ステンレス鋼のお話
  メニュー

 TOPページ 

 日本情報 

 海外事情 

 辞典 

 粉体用語辞典 

 医学の話 

 科学の話 

 食品の話 

 知識の宝箱 

 メモ帳 

  



更新日:
 2008年6月28日







◎ステンレス鋼(stainless steel)
 ステンレス鋼とは、「約12%以上のクロムを含有し、耐食性を目的とした鋼」と定義されています。一般には、“錆びにくい鉄”という認識でしょうか。
 ステンレス鋼の不動態は、環境中の水ならびに酸素などの作用によって、わずかに溶けだしたイオンが、鋼の表面に厚さ1〜3nmという薄いクロムの水和酸化物、ないしオキシ水酸化物を主成分とした緻密で化学的に安定な保護皮膜を形成した状態であるとされています。この皮膜は、表面傷などによって一度破壊されても、すぐに修復されるという性質を持っています。
 クロムは不動態の形成に、また形成された皮膜の安定性に最も大きく寄与する元素であり、最低限約12%が必要とされます。一般に、ステンレス鋼はクロム量が多いほど不動態を形成しやすく、また、できた不動態は安定になります。
 ステンレス鋼のもう1つの主要合金元素であるニッケルも、ある環境条件において不動態化を容易にする働きをもっており、クロム・ニッケル系とクロム系とを比較した場合、前者の方が不動態を形成しやすいです。
 ステンレス鋼は耐食性が優れているために、他の金属、合金では使用できないような激しい環境条件のもとで使われることが多くなります。外部の環境条件が厳しくて、ステンレス鋼でも不動態を形成し得ないような場合、あるいは局部的に不動態皮膜が破壊されるような条件のもとでは、ステンレス鋼も腐食されます。前者のような場合を全面腐食といい、鋼の表面からほぼ均一に腐食が進行します。後者の場合は局部腐食といい、鋼の表面から局部的に腐食が進みます。局部腐食の場合は、その腐食の形態によって、さらに粒界腐食、孔食、すきま腐食、応力腐食割れ、などに分類されています。
 ステンレス鋼が錆びる現象の一つに、“もらいサビ”という現象があります。例えば、ステンレス鋼の表面に鉄粉が付着して、その鉄がサビを生じ、そのまま放置しておいた場合、下部のステンレス鋼にサビが誘発されることがあります。鉄サビが付着した場合にも、同様な結果が起きます。このようなサビの発生を防ぐには、ステンレス鋼表面をできるだけ清浄に保つことが大切です。

◎ステンレス鋼の種類(1998年12月1日)
 普通の炭素鋼に比較して、特に耐食性の優れた特殊鋼の総称。ステンレス鋼は、鉄を主成分として、これにクロムやニッケルを含有させた合金鋼。組成からはクロム系ステンレスと、クロム・ニッケル系ステンレスに大別される。組織からはマルテンサイト型、フェライト型、オーステナイト型に大別される。
・18-8ステンレス(SUS304など)は非磁性のため磁化しない。
・13クロムステンレスは磁性を持つため、磁化する。
 磁性を持つか、持たないかは、結晶構造による。18-8ステンレスは面心立方格子で、鉄が各頂点と立方晶の面の中心に入るため、非磁性になる。13クロムステンレスは体心立方格子で、各頂点と立方晶の中心に鉄が入るため、磁性を持つ。

@クロム系ステンレス
(1)マルテンサイト系ステンレス(13クロムステンレス)
 製品の形状としては棒鋼や平鋼の割合が高く、耐食性に加えて高強度や耐摩耗性を要求する用途、例えばタービンブレード、シャフト、ノズル、刃物、ベアリング等に利用されている。
 代表的な鋼種としてはSUS403、SUS410、SUS420等があり、13クロムステンレスと呼ばれている。
 ・常温で強磁性を持っている。磁石がくっつく。
 ・耐食性が劣る。
 ・焼き入れによって強度が増す。高強度、高硬度、高温度で使用される。
 ・C>0.2%のものは、硬質の刃物に使用される。
 ・C<0.2%のものは、ふつうの構造用材料として使用される。
 ・使用状態によっては、表面にサビの出ることがある。

(2)フェライト系ステンレス(18クロムステンレス)
 ・常温で強磁性を持っている。磁石がくっつく。
 ・焼き入れによって強度が増さない。
 ・マルテンサイト型よりも耐食性に優れている。

Aクロム・ニッケル系ステンレス(オーステナイト系ステンレス)(18-8ステンレス)
 ・最も耐食性に優れている。
 ・クロム系ステンレスよりも機械的性質、溶接性が優れている。
 ・非磁性。磁石がくっつかない。
 ・多くの用途に用いられている。
 ・約18%のCrと約8%のNiを含んだSUS302、SUS304が多く利用される。
 ・SUS304(Cr:18%、Ni:8%)。
 ・SUS316、SUS317は、モリブデンを添加して酸に対する耐食性を高めてある。
 ・SUS316(Cr:18%、Ni:12%、Mo:2.5%)。
 ・SUS316L(Cr:18%、Ni:12%、Mo:2.5%、C:低濃度)。
 ・SUS316は、SUS304よりも、海水など各種媒質に優れた耐食性を示す。
 ・SUS316Lは、SUS316に耐粒界腐食性を持たせたもの。

・前置記号は以下の通り、
 SUS:ステンレス鋼の棒、板、帯、線材、線、管。
 SCS:ステンレス鋼の鋳鋼品。
 SUH:耐熱鋼の棒、板。
 SCH:耐熱鋼の鋳鋼品。

◎ステンレス鋼の表面処理
 ステンレスの表面処理で一番使われている方法が研磨。研磨方法には、機械研磨と電解研磨が多く利用されている。

@機械研磨
 一般に、ベルト研磨、バフ研磨および、バレル研磨が使われる。
 ベルト研磨は、布製ベルトの表面に指定番手(180番とか、240番といった砥粒の大きさ:番号が大きいほど砥粒は細かくなる)のアルミナ砥流を付着させた研磨ベルトでステンレス表面を研磨する方法。
 バフ研磨は、羽布と呼ばれる布地を円形に切り、表面にアルミナ砥粒を付着させて何枚も重ねたもの。
 バレル研磨は、多量の小物の研磨に用いられる方法で、バレルと呼ばれる釜状の容器に被研磨材と研磨剤を水とともに入れ、バレルを回転させて研磨する方法で、作業効率がよく、形状を問わないため、最近よく使われている。

A電解研磨
 リン酸?硫酸の混合液などの電解液中に品物を吊り下げて通電し、金属表面の微小な凸部を微小凹部より多く溶解させることによって、表面を平滑にして、より光沢を上げる方法。電解研磨では、表面に大きなうねりや掻き傷、打痕などがある場合には、そのまま残ることが多いので、電解研磨の前にハブ研磨を行っておく必要がある。
 ステンレスの電解研磨肌は、他の仕上げとひと味違った独特の光沢が比較的安いコストで得られるので、装飾性の高い製品には多く利用されている。
 しかし、この研磨方法では被研磨材の材質の条件に大きく影響を受けやすいという欠点があり、主としてオーステナイト系ステンレスのような単一組織で熱処理の影響を受けにくいものに用いられている。

参考文献
1)大山正、森田茂、吉武進也:“ステンレスのおはなし”、日本規格協会(1990)



inserted by FC2 system