷で?(2008年8月25日、毎日新聞)
 【モスクワ支局】ロシア軍が撤退を完了したグルジア中部のゴリ近郊で24日、石油を輸送中の列車が爆発、炎上した。死傷者はいない模様。同国内務省当局者は「ロシア軍が線路に仕掛けた地雷が爆発した」とロシアを非難した。
 AFP通信によると、爆発が起きたのはゴリの西約5キロの村スクラの渓谷で、22日までロシア軍が占拠していた基地の近くという。列車は、隣国アゼルバイジャンから黒海沿岸のグルジアの港に向かっていた。
 南オセチア自治州を巡る軍事衝突で、ゴリはロシア軍の支配下にあったが、23日にグルジアの統治下に戻っていた。
 一方、ロイター通信によると、グルジアに人道支援物資を届ける米艦船3隻のうちイージス駆逐艦マクフォールが24日、グルジア南西部のバツーミに入港した。当初はポチに入港する計画だったが、ロシア軍が居残っているため避けた模様だ。

◎グルジア:「戦時状態」宣言を15日間延長(2008年8月23日、産経新聞)
 インタファクス通信によると、グルジア議会は23日、南オセチア自治州へのロシアの軍事介入を受け、サーカシビリ大統領が9日に出していた「戦時状態」宣言を15日間延長し、9月8日までとすることを決めた。
 宣言は当初、15日間とされていたが、大統領はロシア軍が停戦の合意に反してグルジア領内に残留しているとして、延長を求めた。(共同)

◎「ロシア軍、黒海沿岸に」グルジア側が撤退を否定(2008年8月23日、日本経済新聞)
 【モスクワ=坂井光】ロシアが22日夕(日本時間23日未明)、グルジアに侵攻していたロシア軍の撤退完了を発表したのに対し、グルジア側はロシア軍が黒海沿岸の石油積み出し港があるセナキ近郊などにとどまっているとして、これを否定した。ロシアは「平和維持活動」のためグルジア領内の一部に軍を駐留させる意向を表明しており、双方が「撤退」の定義を巡り早くも対立している。
 AP通信によると、撤退完了発表後も西部のセナキ周辺やポチ周辺など、最低3カ所でロシア軍が活動していることが確認された。ロシアのセルジュコフ国防相は声明で、軍撤退後も一部が平和維持部隊としてグルジア領内に「緩衝地帯」を設け、検問所を設置することを明らかにしており、これらの3カ所はそれに該当する可能性がある。
 グルジア側は「緩衝地帯」や検問所の設置はロシア側と合意した「和平合意」に反するものとして22日のロシア軍の行動は「撤退」とは認めない立場。米国もこれには反発を強めており、和平に向けた動きは不透明なままだ。

◎「グルジアから撤退完了」、ロシア国防相、大統領に報告(2008年8月23日、朝日新聞)
 【ポチ=喜田尚、モスクワ=大野正美】グルジアの南オセチア自治州をめぐる同国とロシアの軍事衝突で、ロシアのセルジュコフ国防相は22日夜、「停戦合意に従い、ロシア軍はグルジア領からの撤退を完了した」とメドベージェフ大統領に報告した。ロシア国防省は23日、グルジア領でのロシア軍による道路の占拠をすべて解除した、と発表した。
 ロイター通信などによると、グルジアの東西を結ぶ幹線道路が23日、グルジア軍部隊の管理下に復帰。停戦合意を受けて22日、南オセチア自治州、アブハジア自治共和国とグルジアとのそれぞれの境界付近に新たに設けられた「安全地帯」でロシア平和維持部隊が駐留を始めた。
 しかしグルジア側は、中部の都市ゴリの北方や西部の港湾都市のポチ周辺などでロシア軍が依然駐留を続けていると批判している。
 ロシア軍の撤退をめぐっては、サルコジ仏大統領とブッシュ米大統領が22日、電話協議。ロシアに撤兵の完了を重ねて求める方針で一致した。一方、ロシア軍のノゴビツィン参謀次長は23日の会見で「グルジアへの人道支援の名目で北大西洋条約機構は艦艇を黒海に集結させている。米国がグルジア軍の軍備再建に協力するなら、ロシアは南オセチアとアブハジアの紛争地帯で自国の平和維持部隊を増強する」と警告した。

◎グルジア:南オセチアの平和維持活動、露軍のみで実施へ(2008年8月22日、毎日新聞)
 【モスクワ杉尾直哉】ロシア軍のノゴビツィン参謀次長は21日の会見で、グルジア南オセチア自治州の平和維持活動は今後、ロシア軍のみが行うと発表した。グルジア軍の平和維持部隊を南オセチアから追放し、ロシア軍が一帯を完全掌握することになり、グルジアや欧米諸国の批判は必至だ。
 これまではロシア、グルジア、南オセチア独立派勢力の3者がそれぞれ500人の平和維持部隊を出していた。参謀次長は「グルジア軍は侵略行為に参加し、平和維持活動を行う道義的権利を失った」と述べた。また、参謀次長は、南オセチア上空を飛行する外国の航空機はすべてロシアの許可が必要となると宣言、領空も支配する考えを示した。
 参謀総長は、ロシア軍の平和維持部隊は、南オセチアだけでなく、周辺の「緩衝地帯」にも駐留すると改めて述べた。南オセチア以外のグルジア領内に侵攻していたロシア軍は22日までに南オセチアや緩衝地帯内まで撤退させるという。

◎ロシア軍、ゴリから撤退開始か、グルジア紛争(2008年8月20日、朝日新聞)
 【イゴエティ(グルジア中部)=土佐茂生、モスクワ=星井麻紀】ロシア軍は19日、侵攻したグルジア中部の都市ゴリから撤退作業を始めた模様だ。AP通信などがゴリ市内からの目撃情報として伝えた。事実なら、同軍が今月11日に南オセチア自治州境界を越えて侵攻して以来、同州以外から初の撤退となる。
 AP通信によると19日午後、ロケット発射装置などの兵器を積んだロシア軍の車列がゴリ北方の南オセチア自治州に向かったという。首都トビリシから西45キロのイゴエティでは、首都方向に展開していたとみられる戦車7台がゴリに戻るのを朝日新聞記者が目撃した。ロシア軍は18日に撤退開始を発表したが、動きは確認されていなかった。
 同軍のノゴビツィン参謀次長は19日の会見で「ロシアは6原則(和平合意文書)の義務を果たしていると明確に言うことができる」と述べた。
 しかし、グルジア内務省のウティアシュビリ報道官は朝日新聞に「ゴリの主要部隊は撤退の動きを見せていない。引き揚げるかのような車両の動きは見せかけだ」と述べた。グルジア側は同日、ロシア軍が黒海沿岸の港湾都市ポチでグルジア人警察官20人を拘束したと批判した。
 この日は、ロシアとグルジアによる捕虜交換が行われた。ロシアから15人、グルジアからは5人の軍人が双方の代表者に引き渡された。

◎ロシア軍、グルジア撤収の構え見せず、情勢安定化の気配うかがえず(2008年8月16日、産経新聞)
 【トビリシ=遠藤良介】ロシアが南オセチア自治州に軍事介入したグルジア紛争は、ロシアのメドベージェフ大統領が6項目の和平原則に署名したことで、紛争解決に向けた展望も生まれてきた。しかし、トビリシ近郊では、ロシア軍兵士が新たな戦闘に備え塹壕を掘るなど、グルジア領内で、なおも活発な活動を続けている。情勢が安定化に向かうかどうかは依然、予断を許さない状況だ。
 グルジア領内に侵攻してきたロシア軍は16日、首都・トビリシから約40キロの拠点にまで迫っており、和平合意調印後もそのまま駐留するような態勢を取っているという。
 交通の要所である中部ゴリには、兵士を乗せたロシア軍の軍用車両が展開しているほか、街の内部や周辺部に仕掛けられた爆弾の処理が進められ、街全体の非武装化が図られている。住民の話によると、ロシア軍ヘリコプターからの攻撃で、ゴリ周辺では山火事が断続的に起こっているという。グルジア内務省は16日、首都トビリシの西方約45キロにある鉄橋をロシア軍が爆破したと述べた。鉄道はグルジアを東西に貫く主要路線で、内務省は「ロシア軍はグルジアの鉄道網をまひさせた」と非難した。ロシア軍は爆破を否定している。
 ロイター通信によると、トビリシから約40キロの村に駐留するロシア軍の規模は軍用車両17台、兵士は200人ほどで、進軍の際には、上空にロシア軍のヘリコプターが低空飛行して援護していたという。軍用車両には狙撃兵のほか、武器弾薬も備えられている。村の付近ではロシア軍兵士が塹壕を掘っているほか、軍用車両を道路近くの木々の間に隠したりするなど、撤収する気配をみせていない。
 国営ロシア通信によると、南オセチア自治州に駐留していたロシアの平和維持部隊がさらに増員される見通しという。ロシア側はこの増員は「和平原則と矛盾するものではない」と主張するが、ロシア平和維持部隊の報道担当者は「私たちは南オセチアでの教訓から、増強されなければならない。(南オセチアには)戦車を含む大型武装兵器が投入されることになるだろう」と語り、戦闘態勢を維持する姿勢を示した。ロシア軍のノゴビツィン参謀次長も16日、「6項目の和平合意に基づいて交渉する」と述べたものの、即時撤退には応じない考えを示している。

◎グルジア紛争、ロシアが進軍継続 和平合意、履行不透明に(2008年8月16日、日本経済新聞)
 【トビリシ=古川英治】グルジア紛争で停戦と軍の撤退を盛り込んだ和平「6原則」に反して同国領の占拠を続けるロシア軍は15日夜、さらに各地に進軍した。グルジアが和平合意に関する文書に署名し、同国を訪問した米国のライス国務長官がロシアに即時撤退を要求した直後に軍事作戦を拡大したもよう。グルジアを挑発する狙いとみられ、和平合意の履行は不透明な状況だ。
 ロシア軍は占拠を続ける中部のゴリから進軍し、首都トビリシから約50キロメートルの地点に接近した。ロイター通信などは進軍する戦車を確認したと報じた。サーカシビリ大統領は15日夜の記者会見で中部のハシュリとボルジョミにもロシア軍が進軍したと発表。「ロシアが占領地域を広げている」と非難したうえで、「グルジア軍は挑発には乗らない」と強調した。
 ロイター通信によると、ロシア軍高官はグルジア各地への進軍の目的について「グルジアとオセチア市民の戦いを止め、平和を実現するためだ」などと語った。

◎グルジア停戦成立へ、露「合意を忠実に履行」と誓約(2008年8月16日、読売新聞)
 【トビリシ=貞広貴志】ライス米国務長官は15日、グルジアのサアカシビリ大統領が「6項目の和平案」に署名したのを受け、ロシアのラブロフ外相と電話会談し、「合意を忠実に履行する」との誓約をロシア側から取りつけた。
 米当局者が明らかにした。メドベージェフ露大統領は16日にも署名する見通しで、近く停戦が正式に成立する。
 共同記者会見で同長官は「合意により、露軍はグルジア領土から即座に撤退しなければならない」と要求した。合意文書は未公表だが、米紙ニューヨーク・タイムズによると、停戦を仲介したサルコジ仏大統領の書簡が付属文書となり、停戦後も露平和維持部隊が係争地に展開するのを容認する一方、「人口密集地や、グルジアの東西を結ぶ幹線道路では治安作戦を行わない」と盛り込まれた。
 合意は、係争地である南オセチアとアブハジアの帰属問題を棚上げしており、サアカシビリ大統領は「国土を1平方キロ・メートルたりとも譲らない」と主張した。

◎露軍、グルジアの首都トビリシへ45キロに迫る(2008年8月16日、読売新聞)
 【トビリシ=本間圭一】ロイター通信は15日、グルジア中部ゴリに侵攻したロシア軍部隊の一部がさらに移動し、首都トビリシの北西約45キロ地点で確認されたと伝えた。
 今回、ロシア軍が最も首都近くに迫った動きとなる。進軍したのは兵員輸送車17両と兵士約200人で、トビリシの北西約70キロにあるゴリから幹線道路を通って移動した。
 米欧などがロシア軍の即時撤退を求める中、これに逆行する動きで、ロシアに対する欧米の批判は一層、強まりそうだ。グルジアのサアカシビリ大統領も同日、ロシア軍がグルジア中部の町に戦車を進めたとしてロシアを非難した。

◎グルジア紛争、2地域帰属で火種残す(2008年8月13日、産経新聞)
 【モスクワ=佐藤貴生】5日間にわたったグルジア紛争で、ロシアはグルジア領南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の両地域に対する実効支配をさらに強固なものにした。欧州連合(EU)議長国フランスのサルコジ大統領の仲介で、6項目の紛争解決に向けた和平原則に同意したことを受け、今後は停戦実現に向けた交渉の行方に焦点が移る。ただ、ロシア、グルジア両国は両地域をめぐって早くも駆け引きを展開しており、合意達成の難しさが浮き彫りになっている。
 グルジアのサーカシビリ大統領は13日、首都トビリシでサルコジ大統領と会談し、紛争終結に向けた和平原則に基本的に合意した。
 同原則は12日、訪露したサルコジ大統領とメドべージェフ大統領との間でも合意されており、ロシア、グルジア両軍の軍事行動停止や、双方が紛争前の位置まで部隊を撤退させることに加え、南オセチアとアブハジアの安定と安全に関する国際的な協議の開始などが盛り込まれた。
 しかし、サーカシビリ大統領とサルコジ大統領との会談では、サーカシビリ大統領が「グルジアの領土保全は不変の原則であり、南オセチアとアブハジアの帰属が問題になることはいかなる和平案のもとでもあり得ない」と強く主張。当初、「将来の地位および安全保障に関する国際的協議の開催」とした和平原則の文言から「将来の地位」を削除するよう要求した。
 南オセチア、アブハジアの両地域にはロシアへの帰属替えや独立を求める住民が多い。将来の地位を国際的に協議することになれば、離脱を支持する声が上がりかねないことから、グルジア側としては両地域がグルジアに帰属することを前提にした上で、ロシアだけでなく国際社会を含めて協議するのが望ましい-というわけだ。
 また、サルコジ大統領は、南オセチアとアブハジアに平和維持部隊の名目で駐留しているロシア軍の地位をめぐる協議は先送りし、今後の議論に委ねる姿勢を示した。現状通り、一国だけで駐留し続けたいロシア側に対し、グルジアはEUなど第三者も駐留することを望んでおり、思惑は対立している。
 ロシアにすれば、停戦交渉で南オセチア、アブハジア両地域に対する実効支配をさらに強固なものにしたいのが本音だ。対するグルジアは少しでもロシアの直接的な圧力を弱めるため、今後も国際社会の介入を求めていくものとみられる。双方の攻防はまだ始まったばかりだ。

◎ロシア・グルジア停戦合意 「戦後」にらみ非難合戦(2008年8月13日、日本経済新聞)
 【モスクワ=古川英治】南オセチア自治州を巡るグルジア紛争はロシアとグルジアが13日未明、戦闘の停止と両軍が戦闘前の配備に戻ることを盛り込んだ「6原則」に合意し、停戦が実現する見通しとなった。ただ、両国は政治的な非難合戦を展開。グルジア支援の姿勢を鮮明にする北大西洋条約機構(NATO)や米国の思惑も絡み、和平に向けた道筋はなお不透明だ。
 グルジアの首都トビリシでは12日、10万人を超える市民がロシアの侵攻に対する抗議集会を開いた。ポーランドとウクライナ、バルト3国の首脳も参加した集会でサーカシビリ大統領は「ロシアに犯した罪を思い知らせると約束する。いつか我々が勝利する日が来る」と演説し、グルジアの国旗を掲げた市民の喝采を浴びた。

◎グルジアも一部修正し和平案受諾、露との衝突終結へ(2008年8月13日、読売新聞)
 【トビリシ=本間圭一】グルジアのサアカシビリ大統領は12日夜、トビリシで欧州連合(EU)議長国フランスのサルコジ大統領と会談し、南オセチア紛争の解決を目指す6項目の和平案について、文言を一部修正したうえで受け入れた。
 これによりロシアとグルジアの停戦の基礎が成立し、今回の軍事衝突はさしあたり終結する見通しとなった。
 インターファクス通信などによると、サルコジ大統領とロシアのメドベージェフ大統領が合意した和平案について、サアカシビリ大統領は、グルジアからの独立を主張する南オセチアとアブハジア自治共和国の「将来の地位について、国際的な協議を始める」との項目の修正を要求。メドベージェフ大統領にも連絡し、協議した結果、「将来の地位」との表現を削り、「安定と安全を確保するため、国際的な協議を始める」に改められた。
 グルジア側は、事実上の独立状態にある地域を含む領土の一体性を守ることができたとの見解を示している。
 和平案は13日、EU外相理事会が承認し、国連安保理に決議案として提出される予定だ。

◎露大統領が作戦停止命令、グルジアはCIS脱退(2008年8月12日、産経新聞)
 【モスクワ=遠藤良介】ロシアのメドベージェフ大統領は12日、グルジアとの南オセチア紛争について「所期の目的は達せられた」として、軍事作戦を停止するよう軍に命じた。ただ、双方はその後も攻撃が継続していると主張しているほか、停戦合意の内容をめぐっても曲折が予想され、軍事衝突が終結するかはなお不透明だ。
 グルジアのサーカシビリ大統領は同日、旧ソ連諸国で構成する独立国家共同体(CIS)を脱退することを表明し、グルジアのロシア離れは紛争を経ていっそう決定的となった。
 メドベージェフ氏は国防相と参謀総長との会談の中で、「(南オセチアの)ロシア平和維持部隊と市民の安全は回復された。侵略者は罰せられて損失を負い、その軍事力は解体された」と表明。この後、国際調停のために訪露した欧州連合(EU)議長国、フランスのサルコジ大統領に対し、グルジアが南オセチアから完全撤退し、武力不使用を文書で約束することなどが和平の条件だと述べた。
 南オセチア紛争は8日、グルジア軍がロシアの庇(ひ)護(ご)下にある独立派地域、南オセチア自治州の再統一を目的に進攻したことに始まった。ロシアはこの攻撃で2000人の市民が死亡したと主張し、「グルジアに停戦を強いるため」として報復を開始した。ロシアは南オセチアを制圧したほか、グルジア各地で激しい空爆を加えた。また、11日には独立派支配地域を越えてグルジア中部まで進軍し、首都攻防戦に発展する事態も懸念されていた。

◎露軍、グルジア西部セナキを攻撃(2008年8月12日、読売新聞)
 【モスクワ=緒方賢一】インターファクス通信などによると、ロシア軍は11日、グルジアからの独立を主張するアブハジア自治共和国からグルジア西部のセナキに侵攻、グルジア空軍基地でヘリ2機を破壊した。
 部隊は基地を攻撃後、アブハジアへ撤退したという。
 ロシア国防省は、セナキの基地攻撃で、グルジア軍による南オセチア自治州への「攻撃の危険」を取り除いたとする声明を出した。また、AFP通信は、露軍が11日、グルジア黒海沿岸の港湾都市ポチにも侵攻したと報じたが、ロシア側は、偵察目的としている。
 一方、ロシア国防省は同日、露軍がグルジア中部の要衝ゴリを制圧したとの情報について、「事実ではない」と否定。グルジア政府当局者もAFP通信に「市内には侵攻せず、近郊に展開している」と語ったが、サアカシビリ同国大統領は、侵攻で黒海沿岸と首都トビリシ間の幹線道路が分断されたことを認めた。
 【ニューヨーク=白川義和】国連筋によると、国連平和維持活動(PKO)局高官は11日、安全保障理事会での報告で、ロシア軍がセナキ基地を占拠したと述べた。

◎ロシア大統領、軍事作戦終了を表明、グルジア侵攻(2008年8月12日、朝日新聞)
 【モスクワ=星井麻紀、トビリシ=喜田尚】グルジアからの独立を目指す南オセチア自治州を巡るグルジアとロシアの軍事衝突で、ロシアのメドベージェフ大統領は12日、ロシア軍の軍事作戦終了を決定したと述べた。ロシアはグルジア側の停戦通告を拒否してきたが、国際社会の批判が高まる中、戦闘継続は不利と判断したとみられる。ただ、双方とも警戒を解いておらず、事態収束に向かうかどうかは予断を許さない状況だ。
 メドベージェフ大統領は「南オセチアへの侵略者は罰せられ、軍は破壊された」と述べ、軍事介入の目的が達成できたとの見方を示した。また、紛争の最終的な正常化の条件として、グルジア軍の戦闘開始前の位置までの撤退と、武力不行使に関する文書への署名が必要だと述べた。
 軍事作戦終了の表明後、メドベージェフ大統領は、停戦説得に訪れた欧州連合(EU)議長国フランスのサルコジ大統領と会談。サルコジ大統領は、メドベージェフ氏の決定を「いいニュースだ」と歓迎し、和平の第1段階として、双方に戦闘開始前の位置に戻ることを提案した。
 ロイター通信によると、グルジア側はロシアとの和平合意が達成されるまでは「あらゆる準備をしておく」と警戒感を示した。また、サアカシュビリ大統領は、旧ソ連諸国で構成する独立国家共同体(CIS)からの離脱を表明。すでにしかるべき指示を出したという。ロシア国防省によると、ロシア軍は現在の場所にとどまり、グルジア側の反応を待っているという。
 一方、グルジアからの独立を求めるアブハジア自治共和国の分離派政府軍は、グルジアが実効支配していたコドリ渓谷を制圧したと発表した。
 また、AP通信によると、12日にグルジア中部ゴリであったロシア軍による空爆で、オランダのテレビ局記者1人が死亡した。

◎露、グルジアの4都市に侵攻、首都攻防の懸念(2008年8月12日、産経新聞)
 【モスクワ=遠藤良介】ロシアとグルジアが交戦する南オセチア紛争でロシア軍は12日までに、グルジアの独立派支配地域を大きく越えて同国西部と中部に侵攻した。ロシアは中部ゴリなど4都市に部隊を進めているようだ。グルジアは首都トビリシの近郊まで退却して防衛線を張る戦術に転じ、首都では攻防戦の懸念から緊張が高まっている。
 グルジアからの報道によると、ロシア軍は11日夜以降、首都トビリシから北西約60キロにあるスターリンの故郷ゴリや黒海沿岸のポチ、西部のセナキ、ズグディディに部隊を進めた。ただ、ゴリではすでに住民が退避して街全体がもぬけの殻と化すなど、各地での大きな戦闘や住民への攻撃は伝えられていない。
 ロシア軍はこれまで独立派支配地域を越えることはないと言明していた。
 グルジアのサーカシビリ大統領は国家安全保障会議で「ロシアはグルジア全土を征服しようとしている」と危機を訴えるとともに、テレビ演説で国民に団結と冷静な行動を求めた。大統領はトビリシ市民に自宅待機を呼びかけ、12日は多くの商店や銀行が休業するとみられる。
 ロイター通信によると、グルジア政府は「グルジア軍は首都防衛のために退却している。政府は緊急に国際的な介入を求めている」との声明を出した。
 一方、ロシア国防省当局者はインタファクス通信に、「トビリシに進軍する計画はない。グルジア指導部はパニックに陥っているようだ」と発言し、「ゴリに部隊はいない」「ポチには偵察隊を出しただけだ」などとグルジア側の情報に反論している。
 ロシアのグルジア侵攻を受け、ポーランドとウクライナ、バルト3国の大統領らは近くトビリシを訪問し、グルジア支援の立場を示す方針を決めた。

◎グルジア、首都防衛で部隊集結、ロシアへ国際非難高まる(2008年8月12日、日本経済新聞)
 【モスクワ=坂井光】グルジアの南オセチア自治州を事実上支配下に置いたロシア軍は11日、自治州を越えて地上部隊をグルジア各地に進軍させた。グルジアのサーカシビリ大統領は同日夜、テレビ演説で首都トビリシ防衛のため部隊を集結させていることや国際社会に軍事的支援を求める考えを明らかにした。タス通信によると、ロシア国防省筋は同日「トビリシ進軍の計画は過去も現在もない」と述べたが、停戦を呼びかけているグルジアへの侵攻作戦に国際的な非難が一斉に高まっている。
 現地からの報道によると、グルジア国防省筋は11日、ロシア軍がトビリシから約60キロに位置するゴリ市を占拠したと述べた。さらに、南オセチア同様、ロシアが支援する分離独立派が大半を支配するアブハジア自治共和国からロシア軍がグルジア側に約40キロ進撃。軍事拠点のセナキを制圧し、軍事施設を破壊した。グルゲニゼ首相は黒海沿岸の港湾都市ポチなどにもロシア軍が入ったと述べた。

◎南オセチア、緊迫の最前線、「山の向こうに敵が」とグルジア兵(2008年8月12日、読売新聞)
 【ハンチャベティ(グルジア・南オセチア自治州)=中谷和義、本間圭一】グルジア軍とロシア軍が激しい戦闘を繰り広げるグルジア・南オセチア自治州に11日、入った。
 屈強のグルジア兵は緊迫した戦闘地域の最前線に駐留、同州からの撤退を求めるロシア側の警告を無視し、交戦に備えていた。
 未舗装のデコボコの山道を走ると、道路脇の木陰から突然、迷彩服を着て武装した男たちが現れた。「あの山の向こうに敵(ロシア兵)がいる」。国境警察隊員はそう言って、自動小銃を約300メートル離れた山に向けた。
 南オセチア紛争の発生後の9日以来、人口約700人のハンチャベティ村の駐屯地に急きょ派遣された隊員は約15人。胸に防弾チョッキ、肩に自動小銃、手に小銃を持ち、前方180度に厳しい視線を向ける。駐屯地外の沢には、大木の陰に隠れる形で、軍用車がずらりと並んでいた。
 グルジア政府は10日、同州での軍事行動停止を表明したが、部隊は州内にとどまっていた。隊員の1人、アレクセイさん(30)は妻と2歳の息子を残してきたが、「グルジアを支配下に置こうと仕掛けるロシアとは常に戦うつもりだ」と語気を強めた。同州の多数派はロシア寄りのオセチア系だが、同村は大半がグルジア系のため、村民防衛の任務があるのだ。
 一方、防衛される村民の思いは複雑だ。「必要なのは平和だけだ」。兵士を見つめながら、グルジア系農民のゲルダンティ・ダトナシビリさん(70)は、サアカシビリ政権への不満をもらした。同政権が2006年、年金支給の条件にグルジア旅券保持を義務化したため、所持していた同州政府発行のロシア旅券をしぶしぶ手放したのだ。
 同地域は長く、オセチア系やグルジア系住民が共存してきたが、「州内のグルジア化を進める政策」に両民族のあつれきが深まったという。同州内には、同政権がグルジア人居住地の基盤整備を積極的に進めているとの批判もある。

◎ロシア軍がグルジア侵攻、中部ゴリ制圧情報も(2008年8月12日、朝日新聞)
 【トビリシ=喜田尚、モスクワ=星井麻紀】グルジアからの分離独立を目指す南オセチア自治州を巡るグルジアとロシアの武力衝突で、ロシア軍は11日、軍事基地のあるグルジア西部セナキに進軍した。その後、ロシア国防省は数時間後に「脅威を排除した」として撤退したと発表したが、ロシア軍が南オセチアやアブハジア自治共和国以外のグルジア領内に侵攻したのは初めてとなる。
 グルジア側は、ロシア軍がグルジア領内の他の町にも進軍したと発表したが、ロシア側は否定している。
 セナキ進軍について、ロシア側は「グルジア軍の新たな攻撃を避けるため」と説明している。インタファクス通信などによると、セナキの軍飛行場でヘリコプター2機を破壊した。
 グルジア治安当局者らは11日夜、ロシア軍が南オセチア州都ツヒンバリに近いグルジア中部のゴリや、黒海に面した主要港があるポチなどに進軍したと発表。サアカシュビリ大統領も地元テレビに出演し、「ロシアはグルジア領土の相当部分を支配下においた」などと発言していた。
 ロシア国防省は「ロシア軍は南オセチアとアブハジアにしか配置していない」とこれを否定。「グルジア首脳部が流布するうわさは事実と一致しない」と批判した。
 一方、欧州連合(EU)特使のクシュネル仏外相らは同日夜、ロシアの北オセチア共和国に到着。南オセチアからの避難民のキャンプを訪問した後、モスクワに向かう。サルコジ仏大統領も12日、トビリシを訪問後、モスクワを訪れ、メドベージェフ大統領と会談する予定。停戦を説得するとみられる。

◎南オセチア紛争でグルジアが停戦提案、州都から軍撤退(2008年8月11日、朝日新聞)
[ツヒンバリ 10日 ロイター] グルジアからの分離独立を主張している南オセチア自治州をめぐる同国とロシアの軍事衝突で、グルジアは10日、州都ツヒンバリから軍を撤退させ、ロシア側に停戦と和平交渉を提案した。
 これに対しロシアのメドベージェフ大統領は、グルジアに南オセチアからの無条件撤退と同地域への攻撃停止を約束する正式文書への調印を求めると表明した。
 南オセチアでは依然として、戦闘が散発する状態が続いている。

◎露外相、グルジア大統領の退陣求める(2008年8月11日、読売新聞)
 【ニューヨーク=白川義和】米国のハリルザド国連大使は10日、グルジア情勢に関する国連安全保障理事会の会合で、ラブロフ露外相がライス米国務長官との同日の電話会談でグルジアのサアカシビリ大統領の退陣を求めたと明らかにした。
 ハリルザド大使は、ラブロフ外相がライス長官に「サアカシビリは去らねばならない」と述べたとし、チュルキン露国連大使に「ロシアの目標はグルジアの政権交代なのか」と問いただした。チュルキン大使は米露外相の電話会談があったことを認めたうえで、「民主的に選ばれた指導者が障害になることも時にはある」と述べ、退陣要求を否定しなかった。
 一方、米国は10日、グルジアでのロシアの軍事行動を非難し、即時停戦を求める安保理決議案の作成に入った。ロシアが決議案に拒否権を行使する可能性が高いが、その場合でも国際社会にロシアが横暴だとアピールできるとの思惑がある。

◎ロシア、グルジア部隊の無条件撤退要求、戦闘は継続(2008年8月11日、朝日新聞)
 【トビリシ=喜田尚、モスクワ=大野正美】グルジアからの分離独立を目指す南オセチア自治州をめぐるグルジアとロシアの軍事衝突でグルジア側が10日に申し入れた停戦交渉について、メドベージェフ・ロシア大統領は同夜、「紛争地域からのグルジア部隊の無条件撤退が必要だ」と述べて拒否した。ロシア海軍が同日、黒海沿岸でグルジアの小型ミサイル艇を撃沈するなど、戦闘は南オセチアの内外で続いている。
 一方、欧州連合(EU)議長国・フランスのクシュネル外相が特使としてグルジア入りしたほか、サルコジ仏大統領がメドベージェフ氏と電話会談するなど、事態打開に向けた国際的な調停活動が本格化し始めた。
 メドベージェフ氏は、サルコジ仏大統領との電話協議でグルジア部隊の無条件撤退、南オセチアへの武力不行使を約束する公式文書にグルジア側が調印することを求める考えを示したという。サルコジ氏は、数日中にモスクワでメドベージェフ氏と会うことを申し出、メドベージェフ氏は受け入れた。
 クシュネル仏外相は10日夜にトビリシを訪問。サアカシュビリ・グルジア大統領との会談後、「各部隊の統制された撤退が課題だ」と記者団に語った。同外相は11日にはモスクワへ向かう予定。
 ロシア海軍は10日、やはりグルジアからの分離・独立を目指すアブハジア自治共和国の黒海沿岸でグルジアの小型ミサイル艇数隻と交戦し、1隻を撃沈したと発表した。インタファクス通信によると、アブハジアの中でグルジアが実効支配するコドリ渓谷でも、分離派政府とグルジア治安部隊との間で激しい戦闘が続いている。
 ロイター通信などは同日、ロシア空軍がトビリシ国際空港の滑走路わきに爆弾を投下したと報じたが、ロシア側は認めていない。

◎プーチン露首相:南オセチア復興支援に500億円拠出(2008年8月11日、毎日新聞)
 【モスクワ大木俊治】ロシアのプーチン首相は10日、モスクワ近郊でメドベージェフ大統領と会談し、グルジア南オセチア自治州の復興支援に100億ルーブル(約500億円)を拠出すると表明し、大統領も承認した。首相はグルジアの行為を「(南オセチアの多数派)オセット人への虐殺」と強い調子で非難した。
 プーチン首相は9日夜、五輪開会式出席のため訪れていた北京から、南オセチアに隣接するロシアの北オセチア共和国に入り、南オセチアからの避難民を見舞った。

◎グルジア:首都にも避難民らの姿、政府に窮状訴え(2008年8月11日、毎日新聞)
 【トビリシ小谷守彦】南オセチア自治州をめぐるロシアとの軍事衝突で、全土に「戦争状態」が宣言されたグルジアの首都トビリシに10日、入った。ロシア軍の攻撃が拡大するなか、市内には戦火を逃れてきた人の姿が見られ、緊迫した空気が漂っていた。
 トビリシ中心部の議会前には同日、戦闘地域から着の身着のままに逃れてきた約500人が集まり、政府に窮状を訴えた。
 「私たちは(戦闘が始まって)3日間、何の助けも受けていない。食料も衣類も何もない」。南オセチアの州都ツヒンバリ近くから逃れてきた女性マルギアニさん(38)は声を振り絞った。避難民としての支援を当局から拒否されたという。夫と息子2人がグルジア軍兵士として戦闘に参加しているが、連絡が取れず安否は不明だ。
 ロシア軍の爆撃を受けたグルジア中部のゴリに住む女性リャパチさん(50)も、単身で逃げてきた。「(ロシア軍が攻撃した)ゴリの基地に近い民家の多くが巻き添えになった。皆平和に暮らしていたのに--」と泣き崩れた。自宅の近所では1発の爆弾で20人が死亡したという。
 10日午前5時40分ごろ、ロシア軍機がトビリシ郊外の国際空港近くにある戦闘機製造工場を空爆。負傷者はなかったが、爆音が首都にも響き渡り、市民を震え上がらせた。
 この空爆で、国際空港は一時、機能不全に陥った。このため記者の乗ったトビリシ行きの便は着陸できず、隣国アルメニアのエレバンで約4時間待機し、空港再開後にようやくトビリシに到着した。エレバンの空港で待機中、家族との電話で空爆を知ったグルジア人の乗客らは「ロシア軍はそこまでやるのか」「プーチン(露首相)の仕業だ」と怒り出し、機内は騒然とした。
 トビリシで出会った中学校のグルジア語女性教師、ディアセミゼさん(54)はこう涙ながらに訴えた。「この戦争は続けてはならない。グルジアは小さく、今にもロシアに壊されてしまいそうだ。私たちは世界の助けを求めている」

◎グルジア:ロシア側に撤退通告、停戦交渉呼びかけ(2008年8月11日、毎日新聞)
 【トビリシ小谷守彦】グルジアからの分離独立を求める南オセチア自治州での軍事衝突は10日、ロシア軍がグルジアの首都トビリシ近郊を空爆するなど戦線が拡大した。グルジア外務省は同日、サーカシビリ大統領の決定に基づきグルジア軍が戦闘を停止し、紛争地域から撤退したことをロシア側に通告し、停戦交渉の開始を呼びかけたと表明した。インタファクス通信によると、ロシア外務省筋は通告があったことを認めたが、「グルジア軍は攻撃を続けている」と停戦に応じない意向を示した。
 南オセチアの州都ツヒンバリ周辺では10日もロシア、グルジア両軍の激しい戦闘が続いた。グルジアのテレビはトビリシ近郊の戦闘機製造工場が10日朝、ロシア軍に空爆されたと報じた。夜にも再び近くで空爆があった模様だ。またインタファクス通信は、グルジアの黒海沿岸にロシア海軍のミサイル巡洋艦などが展開し、グルジアへの武器流入を防ぐ海上封鎖を準備していると報じた。カラシン露外務次官は同日の会見で艦船展開の事実は認めたが、船舶検査など海上警備の強化が目的と述べた。
 ロシア外務省は10日、南オセチアの戦闘による死者は2000人以上と発表した。グルジア政府はグルジア側の死者は約300人としている。ロシアのラジオ局は10日、グルジア側から戦闘を取材していたジャーナリスト2人が死亡したと報じた。
 ツヒンバリでは一時グルジア軍が撤退を開始したとの報道が流れたが、グルジア内務省はロシア軍による州都制圧を認めたものの、グルジア軍は州都周辺にとどまり反撃を準備しているとして撤退報道を否定していた。
 一方、同じくグルジアからの独立を求めるアブハジア自治共和国でもグルジア軍と独立派の戦闘が本格化し、アブハジアに駐留するロシア平和維持軍に増派部隊が派遣された。独立派政府のバガプシ大統領は同日、10日間の「戦時状態」を宣言し、グルジア軍支配地域のコドリ渓谷に特殊部隊1000人を派遣したと述べた。

◎グルジア、停戦申し入れ、戦闘なお続く、南オセチア(2008年8月11日、朝日新聞)
 【トビリシ=喜田尚、モスクワ=星井麻紀】グルジアからの分離独立を目指す南オセチア自治州を巡るグルジアとロシアの軍事衝突で、グルジア外務省は10日、ロシア側に停戦を申し入れた。これに先立ち、グルジアは州都ツヒンバリからの撤退を表明。ロシア側も撤退開始を確認していたが、双方の戦闘は続いている模様で、事態収束につながるかどうかは不透明だ。
 グルジア外務省はサアカシュビリ大統領の決定に基づき、軍に南オセチアでの軍事行動停止を命じる一方、ロシアとの対話を即時に開始し、敵対を終わらせるとの声明を発表。在グルジア・ロシア大使館には文書を提出して伝えた。インタファクス通信によると、ロシア外務省もこの事実を認めたが、「グルジア側は南オセチアでの戦闘をやめていない」「グルジア軍は紛争地域から完全撤退していない」としている。今後のロシアの対応が焦点だ。
 ロシア軍は10日、グルジアの首都トビリシ近郊の軍飛行場などを爆撃。ウクライナに駐留するロシア黒海艦隊の艦船が黒海沿岸のポチ港を封鎖し、グルジア側は、燃料と穀物を積んだ船3隻が入港を妨害されたとしている。
 また、ロシアのラジオ「モスクワのこだま」などは、南オセチアで記者2人が取材中に死亡したと伝えた。
 メドベージェフ大統領はこの日、南オセチアでのグルジアの行為を「ジェノサイド」と呼び、軍検察に対し、住民に対するグルジア側の犯罪行為を調査するよう指示した。
 一方、アブハジア自治共和国でも10日、分離派政府のバガプシ大統領が動員令を出し、グルジアが実効支配するコドリ渓谷北部へ兵士千人を送ったことを明らかにした。グルジア軍との戦闘が激化する可能性もある。

