黄砂、黄沙、こうさ
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更新日:
 2020年4月25日







◎黄砂、黄沙、こうさ(2020年4月27日)
 黄砂は文字通り「黄色い砂」のことで、中国大陸内陸部のタクラマカン砂漠、ゴビ砂漠や黄土高原など乾燥・半乾燥地域で、風によって数千メートルの高度にまで巻き上げられた土壌、鉱物粒子が偏西風に乗って日本に飛来し、大気中に浮遊あるいは降下する現象です。
 風によって大気中に舞い上げられた黄砂は、発生源地域周辺の農業生産や生活環境にしばしば重大な被害を与えるばかりでなく、大気中に浮遊し、黄砂粒子を核とした雲の発生、降水過程を通して地球全体の気候に影響を及ぼしています。
 また、海洋へも降下して、海洋表層のプランクトンへのミネラル分の供給を通して海洋の生態系にも大きな影響を与えていると考えられていますが、その量についてはまだ明確にはなっていません。
 黄砂粒子には、石英や長石などの造岩鉱物や、雲母、カオリナイト、緑泥石などの粘土鉱物が多く含まれています。日本まで到達する黄砂の粒径はおおむね3~5μmで、直径4μm付近にピークを持ちます。韓国では1~10μmの粒子が確認されているそうです。粒子の大きさは気候条件や発生地からの移動距離によって異なります。黄砂の大きさは、2.5μm以下の微小粒子状物質「PM2.5」よりやや大きいですが、PM2.5が黄砂に付着して飛来するとの見方もあるようです。
 黄砂粒子の分析からは、土壌起源ではないと考えられるアンモニウムイオン、硫酸イオン、硝酸イオンなども検出され、輸送途中で人為起源の大気汚染物質を取り込んでいる可能性も示唆されています。
 黄砂は年間を通して日本列島に飛来していますが、特に2月から増加し始め、4月にピークを迎えます。日本全国の85ヶ所の気象観測所における黄砂観測によると、1980年代後半までは年間のべ300日を超えることはほとんどありませんでしたが、1988年以降は頻繁に300日を超えており、2000年以降は2003年を除き、特に多くなっています。
 黄砂現象は太古から春先に多く見られる気象現象の一つであり、また自然災害であることはよく知られておりました。紀元前1150年頃には、すでに中国の歴史書の中に「塵雨」という言葉が記載されています。
 韓国で黄砂現象が初めて記録されたのは新羅の阿達羅王の時代(154~184年)の174年で、これを「雨土(ウートゥ)」と呼んでいたそうです。当時の人々は神が怒り、雨や雪の代わりに黄砂を降らせたと考えていたため、王やその臣下らは黄砂現象が起きる度に慌てふためいたそうです。百済の近仇首王時代(375~384年)の379年4月に「黄砂が一日中降った」との記録や、武王時代(600~641年)の606年3月には黄砂により百済の首都の空がまるで夜のような暗闇に包まれたという記録があるそうです。
 このような黄砂現象は主に春に発生していますが、冬に発生した記録もあります。西暦644年の高句麗宝蔵王の時代には10月に空から赤い雪が降ったとの記録があり、当時、黄砂が雪と共に降ったものと推測されています。黄砂については「高麗史」に「雨に濡れていないにも関わらず、衣服が埃で覆われる。これを「メ」又は「トーウ」と呼んだ。」と記されているそうです。
 朝鮮時代(1392~1910年)の1549年3月22日には「朝鮮の南西地域に位置する全羅道全州と南原で全方向すみずみまで、まるで煙のように押し寄せる霧が発生した。家屋の瓦屋根、野原の草、木の葉がすべて黄褐色や白の砂で覆われた。払い落してみるとまるで埃のようで、積もったものを揺らすと舞い散った。このような気候現象は1549年3月25日まで続いた。」という記録があるそうです。
 日本でも古くから黄砂現象が認められており、歳時記では「つちふる」といい、春の季語となっています。江戸時代に編纂された「本朝年代記」には1477年(文明9年)に北国で「紅雪」が降ったとの観測記録が残されています。
 2013年3月9日には、気象庁が、九州から中国、近畿、北陸、東海などの日本列島の広い範囲で黄砂を観測したと発表しています。また松江市と佐賀市で9日午前、視程(見通しがきく距離)が5kmまで低下し、長崎市では6kmになったほか、福岡市や京都市、大阪市、名古屋市などでも一時、8kmまで低下したと発表しています。視程が5km未満になると、交通に支障が生じる恐れがあるそうです。
 黄砂は従来、黄河流域及び砂漠等から風によって砂塵が運ばれてくる自然現象であると理解されてきました。しかし近年では、その頻度と被害が甚大化しており、急速に広がりつつある過放牧や農地転換による土地の劣化等との関連性も指摘されています。このため、黄砂は単なる季節的な気象現象から、森林減少、土地の劣化、砂漠化といった人為的影響による環境問題として認識が高まっているとともに、越境する環境問題としても注目が高まりつつあります。
 黄砂が発生すると視界が悪くなる他に、呼吸器系など健康への被害が懸念されています。実際に黄砂の時期にぜんそくやアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などが悪化するだけでなく、健康な人でも、これらの症状が現れた例が多々、報告されています。



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