界面活性剤の話
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更新日:
 2014年12月17日






◎界面活性剤(surfactant)

 界面活性剤は、洗剤など、日常よく使われる化学物質です。界面とは、表面ともいいます。界面(表面)とは、2つの性質の異なる物質の境界面のことです。2つの混じり合わない物質の間には、必ず界面が存在します。例えば、洗濯中の洗濯機の中を考えると、水と空気の界面、水と汚れの界面、水と衣類の界面、汚れと衣類の界面、洗濯槽と水の界面など、たくさんの界面が存在しています。
 界面活性剤とは、このような界面に働いて、界面の性質を変える物質のことを言います。例えば、水と油は混じり合わないものの代表のように言われています。混じり合わない水と油の間には、界面が存在しています。界面活性剤は、この界面に働いて界面の性質を変え、水と油を混じり合わせることができるのです。
 界面活性剤は、一つの分子中に水によく馴染む親水基と呼ばれる部分と、水に馴染まない疎水基と呼ばれる部分を持っています。疎水基は炭化水素を主体としており、油と同じ成分です。界面活性剤は、分子内に親水基と疎水基を持っていることから水と油の両方の橋渡しをすることができる物質であることから洗浄、分散、乳化、泡立ちなどの性質があり、多くの分野で利用されています。界面活性剤の代表的な用途は洗剤、食品添加物、化粧品、殺虫剤などで、さらに工業用にも広く利用されています。
 界面活性剤の代表的な性質として主に、浸透作用、分散作用、乳化作用、起泡作用、洗浄作用の5つの作用があります。

1. 浸透作用
 ハスの葉やガラスの表面に水を落とすと、丸い水滴ができます。これは水の界面(表面)張力が強く働いているためです。
 これと同様にウールなどの繊維を水中に入れても、繊維の中に水が染みこんでいかないのは、水の界面張力が強く働いているためです。しかし、この水に界面活性剤を入れると、水の界面張力が下がり、繊維の表面に吸着し、繊維が水となじみやすくなります。その結果、繊維中に水が浸透していきます。これが、界面活性剤の浸透作用です。

2. 分散作用
 カーボンの粉体(スス)を水に入れた時、カーボン粉は水と混じり合わず、水の表面に浮かんでしまいます。これは、カーボン粉が疎水性であるため、水となじまず、表面に浮いてしまうのです。
 この水中に界面活性剤を入れると、カーボン粒子は界面活性剤の分子に取り囲まれて、水中に分散します。界面活性剤の疎水基がカーボン粒子とくっつき、界面活性剤の反対側の親水基が水になじむため、このような作用が起きるのです。このように水になじまない物質を水中に散らばらせる作用を分散作用と言います。

3. 乳化作用
 水に油を混ぜようとしても、分離してしまいます。これに界面活性剤を加えると、親油基が油の粒子に吸着し、油は界面活性剤にとりかこまれ、親水基が外側に並びます。界面活性剤が水と油間の仲介役となり、水と油が均一に混ざり合う事ができます。これを乳化作用といいます。

4. 起泡作用
 泡とは、空気が液体の薄い膜で包まれたものです。界面活性剤を少量、水に溶かした場合、水の表面張力が低くなり、膜ができやすくなり、かつ破れにくくなります。石鹸水や家庭用洗剤でシャボン玉を作ることが、この現象です。この作用を界面活性剤の起泡作用と呼んでいます。

5. 洗浄作用
 界面活性剤として最も有名な作用だと思います。上述したような浸透作用、分散作用、乳化作用が総合的に働いて洗浄効果を発揮すると考えられます。具体的には、以下のような作用です。(繊維を洗浄する際の作用の例です。)
 ①汚れ(油)の付着した繊維を精練剤(界面活性剤)の液に浸す
 ②界面活性剤が繊維や油に吸着し、「浸透作用」により、繊維と汚れの間に界面活性剤が入り込む
 ③熱や機械的なもみ効果により、汚れが繊維上から引き剥がされる
 ④界面活性剤の「乳化作用」、「分散作用」によって汚れが精練液中に安定的に分散する(再付着を防止する)

 界面活性剤は、食品にも利用されています。食べ物には、水に溶けるものと溶けないもの(油の成分)があります。界面活性剤を食品に添加すると、水と油とを混ぜることができます。水と油を混ぜる作用は乳化といい、乳化してできたものはエマルジョンといいます。乳化した食品にはマーガリン、バター、マヨネーズ、アイスクリームなどがあります。
 また、界面活性剤は化粧品にも利用されています。化粧品は、顔などに塗って色を付けたり、美しく見せるだけでなく、皮膚を健康に保つための働きもあります。これは、皮膚表面に油を塗って(油分を補って)、皮膚表面からの水分の蒸発を防いで、皮膚がカサカサにならないようにする働きです。
 油をそのまま皮膚に塗るのではなく、界面活性剤と水分を加えて、一様に伸ばしておく(薄めておく)と、丁度良い感じで使えるようになるのです。界面活性剤としては、主にクリーム状のものが使われていますが、クリームというのは粘り気(粘度)が大きいエマルジョンです。逆に、乳液というのは、粘度が小さいエマルジョンです。この材料や濃度を変えることで、素晴らしい製品を作るのがメーカーの努力ということですね。



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