◎南オセチア:露「人道上の大惨事」、避難民受け入れ表明(2008年8月10日、毎日新聞)
 【モスクワ大木俊治】ロシアのメドベージェフ大統領は9日、グルジア軍が進攻した南オセチア自治州の現状を「人道上の大惨事」と指摘し、負傷者の手当てや避難民の受け入れなど人道支援に全力を挙げるため隣接するロシア領の北オセチア共和国にショイグ非常事態相を派遣した。北京五輪開会式に参加するため訪中していたプーチン首相も同日帰国し、避難民対策にあたるため急きょ同共和国を訪れた。ロシアはグルジアの行為の非人道性を内外にアピールする作戦に出ているようだ。
 インタファクス通信によると、プーチン首相は9日、帰国の途上でシベリアのクラスノヤルスクにある若者のキャンプ場を訪れる予定だったが、これを変更して北オセチア共和国の首都ウラジカフカスに直行した。
 北オセチアには南オセチアからの避難民がバスなどで次々に到着し、負傷者はウラジカフカスの病院などで手当てを受けている。首相府によると、プーチン首相は地元政府幹部らと避難民や受け入れ先への支援策を協議する予定。すでに非常事態省は移動式病院を同共和国に空輸した。
 ロシアのソビャーニン副首相は9日、この2日間で3万人以上の避難民がロシア領に運ばれたと明かし、戦闘開始前に脱出した避難民と合わせると避難民の総数は5万人に上ると指摘した。
 ロシアのテレビは8日から、グルジア軍のミサイル攻撃で破壊された南オセチア自治州の州都ツヒンバリ市内の模様を放映。廃虚と化した住宅は真っ黒に焦げ、戦火のすさまじさを物語る。水道や電気も止まっているという。テレビはグルジア軍の無差別攻撃を非難する多くの地域住民のインタビューを伝えている。
 一方、南オセチア独立派政府のメドーエフ駐露代表は8日、モスクワで記者会見し、グルジア軍の進攻を「民族浄化が狙いだ」と非難。独立派支配地域の多数派オセット人を追放し、グルジア人が占有することを狙っていると訴えた。ラブロフ外相も同日、「民族浄化」という言葉を使ってグルジア軍の行為を非難した。

◎南オセチア:露が「州都制圧」宣言、グルジア「戦時状態」(2008年8月10日、毎日新聞)
 【モスクワ大木俊治】グルジアからの分離独立を求める南オセチア自治州をめぐるロシアとグルジアの軍事衝突で、ロシア地上軍のボルディリョフ総司令官は9日、州都ツヒンバリをロシア軍が「解放」したと宣言した。インタファクス通信などが伝えた。州都の周辺では依然、激しい戦闘が続いている模様だ。タス通信によると、同様にグルジアからの独立を求めるアブハジア自治共和国でも独立派勢力がグルジア軍への攻撃を開始した。戦火の拡大が懸念される中でグルジアのサーカシビリ大統領は、全土で9日から15日間の「戦時状態」に入ることを命じ、グルジア議会も承認した。
 南オセチア独立派政府のモロゾフ首相も9日、ロシア国営テレビ「ベスチ24」に、「ロシア軍の支援で州都はグルジア軍から完全に解放された」と言明した。民放テレビNTVは州都からの記者中継で、ロシア軍の制圧を伝えた。独立派政府は一連の戦闘による死者は1600人に上ると表明した。
 一方、グルジアのテレビは9日、アブハジア自治共和国のグルジア支配地域コドリ渓谷でロシア軍の空爆が続いていると報道。ロシアが支援するアブハジア独立派政府のシャンバ外相はタス通信に、独立派の軍が同渓谷でグルジア軍の掃討作戦を開始したと述べた。戦火はグルジアからの独立を求める二つの地域に拡大した。
 こうした事態を受けてグルジアのサーカシビリ大統領は9日、全土で「戦時状態」に入ることを決定。戦闘継続を確認し、議会の承認を得た。またロシア軍のグルジア本土への空爆も続いているとして「ロシア軍の攻撃に対する国際社会の対応に期待する」と欧米の協力を求めた。
 訪中しているブッシュ大統領は9日、ロシアに攻撃停止を求め、グルジアの領土の一体性を尊重するよう求める声明を発表した。
 ロシアのメドベージェフ大統領は9日、ブッシュ米大統領と電話協議ろし、ロシアの行動の正当性を説明したうえで「唯一の解決法はグルジアが進攻前の位置まで撤退すること」だと述べ、現段階では停戦に応じない考えを伝えた。ロシア大統領府が明らかにした。米側は現状への深刻な懸念を表明したという。

◎露、グルジアに猛攻、南オセチア紛争で戦線拡大(2008年8月10日、産経新聞)
 【モスクワ=遠藤良介】旧ソ連の親欧米国、グルジアに侵攻したロシアは、9日も各地で空爆などの猛攻を続け、戦火は拡大の様相を見せている。グルジアのサーカシビリ大統領は同日から15日間の「戦争状態」を宣言する大統領令を出し、徹底抗戦する構えだ。グルジアと緊密な関係にある米国は、即時停戦を求めつつも、グルジアが先に進攻した南オセチアがグルジア領であることを重視、ロシアに自制を呼びかけているが、ロシアの説得は容易ではない。旧ソ連構成国を舞台とした戦闘は、グルジアのNATO(北大西洋条約機構)加盟問題を軸に影響圏を争う構図ともなっている。
 ブッシュ米大統領は滞在先の北京で「暴力の即時停止」とロシアに空爆をやめるよう呼びかける声明を発表、ロシアのメドベージェフ大統領とグルジアのサーカシビリ大統領にも電話会談で即時停戦を求めた。これに対し、メドベージェフ大統領は「グルジア軍が紛争地帯(南オセチア)から撤収することが解決の唯一の道だ」と強調し、南オセチアの分離・独立を容認しない米国を牽制(けんせい)した。
 プーチン露首相は9日、南オセチアからの難民を見舞う名目で南オセチアに隣接する北オセチア共和国に入った。グルジアに対し強硬路線をとる同首相の訪問はロシアの断固たる姿勢を示す意味があるとみられる。
 ロシアは8日にグルジアの首都トビリシ近郊の軍基地を空爆したのに続き、黒海に面するポチ港や旧ソ連の独裁者スターリンの出身地、ゴリ近郊を軍用機で爆撃。ゴリではアパートが空爆を受けて民間人に死者が出ている。ロシアが支援するグルジア北西部の独立派地域「アブハジア自治共和国」のグルジア支配地域も空爆を受けた。ロシアが、アゼルバイジャンからグルジアを経由、トルコへ原油を輸出するBTCパイプライン周辺を攻撃したとの情報もある。
 ロシアが軍事介入する引き金となった南オセチアでも、ロシア軍は先に進攻していたグルジア軍と激しく交戦し、州都ツヒンバリの制圧を宣言した。サーカシビリ大統領は「ロシアがグルジアへの大規模侵攻に乗り出した」として即時停戦を呼びかけたものの、各地での交戦は続いている。
 ロシアは、グルジア軍の攻撃によるツヒンバリでの犠牲者が2000人以上にのぼるとしている。

◎「ロシアは死んでも許さない」グルジア国民に渦巻く憎悪(2008年8月10日、読売新聞)
 【トビリシ=本間圭一、中谷和義】南オセチア自治州をめぐり、ロシアと戦闘状態に入ったグルジアの首都トビリシに9日入った。
 市民の間では、圧倒的な軍事力でグルジアへの攻撃を続けるロシア軍に対する憎悪が渦巻いていた。
 「ロシアは死んでも許さない。命令があれば死ぬまで戦う」。
 8日に空爆を受けた、トビリシの南東15キロにあるワジアーニ陸軍基地。ダビッド・クトシア大佐(43)は、ロシア軍への怒りをぶちまけた。
 国軍精鋭の陸軍第4師団が駐屯する同基地では9日、私服を着た若者が次々に建物の中に入っていった。急きょ招集された予備役だ。「ロシア野郎め!」。少年ぽさが抜けない20歳の若者はこう吐き捨てた。
 だが、戦況はグルジア側に厳しい。南オセチア自治州の州都ツヒンバリ周辺での戦闘では、グルジア軍が後退しているとの見方が有力だ。
 主要テレビは戦況を伝える特別ニュースを常時流し続けるが、トビリシはツヒンバリからわずか100キロで、市民は気が気ではない。「そろそろ首都か」。街角で会った男性はそうつぶやいた。乗用車の窓からグルジアの旗を振って運転する若者は目立つものの、すでに首都から避難する市民も出始めている。
 一方、トビリシ中心部の共和国病院には、9日だけで、空爆などによる500人の負傷者が運び込まれた。病院入り口には、負傷者の名前を書いたリストが張り出され、親類や家族、友人の安否を気遣う数百人の市民が駆けつけた。
 47歳の主婦は、爆撃を受けてツヒンバリから同病院に運び込まれた義理の息子と面会したが、「爆撃のショックで、口もきけなかった」と話した。

◎グルジア大統領「戦争状態」を宣言、露軍が各地で攻勢強める(2008年8月10日、読売新聞)
 【トビリシ=中谷和義】グルジアからの分離独立を求める親ロシアの南オセチア自治州に進攻したグルジア軍と、同州に平和維持を名目とした駐留部隊を置くロシア軍の戦闘は9日、グルジア領内各地に拡大した。
 ロシア軍は、グルジアの首都トビリシ近郊に大規模な空爆を加えるなど攻勢を強めている。
 グルジアのサアカシビリ大統領は、全土で予備役の招集を可能にする15日間の「戦争状態」を公式に宣言した。
 一方、ロシアのプーチン首相は9日夕(日本時間9日深夜)、北京から同州に隣接するロシア・北オセチア共和国の首都ウラジカフカスを電撃訪問、「ロシアの行動は正当だ」と述べた。
 グルジア、ロシア両軍は州都ツヒンバリを巡って激しい攻防を繰り広げ、インターファクス通信によると、州都だけで民間人約2000人が死亡。ロシアは州都制圧を宣言したが、グルジア側は否定している。
 ロイター通信などによると、ロシア軍はトビリシ近郊のワジアーニ軍事基地のほか、中部の要衝ゴリの軍事施設などを爆撃。黒海沿岸の拠点都市ポチの港も、空爆で壊滅的被害を受けた。一方、同じくグルジアからの分離独立を主張するアブハジア自治共和国でも、独立派民兵らがグルジア軍に攻撃を始めた。

◎グルジア:住民ら1400人以上死亡、南オセチア(2008年8月9日、毎日新聞)
 【モスクワ大木俊治】グルジアからの分離独立を求める南オセチア自治州をめぐるロシアとグルジアの軍事衝突で、南オセチア独立派政府のココイティ大統領は8日夜(日本時間9日未明)、グルジア軍の攻撃で住民ら1400人以上が死亡したと表明した。インタファクス通信が伝えた。両国軍は州都ツヒンバリ周辺で激しい交戦に入っており、戦闘の拡大と長期化が懸念されている。
 ロシア軍の増派部隊の支援を受けた独立派政府は9日未明、グルジア軍を撃退しツヒンバリを奪還したと主張しているが、その後再びグルジア軍の総攻撃が始まったとの情報もある。
 グルジアのサーカシビリ大統領は8日深夜、テレビを通じ、ロシア軍の空爆や南オセチアへの進攻作戦でグルジア軍兵士ら30人が死亡したと述べた。グルジアのテレビはロシア軍が黒海沿岸のグルジアの港湾都市ポチなどを空爆したと報じ、首都トビリシでもロシア軍の空爆を警戒して住民の避難や「戦略的な施設や重要な国家機関」の撤退が始まったと伝えた。ポチへの空爆についてロシア側は確認していない。
 一方、南オセチアに隣接するロシア・北オセチア共和国の当局者は、8日深夜までに南オセチアからの避難民を乗せたバス140台が到着したと語った。人数は明らかでないが国連難民高等弁務官事務所は少なくとも1000人と見積もっている。

◎グルジア:一気に緊張高まる、ロシア強硬(2008年8月9日、毎日新聞)
 【モスクワ大木俊治】グルジアからの分離独立を求める南オセチア自治州を巡る紛争は、グルジア軍の進攻に対しロシアが対抗措置に出たことで、一気に緊迫の度を強めた。5月に就任したばかりのメドベージェフ露大統領は国民に断固とした姿勢を見せる必要に迫られている。一方、北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指すグルジアのサーカシビリ大統領も、進攻は欧米の信頼を損なう恐れがある大きな「かけ」だといえる。
 メドベージェフ大統領は8日、「犯罪者は罰せられなければならない」とグルジア側を強く非難した。現地に駐留するロシア平和維持軍に犠牲者が出たほか、独立派が支配する南オセチアの住民の大半がロシア国籍を取得していることなどから、強い姿勢を求めるロシア国民の声に応え、国内の政治基盤を固める必要があった。大統領の後ろ盾である強硬派のプーチン首相(前大統領)が五輪開会式出席のため北京訪問中だけに、弱腰では「独り立ちできない」と見られる恐れもあるからだ。
 一方、グルジアはカスピ海の石油をロシアを回避して欧米へ輸出するルート上にあり、欧米にとって中東とロシアをにらんだ戦略的に重要な位置にある。8日の国連安保理協議でも、グルジアに停戦を求めるロシアの声明案が採択されず、欧米が依然としてグルジア寄りであることを見せつけた。
 グルジア軍の南オセチア進攻のタイミングについては、国際的な関心が五輪開会式に集まるのに合わせて実施したとの見方が出ている。ただ、国際法に基づく「グルジア国家の一体性」を訴えて欧米の理解を求めてきたサーカシビリ大統領にとっても戦闘が泥沼化すれば、目指すNATO加盟に黄信号がともりかねない。またNATOといえども、グルジアを支援してロシアとの「代理戦争」に踏み切る可能性は低い。
 グルジア軍の攻撃に対しては、南オセチアに隣接する同じ民族でロシア連邦内の北オセチア共和国や、グルジアから同じく分離独立を求めるアブハジア自治共和国の独立派勢力が義勇兵を派遣し、グルジアと闘う姿勢を見せている。再燃した南オセチア紛争が、カフカス全体に飛び火する懸念もある。

◇南オセチア紛争
 南オセチア自治州は90年代初め、独立派がグルジアとの戦闘を経て州都など大半の地域で実効支配を勝ち取った。しかし、国際的には独立は承認されず、92年にロシア、グルジア間で和平合意がなされたものの、以後も散発的な衝突が続いた。南オセチア自治州内にはロシア平和維持軍が駐留し、自治州政府の後ろ盾となっており、グルジア側は国際的な平和維持軍への置き換えを求めている。南オセチアの住民約7万人のうち、7割弱がオセチア人、3割弱がグルジア人とされる。

◎国際社会、紛争の即時停止訴え、米「部隊撤収」でロシア牽制(2008年8月9日、産経新聞)
 【ワシントン=山本秀也】南オセチア自治州での紛争が本格化したことで、国際社会は8日、「紛争当事者の自制を求める」(ペリーノ米大統領報道官)など、事態の沈静化をロシア、グルジア双方に訴えた。しかし、同日未明まで国連安保理で協議された停戦を求める声明案をめぐっては、グルジア政府を支持する米国が「部隊撤収」を掲げて露側を牽制(けんせい)し合意が見送られるなど、紛争解決の糸口は見いだせない状況だ。
 米ホワイトハウスによると、北京五輪の開会式に出席したブッシュ米大統領とロシアのプーチン首相は、8日の昼食会で南オセチア情勢について協議した。
 協議内容は明らかにされていないが、大統領に同行しているペリーノ報道官は、ロシア、グルジア双方と米政府が接触中だと確認。「衝突を抑え、直接対話によって問題解決を図るよう求める」と述べるなど、停戦協議の実現に向けて米側が外交努力を続けていることを示唆した。
 米外交当局者によると、7月中旬にグルジアを訪問したライス国務長官は、南オセチア情勢の緊迫を受けて、「紛争回避による政治解決」を強く要請していた。米国務省は、グルジアの領土主権は支持する構えをみせている。
 北大西洋条約機構(NATO)への早期加盟を求めるなど、親米路線を取るグルジアのサーカシビリ政権に対し、米側は同国政府軍の訓練を目的とする米軍の軍事顧問団(約1100人)を最近まで派遣していた。また、イラク派遣部隊の訓練にあたる米軍要員など約120人がなお派遣中という緊密な関係にある。
 米国防総省のホイットマン報道官は8日、グルジアの関係当局と同日接触したことを確認する一方、軍事的な支援要請については否定し、米国による軍事的な関与についての観測を退けた。
 紛争の本格化を受けた国連安保理での協議は、「武力行使の放棄」を掲げるロシアの提案に対し、領土主権の防衛をたてに「自衛の軍事行動」を主張するグルジア側がこの表現に反発。米側がグルジアの意向を受けて問題部分の削除を主張し、協議は8日未明までまとまらなかった。
 ロシア軍戦車部隊の地上侵攻に対し、グルジア側が露軍機を撃墜するなど紛争が拡大していることで、隣接する欧州では事態への懸念が急速に高まっている。
 ロイター通信によると、NATOのデホープスヘッフェル事務総長は8日、「われわれは事態の推移を注意深く見守っている。NATO事務総長として、紛争当事者に戦闘の即時停止と直接対話を呼びかける」との談話を発表した。
 欧州安保協力機構(OSCE)では、フィンランドのスタッブ外相が「南オセチアでの戦闘は、紛争地域が本格的な戦争状態に陥る危険をはらんでいる」との情勢認識を示すなど、欧州域内の懸念はさらに広がる気配をみせている。

◎ロシア、空爆地域を拡大、グルジアは非常事態宣言を検討(2008年8月9日、日本経済新聞)
 【モスクワ=古川英治】旧ソ連の親欧米国グルジアから分離独立を主張する南オセチア自治州を巡る武力紛争でロシア軍は8日夜、戦闘機による攻撃地域を拡大し、グルジア領内にある黒海沿岸の港湾都市など同自治州以外の民間施設を爆撃したもようだ。グルジアは戦線拡大を受け全土を対象に非常事態を宣言する見通し。国際社会は停戦に向けた調停活動に乗り出すことを決めたが、国連安全保障理事会で米ロが対立するなど、一致した行動がとれない状態が続いている。
 グルジアの安全保障会議は9日未明、ロシア軍が同国西部セナキの軍基地に続き、黒海沿岸の都市ポチを空爆したと発表した。ロイター通信などによると、ポチではロシア戦闘機により民間のタンカーや造船所が爆撃を受けたもよう。ロシア軍はグルジア各地に攻撃を加えており、首都トビリシでも警戒感が強まっている。
 ライス米国務長官とロシアのラブロフ外相は8日、三度にわたり電話協議を繰り返したが、停戦に向けた調整はつかなかった。

◎露・グルジア戦闘激化、死者「1400人以上」情報も(2008年8月9日、読売新聞)
 【モスクワ=瀬口利一】グルジアからの報道によると、同国からの分離独立を求める南オセチヤ自治州に進攻したグルジア軍とロシア軍は8日深夜から9日未明にかけて、州都ツヒンバリ南部などで激しい戦闘を展開。
 8日夜には、露軍機がグルジアの黒海沿岸都市ポチと付近の軍事基地を空爆するなど、戦闘は拡大の様相を呈している。
 グルジアのサアカシビリ大統領は8日夜、テレビを通じた声明で、露軍機の空爆でグルジア軍兵士ら30人が死亡したと明らかにした。
 一方、インターファクス通信によると、同自治州の独立派指導者ココイトゥイ大統領は、グルジア軍進攻による市民らの死者が「1400人以上にのぼった」と述べた。首都トビリシの主要病院には、戦闘に巻き込まれて負傷した市民ら約400人が担ぎ込まれているという。
 露軍司令部によると、露側兵士の9日までの死者も15人、負傷者は150人にのぼった。
 グルジアのメディアは9日未明、サアカシビリ大統領が同日中にも全土に戒厳令を発令する見通しだと伝えた。戦闘激化を受け、グルジア政府高官は8日、AFP通信に対し、イラク駐留中のグルジア兵1000人を撤収させ、南オセチヤ戦線に近く再配置すると語った。
 トビリシでは、国家機関や戦略重要施設から退避するよう勧告が出され、一部住民が避難を始めたという。ロシア軍の同自治州進攻やグルジア領への空爆攻撃を受けて市民らに動揺が広がり始めたとみられる。
 戦況を巡っては、サアカシビリ大統領がテレビ演説で「(州都の)分離勢力は掃討された」と述べ、8日夜までに、グルジア軍が同自治州の北部を除くほぼ全域を制圧したと主張。これに対し、露軍側は、グルジア側の攻撃拠点の破壊に成功し、州都は独立派勢力がほぼ支配下に置いていると説明しており、双方が情報統制を敷いている可能性が高い。

◎ロシアが空爆拡大、グルジアは近く戒厳令(2008年8月9日、朝日新聞)
 【モスクワ=星井麻紀】グルジアからの分離独立を目指す南オセチア自治州での武力衝突は、一昼夜過ぎた9日未明、断続的に続いている。インタファクス通信などによると、ロシア軍は攻撃対象を広げ、グルジアの主要港ポチやグルジア軍基地を空爆。グルジアは近く戒厳令を敷き、イラクに駐留する兵士の半数を帰国させて攻撃に備える構えで、ロシアとグルジアの大規模な衝突に発展する恐れも出ている。
 インタファクス通信によると、戦闘は夜間も続き、自治州の州都のツヒンバリではロシアの平和維持部隊とグルジア軍が激しく衝突。ロシアのテレビ局は、砲撃で破壊された民家や、子どもを抱いて逃げる母親の姿、燃え上がる戦車などの様子を放送している。
 ロシア側によると、グルジアの攻撃でロシア兵12人が死亡、150人が負傷したという。ツヒンバリはロシア側が掌握したとの情報もある。多数の市民に被害が出ている模様で、自治州のココイトイ大統領は「グルジアの侵略で約1400人が死亡した」と発表した。
 一方、ロイター通信によると、グルジアのサアカシュビリ大統領は「ロシアの攻撃で約30人が死亡した」とテレビ演説で述べた。
 ロシア国防省は、南オセチアに駐留する平和維持部隊を支援するため、南オセチアへの増派を確認。南オセチアに隣接する、ロシアの北オセチア共和国に作戦本部を設けた。ロシア軍は、黒海に面しているポチ港や、近くのセナキにあるグルジア軍基地などへの空爆を拡大している。
 サアカシュビリ大統領は8日夜、米CNNテレビに「米国と協議の上、イラクに駐留するグルジアの平和維持部隊を帰国させ、ロシアとの戦闘に備える」と語った。トビリシでは、戦略施設や国の機関が避難を開始。地元メディアの報道によると、大統領は近く戒厳令を出し、外出禁止時間を敷く考えだという。
 一方、ロシアのラブロフ外相は8日、グルジアを「民族浄化をしている」と非難。米国のライス国務長官と電話会談し、グルジアの攻撃をやめさせ、紛争地帯から軍隊を撤収させるよう協力を求めた。同様のメッセージをシュタインマイヤー独外相にも送ったという。

◎南オセチアで戦闘激化、州都壊滅的被害(2008年8月9日、朝日新聞)
 【モスクワ=星井麻紀】グルジアからの激しい攻撃は8日、南オセチア自治州の州都ツヒンバリを壊滅的に破壊した。92年の停戦以来、最悪の武力衝突。ロシアが攻撃に加わったことは、グルジアと協力関係にある米国も刺激することは必至で、情勢は緊迫の度合いを深めそうだ。
 グルジア側は、戦車や戦闘機などで南オセチア側を攻撃。自治州内の一部の村を制圧し、ツヒンバリに攻め入った。自治州の行政機関の建物が炎上したほか、一般の住宅も破壊され、市民を含めて死者は数十人から数百人に達している模様だ。
 グルジアのサアカシュビリ大統領は米CNNテレビにグルジア軍がロシア軍機を2機撃墜し、ロシアと「戦争状態にある」と語った。英BBCとのインタビューでは「ロシアの戦車が国境を越えて入ってきたので反撃を始めた」と正当性を主張。「世界の多くの首脳が自国を離れ、誰も政治のことを気にしない五輪の開催日をわざと選んだのだ」とロシアを批判した。
 ロシア側は、ロシア兵10人以上が死亡、約30人が負傷と発表。メドベージェフ大統領は、ロシアの治安維持部隊にも被害者が出たとして「ロシア人の生命と尊厳を守る」と言明。ロシア外務省も「グルジア指導部への信頼は完全に失われた」とグルジアを非難した。
 北京五輪開会式に出席したプーチン首相は、米国のブッシュ大統領と短時間会談。インタファクス通信によると、プーチン首相から「南オセチアで戦争が始まった」と聞いたブッシュ大統領は「だれも戦争は望んでいない」と自制を促したという。だが、米国はグルジアと緊密な関係にあり、今後、米ロ関係が緊張含みになる可能性がある。
 同自治州では今月、グルジア部隊と独立派との間で散発的な砲撃戦が始まり、7日には12人が死亡、20人以上が負傷した。紛争拡大を避けるため7日夜、ロシア外務省特使が現地を訪れ、8日に双方が会談することで合意。グルジア側も一時的に攻撃を中止したが、8日午前0時ごろ、再び戦闘が始まった。
 南オセチア自治州は、オセチア人が多く居住する地域。ロシア革命でグルジアに編入されたが、グルジア人への優遇政策に危機感を抱いて分離独立を主張。91年、92年にグルジアとの間で大規模な紛争が起きた。92年に停戦し、ロシア、グルジア、南オセチアによる平和維持部隊が展開しているが、独立派政府が州内の大半を支配する事実上の独立状態が続いていた。
 ロシアはグルジアの北大西洋条約機構(NATO)加盟の動きに神経をとがらせており、南オセチア問題は譲れない一線となっている。

◎ロシアが南オセチア自治州に軍事介入(2008年8月9日、スポーツニッポン)
 ロシア軍は8日、グルジアからの分離独立を主張しグルジアと紛争状態にあった南オセチア自治州に戦車など約150両を送り、軍事介入した。グルジア軍が同日、自治州の州都ツヒンバリ周辺に進攻、平和維持軍として駐留するロシア兵らを殺傷したことに対抗し増援したとしている。グルジアのサーカシビリ大統領はロシア機が領空侵犯して攻撃したと述べ、うち2機を撃墜したと主張。自治州のココイトイ大統領は戦闘で一般市民数百人が死亡したと述べた。グルジアに肩入れする米国の反発は必至で、不安定なカフカス情勢は一気に緊迫化。五輪開幕日に、平和と友好の精神を踏みにじるニュースは北京にも飛び込んだ。紛争の平和的な解決を求めるブッシュ米大統領は開会式前、ロシアのプーチン首相と短時間会談。ブッシュ大統領は「誰も戦争は望んでいない」とロシアを含む全当事者に自制を促した。

◎グルジア軍機が南オセチア自治州の独立派拠点を攻撃=インタファクス(2008年8月8日、朝日新聞)
 グルジア軍の戦闘機が8日、同国からの分離独立を求める南オセチア自治州で独立派の拠点を攻撃した。インタファクス通信が同日伝えた。
 同通信は、ロシアの平和維持部隊の責任者の話として、5機のSU-25型機が南オセチアのツクベルネッティ村を爆撃したと伝えた。

◎グルジア:軍が州都を包囲、砲撃開始(2008年8月8日、毎日新聞)
 インタファクス通信などによると、グルジア軍は8日未明、分離独立を求める南オセチア自治州の州都ツヒンバリを包囲し、集中的な砲撃を開始した。市内は各地で停電し、混乱状態という。90年代の紛争が再燃し、現地に駐留するロシア平和維持軍を巻き込んだ本格的戦闘につながる恐れも出ている。
 グルジア軍の司令官は8日、グルジアのテレビを通じ「われわれが一方的に停戦したにもかかわらず、独立派が攻撃を継続した。憲法秩序回復のため攻撃に踏み切った」と説明した。戦闘による死傷者など詳細は不明。グルジア外務省は攻撃開始を否定している。
 グルジアのサーカシビリ大統領は7日夜、国民向けテレビ演説で治安部隊に一方的停戦を命じたことを表明。独立派政府に「グルジア領内での最大限の自治」を提案し、ロシアに「保証人」となるよう求めていた。
 また、仲介工作にあたっていたロシア外務省のポポフ特使は、グルジアと独立派政府の代表との3者会談を8日に行い、停戦維持と危機打開のため協議することで合意したことを明らかにし、これを受けて双方が一時停戦に同意したと伝えられていた。
 双方の支配地域の境界地帯では今月初め、グルジア側の狙撃手による銃撃で独立派の6人が死亡したことで緊張が高まり、6日に交戦状態に陥った。7日の戦闘では独立派地域の住民2人、グルジア側の兵士1人が死亡。独立派はグルジア側が境界地帯に重火器を動員し、本格的な戦闘の準備をしていると非難していた。

◇ことば 南オセチア自治州
 グルジア領だが、90年末にロシア領北オセチア自治共和国への編入を求めたことから、紛争に発展。92年にグルジア、ロシア間で和平合意した後も断続的に衝突が続く。今年2月のコソボ独立宣言に触発された形で、再びグルジアからの分離独立を求める動きが活発化。北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指すグルジアのサーカシビリ政権は、独立を認めていない。

◎グルジア:南オセチアで独立派勢力と治安部隊が交戦(2008年8月7日、毎日新聞)
 グルジアからの分離独立を求める南オセチア自治州で6日、独立派勢力とグルジア治安部隊が交戦し、本格的な戦闘の再燃が懸念されている。ロシア外務省は同日、双方に自重を呼びかけるとともに事態収拾のためグルジアに特使を派遣した。現地に駐留するロシア平和維持軍は事実上、独立派勢力を保護しており、90年代の紛争が再燃すれば、北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指すグルジアと、これに反対するロシアの武力衝突に発展する可能性も懸念されている。
 インタファクス通信によると、南オセチアを実効支配する独立派政府は、勢力圏内の要衡をグルジア治安部隊が占拠したため、砲撃戦の末に奪還したと主張。一方グルジア側は、グルジア支配地域の村が砲撃されたため反撃したと主張している。独立派政府はグルジアの砲撃で住民3人が負傷したと発表。グルジア側は死傷者はなかったが、数十軒の住宅が破壊されたとした。
 南オセチアでは92年の和平合意後も散発的な衝突が続いてきたが、今月1~2日に独立派の6人が死亡する戦闘が起き、南オセチアの子供数百人がロシアに避難するなど緊張が高まっている。
 同様にグルジアからの分離独立を求めるアブハジア自治共和国の独立派政府も5日、南オセチアへの軍事支援の可能性に言及。また欧米の仲介で15日にベルリンでグルジアと和平交渉を行う予定だったが、グルジアが南オセチアへの攻撃を中止しなければボイコットすると表明している。

◎グルジア:緊張、南オセチア独立派と交戦(2008年8月7日、毎日新聞)
 グルジアからの分離独立を求める南オセチア自治州で6日、独立派勢力とグルジア治安部隊が交戦し、本格的な戦闘の再燃が懸念されている。ロシア外務省は同日、双方に自重を呼びかけるとともに事態収拾のためグルジアに特使を派遣した。現地に駐留するロシア平和維持軍は事実上、独立派勢力を保護しており、90年代の紛争が再燃すれば、北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指すグルジアと、これに反対するロシアの武力衝突に発展する可能性も懸念されている。
 インタファクス通信によると、南オセチアを実効支配する独立派政府は、勢力圏内の要衡をグルジア治安部隊が占拠したため、砲撃戦の末に奪還したと主張。一方グルジア側は、グルジア支配地域の村が砲撃されたため反撃したと主張している。独立派政府はグルジアの砲撃で住民3人が負傷したと発表。グルジア側は死傷者はなかったが、数十軒の住宅が破壊されたとした。

◎露首相が「皆殺し」?表現誤解され石炭大手の株価急落(2008年7月25日、読売新聞)
 ロシアのプーチン首相は24日、ニューヨーク証券取引所に上場している露石炭大手企業「メチェル」のダンピングや脱税疑惑を暴露し、同社のジュージン社長を名指しして「医者を送り込んで始末せざるをえない」と語った。
 このため、同社株価の時価総額が57億ドル(約6100億円)目減りする騒ぎとなった。インターファクス通信が伝えた。
 「始末する」とのロシア語表現は、軍や秘密警察が「掃討」「皆殺し」の意味で使う隠語。発言がインターネットやテレビで世界に流れ、同社の株価は約38%急落した。通信、鉄鋼関連など他のロシア企業も軒並み株価を下げた。首相が事実上、当局に捜査を命じたことで、外国投資家の不安を招いたらしい。
 発言は、地方都市ニジニノブゴロドで開いた冶金(やきん)大手企業幹部との会合で行われた。ジュージン社長は病気を理由に欠席したが、首相はメチェル社が国際市場価格の半値で原料をたたき売りしていると批判。「利ざやや納めるべき国税はどこに消えたのか」と、価格操作や税逃れの疑いを指摘した。

◎中ロ、40年経て国境画定、大ウスリー島の半分が中国に(2008年7月22日、朝日新聞)
 新華社通信によると、中国の楊潔チー(ヤン・チエチー)=チーは竹かんむりに褫のつくり=外相とロシアのラブロフ外相は21日、北京で会談し、中ロの東部国境画定に関する議定書に署名した。大ウスリー島(中国名・黒瞎子島)の半分が中国に引き渡される。かつて武力衝突にも発展した両国間の国境紛争は、40年以上に及ぶ交渉を経て最終決着。約4300キロにわたる国境線がすべて画定された。
 両国は05年、ハバロフスク西方のアムール川(同・黒竜江)とウスリー川の合流点に位置する大ウスリー島の東部をロシア領に、同島西部と隣接するタラバロフ島(同・銀竜島)を中国領にすることで合意。詰めの交渉が続いていた。
 中国と旧ソ連は69年、ウスリー川のダマンスキー島(同・珍宝島)で武力衝突。その後も対立が続いた。署名後、楊外相は「両国の戦略的パートナーシップは、かつてないほど高い水準に達した」と述べた。

◎シベリアで服役中の元石油王、仮出所申請(2008年7月18日、朝日新聞)
 脱税などの罪でロシア・シベリアで服役している石油大手「ユコス」(06年に破産)のミハイル・ホドルコフスキー元社長が16日、仮出所の手続きを裁判所に申請した。同氏の訴追はプーチン前大統領による「政敵の口封じ」と言われたが、司法改革に熱心なメドベージェフ氏が大統領に就いたのを機に申請を決めたようだ。
 元社長は03年に逮捕された。当時、プーチン政権を批判して野党を支援したことへの報復的な措置だと指摘された。05年9月、懲役8年が確定し、ロシア一の大富豪から一転、作業場で制服を縫う作業などに当たっている。
 メドベージェフ大統領は逮捕当時、司法当局に慎重さを求める発言をしたほか、演説では法の支配を軽視するロシアの「法のニヒリズム」との闘いを宣言。今年6月のドイツ訪問時には、恩赦の可能性にも触れた。ホドルコフスキー氏の弁護人は「司法の独立をうたう大統領に期待している」と話している。

◎ミサイルから乗用車まで、露に巨大国策企業、国家資本主義に邁進(2008年7月15日、産経新聞)
 ロシアに武器の輸出から乗用車の生産まで一手に担う巨大な国策会社「ロステフノロギヤ」が誕生した。同社はプーチン首相の朋友である政権強硬派のシロビキ(武闘派)が牛耳る。リベラル派とされるメドベージェフ大統領の下でも、プーチン氏率いるシロビキたちの利権支配体制が着々と築かれ、ロシアが国家資本主義への道を邁進(まいしん)する構図が鮮明となった。
 メドベージェフ大統領は15日までに、同国が保有する有力企業426社の株式をロステフノロギヤ社に譲渡する大統領令に署名した。同社傘下に入るのは、主要軍需産業のほか、世界最大のチタンメーカー「VSMPO-アビスマ」や地方航空会社の連合体「エアユニオン」、乗用車ラダを製造する「アフトバス」など、同国の代表的な民生企業も多く含まれている。
 ロステフノロギヤ社は昨年、武器輸出公社「ロスオボロンエクスポルト」を母体に創設された。チェメゾフ社長は1980年代、当時の東ドイツで旧ソ連国家保安委員会(KGB)のフロント機関に勤めていた際にスパイだったプーチン氏と知り合った。チェメゾフ氏はシロビキを代表する存在で、プーチン氏の最側近とされる。
 プーチン前政権下では、ナノテクや航空機製造、造船、原子力といった分野の国策会社が続々と設立された。露政治情勢センターのアブザロフ研究員は「こうした国策会社は国家による資金の集中投下を行えるといった利点がある一方、巨大であるがゆえに小回りが利かず、(会計監査など)運営構造が不透明でリスクを伴う」と指摘する。
 プーチン氏は国策会社の幹部ポストを分け与えることで側近の掌握を図ってきただけに、ロステフノロギヤの発足も長期的な権力保持を狙う「プーチン氏の立場の強化」(アブザロフ氏)に向けた動きとみられる。
 ロステフノロギヤ社による大々的な国家資産の取得には、政権内のリベラル派とされるクドリン副首相兼財務相が「これは(一部の者による)国家資産の隠れた私有化だ」(コメルサント紙)と批判。「経済における国家の関与を減らす」と公約してきたメドベージェフ大統領も、この問題では影響力を発揮できなかった。

◎ロシア:グルジア上空を威嚇飛行、「流血防ぐため」(2008年7月12日、毎日新聞)
 ロシア外務省は10日、グルジアの紛争地、南オセチア自治州へのグルジア軍侵攻を防ぐため、複数のロシア空軍機を9日、同自治州上空に飛ばして威嚇したと発表した。グルジアは度々、露機による領空侵犯に抗議してきたが、露側が飛行の事実を認めたのは初めて。グルジア外務省は11日、「領空侵犯であり、公然とした侵略行為だ」と非難した。
 グルジアからの分離独立を主張する南オセチアでは、独立派とグルジア治安部隊の衝突が散発的に起き、今月4日にも死傷者を出していた。ロシアは飛行目的を「流血の回避」と説明している。これは、南オセチアで最近拘束されたグルジア兵4人の解放工作をサーカシビリ・グルジア大統領が公言したことなどを指すとみられる。
 サーカシビリ大統領は11日、ロイター通信に「ロシアとは戦争はできない」と述べ、国連や全欧安保協力機構(OSCE)など国際機関の仲介による緊張緩和を求めた。

◎グルジア:南オセチアで砲撃、2人死亡、露が非難声明(2008年7月5日、毎日新聞)
 インタファクス通信によると、グルジアからの独立を主張する南オセチア自治州の首都ツヒンバリで、3日深夜から4日未明にかけて激しい砲撃があった。南オセチア当局によると一般市民ら2人が死亡、6人が負傷した。これを受けロシア外務省は4日、「南オセチアに対する明白な攻撃だ」とグルジア側を激しく非難する声明を出した。
 南オセチアではここ数年、グルジアの治安当局と独立派の間で散発的な交戦が続いてきた。今回の事件を受け、南オセチア大統領を自称するココイティ氏は4日、「グルジア側が戦争を仕掛けた」として一時的に「国民総動員」を命じるなど、これまでにない強硬姿勢を示した。
 現地に駐留するロシア軍を中心とする平和維持軍のイワノフ大尉(広報担当)は平和維持軍の増派を要求。ラブロフ露外相は4日、「南オセチア情勢を非常に憂慮している」と述べ、グルジア側に紛争地内での武力行使を禁じる法的文書の署名を求めた。
 一方、グルジア軍の司令官は、ロイター通信に「分離独立派側がグルジア人居住区を激しく砲撃したため、応戦した」と述べ、ロシア側の主張と食い違いをみせている。
 グルジアからの分離独立を求めるもう一つの紛争地アブハジア自治共和国でも、今年4月にグルジアの無人偵察機がロシア空軍機とみられる戦闘機に撃墜されるなど、グルジア情勢は緊迫度を強めている。

