超臨界流体のお話

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更新日:
 2008年6月28日







超臨界流体(supercritical fluid)とは
 物質は、一般に固体、液体、気体のいずれかの状態ですが、温度と圧力を上げていき、ある時点(臨界点)を越えると、液体のように物質を容易に溶解し、気体のように大きな拡散速度を示す、液体と気体の両方の性質をもつ状態になります。この物質を超臨界流体とよびます。
 液体は分子がギュウギュウ詰めになって、押し合いへしあいしているような状態です。一方、気体はスカスカで分子はまばらにしかいませんが、自由に飛び回りぶつかり合っています。このぶつかり合いの力によって分子の間には隙間ができ、更に拡がっていこうとします。(圧力が発生します)なお、飛び回り方が激しい(=温度が高い)程、空間の隙間が大きくなり圧力または体積が大きくなります。
 超臨界状態はその中間で、ギュウギュウとスカスカの状態に相当します。液体のようですが圧力を大きくすると体積が小さく(密度が高く)なり、圧力を下げると(ただし臨界点以上)体積が大きくなります。
 すなわち超臨界流体は、小さな隙間にも浸入できる拡散性と、物質を溶かし出す溶解性に優れているのです。現在では、「超臨界水」、「超臨界炭酸ガス」が、食品、エネルギー、環境、医療など、幅広い分野で活用されています。
 水の場合は374℃、22MPa、二酸化炭素の場合は31℃、7.4MPaまで上げると超臨界の状態になります。水と二酸化炭素は自然界に多く存在し、環境への影響が少ない点からも利用が進んでいます。

媒体 臨界温度
Tc(℃)
臨界圧力
Pc(MPa)
代表的な活用方法
二酸化炭素 31 7.3  低温で超臨界状態となるため、食品成分の抽出や医療器具など精密機器の殺菌などに活用できます。
メタノール 239 8.1  ペットボトルなどを粉砕して超臨界メタノールと反応させることで、PETの合成原料モノマーに加溶媒分解することができます。
374 22.1  超臨界水は、短時間でPCBやダイオキシンなどの難分解性の有害物質を分解することができます。


・超臨界水(Super Critical Water)
 超臨界水は、圧力をいくら高くしても、液化せず、気体分子と同様の大きな運動エネルギーを持ち、かつ液体に匹敵する高い密度を兼ね備えた非常にアクティブなものです。
 超臨界水は、誘電率やイオン積といった反応場の重要なパラメータが大幅に変わり、有機物はよく溶けるが、無機物はほとんど溶けないという通常の水とは全く逆の現象が起こります。
 超臨界水は非常に高温状態であり、熱分解と加水分解が同時に、かつ急速に起こるため、ほとんどの有機物は低分子化し超臨界水と完全に混合します。さらに、空気や酸素が存在すれば、酸化反応を起こし、有機物の分解が可能となります。
 PCBやダイオキシンなどの有害化学物質も、酸化剤、アルカリ等を使用し、超臨界水を用いることにより、二酸化炭素、水、塩、窒素ガスなどに完全に分解されます。

・超臨界炭酸ガス(Supercritical Carbon Dioxide)
 超臨界炭酸ガスは、圧力・温度の変化で連続的に流体の諸物性を制御できる点などから、抽出用溶媒として多く用いられています。これは有機溶媒抽出に比べて以下のような優れた特長を持っています。
1. 圧力、温度の操作によって溶解性を連続的に調整できる。
2. 拡散性が高いことから抽出速度が速い。
3. 抽出完了後は常温・常圧で気化するため抽出物質を分離しやすい。しかも安全。
4. 臨界温度が31.1℃と常温に近い。圧力も比較的小さくてすむ。
5. ほとんど不活性であるので、抽出物の変質が少ない。
6. 高純度のガスが入手しやすい。
 応用例としては、食品中のエキス・薬効成分、香料の抽出に応用されています。
 また、マイクロセルラープラスチックの製造にも応用されています。発泡プラスチックは従来からありますが、比較的大きな気泡を有し主に断熱効果を高めています。この技術では超臨界炭酸ガスを発泡剤として使用し、10μm以下の微細な気泡を作り、材料の低減・軽量化と強度の向上を図ることができます。
 また、軽量化競争の激しい「携帯電話」のボディにも応用されています。他に半導体製造時のウエハー洗浄などにも研究が進んでいます。


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