水の消費期限

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更新日:
 2020年5月3日



◎水の消費期限(2019年12月1日)
 災害時の備蓄用に販売されている水には保存期間が2年のものと、長期保存用の5年のものがあります。この差は、何なのでしょうか。実際に水には消費期限があるのでしょうか。

@市販されている水の賞味期限
 市販されているPETボトルの水には、賞味期限が2年のものと、長期保存用の5年のものがあります。富士ミネラルウォーター株式会社、工場長の上野忍氏によると、「水」の製造工程は全く同じだそうです。同じ水を異なるPETボトルに詰めているのだそうです。
 つまりPETボトルに秘密があります。実は賞味期限が2年のものはPETボトルの厚さが0.31mm(310μm)、5年のものは0.34mm(340μm)で、その差は、たったの30μmです。この差が、賞味期限に3年の差が生じているのです。
 実は、ペットボトルの容器は非常に細かい穴があいていて通気性があります。このため長期保存している過程で、容器を通じて水が蒸発していきます。この結果、表示されている内容量(2リットルなど)と実際の内容量に差が生じていくことになります。
 飲食品は食品衛生法や食品表示法など、様々な法律を守らなければなりません。その一つに「計量法」という法律があり、表示した内容量よりも2%以上、少ないと計量法違反となり、販売できません。
 PETボトルの厚さが薄いと内部の水分の蒸発が早く、より早く水分が減ることになります。上記のPETの厚さが0.31mmのものは内容量の2%が減るのが2年くらい、0.34mmのものは5年くらいかかる、ということから賞味期限を2年、5年と表記しているそうです。すなわち市販されている水の賞味期限は品質の問題ではなく、「PETボトル内の水が蒸発する量が計量法で違法とならない期間」ということになります。
 既に販売しているものであれば、保存や保管の問題であり、所有している水の賞味期限はメーカーには関係ないように思いますが、仮に賞味期限が2年の水を飲まずに保存していて、3年後に飲もうとした時、水が減っていたら「PETボトルから水が蒸発して、減った」とは思わずにメーカーにクレームを入れる人がほとんどでしょう。このような無駄なトラブルを避けるため、メーカーとしては賞味期限を計量法で問題とならない期間に設定しているものと考えられます。
 ちなみに、上述した冨士ミネラルウォーターの独自調査では、2年の賞味期限の水の場合、6年3カ月まで調査した結果、中身には全く問題なかったそうです。当然ですが、保管状況も影響を及ぼすため、どのような水でも問題がないとは言えません。メーカーの立場からは、必ず賞味期限内で飲んで欲しいと言うに違いありません。

A水道水の賞味期限
 水道水は、水の衛生を確保するため、塩素等による消毒を行うことが法律で定められています。水道法第22条で衛生確保のため塩素消毒を行うことが定められており、残留塩素濃度は水道法施行規則第17条第3項において、以下のように定められています。
 「給水栓における水が、遊離残留塩素を0.1mg/L(結合残留塩素の場合は0.4mg/L)以上保持するように塩素消毒をすること。ただし、供給する水が病原生物に著しく汚染されるおそれがある場合又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を多量に含むおそれがある場合の給水栓における水の遊離残留塩素は、0.2mg/L(結合残留塩素の場合は1.5mg/L)以上とする。」
 すなわち、家庭で出す水道水は、どこの仮定でも最低、遊離残留塩素が0.1mg/L以上、確保されているはずです。時間や距離で塩素が減っていくことを考慮すると、水道施設付近では濃度が濃く、遠い場所ではギリギリということになっているかもしれません。
 一般的に上限の目標値を1mg/L以下に設定しているようです。残留塩素が多いと塩素臭が強くなり、美味しい水とは思えなくなりますので、各水道局は目標値を0.3mg/L以上0.5mg/L以下程度に設定しているようです。
 このような水道水は、そのまま飲んでも衛生上、問題ありませんし、多少の時間、放置しておいても問題はありません。ただし、@のPETボトルの水とは異なり、不純物が多く入っているはずですので、消費期限は短いと考えた方が良いでしょう。一般的に常温で保存する場合は3日程度、冷蔵庫に入れた場合は10日程度、という説が多いです。ただし、水道の蛇口に浄水器をつけた場合は塩素を除去している可能性があり、もっと短い期間になると考えられます。なるべく空気に触れさせないこと、日光に当たらないようにする、低い温度で保管するということは最低限の条件だと思います。

B水の消費期限
 「水」という物質に消費期限はあるのでしょうか?「純粋な水(純水)」であれば、消費期限はないのではないか、という説が有力だと思います。
 水の品質の劣化=飲み水として利用できない、という状態は「水」の問題ではなく、「水に含まれている有機物」が原因ではないかと考えられます。蒸留水、様々なフィルターでろ過された水には有機物などが入っていないため、有機物の劣化=腐敗や、有機物を餌とした菌の繁殖、ということも起きないと考えられます。
 したがって純粋な水であれば消費期限はないと考えられます。このような水は、市販されている高度にろ過された水が該当すると考えられます。

CPETボトルで販売されている水の消費期限(結論)
 Bより、保存状態に気を付けていれば、市販されているPETボトル入りの水の消費期限は、表示されている「賞味期限」よりも、かなり長いのではないか、と考えられます。したがって「賞味期限」を過ぎたからと言って、あわてて捨てる必要はないのではないでしょうか。ただ、「賞味期限」をどれくらい過ぎたら駄目、という基準はないので個人での判断ということになります。



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