◎ロシア大統領:EU首脳と初の本格協議へ、26日から(2008年6月26日、毎日新聞)
 欧州連合(EU)とロシアの首脳会議が26~27日、ロシア・西シベリアのハンティマンシスクで行われる。
 会議では、双方の「新パートナーシップ協定」策定に向けた交渉開始が宣言される。経済協力などを盛り込んだ03年の協定を改定し、エネルギーや安全保障面の協力を含む包括協定にする狙いだ。昨年までポーランドやリトアニアが交渉入りに拒否権を行使していたが、先月ようやく交渉開始のメドが立った。ただ、どの分野も双方の対立が厳しく実際の交渉は難航しそうだ。
 5月に就任したメドベージェフ露大統領にとっては初の本格的なEU首脳との顔合わせで、プーチン前政権時代に悪化が著しかったEUとの関係改善を目指す。EU側も、ロシアでの法治主義の確立や経済改革を掲げるメドベージェフ大統領への期待感がある。一方で、コソボ独立問題やグルジアなど旧ソ連構成国内の紛争地をめぐるロシアとEUとの認識の隔たりは大きい。
 また、今回の会議にプーチン首相(前大統領)は参加しないが、グルシコ露外務次官によると、ロシア側は首相をトップとする政府と欧州委員会との協議組織の活発化を狙っている。このためプーチン首相が今後、EUとの協議で強い影響力を行使する可能性もある。

◎露大統領:ウクライナ、グルジアとは平行線(2008年6月6日、毎日新聞)
 ロシアのメドベージェフ大統領は6日、サンクトペテルブルクで開かれた独立国家共同体(CIS、旧ソ連12カ国)の非公式首脳会議に出席。北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指してロシアと対立するウクライナやグルジアはじめ各国首脳と個別に会談した。ウクライナのユーシェンコ大統領、グルジアのサーカシビリ大統領との初会談は、協議継続で一致したものの平行線に終わった。
 すでに公式訪問したカザフスタンを除く各国首脳とは5月の就任後初めての顔合わせとなった。
 ラブロフ露外相によると、ユーシェンコ大統領との会談でメドベージェフ大統領は、ウクライナのセバストポリに駐留するロシア黒海艦隊について、ウクライナが2017年に撤退を求める方針を決めたことを「一方的な行動」と非難し、97年に調印された両国間の友好協力条約に基づいて話し合いで解決するよう求めた。またウクライナのNATO加盟についても同条約に違反するとして改めて反対の姿勢を伝えた。
 サーカシビリ大統領との会談では、グルジアからの分離独立を主張するアブハジア自治共和国の問題で応酬。NATO加盟はアブハジア問題とは無関係と主張するグルジアに対し、メドベージェフ大統領は「新たな対立の繰り返しを生むだけだ」と反論、信頼醸成と当事者同士の対話を求めた。アブハジアを支援するロシアに対し、グルジアは欧米の支持を背景に、現地に駐留するロシア平和維持軍の撤退を求めている。

◎日露首脳、北方領土交渉継続で合意、エネルギー協力も(2008年4月26日、読売新聞)
 福田首相は26日午後(日本時間26日夜)、ロシアのプーチン大統領とモスクワ郊外の大統領別邸で会談し、北方領土問題に関する交渉を継続することで合意した。
 エネルギー、運輸、環境分野で協力を促進し、年間100人程度の青年交流を500人規模に拡大することも決めた。
 エネルギー協力の一環として、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)がロシアの民間石油会社「イルクーツク石油」と共同で東シベリアで石油・天然ガス田の探鉱を始める予定だ。
 福田首相とロシア首脳との初の会談は、約1時間にわたって行われた。日露首脳会談は、安倍首相とプーチン大統領がシドニーで会った昨年9月以来だ。
 会談の冒頭、大統領は「この2、3年で日露関係を質的に変化させることができた。平和条約に関する対話を続け、進展に必要な環境整備をしている」と述べた。そのうえで、「我々の間に多くの懸案があることは認識しており、あらゆる分野の協力に関する対話を続けたい」と語った。
 首相は「両国関係を高い次元に引き上げ、アジア太平洋地域の繁栄と安定に資する関係を構築できるようにと考えている。そのために日露の連携を深めたい」と応じた。
 両首脳は、日露共同の探鉱開始を歓迎する意向を表明した。探鉱は、昨年6月に安倍首相が提案した「極東・東シベリア地域での日露間協力強化に関するイニシアチブ」を具体化するものだ。日本が東シベリア石油・天然ガス田の探鉱に参加するのは初めてとなる。
 十分な埋蔵量が確認できれば開発に乗り出し、パイプラインで日本に輸出する計画だ。日本側としては、ロシア政府が計画している、東シベリアから日本海沿岸までのパイプライン建設促進につなげたい考えだ。
 首相はこの後、メドベージェフ次期大統領とモスクワ郊外で会談した。7月の北海道洞爺湖サミットの成功に向けた協力を要請するとともに、京都議定書に続く地球温暖化対策の枠組み作りに関し、日本が提唱する産業・分野別に温室効果ガスの削減量を積み上げる「セクター別アプローチ」への理解を求める考えだ。

◎日ロ共同油田開発に合意 首脳会談、北方領土対話継続も(2008年4月26日、朝日新聞)
 ロシアを訪れた福田首相は26日午後(日本時間同日夜)、プーチン大統領とモスクワ市郊外の大統領公邸で会談した。両首脳はアジア・太平洋地域での両国の関係強化の具体策として、東シベリアで初の油田の共同開発を進めることで合意。北方領土問題の解決と平和条約締結に向けた対話を継続することでも一致した。
 日本の首相の訪ロは05年5月の小泉首相(当時)以来。プーチン氏に続き、5月に就任するメドベージェフ次期大統領とも会談した。
 日本側の説明では、福田、プーチン両氏は北朝鮮のシリアへの核拡散問題でも意見を交換。6者協議の場で北朝鮮に完全な申告を求めるため協力することで一致した。首相はまた、拉致問題でロシアが北朝鮮に影響力を行使するよう要請。プーチン氏は拉致問題を含め、極東地域の安定のために協力すると述べた。
 油田の共同開発の舞台は、イルクーツク市から北へ約1千キロのセベロ・モグディンスキー鉱区(3747平方キロ)。日本の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とロシアの民間会社イルクーツク石油が合弁会社を作り、油田調査や掘削などを行う。作業期間は5年間で、約100億円と見込まれる事業費は日ロ双方で負担する。
 日本側には、東シベリアの油田地帯から日本海に向けて建設中の「太平洋パイプライン」を通じて、日本への安定供給を確保するとともに、同地域の石油資源を中国に独占させない狙いがある。
 北方領土問題では、首相が両国関係を高い次元に引き上げるために平和条約交渉の具体的進展が不可欠との考えを強調。プーチン氏は交渉を続ける意向を表明する一方、そのためにも両国関係の全面的な発展が必要だと指摘した。
 首脳往来を頻繁にし、あらゆるレベルで交流を深める必要があるとの認識でも一致。7月の北海道洞爺湖サミットでの福田首相とメドベージェフ氏の首脳会談に向けて準備を進めることや、毎年100人規模の青年交流事業を5倍に増やすことで合意した。12年にウラジオストクで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の成功に向けて協力することも確認した。

◎日本領空侵犯:露外相、事実を認める(2008年4月15日、毎日新聞)
 ラブロフ露外相は14日、高村正彦外相とモスクワで会談し、今年2月のロシア軍機による伊豆諸島南部の日本領空侵犯問題について「意図したものではなかった」と述べ、初めて侵犯の事実を認めた。ロシアはこれまで一貫して領空侵犯を否定していた。

◎セメント2社、ロシア市場に参入・都市開発拡大に対応(2008年4月8日、日本経済新聞)
 宇部三菱セメント(UMC)と住友大阪セメントはロシアのセメント市場に参入する。4月中に同国向け輸出をそれぞれ始める。日本のセメント企業がロシア向けに大規模な輸出をするのは初めて。資源価格の高騰を背景にロシア経済が急成長し日系企業の進出が相次ぐなか、都市開発やインフラ整備が進んでいる。公共工事の減少など日本国内のセメント市場が縮小するなか、新たな販売先として開拓する。
 両社はこのほどロシアの大手セメントメーカー、スパスク・セメント(ウラジオストク市)と提携した。セメントの中間製品である「クリンカ」を、UMCは4月中に2万トン強、住友大阪セメントは3000トン出荷。UMCは年末までに同社の年間総輸出量の約5%に当たる20万トンを出荷する方針だ。

◎露ガスプロム:対ウクライナ、供給削減を解除、支払い合意受け(2008年3月6日、毎日新聞)
 インタファクス通信によると、ロシア政府系天然ガス独占企業ガスプロムは5日、ウクライナへのガス供給削減措置を解除した。ガスプロムによると、ウクライナ側が年始にいったん合意していた未払いガス代金を支払うことに応じたという。
 ガスプロムは、ウクライナが約6億ドルのガス代金を納めていないとして、今月3日に供給量を25%削減、4日にはさらに25%削減していた。
 ウクライナ側は供給削減の対抗措置として、自国経由で欧州に輸出されているロシア産ガスの抜き取りも辞さない姿勢を見せていたが、早期解決により06年1月のガス紛争時のような欧州諸国への影響は回避された。

◎露大統領選、メドベージェフ氏が圧勝し勝利宣言(2008年3月3日、読売新聞)
 ロシア大統領選は3日早朝(日本時間同日午後)までの開票の結果、プーチン大統領の後継指名を受けたドミトリー・メドベージェフ第1副首相(42)が得票率約70%で、他の3候補に大差をつけ、第1回投票で当選を決めた。
 メドベージェフ氏は同日未明、記者会見を開き、勝利宣言し、プーチン氏を首相に指名する意向を改めて表明した。ロシアの次期政権の性格は「2頭(タンデム)体制」(大統領府)と形容されるが、実際には、強い求心力を維持するプーチン氏がメドベージェフ氏を支える指導体制へ移行する。
 大統領就任宣誓式は5月7日に行われ、メドベージェフ氏は、エリツィン、プーチン両氏に次ぐ、ロシアの第3代大統領に就任する。任期は4年。ソ連、ロシアを通じて、指導者が任期を満了し、憲法の手続きに基づいて選挙で交代するのは今回が初めて。メドベージェフ氏は最年少の最高指導者となる。
 中央選管の集計によると、開票率97.30%の時点で、メドベージェフ氏の得票率は70.17%。野党・共産党のゲンナジー・ジュガーノフ議長(63)が17.80%、極右・自民党のウラジーミル・ジリノフスキー党首(61)が9.41%、弱小政党・民主党のアンドレイ・ボグダノフ党首(38)が1.29%となっている。タス通信は、投票率が2004年の前回選挙(64%)を上回る約69.60%に達すると伝えた。
 メドベージェフ氏は記者会見で「首相に就任する予定のプーチン氏と一緒に、就任までの2か月間に政府と大統領府の新しい陣容を整えたい」と述べた。外交政策については、大統領の管轄事項であることを確認し、隣接する独立国家共同体(CIS)諸国との関係を最重視しながら、「独立した外交で国益を追求する」と説明した。また、メドベージェフ氏は「だれも、大統領と首相の権限に関する憲法規定の変更など考えていない」と述べ、憲法に従い、自分とプーチン氏が役割を分担することになると強調した。
 記者会見に先立ち、メドベージェフ氏とプーチン氏は2日深夜、クレムリンのわきで開かれたロックコンサートの舞台に登場。プーチン氏は「今回の勝利により、過去8年間の路線の継続が保証された」と述べ、エネルギー価格の高騰で好調な経済力をテコに、国際的な影響力拡大をめざしてきた自身の政策が改めて信任されたと胸を張った。

◎メドベージェフ氏、圧勝、ロシア次期大統領は42歳(2008年3月3日、朝日新聞)
 2日投票されたロシア大統領選は、3日未明までの開票の結果、プーチン大統領(55)から後継指名を受けたメドベージェフ第1副首相(42)が7割を超える圧倒的な得票率で当選を決めた。5月7日にソ連崩壊後の新生ロシアの第3代大統領に就任する。メドベージェフ氏はプーチン氏とともに2日深夜、モスクワの赤の広場で開かれた若者向けコンサートの会場に革ジャン姿で登場。「私に投票してくれたすべての人に感謝したい」と述べ、勝利宣言した。
 プーチン氏は舞台上で「この勝利は、過去8年に成功裏に進んだ路線が継続されることを保証する」と述べた。メドベージェフ氏は大統領に就任後、プーチン氏を首相に迎え、異例の2人体制で政権運営にあたる。コンサート参加後に選対本部で記者会見したメドベージェフ氏は、自身の政策について「プーチン大統領が進めた路線の直接の継続となる」と述べた。一方で、大統領として自身が外交政策を決定する考えも表明した。
 中央選管のチュロフ委員長によると、開票率99.5%でメドベージェフ氏の得票率は70.2%。共産党のジュガノフ委員長が17.8%、自由民主党のジリノフスキー党首が9.4%、民主党のボグダノフ党首が1.3%。メドベージェフ氏の得票率は、前回04年の大統領選でプーチン氏が獲得した71.3%に迫った。投票率は前回大統領選や昨年12月の下院選を上回る69.7%に達した。
 メドベージェフ氏は、選挙戦では「共に勝利しよう」をスローガンに掲げ、プーチン氏との一体性を訴えた。エネルギー価格高騰に支えられた堅調な経済や、イスラム過激派による大規模テロの封じ込めなど、国民生活に一応の安定をもたらしたプーチン氏への高い支持を受け継いだ形だ。
 ソ連を解体したエリツィン初代ロシア大統領、エリツィン政権に絶大な影響力を振るった新興財閥を排除したプーチン氏と、ロシアでは前政権の路線の否定が繰り返されてきたが、今回は路線継続を最大の公約とする政権が生まれる。

◎ロシアのガスプロム、ウクライナ向けガス供給25%削減(2008年3月3日、日本経済新聞)
 ロシアの独占天然ガス会社ガスプロムは3日、料金滞納を理由にウクライナ向けのガス供給を25%削減したと発表した。ウクライナの親欧米政権に圧力を掛ける狙いとみられる。同国経由でガスを調達する欧州にも影響が出る可能性がある。大統領選でメドベージェフ第一副首相の当選が正式に決まった直後に強硬な外交姿勢が変わらぬことを鮮明に示した。
 ガスプロムは今年に入って追加で供給した19億立方メートル分の支払いが未納などと主張、「ウクライナに供給を削減する」と警告していた。ウクライナ側は「追加輸入の記録はない」と反論するとともに、ロシア側がウクライナ向け輸出で2006年に導入した子会社を通じて供給する不透明な取引の見直しを求めていた。
 ガスプロムは「欧州向け供給量は変わらない」と表明、批判を回避するため供給が減った場合はウクライナ側に責任があることを明確にした。ウクライナとの交渉は続けるとしている。ガスプロム会長を兼務するメドベージェフ氏が今回の措置に関与したかは不明だ。

◎ガスプロム、ウクライナにガス供給削減を警告(2008年3月2日、日本経済新聞)
 ロシアの天然ガス独占会社ガスプロムがウクライナに対し、3日午前10時から供給を削減すると警告した。ガスを巡る両国の対立は2月の首脳会議で取引形態の見直しなどでいったん決着したが、ロシア側は改めて料金の未払いがあると主張し圧力を加えている。ロシアにはガス供給の削減でウクライナの親欧米政権を揺さぶる狙いがある。
 ガスプロムは今年追加で供給した19億立方メートル分の支払いが未納と主張、3日から供給を25%削減すると警告した。ウクライナ側は債務を完済したと発表。ウクライナは今年の追加分は受け取っていないと主張するなど、2月29日の交渉は物別れに終わった。実際に供給が減った場合、ウクライナ経由でガスを調達する欧州にも影響が出る可能性がある。

◎33億円横領の元原子力相、禁固5年半の判決、ロシア(2008年2月21日、朝日新聞)
 モスクワの地区裁判所は20日、ロシア政府関連の原子力企業の株を不当に安く買うなどして3100万ドル(約33億5000万円)を横領した罪で、アダモフ元原子力相に禁固5年半の判決を言い渡した。検察側は、同原子力相が国に与えた損害は10億ドル(約1080億円)に上るとし、禁固9年を求刑していた。
 主な罪状は、原子力相当時の99年、低濃縮ウランを米国に納入するスイス企業の株49%を実勢よりずっと安い値段で買い取り、米国にある自分たちの会社の管理に移したというもの。スイス企業にはロシアの国営企業が出資していたが、ロシアはその支配権を失い、巨額の損害を受けた。元原子力相は控訴する方針だ。

◎次期大統領との“二人三脚”に自信、プーチン大統領が会見(2008年2月15日、読売新聞)
 ロシアのプーチン大統領は14日、5月の任期切れを前にクレムリンで内外記者会見を開き、3月の大統領選で勝利が確実視されるメドベージェフ第1副首相との新政権発足後の関係について「彼を信用している。国家運営のバトンを渡すことに胸を張れるし、怖くない」と述べ、“二人三脚”の国家運営に自信を示した。
 プーチン氏は次期政権下で首相に就任する意向を示しており、「(権限分担では)何の問題も生じない。私が国家元首に取って代わることはない」と言明。2期8年の在任中の施政については、「深刻な失政はなく、課題はすべて達成した」と胸を張った。

◎ロシアとウクライナ、ガス巡る紛争を土壇場で回避(2008年2月13日、日本経済新聞)
 ロシアがウクライナへの天然ガス供給を12日夕(日本時間13日未明)から止めると警告していた問題で両国首脳が12日にモスクワで会談し、土壇場で紛争を回避した。ロシアのプーチン大統領は北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指すウクライナを強くけん制。ガス供給を利用して同国の親欧米政権に圧力を加えたとの見方も出ている。
 プーチン大統領とウクライナのユーシェンコ大統領の会談は3時間以上に及んだ。会談後の記者会見でプーチン大統領は、ウクライナがNATOに加盟し防衛設備を配備した場合、「ミサイルの照準をウクライナに向ける可能性を否定できない」などと警告した。
 ガス供給を巡ってはロシアの独占天然ガス会社ガスプロムがウクライナ側に料金不払いがあるとして、供給を止めると表明していた。ウクライナ側はガスプロムが子会社を介して供給する不透明な取引に原因があると反発していたが、昨年11―12月分の支払いに応じ、ロシアもこれを受け入れた。契約形態の見直しを協議することでも合意したという。

◎プーチン大統領、院政へ意欲満々?(2008年2月8日、朝日新聞)
 ロシアのプーチン大統領は8日、政府閣僚や上下両院議員、地方首長らを集めて「2020年までの戦略的発展」と題する演説を行い、国民生活向上や国防力強化などの目標を語った。プーチン氏は3月の大統領選後に、後継指名したメドベージェフ第1副首相に政権を譲る予定だが、その後も首相として影響力を維持する意欲を示す狙いと見られる。
 プーチン大統領は昨年4月の年次教書演説では、「次回の演説は異なる大統領が行うことになる」と述べていた。しかし、8日の演説は形式、内容共に教書演説に酷似しており、次期政権でもプーチン氏が当面は最高指導者然として振る舞うことを予感させる。
 演説でプーチン氏は、自身が大統領に就任するまでの90年代のロシアを「カオス(混沌(こんとん))」だったと繰り返し強調。自身の任期中に「ロシアは強国として国際社会の舞台に復帰した」「世界7位の経済大国になった」と実績を誇り、路線の継続を訴えた。
 外交防衛政策では、「新たな軍拡競争が展開されていることは明らかだ」と指摘し、新世代兵器の開発などで対応する姿勢を打ち出した。

◎ガスプロム、ウクライナへのガス供給停止を警告(2008年2月8日、日本経済新聞)
 ロシアの天然ガス独占企業ガスプロムは7日、料金不払いを理由にウクライナに対しガス供給を11日から停止する可能性があると警告した。不透明なガス取引契約の見直しを求めるウクライナの親欧米政権を揺さぶる狙いもあるとみられる。

◎追徴課税裁判、JT側の主張認める・ロシア一審(2007年11月7日、日本経済新聞)
 日本たばこ産業(JT)のロシア現地法人「JTIマーケティング・アンド・セールス」が総額20億ルーブル(約90億円)の追徴課税を不当として起こしていた裁判で、ロシアの一審にあたる仲裁裁判所はJT側の訴えを認め、ロシア税務当局の主張を退けたことが7日、分かった。当局側が控訴しなければ、支払う必要はなくなる。
 ロシア税務当局は2004年7月、JT現地法人が2000年分の付加価値税を過少申告したとして追徴課税の支払いを命じた。06年4月には最高仲裁裁判所が一審に差し戻す判決を下していた。JTは「公正な判断がなされた」としている。

◎「60人殺害」の被告に無期懲役、露、ずさん捜査も浮き彫り(2007年10月30日、産経新聞)
 モスクワ市裁判所は29日、48人殺害と3人の殺害未遂に問われた元店員、アレクサンドル・ピチュシュキン被告(33)に無期懲役の判決を言い渡した。ロシアは1996年から死刑の執行を凍結している。被告は裁判で「60人を殺した」と主張したものの、検察当局は「証拠を得られない」として残りは継続捜査とした。弁護側は控訴するか検討中。
 被告は主に2001年以降、モスクワ南部の公園で「酒を飲もう」と誘った高齢者やホームレスの頭部をハンマーで殴って下水道に突き落とすなどし、昨年6月に拘束された。
 被害者には顔見知りや友人も多く含まれ、未遂事件の被害者らが警察に届けたにもかかわらず、警察は怠慢から証言を黙殺したり被害届を撤回させていた。
 被告は裁判で全く反省の色を見せず、「私は人の生死を決める神だった」などと述べた。

◎露下院選:毒殺事件のルゴボイ容疑者が出馬(2007年9月17日、毎日新聞)
 ロシア連邦保安庁の元中佐アレクサンドル・リトビネンコ氏が昨年ロンドンで毒殺された事件で、英国司法当局が容疑者と断定した元ソ連国家保安委員会(KGB)職員でロシア人実業家のアンドレイ・ルゴボイ氏(41)が、12月2日投票のロシア下院選に極右政党の自由民主党から出馬することになった。同党のジリノフスキー党首(下院副議長)が16日、インタファクス通信などに明らかにした。当選は確実視されており、英国の強い反発が予想される。
 下院(定数450)は全議席を政党別の比例代表制で選出する。ジリノフスキー党首によると自民党の候補者名簿でルゴボイ氏は同党首に次いで2番目となった。自民党は現在下院で第4党。最新の世論調査で支持率は8.8%で、40議席弱を占める計算になる。候補者名簿第2位のルゴボイ氏の当選は確実だ。
 ルゴボイ氏はリトビネンコ氏毒殺事件への関与を全面否定し、事件には英国情報機関が関与しているなどと主張。英国政府が求める身柄引き渡しに対し、ロシア政府は憲法で認められていないとして拒否している。英露間の対立は7月、外交官の追放合戦に発展し、両国関係の悪化を招いた。

◎ウクライナ大統領、毒殺未遂へのロシアの関与示唆(2007年9月11日、日本経済新聞)
 ウクライナのユーシェンコ大統領は11日付の英紙タイムズとのインタビューで2004年の大統領自身の毒殺未遂事件にロシアが関与したと示唆した。大統領が盛られた猛毒ダイオキシンの製造所は世界に3つしかなく、ロシアだけがサンプルの提供を拒否し、同国に逃亡中の容疑者3人の引き渡し要求も無視していると指摘した。
 ユーシェンコ大統領はロシアのプーチン大統領に直接協力を要請したが反応はないという。政府が関与しているかとの問いに、ユーシェンコ大統領は「個人の仕業ではない」とだけ述べた。ウクライナ側は実行犯とみられる容疑者3人の引き渡しをロシア当局に正式に要請している。
 ユーシェンコ大統領は04年の大統領選期間中に顔面が腫れ上がり容貌(ようぼう)が急変、血液中から通常の6000倍以上のダイオキシンが検出された。プーチン政権は当時、親ロシア派の対抗候補を露骨に支援していた。

◎露大統領、インドネシア初訪問、10億ドル超の武器売却へ(2007年9月7日、読売新聞)
 ロシアのプーチン大統領は6日、インドネシアを訪問し、ユドヨノ大統領と会談、総額10億ドルを超える武器売却で合意した。
 米国との軍事協力関係にくさびを打ち込んだ格好で、今後、インドネシアとロシアの軍事交流が活発化するものとみられる。ロシア大統領のインドネシア訪問は初めて。旧ソ連時代を含めると、フルシチョフ首相(1960年)以来で、約半世紀ぶりとなる。
 両大統領は会談後に共同声明を発表、「紛争と危機は平和的方法で解決すべきだと信じる」などとして、イラク戦争を継続する米国を暗に批判した。
 インドネシアが輸入する武器の約8割は米国製とされるが、米国は、東ティモールでのインドネシア軍による人権侵害を理由に、90年代初めから昨年まで武器の禁輸措置を実施。これにインドネシア側は不満で、新たな武器調達先としてロシアに目を向けていた。
 今回の合意に基づき、ロシアは、ヘリコプター15機、戦車20両、潜水艦2隻など計10億ドル分を政府借款(期間は15年)で提供するほか、スホイ戦闘機6機(約3億3500万ドル相当)を売却する。
 ロシアは東アジア首脳会議への正式参加も熱望しており、今回訪問には「影響力の大きいインドネシアに働きかけ、協力を求める狙いもある」(インドネシア外交評論家)とみられる。

◎ロシア:インドネシアへ40億ドルの投融資(2007年9月6日、毎日新聞)
 ロシアのプーチン大統領は6日、初めてインドネシアを訪問し、ユドヨノ大統領と会談した。訪問にはロシアから政府や財界の大規模な代表団が同行し、インドネシアへの総額40億ドル規模の投融資で合意した。
 旧ソ連時代を通じたロシア首脳の同国訪問は、60年のフルシチョフ・ソ連共産党第1書記兼首相以来。プーチン大統領はこの後オーストラリアを公式訪問し、8日からのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席する。

◎露カニ漁:密輸対処で「数年禁止も」、第1副首相(2007年9月6日、毎日新聞)
 インタファクス通信などによると、ロシアのイワノフ第1副首相は28日の政府会合で、カニ漁についてロシア側の統計と日本や米国の輸入統計に約7倍の差があると指摘、密輸に対処するためカニ漁そのものを「数年間、禁止する必要があるかもしれない」と述べた。
 同氏はプーチン大統領の後継候補者の一人。日本はロシア産のカニを大量に輸入しており、禁漁が実行に移されれば大きな影響が出そうだ。
 ロシア側は乱獲が続くとカニ資源が枯渇するとの危機感を持っている。ただ、禁漁はロシア側でも影響が大きく、国内の抵抗も予想される。
 またロシア通信によると、農業省のイズマイロフ次官は、ロシアの水産企業に対する外国の出資規制を提案した。

◎双日やニチロなど、ロシア水産物市場を開拓(2007年9月1日、日本経済新聞)
 双日やニチロなど日本企業がロシアの水産物市場の開拓に乗り出す。まずモスクワで今月開かれるロシア最大の食品総合見本市に共同で日本ブースを設ける。ロシアでは所得増加を受け都市部などで魚を食べる習慣が拡大しており、新たな輸出市場と位置付ける。国際見本市で水産関連企業が大規模に共同出展するのは初めてという。
 18~21日の「ワールドフードモスクワ2007」に約100平方メートルのブースを確保した。2社のほか、日本水産子会社の横浜通商(横浜市)、鮮魚専門の魚力など計8社が参加。国産の鮮魚や干物、海外現地法人で生産する養殖魚などを集める。

◎露大統領:サハリン知事解任、中央の影響力強める狙い(2007年8月7日、毎日新聞)
 ロシアのプーチン大統領は7日、サハリン州のマラホフ知事を解任し、後任候補に同州北部オハ地区のホロシャビン地区行政長を推薦した。大統領府が発表した。同州は日本の北方領土を管轄し、「サハリン1」「サハリン2」など日本の絡む石油開発事業を抱えている。大統領の人事は、北方四島を含む極東地域の開発などで中央の影響力をさらに強める狙いがあるとみられる。
 マラホフ知事は前任者の事故死を受けて03年12月の州知事選で当選し、今年末が任期切れの予定だった。プーチン大統領は04年、中央集権強化のため知事の公選制を廃止し、大統領の推薦に基づいて地方議会が選出する事実上の「任命制」を導入した。
 同知事は大統領に続投を求めていたが、地元の石油開発で州への収益分配の少なさに不満を漏らしていたことに加え、2日のサハリン地震を巡る対応で大統領の批判を浴びたことで承認を危ぶむ声が出ていた。一方、大統領府は同知事の辞意に基づくものと発表した。
 大統領は、年末の下院選、来年3月の次期大統領選を控え、今春から地方の知事を相次いで解任して中央集権強化を進めている。

◎天然ガス開発:サハリン1は「露国内最優先」、第1副首相(2007年7月28日、毎日新聞)
 ロシア政府系独占企業ガスプロム会長を兼任するメドベージェフ第1副首相は27日、日本の政府や商社が出資する極東サハリン沖の石油・天然ガス開発「サハリン1」で生産される天然ガスについて「ロシアの消費者の利益が第一だ」と述べ、国内消費を最優先する方針を示した。
 共同通信など一部外国メディアと会見した。ガスプロムは、サハリン1を主導する米エクソンモービルと中国側の「天然ガスの全量を中国に輸出する」とした覚書を撤回させ、国内消費に回すべきだと表明してきたが、プーチン大統領側近の第1副首相が確認したことで政権の方針が明確になった。
 第1副首相は「多角化のため伝統的な輸出先の欧州だけでなく、アジアへの天然ガス供給についても積極的に検討している」と述べ、サハリン1の天然ガスも一部が輸出に回る可能性があると示唆。国内消費優先の理由としてはロシアで都市ガスの普及が遅れている事情を挙げた。
 比較的リベラルとみられているメドベージェフ第1副首相は、旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身で前国防相のイワノフ第1副首相とともに、大統領の有力後継候補の一人と目されている。

◎ロシア大統領、「英国は脳入れ替える必要」、激しく批判(2007年7月25日、朝日新聞)
 「英国の連中は脳を入れ替える必要がある」。ロシアのプーチン大統領は24日、外交官の追放合戦などで関係が悪化している英国の政府幹部らを激しく批判した。
 ロシア元情報将校リトビネンコ氏の毒殺事件で英国側が求めるルゴボイ・ロシア連邦保安局元幹部の引き渡しについて「ロシア憲法が引き渡しを禁じているのなら改正せよと英国はいう。わが国、国民への侮辱だ」と強調。「これは前世紀の植民地主義的思考の名残だ。変えるべきはわが憲法でなく、彼らの脳だ」とこきおろした。
 また、ロシア政権打倒を呼びかけた元政商ベレゾフスキー氏ら、ロシアが国際手配している人物の引き渡しを英国が拒んでいることを「テロを含めて重大な犯罪者が30人もロンドンにいるのに、我々の要求は鼻もひっかけない」と非難した。
 モスクワ近郊で語った。ロシアが英外交官を退去処分にした19日には、「対英関係はミニ危機だ。克服される」と冷静だった。しかし、その後も英国側が引き渡し問題で強硬姿勢を崩さないため、不満が噴きだしたようだ。

◎ロシア人と中国人住民が大げんか、ハバロフスク(2007年7月20日、産経新聞)
 インタファクス通信によると、ロシア極東ハバロフスクのアムール河岸で18日夜、ロシア人と中国人住民による少なくとも数十人規模の衝突が起き、ロシア人4人が刃物で切られ重軽傷を負った。地元当局は中国人約20人を拘束した。
20人拘束、ロシア人4人重軽傷
 人口減少に悩むロシアの極東部には、中国からの出稼ぎ労働者が大量に流入している。政治レベルでは中露の友好演出が進むが、住民レベルでは中国人に対する複雑な感情がある。

◎ロシア:揺さぶりかけ、英は態度硬化、外交官追放で(2007年7月20日、毎日新聞)
 ロシア連邦保安庁(FSB)リトビネンコ元中佐毒殺事件を巡り、英露両国が互いの外交官の追放を発表した問題で、ロシアは、強硬姿勢を堅持すると同時に、関係修復のシグナルを送り、英国に揺さぶりをかけている。英国は他のロシア人暗殺疑惑もあり、態度を硬化させている模様で、解決の糸口は見えていない。
 プーチン露大統領は19日、露中部サランスクで、フィンランド、ハンガリーの首脳との共同会見後、記者団に、外交官追放問題は「小規模な危機」で「克服できる」と語った。さらに「英露関係の発展を望んでいる」と柔軟な姿勢を見せた。
 プーチン大統領が主要国との関係を「危機」の言葉で表現するのは極めて異例。大統領は英国批判の発言も避け、事態を深刻に受け止めている様子をうかがわせた。
 大統領は「いかなる行動も善意で解釈し、パートナーとしての利益を尊重すれば、すべては良い方向に展開する」と期待は述べたものの、「(互いの)法律の尊重」を訴え、「ロシア憲法で自国民の身柄を他国に引き渡せない」との考えを改めて示した。
 一方、ラブロフ露外相は訪問先のリスボンで「(対立の)現状がいつまで続くかは英国次第だ」とあくまで強硬姿勢を崩さなかった。
 相手国との関係を一方的に断って態度変更を迫るのは、ロシア特有の外交手法だ。ロシアは昨年9月、グルジアとの関係を悪化させた際にも、すべてのグルジア人へのビザ発給を一方的に停止した。同時にロシアに住むグルジア人を輸送機で強制送還し、航空定期便や鉄道も停止させ、事実上の断交策を取った。
 ただ、ロシアは英国に対しては商用、観光などのビザ発給停止は除外した。自国の天然資源開発などで英国からの投資拡大を望むロシアは、経済関係にまで影響を及ぼしたくないのが本音だ。
 英国への報復発表に先立ち、ロシアは19日、昨年9月以降停止していたグルジア人へのビザ発給をほぼ再開すると発表した。「いつでも関係修復の用意がある」とのメッセージを英側に送る狙いがあった可能性がある。
 英国では同日付の各紙が、英警察筋の話として、リトビネンコ氏と親しかったロシアの元政商ベレゾフスキー氏の暗殺を企てたロシア人が6月21日にロンドンで逮捕され、ロシアに強制送還されたと報じた。事実とすれば、英側が「自国領内で2度もロシア人暗殺が企てられた」と、態度を硬化させた可能性がある。

◎ロシア:外交官追放の英への報復で苦慮、関係悪化望まず(2007年7月18日、毎日新聞)
 リトビネンコ元ロシア連邦保安庁(FSB)中佐毒殺事件で、英政府が容疑者引き渡しを拒んだロシアの外交官4人の追放を発表したことに対し、グルシコ露外務次官は17日、「報復措置を取り、近く英側に通告する」と警告した。同日中に報復措置を発表するとみられていたが、同次官は具体的には触れなかった。欧米との関係悪化で孤立を深めるロシアは、対応に苦慮している模様だ。
 グルシコ次官は「旅行者や文化科学、ビジネス界の交流などの一般市民の利益を考慮した対応をする」とも述べた。ロシアは天然資源開発などで英国企業との交流を深めており、経済面での英国との関係悪化を望んでいないことを示した。
 一方、同次官はロシアが求めた元政商ベレゾフスキー氏ら21人の身柄引き渡しを英国側が拒否してきた点に触れ、「(容疑者1人の引き渡し拒否に対して4人の露外交官を追放した)英国の手法を我々が取れば80人以上の(英)外交官が追放されることになるのを英国側は想定していなかったのだろう」と皮肉った。
 一方、英外務省は同日、「ロシア側が報復することに正当性はない」と強気の姿勢を示した。

◎ロシア:英の露外交官追放措置に非難声明、外務省(2007年7月17日、毎日新聞)
 ロシア外務省は16日、英政府が発表した露外交官追放措置について、「事件を政治化する目的の扇動的な行為」と非難する声明を発表、「相応の報復」で対応すると警告した。
 声明では、ロシア憲法で自国民の外国への引き渡しが禁じられていることを指摘。また、ロシアが「国際テロリスト」と指摘するチェチェン独立派指導者で、リトビネンコ氏と親しかったザカエフ氏らの身柄引き渡し要求をこれまで英国が拒否してきたことを挙げ、「英国の立場は法的にも道徳的にも擁護できない」と非難した。
 露外交官追放を発表する直前にミリバンド英外相がラブロフ露外相に電話した際、ラブロフ外相が報復措置とともに「英露関係全体に影響が出る」と警告したという。

◎ロシア:英国の外交官追放に反発「報復なしでは済まない」(2007年7月17日、毎日新聞)
 タス通信によると、ロシア下院のココーシン独立国家共同体(CIS)問題委員長は16日、英政府による露外交官追放について「英当局の決定は誤りだ。ロシア側からの報復なしでは済まない。被害はロシア側ではなく英国の方が大きい」と語った。英国の強硬姿勢に対し、ロシアでは「他国の憲法を無視した措置」との反発が広がりそうだ。

◎英国:露外交官4人を国外追放、毒殺事件容疑者拒否に報復(2007年7月17日、毎日新聞)
 ミリバンド英外相は16日、元ロシア連邦保安庁(FSB)中佐リトビネンコ氏毒殺事件で、容疑者の身柄引き渡しを拒否するロシアへの報復措置として英国駐在の露外交官4人を国外追放にする措置を発表した。欧米への対立姿勢を強めるプーチン露政権が反発するのは必至だ。
 同外相は英下院で「政府はやむを得ず、(露外交官追放)を発表するに至った」と述べ、英露間の査証(ビザ)簡素化協議を停止する上、その他の2国間協議の見直しも進めていると言明した。
 反プーチン派のリトビネンコ氏が昨年11月、亡命先の英国で急死。体内から致死性の放射性物質ポロニウム210が検出された。英検察当局は今年5月、FSBの前身・旧ソ連国家保安委員会(KGB)のルゴボイ元職員を容疑者と断定、引き渡しを求めたが、露最高検察庁は「憲法は外国への自国民引き渡しを禁じている」と拒んだ。
 プーチン大統領は14日、欧州各国の通常兵器保有や兵力移動を制限する欧州通常戦力(CFE)の履行を一時停止する大統領令に署名した。セルビア共和国コソボ自治州の独立問題でも容認派の欧米と反対派ロシアとの確執が続いている。

◎ロシア、英の外交官国外退去措置に強く反発(2007年7月17日、朝日新聞)
 ロシア政府は16日、元情報将校リトビネンコ氏の毒殺容疑をかけられたロシア連邦保安局(FSB)のルゴボイ元幹部の引き渡しを拒否したことへの報復措置として英国がロシア大使館の外交官4人に国外退去を求めたことに、「モラルに反する」(カムイニン外務省情報局長)と強く反発。対抗措置の検討に入った。
 ロシア外務省は声明で「挑発的な行動は、それなりの対抗措置無しには済まされない。ロ英関係全体に後遺症を残さないわけにはいかない」と英国を強く非難。英政府が、亡命先のロンドンからプーチン政権の転覆を呼びかけている政商のベレゾフスキー氏や、チェチェン独立派幹部のザカエフ氏に対するロシア政府の引き渡し要求に応じていないとも指摘した。
 一方、ルゴボイ元幹部は16日、「今回の決定は『リトビネンコ事件』に最初から政治的な背景があったことを改めて示した」と述べ、事件への関与を重ねて否定した。

