円形度:Circulality

  メニュー

 TOPページ 

 日本情報 

 海外事情 

 辞典 

 医学の話 

 科学の話 

 食品の話 

 知識の宝箱 

 メモ帳 

  



更新日:
 2009年1月22日







◎円形度:Circulality
 「円形度」という概念があります。これは、「あるものの形が、どれだけ円に近いか」を表す指標です。こんな言葉は日常生活で使いませんが、粉体を扱っている場合には、粉体(粉、粒子)の形状に関する情報が必要になることがあります。このような場合に利用される指標の一つです。
 
 「円形度」は、Wadellという人が提案した粒子の投影像に関する形状指数で、以下の式で表されます。

  (円形度)=(投影面積の等しい円の周長)/(粒子の周長)

 ここで、「投影面積の等しい円の周長」とは、「ある粒子を真上から観察した時、下の平面に映った粒子の影の面積を求め、この面積に等しい円を計算し、その円の輪郭の長さ」です。
 また、「粒子の周長」とは、「ある粒子を真上から観察した時、下の平面に映った粒子の影の輪郭の長さ」のことです。

 本当は、粒子(粉体)は立体ですので、形状について議論するのであれば、「円形度」でなく、「球形度」について議論するべきです。しかしながら、これは実現させるのが非常に難しいので、立体ではなく、投影された形をもとに議論しています。

 具体的な例をもとに、円形度の数値を考えます。まず、球の場合、下の平面に映る影は円形であり、その投影面積は球と直径が等しい円の面積になります。すなわち、その周長は、球と直径が等しい円の円周の長さに等しくなります。つまり、(投影面積の等しい円の周長)=(粒子の周長)となり、円形度=1となります。

 次に、正六面体(立方体)を考えます。これは、正方形6枚で囲まれた立体ですから、平面上に投影された形は正方形になります。(ここでは、単純な例だけを考えます。)この時の面積と周長を計算します。
 正方形の面積に等しい円の直径を求めるのは面倒ですから、ここでは、逆に円の直径を10cmと仮定して話を進めます。直径が10cmの円の面積は、公式より、78.53975cm2と求められます。正方形の面積は、1辺の長さをaとすればa2ですから、78.53975の平方根を計算してa=8.8622655cmとなります。そして、正方形の周囲長は4aですから、35.449cmとなります。
 一方、直径10cmの円の周囲長(円周)は、公式より31.4159cmと求められます。したがって、この正六面体の円形度は、31.4159 ÷ 35.449 = 0.8862となります。



 他の正多角形の円形度を計算した結果を下記にまとめます。

形状 円形度
1.0000
正十八角形 0.9949
正十五角形 0.9926
正十二角形 0.9885
正八角形 0.9737
正六角形 0.9523
正五角形 0.9299
正方形 0.8862
正三角形 0.7776

 この関係を図に示すと下記のようになります。



 このように円形度は、円の時に1、円以外の形状では1未満の値になります。(円は、上の図に示されていませんが)
 すなわち、円形度を計算した時、その値が1に近いほど、その形状は円に近い、と言えます。

 また、ここでは単純に、直線に囲まれた図形をもとに考えていましたが、実際の粒子(粉体)の表面は直線で囲まれているわけではありません。粒子の大きさと、測定能力にもよりますが、実際には凸凹だらけのはずです。(より細かく観察しようとすれば、するほど、凸凹が目立ってくることになります。)

 直線に囲まれた図形と、凸凹に囲まれた図形では、面積が同じでも、周囲長は大きく異なります。正方形の例で考えます。

 左図は、正方形です。右図は、面積が変わらないように2辺だけを波線にしてみました。面積が同じであっても、右図は周囲長が長くなっていることが一目瞭然です。すなわち、粒子の表面に凹凸がある粒子の場合、周囲長が長くなるため、円形度は、より小さな値になります。このことから、円形度は、粒子の表面状態を表す指標であるとも考えられます。つまり、円形度を測定することによって、粒子形状の管理だけでなく、粒子の状態の管理もできるかもしれません。



 しかし、ただ、円形度が0.98とか、0.96と言われても、どれくらい円に近いか、想像できませんね。まず、「円に近い」というのが、理解できませんからね。しかも、正五角形は0.93、正方形は0.89、正三角形は0.78、と言われても、数字からは形が全然、想像できませんし。


inserted by FC2 system