◎露、CFE条約履行停止、米ミサイル防衛の東欧配備に対抗(2007年7月15日、読売新聞)
 ロシアのプーチン大統領は14日、欧州通常戦力(CFE)条約の履行停止を命ずる大統領令に署名した。
 米国が推進するミサイル防衛(MD)の東欧配備への具体的な対抗措置の発動で、MD問題をめぐるロシアと米国の対立は、欧州を巻き込みさらに先鋭化することが避けられない情勢となった。
 大統領府が発表した声明によると、ロシアはCFE条約と関連する協定が定める義務の履行を150日の周知期間が過ぎた後に停止するとしている。具体的には北大西洋条約機構(NATO)への通常兵器に関する情報提供や、NATOからの査察受け入れを中止することになる。
 声明は履行停止の決定について、「ロシアの安全保障にかかわる、緊急の措置を必要とする異常事態の結果である」と説明したうえで、1990年に調印されたCFE条約は、冷戦後の軍事的、政治的な変化により現状に合わなくなっていると指摘している。
 MDの東欧配備に強く反対するプーチン大統領は、4月下旬、年次教書演説でCFE条約の履行停止の可能性を警告していた。

◎CFE条約:ロシアが履行を一時停止、欧米と対決鮮明に(2007年7月15日、毎日新聞)
 ロシアのプーチン大統領は14日、欧州各国の通常兵器の保有数などを制限する欧州通常戦力(CFE)条約の履行を一時停止する大統領令に署名した。大統領府が発表した。ロシアは米国など北大西洋条約機構(NATO)諸国の軍拡の動きに反発を強め、同条約で定められたロシア側の軍事力削減などの義務を一時停止すると警告していた。警告を実行に移したことで、欧米への対決姿勢を一層鮮明にした。
 大統領令は、脱退条件である「ロシアの安全保障を損ない、緊急の措置を取る必要がある例外的な状況」を引用し、条約履行の一時停止を宣言。ロシア外務省に全加盟国への通告を命じた。同省によると、各国が通告を受理してから150日後に条約の効力が停止し、ロシア側は欧州地域での兵力移動の通告義務からも解放される。
 90年に調印された同条約は、欧州での東西冷戦終結を象徴する条約の一つ。ソ連解体やNATO拡大を受け、99年に修正された。ロシアはいずれも批准したが、米国などNATO諸国は、ロシア軍部隊のグルジアやモルドバへの駐留を理由に、後者の批准を留保している。大統領令の補足文書によると、ロシアはNATO諸国が後者を批准するまで条約義務の履行を停止する。
 プーチン大統領は4月、米国が計画する東欧へのミサイル防衛システム配備などを批判。CFE条約の一時停止や脱退の可能性を警告していた。今回は脱退には踏み込んでいない。

◎露元中佐毒殺:KGB元職員の身柄引き渡し要求を正式拒否(2007年7月6日、毎日新聞)
 元ロシア連邦保安庁(FSB)中佐アレクサンドル・リトビネンコ氏の毒殺事件で、ロシア最高検察庁は5日、英当局が殺人容疑者と断定した旧ソ連国家保安委員会(KGB)のアンドレイ・ルゴボイ元職員について、英国からの身柄引き渡し要求を正式に拒否し、英内務省に通知したと発表した。
 憲法で外国へのロシア人の引き渡しが禁じられていることを理由に挙げた。

◎在任15年、さらに続投、モスクワ市長(2007年6月28日、朝日新聞)
 モスクワ市議会は27日、ユーリー・ルシコフ市長(70)を再任するよう求めたプーチン・ロシア大統領の提案を賛成32、反対3で可決した。任期4年を務めると、市長在任は92年6月から19年間に及ぶことになる。
 ルシコフ氏は人口1千万の首都の大改造を進め、03年市長選で75%近くを得票するなど人気が高い。大統領の与党「統一ロシア」の幹部も務める。プーチン氏は12月の下院選と来年3月の大統領選を控え、その政治力を利用した方が得策と判断したようだ。
 ルシコフ氏は当初、民主改革派のポポフ前市長のもとで副市長を務めたが、次第に民族・愛国主義的な政治姿勢を強めてきた。日ロ賢人会議のロシア側座長を務めた折も、北方領土四島の日本返還に強く反対した。
 夫人が経営する建設会社が多くの事業を受注しており、「夫が計画して妻が建設する」といった批判も絶えない。審議では共産党議員団が「市長は、その政策が大きな社会的不平等をもたらした統一ロシアの幹部だ」とし、再任に反対した。

◎露・ガスプロム、サハリン1の天然ガスを中国に輸出せず(2007年6月27日、読売新聞)
 ロシア政府系の天然ガス独占企業「ガスプロム」のアレクサンドル・メドベージェフ副社長は26日、記者会見し、サハリン沖の石油、天然ガス開発「サハリン1」で生産される天然ガスを中国に輸出せず、国内消費を優先させるべきだとの考えを表明した。
 ガスプロムはサハリン1のガスを事業者から全量買い取り、輸出や国内管理を独占する意向を繰り返し表明して事業者に圧力をかけており、ガスプロムが開発権を握ったサハリン2や東シベリア・コビクタ・ガス田に続き、外資主導の開発事業が見直しを迫られる恐れが出てきた。
 サハリン1は、米エクソンモービルや伊藤忠商事などが出資。エクソンモービルは昨秋、中国側との間で、年間80億立方メートルのガスをパイプラインで輸出する仮契約を結んでいるが、メドベージェフ副社長は、国内で生産されるガス価格の決定にガスプロムが関与できないことに不満の意を示した。

◎ロシア:サハリン1の天然ガス「すべて国内需要向け」(2007年6月19日、毎日新聞)
 日本政府と企業が出資しているロシア極東・サハリン沖の資源開発事業「サハリン1」について、ロシア政府系天然ガス企業ガスプロムのアナネンコフ副会長は19日、「産出されるすべての天然ガスはロシア国内用に使われるべきだ」と語り、中国との輸出契約を撤回するようフラトコフ首相に求めた。インタファクス通信が伝えた。
 サハリン1には、日本政府が50%、残りを伊藤忠商事などが出資するサハリン石油ガス開発(SODECO)が30%を出資している。日本などへの輸出を想定して開発が進められたが、事業を主導する米エクソンモービルは昨年、全量を中国に供給することで中国企業と暫定合意していた。
 ロシア産天然ガスの外国への販売を独占するガスプロムが輸出拒否の姿勢を示したのは、資源の管理強化を進めるプーチン政権の意向を反映したものと見られる。
 同副会長は、政府の極東開発に関する委員会で「中国に80億立方メートルを輸出すれば国内需要は満たせない」と述べた。モスクワの資源アナリストによると、ロシア側は、中国とガスの輸出価格をめぐり交渉中だが、中国側が安価な価格を主張し、行き詰まっている。「輸出拒否」の発言は、中国側に価格交渉で揺さぶりをかける狙いもあるとみられる。

◎露元スパイ殺害、起訴の元ビジネスマン「英情報部が関与」(2007年6月1日、読売新聞)
 ロシア連邦保安局の元中佐がロンドンで殺害された事件で、英国で起訴されたロシア人ビジネスマン、アンドレイ・ルゴボイ氏が31日、モスクワで記者会見し、潔白を主張した。
 同氏は、英国の対外情報部(MI6)が事件に関与したとの見方を示している。
 ルゴボイ氏は、殺害されたリトビネンコ氏やMI6の諜報(ちょうほう)員とロンドンで会った際に、プーチン大統領に関する情報提供などの協力を求められたが、拒否したと説明。自身の勧誘に失敗したため、MI6にとってリトビネンコ氏の利用価値が低くなった、との見方を示した。
 また、亡命先の英国でプーチン政権を批判する政商ベレゾフスキー氏もMI6に協力しており、事件に関与した可能性があるとの見方を示した。

◎値上がり懸念、ロシアが生きたカニの輸出禁止(2007年6月1日、読売新聞)
 農林水産省は31日、ロシアが5月中旬から、ロシア領海内で漁獲したカニを生きたまま輸出することを禁止したと明らかにした。
 資源保護などが理由としている。タラバガニや毛ガニはロシアからの輸入が多く、値上がりなどの影響が懸念される。
 農林水産省によると、2005年にロシアから輸入したカニ類は約7万5000トンで、日本の消費量の約6割を占める。生きたカニを含め、生鮮冷蔵輸入品に占めるロシア産の比率は、2006年でタラバガニがほぼ100%(1万6425トン)、毛ガニは91.7%(3632トン)にのぼる。

◎ロシアが北朝鮮への武器・ぜいたく品などの輸出禁止(2007年5月31日、読売新聞)
 ロシア大統領府は30日、北朝鮮に対する武器、軍用機材、「ぜいたく品」の輸出を禁止した、と発表した。
 国連安全保障理事会が2006年10月、核実験を行った北朝鮮に経済制裁を発動したのを受けた措置で、ロシアが具体的な制裁を発表したのはこれが初めてだ。
 この時期にロシアが対北制裁に踏み切った理由は不明だが、北朝鮮に核放棄を促す目的など、何らかの政治的狙いが背景にあるとみられる。露朝間では最近、北朝鮮が旧ソ連時代から抱える約80億ドルの対露債務返還が改めて浮上。今年3月、北朝鮮側が債務の帳消しを露側に要求したと言われる。
 プーチン大統領が制裁を発動したのは5月27日。輸出禁止の品目には、戦車や装甲車、軍用のヘリ、航空機をはじめ、大量破壊兵器や弾道ミサイル開発に関連する物資と技術が含まれる。また、禁輸品目には貴金属、高級時計、香水、ブランデー、ワインなどのぜいたく品も加わった。
 特にぜいたく品は、豪勢な私生活を送っている金正日(キム・ジョンイル)総書記を狙い撃ちにしたものとされ、すでに禁輸措置を取っている日米に、ロシアが加わる意味は小さくない。これら禁輸品目の輸出をロシアの政府機関や国内企業に禁止したほか、第三国からロシア領内を通過して北朝鮮に輸送することも禁じている。

◎モスクワ:連日のように30度超す猛暑(2007年5月30日、毎日新聞)
 モスクワでは5月後半に入って連日のように30度を超す猛暑が続いている。通常ならまだ涼しさが残る季節だが、思わぬ暑さに川岸や公園の噴水など市内のあちこちに「涼」を求める人々が繰り出し、まるで真夏のよう。モスクワでは冷房を設置していない家も多く、経験のない暑さに市民もとまどいを隠せない様子だ。
 クレムリン近くの公園の噴水では若い女性が気持ちよさそうに水浴びをし歓声を上げていた。

◎サハリン2正式合意、ロシア主導、事業費は倍増(2007年4月19日、朝日新聞)
 ロシア極東の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」を巡り、これまで事業を進めてきた国際石油資本ロイヤル・ダッチ・シェルと三井物産、三菱商事の3社は18日、ロシア政府系の天然ガス独占企業ガスプロムに経営権の過半数を移譲することで正式に合意し、4社の代表らが合意文書に署名した。
 正式合意を前に、ロシア政府は14年までの事業費を当初予定の100億ドルから194億ドルに倍増することを認めた。サハリン2の生産物分与(PS)契約では、事業費の増加はロシア側の取り分の減少につながるため、政府はかねて難色を示していたが、ガスプロム参画で不利益が軽減される形となった。環境問題についても、ロシア政府は今月、ガスプロムなどが作成した是正計画を承認、事実上矛を収めた。
 インタファクス通信によると、ガスプロムのメドベージェフ副社長は署名式後、日本などへの液化天然ガス(LNG)供給がほぼ予定通り08年第3四半期から始まるとの見通しを示した。
 サハリン2を巡っては、昨年9月以降ロシア政府が環境破壊を理由に圧力を強め、12月にガスプロムが事業主体「サハリン・エナジー」の株式の50%プラス1株を74億5000万ドルで取得することで原則合意。外資3社の持ち分はそれぞれシェル27.5%マイナス1株、三井物産12.5%、三菱商事10%となる。

◎サハリン2権益取得、外資3社に74億ドル・ガスプロム(2007年4月19日、日本経済新聞)
 ロシアの天然ガス独占企業ガスプロムは18日、サハリン沖資源開発事業「サハリン2」に出資する英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事から同事業の権益50%プラス1株を取得することで最終合意し4社が契約に調印した。株式譲渡額は総額74億5000万ドル(約8800億円)で、このうち三井物産に18億6250万ドル、三菱商事に14億9000万ドルが支払われる。
 ロシア天然資源省はすでにガスプロムが中心になって作成したサハリン2工事に伴う環境被害の回復計画を承認しており、事業推進の障害はなくなった。ロシア政府は2014年までの総事業費を当初計画のほぼ2倍の194億ドルに増やすことを同日付で承認した。

◎サハリン2、ガスプロムの経営権取得で最終交渉を継続(2007年4月17日、日本経済新聞)
 ロシアの天然ガス独占企業ガスプロムがサハリン沖資源開発事業サハリン2の経営権を英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事から取得するための最終交渉が16日モスクワで実施されたが決着せず、17日に引き続き交渉することになった。事業主体サハリンエナジーのイグナチエフ副社長は「17日午後(日本時間同日夜)に署名する」と述べた。
 署名式はもともと16日に予定していたが、同日深夜になって延期が決定。イグナチエフ副社長は同日の交渉が物別れに終わった理由については言及を避け「交渉は順調に進んでいる」と述べるにとどめた。
 一方、ロシア天然資源監督局は16日、ガスプロムが中心になって作成したサハリン2工事に伴う環境被害の回復計画を承認。これによりサハリンエナジーは2008年の液化天然ガス(LNG)輸出開始に向け工事を進める障害がなくなった。

◎ロシア:デモ粉砕「当局側に法律違反なし」と検事総長(2007年4月16日、毎日新聞)
 タス通信によると、モスクワとサンクトペテルブルクで反プーチン政権派グループが行ったデモ行進を治安部隊が実力阻止した問題で、ロシアのチャイカ検事総長は16日、「警察側の活動は法の枠内だった」と述べた。14日のモスクワのデモでは、現場で取材していた本紙記者が特殊部隊員に警棒で殴られ負傷したほか、複数の内外の記者が一時、身柄を拘束されていた。

◎ロシア:反プーチン3000人デモ、治安部隊が実力粉砕(2007年4月15日、毎日新聞)
 ロシアのプーチン政権に反対する市民約3000人が14日、モスクワ中心部でデモ行進を行った。デモはモスクワ市当局の許可を受けておらず、治安部隊約7000人が出動し、参加者をこん棒で殴りつけ、実力粉砕した。インタファクス通信によると、デモを呼びかけたチェスの元世界王者、カスパロフ氏ら約170人が拘束された。
 デモは、来年3月の大統領選挙へ向けてリベラル派勢力を結集しようと、カスパロフ氏やカシヤノフ前首相、イラリオノフ元大統領顧問(経済担当)が呼びかけた「不同意者の行進」。リベラル派のデモを実力粉砕した治安部隊は「法と秩序」を第一とするプーチン政権のゆるぎない意思を示した。
 参加者らは当初、市中心部のプーシキン広場で集会を計画していたが、広場は早朝から鉄の柵で囲われ、ずらりと並んだ警察・内務省軍兵士が立ち入りを阻止した。広場に入ろうとした参加者と警察隊の間でもみ合いとなり、若者らが次々と逮捕された。この場でカスパロフ氏も拘束された模様だ。
 向かいの別の広場では、プーチン大統領を支持する若者の組織「若き親衛隊」約300人が当局の許可を得て集会を行い、大きな違いを見せた。

◇本紙記者の頭にもこん棒
 デモ隊が並木道に入ったところだった。突然、ヘルメット姿の特殊部隊が行進を阻止し、デモ参加者に突入してきた。「うあー!」。こん棒で容赦なく殴られ、悲鳴を上げる参加者。現場を取材していた記者(杉尾)の頭にもこん棒が振り下ろされ、眼鏡が自分の血で真っ赤になった。
 記者はカメラを持ち、ロシア外務省発行の記者証を首から提げていた。こん棒を持った特殊部隊員がこちらに向かって来た時、目が合い、手を上げ、ロシア語で「参加者ではない」と説明しようとしたが、次の瞬間には頭をたたかれていた。
 デモ隊はプーシキン広場での集会を断念し、イラリオノフ氏を先頭に、「打倒!警察国家」「プーチンなきロシアを!」と叫びながら約1時間、行進している最中だった。市民や報道関係者への暴力行為に、高齢の女性参加者は記者に「ロシアの恥だ」と治安当局を非難した。【モスクワ杉尾直哉】

 負傷した杉尾記者は14日、モスクワ市内の病院で、頭部を4針縫う治療を受けた。毎日新聞モスクワ支局は日本大使館に状況を説明するとともに、ロシア外務省に文書で抗議を申し入れる予定。

◎ロシア:初の超特急鉄道導入で日本側に融資呼びかけへ(2007年3月27日、毎日新聞)
 ロシア政府系鉄道会社「ロシア鉄道」のヤクーニン社長が、27日からの訪日を前に日本人記者団と会見し、12年以降にロシアで初めての超特急鉄道を導入する計画を表明、日本側に融資を呼びかける考えを示した。日本の新幹線については「我々にとっては22世紀の技術だ」と述べ、ロシアへの導入は困難との考えを示した。
 ヤクーニン社長によると、ロシア鉄道はモスクワ-サンクトペテルブルク間などで時速250キロ以上の超特急列車専用の鉄道を新たに建設する計画という。同社長は「日露間には(北方領土問題などの)政治的な対立があるが、未来志向で新たな関係を築こう」と語り、鉄道分野での日露協力を訴えた。同社長は29日までの日本滞在中、JR東日本や外務省幹部との会談を予定している。

◎英BP首脳、23日に露大統領と会談へ(2007年3月22日、日本経済新聞)
 石油メジャーの英BPは21日、ジョン・ブラウン最高経営責任者(CEO)と、次期CEOに決まっているトニー・ヘイワード開発・生産部門長がロシアを訪問し、23日にプーチン大統領と会談することを明らかにした。BPがロシアで進める石油・ガス開発などについて話し合うとみられる。
 BPはロシアに多くの権益を持っており、資源・エネルギーの国家管理を強めるプーチン政権とどう協調していくかが課題。BPがロシア企業と設立した合弁のTNK-BPはシベリアに巨大なガス資源を保有しているが、そのロシア側持ち分をロシアのエネルギー大手、ガスプロムが取得しようと動いている。ガスプロムは昨年末「サハリン2」プロジェクトの過半の株式を取得しており、ロシア政府がどう対応するかが関心を集めている。

◎ガスプロム、サハリン1と提携交渉・天然ガス購入しLNG輸出(2007年3月19日、日本経済新聞)
 ロシア・サハリン沖の資源開発事業「サハリン2」の経営権取得を決めた天然ガス独占企業ガスプロムは、日本連合が3割出資する「サハリン1」と提携交渉に入った。サハリン1で産出する天然ガスを購入し、サハリン2の液化天然ガス(LNG)施設を利用して輸出するほか、国内でも販売する考え。世界的なガス生産地となったサハリンに対する影響力を強める狙いとみられる。
 ガスプロムのアレクセイ・ミレル社長が日本経済新聞との書面インタビューでサハリンでの取り組みの基本方針を明らかにした。「サハリン2は新たな(LNG)設備の建設と他の隣接するガス田産のガスを調達することで事業を拡大できる」と強調。サハリン1を主導する石油メジャーの米エクソンモービルとは「交渉している」と述べた。

◎ロシア:マクドナルドで爆発、6人負傷、テロの可能性も(2007年2月19日、毎日新聞)
 インタファクス通信によると、ロシア第2の都市サンクトペテルブルク中心部のハンバーガー店マクドナルドで18日夜、爆発が起き、計6人が負傷した。治安当局は爆弾テロの可能性もあるとみて調べている。
 6人の中にドイツ人旅行客1人が含まれているとの情報があるが、在サンクトペテルブルク日本総領事館によると、負傷者の中に日本人はいない。
 内務省当局者によると、店内のテーブルの下に爆弾が仕掛けられていたとみられる。爆発で窓ガラスが壊れたが、火災は起きなかったという。
 2002年10月には、モスクワ市南部のマクドナルド前に停車中の車が爆発、1人が死亡するテロが起き、ロシアからの独立を目指す同国南部のチェチェン共和国出身者らが逮捕された。

◎鳥インフル:モスクワで家禽80羽死ぬ、H5N1型検出(2007年2月18日、毎日新聞)
 タス通信によると、モスクワ州のドモジェドボ地区など首都モスクワ郊外の3カ所で家禽(かきん)約80羽が相次いで死に、ロシアの衛生当局は17日、鳥インフルエンザの高病原性ウイルスH5N1型による感染死だったと発表した。モスクワ州動物衛生当局によると、18日にも州北部1カ所で新たに鳥インフルエンザによる家禽の感染死が確認され、被害が広がっている模様だ。
 ロシアでは05年夏以降、シベリアやロシア南部で鳥インフルエンザが発生、今年も南部クラスノダール州で1月に家禽が死んでいたが、首都近辺での発生は初めて。これまで人への感染例は報告されていない。

◎露大統領:米非難、東欧へのミサイル配備やNATO拡大で(2007年2月11日、毎日新聞)
 ロシアのプーチン大統領は10日、米国の姿勢を「危険」と非難し、東欧へのミサイル防衛システムの配備や北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大も「相互信頼を損なう」と批判した。これほど強い米国批判は異例。米欧の防衛担当閣僚の意見交換の場として知られるミュンヘン安保政策会議に初めて参加し、安保政策について演説後、質問に答えた。
 大統領は、米国の姿勢を「すべての面で領土を超えて力を行使している」とし「これは非常に危険でだれも国際法の下に身を隠せなくなる」と強い調子で非難した。また「武力の行使を正当化するのはNATOでも欧州連合(EU)でもなく国連だけだ」と述べ、イラク戦争をはじめとしたこれまでの米国の軍事行動を批判した。
 NATOの東欧への拡大については「我々の国境に軍を突き出している」と語り、「NATOは軍事・政治ブロックに過ぎず、加盟しても近代化や安全保障がもたらされない。逆に相互の信頼を損なう」と不満を述べた。また先月、米国がミサイル防衛システムの拠点をポーランドとチェコに築く意向を示したことを念頭に「ミサイル防衛が対ロシアでないという主張には同意できない。ミサイル防衛は力の均衡を壊し、相手を信頼しづらくなる」と主張。対抗措置として、防衛網を突破するミサイル開発への意欲を示した。
 さらに、今月初めに国連特使から示されたコソボ独立案について「コソボの住民とセルビア人だけが決められる。片方が幸福でない案は支持できない」と拒否した。

◎サハリン1:LNGで供給要請、政府、エクソンに(2007年2月7日、毎日新聞)
 日本政府がロシア・サハリン沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン1」の開発を主導する国際石油資本(メジャー)、米エクソンモービルに対し、天然ガスを液化して日本に供給するよう計画変更を求めていることが分かった。エクソンは昨秋、中国とパイプラインでの天然ガス供給に向けた覚書を締結。プロジェクトに出資する政府は「政府の資金で開発した資源を中国に渡すのは、資源戦略上問題がある」として、パイプラインから液化天然ガス(LNG)への転換をエクソンに働きかけている。
 同プロジェクトには、政府が50%出資する開発会社、サハリン石油ガス開発(SODECO)が全体の30%を出資している。関係者によると、政府はSODECOなどを通じ、LNGの新基地建設や隣接する「サハリン2」の設備を共用することで、LNGに転換ができることをエクソンに説明。LNG技術を持たないエクソンへの技術提供も提示しているという。ただ、エクソンはパイプラインで供給する姿勢を崩しておらず、要請を受け入れるかは不透明だ。
 サハリン1の原油生産は05年に始まり、既に新日本石油などが輸入している。一方、日本の年間需要の6倍の埋蔵量が見込まれる天然ガスは、当初はパイプラインで日本へ輸入する計画だったが、日本の電力・ガス各社は「投資コストがかかりすぎる」として、LNGでの供給を求めている。
 エクソンはパイプラインで販売できる相手として昨秋、中国大手企業と売買交渉を始める覚書を交わした。「サハリン2」やイランのアザデガン油田で日本側の権益が減少し、資源外交の強化が課題とされる日本政府は、政府が出資するサハリン1で中国にガスが渡る事態は看過できないと判断。巻き返しのためエクソンとの協議を本格化させる方針だ。【松尾良】
 サハリン1 サハリン北東部の石油・天然ガス開発計画の一つで、95年に各国企業がロシア政府と契約を締結した。出資比率は米エクソンモービル30%、政府と日本企業が出資するサハリン石油ガス開発(SODECO)が30%、露ロスネフチなど20%、インド企業20%。総事業費は約120億ドル。原油生産はピーク時で日量25万バレル(日本の総輸入量の6%)の見込み。天然ガス生産は年800万トン(同14%、LNG換算)の見込みで、当初計画では日本の首都圏まで約2400キロの海底パイプラインを建設することになっていた。

◎密輸高濃縮ウラン、ロシアの研究都市から流出(2007年1月28日、読売新聞)
 グルジアの首都トビリシで、高濃縮ウランを密輸したとしてロシア人の男が逮捕された事件で、ロイター通信は26日、男が所持していた高濃縮ウランが、ロシア・西シベリアの研究都市ノボシビルスクから流出した可能性があると報じた。
 グルジア内務省のショタ・ウチアシビリ分析局長も同日、「流出元は不明だが、ロシアから運び込まれたのは間違いない」と本紙に語った。
 同通信によると、露連邦保安局が昨年5月、グルジア内務省の要請を受け、入手経路を捜査したことを示す機密文書に、逮捕された男が核関連施設のあるノボシビルスクに近づいた形跡を示す記述があるという。
 一方、ラブロフ露外相は、昨年2月に発生した事件が一年近くたって公表されたことについて、ロシアのイメージ失墜を狙った「政治的な挑発だ」として、グルジアを非難した。険悪化する両国関係がさらにこじれる恐れが出てきた。
 また、外相は、米中央情報局(CIA)が摘発に関与したことを認めた上で、「高濃縮ウランが個人の手に渡ったとすれば、深刻な事態」と語り、核物質の管理体制に問題があった可能性に触れた。

◎リトビネンコ氏毒殺、露が国家ぐるみ関与、米TV報道(2007年1月28日、読売新聞)
 米ABCテレビ(電子版)は26日、英政府高官の話として、露連邦保安局(FSB)元中佐、アレクサンドル・リトビネンコ氏の殺人事件は、FSBにより計画され、ロシアが国家ぐるみで関与した暗殺だったと報じた。
 同高官によると、英捜査当局は、法医学的証拠やこれまでに収集した情報から、ロシアが暗殺に関与したとの結論に達した。また、複数の英当局者は、FSBは、毒物をリトビネンコ氏に複数回盛らなければならなかったため、当初の計画通りには暗殺計画を実行できなかったと見ていると述べた。ロシア当局は殺人にあたり、毒物が発見されることがないと考えていたとみられるという。ロシア政府は一貫して、事件への関与を否定しており、プーチン政権をおとしめるために、反対派が仕組んだと主張している。
 一方、英政府高官は、毒物が投与されたとみられるホテルのティーポットが、殺人事件後も数週間にわたってそのまま使用されていたことを明らかにした。

◎「ルゴボイ氏は引き渡さぬ」、元スパイ変死でロシア側(2007年1月26日、朝日新聞)
 インタファクス通信は26日、ロシアの元情報将校リトビネンコ氏の変死事件で、元ロシア連邦保安局将校ルゴボイ氏の身柄引き渡しを英政府がロシア側に求めるとした英紙報道について、「憲法は自国民の引き渡しを禁じており、応じることはありえない」とするロシア最高検筋の見解を伝えた。同筋は「外国での犯罪の立証があれば、刑事責任は自国法に基づいてとらせる」とも語った。

◎英政府、ルゴボイ氏を容疑者と断定、元露スパイ殺害(2007年1月26日、読売新聞)
 英紙ガーディアンは26日、英政府高官の話として、露連邦保安局(FSB)元中佐、アレクサンドル・リトビネンコ氏の殺人事件で、ロンドン警視庁がロシア人ビジネスマン、アンドレイ・ルゴボイ氏を容疑者とほぼ断定したと伝えた。
 英政府が近くロシア当局に、同氏の身柄引き渡しを求める方針という。
 同紙によると、ロンドン警視庁は、ルゴボイ氏の事件関与を示す十分な証拠を得ており、近く関係書類を検察当局に提出する。英政府高官は、露側が、対抗措置として、プーチン大統領と敵対し、英国に亡命している政商ボリス・ベレゾフスキー氏の送還要求を行うと見ており、英露両国の外交摩擦に発展する可能性もあるとしている。
 ルゴボイ氏は昨年11月1日、ロンドンの高級ホテルで、リトビネンコ氏と接触している。ルゴボイ氏の立ち寄り先から、リトビネンコ氏の死因とされる放射性物質「ポロニウム210」が検出されていた。

◎ロシア元情報将校変死、英が容疑者特定、引き渡し要求へ(2007年1月26日、朝日新聞)
 26日付の英紙ガーディアンは、ロシアの元情報将校リトビネンコ氏が毒殺された事件で、ロンドン警視庁は元ロシア連邦保安局(FSB)幹部のルゴボイ氏を容疑者と特定し、英政府が2月にも同氏の身柄引き渡しをロシア政府に求める方針を固めたと伝えた。同紙はロシア側が憲法上の制約から身柄の引き渡しに応じる可能性は低いとの見方を示している。
 英捜査当局者などの話によると、ルゴボイ氏らは昨年11月1日、ロンドン中心部のミレニアムホテルのバーでリトビネンコ氏と会い、毒性の強い放射性物質「ポロニウム210」を摂取させた疑いが強まっていた。
 ガーディアン紙が英政府高官の話として伝えたところでは、ロンドン警視庁は近く、検察当局にルゴボイ氏の容疑を裏付けるだけの証拠書類を提出し、訴追に向けた最終判断を求める。同氏は25日、同紙に「私は無実だ」と語ったという。
 英保健当局は25日、リトビネンコ氏らが立ち寄った先で、放射性物質に被曝(ひばく)したとみられるのは計129人にのぼり、うち13人が健康を害する可能性がわずかにあるとの集計をまとめた。

◎露大統領、武器輸出権限を集約(2007年1月22日、産経新聞)
 ロシアのプーチン大統領は22日までに、外国に兵器を輸出する権限を国営武器輸出公社ロスオボロンエクスポルトに限定する大統領令に署名した。
 これにより、戦闘機メーカーのミグをはじめ他の兵器企業の対外活動は部品の販売やメンテナンスなどに限られる。ロスオボロンエクスポルトはロシア製兵器輸出の約90%を占めており、同社への取引権限集約で、兵器輸出をいっそう政権の意向に沿ったものとする狙いとみられる。
 ロシア製兵器は72カ国に輸出され、2005年の輸出額は約61億ドル(約7400億円)。ロスオボロンエクスポルトは44カ国に拠点を持つ。

◎暗殺大国“露”呈、90年代の秘密部隊、毒殺に関与か(2007年1月13日、産経新聞)
 ロシアの特務機関が1990年代初頭、危険人物の暗殺など非合法活動を行う秘密部隊を創設し、現在も活動している可能性があると、同国の改革派新聞、ノーバヤ・ガゼータが12日報じた。同紙は、この秘密組織がプーチン政権批判の急先鋒(せんぽう)だった著名ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤさんやロシア連邦保安局(FSB)元幹部、リトビネンコ氏の暗殺事件に関与した疑いがあると伝えた。
 同紙によると、この組織は、ソ連崩壊後の大混乱の中でロシア政府が国家の安全保障を脅かしていた組織犯罪などと戦うことを目的に90年代初めに創設を命じたのが始まりだった。
 同紙が入手した組織創設の「指示書」はまず、内務省、FSB、対外情報局(SVR)、軍参謀本部情報総局(GRU)などの特務機関が、国家安保を脅かす犯罪組織とそのテロ行為と戦わなければならないとしたうえで、政府機関のほかに銀行などの民間企業にも、独自のエージェント網構築を求めた。
 さらに、そうした秘密組織のカムフラージュ役の企業、公的組織の創設も必要だと指示した。
 同指示書はこのほか、犯罪組織と実際に戦うことができる軍事実動部隊をロシア各地に創設する必要があると指摘。同紙は、それを「偽暴力団」と名付け、必要となれば危険人物の暗殺などに当たるとしている。
 同紙はこのほか、これまでにこの秘密組織が関与したとみられる暗殺事件の数々の事例を挙げ、これら事件の犯人も何者かに暗殺されたり不審死を遂げたりしている事実を列挙。捜査段階でも「非常に権力をもつ立場の人間からの介入にあって(事件解明が)潰されている」として指導部の関与をにおわせた。
 同紙は「ロシアの特務機関が憲法に反した活動を依然行っている可能性が高い」と結論づけ、検察当局、議会、安保会議に対し、早急に調査を始めるよう求めた。
 暗殺されたポリトコフスカヤさんが所属していたノーバヤ・ガゼータ紙は、ゴルバチョフ元ソ連大統領らが出資。1週間に2日発行され、米国のライス国務長官が昨年10月にモスクワを訪問した際、同紙の編集幹部らと会談し、哀悼の意を表明していた。

◎ロシア:ポーランドへの石油供給停止、ベラルーシに対抗し(2007年1月9日、毎日新聞)
 ロシアは8日、ベラルーシを経由しポーランドとドイツにパイプラインにより輸出している石油の供給を全面停止した。ロシアのパイプライン独占企業トランスネフチのグリゴリエフ副社長が同日、ロイター通信に対し明らかにした。同副社長は、ベラルーシがロシア産石油を違法に抜き取ったため、対抗措置として送油を停止したと主張している。
 トランスネフチは「ベラルーシが6~8日までに約8万トンのロシア産石油を盗んだ」と非難している。だが、送油全面停止という強硬措置に対し、ロシアへの批判も強まりそうだ。
 ポーランド、ドイツは共に石油備蓄があり、市民生活などに影響は当面出ない見通しだが、欧州連合(EU)がロシア、ベラルーシの双方に「緊急の原因解明」を要求するなど懸念が広がっている。
 ベラルーシは先月31日、国内消費用に輸入するロシア産天然ガスを今年は従来の2倍の100ドル(1000立方メートル当たり)で契約することを余儀なくされた。この報復として3日、ベラルーシ経由で欧州に送られるロシア産石油に対し1トン当たり45ドルの関税を導入したと発表した。トランスネフチ側は、「ベラルーシは、違法な新関税の徴収の代わりとして石油の抜き取りを開始した」と説明した。一方、ベラルーシ外務省のポポフ報道官は「横取り」を否定した。

◎ドイツ:ベラルーシからの石油停止、「供給責任を」経済相(2007年1月9日、毎日新聞)
 独経済技術省は8日、ベラルーシからのパイプラインによる石油供給が停止したことを確認、グロス経済相がロシアとベラルーシに「供給責任を果たすよう」求めた。
 ドイツは年約1億トンの輸入原油のうち5分の1の2000万トンをベラルーシからのパイプライン経由で調達している。石油業界団体は「4カ月分以上の備蓄があり、石油精製産業や末端のガソリン、灯油価格には影響はない」としている。

◎ロシア、ベラルーシ経由の欧州向け原油輸出を停止(2007年1月9日、読売新聞)
 ロイター通信によると、ロシアの石油パイプライン管理会社「トランスネフチ」のグリゴリエフ副社長は8日、ベラルーシ経由の欧州向け原油輸出を停止したことを認めた。
 ベラルーシがパイプラインから原油を不法に抜き取るのを防ぐための措置という。しかし同国を通るパイプラインから原油を受け取るポーランドなど第三国で混乱が起きており、エネルギー供給国としてのロシアの信頼が大きく損なわれる事態となった。
 副社長は、ベラルーシが今月から導入した関税の支払い分として領内を通過するパイプラインから欧州向け原油を抜き取ったため、「原油供給を完全に止めざるを得なくなった」と述べ、同国を非難した。
 ロシアは昨年1月にも、天然ガスの価格交渉がまとまらずウクライナ向けガス輸出を停止し欧州にまで供給不安を広げた。自国と対立する近隣諸国をエネルギーの供給停止で締め付けるロシアの厳しい姿勢は国際的な批判を浴びそうだ。
 一方、インターファクス通信によると、原油への関税について協議するため、ベラルーシ政府の代表団が8日夜、モスクワに向け出発した。しかしロシアは関税廃止が話し合いの前提と主張しており、政府間協議が実現する見通しは立っていない模様だ。

◎キャビア:カスピ海沿岸国の輸出解禁、W条約事務局(2007年1月3日、毎日新聞)
 絶滅の恐れがある野生生物の国際取引を規制するワシントン条約事務局(ジュネーブ)は2日、イランやロシアなどカスピ海沿岸5カ国に今年のキャビアの国際取引を認めると発表した。イラン以外の4カ国は昨年、輸出割当量がゼロだったが、輸出を再開できることになる。
 取引が認められるのはペルシャチョウザメなどの卵。最も珍重され、昨年はイラン産も輸出禁止だったベルーガ種は今回も解禁が見送られた。
 卵がキャビアとして珍重されるチョウザメは乱獲や密漁で激減。条約事務局は01年にもイラン以外の国について禁輸措置を取った。

◎キャビア禁輸を解除、ロシアなどに許可(2007年1月3日、日本経済新聞)
 野生生物の国際取引を規制するワシントン条約の事務局(ジュネーブ)は2日、高級食材キャビアについて、イランを除きロシア、アゼルバイジャンなどに対して昨年1年間続けた輸出の禁止措置を解除することを決めた。
 キャビアは絶滅のおそれがあるチョウザメ類の卵。昨年1月、各国が輸出割当量で合意できず、条約事務局はキャビアの国際取引を禁止。同年4月にイランのみに約44トンの輸出を許可した。
 条約事務局によると、今年の輸出割当量についてはイランに加え、ロシア、アゼルバイジャン、カザフスタン、ブルガリアの計5カ国が合意。各国の輸出総量は90トン超で2005年に比べ15%減少し、最高級品種のオオチョウザメ(ベルーガ)は除外された。
 カスピ海や黒海などに生息するチョウザメ類はキャビア目当ての乱獲、密漁で漁獲量が激減しワシントン条約の規制対象になっており、条約事務局がキャビア生産国の輸出割当量を調整している。

◎露・ベラルーシのガス交渉妥結、価格は2倍以上に(2007年1月1日、読売新聞)
 ロシアからベラルーシに供給するガス価格を巡る交渉は31日、2007年の供給価格を1000立方メートルあたり100ドルとすることで妥結した。
 従来の約45ドルから2倍以上の値上げとなる。ロイター通信が伝えた。
 露はベラルーシに対し、06年内で交渉が妥結しない場合、07年からガスの供給を停止すると警告。ベラルーシのセマシコ第1副首相が31日にモスクワ入りして交渉を進め、期限直前で合意に達した。

◎ロシアとベラルーシ、ガス値上げ交渉が妥結(2007年1月1日、日本経済新聞)
 インタファクス通信によると、ロシア政府系天然ガス独占企業ガスプロムとベラルーシ政府間で続いていたロシアからの天然ガス値上げ交渉は12月31日深夜、現行の1000立方メートル当たり約47ドルを今後5年間で段階的に引き上げていくことで妥結、ベラルーシへの天然ガス供給停止は回避された。
 ベラルーシを通るパイプラインで天然ガスを輸入しているドイツやポーランドなど欧州諸国への影響はなくなり、昨年初めのウクライナに続く新たな「ガス紛争」の懸念もなくなった。だが、ロシア側の圧力に抗しきれずベラルーシが屈した形となり「同盟国」といわれた両国関係に亀裂が生じただけでなく、値上げはベラルーシ経済に大打撃となるのは確実。
 ガスプロムのミレル社長によると、2007年は1000立方メートル当たり100ドルだが、その後、毎年段階的に値上げされ、11年には欧州諸国レベルまで引き上げられる。(

◎ベラルーシ:露の「ガス価格」値上げ通告を受諾(2006年12月31日、毎日新聞)
 ロシアがベラルーシに対し、来年1月1日からの天然ガス大幅値上げを通告した問題で、同国のセマシコ第1副首相は30日、現行の1千立方メートル当たり約47ドル(約5600円)から同100ドルに引き上げることを認める考えを表明した。
 しかし、交渉がまとまらなければ1月1日からガス供給を停止すると警告したロシア政府系天然ガス独占企業ガスプロムは2011年までの5年契約締結を要求し、交渉はまだ妥結していないと強調。年末の時間切れを前に激しい駆け引きが続いており、供給停止を回避できるかは依然不透明。ベラルーシ経由でガスを輸入しているドイツ、ポーランドなどへの影響も懸念されている。
 第1副首相は、5年契約に従うと、11年までに価格が同144ドルに上昇するとの見方を示した上で、ロシア側が来年だけの契約締結に同意すれば直ちに調印すると強調した。
 ガスプロムは今年、ベラルーシ側に旧ソ連時代から続く安価なガス供給の廃止を通告。新価格を同百五ドルとし、うち30ドル分として欧州向けパイプラインを管理する国営企業ベルトランスガスの株式50%を譲渡するよう要求していた。(共同)

◎ロシア天然ガス値上げ、ベラルーシが受諾・決着へ駆け引き続く(2006年12月31日、日本経済新聞)
 ロシアがベラルーシに対し、来年1月1日からの天然ガス大幅値上げを通告した問題で、同国のセマシコ第一副首相は30日、現行の1000立方メートル当たり約47ドル(約5600円)から同100ドルに引き上げることを認める考えを表明した。
 しかし、交渉がまとまらなければ1月1日からガス供給を停止すると警告したロシア政府系天然ガス独占企業ガスプロムは2011年までの5年契約締結を要求し、交渉はまだ妥結していないと強調。年末の時間切れを前に激しい駆け引きが続いており、供給停止を回避できるかは依然不透明。ベラルーシ経由でガスを輸入しているドイツ、ポーランドなどへの影響も懸念されている。
 第一副首相は、5年契約に従うと、11年までに価格が同144ドルに上昇するとの見方を示した上で、ロシア側が来年だけの契約締結に同意すれば直ちに調印すると強調した。

◎「ロシアの脅しに屈しない」・ガス交渉でベラルーシ大統領(2006年12月30日、日本経済新聞)
 インタファクス通信によると、ベラルーシのルカシェンコ大統領は29日、難航しているロシアとの天然ガス供給交渉について「ロシアが脅しを続けるなら徹底抗戦する。決して屈しない」と述べ、ロシアが提示している条件に歩み寄るつもりのない考えを明らかにした。
 ロシアの政府系天然ガス独占企業ガスプロムは現行の1000立方メートル当たり約47ドル(約5600円)をいったん200ドルに引き上げるとしたが、欧州向けパイプラインを管理する国営企業ベルトランスガスの株式50%の譲渡を条件に実質75ドルにまで譲歩した。
 双方は29日夜もモスクワで交渉を続けたが、まとまらなかった。

◎サハリン2:企業側に36億ドルを負担、ロシア政府(2006年12月29日、毎日新聞)
 ロシアの経済紙ベドモスチは28日、サハリン沖の石油・ガス開発事業「サハリン2」の第2工期について、ロシア政府側が事業費のうち36億ドル(約4300億円)を参加企業のロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事に負担させる方針で、日欧3企業も同意したと報じた。
 同事業の収益配分については、生産物分与協定(PSA)に基づき、まず日欧企業が事業費用を回収した後で、ロシア側に収入が入る仕組みになっている。しかしロシア政府は、総事業費を194億ドルとしたうえで、うち36億ドルは、この枠組み外にする考えだという。
 日本の商社側は「現時点で、正式決定していることは何もない」(三菱商事)と述べている。

◎サハリン2:日欧企業4300億円の負担増、日本側は否定(2006年12月29日、毎日新聞)
 ロシアの経済紙ベドモスチは28日、サハリン沖の石油・ガス開発事業「サハリン2」の第2工期について、ロシア政府側が事業費のうち36億ドル(約4300億円)を参加企業のロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事に負担させる方針で、日欧3企業も同意したと報じた。
 同事業の収益配分については、生産物分与協定(PSA)に基づき、まず日欧企業が事業費用を回収した後で、ロシア側に収入が入る仕組みになっている。しかしロシア政府は、総事業費を194億ドルとしたうえで、うち36億ドルは、この枠組み外にする考えだという。
 サハリン2にはロシア政府系天然ガス独占企業「ガスプロム」が21日、株式の50%プラス1株を74億5000万ドルで日欧3社から買い取り、経営主導権を握ることで合意していた。だが、日欧3社に本来回るはずの36億ドルが、ロシア側の収入となれば、結果的にロシアの負担は、半額に抑えられることになる。
 サハリン2の第2工期をめぐっては、シェルが昨年、事業費の計画を当初予定の約120億ドルから200億ドルに増やすよう提案し、ロシア政府が「ロシアに収入が入る時期がその分先送りになる」として反発した経緯がある。ロシア産業エネルギー省筋によると、ロシア政府は事業費を194億ドルとすることには同意したが、うち36億ドルは3社が優先的に回収する分から外すという。
 これに対し、日本の商社側は「総事業費を200億ドルとするかなどについては(ロシア政府やサハリンエナジーの株主などで構成する)特別委員会で決めることになっており、現時点で、正式決定していることは何もない」(三菱商事)と述べている。同委は1月にも開かれる見通しだが、関係者によると、シェル、三井物産、三菱商事側が何らかの譲歩をする可能性が高いという。

◎「値上げなければ、1日からガス供給停止」ロシア、ベラルーシ警告(2006年12月28日、日本経済新聞)
 ロシア政府系天然ガス独占企業、ガスプロムのミレル社長は27日、隣国ベラルーシとの間でロシア産天然ガスの値上げ交渉がまとまらなければ、ガス供給を来年1月1日午前10時(日本時間同日午後4時)から停止すると警告した。同社幹部がガス停止の具体的時期について言及したのは初めて。
 今年1月に同様の値上げ交渉の決裂からウクライナ向けガス供給の一時停止に至った「ガス紛争」がベラルーシにも波及した形。双方が主張する価格の開きは大きく、ベラルーシを通るパイプラインでロシア産天然ガスを輸入しているドイツ、ポーランドなど欧州諸国への影響も懸念される事態となった。
 ガスプロムは現行の1000立方メートル当たり約47ドル(約5600円)の料金を来年1月から同200ドルに引き上げると通告し、その後の交渉で同105ドルにまで譲歩。さらに、パイプラインを管理するベラルーシ国営企業ベルトランスガスの株式の半数を譲渡することを条件に、事実上同約80ドルまで引き下げるとした。

◎サハリン2:日欧3社の負担4300億円増、露紙報道(2006年12月28日、毎日新聞)
 28日付のロシア紙ベドモスチは、ロシア政府系企業ガスプロムが経営権獲得を決めたサハリン州沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」で、日本商社を含む外資3社が事業費の大幅拡大の穴埋めに、新たに36億ドル(約4300億円)を負担することでロシア側と合意していた、と報じた。
 これが事実なら、国際石油資本のロイヤル・ダッチ・シェルと三井物産、三菱商事の日欧3社は発表内容よりも不利な条件で経営権譲渡に同意したことになる。
 同紙によると、3社とロシア側は、サハリン2の経営権譲渡を決めた21日に、2014年までの総事業費を当初予定の100億ドルから194億ドルに増額するが、うち36億ドルは3社が負担し、生産物分与協定(PSA)に基づく回収はしないことで合意した。
 3社とガスプロムは同日、3社がサハリン2の事業主体の株式の50%プラス1株をガスプロムに74億5000万ドルで譲渡することで合意した、と発表していた。(共同)

◎対日関係「悪い」が過半数、ロシア世論調査(2006年12月27日、産経新聞)
 ロシアの民間調査機関、国際社会学調査センターは26日、2006年のロシアと日本の2国間関係について「悪い」との回答が53%に上り、「良い」の21%を倍以上も上回ったとするロシア人対象の世論調査結果を明らかにした。
 これに対し中国との関係は、「良い」が39%で「悪い」の25%を大きく上回り、アジアでは対中関係が肯定的に受け止められる一方、対日関係には否定的な評価が広がっている実態が浮き彫りになった。
 日ロ関係を「悪い」とした回答者に理由を聞いたところ、「平和条約が結ばれていない」が23%で最も多く、次いで「漁船の違法操業のトラブルが頻発」(16%)や「領土問題が未解決」(10%)などが続いた。
 また「どの国との関係が不安にさせるか」との質問でも、ウクライナ(25%)、グルジア(23%)、モルドバ(15%)と対ロ関係が悪化している独立国家共同体(CIS)内の3カ国に次いで、日本が14%で4位になった。
 一方、ロシアとの関係で「良い」の回答が最も多かったのは欧州連合(EU)諸国の52%で、「悪い」が31%。米国は「悪い」が38%で、「良い」の25%を上回った。
 調査はロシアの40地域で計5200人を対象に行われた。(共同)

◎ロシア、ベラルーシにガス供給停止警告・値上げ拒否なら(2006年12月26日、日本経済新聞)
 ロシアの天然ガス独占企業ガスプロムは25日、ベラルーシに対してガス価格の引き上げを早期に受け入れるよう促した。拒否した場合、来年1月から供給を停止する可能性を示唆した。豊富なエネルギー資源を武器に近隣国などへの政治的な影響力を強めるロシアの姿勢が一段と鮮明になってきた。 ロシアは今年初めにウクライナへのガス供給を一時停止し、欧州諸国からの反発を招いた経緯がある。今回、ベラルーシへの供給停止に踏み切れば、同国経由でガスを購入する欧州が批判を強めるのは避けられそうにない。

◎サハリン2:露資源監督局、環境破壊問題での提訴見送りへ(2006年12月25日、毎日新聞)
 ロシア・サハリン沖の石油・天然ガス開発計画「サハリン2」の環境破壊問題で、露天然資源監督局のオレグ・ミトボリ副長官は毎日新聞と会見し、サハリン2の事業主体「サハリン・エナジー」の経営主導権を獲得する露国営ガスプロムとの協議に入ったと明らかにした。ミトボリ副長官は「ガスプロムは環境問題に適切に対応すると考えている」と述べ、環境破壊問題での提訴を見送る考えを示した。
 22日に会見したミトボリ副長官は、ガスプロムがサハリン・エナジー株式の過半数を購入すると21日に決定したことを受け、「(ガス・パイプライン敷設などに伴う)現地の河川や地盤の環境保全の具体的対策をガスプロムが数週間後に報告する予定だ」と語った。副長官は「ガスプロムは天然資源監督局の主張をよく理解しており、環境問題の解決を約束している」と強調した。
 副長官は、サハリン2の環境破壊問題に絡んで損害賠償訴訟を起こす可能性について「裁判は最後の法的手段だ」と述べ、訴訟を現段階では検討しないことを明言した。
 ガスプロムと日欧3社の合意に先立つ12日、副長官はサハリン2の経営主体だった英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルによる環境破壊の損害が「100億ドル(約1兆1700億円)相当」と指摘し、来年3月までに日本や英国などの裁判所でシェルを提訴する可能性を示唆していた。しかし、シェルと三井物産、三菱商事がサハリン・エナジーの各社保有株式の半分をガスプロムに売却すると決めた後、天然資源監督局は強硬姿勢を軟化させている。
 天然資源監督局は今年夏から、サハリン2の環境破壊問題を重視して環境影響評価承認の取り消しを表明し、事業停止も辞さない立場を示してきた。この点について、副長官は「我々は7月、現地の営林署から森林の地盤損壊の報告を受け、サハリン2の環境破壊を精査し始めた」と説明した。さらに、環境破壊に厳しい態度をとっているのは「サハリン2に適用された(外資優遇策)生産物分与協定(PSA)が採用した米国法に基づいている」と副長官は強調した。

◎ロシアとの契約、ハイリスク(2006年12月25日、読売新聞)
・伊藤憲一さん、日本国際フォーラム理事長
 「サハリン2」を巡る交渉の決着に関して、エネルギー問題やロシア情勢に詳しい伊藤憲一・日本国際フォーラム理事長に聞いた。
 ――ロシア主導の開発となった今回の決着をどう見るか。
 「完成間近の巨大事業に対して突然、過半数の権益を要求するのは、通常ならば考えられない行為だ。ただ、今秋にロシアが環境問題で圧力をかけてきた時から予想できた展開ではある」
 「ロシアは1月にウクライナへの天然ガス供給を突然停止したように、法治国家ならぬ『力治国家』で、力がすべてだ。外交でも経済でも、過去に締結した契約も、力関係が変われば簡単にホゴにされる恐れのある国だ。サハリン2や他のサハリンプロジェクトについても、ロシアがさらなる権益拡大を求める可能性がある」
 ――サハリン2以外でも日本企業がロシアから圧力を受けた事例はあるのか。
 「たとえば、ロシア極東地域のハバロフスクには、新潟県などから多くの日本企業が進出した。ところが、事業が軌道に乗り始めたら、様々な圧力をロシア政府からかけられ、撤退に追い込まれたケースもある。現時点ではロシアでは契約はあまり担保にならないと考えるべきだ。(貿易や投資)保険などのリスクヘッジも重要だ」
 ――日本の資源外交は今後どうあるべきか。
 「資源の調達先の分散・多極化をもっと進めるべきだ。ロシアへのエネルギー資源の依存度は5%程度にとどめた方がいいと考える。今後、サハリン1の天然ガスが本当に中国へ輸出されることになれば、中国のエネルギー需給も緩和される。日本は、ロシア以外の国での権益確保にもっと努力すべきだ」
(12月23日 聞き手 愛敬珠樹)

◎【主張】サハリン2 対露事業は警戒を怠るな(2006年12月24日、産経新聞)
 ロシア・極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン(樺太)2」の経営主導権をついにロシアが握ってしまった。現在の事業主体は英蘭系メジャー(国際石油資本)のロイヤル・ダッチ・シェルと三井物産、三菱商事の外資3社で、工事の約8割をすでに完成させている。
 この段階でロシアの国営天然ガス独占企業体ガスプロムが事業に介入、3社から事業株式の過半数の譲渡を受けることで合意した。強引な乗っ取り劇をみているようだ。
 ロシア当局は、開発に伴うパイプライン建設で「環境破壊」が起きたとの理由で事業停止命令を出した。同時にガスプロムの事業参入を執拗(しつよう)に要求し3社側との交渉が続いていた。
 ロシア側の事業介入の背景には、ガスプロムの副社長に先月、旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身者を据えるなど、ビジネス界にも強権支配を広げるプーチン政権の国家戦略としての外資排除への意図がうかがえる。
 今回の合意はロシア側の圧力に外資が妥協を強いられた形だ。譲歩の裏には、交渉が年内決着しないまま事業の停止状態が長引けば、2年後に開始される予定の日本への液化天然ガス(LNG)の供給が先延ばしされる懸念があった。「ガスプロムを今後も事業から締め出し続ければ、ロシア側との想定外のトラブルが続発しかねない」(商社筋)との観測も出ていた。
 サハリン2では、3社がロシア政府と利益配分や生産計画などを定めた生産分与協定(PSA)があるが、今後ロシアに有利な形で大幅修正を余儀なくされる危険性がある。日本は政府と伊藤忠商事、丸紅がもう1つの「サハリン1」に参加している。しかし今回の外資側の譲歩で、2割の権益を持つロシアの国営石油企業ロスネフチや、ガスプロムがさらなる権益拡大を要求してくるとの可能性もある。
 サハリン2からは毎年960万トンのLNGが産出される見込みで、その大半を輸入する計画の日本では期待が高まっていた。プーチン政権には欧米志向を強めるウクライナに突如、天然ガスの供給を停止した前例がある。
 政治的思惑ひとつで供給先への対応を変えるロシアの資源外交には今後、十分な警戒心で臨み、LNG調達先の多様化に早急に取り組むべきだ。

◎「サハリン2」株、過半数譲渡合意(2006年12月22日、読売新聞)
 ロシア・サハリン沖の資源開発「サハリン2」について、国際石油資本のロイヤル・ダッチ・シェルと、三井物産、三菱商事の3社は21日(モスクワ時間)、事業主体「サハリン・エナジー」の株式の過半数を、ロシア国営の天然ガス独占企業体「ガスプロム」に譲渡することでロシア側と基本合意した。
 日本への資源供給拠点として期待されたサハリン2は、ロシア主導に移る。
 3社の社長が21日、モスクワでロシアのフリステンコ産業エネルギー相らと会談して合意した。
 エナジー社が、東京電力など日本の電力・ガス各社などと結んでいたエネルギー供給契約は、ガスプロムが経営の主導権を握った後も維持される。
 ロシア政府は今秋以降、環境破壊を理由に工事許可の取り消しなどの圧力をかける一方で、ガスプロムの出資比率拡大を強く求めていた。3社は08年の液化天然ガス(LNG)輸出開始などの事業計画を実現するために、ロシア側への譲歩は不可避と判断した。

◎株過半数譲渡、8720億円で合意、サハリン2、環境問題解決へ弾み(2006年12月22日、読売新聞)
 ロシア・サハリン沖の資源開発「サハリン2」の経営権をめぐるモスクワでの交渉は21日、国際石油資本ロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事が、事業主体の「サハリン・エナジー」の株式の過半数を露天然ガス独占企業体「ガスプロム」に譲渡することでロシア側と最終合意に達し、文書に署名した。
売買額は74億5000万ドル(約8720億円)。サハリン2はロシア側が主導し開発を進めることで、開発の障害になっていた環境破壊問題が解決に向かう可能性も出てきた。
 株式譲渡により「サハリン・エナジー」の株式は、ガスプロムが50%プラス1株、シェルが27・5%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%を保有する。
 文書に署名後、各社の社長らはプーチン大統領、トルトネフ天然資源相と会談した。インターファクス通信によると、プーチン大統領は「ロシアの環境当局と企業側が問題解決の方法について合意したことをうれしく思う」と歓迎した。トルトネフ天然資源相は「参加企業の協力によりサハリンの自然が回復するよう期待している」と述べ、ロシア側が環境問題の解決に協力して取り組む考えを示唆した。
 三井物産の槍田松瑩(うつだしょうえい)社長は「ホスト国が関与することになり意思疎通の面でも状況ははるかに良くなった。2008年からガスを供給する計画に変わりはない」と述べた。

◎「サハリン2」経営権譲渡で合意(2006年12月22日、産経新聞)
 ロシア極東・サハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」をめぐる問題で、事業を主導する英蘭系メジャー(国際石油資本)のロイヤル・ダッチ・シェルと三井物産、三菱商事の3社は21日、ロシア国営天然ガス独占企業体ガスプロムと同事業の経営権移譲で合意した。インタファクス通信が同日夕、シェル筋の話として伝えたところによると、ガスプロムは、3社から合わせて、サハリン2の株50%プラス1株の譲渡を受けることで合意した。譲渡金額は74億5000万ドル(約8640億円)で、現金で支払われる。
 ガスプロムのメドベージェフ会長(ロシア第1副首相)らによる記者会見は22日夕方に行われる予定。
 ロシア当局が指摘しているサハリン2の環境破壊や事業費増大などの問題が依然くすぶる中、外資側はガスプロムを“風よけ”として事業を進める考えとみられる。
 しかし、このルールもロシア側の都合で、いつ変更されるかわからないリスクを抱えている状況に、大きな変化はないものとみられる。
 サハリン2の事業主体「サハリンエナジー」には、シェルが55%、三井が25%、三菱が20%ずつ出資している。ガスプロム側はシェルから30%、日本勢からそれぞれ10%ずつ計50%を超える株譲渡を受け、経営権獲得をめざしていた。

◎サハリン2環境破壊問題、露が来年3月に提訴(2006年12月13日、産経新聞)
 ロシア天然資源監督局のミトボリ局次長は12日記者会見し、日本の商社が参加するロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」による環境破壊問題で、ロシア側が事業主体を相手取り被害の補償を求めて来年3月に提訴すると語った。インタファクス通信などが報じた。
 ミトボリ氏は、同事業によってロシアが被った「環境被害額は、100億ドルにのぼる」と述べながら、米国の法を適用すれば、補償請求額はその3倍に当たる最大300億ドル(約3兆5000億円)と、ロシア国家予算の15%に当たる巨額になるとの見通しを示した。
 サハリン2の経営主導権をめぐっては同事業を主導する国際石油資本(メジャー)のロイヤル・ダッチ・シェルが、ロシア国営天然ガス独占企業体ガスプロムと交渉を行っている。同氏は「環境破壊の問題はこれとは別の問題」として、環境問題が解決されない限り事業再開はさせないとの姿勢を示した。

◎サハリン2の経営主導権、ガスプロムに移譲へ(2006年12月12日、産経新聞)
 日本の商社が参加するロシア極東の石油・天然ガス開発計画「サハリン2」が事業停止に陥っている問題で、同事業を主導する国際石油資本(メジャー)のロイヤル・ダッチ・シェルがその経営主導権をロシア国営天然ガス独占企業体ガスプロムに譲渡することで基本合意した。ロイター通信が11日、産業筋の話として報じた。
 シェル側は、同事業の主導権をロシア側に譲り渡すことで事業再開にこぎ着けたい考えとみられるが、ロシア側が開発による環境破壊を問題視しているだけに、権益の一部譲渡で問題が解決するかどうかは依然不透明な情勢にある。
 ガスプロム側はこれまでに最低でも同事業の25~30%の権益取得を目指してきた。日本側は、三井物産が25%、三菱商事が20%の権益を保有している。

◎重体のガイダル元露首相代行も毒物か(2006年12月1日、読売新聞)
 ロシアのガイダル元首相代行がアイルランドで突然、体調を崩し重体となった事件で、ガイダル氏が入院するモスクワの病院の医師団は30日、何らかの有毒物質が原因との見解を明らかにした。
 インターファクス通信が伝えた。プーチン政権下での非合法活動を暴露したロシア連邦保安局(FSB)元中佐のリトビネンコ氏も放射性物質「ポロニウム210」により変死しており、有毒物質が使われた二つの事件へのロシア特殊機関の関与を疑う見方が強まりそうだ。
 医師団は、ガイダル氏が最初に搬送されたアイルランドの病院と連絡を取って原因の究明を進めているという。これまでのところ有毒物質は特定できていないが、4日以降に最終的な結論を出すことができる、との見通しを明らかにした。
 ガイダル氏の娘も30日、英BBC放送に対し「私的な問題やビジネス上の問題は考えられず、だれかが政治的な理由で父を毒殺しようとした」と述べた。

◎変死事件、ロシア世論は「ベレゾフスキー氏の陰謀」(2006年11月30日、読売新聞)
 リトビネンコ氏の不審死事件について、ロシアではプーチン政権と敵対するベレゾフスキー氏の関与を疑う見方が強い。
 有力紙「イズベスチヤ」がリトビネンコ氏の容体が悪化した後にネットを通じ行った「犯人はだれだと思うか」との調査では、54%が「ベレゾフスキー氏の陰謀」と答え、「ロシア特殊機関の標的になった」との答えは14%だった。ロシア特殊機関の関与を疑う英国の世論とは対照的な受け止め方だ。
 事件について、政府高官や有力政治家らは「リトビネンコ氏を殺害してもクレムリンの利益にならない」「プーチン政権とロシアの信用を落とす政治宣伝」との見方を強調している。
 もっとも、敵対する勢力による陰謀との説が流布したのは、テレビや新聞など主要メディアがプーチン政権の統制下にあることが要因だ。ロシアでも英国メディアの報道を引用する形で、連邦保安局(FSB)の関与説を唱える見方があることも紹介されてはいる。しかし、ベレゾフスキー氏が黒幕との説が圧倒的に多く流れている。
 真相はともかく、10月の女性記者殺害、リトビネンコ氏の変死と特殊機関の不気味な暗躍ぶりを連想させる事件が続いたことで、対外的にはロシアのイメージ悪化が避けられない。

◎露元副首相:訪問先で原因不明の吐き気と発熱、入院(2006年11月29日、毎日新聞)
 29日付英フィナンシャル・タイムズ紙(電子版)はロシアのガイダル元第1副首相が今月24日に訪問先のアイルランドで原因不明の吐き気と発熱に襲われ、モスクワの病院に入院していると報じた。容体は安定しているが、ガイダル氏は「生命の危機にかかわる突然の病気に襲われた」と同紙に語ったという。
 ガイダル氏は今月24日に朝食を食べた後、気分が悪くなり、突然、体が動かなくなったという。発見した女性によると、同氏は床で気を失っており、吐血していたとされる。同氏はエリツィン前政権下で市場経済導入などに取り組み、プーチン大統領には批判的な姿勢を取っている。
 今月23日には元ロシア連邦保安局(FSB)中佐のアレクサンドル・リトビネンコ氏が亡命先のロンドンで死亡、遺体から放射性物質が検出された。

◎ポロニウム、工業用などで毎月8グラム輸出、露長官(2006年11月29日、読売新聞)
 ロシア原子力庁のキリエンコ長官は28日、記者会見し、ロシアが放射性物質の「ポロニウム210」を毎月8グラム輸出していることを明らかにした。
 工業用塗料などに使われているが、英国向けには2001年以降は供給していないという。
 キリエンコ長官は「ポロニウム210は国内で厳重に保管されており、だれかが盗み出すようなことは考えられない」と述べ、リトビネンコ氏から検出されたポロニウム210がロシアから流出した可能性を否定した。

◎ロシア、ポロニウムを毎月8グラム輸出、英国へは停止(2006年11月29日、朝日新聞)
 ロシアのキリエンコ原子力庁長官は28日の会見で、ロンドンで死亡したロシアの元情報将校リトビネンコ氏から検出された放射性物質ポロニウム210について、毎月8グラムを国外に輸出していることを明らかにした。ただし、かつて行われていた英国への輸出は01~02年以降停止しているという。
 長官は現在の輸出先として米国企業を挙げ、科学的な目的のほか、印刷業や塗料産業などで使用されていると説明した。「ポロニウム210の半減期は138日で、長期貯蔵は不可能だ」とも指摘。ロシア産ポロニウムと元将校死亡の関係に否定的な見方を示した。

◎ロシア社会、静か過ぎる首都の表情(2006年10月24日、毎日新聞)
 女性記者や銀行家の相次ぐ殺害、グルジア人への締め付け……。このところロシアをめぐる話題は暗いものが多い。重苦しい雰囲気では、と思いながらモスクワを訪れたが、街は落ち着いていて、市民の動揺もほとんど感じられなかった。むしろ静か過ぎるというのが実感で、原油高による消費ブームの興奮が収まってきた印象さえ受けた。
 モスクワを訪れたのは1年ぶり。昨年秋には、高級外車が飛ぶように売れ、外資系大型スーパーが大繁盛しているのを自分の目で確かめた。好景気で街にも活気があふれていた。
 今回もモスクワに約1週間滞在し、街を歩き回った。目抜き通りには相変わらず派手なネオンサインや看板が立っていた。特に目立ったのは商業用大型スクリーン。街頭の至る所に立てられ、化粧品、ケータイ、コンピューターなどの広告を流していた。ビルの4、5階分を使った巨大スクリーンもあった。
 「モスクワの秋葉原」と呼ばれる郊外のIT関連製品市場には、日本や欧米の商品がフロアいっぱいに並び、大勢の市民でにぎわっていた。豊富な品ぞろいと安さが人気の秘密という。
 殺害されたアンナ・ポリトコフスカヤ記者の職場、ノーバヤ・ガゼータ紙編集局も訪れた。殺害された同紙の記者は彼女で3人目と聞いて驚いた。ビタリー・ヤロシェフスキー副編集長(50)は「われわれの新聞は汚職や組織犯罪を追及する唯一の新聞。記者は(殺害事件があっても)自主規制はしない。恐怖感のない彼らにむしろ私が恐怖を感じている」と話す。同じジャーナリストとして頭が下がる思いがした。
 ロシアとグルジアの対立は連日メディアで大きく報道され、外国人には明日にも戦争が始まりそうな感じさえ与える。とくにグルジア政府が「人権侵害」と非難するグルジア人の強制送還が日増しに増えているが、「政府間の問題」とクールに受けとめているロシア人が多かった。
 ロシア社会が平穏なのは、プーチン政権が強権的に押さえつけている面が大きい。プーチン大統領が秩序維持を最優先する多数派市民の支持を得ている理由だが、民主派は「旧ソ連型の力による安定だ」と批判している。銀行家らの殺害事件が相次いでいるのは不満分子が増えているせいだろうか。ロシアは来年の下院選、再来年の大統領選と政治の季節に入るが、嵐の前の静けさなのかも。【編集委員・飯島一孝】

◎「サハリン1」中国輸出巡り、エクソンがロ企業と交渉(2006年10月24日、朝日新聞)
 ロシア・サハリン州で日本企業が参加して進む石油・天然ガスプロジェクト「サハリン1」を巡り、運営主体の石油メジャー米エクソンモービルは24日、天然ガスを中国東北部に輸出するために、ロシアの天然ガス独占企業ガスプロムとの交渉を進めていることを明らかにした。
 インタファクス通信が伝えた。天然ガス輸出をガスプロム社の独占支配下に置きたいロシア政府の方針に配慮することで、事業を円滑に進める狙いがあると見られる。
 エクソンモービルはサハリン1の天然ガスを中国の石油大手・中国石油天然ガス(CNPC)に供給する方針で、今月契約の前段階の覚書を交わした。一方でプーチン大統領は9月下旬、サハリン1から中国へのガス輸出ルートとして想定されているサハリンとロシア極東ハバロフスク間のパイプラインについて「国内消費向けであり、国外には輸出しない」と明言、中国への輸出に黄色信号がともっていた。
 エクソンモービルは中国への輸出にガスプロム社を介在させることで「ロシアの(天然ガス)輸出窓口はガスプロムだけだ」とするプーチン政権の方針に沿った形での中国への輸出を実現する戦略と見られる。

◎サハリン2の事業取り消しを否定、ロシア外相(2006年10月24日、朝日新聞)
 ロシアのラブロフ外相は23日、サハリン州の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」について、事業免許を取り消す考えがないことを表明した。モスクワで開かれた欧州の企業関係者との会合で述べた。ロシアの投資環境への疑念を打ち消す狙いと見られる。
 インタファクス通信によるとラブロフ外相は「ロシア指導部は、事業認可の取り消しについては議論していない」と述べた。一方で「我々はプロジェクト開始当初の条件が順守されるよう話を進めている」とも指摘。事業主体のサハリン・エナジー社が求めている事業費の倍増がロシア政府内で問題視されているとの見方を強調した。

◎サハリン1の天然ガス、日本の輸入調達に暗雲(2006年10月21日、朝日新聞)
 ロシア・サハリン北部で、日本政府・企業がかかわる石油・天然ガス開発事業「サハリン1」について、運営主体の石油メジャー、米エクソンモービルが中国との間で、産出ガスを中国に供給する契約に向けた覚書を今月中旬にかわしたことがわかった。エクソンはガスの販売先候補として日本、中国と交渉してきたが、中国に有利な情勢となった。中国はパイプラインによる輸入を検討中で、正式契約に至ると、日本への供給が難しくなる。
 サハリン1は70年代に計画され、日本勢も国策の一環として参加してきた資源事業。日本は年間輸入量の約1割にあたる年600万トンを調達する計画だ。イラン・アザデガン油田に対する権益の大幅縮小に続き、日本の資源確保政策に新たな暗雲がたちこめたといえる。
 サハリン1は日、米、インド、ロシアの5社による共同事業体が開発し、エクソンの子会社が契約交渉など運営主導権を握る。関係者によると、エクソン側は中国の石油大手・中国石油天然ガス(CNPC)と契約の前段となる覚書を結んだという。
 内容は明らかでないが、秘密保持契約など本格交渉を始めるための合意とみられる。日本政府側は「日本の需要家との交渉の道もまだ残っている」とするが、事業を早く進めたい参加民間企業からは「中国による全量輸入も有力な選択肢の一つ」との声も出ている。
 日本は当初、政府主導で本州まで海底パイプラインを敷いて、輸入する計画で、丸紅、伊藤忠商事、石油資源開発なども参加して95年にサハリン石油ガス開発(SODECO)を設立した。
 同社がサハリン1事業の権益3割を持ち、パイプライン構想の具体化を進めた。だが、買い手の電力、ガス業界はこれまで推進してきた液化天然ガス(LNG)での輸入を希望。パイプラインで進めたいエクソンなど開発側と、日本の買い手側の溝が埋まらず、交渉が難航していた。このため、エクソン首脳が04年、当時の中川昭一経済産業相に、日本以外の中国などにも販売先を求める方針を伝えていた。
 サハリン1産出の原油については、日本は今月から輸入を始める予定。ガスの輸入予定分が中国に流れると、日本の電力・ガス業界は他地域からの調達で対応するが、政府主導の開発事業の意義は問われることになる。

◎サハリン1:エクソン、天然ガス売却交渉開始で中国と覚書(2006年10月21日、毎日新聞)
 日本が開発に参加している石油・天然ガス開発計画「サハリン1」をめぐり、事業を主導するエクソン・モービルが中国側と、天然ガス全量を中国に売却する交渉を始める覚書を交わしたことが21日、分かった。
 サハリン1は日本政府や、石油資源開発などの日本企業が計30%出資。日量25万バレルの生産を見込む原油は昨年生産を始め、新日石などが購入を決めている。
 一方、年間800万トン(液化天然ガス=LNG=換算)の生産を見込む天然ガスは、LNG技術が乏しい参加企業がパイプライン方式を計画したため、日本では購入希望がなく、パイプライン建設も進んでいない。
 このためエクソンは中国を有力な購入先とみて協議していた。覚書に関して、経済産業省は「日本企業が排除されたわけではない」(幹部)としている。また、資源の国家管理を強めるロシア政府の出方や中国との価格交渉など、先行きは不透明だ。【松尾良】

◎ロシア:グルジア制裁強化、サーカシビリ政権弱体化狙う(2006年10月5日、毎日新聞)
 ロシアとグルジアの関係悪化問題で、ロシアによる対グルジア制裁がエスカレートしている。直接的な原因だったロシア軍将校のスパイ事件は2日、将校4人が解放されて解決したが、交通遮断などの制裁は継続中だ。ロシア在住のグルジア人の排除も進んでおり、ロシアは「反露的」(プーチン露大統領)なサーカシビリ政権の弱体化を狙っている。
 9月27日の露軍将校逮捕直後、ロシアはグルジア住民へのビザ発給を停止し2日、航空便や鉄道、郵便も停止した。3日にはモスクワでグルジア系のカジノなどが営業停止に追い込まれ、違法に輸入されたとしてグルジア産ワイン数十万本が押収された。
 ロシア入国管理局のチュルキン副長官は5日、「グルジア人に割り当てていた外国人労働者枠は今後認めない」と発表した。人口約500万人のグルジアで、ロシアに在住するのは違法滞在者を含め40万~100万人とされる。グルジア中央銀行の試算によると、本国への送金は今年前半で約2億2000万ドル。これは国内総生産(GDP)の15%に上り、出稼ぎや送金禁止の経済への影響は甚大だ。
 こうした制裁についてロシアのラブロフ外相は3日、「ロシアで違法に稼いだ金が軍事力強化に使われるのを阻止するため」と説明し、「グルジアが反露政策と決別するまで当面解除されない」と語った。同外相は、「北大西洋条約機構(NATO)加盟も計画し、反露的な軍事立国を狙っている」とサーカシビリ政権を批判した。
 ただ、制裁はグルジア側に有利との観測もある。同国の野党指導者イリーナ・サリシビリ氏は5日モスクワで会見し、「制裁は一般住民を苦しめ、サーカシビリ大統領の人気は逆に上昇している」と述べた。5日投票のグルジア地方選でも政権与党が勝利する見通しだ。
 グルジア政府は対抗措置として、ロシアの世界貿易機関(WTO)加盟を承認した2カ国間合意を白紙に戻す構えを見せている。制裁が長引けば、国際社会の対露批判が強まるのは必至だ。制裁継続でロシアが自らを難しい立場に追い込む可能性もある。

◎ロシア、グルジアとの交通断絶、拘束の軍人は引き渡し(2006年10月3日、朝日新聞)
 グルジア内務省がロシアの軍人をスパイ容疑などで拘束し、ロシアとグルジアの関係が急速に悪化した問題で、グルジアは2日、拘束していた軍人4人を欧州安保協力機構(OSCE)に引き渡した。4人はOSCEからさらにロシア側に引き渡され、同日夜、モスクワに向け出発した。だが、ロシアはグルジアへの対抗措置について軍人拘束以外の理由も挙げており、両国間の緊張が緩和するかどうか微妙だ。
 ロシア運輸省は同日、グルジア側の軍人引き渡しに先だって、同国に対し、陸、海、空路の交通のすべてを断絶すると発表した。イタル・タス通信などが伝えた。
 ロシアは、自国の軍人が9月27日に拘束されて以来、駐グルジア大使を召還するなどの対抗措置を取ってきた。2日には運輸省のほか、情報技術通信省や国営の鉄道会社なども次々新たな措置を発表。グルジアとの郵便を停止し、同国からの電気機関車の部品調達もやめる、とした。
 同日トビリシで4人の引き渡しを受けたOSCE議長国ベルギーのデフフト外相は、緊張緩和のためロシア側にも交通の断絶措置を解除するよう求めた。ただ、ロシアは交通遮断について、グルジアの債務不払いや安全面での違反を理由にあげており、対応は不透明だ。

◎ロシア、グルジアとの旅客輸送を停止(2006年10月3日、朝日新聞)
 ロシアは3日午前0時からグルジアに対し、空路と陸路による旅客の輸送および郵便業務を停止した。イタル・タス通信が伝えた。一方、2日にグルジアがスパイ容疑による拘束を解いたロシア軍の軍人4人は同日夜、モスクワ郊外の軍用空港に帰還した。
 同通信によると、ロシアの国営アエロフロート航空とシベリア航空は3日からモスクワとグルジアの首都トビリシ間の旅客便の運航を停止、ロシア鉄道会社もモスクワ―トビリシ間の列車の運行を停止した。ロシアとグルジアを結ぶ長距離バスも運行をやめた。
 ロシア側は、航空便の運航停止にはグルジアによるロシア空域使用料の滞納問題を、郵便業務の停止にはグルジア側の協定違反などを理由にあげ、問題の解決まで停止を続ける構えだ。軍用空港で軍人4人の乗った旅客機を出迎えたイワノフ副首相兼国防相は、この便がグルジアからの今年最後の便になる可能性を指摘した。

◎ロシア、グルジア大使召還、軍人拘束に反発(2006年9月30日、朝日新聞)
 ロシアは29日、グルジア内務省当局がスパイ容疑などで同国に駐留するロシア軍部隊の軍人を拘束したことに反発、グルジア駐在のロシア大使を召還、安全面の不安を理由にロシア緊急事態省の飛行機5機を派遣し、グルジア在住の自国民を退避させ始めた。
 グルジア内務省は同日、27日にスパイ容疑や、グルジア中部ゴリで起きた警察官らの殺害事件に関与した疑いで拘束したロシア軍人5人のうち1人を解放した。しかし、残りの4人に対してはトビリシの裁判所が29日、取り調べのため2カ月間の勾留(こうりゅう)を認めた。
 ロシア側は軍人の拘束を「挑発だ」(イワノフ副首相兼国防相)などと激しく批判。即時釈放を求めたほか、グルジア国民に対するロシア入国ビザの発給停止、自国民にグルジアへの旅行自粛勧告などの措置も取った。

◎サハリン1ガス、ロシア大統領「輸出せぬ」(2006年9月26日、朝日新聞)
 ロシアのプーチン大統領は25日、サハリンで開発が進む石油・天然ガスのうち、パイプラインでロシア本土に運ばれる天然ガスについて「国内消費向けであり、国外には輸出しない」と述べた。日本の商社も参画するプロジェクト「サハリン1」を指しているとみられる。筆頭出資者エクソンモービルは、このルートで中国に天然ガスを輸出する交渉を進めているが、大統領はこれを認めない考えを明らかにしたといえる。
 プーチン大統領は「ロシアに(天然ガスの)輸出窓口は一つしかない。それはガスプロムだ」と述べ、政府系ガスプロム社の独占的な役割を強調。「サハリン2」の認可取り消し問題と同様、外資主導の石油・天然ガス開発に政府が横やりを入れる形となった。

◎ロシアでのガス田開発、英BP系にも停止要求(2006年9月21日、朝日新聞)
 ロシア・東シベリアでのガス田開発をめぐり、検察当局が環境問題を理由に、国際石油資本(メジャー)の英BPの系列合弁会社の事業停止を求めていることが分かった。英紙フィナンシャル・タイムズが伝えた。
 日本企業が出資する石油・天然ガス開発計画「サハリン2」を巡っての開発認可取り消し問題と同様に、ロシア政府系の天然ガス独占企業「ガスプロム」の影がちらついている。こうしたロシアの資源開発を巡る強硬姿勢に、国際社会の批判が高まる可能性がある。
 問題となっているのは、BPがロシア企業と折半出資した「TNK-BP」が手がける巨大ガス田で、パイプラインの建設が進んでいる。
 検察側は「環境基準を満たしていない」として、事業認可を停止するよう地元政府に求めているという。英メディアによると、ガスプロムが同事業に参画するための交渉が進んでおり、政府の関与を強める圧力となりそうだ。
 ロシアでの資源開発では、三井物産や三菱商事が出資する「サハリン2」の開発認可が取り消されたばかり。

◎サハリン2の環境保全状況を調査へ、ロシア(2006年9月26日、朝日新聞)
 ロシア天然資源保護監督庁のサイ長官は25日、ロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事が進める石油天然ガスプロジェクト「サハリン2」について、環境保全法規を順守しているかどうか総合的な調査を行う命令に署名した。インタファクス通信が伝えた。
 サハリン2については、先にロシア天然資源省が計画の第2段階の認可を取り消す決定をしている。ただしトルトネフ天然資源相は今回の調査は環境面に限定されたもので、調査結果によって事業免許が取り消されることはないとしている。
 計画では、関係部局による合同委員会が25日から10月20日にかけて、石油・天然ガス採掘施設やパイプラインなど関連施設と周辺の環境への影響などを調べるという。

◎ロシア、英BPにも操業停止圧力、外資排除へ(2006年9月20日、産経新聞)
 ロシア検察当局が、英国際石油資本(メジャー)BPとロシア大手の合弁会社TNK―BPが手掛ける東シベリアのコビクタ・ガス田開発をめぐり、「環境対策が不十分」との理由で、事業許可を停止するよう、地元イルクーツクの資源監督部門に働き掛けていることが分かった。20日付の英紙フィナンシャル・タイムズが報じた。
 同社はBPとロシア側が折半出資。英メディアによると、ロシア側は株式をロシア政府系独占企業ガスプロムに売り渡す交渉に入っており、同事業でのBPの立場を弱める狙いがあるようだ。
 ロシア政府は、日本の商社などが出資するサハリン州沖の石油・天然ガス開発計画「サハリン2」の一部事業の中止を命じたばかりで、資源開発分野で外資排除の動きが強まっている。
 TNK-BPはコビクタで採掘した天然ガスの中国への輸出を目指しているが、ガスプロムの反対で難航している。(共同)

◎サハリン2停止、露「目的に手段選ばず」か(2006年9月20日、産経新聞)
 「目的のためには手段を選ばず」とは、レーニンがロシア革命成就に飛ばした檄(げき)だが、その伝統はソ連崩壊後15年たった今も健在なのか。
 過酷な自然条件などの中でメジャー(国際石油資本)のロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事の外資が育ててきた巨大な石油・天然ガス開発事業「サハリン2」に対し、ロシア天然資源省が事実上の事業停止命令を下した。
 パイプライン敷設のさい樹木の違法伐採など自然保護法に違反する事実があった-とのロシア検察当局の判断に従った決定とされる。これに伴い、ロシア天然資源監督局が同じ理由でモスクワの裁判所に同事業停止を求めていた申請は取り下げられたという。
 しかし、すでに総事業費は実に200億ドル(約2兆3000億円)、三井、三菱2社の総投入額も合計9000億円にのぼる。来夏から日本に輸入される液化天然ガス(LNG)は年間470万トンとガス需要の1割にも及ぶ。そんな大事業を唐突かつ一方的に停止するやり方は、とてもG8(主要8カ国)の成員のものとは思えない。
 プーチン政権はエネルギーの国家支配強化を公言している。クレムリンではソ連崩壊後の混乱期に決定した外資だけの事業計画に不満と批判が噴出していたとされる。世界最大の国営独占企業体ガスプロムが同事業への参入と権益増大を図ってきたのは公然の事実だ。そのために「環境」問題を持ち出してきたとの観測が有力だ。
 2年前には同じエネルギーの国家統制の一環としてプーチン政権はロシア石油大手の「ユコス」を解体、プーチン大統領の政敵とみられたホドルコフスキー社長を逮捕してシベリアの刑務所に送り込んだ。今回の「サハリン2」停止決定ともども、まさに「目的のためには手段は選ばず」と指弾されても仕方あるまい。
 ソ連崩壊後のロシアの経済実態は「略奪資本主義」といわれた。エネルギーなどの基幹産業をソ連時代の特権階級が「民営化」の看板の下で強引に乗っ取り、新興財閥が生まれた。今回はロシア国家による外資推進事業の権益の略奪劇の一幕とも受け取れる。未曾有の石油景気に沸くクレムリンに驕(おご)りはないだろうか。これでは早晩、世界の対露投資熱も冷え込もう。

◎「サハリン2」事業停止、日本のエネルギー戦略見直しへ(2006年9月19日、産経新聞)
 ロシア天然資源省は18日、三井物産、三菱商事が参加するロシア極東サハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」に対し、事業化の調査承認を取り消すとの声明を発表した。事実上の事業停止命令として、同計画が今後、大幅な見直しを迫られるのは必至で、日本のエネルギー安全保障戦略は、再考を余儀なくされるとみられる。
 インタファクス通信によると、天然資源省は、ロシア検察当局からの抗議を受け、事業化承認を取り消す決定を下した。同省は2003年7月、環境や採算性などの問題を検討した専門家による事業化調査をもとに、同計画を承認していた。
 また、同国天然資源監督局は今回の決定に先立ち、「自然保護法違反」でパイプラインの建設などサハリン2の業務停止を裁判所に申請していたが、同計画が事実上、停止に追い込まれることになったため、21日に予定されていた審理も中止されるという。
 事業はすでに8割方完成していた。

◎「サハリン2」の特権排除を、露大統領補佐官(2006年9月7日、産経新聞)
 ロシアのシュワロフ大統領補佐官は5日、記者会見し、日本企業も参画する極東サハリン州沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」について、同計画がいまだに享受し続ける特権を排除すべきだとの考えを示した。
 ロシアの日刊紙コメルサントによると、同補佐官は、世界的原油高が続く中、原油価格が低かった時代に外資とロシアが利益配分を決めた生産物分与協定(PSA)は不要になったとして、「サハリン2」がPSAから離脱して「ロシアの法の下」で適切な税金を支払うべきだと述べた。
 同計画をめぐっては、露当局が環境保全違反で提訴し、パイプラインの建設停止命令が出るなどしており、外資への圧力が高まっていた。

◎日本漁船は「停船命令に従わず、無灯火」、露警備当局(2006年8月16日、読売新聞)
 ロシア・サハリン州ユジノサハリンスク国境警備局のミハイル・シェフチェンコ局次長は16日、読売新聞の取材に対し、「国籍不明の船がロシア領海で停船命令に従わなかったので警告射撃を行った。日本漁船とみられるが、航行中に無灯火で標識も掲げていなかった」と発砲の理由を説明した。
 局次長によると、事件は同日未明、水晶島付近で起きた。「停船せず、(国境警備局の)小型艇に体当たりしてきた。船の進路、船尾、上方に向けて射撃したが、船体に向けては発砲しておらず、漁船に貫通痕も損傷もない」と説明した。
 船員の死亡については、「当時の詳しい状況は分からない。国後島の古釜布で日本語通訳を介して身元確認や捜査を行う」と話した。

◎ロシア警備艇、根室の漁船を銃撃、1人死亡(2006年8月16日、朝日新聞)
 16日午前7時40分ごろ、北海道根室市の根室湾中部漁協から根室海上保安部に入った連絡によると、同漁協所属のカニかご漁船「第31吉進(きっしん)丸」(4.9トン、4人乗り組み)が、北方四島海域の貝殻島付近でロシア・サハリン州国境警備庁に拿捕(だほ)された。その際、ロシア側から漁船の乗組員が銃撃を受け、乗組員4人のうち1人が死亡した。第1管区海上保安本部(北海道小樽市)によると、死亡したのは甲板員の根室市千島町1丁目、盛田光広さん(35)。乗組員によると、盛田さんは頭部を撃たれたらしい。
 1管本部がサハリン沿岸国境警備局に電話で確認したところ、(1)日本漁船を拿捕した(2)乗組員1人が死亡、他の3人は無事(3)漁船は取り調べのため北方四島・国後島の古釜布(ふるかまっぷ)に連行している、との回答があった。
 根室海保所属の巡視船「さろま」と巡視艇「かわぎり」が現場海域に急行して情報収集にあたっている。
 第1管本部によると、亡くなった盛田さん以外に拿捕(だほ)されたのは、根室市温根沼の坂下登船長(59)と、いずれも甲板員の同市明治町1丁目、川村昭充さん(29)、同市昭和町4丁目、紙屋春樹さん(25)の3人。
 水産庁によると、貝殻島周辺はロシア側の主張する領海の境界線に近い。日ロの漁業協定では、ロシアの主張する領海内で日本漁船によるタコやスケトウダラなどの漁が認められているが、カニ漁は全面的に禁止されている。
 同庁は、拿捕されたのは、日本の領海内で操業する許可を北海道知事から受けている漁船ではないかとみて確認している。


◎ユコス破産を決定、被告は上告へ、モスクワ仲裁裁判所(2006年8月2日、朝日新聞)
 モスクワ仲裁裁判所は1日、ロシアの元石油最大手で、プーチン政権からの攻撃で事実上解体されたユコスの破産を認める決定をした。3540億ルーブル(約1兆5千億円)の税金の滞納など、負債総額は4900億ルーブル(約2兆円)にのぼるとされる。インタファクス通信によると、ユコス側の弁護人は決定を不服として上告する方針だが、同社が清算に追い込まれる可能性は極めて高いと見られる。
 同社をめぐっては、03年のホドルコフスキー元社長の脱税などの容疑による逮捕や、その後の産油部門子会社の国営企業による買収が、プーチン政権に批判的な態度をとったことに対する政治的弾圧との批判を内外で招いてきた。

◎エルミタージュで221点紛失、担当者は急死(2006年8月1日、朝日新聞)
 ロシアが誇るサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館は7月31日、宝飾品を中心とするコレクション221点、約1億3000万ルーブル(約5億2000万円)相当の紛失が内部調査の結果で明らかになった、と発表した。職員の関与を否定できないとしている。
 紛失したのは、同美術館のロシア美術部門のコレクションで、宝石や七宝細工の文化財が主。今回の内部調査を始める際に、この部門を担当する職員が美術館内で急死。同僚が調べた結果、多くの所蔵品の紛失が明らかになったという。経緯について今後調査を進めるとしている。
 美術館は「残念ながら、歴史的文書や文化遺産の紛失は今回が初めてではない」と指摘。背景にロシア社会に蔓延(まんえん)する犯罪化傾向、職員のモラルの荒廃、所蔵品の保管・管理システムの老朽化があったと報告している。
 エルミタージュ美術館は、ロシア皇帝が住んだ冬宮の建物を利用した世界最大級の美術館。廊下の総距離約30キロ、所蔵総数は300万点余とされる。

◎ロシア:外貨準備高、世界3位に(2006年7月28日、毎日新聞)
 ロシア中央銀行は27日、7月21日現在のロシアの外貨準備高が史上最高の2629億ドル(約30兆5000億円)に達したと発表した。
 インタファクス通信などは、これにより、外貨準備高でロシアは台湾を抜き、中国(6月末で9411億ドル)、日本(同8648億ドル)に次ぐ世界第3位になったと伝えた。
 台湾の中央銀行が発表した台湾の6月末時点の外貨準備高は2604億ドルだった。
 主要輸出品であるガス、原油などエネルギー資源の高騰でロシアの貿易黒字は拡大しており、外貨準備高は年初以来約44%も増加した。(共同)

◎北朝鮮:ロシアと国境鉄道再建で調印、ハサン~羅津間(2006年7月26日、毎日新聞)
 26日の朝鮮中央放送によると、ロシア鉄道のヤクーニン社長と北朝鮮の金容三鉄道相が23日、露朝国境のハサン(ロシア)-羅津(北朝鮮)間の鉄道再建を今年中に終えるとする議定書に調印した。同区間の光ファイバーの敷設・共同運営に関する合意書も締結した。
 ヤクーニン社長は訪朝前に訪韓して韓国鉄道公社社長と会談し、シベリア横断鉄道と朝鮮半島縦断鉄道の連結問題について意見交換をしている。朝鮮通信(東京)が伝えた。【中国総局】

◎ロシア:世界最大のチタンメーカー、国有化へ(2006年5月20日、毎日新聞)
 であるロシアのVSMPO-アビスマのテチューヒン社長は19日、ロシア政府が同社を買収することで原則合意に達したことを明らかにした。ロシア通信などが伝えた。
 国内航空機メーカーや石油産業などの統合と国家管理を進めるプーチン政権の戦略の一環で、航空機生産や宇宙開発に重要な戦略物資であるチタンの生産と輸出を国家の統制下に置く狙いがあるとみられる。
 同社長は記者団に対し、ロシア産業エネルギー省やロシア国営兵器輸出会社との買収交渉は約1年で完了するとの見通しを示した。具体的な条件は明らかにされていないが、政府側は同社株式の約60%を所有する同社長ら2人の個人株主との交渉により、過半数の株取得を目指しているとみられる。
 VSMPO-アビスマの生産高は世界のチタン生産の約30%を占め、米航空宇宙大手ボーイングや欧州の航空機メーカー、エアバスなどが主な取引先。
 テチューヒン社長は、所有者が代わってもこれまでの契約は完全に履行されると強調、国有化に対する欧米の懸念には根拠がないと述べた。(共同)

◎露、グルジアのミネラルウオーター禁輸、経済制裁の色彩濃厚(2006年5月6日、産経新聞)
 ロシア政府は5日、旧ソ連構成国グルジアのミネラルウオーターが「有害物質」を含有するとして全面的な輸入禁止措置をとったことを明らかにした。反ロシア的な姿勢を示すグルジアへの経済制裁の色彩が濃厚だ。天然ガス、ワインに次ぐ“鉱水紛争”は、ロシア側のグルジアに対するいらだちの強さを示しているようだ。
 禁輸となったのは、ミネラルウオーター「ボルジョミ」。ロシアは3月末、グルジア産ワインを同様に全面禁輸としているが、ソ連時代から長寿の国グルジアの「健康の秘訣(ひけつ)」の一つとして名をはせ、同国の誇りでもあるミネラルウオーターまでが「飲用には適さない」との烙印(らくいん)を押された形だ。
 「ボルジョミ」は世界各国に輸出されているものの、その60%はロシア市場で消費されているだけに、グルジアにとって大きな打撃となることは必至だ。
 グルジア側は今回の措置について、「経済制裁の意図があるとしか考えられず、ロシアがいかに頼りにできないパートナーかということを示している」と強く反発している。

◎服役中のユコス元社長、刑務所で襲われ負傷(2006年4月16日、読売新聞)
 インターファクス通信は15日、脱税罪などで服役中のロシアの石油会社「ユコス」の元社長、ミハイル・ホドルコフスキー服役囚が、シベリア・チタ州の刑務所で他の服役囚に襲われ負傷したと報じた。ホドルコフスキー元社長の弁護士の話として伝えた。
 プーチン政権と対立した元社長は、2003年秋に逮捕され、昨年、懲役8年の刑が確定した。弁護士は暗殺未遂の可能性を示唆したが、当局は「若い服役囚と口論になり、鼻を引っかかれたようだ」と否定している。
 事件が起きたのは13日夜から14日未明。元社長は顔に切り傷を負い、刑務所の医務室で治療を受けたという。元社長の広報担当者は、凶器は刑務所内への持ち込みが禁じられているナイフだったとしている。

◎ロシア、インド原発への核燃料供給で合意(2006年3月15日、日本経済新聞)
 インド外務省のサルナ報道官は14日の記者会見で、ロシアが印西部・タラプール原子力発電所への核燃料供給で合意した、と述べた。フラドコフ・ロシア首相が今週後半に訪印し、正式合意するとみられる。米国やフランスも民生用原子力開発への対印協力で相次いで合意しているが、ロシアは核燃料供給によって一歩先行しそうだ。
 報道官は「核燃料が不足すればタラプール原発の安全稼働に支障が出る可能性があり、ロシアに供給を要請した」と説明。ウラン供給は「限られた量にとどまる」と述べた。PTI通信は、核燃料の輸出量が約60トンに達すると伝えた。
 ロシアは自らも加盟する原子力供給国グループ(NSG)に対し「安全上の例外措置としてインドに核燃料を供与する」と報告したという。
 タラプール原発(1、2号機)は1969年に運転を開始したインド初の原発で米ゼネラル・エレクトリック(GE)社製。最大出力は各160メガ(メガは100万)ワット。国際原子力機関(IAEA)の査察を受けている。

◎ガス爆発?兵舎で13人死亡、ロシア・チェチェン共和国(2006年2月9日、朝日新聞)
 ロシア南部チェチェン共和国の兵舎で7日夜、大きな爆発が起き、兵士ら13人が死亡、20人が負傷した。カドイロフ首相代行はガス爆発が原因と見られると述べたが、地元検察当局はテロの可能性も視野に捜査をするとしている。イタル・タス通信によると、爆発が起きたのは、チェチェン東部クルチャロイ村の駐屯地。兵舎2階の台所付近で爆発が起きたという。
 一方、チェチェン独立派系のインターネットサイトは8日、独立派の軍事部門の犯行声明を掲載した。

◎露軍のいじめ、両足切断の新兵も、批判高まる(2006年1月28日、産経新聞)
 ロシア・ウラル地方チェリャビンスクの軍部隊で上官が新兵を集団暴行し、両足切断などの重傷を負わせていたことが28日までに明らかになった。ロシア軍内部の“新兵いじめ”は旧ソ連時代からの悪弊として国民に知られているが、残虐さとモラル(道徳)欠如に批判が高まっている。
 ロシアのメディアによると、事件が起きたのは昨年大みそかの夜。酒に酔った複数の上官が8人の新兵に暴行した。
 ある兵士(19)はいすに縛り付けられ、理由もなく数時間にわたり殴打された。司令官や軍医からも放置され、4日後に病院に運ばれたが既に壊死(えし)が進行、両足と性器、手の指を切断した。
 イワノフ国防相は当初「大したことではない」としていたが、事件が大々的に報じられると徹底捜査を命令し、上官ら7人が逮捕された。人権団体「兵士の母親委員会」は国防相の解任を要求。「上官には執行猶予付き判決が下され、事実がもみ消されるのが常だ」と抜本的な対策を求めた。
 ロシアでは原則的に18―27歳の男子が2年間徴兵される。国防省によると、昨年はいじめで16人が死亡。自殺者は約280人に上り、いじめが原因の自殺も増えているという。
 息子の入隊を恐れる親も多く、大学進学など徴兵逃れの道を探すことが男子のいる家庭の「最大の課題」との指摘もある。

◎新兵いじめで重傷者、わいろで招集免除も、ロシア軍混乱(2006年1月28日、朝日新聞)
 ロシア軍の戦車学校で新兵が古参兵から暴行されたあげく重体となり、手術で両足などを切断したことが国民の激しい怒りを呼んでいる。プーチン大統領の後継候補の一人とされるイワノフ副首相兼国防相は事態の沈静化に懸命だ。
 新兵いじめは新年を迎える1日の夜にウラル地方のチェリャビンスク戦車学校で起きた。酒に酔った古参兵らが新兵8人に乱暴して重傷を負わせた。下半身を3時間も殴打されて重体の1人は治療も遅れ、救命措置で両足と性器を切断した。
 国民が衝撃を受けたのは、被害の深刻さのほか、学校側の事件を隠す動きで主犯の兵の逮捕が24日になるなど、悪質さが際だつためだ。また、軍検察が「04年に250件あった兵士の自殺の主要原因は新兵いじめ」と主張していたのにイワノフ氏は「いじめは減っている」と反論、こうした国防省上層部の認識の甘さも背景にある。
 さらに同氏は主犯兵逮捕の翌日に「事件を知った」と発言、事件の徹底調査を命じたものの、「これで重大な決定が下せるのか」(独立新聞)と批判を浴びている。
 そうしたなか軍検察は25日、軍にたばこを納入する契約を結んだのに実行せず、国に1200万ルーブル(約5000万円)の損害を与えたとして国防省食糧局長への捜査を始めた。裕福な市民に短期兵役の招集通知を送り、わいろと引き換えに招集免除を持ちかけていたモスクワの徴兵司令部幹部も26日、起訴された。

◎ロシア南部、ガスパイプライン爆発、供給に支障(2006年1月23日、朝日新聞)
 ロシア南部・北オセチア共和国で22日、天然ガスパイプラインの爆発事故が2度起き、このパイプラインによるグルジアやアルメニアへのガス供給が止まった。ロシアの捜査当局は事故原因に設備機器の不調のほか、現場が民族紛争の続くチェチェン共和国に近いことなどから、破壊工作の可能性もあると見て調べている。
 一方でグルジアのサアカシュビリ大統領は同日、爆発事故について親欧米路線をとる同国に「ガス供給を止めて圧力をかけようとした意図的な工作だ」とロシア側を非難した。今年からロシアがグルジアへの天然ガス供給価格を大幅に上げたこともあり、首都トビリシでは国会議員らも含む数百人がロシアに対する抗議集会を開いた。
 インタファクス通信などによると、復旧には4日ほどかかる見込み。グルジアは現在零下10度ほどのトビリシや、同20度ほどに冷え込む周辺地域で暖房設備にロシアからのガスを使っている。それが止まったためグルジア政府はアゼルバイジャンからガスの緊急供給を受けることで合意した。

◎グルジア向けガス供給停止、露でパイプライン爆発(2006年1月22日、産経新聞)
 インタファクス通信などによると、ロシア南部・北オセチア共和国の山岳部で22日、ロシアからグルジアへガスを供給するパイプラインの2カ所で爆発があった。グルジア向けのほか、グルジアを経由するアルメニア向けのロシアからのガス供給が停止した。
 ロシア捜査当局は、武装勢力などによる破壊工作の可能性が高いとみている。死傷者はなかった。
 爆発があったのは「モズドク(北オセチア共和国)―トビリシ」ルートで、パイプラインの幹線、支線がともに破壊された。専門家は、復旧には2―4日間が必要と指摘。グルジアはガスの大半をロシアに依存しているが、代替措置としてアゼルバイジャンからのガス供給で賄うほか、イランとも交渉する方針。

◎露が対欧ガス供給を制限、寒波で国内需要増を理由に(2006年1月20日、読売新聞)
 ロシアの政府系ガス会社「ガスプロム」は18日、寒波に襲われているロシアでの需要増を理由に、天然ガスの欧州への供給制限を始めた。
 ロシアは今月はじめ、価格設定をめぐる対立からウクライナへのガス輸出を停止して問題となったばかり。
 インターファクス通信によると、ロシアからハンガリーへのガス供給が20%減少したという。ロイター通信によると、ガスプロムは、イタリア、オーストリアなどへの供給も減らす見通しを示した。

◎寒波:モスクワで氷点下27度、10年ぶり、死傷者も(2006年1月18日、毎日新聞)
 寒波に見舞われているロシアで、16日夜から17日朝にかけて首都モスクワでは最低気温が氷点下27度を記録。ロシア気象庁は「10年ぶりの寒波」としている。インタファクス通信などによると、寒さのため2人が死亡、14人が病院に運ばれた。モスクワ市の救急センターによると、同市だけで昨年10月末以降、寒さにより107人が死亡した。
 厳しい寒さは当面続き、17日夜には氷点下30度まで下がる見通しという。モスクワの路上では、寒さのために動かなくなる車が続出した。
 モスクワでは電力消費量の急増で停電が起きる恐れがあるため、電力会社は17日、市内の工場に対し電力の使用を数時間控えるよう要請。動物園では、屋外で飼育している動物を暖房の効いた室内へ移した。
 ほかの地方も1月に入って記録的寒波に襲われており、シベリア・ヤクーツクでは17日、氷点下56度に。ロシア各地で臨時休校などの措置が取られた。(共同)

◎露ガス供給停止:一方的な資源外交、欧米にも強い懸念(2006年1月4日、毎日新聞)
 ロシア産天然ガスの価格を巡るウクライナとロシアの対立は4日、両国が合意を発表し、一応収束に向かった。対立が決定的になるのを避けるため双方が歩み寄った形だが、今回のガス供給停止が欧州にまで影響を及ぼしたことで、ロシアの一方的な資源外交はウクライナだけでなく欧米にも、強い懸念を生じさせる結果となった。
 米国務省のマコーマック報道官は3日の定例会見で「エネルギーを政治的圧力のために使っているのではないかとの疑問がある」と述べ、ロシアに懸念を伝えたことを明かした。また4日には欧州連合(EU)が緊急会議で対応の検討を予定しており、EUのソラナ共通外交・安保上級代表が3日、双方の外務省と活発に電話協議を行っていた。
 欧州諸国は天然ガス消費量の3割をロシアからの供給でまかなっているが、オーストリア、ポーランド、チェコ、ハンガリーなどはEUで、ガス供給源分散化の重要性を指摘する構えだ。ロシアの今回の措置はガス購入の顧客国の不信感を買う結果になった。
 ロシアの強硬策は、キエフ市民の間でもロシアへの嫌気を増大させた。プーチン政権が04年のウクライナ大統領選挙に露骨に介入し、これに反発した市民が親欧米派のユーシェンコ陣営に結集した状況と似ている。
 ロシアの一方的なガス供給停止を受け、ウクライナのブテイコ第1外務次官は2日、民間テレビで、「個人的見解」と断った上で、「ローマ帝国のようにあらゆる帝国は遅かれ早かれ崩壊する。ロシア帝国もそうだ」と語り、異例のロシア批判を展開。オレンジ革命以降、ロシアの圧力を感じてきたウクライナ市民の気持ちを代弁した発言だった。
 ユーシェンコ大統領は12月20日、クリミア半島を拠点とするロシア黒海艦隊の基地使用料の適正化問題を持ち出して、ガス値上げをけん制。これに対し、ロシアのイワノフ国防相は同27日、「基地供用に関する両国間条約には、国境画定合意も含まれている。条約改定は(国境合意の)死に等しい」と批判し、対立は両国の領土問題にまで発展しそうな様相を見せていた。

◎ロシア、ウクライナへのガス輸出停止、EU諸国に影響(2006年1月3日、読売新聞)
 ロシアは1日、ウクライナへの天然ガス輸出を全面停止した。
 2004年末の政変で誕生したウクライナのユシチェンコ政権が親欧米路線を進めたことに対する報復措置とみられている。欧米諸国では、エネルギーを政治的圧力に使う露側への懸念が高まっている。
 ロイター通信によると、ウクライナに天然ガスを輸出している露政府系「ガスプロム」のスポークスマンは1日、日量1億2000万立方メートルのウクライナ向け輸出を止めたと発表した。露側が、2006年分の輸出価格を05年の4倍以上の1000立方メートル当たり230ドルに引き上げ、欧州向けとほぼ同じ水準にすると通告、価格の合意ができなかったためという。
 ウクライナが消費するガスのうちロシアからの輸入分は3割余り。ウクライナ政府は、対策本部を設置、「備蓄取り崩しや国内生産分で当面は不足分を補える」と、国民に平静を呼びかけている。
 輸出停止の影響は、ガス消費量の約25%をロシアから輸入、うち8割はウクライナ領経由で受け取る欧州連合(EU)諸国にも拡大している。
 AFP通信などによると、2日夕までに、ロシアからのガス供給量が減少したのは7か国に及び、イタリアで24%、フランスで30%、ポーランドやハンガリーで約40%減った。
 ガスプロムは同日、欧州向け供給量を3日までに日量9500万立方メートル増やすと発表した。
 ガスプロムは、「欧州向け供給量の減少は、ウクライナがガスを途中で抜き取っているから」と主張。ウクライナは否定している。
 米国務省は1日、「エネルギーを政治的圧力に利用することへの深刻な疑念」を表明した。ドイツのミヒャエル・グロス経済相は、「ロシアは主要8か国(G8)議長国として、責任ある行動を取るべきだ」と語った。

◎ロシア:ガス供給停止、独仏伊などは解決求め書簡送る(2006年1月2日、毎日新聞)
 ロシアがウクライナへのガスパイプラインを閉鎖した問題でガス供給量が低下している欧州諸国に懸念が広がっている。東欧諸国は対応策協議で合意。独仏伊などは露・ウクライナ両国に問題解決を求める書簡を送った。またガス輸入の25%を露に頼る欧州諸国ではエネルギー源の変更や、パイプラインのルート変更論も高まっている。
 ガス供給量が25%も低下したハンガリーのコーカ経済・運輸相は1日、大手のガス消費企業にエネルギー源を石油などに切り替えるよう要請。同国はガス輸入の7割を露に依存しているため「供給量が40%以上低下すれば供給制限もありうる」との懸念を表明した。
 また、ガス輸入の約3割をロシアに依存するドイツのほか仏伊オーストリアのエネルギー担当相は31日、露・ウクライナ両国に「供給停止は西欧諸国に無視できない問題をもたらす」として、早期に問題解決を図るよう求める書簡を送った。
 ドイツではプーチン露大統領と親交があるシュレーダー前独首相が仲介に乗り出すとの報道も出ている。独国内では経済界から「ウクライナや東欧を経るパイプラインは政治的危険が大きい」と、海底パイプラインで直接ロシアからガス供給を受ける「北欧州ガス・パイプライン」の建設促進を求める声が出始めた。

◎ロシア:ガス供給停止、国際社会に懸念広がる(2006年1月2日、毎日新聞)
 ロシア政府系天然ガス独占企業ガスプロムが1日、ウクライナへのガス供給を停止した問題で、エネルギー支配をてこに政治的な影響力を行使するロシアの姿勢に対し、国際社会の懸念が広がった。ロシアは1日から主要8カ国(G8)議長国になり、今夏開催予定のG8首脳会議(サミット)でエネルギー安全保障問題を議題にする方針だけに、今回の供給停止が物議を醸すのは必至だ。旧ソ連諸国のロシア離れが進む中、エネルギー価格の大幅値上げという「懲罰」を強行するロシアの行動に欧米諸国は不信感を強めている。
 ウクライナは04年末、大統領選挙の不正疑惑に対する抗議運動をきっかけに「オレンジ革命」が起こり、やり直し選挙で親欧米派のユーシェンコ大統領が誕生した。民主改革を掲げるユーシェンコ政権は北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合(EU)への加盟を目指し、ロシア勢力圏からの離脱を鮮明にした。
 ロシアは天然ガス価格を旧ソ連圏の親露派筆頭ベラルーシには06年分49ドルに設定したが、EUに加盟したバルト3国は120ドル。ガスプロムが5年間の供給契約を結んでいたウクライナについては昨年6月、50ドルから160ドルに値上げした後、西欧向けの250ドル前後とほぼ同じ230ドルにまでつり上げた。
 イラリオノフ元露大統領経済顧問は先月27日の辞任後、「オレンジ革命」への反発により「ウクライナへの補助金(低価格のガス供給)の見直しを露大統領府は思い立った」と述べ、プーチン政権にはガス価格を政治圧力の手段とする考えがあることを明らかにした。
 ロシアの天然ガスはウクライナの需要の30%、西欧諸国の需要の25%をまかなっている。ハンガリー、ポーランド、オーストリアを含む欧州向けのロシア産ガスの約80%がウクライナ経由だ。
 石油、天然ガス輸出が政府収入の4割強を占めるロシアにとり基幹パイプラインの掌握は国益の要だ。エネルギー産業の国家統制を強めているプーチン政権はウクライナ経由のパイプラインがロシア離れの著しいユーシェンコ政権下にあることを座視できなかった。
 ウクライナでは今年3月の最高会議(国会)選挙を見据え、親露派のヤヌコビッチ元首相が率いる政党・地域党が支持拡大を図っている。ガス供給停止にはウクライナの親露派へのてこ入れの意味合いもあるが、親露派基盤の同国東部工業地域には経済的打撃を与えるだけに「もろ刃の剣」になりかねない。
 プーチン政権の強硬姿勢には、バルト海沖経由でウクライナを回避できる「北欧州ガス・パイプライン」(10年開通予定)の建設がロシア・ドイツ間で昨年12月から始まったことも影響している。

◎ロシア、ウクライナへのガス輸出停止、関係悪化は必至(2006年1月1日、読売新聞)
 ロシアの巨大ガス企業「ガスプロム」は1日午後(日本時間同日夜)、ウクライナへのガス輸出を停止した。
 ロイター通信などが伝えた。ガスプロムが、2006年分の輸出価格を1000立方メートル当たり230ドル(05年分は50ドル)へと一気に4倍以上に引き上げることを要求したのに対し、ウクライナ側がこれを拒否したため。
 ロシアの値上げ要求は、ウクライナが2004年末の政変でロシア離れし、親欧米派となったことへの報復とみられ、両国関係の一層の悪化は確実とみられる。
 ロイター通信によると、ガスプロムのスポークスマンは、ウクライナ向けガス輸出に関し、同国の消費量に等しい日量1億2000万立方メートルを1日から削減したと述べ、実質的にウクライナへのガス供給を止めたことを発表した。
 インターファクス通信は、この事態を受け、ウクライナのユシチェンコ大統領が同日、ユーリー・エハヌロフ首相らとの協議に入ったと伝えた。ウクライナ政府は同日、エハヌロフ首相をトップとする対策本部を設置。同国の非常事態省も同日、危機管理センターを発足させた。
 ウクライナが消費するガスのうちロシアからの輸入分は3割あまりに上るが、ウクライナ政府・ガス企業は、冬季は備蓄取り崩しや国内生産分で不足分を補うことができるとして、国民に平静を呼びかけている。
 一方、旧ソ連以外の欧州諸国は、消費するガスの25%をガスプロムから輸入、うち8割はウクライナ領内を通過するパイプラインで供給されていることから、懸念を表明している。
 ガスプロムは欧州向け輸出には影響しないとしている。だが、ロシアNTVテレビは1日、ウクライナ・スロバキア国境でガス・パイプラインを監視しているガスプロム関係者の話として、ウクライナ領内を通過した欧州向けガスの運搬量が通常より減少していると報じ、ウクライナが欧州向けガスを途中で抜き取り始めたとの見方を示唆した。

◎天然ガス輸出交渉、露の妥協案にウクライナ難色(2006年1月1日、読売新聞)
 ロシアがウクライナへの天然ガス輸出価格を1月から現行の4倍以上に引き上げようとしている問題で、交渉期限の1日朝(日本時間同日午後)が迫る中、プーチン露大統領は31日、ウクライナが同日中に、露側が求める1000立方メートル当たり230ドルの新価格に同意するなら、2006年第1四半期は現行の同50ドルで輸出、新価格での取引は第2四半期からとする妥協案を提案した。
 インターファクス通信などが伝えた。
 これに対し、ウクライナのエハヌロフ首相の報道官は31日、「市場価格に移行すべきとの露提案には同意するが、具体的な価格についてはさらに交渉が必要だ」と述べた。
 ユシチェンコ大統領も30日、ロシアの各国との妥結価格が同120~47ドルと差があると指摘。ウクライナに対する値上げ要求には「経済的根拠がない」と主張しており、1日から露側がウクライナへのガス供給停止に踏み切る可能性も高まっている。
 ユシチェンコ大統領は30日、プーチン露大統領あてに、交渉期限を1月10日まで延長するよう提案したが、プーチン大統領は反応を見せていなかった。
 一方、ロシア巨大ガス企業「ガスプロム」のスポークスマンは30日、ユシチェンコ提案について、受け入れを拒んだ。

◎1月からガス供給停止も、ロシア、ウクライナに警告(2005年12月26日、産経新聞)
 ロシア政府系天然ガス独占企業ガスプロムのメドベージェフ副会長は25日、ロシアのテレビとのインタビューで、難航している天然ガス価格大幅値上げについてウクライナ側との交渉がまとまらなければ、来年1月1日から同国へのガス供給を停止すると警告した。
 副会長は、合意できなければ「1月1日午前10時(日本時間同午後4時)からウクライナへのガス提供はなくなる」と強調。ウクライナ領内のパイプラインを通って欧州諸国に輸送されるガスからウクライナ側が無断で自国の分を抜き取れば、国際的商取引の係争を扱うストックホルム商業会議所仲裁裁判所に提訴すると述べた。
 これに対しウクライナの国営天然ガス企業ナフトガスのイブチェンコ会長はインタファクス通信に対し、ガスプロムとの間には2013年まで現行価格でガスを輸入する長期契約があると説明。ウクライナ向けのガスを完全に止めることは「技術的にも、法的にも不可能だ」と反論した。
 ガスプロムは、旧ソ連諸国への天然ガス安値提供を見直すプーチン政権の決定に従い、1000立方メートル当たり50ドル(約5800円)のウクライナ向け価格を1月から4.6倍の230ドルに引き上げると通告している。(共同)

◎イランに対空ミサイル売却、ロシア副首相認める(2005年12月6日、朝日新聞)
 ロシアのイワノフ副首相兼国防相は5日、ロシアがイランに対して、対空ミサイルシステム「TORM1」を売却する契約を結んだ、と述べた。イタル・タス通信などが伝えた。核問題を抱えるイランへの供与に、米やイスラエルは懸念を強めている。
 同システムは、政治、経済や軍事上の重要施設の防御を主な任務とし、爆撃機や巡航ミサイルを低空で撃ち落とす能力を持つ。同通信などによると、06年から08年にかけて29システムがイランに引き渡され、契約総額は7億ドル以上という。
 イワノフ副首相は「このシステムは地上への攻撃に使えない。もっぱら防衛のための武器だ」とし、売却は地域の軍事バランスを崩さず、問題はないとの考えを示した。
 しかし、米国やイスラエルは、イランの同システム購入を、国際的な懸念を呼んでいる同国の原子力施設を外部からの攻撃から守ることを意図した動きと見ている。最近モスクワを訪問したバーンズ米国務次官も「米国はイランへの武器売却を支持せず、この問題をロシア側と協議してゆく」との意向を示した。
 インタファクス通信によると、ロシアはイランにあるミグ29戦闘機やスホイ24前線爆撃機などロシア製軍用機の性能の改善や、哨戒艇の売却でも合意しており、「TORM1」と合わせると契約の総額は10億ドル以上になるという。

◎露通商代表部員がスパイ、東芝子会社元社員に情報要求(2005年10月20日、産経新聞)

 軍事転用が可能とされる半導体などの機密情報を漏らし、勤務する会社に損害を与えたとして、警視庁公安部は20日、背任の疑いで、東芝子会社の元社員の男(30)を書類送検。情報を要求し受け取っていた在日ロシア通商代表部のロシア人の男(35)も同容疑で書類送検した。
 公安部はロシア人の男がスパイ活動をしていたとみている。同部によると、ロシア通商代表部に絡むスパイ事件の摘発は1989年以降5例目。
 元社員の男は「金が欲しかった。受け取った金は飲食費などに充てた」と供述。ロシア人の男は6月ごろに出国している。
 調べでは、2人は昨年9月から今年5月にかけて9回にわたり、都内の飲食店などで接触。元社員が会社の機密情報を提供して見返りに現金100万円を受け取り、会社に損害を与えた疑い。
 漏えいされたのは半導体に関する情報などで、ミサイル誘導装置や潜水艦、戦闘機のレーダーなどへの軍事転用が可能な内容だったという。
 元社員は、都内近郊で行われた電気機器に関する展示会の会場でこの通商代表部の男に声を掛けられ、知り合いになったという。公安部は通商代表部の男がロシアの対外情報局(SVR)と関係があるとみている。
 在日ロシア通商代表部は「現時点ではこの件に関してはノーコメント」としている。(共同)

◎半導体技術をロシア人に漏えい、元社員らを書類送検・警視庁(2005年10月20日、日本経済新聞)
 ロシア側に軍事転用可能な半導体技術を漏らし、現金100万円を受け取っていたとして、警視庁公安部は20日、元東芝子会社社員の男(30)と在日ロシア通商代表部員のロシア人の男(35)を背任の疑いで書類送検した。
 調べに、元社員は「途中からおかしいと思ったが、お金が欲しかった」と容疑を認めている。ロシア通商代表部員は6月ごろに出国したという。
 調べでは、この元社員は在職中の昨年9月から今年5月の間、九回にわたり、同代表部員に、潜水艦など軍事技術へ転用が可能な半導体の機密情報などを渡し、報酬として100万円を受け取り、会社に損害を与えた疑い。東京都内の居酒屋などで接触、元社員が機密情報が入ったメモリーカードを手渡すこともあったという。昨年春、東京近郊で開かれた電気機器の展示会で、同代表部員が元社員に声をかけて接触が始まったが、部員は国籍や職業を偽っていたとみられる。公安部は、部員がロシアの情報機関SVRと関係があるとみている。

◎露スパイ:東芝子会社元社員、半導体情報漏らし書類送検(2005年10月20日、毎日新聞)
 東芝子会社の元社員(30)が、軍事転用可能な半導体に関する情報を在日ロシア通商代表部員(35)に漏らしていたとして、警視庁公安部は20日、2人を背任の疑いで書類送検した。代表部員は既に帰国しており、公安部は外務省を通じ、再入国拒否の手続きなどを取る方針。
 調べでは、元社員は昨年9月から今年5月にかけ9回にわたり、東京都内の居酒屋などで、半導体に関する情報など同社の機密情報を代表部員に渡し、見返りに計約100万円を受け取って同社に損害を与えた疑い。パソコンのメモリーカードに情報を保存するなどして代表部員に見せていたらしい。
 半導体は、戦闘機のレーダー、ミサイルの認識装置などに軍事転用も可能だという。代表部員は「イタリア人のコンサルタントだ」などと身分を偽っていたらしい。公安部は代表部員について、SVR(ロシア対外情報庁、旧KGB)の所属とみている。
 元社員は公安部の調べに対し、「コンサルタントとして要求する情報にしてはおかしいと思ったが、飲み代が欲しかった」などと供述したという。

◎露の同時襲撃事件:実行部隊に報酬3000ドル(2005年10月19日、毎日新聞)
 ロシア南部カバルジノ・バルカル共和国で起きた同時襲撃事件で、治安当局に拘束された武装勢力メンバーの多くが今月13日の襲撃を前に、2000-3000ドル(約23万-35万円)の報酬を受け取っていたと当局に供述していることが18日までに分かった。タス通信が同日報じた。
 事件では近郊のチェチェン共和国独立派の最強硬指導者でイスラム原理主義の影響が強いバサエフ司令官が犯行声明を出した。今回の武装勢力の供述は、ロシア最貧地域の一つとされる現地の経済情勢を背景に、イスラム系武装勢力が資金力を利用して実行部隊を拡大したことを示している。
 カバルジノ・バルカル共和国の内務当局筋によると、武装勢力の一部はイスラム系過激思想を信じ事件に加わったが、拘束したメンバーのうち約20人は報酬を事前に受け取ったことを認めているという。報酬を渡した人物は不明。
 同筋はまた、実行部隊が同共和国内外で襲撃の訓練を受けたと指摘し、チェチェンで訓練を受けた可能性も示唆した。治安当局は報酬受け渡しの実態解明を進め、残る武装勢力の摘発に全力を挙げている。(モスクワ共同)

◎死者137人に、露同時襲撃事件(2005年10月17日、産経新聞)
 ロシア南部カバルジノ・バルカル共和国の首都ナリチクでの武装勢力による同時襲撃事件で、ロシアのヌルガリエフ内相は16日、警察官ら治安当局側の犠牲者がこれまで発表されていた24人より9人多い33人に上ったことを明らかにした。これにより、武装勢力側と住民を含めた死者数は計137人になった。
 内相は同日放送されたテレビ「第1チャンネル」のインタビューで、「彼らのプロ意識と勇気に頭が下がる」と述べ、死亡した33人の警察官らをたたえた。(共同)

◎露、武装勢力13人拘束、同時襲撃死者128人(2005年10月16日、産経新聞)
 ロシア南部カバルジノ・バルカル共和国の首都ナリチクで起きた同時襲撃事件で、ロシアのノビコフ内務次官が15日、現地で記者会見し、同時襲撃に関与した疑いで、武装勢力とみられる13人を拘束していることを明らかにした。武装勢力や住民などの死者数は計128人に上った。
 次官はまた、武装勢力が8~15人ごとの6グループに分かれ襲撃を実行したとも述べた。拘束した人数は14日の段階で36人とされたが、その後に釈放されたケースがあったとみられる。
 次官によると、死者数は、武装勢力が前日より1人増えて92人となり、住民12人、警官ら治安当局側が24人で計128人。(共同)

◎露南部で激しい市街戦、住民ら70人以上死亡か(2005年10月14日、産経新聞)
 ロシア南部カバルジノ・バルカル共和国の首都ナリチクの警察署や空港など約10施設が13日朝、武装勢力によって同時に襲撃され、警察との間で一時激しい市街戦となった。連邦最高検のコレスニコフ次席検事らによると住民12人と警官ら12人が犠牲になり、70人以上が負傷、武装勢力約150人のうち約50人が射殺された。だが、殺害されたのは約20人との話もあり、情報は錯綜(さくそう)している。
 同共和国に近いチェチェン共和国の独立派武装勢力はウェブサイトで、「カフカス戦線」を名乗る同勢力の組織が犯行を認めたと伝えた。
 組織的抵抗は同日夕までに鎮圧されたが、武装勢力の一部が市内の警察署に立てこもるなどして抵抗を続けており、人質がいるとの情報もある。
 独立派による大規模テロは隣接する北オセチア共和国で昨年9月に起き、約330人が犠牲になった学校人質事件以後初めてで、11月のチェチェン議会選を前に北カフカス地域の混乱を狙ったものとみられる。プーチン大統領は連邦内務省に対し、ナリチクを包囲し「1人の武装勢力も逃がさず、完全に掃討する」よう命令。同省は応援部隊を送り掃討に当たった。
 武装勢力は13日午前9時(日本時間同日午後2時)ごろ、共和国内務省や警察署、連邦保安局ビルを一斉に銃撃。警官隊との間で激しい交戦になった。空港や銃器店なども襲撃され、各所で爆発によるとみられる黒煙が上がった。
 市内では自動小銃の連射音が散発的に響き、警察は装甲車両やヘリコプターを投入。市中心の警察署近くの学校では生徒や教職員が緊急避難するなど、騒然となった。
 犯行グループには1999年のモスクワでの住宅などの連続爆破事件への関与が指摘されるイスラム過激派組織「ヤルムク」も含まれているという。(共同)

◎ロシア弾薬庫で大規模爆発、3日間続き、8000人避難(2005年10月3日、朝日新聞)
 ロシア極東のカムチャッカ半島にあるロシア国防省の弾薬庫で9月30日、大規模な爆発が起きた。爆発は丸3日間、断続的に続き、付近の住民8000人が一時避難した。放火の可能性も指摘されている。
 インタファクス通信などによると、爆発が起きたのは、カムチャツカ州の州都ペトロパブロフスク・カムチャツキーから150キロ北方にある海軍の弾薬庫。最初の大爆発は、州都でも爆発音が聞こえたという。今月3日になってようやく収束に向かいつつある。
 周辺の住宅の窓ガラスが割れたほか、飛散した弾薬が飛び込むなどの被害が出た。死者は出ていないが、負傷者が数人出ているとの情報がある。現場からは半径15キロ以内が立ち入り禁止となり、住民8000人が避難した。
 現場では大量の有効期限切れの弾薬が廃棄処分のために野ざらしにされていたと見られ、安全規則違反のほか、何者かが弾薬を盗み、証拠隠滅のために放火した可能性も指摘されている。

◎三井物産、ロシアの炭鉱権益を買収へ(2005年9月21日、朝日新聞)
 三井物産は、ロシア極東・サハ共和国南部のデニソフスカヤ炭鉱の権益を買収する。ロシア最大の資源会社、エブラズ・ホールディングの権益の30%を買い取り、増資も引き受ける。取得金額は約80億円。21日にも合意する。日本から近いロシアは有望な資源国として注目を集めているが、日本企業としては初のロシア炭鉱投資という。
 デニソフスカヤ炭鉱は巨大なネリュングリ炭鉱に近い露天掘り炭鉱。06年秋には製鉄用の高品質の強粘結原料炭を生産・出荷する。08年の年間生産量は240万トンに上る見通し。シベリア鉄道を使い、沿海州から日本やアジアに船で輸出する。
 石炭の生産は豪州への依存が強く、供給側も寡占化している。このため、世界的に需給が逼迫(ひっぱく)しているが、「ロシアでの開発で石炭需給の緩和につなげたい」(同社幹部)という。
 サハ共和国は面積が日本の約8倍でロシア連邦中最大。石炭や石油、天然ガス、ダイヤモンドなどの豊富な資源があり、日本にとって重点地域とされる。

◎旭硝子:モスクワ郊外に板ガラス工場、露の建築需要に対応(2005年9月16日、毎日新聞)
 【モスクワ杉尾直哉】旭硝子は16日、モスクワ郊外のクリンに220億円を投じて新設した板ガラス工場の開所式を行った。建築用板ガラスを1日当たり600トン生産し、高い伸びを見せるモスクワやサンクトペテルブルクの建築需要に応える。100%子会社グラバーベル(本社・ブリュッセル)が運営する。旭硝子がロシア国内で運営する工場は、中部・ニジニーノブゴロドに続き2カ所目。

◎10月に露印が軍事演習、インド国内で実施へ(2005年9月16日、産経新聞)
 インタファクス通信によると、ロシア空挺(くうてい)部隊当局者は16日、ロシアとインドの合同軍事演習を10月10日から19日にインド国内で実施することを明らかにした。
 ロシアは8月に中国と大規模軍事演習を実施したばかり。中国とインドはロシアにとって武器の主要輸出国で、3国の軍事協力に米国が警戒を強めそうだ。
 当局者によると、演習にはロシア軍から120人以上が参加し、パラシュートの降下訓練などを行う。イリューシン76輸送機や装甲車両のほか、両国の海軍も参加する予定。(共同)

◎「大成功」のはず中ロ演習、実は死者8人(2005年9月9日、朝日新聞)
 鳴りもの入りで実施され、「大成功」を収めたはずの合同軍事演習で重大事故続発――ロシア紙コメルサントは8日、中国とロシアの初の本格的な合同軍事演習として先月、中国・山東省などで行われた「平和の使命2005」をめぐり、演習中の事故で8人が死亡していた、と報じた。
 同紙によると、死亡事故が起きたのは8月24日の黄海沖での上陸演習の時。中国軍の水陸両用軽戦車2台が沈没、兵士8人が死亡したという。
 戦車は古い50年代のものを改造し、大きな砲を乗せたため車体が重くなったのが原因らしい。悪天候もあり、ロシア軍の戦車も1台沈んだが、乗っていた兵士8人は何とか脱出したという。
 その翌日にあった空挺(くうてい)部隊の落下傘降下演習でも、中国軍の兵士20人以上が負傷。ロシア兵の1人はパラシュートが開かず、同僚につかまって降下し、惨事を免れたという。また、同紙は、演習のため中国へ向かう途中のロシアの駆逐艦から暗号解読兵1人がいなくなったが、軍事機密にかかわることから、軍内では通信兵の事故として処理された、と報じた。

◎線路爆破で脱線、42人負傷、チェチェン、テロと断定(2005年6月12日、産経新聞)
 ロシア独立記念日の12日、モスクワ南東約150キロ付近を走行中のチェチェン共和国首都グロズヌイ発モスクワ行きの旅客列車が爆発のため脱線した。鉄道当局によると、42人が負傷した。線路に爆発物を仕掛けた跡があり、連邦保安局はテロと断定。チェチェン独立派の犯行の可能性もある。
 列車は13両編成で、3両目から計5両が脱線した。350人以上が乗っていたが、駅に接近し、速度を落としていたため負傷者が比較的少なかった。
 線路に爆発で生じた直径1メートル、深さ50センチの穴が残り、付近で遠隔操作の装置なども見つかった。列車通過に合わせ起爆したとみられる。現場から急いで去った2人の男が目撃されており、当局が調べている。
 独立記念日は、旧ソ連時代の1990年6月12日に、ロシア共和国の第1回人民代議員大会が主権宣言を採択したことにちなみ制定された。独立派がこの日にテロを決行、ロシアからの分離と共和国の主権を主張したともみられる。
 グロズヌイとモスクワを結ぶ鉄道は独立紛争で長く不通だったが、ほぼ1年前に再開した。
 独立派は、3月に最高指導者マスハドフ元チェチェン共和国大統領を連邦保安局に殺害され、報復を宣言していた。また、同共和国では11月に親ロシア政権が主導する議会選挙が予定され、独立派が妨害工作を活発化させるとみられていた。(共同)

◎ロシア:爆破で列車脱線、15人以上負傷、テロで捜査(2005年6月12日、毎日新聞)
 インタファクス通信などによると、ロシア南部チェチェン共和国の首都グロズヌイ発モスクワ行きの旅客列車(乗客約300人)が12日午前7時10分(日本時間同日午後0時10分)ごろ、モスクワから約150キロ南で脱線し、子供2人を含む少なくとも15人が負傷した。ロシア連邦保安局(FSB)は、線路に仕掛けられた爆弾が爆発したとみている。チェチェン独立派武装勢力の犯行の可能性もあり、検察当局はテロ事件とみて捜査を開始した。
 FSB当局者がインタファクス通信に語ったところによると、事故現場の線路には直径約1メートル、深さ約50センチの穴ができ、爆弾に使われたとみられる電気コードが見つかったという。
 この日は、「ロシアの日」と呼ばれる休日で、プーチン大統領は科学などの分野で貢献した人々をクレムリンに招き、表彰式典を行った。モスクワ市内では、テロ警戒のため、街頭や空港、駅などに多数の警察官が配備されていた。
 モスクワ-グロズヌイ線は、90年代、チェチェン紛争の影響で運行停止状態だった。プーチン政権のチェチェン正常化の一貫として、昨年3月から定期運行を再開していた。

◎ロシア・ユコス:元社長、懲役9年判決 欧州人権裁判所に提訴も--モスクワ裁判所(2005年6月1日、毎日新聞)
 ロシア政府が事実上解体した同国石油大手ユコスの元社長で、脱税や横領などの罪に問われたミハイル・ホドルコフスキー被告(41)の判決公判が31日、モスクワの裁判所(地裁に相当)であり、同被告に懲役9年の実刑判決(求刑・懲役10年)を言い渡した。同被告の同僚で、脱税と横領などの罪で起訴されたプラトン・レベジェフ被告(45)に対しても、懲役9年の判決だった。約1200ページの判決文朗読は延べ12日間に及んだ。
 コレスニコワ裁判長は両被告に対する罪状7件のうち脱税、横領、詐欺など6件について有罪と認定した。判決言い渡しから10日以内に控訴できるが、支援弁護団は欧州人権裁判所(フランス・ストラスブール)に提訴することも検討中だ。
 判決文によると、ホドルコフスキー被告は90年代の民営化時代に、国営肥料企業を不当に安く買い、国有財産を横領。また、98~99年、国税当局に不正申告し最低200万ドルを脱税した。これに対し、両被告は無罪を主張している。
 ホドルコフスキー被告は03年10月に逮捕されてから、約580日の長期拘置が続いている。この間、国内石油企業第1位の座を競ったユコスは巨額の追徴課税により、分割・準国営化を余儀なくされる事態に陥った。
 ロシア最高検察庁は31日、今回の判決について「政治的背景はない」としたうえで、「今後、両被告に対し新たな起訴をする可能性がある」と強調した。

◎“露大統領の政敵”ユコス元社長に懲役9年(2005年5月31日、読売新聞)
 ロシアのプーチン政権が解体に追い込んだ石油大手ユコス社元社長のミハイル・ホドルコフスキー被告(41)らが脱税などに問われた裁判で、モスクワのメシャンスキー地区裁判所は31日、同被告に懲役9年の実刑判決を言い渡した。
 欧米各国は事件を「特定実業家の恣意的弾圧」と批判しており、今回の判決で、対露関係の部分的見直しにつながる可能性もある。
 判決は、同被告が<1>個人所得税約5453万ルーブル(約2億954万円)を脱税<2>民営化された肥料開発会社の株式を違法に取得<3>ユコスに属すべき資金約26億5000万ルーブル(約101億8326万円)を政商ウラジーミル・グシンスキー氏に違法に移転した――など、検察が起訴した11件のうち9件で有罪を認定した。弁護側は控訴する。
 同被告は逮捕前、推定資産約152億ドル(米フォーブス誌)で露最大の富豪だったが、野党勢力に肩入れして政権と対立。露捜査当局は2003年10月、同被告を逮捕するなどユコス社の強制捜査に着手した。同社はその後、約280億ドル(約3兆226億円)という巨額の追徴課税を命じられた上、資産を競売にかけられ解体された。現在は国営石油会社を通じて準国有化されている。

◎モスクワ大停電、チェチェン武装勢力が犯行声明(2005年5月28日、読売新聞)
 ロシア・チェチェン武装勢力の最高実力者、シャミル・バサエフ野戦司令官は27日、モスクワで大停電を引き起こしたとする犯行声明を出した。
 この停電は、モスクワ南西部の変電所で24日夜、火災が発生し、同市南部や周辺への電力供給が停止。地下鉄など公共交通機関や水供給が止まり、約200万人が影響を受けた。
 ビクトル・フリステンコ産業エネルギー相は、テロの可能性はないと発言していた。大停電の原因がテロだったとしたら、プーチン政権の面目は大きく失墜し、責任を問われる立場となる。

◎露軍「ペテンまがい」の募集、高給は空手形、兵士告発(2005年5月22日、読売新聞)
 「戦場勤務での高給」は空手形、兵器の部品購入は兵士の自腹。ロシア紙トルードは、好待遇の誘い文句につられ志願したチェチェン戦線の露軍精鋭部隊で、全く逆の非人間的待遇を受けた、と告発する兵士たちの証言を伝えた。
 事実なら、“ペテンまがい”の手法の志願兵集めが横行していることになる。
 告発者は、軍から「金持ちになって戦地から戻れるぞ」と勧誘され、同戦線の「第42親衛自動車化狙撃師団」に入ったものの、待遇の劣悪さに耐えかね、脱走した有給志願兵たち。
 同紙によると、志願の際の契約で定められた収入は「月給1万5000ルーブル(1ルーブルは約3.8円)」、「一時金2万ルーブル」と、ロシアとしてはまずまずのはずだったが、実際に手にしたのは月2000ルーブルのみだった。
 それどころか、多連装ロケット砲や軍用トラックの部品を自費で買わされ、上官に文句を言うと「戦闘任務に背いたと記録するぞ」と脅された。支給された野戦食のクッキーは虫がわき、イワシの缶詰は中身が腐っていたが、空腹に負け食べたという。
 除隊願が上官に握りつぶされ、集団脱走したが、逃走用の車代に3万ルーブル払ったほか、途中で親クレムリン派現地政権の民兵に見つかり、見逃し料を1万ルーブルも巻き上げられるなど、まさに泣きっ面にハチの告発内容だ。

◎ロシアからの資本逃避、一気に4倍増、露中央銀行調べ(2005年1月20日、産経新聞)
 昨年1年間のロシアから国外への資本逃避が、前年比4倍以上の78億ドル(約8000億円)に達したことが、ロシア中央銀行の統計で19日までに分かった。
 国際金融協会(IIF)は2004年に投資資金の流入が増加した国としてロシアも挙げているが、ロシアでは逆に「国内の複雑な政治状況のため、自国資本が海外に流出している」(金融専門家)との指摘が出ている。
 プーチン政権が石油大手ユコスを事実上国営化するまでのプロセスが不透明だったことなどから、市場の信頼が低下したとの見方が大勢だ。(共同)

◎核ミサイル搭載の露原潜で爆発事故、水兵1人死亡(2004年11月20日、読売新聞)
 ロシア民放テレビNTVやインターファクス通信などは19日夜、露太平洋艦隊所属の核ミサイルを搭載する戦略原子力潜水艦がカムチャツカ半島の基地に寄港中に、艦内で爆発事故が発生し、水兵1人が死亡したと伝えた。
 事故発生は今月14日で、核兵器や原子炉に損傷はなかったという。
 事故の詳細は明らかにされていないが、NTVは「魚雷の冷却剤タンクが爆発した」と伝え、インターファクス通信は「水のタンクにつながる圧力パイプが爆発した」としている。また、NTVは、この水兵が「同僚を守るため、身を挺した」とする同僚の証言を報じた。
 同艦隊報道官も19日、事故があり水兵1人が死亡したことを確認したが、潜水艦のタイプや事故原因など詳細についてはコメントを拒否した。

◎死者322人、半数は子供、ロシア最悪のテロに(2004年9月4日、産経新聞)
 特殊部隊が突入したロシア南部ベスランの学校人質事件で、ロシア最高検のフリジンスキー次席検事は4日、死者が322人に達し、約半数の155人が子供だと発表した。ロシアで起きたテロの中でも最悪の惨事となり、チェチェン独立派への強硬姿勢を貫いてきたプーチン大統領は厳しい立場に追い込まれそうだ。負傷者は子供259人を含む計704人。死傷者数はさらに増える可能性がある。
 プーチン大統領は4日未明、急きょ現地を訪問し、負傷者を見舞った。大統領は、テロリストの扇動に屈する者は「彼らの共犯者とみなす」と述べ、大型テロの連続で不安感を強める国民に向け、テロとの対決姿勢をあらためて強調した。
 現地対策本部は、チェチェン独立派とみられる犯人グループの27人を殺害、3人を拘束したとして、掃討完了を宣言。地元警察によると、強行突入の際に治安部隊側も10人以上が死亡、18人が負傷した。
 地元治安当局筋は4日、犯人側が1カ月半前の学校の改修工事の際、大量の武器を校舎内に隠していたことを明らかにした。テロが周到に準備された犯行である可能性が強まった。
 プーチン大統領は「武力行使は計画していなかった」と述べ、部隊の急襲は予期せぬ事態に対応した結果だったと強調。北オセチアの共和国国境を閉鎖し、逃走犯の捜索に全力を挙げるよう関係機関に指示した。
 一方、8月の旅客機同時爆破テロに始まった連続テロの一環として、チェチェン独立派が週末にモスクワで大規模テロを計画しているとの情報があり、治安当局は連邦軍計2万3000人を動員して異例の厳戒態勢を敷いた。(共同)

◎ロシア学校占拠、制圧 死者322人・病院搬送704人(2004年9月4日、朝日新聞)
 ロシア南部の北オセチア共和国で起きた学校占拠事件で、ロシア連邦軍は4日未明(日本時間4日早朝)、武装集団を制圧した。現地対策本部によると、死者は子供155人を含む322人に達し、約80人が体育館のがれきの下に残っているとみられ、最終的には約400人に上る公算があるという。病院に運ばれた負傷者は704人。チェチェン独立派によるとみられるテロとしては最悪の惨事になった。武装集団は27人が死亡、3人が逮捕されたが、数人が逃走中という。死亡した武装集団のうち10人はアラブ人で、国際テロ組織が連携したとみられる。
 内務省関係者の話として現地メディアは、爆発で崩れ落ちた体育館の屋根などの下には、約80人の遺体が残っていると伝えた。緊急事態省によると、病院収容の負傷者のうち子供は283人で、92人は重体という。
 人質の数についてプーチン・ロシア大統領のアスラハノフ顧問は銃撃戦が始まった直後、「約1200人で、ほとんどが子供だ」と現地で述べていた。ロシアでは99年秋、モスクワなどで起きた連続アパート爆破テロで計約300人が死亡したが、今回はそれを上回る惨事となった。
 殺害された武装集団27人のうち8人は学校敷地内、19人は周辺の住宅地で死んだ。逮捕された3人は一般人の服装で逃げようとした。国境を封鎖して逃亡中の数人を捜索している。AFP通信は武装集団の死者は32人と伝えている。
 アンドレーエフ・連邦保安局(FSB)北オセチア局長は武装集団にチェチェン人、イングーシ人のほか、アラブ人10人と黒人1人が含まれていたことを明らかにし、「事件は国際テロリストたちによって計画された」と話した。
 プーチン大統領は同日早朝、現地入りした。治安当局に犯人捜索に全力を挙げるよう指示し、「この事件のような挑発に屈する者はテロの共犯者とみなす」と、テロとの対決姿勢を強調。北オセチア共和国のザソホフ大統領には、「すべてのロシア人が深く悲しんでいる」と哀悼の意を表明した。

◎死者250人に、武装集団27人死亡、4人が逃走(2004年9月4日、朝日新聞)
 ロシア南部の北オセチア共和国で起きた学校占拠事件で、ロシア連邦軍は4日未明(日本時間4日早朝)、学校校舎を戦車で砲撃するなどして、立てこもっていた武装集団を完全制圧した。インタファクス通信は現地対策本部の話として、死者が約250人に上ったと伝えた。同本部は武装集団のうち27人が死亡、3人を逮捕したとしているが、4人が逃走した可能性がある。死亡したうち10人はアラブ人で、チェチェン独立を求める勢力に国際テロ組織が連携したと見ている。ロシアのプーチン大統領は同日早朝、現地を訪問した。
 「事件が国際テロリストたちによって計画されたことは明らかだ」
 現地ラジオによると、連邦保安局(FSB)のアンドレーエフ北オセチア局長は、武装集団にチェチェン人、イングーシ人のほか、アラブ人10人と黒人1人が含まれていたことについて見解を示した。
 総勢約40人との情報もあるが、正確な人数は不明。治安部隊は周辺の捜索を続けている。
 武装集団は銃のほかロケット弾や手投げ弾で武装し、大量の爆薬を持ち込んでいた。「占拠直後、建物の壁に爆薬をとりつけていた」と人質は証言している。学校敷地に多数の地雷も敷設していた。
 緊急事態省によると、704人が負傷して病院に運ばれた。インタファクス通信によると、負傷者のうち283人が子供で、そのうち92人は重体。ベスランなどの3病院に収容され、一部はモスクワに搬送された。
 人質の数について現地対策本部は当初、約350人としていたが、プーチン大統領のアスラハノフ顧問は銃撃戦が始まった直後、「人質は約1200人で、ほとんどが子供だ」と現地で述べた。

◎背後に劇場事件と同じ最強硬派司令官、ロシア学校占拠(2004年9月4日、朝日新聞)
 ロシア・北オセチア共和国の学校占拠事件で脱出した人質の証言などから、チェチェン共和国の独立を要求する武装勢力の中でも最強硬派のバサエフ野戦司令官が背後で事件を操っていた可能性が高まってきた。
 3日付のコメルサント紙によれば、実行犯のリーダー格は3人。マガス、ファントマス、アブドラとそれぞれ名乗ったという。ロシア治安当局によれば、マガスは6月にイングーシ共和国の内務省を襲撃した武装集団の主犯。この襲撃事件はバサエフ派が関与したことがわかっている。今回の事件でもマガスが主犯格だったと見られる。
 ファントマスはバサエフ司令官のボディーガード。アブドラもバサエフ派の幹部という。犯人の中にはアラビア語を話す者もいたという。実行犯らは自らを「リアドス・サリヒン」と明らかにした。これはバサエフ司令官の自爆テロ実行部隊と同じ名前だ。国際テロ組織アルカイダとも関係があるとされ、米政府がテロ組織に指定している。
 バサエフ派は02年10月のモスクワの劇場占拠事件や03年7月の野外コンサート会場での自爆テロ、今年8月の旅客機爆破など最近の凶悪なテロ事件のほとんどに関与したと見られている。

◎露の学校占拠、児童ら400人人質、銃撃戦で9人死亡(2004年9月2日、読売新聞)
 ロシア南部・北オセチヤ共和国東部のベスランで1日午前9時(日本時間同日午後2時)ごろ、17人の武装集団が始業式直後の中等学校を襲撃し、児童・生徒や父母ら400人近くを人質にとって立てこもった。
 犯行グループは、隣接するイングーシ共和国で今年6月に拘束された武装勢力の釈放やチェチェン共和国からの露軍撤退を求めており、チェチェン独立を求める武装勢力による犯行の可能性が強い。
 北オセチヤ内務省報道官によると、自動小銃などで武装した犯人グループには女性も含まれ、多くは爆弾付きのベルトを着用。「(グループの仲間が)1人殺されるごとに、人質50人を殺す」と脅している。
 タス通信によると、現地当局の対策本部が生徒の父母や親類に確認した結果、人質のうち児童・生徒は132人であることが分かった。人質の総数は不明だが、インターファクス通信が北オセチヤ内相の証言として報じたところによると、全体で「300―400人」に上る模様だ。この中等学校には、日本の小、中、高校生に当たる年齢の児童・生徒約900人が通学しており、教員数は約60人という。
 犯人たちは、人質を体育館に移動させ、付近に爆発物を敷設している模様。イスラム法学者が交渉のため占拠中の校舎に入ったが、犯人側は話し合いを拒否、北オセチヤ、イングーシ両共和国大統領との直接交渉を求めている。
 人質のうち約50人は自力で脱出したほか、犯人側が占拠から数時間後に児童ら15人を解放したという情報もある。
 犯人たちはトラックで学校に乗り付け、校舎突入の際、警察との間で銃撃戦になった。タス通信によると、父母ら8人が死亡、武装勢力側も1人が死亡した。
 独立を求めるチェチェンの武装勢力の最高指導者アスラン・マスハドフ元共和国大統領は、モスクワ・ラジオに対し、事件への関与を否定した。地元メディアは、武装勢力の別の指導者シャミル・バサエフ野戦司令官に従うイングーシ人部隊による犯行と報じた。
 ベスランは、首都ウラジカフカスの北方約30キロ・メートルにある都市。イングーシ共和国では、今年6月、武装勢力が共和国内務省ビルなどを襲撃、90人以上が死亡する事件が起きている。

◎武装集団が学校占拠、人質8人死亡、ロシア北オセチア(2004年9月2日、朝日新聞)
 ロシア南部・北オセチア共和国のベスランで1日午前9時(日本時間午後2時)ごろ、市中心部の学校に武装集団が押し入り、立てこもった。新学期の初日で生徒や親、教師を含め計約300~400人が人質になった。治安部隊との間で銃撃戦が発生したほか、武装勢力側は学校を爆破するとの脅しも続けている。8月の旅客機爆破テロなどに続く、チェチェン独立派武装勢力がからんだ連続大型テロの可能性が強い。
 現地からの報道によると、散発的に起きた銃撃戦で少なくとも人質の8人が死亡、11人が負傷した。ロシアは同日、国連安全保障理事会に対し、テロ対策を協議する緊急会議の開催を求めた。
 プーチン大統領は仏独首脳との会談で滞在したロシア南部のソチからの帰路、機中で北オセチアのザソホフ大統領と協議。イワノフ・ロシア国防相は「テロリストからの際限のない宣戦布告である」と非難し、武装勢力との交渉による妥協はしないことを強調した。
 現場は「ベスラン第1学校」で、7~17歳の生徒が通う普通校(生徒数895人)。犯人グループは男女合わせて17人ほどで、黒い覆面をして銃や爆弾などで武装している。腰に自爆用の爆弾を巻き付けたベルトをしている女性もいるという。
 犯人は生徒らを体育館に集め、一部は窓際に並べて立たせており、当局が強行突入して犯人を1人射殺すれば、生徒50人を殺すと脅している。同日夕、学校内部で爆発音がしたとの情報もある。
 当局は1日夜、犯行グループと人質解放の交渉を始めたが、背後組織は不明。立てこもった直後に一部の人質は解放されたが、イタル・タス通信によると、現在の300~400人の人質のうち132人は生徒。これまでの死傷者の中に生徒はいないようだという。
 グループは要求の中で、チェチェンからのロシア軍の即時撤退とともに、6月に隣接するイングーシ共和国の内務省ビルなどをチェチェン独立派勢力が襲撃した事件に触れ、逮捕された仲間の即時釈放を求めている。さらに解放した人質の一人に持たせた伝言では、北オセチア共和国とイングーシ共和国の両大統領らとの交渉を要求しているという。
 チェチェンに隣接する北オセチアには、チェチェン掃討作戦のロシア軍司令部がおかれている。昨年8月には司令部内の軍病院にトラックが突っ込み、約50人が死亡する自爆テロがあった。
 ロシアでは8月29日のチェチェン大統領選挙直前の24日に2機の旅客機がテロで墜落、31日はモスクワ市内の地下鉄駅近くで自爆テロが起き、社会不安が急激に広がっている。今回の学校占拠事件は02年10月にモスクワで起きたチェチェン武装勢力による劇場占拠事件を想起させ、身近な市民生活に恐怖を与えることで政権の動揺をねらったものと見られる。

◎モスクワ・テロ、市民に「無差別」の恐怖(2004年9月1日、朝日新聞)
 帰宅を急ぐ通勤客らで混雑するモスクワ市内の地下鉄駅近くで31日に起きた自爆テロと見られる事件は、一般市民が日常的に無差別テロの恐怖にさらされているロシアの現実を浮き彫りにした。今回の事件は、プーチン政権に深刻な打撃を与える可能性がある。
 2機の旅客機を墜落させた同時テロで犯行声明を出した「イスラムボウリ旅団」が、再び犯行声明を出した。90人の死者を出した旅客機テロからわずか1週間後、テロに対する厳重な警戒が敷かれていた首都で再び市民を犠牲にする事件を許してしまったことで、プーチン政権は治安体制の甘さを露呈してしまった。
 8月29日のチェチェン大統領選挙で思惑通り親連邦派政権を誕生させたプーチン大統領だが、選挙をはさんだ1週間で合計100人近くが犠牲になるという惨事を防げなかった。政治責任を問う声が大きくなることも考えられ、プーチン大統領の指導力にかげりが出る可能性も否定できない。
 ロシア国民にとって、見えない敵と戦う悪夢の連続には耐え難いものがある。昨年7月はモスクワ郊外の野外ロックコンサート会場で、チェチェン人と見られる女性2人の自爆テロで子供を含む多数の死傷者がでた。その後もクレムリン近くの路上や地下鉄車内で自爆テロが相次ぎ、市民の恐怖は頂点に達している。
 プーチン大統領はテロが起きるたびに、チェチェン独立を求める武装勢力による犯行として対決姿勢を強めてきた。それがロシア国民の共感を呼び、高い支持率に結びついてもいた。
 だがロシア国民の多くはいま、政権のそういう強硬姿勢に疑問を抱き始めているように見える。とくに旅客機テロと今回の事件は、これまでモスクワなどで自爆テロを繰り返してきたチェチェン武装勢力とは異なる組織によるものと見られ、しかも組織が今後も犯行を続けると予告しているだけに、一般市民の不安は深い。
 プーチン政権はテロから国民を守る対策の強化と同時に、チェチェン政策の練り直しも視野に入れた難しいカジ取りを迫られている。

◎モスクワ地下鉄駅付近で車爆発、10人死亡33人けが(2004年年9月1日、読売新聞)
 【モスクワ=五十嵐弘一】31日午後8時17分(日本時間1日午前1時17分)過ぎ、モスクワの地下鉄リガ駅付近で、駐車中の車が爆発。ロシア連邦保安局によると、通行人ら10人が死亡、少なくとも33人が負傷した。
 爆発の衝撃波で駅ビルの窓ガラスが割れた。
 モスクワ市のユーリー・ルシコフ市長は「女性による自爆テロだ」と語った。
 ロシア南部のチェチェン共和国では8月29日、親連邦政府のアル・アルハノフ共和国内相が大統領に当選したばかり。ロシアからの分離独立を求めるイスラム武装勢力は選挙結果を認めないうえ、最近、連邦軍・治安部隊への攻勢を強化している。旅客機連続墜落にも同勢力関与の疑いが浮上しており、今回の爆破テロも同勢力によるものとの見方が強い。

◎「国に10億ドル超の損害」ユコス社公判で検察(2004年7月16日、読売新聞)
 ロシア石油大手ユコス社のホドルコフスキー前社長らに対する脱税・詐欺事件の公判が15日、モスクワのメシャンスキー地区裁判所で開かれた。検察側は冒頭陳述で、1990年代の民営化で、同氏らが国家資産を不当に安く取得し、「国家に10億ドル以上の損害を与えた」と指摘した。同氏らは無罪を主張した。
 検察官は冒頭陳述の中で、同氏を「国家の資産を盗むことを目的とした、犯罪集団の親分」と強く非難。民営化の過程で、側近のプラトン・レベジェフ氏らとともに、国家資産を違法に安く入手した罪を次々に究明した。
 ホドルコフスキー氏は、化学肥料会社アパティトが1994年に民営化される際、不当に安く取得したとして、脱税、詐欺などで起訴されている。
 ロシアにおける国有企業の民営化は、全国民に民営化バウチャーを配布するなどの形で1990年代に断行された。だが、この過程でホドルコフスキー氏ら高級官僚や企業長など特権的立場にあった一部が、バウチャーを安く買い占めるなど違法な手段も含めて強引な企業買収を進めた。
 検察側の冒頭陳述は、司法当局が1990年代の民営化時代にさかのぼって刑事訴追する意思を示したもの。ホドルコフスキー氏だけでなく、現在のロシア経済を牛耳っている政商(「オリガルヒ」と通称)に対しても、厳しい警告になる。

・政府、2子会社の株凍結
 また、露法務省は14日、ユコス社の原油生産の75%を占める子会社2社、ユガンスクネフチガス(西シベリアのハンティ・マンシ自治管区)とサマラネフチガス(沿ボルガ地域・サマラ州)の株式登録簿を凍結した。ユコスが抱える2000年分994億ルーブル(約3740億円)の追徴課税回収を目指す措置の一環で、両社は株式の名義変更が不可能となり、株売買が実質的に凍結されることになった。
 プーチン政権が、ユコス本社だけでなく、同社の中核である石油生産活動全体を視野に入れ、圧力を一層強化する姿勢を鮮明にしたと言え、ユコスは解体一歩手前まで追い込まれつつある。
 プーチン政権は、ユコスの将来について、〈1〉筆頭株主で前社長のホドルコフスキー氏を完全に排除、準国有化する〈2〉ユコス資産を分割、ルクオイルやロスネフチなど、政権に近い同業他社に売却する、などを検討しているとされる。

◎ウラジオストクで爆発、市長選候補が負傷(2004年7月15日、読売新聞)
 タス通信によると、ロシア極東・ウラジオストクで10日未明、同市長選に立候補しているビクトル・チェレプコフ連邦下院議員(62)の選挙事務所前で爆発があり、同議員が負傷、病院に運ばれた。
 側近によると、同氏が帰宅するため同事務所を出るためドアを開けようとしたところ、爆発が起きたという。警察などが殺人未遂の疑いで捜査を始めた。
 チェレプコフ議員はウラジオストクの前市長。7月4日投票の市長選第1回投票では、2位となり、1位となったウラジーミル・ニコラエフ沿海地方下院議員との間で18日に決選投票が行われることになっている。チェレプコフ議員側近は、議員が最近、市長選への立候補を取り下げるよう、「脅迫を受けていた」と語っている。

◎ロシアで石油タンク爆発、爆破テロの可能性も(2004年6月6日、産経新聞)
 インタファクス通信によると、ロシア南部スタブロポリ地方のネフチェクムスクで5日午前3時(日本時間同8時)ごろ、石油タンクが爆発、炎上した。周辺に石油が漏れ出すなどの被害が出たが、約4時間後に鎮火し、けが人などはなかった。
 非常事態省によると、別の石油タンクに時限爆破装置が仕掛けられているのが見つかった。同地方はチェチェン共和国に隣接しており、チェチェン独立派武装勢力によるテロの可能性がある。
 爆発したタンクは容積5000トンで、3分の1程度の石油が貯蔵されていたという。
 ロシアでは、4日にも中部サマラの市場で、爆発物によるとみられる爆発が発生、多数の死傷者が出た。(共同)

◎ロシア中部の市場で爆発、9人死亡(2004年6月4日、産経新聞)
 タス通信によると、ロシア中部サマラの衣料品屋外市場で4日正午(日本時間同午後5時)ごろ、大きな爆発があり、警察などによると少なくとも9人が死亡、38人が負傷し病院で手当てを受けた。
 地元検察当局者は、市場の屋台の1つに導火線が付いた約1キロの爆発物が仕掛けられていたと述べ、テロ行為や殺人の容疑で捜査していることを明らかにした。
 爆発で約10軒の屋台が倒壊した。市場には約300人がおり、一時パニック状態になった。(共同)

◎アパート爆発で30人負傷・モスクワ(2004年4月19日、日本経済新聞)
 【モスクワ19日共同】インタファクス通信によると、モスクワ北東部の九階建てアパートの地階で18日夜、爆発が起き、住民約30人が負傷した。消防当局によると、うち子供3人を含む7人が入院した。
 ロイター通信によると、モスクワ市警察はテロの可能性を否定。ガス漏れが原因とみて調べている。
 アパートにはベトナム人の労働者が多く居住しており、タス通信は、けが人はすべてベトナム人だと報じた。

◎モスクワでアパート爆発、30人負傷、ガス漏れが原因?(2004年4月19日、産経新聞)
 インタファクス通信によると、モスクワ北東部の9階建てアパートの地階で18日夜、爆発が起き、住民約30人が負傷した。消防当局によると、うち子供3人を含む7人が入院した。
 ロイター通信によると、モスクワ市警察はテロの可能性を否定。ガス漏れが原因とみて調べている。
 アパートにはベトナム人の労働者が多く居住しており、タス通信は、けが人はすべてベトナム人だと報じた。(共同)

◎西シベリアの炭坑で爆発、22人が死亡(2004年4月11日、読売新聞)
 ロシアの西シベリア・ケメロボ州の炭坑で10日早朝(現地時間)、メタン・ガスによるとみられる爆発があり、少なくとも作業員22人の死亡が確認された。インターファクス通信が伝えた。
 崩れた坑道内にはまだ25人が閉じこめられており、死者数がさらに増える恐れがある。(モスクワ支局)

◎日ロサケ・マス交渉、漁獲可能量3660トンで合意(2004年4月1日、朝日新聞)
 農林水産省は1日、日本の200カイリ水域内での今年のロシア系サケ・マス漁の操業条件を決める日ロ漁業合同委員会が、漁獲可能量を昨年より440トン少ない3660トンとすることで合意した、と発表した。日本側がロシア側に支払う漁業協力費は4億8800万円から5億4800万円の範囲で、漁獲実績に応じて決める。
 合意した今年の漁獲可能量は、昨年の漁獲実績とほぼ同じ水準。漁獲可能量の減少に伴い、支払う協力費は昨年より引き下げられた。

◎住宅爆発の死者50人に、ロシア(2004年3月18日、産経新聞)
 ロシア非常事態省によると、同国北部アルハンゲリスク市の警察住宅で16日に起きた爆発の死者は17日までに、計50人に達した。
 インタファクス通信によると、崩壊した住宅のがれきの下から同日、数体の遺体が見つかったほか、収容先の病院で数人が死亡した。(共同)

◎住宅爆発の死者44人に、ロシア(2004年3月17日、産経新聞)
 ロシア非常事態省によると、同国北部アルハンゲリスク市の警察住宅で16日に起きた爆発の死者は17日までに、計44人に達した。
 インタファクス通信によると、崩壊した住宅のがれきの下から同日、数体の遺体が見つかったほか、収容先の病院で数人が死亡した。(共同)

◎ガス漏れ?ロシアの集合住宅で爆発15人死亡、テロの可能性も(2004年3月16日、産経新聞)
 ロシア北部アルハンゲリスク市の9階建て集合住宅で16日午前3時(日本時間午前9時)ごろ、大きな爆発があり、建物の一角がほぼ全壊、ロシア非常事態省によると15人が死亡した。救助された24人のうち15人が入院した。
 爆発原因について市長は、ガス漏れの可能性が高いと述べたが、爆発物が仕掛けられた可能性も残されているとした。連邦検察当局者は、業務上過失致死などの容疑で捜査を始めたことを明らかにしたが「テロの可能性も排除していない」と述べた。
 住宅には約70人が居住。がれきの下敷きになった人々の救出作業が続いており、死者はさらに増える可能性がある。インタファクス通信によると、住宅は治安維持などを担当する内務省の所有で、同省職員らが住んでいた。
 現場はアルハンゲリスク市の中心部。サンクトペテルブルクなど近郊都市から救助作業員が投入され、クレーンなどを使った救助作業が長時間続けられた。(共同)

◎ロシアで集合住宅が爆発、15人死亡(2004年3月16日、日本経済新聞)
 【モスクワ16日共同】ロシア北部アルハンゲリスク市の9階建て集合住宅で16日午前3時(日本時間午前9時)ごろ、大きな爆発があり、建物の一角がほぼ全壊、ロシア非常事態省によると15人が死亡した。救助された24人のうち15人が入院した。
 爆発原因について市長は、ガス漏れの可能性が高いと述べたが、爆発物が仕掛けられた可能性も残されているとした。連邦検察当局者は、業務上過失致死などの容疑で捜査を始めたことを明らかにしたが「テロの可能性も排除していない」と述べた。
 住宅には約70人が居住。がれきの下敷きになった人々の救出作業が続いており、死者はさらに増える可能性がある。インタファクス通信によると、住宅は治安維持などを担当する内務省の所有で、同省職員らが住んでいた。
 現場はアルハンゲリスク市の中心部。サンクトペテルブルクなど近郊都市から救助作業員が投入され、クレーンなどを使った救助作業が長時間続けられた。

◎ロシア:集合住宅で爆発、15人死亡、北部アルハンゲリスク市(2004年3月16日、毎日新聞)
 ロシア北部アルハンゲリスク市の9階建て集合住宅で16日午前3時(日本時間午前9時)ごろ、大きな爆発があり、建物の一角がほぼ全壊、ロシア非常事態省によると15人が死亡した。救助された24人のうち15人が入院した。
 爆発原因について市長は、ガス漏れの可能性が高いと述べたが、爆発物が仕掛けられた可能性も残されているとした。連邦検察当局者は、業務上過失致死などの容疑で捜査を始めたことを明らかにしたが「テロの可能性も排除していない」と述べた。
 住宅には約70人が居住。がれきの下敷きになった人々の救出作業が続いており、死者はさらに増える可能性がある。インタファクス通信によると、住宅は治安維持などを担当する内務省の所有で、同省職員らが住んでいた。(モスクワ共同)

◎ロシア北部で警察アパート爆発、15人死亡、負傷者多数(2004年3月16日、朝日新聞)
 ロシア北部のアルハンゲリスクで、16日午前3時ごろ、9階建てアパートで爆発が起き、建物が崩壊した。緊急事態省の調べでは、これまでに15人が死亡、20人が負傷した。約40人が行方不明との情報もある。当局はガス爆発とテロの両面で捜査している。アパートは警察住宅だった。

◎プーチン露大統領が勝利宣言、大差で再選(2004年3月15日、読売新聞)
 【モスクワ=五十嵐弘一】任期満了に伴うロシア大統領選が14日行われ、ウラジーミル・プーチン大統領(51)が約70%の圧倒的得票率で再選を決めた。投票率は6割を超え、投票成立に必要な50%を大きく上回った。
 ロシア中央選挙管理委員会のモスクワ時間15日午前2時(日本時間同日午前8時)現在の集計(開票率69.29%)によると、プーチン大統領の得票率は、70.2%で、14.6%の共産党公認のニコライ・ハリトノフ氏(55)ら他の5候補を大きく引き離した。
 プーチン大統領は、同日午前1時(日本時間同午前7時)過ぎ、早々に勝利宣言。大統領は、「我が国民の民主的成果はすべて保証されることを約束する。我々は複数政党制を強化し、メディアの自由を維持するため全力を挙げる」と述べ、内外から「独裁的手法」が批判されることを意識して、2期目の政権運営で民主的価値観、報道の自由を尊重すると語った。
 第1期プーチン政権で、経済は38%成長し、2003年12月の下院選では、大統領与党「統一ロシア」が単独で3分の2を占め圧勝。今回の高い得票率で、大統領は政治基盤を一層盤石とし、選挙直前に発足させたフラトコフ新内閣に、当面の課題、行財政改革を強力に推進させる構えだ。
 政権が最も懸念していた投票率は15日午前1時までの集計で61.48%となり、2000年の前回大統領選(68.74%)は下回ったものの、投票成立に必要な50%を大きく上回った。

◎プーチン氏圧勝、再選 露大統領選挙(2004年3月15日、産経新聞)
 任期満了に伴うロシア大統領選挙が14日行われ、15日未明(日本時間同日朝)までの開票の結果、現職のウラジーミル・プーチン大統領(51)が共産党のハリトノフ下院議員ら他の5候補に大差をつけて再選を決めた。国民は「大国の復活」を掲げて政治的安定と経済成長を実現したプーチン政権4年間の実績を評価、強い指導力による「上からの改革」継続に期待を託した。
 中央選管によると、開票率59%の段階でプーチン大統領の得票率は当選に必要な50%を上回る69.57%で、2位のハリトノフ候補の14.84%を大きく引き離した。
 プーチン大統領は15日未明、記者会見し「結果に満足している。私を支持してくれた有権者に感謝する」と述べ、勝利宣言した。
 左派政党連合「祖国」のグラジエフ下院議員、日系女性で改革派のハカマダ元下院議員の得票は3~4%にとどまっている。暫定集計による投票率は64.27%で、4年前の前回選挙の68.74%を下回った。
 2期目のプーチン政権は、世界貿易機関(WTO)加盟推進など国際経済への統合を進めることで好調な経済を持続させ、国内総生産(GDP)の増大や国民の生活水準向上を目指す。
 しかし経済の構造改革、汚職対策、軍改革のほか、チェチェン共和国独立派のテロ封じ込めなど課題は山積。再選を見越して国家機構を抜本再編、大統領権力を強化して2期目に臨むプーチン大統領の手腕が問われる。
 一方、秩序を最優先する強権的政治手法や大統領への極度の権力集中に対しては、野党や欧米諸国から懸念の声が上がっており、民主主義とのバランスをどう取っていくかも課題となる。

 ソ連崩壊の混乱の中で、旧ソ連国家保安委員会(KGB)から政治家に転身。1期目の4年間で国民に「救世主」のイメージを鮮明に植えつけた。大統領陣営の政治学者、マルコフ氏は「ロシアはプーチンという男を得て幸運だ」と賛辞を送る。
 国営テレビを駆使して徹底したイメージ政治を展開。毎週土曜日には、閣僚をクレムリンに集めて報告を受ける映像が流れ、休日でも働く勤勉で規律を重視する人物像が国民の間に浸透した。
 背広とネクタイは黒や濃紺が基調。笑みを見せることは少ない。柔道、スキーの名手で、流ちょうなドイツ語を話す。地味で厳格な印象が「クレムリンのドイツ人」との評を生んだ。
 役所には大統領の写真や肖像画が目立つ。「大統領は国旗や国章のように国家の象徴。適度な範囲なら結構だ」と個人崇拝には寛容で、独裁色がさらに強まりそうだ。
 政治スタイルは密室性が強い。数人の側近しか重要決定に関与させず、最後は1人で決断を下す。政権周辺から漏れる情報は極端に減り、メディアは精彩を失った。
 大統領選挙直前のカシヤノフ前首相解任、フラトコフ新首相の指名も、情報漏れが一切ないまま突然発表され、政権内部の人間さえ驚かせた。
 政敵には冷酷だ。野党を支援した石油王、ホドルコフスキー氏は仮釈放も認められず昨年10月から獄中にある。
 元スチュワーデスのリュドミラ夫人との間に2人の娘がいる。(共同)

・ウラジーミル・プーチン氏
 1952年10月サンクトぺテルブルク(旧レニングラード)生まれ。レニングラード大法学部卒。75-90年旧ソ連国家保安委員会(KGB)対外情報部門に勤務、長年旧東ドイツで活動。サンクトぺテルブルク第1副市長などを経て、96年大統領府総務局副局長。98年5月大統領府第1副長官、同7月連邦保安局長官。99年3月安全保障会議書記を兼任。同8月首相就任、同12月エリツィン大統領辞任に伴い大統領代行を兼任。2000年3月の大統領選で当選、5月大統領に就任。(共同)

・ロシア大統領
 初代エリツィン大統領の下で1993年末に強大な大統領権限を盛り込んだ現憲法が成立。大統領は国家元首として外交を統括、軍最高司令官として国防も指揮するほか、戒厳令と非常事態を導入できる。首相の任命と首相以下全閣僚の解任権を持つ。下院の解散や国民投票の実施を決定するほか、政策実施のため大統領令を公布する。プーチン大統領は2000年に地方首長の解任権も獲得。昨年末の下院選で与党が憲法改正も可能な3分の2以上の議席を獲得。大統領の権力基盤は著しく強化された。(共同)

◎プーチン大統領が再選、ロシア、強い指導力に圧倒的支持(2004年3月15日、朝日新聞)
 任期満了に伴うロシア大統領選挙は14日、投開票され、ウラジーミル・プーチン大統領(51)が再選された。1期目の4年間で、前政権時代に混乱した内政を立て直し、高い経済成長を実現した手腕が評価された。昨年末の下院選で与党が絶対多数を占めたのに続き、盤石の支持を固めた大統領は「強いロシア」を掲げて改革路線を継続する。一方、強権色を強める側近派閥に権力の集中が進めば、民主化に逆行する懸念がある。
 中央選挙管理委員会によると、モスクワ時間15日午前4時(日本時間同日午前10時)現在、開票率88.4%で、プーチン大統領は当選に必要な過半数を大きく上回る70.9%の得票を固めた。投票率は約61%。
 候補者は6人だが、共産党公認のニコライ・ハリトノフ氏(14.0%)やセルゲイ・グラジェフ氏(4.1%)、イリーナ・ハカマダ氏(3.8%)らは大差をつけられた。
 プーチン大統領は同日未明、記者会見し、「選挙の結果に満足している。次の4年間もこれまで同様に全力を尽くす」と述べ、勝利宣言をした。
 1期目を通じ、毎年7%前後の高い経済成長を実現し、対テロの枠組みやG8への完全参加で国際的な存在感を高めた指導力への評価が、プーチン大統領のカリスマ的な強さを支えた。また、旧KGB(旧ソ連国家保安委員会)や内務・国防当局出身の側近派閥が新興財閥を摘発し、改革路線を疑問視した不満層を吸収したことも大きい。
 プーチン大統領は選挙前に早々とフラトコフ新内閣を組閣し、2期目の改革断行に強い意欲を示した。世界貿易機関(WTO)加盟やGDP倍増計画に向けた経済改革の加速、省庁改革による行政の効率化が課題になる。
 さらに、チェチェン独立紛争を力で封じた反動で続発するテロ対策も求められる。国際社会から批判を受ける言論統制や司法手続きの不備、チェチェン難民の人権抑圧にも改善が迫られる。
 有力者が立候補を見送った野党勢力には選挙戦を通じて、無力感が漂った。民主改革派のヤブロコと右派連合が共産党の一部と共同し、「選挙ボイコット」を訴えたが、国民の共感は得られなかった。政党再編などで健全な野党勢力の立て直しができるかが、ロシアの民主化の行方を占ううえで重要になる。

◎露大統領選:プーチン氏圧勝で再選(2004年3月15日、毎日新聞)
 任期満了に伴うロシア大統領選挙が14日行われ、15日未明(日本時間同日朝)までの開票の結果、現職のウラジーミル・プーチン大統領(51)が共産党のハリトノフ下院議員ら他の5候補に大差をつけて再選を決めた。国民は「大国の復活」を掲げて政治的安定と経済成長を実現したプーチン政権四年間の実績を評価、強い指導力による「上からの改革」継続に期待を託した。
 中央選管によると、開票率59%の段階でプーチン大統領の得票率は当選に必要な50%を上回る69.57%で、2位のハリトノフ候補の14.84%を大きく引き離した。
 プーチン大統領は15日未明、記者会見し「結果に満足している。私を支持してくれた有権者に感謝する」と述べ、勝利宣言した。
 左派政党連合「祖国」のグラジエフ下院議員、日系女性で改革派のハカマダ元下院議員の得票は3~4%にとどまっている。暫定集計による投票率は64.27%で、4年前の前回選挙の68.74%を下回った。
 2期目のプーチン政権は、世界貿易機関(WTO)加盟推進など国際経済への統合を進めることで好調な経済を持続させ、国内総生産(GDP)の増大や国民の生活水準向上を目指す。
 しかし経済の構造改革、汚職対策、軍改革のほか、チェチェン共和国独立派のテロ封じ込めなど課題は山積。再選を見越して国家機構を抜本再編、大統領権力を強化して2期目に臨むプーチン大統領の手腕が問われる。
 一方、秩序を最優先する強権的政治手法や大統領への極度の権力集中に対しては、野党や欧米諸国から懸念の声が上がっており、民主主義とのバランスをどう取っていくかも課題となる。(モスクワ共同)

◎モスクワ中心部で大規模火災、消防士2人死亡(2004年3月15日、朝日新聞)
 モスクワ中心部のクレムリンの隣にあるマネージ広場の中央展示ホールで14日夜、大規模な火災が発生した。AFP通信によると、屋根が焼け落ちた際に消火活動をしていた消防士2人が死亡した。タス通信によると、火災は総面積約6500平方メートルに達する勢いで炎上中。隣接するモスクワ大学図書館の窓を損壊するなど、被害が広がっている。ロシア連邦非常事態省によると、電気系統のショートが原因らしい。
 中央展示ホールは1812年に建設された由緒ある歴史的構造物で、士官らの馬術練習などに使われた。旧ソ連以降は展示場になっていた。

◎ロシア南部チェチェンで爆発(2004年3月14日、日本経済新聞)
 【グロズヌイ(ロシアチェチェン共和国)14日共同】ロシア南部チェチェン共和国で14日、大統領選挙の投票所に近い2カ所で爆発があった。負傷者はいないもよう。

◎露が新型ミサイル、大統領が導入公約、軍事重視打ち出す(2004年3月9日、日本経済新聞)
 【モスクワ=内藤泰朗】ロシアのプーチン大統領は、米国のミサイル防衛(MD)に対抗できる核搭載可能な新型ミサイルの導入を公約した。また、フラトコフ新首相は、下院で国防関連への支出を今後さらに増大させる方針を示すなど、プーチン政権はかつての米ソ軍拡競争を思い起こさせる軍事重視路線を打ち出した。
 プーチン大統領は、2月中旬にロシア軍が行った大規模演習で、新型核ミサイルの実験が成功したことを明らかにし、このミサイルを近い将来、導入すると述べた。
 ロシアの有力日刊紙イズベスチヤによると、大統領が指摘した「新型ミサイル」は、超音速で高高度を飛ぶX90ミサイル、ないしX101ミサイルを指す。X90型は北大西洋条約機構(NATO)で「AS19」、または「KOALA」と呼ばれ、ソ連時代に研究に着手したが、中止されていた。
 これらのミサイルは多弾頭で、当初明らかにされていた射程は「3000キロ」。高高度を弾道ミサイルとは異なる複雑な軌道を描き超音速で飛行するため、いかなるミサイル防衛網をもかいくぐり「敵国」を攻撃できるとしている。先月の試射では、ロシア西部のプレセツクから発射され、約7000キロ離れたカムチャツカ半島に着弾したと同紙は伝え、飛距離の向上を示した。
 ロシア海軍は先月中旬の演習で、3回にわたり潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射に失敗。大統領はこの問題をきわめて重視し、原因を徹底究明して新たにミサイル発射演習を行うよう国防当局に命じた。大統領自身が参加するという。
 一方、フラトコフ新首相は、下院で記者団に「国防能力の向上が新政府の重要な課題の1つであり、それは、技術水準の進歩にかかっている」と述べ、装備から軍人の待遇改善まで含めて「軍への支出を増大させる」と言明した。具体的な支出の増大額については語らなかったものの、2004年の兵器などの軍調達費は、1500億ルーブル(約5700億円)と前年比20%増加したことをあげ、2015年までの中期的な兵器調達計画を策定中であることを明らかにした。
 プーチン政権としては、14日の大統領選挙前に、新型ミサイル導入を発表することで軍事大国を維持する姿勢を国民にアピールしたかたちだ。
 先月の大規模演習は、ロシア産石油の税収増大で演習予算が確保の結果と指摘される。これは、旧ソ連が石油高の1970年代に歳入の黒字分を軍備拡大にあてた流れに通じる動きだ。
◎露地下鉄爆破テロ:チェチェン武装グループが犯行声明(2004年3月2日、毎日新聞)
 ロシア・チェチェン共和国の独立派系サイト「カフカス・センター」は1日、少なくとも40人が死亡した2月6日のモスクワ地下鉄爆破テロを実行したとするチェチェン武装グループ「ガゾタン・ムルダシュ」の犯行声明を掲載した。
 同サイトによると、声明文は電子メールで届き、グループからの電話もあったという。
 声明は「われわれは2月6日にモスクワの地下鉄で最初の粛清を行った」とし、2000年2月にチェチェンで46人の住民がロシア連邦軍の攻撃により死亡したことへの報復と主張した。(モスクワ共同)

◎屋根崩落:屋内プールで子供ら16人死亡、モスクワ(2004年2月15日、毎日新聞)
 モスクワ南西部ヤセネボ地区の屋内複合プール「トランスバーリ・パーク」で14日午後7時半(日本時間15日午前1時半)ごろ、ごう音とともに屋根が崩落した。インタファクス通信はロシア非常事態省などの話として、子供を含む16人が死亡、100人以上が負傷したと伝えた。
 現場で救助作業を指揮しているルシコフ・モスクワ市長は「爆発などは確認されておらず、テロではない」と述べた。
 検察当局は、積雪の重みに屋根が耐えられなかった可能性があるとみて、原因を調べている。
 現場ではプールの上にコンクリート製の屋根が約5000平方メートルにわたって崩れ落ち、下敷きになった人の救出作業が続いている。
 トランスバーリ・パークは2002年に開業したモスクワ最大規模の娯楽施設で、総面積は約2万平方メートル。流れるプールや波のプールのほか、ボウリング場などを備え約2000人を収容できる。事故当時、施設内に家族連れなど約1000人がおり、プールでは数百人が水泳などを楽しんでいた。
 モスクワでは6日に地下鉄爆破テロがあったばかり。屋根の崩落で爆発のような音がしたため、一時はテロとの見方も出て、治安当局が急行するなど現場は騒然とした。(モスクワ共同)

◎モスクワ地下鉄爆破テロ、死者100人の可能性も(2004年2月7日、読売新聞)
 【モスクワ=古本朗】モスクワの地下鉄爆破テロ事件(6日発生)をめぐり、同市検察局や公安警察「連邦保安局」(FSB)は7日、事件に遭遇した乗客からの事情聴取、現場から運び出された物品の科学的分析など本格捜査に着手した。また、死亡した乗客の検視や身元確認も急いでいる。
 他方、有力紙コメルサント電子版(7日付)は、捜査官らの証言をもとに、地下鉄爆破テロの「死者数は100人に達する恐れがある」と報じ、実際の被害が、「死者39人、負傷者134人」という現時点での当局の公式発表を大きく上回る可能性を示した。
 コメルサント紙に掲載されたテロ現場のルポ記事によると、当局の衛生班スタッフは同紙記者に対し、「現場で、四肢の失われていない遺体を約60、遺体の破片もほぼ同数見た」と証言。また、現場検証にあたった複数の捜査官は「犠牲者数は100人を下らない」と語ったという。報道の確度は不明だが、破片化した遺体の確認作業などが進むにつれ、死者数が変動する可能性はある。

◎34人重体に、主犯格のモンタージュ作成、モスクワテロ(2004年2月7日、朝日新聞)
 モスクワ地下鉄爆破テロ事件でロシア内務省当局は、事件直前に地下鉄駅構内のビデオカメラがとらえた映像から犯人像を絞り込み、モンタージュ写真を作成した。プーチン大統領はブッシュ米大統領と電話会談を行い、「チェチェン武装勢力と国際テロ組織との関連」を指摘し、対テロ国際共闘を訴えた。
 モスクワ市警は当初、「女性テロリストによる自爆テロ」との見方をとっていたが、これを改め、犯人グループは車内に爆発物を仕掛けて起爆させたとみている。
 公表されたのは、内務省当局が主犯格とみている男性のモンタージュ写真。中肉中背で30~40代、カフカス系とされる。また、7日までに負傷者134人のうち34人が重体に陥った。
 プーチン大統領は、旧ソ連諸国で構成する独立国家共同体(CIS)首脳と相次いで電話で協議し、国境管理などによってテロ活動を抑止するための協力を求めた。
 6日午後にはブッシュ米大統領と電話で話し、チェチェン武装勢力とアルカイダなど国際テロ組織には密接な関連があると指摘した。米ロ首脳の間では「国際テロリズムの脅威に対抗する共闘態勢の強化」が確認されたという。

◎モスクワの地下鉄で自爆テロ、40人死亡(2004年2月6日、読売新聞)
 【モスクワ=五十嵐弘一】モスクワ南東部を走る地下鉄内で6日午前8時40分(日本時間同日午後2時40分)ごろ、自爆テロと見られる爆発が発生し、ロシア非常事態省によると、約40人が死亡、120人以上が負傷した。
 ロシアでは来月14日に大統領選の投票が予定されており、当局は、ロシアからの分離独立を求めるチェチェン武装勢力が、情勢かく乱を狙って犯行に及んだと見ている。
 現場は、モスクワ南東部と中心部を結ぶザモスクボレツカヤ線(2号線)のパベレツカヤ駅とアフトザボツカヤ駅間のトンネル内。南から中心部に向かう列車(8両編成)がアフトザボツカヤ駅を過ぎ、500メートル程走った地点で爆発が起こった。先頭から2両目の車両の出入り口付近が爆発地点とされる。
 列車は300メートルほど走った後急停車したが、この間車両は猛火と煙に包まれた。爆発当時は通勤ラッシュのピークで、地元報道では列車内に乗客が約1500人いたが、死者は2両目付近に集中している模様。乗客は煙の被害を避けるためマフラーや帽子などで顔を覆い、暗闇での大混乱の中、多くが自力で脱出した。生存者を地上に救出する作業は2時間以上かかった。
 タス通信によると、爆発の威力はTNT火薬5キロ相当以上とされる。インターファクス通信が捜査当局者などの話として伝えたところによると、自爆犯は女性で、爆発物をリュックサックかスーツケースに隠して車内に持ち込んだらしい。
 在モスクワ日本大使館によると、日本人が事件に巻き込まれたとの情報はない。
 モスクワの地下鉄網は、世界でも有数の規模で、1日の利用者数は800万人にのぼる。事故が起こったザモスクボレツカヤ線はモスクワを南北に貫き、最も利用客が多い。またパベレツカヤ駅は地下鉄環状線などの乗り継ぎ駅になっており、ラッシュ時には東京の地下鉄並みの混雑になる。核戦争の避難も想定して地中深く敷かれており、事故の際には惨事になりやすい。過去にも96、98、2001年に地下鉄で爆破事件が起こった。
 プーチン大統領は6日、「テロリストとは対話しない。ロシアはテロリストを壊滅する」と事件を糾弾し、テロ掃討に向け断固たる決意を示した。
 ロシア国内ではチェチェン武装勢力によると見られるテロが続発している。2002年10月にモスクワの劇場占拠テロ事件が起きて129人が死亡、昨年12月にはスタブロポリ地方で走行中の列車が爆破され、40人以上が死亡する事件があったばかり。また昨年12月に行われたロシア下院選直後には、モスクワ中心部のクレムリン(露大統領府)に面する名門ホテル「ナショナル」前で自爆テロが発生、通行人ら3人が死亡するなど、政治の動きや選挙に合わせてテロが起こっている。

◆モスクワの地下鉄
 1935年に開通。現在は環状線を含む11路線があり、駅の数は約160。年間輸送人員は約32億人で世界一とされる。スターリンが共産主義の記念碑として労働者約2万5000人を動員して建造を主導、過酷な労働から1000人が死傷したという。駅舎はシャンデリアや大理石の塑像など装飾の豪華さで有名。深いところでは地下50メートルあり、1941年のナチス・ドイツによるソ連侵攻時は防空ごうとして使われた。運賃30円程度で、乗り換えは自由。

◎モスクワの地下鉄で爆発、死者39人以上、自爆テロか(2004年2月6日、朝日新聞)
 モスクワ中心部を走る地下鉄の車内で、6日午前8時30分(日本時間同午後2時30分)ごろ、大きな爆発が発生し、車両が炎上した。ロシア緊急事態省によると、少なくとも39人が死亡し、約200人が負傷した。連邦保安局など治安当局は、自爆テロの可能性が高いとみて捜査を始めた。ロシアでは3月14日にプーチン大統領の再選がかかる大統領選挙が行われる。プーチン政権に反発してきたチェチェン独立派の武装勢力による犯行との見方が強い。
 爆発は、モスクワ中心部を通り市内南北を走る地下鉄のザモスクボレツカヤ線(2号線)の地下線路上で走行中に起きた。8両編成の電車が南から市中心部へ入ってアフトザボツカヤ駅を通過した直後、前から2両目の車内が爆発した。
 モスクワ市警によると、電車は郊外からの通勤客らで込み合っており、爆発した車両には100人以上が乗っていた。この車両も含め電車から約700人が自力で脱出、通過した同駅か、または次の駅まで歩いて避難した。
 車両の火災は約1時間半後に鎮火し、救助隊員がトンネル内に入った。負傷者や遺体が次々に付近の駅構内に運び出された。市消防当局によると、「負傷者以外にも、ショック状態の人を含め約350人を搬送した」という。日本大使館によると、死傷者の中に日本人がいるという情報はないとしている。
 インタファクス通信によれば、現場の車両内から、爆破装置に使われたとみられる散乱した金属片が発見された。モスクワ市当局によると、爆発はTNT火薬5キロ相当の威力があった。同当局者は「スーツケースの中に入れて、車内に持ち込まれた証拠がある」と語った。
 AP通信によると、警察当局は、犯行にかかわったとみられる女性が映ったビデオテープを入手したという。
 ザモスクボレツカヤ線は、クレムリン一帯のモスクワの「心臓部」を通過する。現場は、赤の広場前の駅まで3駅の場所だった。当局は、ロシア南部チェチェン共和国の独立紛争に絡むテロとみて捜査を進め、目撃証言などから、イスラム武装勢力の自爆テロとの見方を強めている。
 専門家らは、チェチェン問題で強硬路線を取ってきたプーチン大統領の再選が確実視される大統領選を前に、「世論の動揺を狙った」と分析している。
 チェチェン武装勢力の有力派閥であるマスハドフ元大統領派の代理人がインターネットで6日、関与を否定する声明を発表した。しかし、プーチン大統領は記者会見で、「このテロにマスハドフが絡んでいるのは間違いないが、交渉は一切拒否する。テロリストは全滅しなければならない」と語った。
 ロシアでは昨年12月の下院選挙に絡んで、南部スタブロポリ地方の通勤列車の車内や、モスクワの下院議会ビル付近のホテル前で、チェチェン武装勢力の女性メンバーによるとみられる自爆テロが相次いで発生した。また、モスクワでは96年6月と01年2月の2度にわたり、地下鉄でチェチェン勢力による爆弾テロが起きている。

◎ラッシュアワーのモスクワの地下鉄で爆弾テロ(2004年2月6日、読売新聞)
 【モスクワ=五十嵐弘一】モスクワ南東部を走る地下鉄で6日午前8時40分(日本時間同日午後2時40分)ごろ、爆発が発生、地元ラジオなどの報道によると、死傷者が出ている。当局は爆弾テロとみて、捜査に乗り出した。
 爆発が発生したのは、パベルツカヤ駅とアフトザボツカヤ駅の間で、先頭から2両目の車両で爆発が起きた。現場には煙が充満し、救急車約50台が現場に急行している。この爆発により、モスクワの地下鉄は全線、運行を停止している。
 ロシアでは今年3月14日投票の大統領選を控えて、選挙活動が活発化しており、同選挙の妨害を狙ったチェチェン武装勢力による犯行の可能性もあるとみて、当局は捜査している。

◎ロシア列車爆破テロ、死者42人に、犯人は男女4人組か(2003年12月7日、朝日新聞)
 ロシア南部スタブロポリ地方で5日起きた列車爆破テロ事件で、ロシア緊急事態省は6日、死者は42人になったと発表した。車内で自爆したとみられる男の遺体が確認され、検事当局は「男女4人組によるテロ」との見方を固めた。
 犯行声明は出ていないが、最高検は「チェチェン武装勢力によるテロ攻撃」とほぼ断定。負傷した容疑者とみられる女の身元を調べ、現場から逃げた女2人の行方を追っている。

◎ロシア南部で列車爆破テロ、40人死亡、下院選妨害か(2003年12月5日、朝日新聞)
 ロシア南部のスタブロポリ地方で、5日午前8時(日本時間同日午後2時)前、走行中の通勤列車の車両が爆発し、乗客のうち少なくとも40人が死亡し、150人以上が負傷した。ロシア緊急事態省は、車内での自爆テロの可能性が高いとみて調べている。7日にロシア全土で実施される下院選挙を前に、チェチェン武装勢力がロシア世論の動揺を狙った妨害工作との見方が強まっている。
 スタブロポリ地方は、チェチェン共和国に隣接したテロ多発地帯。現地からの報道によれば、キスロボツク発ミネラリヌイエボディ行きの列車が、途中駅を通過した直後に爆発が起きた。2両目の車体が台車を残してほぼ吹き飛んだ。通勤、通学客ら多数が乗り合わせており犠牲者が増えた。近隣の家屋の一部も壊された。ロシアのテレビ映像では、現場で車台の下から遺体を引き出す作業が続いている。
 緊急事態省や地元捜査当局には、「腹部にベルトを巻いた男女が自爆した」との情報が寄せられている。爆発の直前に、犯行グループの一部とみられる数人の女性が、走行中の列車から飛び降りた、との目撃情報もある。現場では、爆発の威力を高めるのに使われたとみられる金属片が見つかっている。線路上に時限式の爆発物が仕掛けられていた可能性もあり、当局は両面で捜査している。ロシアからの分離独立を求めるチェチェン武装勢力の犯行とみているが、犯行声明などはまだない。プーチン大統領は同日、「選挙を前に不安定化をはかる動きだ」と述べた。
 同地方では、今年9月3日にも、同じ路線で列車が爆破され学生3人を含む7人が死亡し、約90人が負傷するテロがあったばかり。

◎[WIND]ロシア人マフィア逮捕(2003年11月12日、読売新聞)
 韓国に石巻から漁船を不正輸出したとしてロシア人ら六人が関税法違反などで逮捕された。このうちロシア国籍のグイチマゴメド・グイチノフ容疑者(45)はマフィアの最高幹部だった。所属するマフィアグループ「ヤクート」は一九九〇年代からサハリン州で勢力を伸ばしてきた。
 私は八九年に当時のソ連を旅行した。ヨーロッパとの国境ではマシンガンを持った兵士が国境の駅で国際列車に乗り込んできて、旅券を確認して回った。それだけ厳しく国境を守っていたロシアからマフィアが日本にやってきて犯罪を犯した。
 当時の状況からすると、政治的にも経済的にも隔世の感があると感じている。国際交流が活発化するのは歓迎だが、それに伴った犯罪は勘弁願いたい。

◎ロシア南部で爆破テロ、2人死亡30人負傷(2003年9月16日、朝日新聞)
 ロシア南部イングーシ共和国のマガスで15日、ロシア連邦保安局(FSB)の建物に爆発物を積んだ車が突入し、爆発が起きた。イタル・タス通信によれば、チェチェン共和国を管轄するFSBの幹部2人が死亡、30人が負傷した。イングーシとチェチェンは隣接しており、チェチェン独立紛争に絡んだ自爆テロの可能性が高い。
 FSB当局は、武装勢力がイングーシのチェチェン難民キャンプなどに潜伏しているとし、10月のチェチェン大統領選を前に警戒していた。

◎ロシア・韓国、5億ドルの兵器売買契約へ(2001年2月26日、日本経済新聞)
 ロシアと韓国が総額5億ドルに上るロシア製兵器の売買契約に調印する見通しとなった。プーチン大統領が26日から初めて韓国を公式訪問する際に、基本契約を結ぶ予定だ。両国は今回のロシア大統領の訪韓中に鉄道、エネルギー、宇宙開発など2国間の経済協力を幅広く協議し、一段の関係緊密化を目指す。27日の韓ロ首脳会談では朝鮮半島情勢をめぐる協議も焦点で、ロシアは半島情勢の安定化に向けて積極関与する意向を表明する。
 プーチン大統領は予定を1日早め26日にソウル入りする。ロシアから同行する約30人の実業家とともに対ロ投資の拡大を呼び掛けるほか金大中大統領との間で韓ロ首脳会談を開き、共同声明を発表する。ロシア大統領府のプリホチコ副長官(外交担当)は今回の大統領訪韓について、「韓ロ間には政治的問題はないので、2国間の貿易・経済協力が中心議題となる」と指摘。同時に「朝鮮半島情勢や北東アジアの動向についても集中協議する」としている。




 


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